説明

自動車用ハンドル及び自動車用ハンドルを利用した自動車用安全装置

【課題】運転中は運転者が常に握っており、且つ、同乗者も咄嗟の場合に操作しやすい自動車用ハンドルに着目し、運転者若しくは同乗者が危険を認識したときに自動車用ハンドルを強く握ることにより、自動車をいつでも確実に、且つ速やかに非常停止できるようにした自動車用ハンドル及び自動車用ハンドルを利用した自動車用安全装置を提供する。
【解決手段】中央のハブ部7と、このハブ部7にハンドルスポーク3を介して連結されて支持されるハンドルリム2とを備え、ハンドルリム2を圧縮可能な構造とし、且つハンドルリム2に非常停止用の信号を発する圧力センサー6が設けられていることを特徴とし、咄嗟の場合にハンドルリム2を強く握ることによりハンドルリム2を圧縮して圧力センサー6から非常停止用の信号が発せられるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の非常停止機能を持たせた自動車用ハンドル及びこの自動車用ハンドルを利用した自動車用安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車運転の安全性を高めるために、ブレーキペダルとは別にブレーキ装置を作動させる非常停止スイッチを自動車運転席ダッシュボードなどに設け、運転者とともに同乗者が操作できるようにした技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2010−23818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のものでは、咄嗟の状況においてアクセルペダルからブレーキペダルへの踏み替えが遅れるばかりでなく、折角、非常停止スイッチがあっても慌てて押し忘れたり、その場所が分からなくなって操作が遅れ、事故につながることがあるなど、いつでも確実に、且つ速やかに非常停止を行えない欠点があった。
【0005】
そこで本発明は、運転中は運転者が常に握っており、且つ、同乗者も咄嗟の場合に操作し易い自動車用ハンドルに着目し、運転者若しくは同乗者が危険を認識したときに自動車用ハンドルを強く握ることにより、自動車をいつでも確実に、且つ速やかに非常停止できるようにした自動車用ハンドル及び自動車用ハンドルを利用した自動車用安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため第1の発明の自動車用ハンドルは、中央のハブ部と、このハブ部にスポークを介して連結されて支持されるリムとを備えた自動車用ハンドルにおいて、前記リムを圧縮可能な構造とし、且つその出力が自動車を非常停止させるために使用される圧力センサーを前記リムに設けたことを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明の自動車用ハンドルは、中央のハブ部と、このハブ部にスポークを介して連結されて支持されるリムとを備えた自動車用ハンドルにおいて、前記リムが上下に2分割され、上側リムと下側リムとの間に弾性部材とその出力が自動車を非常停止させるために使用される圧力センサーとを設けたことを特徴とする。
【0008】
また、第3の発明の自動車用ハンドルは、第2の発明の自動車用ハンドルにおいて、前記上側リム又は前記下側リムのいずれか一方のリムを前記スポークと一体として固定側リムとし、この固定側リムに弾性部材を介して他方のリムを取り付けることにより他方のリムを可動側リムとしたことを特徴とする。
【0009】
また、第4の発明の自動車用ハンドルを利用した自動車用安全装置は、中央のハブ部と、このハブ部にスポークを介して連結されて支持されるリムとを備え、前記リムを圧縮可能な構造とし、且つ前記リムにその出力が自動車を非常停止させるために使用される圧力センサーが設けられた自動車用ハンドルと、この自動車用ハンドルの前記圧力センサーからの出力に基づいて自動車を停止させる非常停止装置とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、第5の発明の自動車用ハンドルを利用した自動車用安全装置は、第4の発明において、前記圧力センサーからの出力に基づく前記非常停止装置の作動レベルを複数段階に調整する調整手段が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、運転者や同乗者が操作し易い自動車用ハンドルに着目し、咄嗟の場合に自動車用ハンドルを強く握ることによりハンドルリムを圧縮して圧力センサーから非常停止用の信号を発生させ、いつでも確実に、且つ速やかに自動車を緊急停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施形態を示す自動車用ハンドルの平面図である。
【図2】図1の矢印A−Aからみた自動車用ハンドルの部分断面図である。
【図3】同じく図2の要部を拡大して示す部分断面図である。
【図4】自動車用ハンドルを利用した自動車用安全装置の電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図4に基づいて説明する。図1乃至図3において、1は自動車用ハンドルであり、この自動車用ハンドル1はステアリングシャフト8に連結される中央のハブ部7と、このハブ部7にハンドルスポーク3を介して連結されて支持される環状のハンドルリム2とを備えている。
【0014】
前記ハンドルリム2は水平方向に上下に二分割された上側リム2A及び下側リム2Bからなり、上側リム2Aはハンドルスポーク3と一体成形され、固定側リムとしている。また、前記下側リム2Bはハンドルスポーク3と分離され、上側リム2Aと下側リム2Bとの間にウレタン等からなる環状の弾性部材4が配設されて、この弾性部材4の上面が接着剤にて上側リム2Aに、またこの弾性部材4の下面が接着剤にて下側リム2Bに取り付けられている。
【0015】
このため、ハンドルリム2を運転者又は同乗者が強く握ると、弾性部材4は圧縮されて下側リム2Bが上方へと移動することになり、この下側リム2Bを可動リムとしている。また、下側リム2Bとハンドルスポーク3との間に振れ止め部材5を配設して、この振れ止め部材5を上面と内側面とを接着剤を介してハンドルスポーク3に固定し、下側リム2Bのふらつきを防止している。
【0016】
また、弾性部材4には環状の圧力センサー6が組み込まれており、即ち外側の環状の弾性部材4と内側の環状の弾性部材4との間に環状の圧力センサー6が配設される。この圧力センサー6はカーボンを含有させた導電性で弾性を有する合成樹脂、若しくはカーボンを含有させた導電性ゴム等からなる弾性のある導電体6Bと、その上下に配置された固定電極6A及び可動電極6Cとで構成されている。
【0017】
従って、ハンドルリム2を運転者又は同乗者が強く握ると、弾性部材4とともに圧力センサー6の導電体6Bが圧縮され、導電体6Bの電気抵抗が小さくなるため、ハンドルリム2に加わる圧力に応じた電気信号を固定電極6A及び可動電極6Cを介して取り出せるようにしている。
【0018】
図4は上述したような自動車用ハンドルを利用した自動車用安全装置であり、この自動車用安全装置は抵抗R1乃至R5及び圧力センサー6からなるブリッジ回路9と、このブリッジ回路9の基準点Xと比較点Yの電圧を比較するコンパレータ10と、帰還抵抗RFと、コンパレータ10のハイレベルの出力によって非常停止信号を発するブレーキ回路11と、このブレーキ回路11の非常停止信号によりブレーキ装置を作動させるブレーキ駆動源12と、前記ブリッジ回路7の基準点Xの電圧を調整する調整スイッチ(調整手段)13とからなり、コンパレータ10とブレーキ回路11とブレーキ駆動源12とで非常停止装置を構成している。
【0019】
自動車の室内(例えば、ダッシュボード等の適当な場所)に設けられた前記調整スイッチ13が運転者により弱側端子S1に切り替わっている場合には、電源電圧を12V,抵抗R1乃至R5の抵抗値をそれぞれ20KΩ、6.8KΩ、3.3KΩ、10KΩ、10KΩとし、帰還抵抗RFの抵抗値を無視するものとして、基準点Xの電圧を計算すると、(R1+R2+R3)÷(R1+R2+R3+R4)×12Vとなり、各抵抗値を入れて計算すると、(20+6.8+3.3)÷(20+6.8+3.3+10)×12Vで、9.0Vとなる。このとき、ハンドルリム2を運転者又は同乗者が強く握ると、弾性部材4とともに圧力センサー6の導電体6Bが圧縮され、導電体6Bの電気抵抗が小さくなって、圧力センサー6の導電体6Bの抵抗値が抵抗R1乃至抵抗R3の抵抗値の合計の30.1KΩ以下になると、コンパレータ10はハイレベル出力を発し、ブレーキ回路11を介してブレーキ駆動源12を作動させて、非常停止させることとなる。
【0020】
また、調整スイッチ13が中側端子S2に切り替わっている場合には、基準点Xの電圧は、(R2+R3)÷(R2+R3+R4)×12Vとなり、各抵抗値を入れて計算すると、(6.8+3.3)÷(6.8+3.3+10)×12Vで、6.0Vとなる。このとき、ハンドルリム2を運転者又は同乗者が強く握ると、弾性部材4とともに圧力センサー6の導電体6Bが圧縮され、導電体6Bの電気抵抗が小さくなって、圧力センサー6の導電体6Bの抵抗値が抵抗R2及び抵抗R3の抵抗値の合計の10.1KΩ以下になると、コンパレータ10はハイレベル出力を発し、ブレーキ回路11を介してブレーキ駆動源12を作動させて、非常停止させることとなる。
【0021】
さらにまた、調整スイッチ13が強側端子S3に切り替わっている場合には、基準点Xの電圧は、R3÷(R3+R4)×12Vとなり、各抵抗値を入れて計算すると、3.3÷(3.3+10)×12Vで、3.0Vとなる。このとき、ハンドルリム2を運転者又は同乗者が強く握ると、弾性部材4とともに圧力センサー6の導電体6Bが圧縮され、導電体6Bの電気抵抗が小さくなって、圧力センサー6の導電体6Bの抵抗値が抵抗R3の3.3KΩ以下になると、コンパレータ10はハイレベル出力を発し、ブレーキ回路11を介してブレーキ駆動源12を作動させて、非常停止させることとなる。
【0022】
すなわち、調整スイッチ13が弱側端子S1に切り替わっている場合にはハンドルリム2に比較的小さな圧力がかかることでブレーキが作動し、調整スイッチ13が強側端子S3に切り替わっている場合にはハンドルリム2に比較的大きな圧力がかかることでブレーキが作動し、調整スイッチ13が中側端子S2に切り替わっている場合には、その中間となるため、調整スイッチ13を予め運転者や同乗者に合わせて適切に設定しておくことにより、非常停止が敏感に掛りすぎたりしないように、また掛りにくくならないように調整することができる。
【0023】
本実施形態によれば、運転中は運転者が常に握っている自動車用ハンドル1のハンドルリム2に圧力センサー6を組み込み、咄嗟の場合にハンドルリム2を強く握ってハンドルリム2を圧縮させることにより圧力センサー6からの出力に基づいてコンパレータ10から非常停止用の信号が発せられ、ブレーキ回路11によってブレーキ駆動源12を作動させるようにすると共にブレーキランプを点灯させているので、運転者が危険を認識した時にはハンドルリム2を通常よりも強く握るだけで、いつでも確実に、且つ速やかに自動車を緊急停止させることができる。この場合、前記コンパレータ10からの非常停止用の信号に基づいて、燃料ポンプをアイドリング状態にし、また電気自動車においてはモーターを停止させるようにしてもよい。
【0024】
また、同乗者が危険を認識した時には、運転者に代わって同乗者がハンドルリム2を強く握ることによっても自動車を緊急停止することもできる。しかも、運転者や同乗者に合わせて調整スイッチ13を適度に調整することによって非常停止が敏感に掛りすぎたりしないように、また掛りにくくならないようにすることができる。
【0025】
この方式による緊急停止では、アクセルペダルからブレーキペダルへ踏みかえる時間が無い分、通常のフットブレーキよりも約0.1秒早く、自動車を緊急停止することができる。これにより時速60kmの走行時には約1.7m、また時速100kmの走行時には約2.8m短く自動車を停止させることができ、フットブレーキだけでは事故に至っていたケースでも、事故を回避したり、軽減することが可能になる。
【0026】
また、ハンドルリム2を上下に2分割し、上側リム2Aをハンドルスポーク3と一体にして固定側リムとし、上側リム2Aに弾性部材4を介して下側リム2Bを取り付けて下側リム2Bを可動側リムとし、ハンドルリム2を強く握ることで弾性部材4を圧縮させて下側リム2Bが上側リム2A方向へと移動することになり、圧力センサー6から非常停止のための出力が発せられるようにしているので、自動車用ハンドル1の外観や握ったときの感触を損なうことがなく、しかも、ハンドルリム2の全周にわたって圧力センサー6を配置しているので、ハンドルリム2のどの部分を圧縮させても緊急事態に対処可能である。
【0027】
前記圧力センサー6は固定電極6Aと可動電極6Cとの間にカーボンを含有させた導電性で弾性を有する合成樹脂、若しくはカーボンを含有させた導電性ゴム等からなる弾性のある導電体6Bを挟む構造としたので、通常運転時は緊急停止がかかる心配がなく、咄嗟の場合に危険を認識してハンドルリム2を強く握った時にのみ圧力センサー6から非常停止のための出力を発することができ、信頼性の高いものとなっている。また、ハンドルリム2に加わる圧力を電気抵抗に変換して電気信号として取り出すようにしているので、静電容量を変化させるもののようなものに比べ、人体への電磁波の影響も少なくできる。
【0028】
また、フットブレーキとは別にハンドルリム2を圧縮させて自動車を緊急停止させるものであるから、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み違いや不具合、制御システムの異常等があった場合にも自動車を緊急停止させ、人為的や機械的な事故を回避することができる。
【0029】
以上本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【0030】
例えば、上述した実施態様では、ハンドルリム2の上側リム2Aをハンドルスポーク3と一体として固定側リムとしたが、下側リム2Bをハンドルスポーク3と一体として固定側リムとし、上側リム2Aを可動側リムとしても良い。
【0031】
また、圧力センサー6をハンドルリム2の上側リム2Aと下側リム2Bとで挟持するようにしたが、ハンドルリム2の外周部に圧力センサーを巻き付け、さらにその外側をハンドルカバーで覆うようにしても良い。
【0032】
また、ウレタン等の弾性部材4に圧力センサー6を組み込むようにしたが、上述した実施態様のように、圧力センサー6の導電体6Bが導電性合成樹脂又は導電性ゴムからなるものでは、導電体6Bが弾性部材を兼ねることができるので、弾性部材を省略してもよい。
【0033】
また、圧力センサー6をハンドルリム2の全周にわたって配置したが、導電体を小さく分割して弾性部材中に多数配置し、ハンドルリム2のいずれかの個所を強く握った時にいずれかの導電体が上下の電極に接触して非常停止用の信号を発するようにしても良い。
【0034】
さらにまた、圧力センサー6は導電体6Bの上下に電極を配置する代わりに、上下どちらか一方に電極を平行配置しても良く、圧力に応じて電気抵抗を変化するものではなく静電容量を変化するものであっても良い。
【0035】
さらにまた、導電体6Bは配置せず、固定電極6Aと可動電極6Cが直接接触したときに、非常停止用の信号を発するようにしても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 自動車用ハンドル
2 ハンドルリム
2A 上側リム(固定側リム)
2B 下側リム(可動側リム)
3 ハンドルスポーク
4 弾性部材
6 圧力センサー
10 コンパレータ(非常停止装置)
11 ブレーキ回路(非常停止装置)
12 ブレーキ駆動源(非常停止装置)
13 調整スイッチ(調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央のハブ部と、このハブ部にスポークを介して連結されて支持されるリムとを備えた自動車用ハンドルにおいて、前記リムを圧縮可能な構造とし、且つその出力が自動車を非常停止させるために使用される圧力センサーを前記リムに設けたことを特徴とする自動車用ハンドル。
【請求項2】
中央のハブ部と、このハブ部にスポークを介して連結されて支持されるリムとを備えた自動車用ハンドルにおいて、前記リムが上下に2分割され、上側リムと下側リムとの間に弾性部材とその出力が自動車を非常停止させるために使用される圧力センサーとを設けたことを特徴とする自動車用ハンドル。
【請求項3】
前記上側リム又は前記下側リムのいずれか一方のリムを前記スポークと一体として固定側リムとし、この固定側リムに弾性部材を介して他方のリムを取り付けることにより他方のリムを可動側リムとしたことを特徴とする請求項2に記載の自動車用ハンドル。
【請求項4】
中央のハブ部と、このハブ部にスポークを介して連結されて支持されるリムとを備え、前記リムを圧縮可能な構造とし、且つ前記リムにその出力が自動車を非常停止させるために使用される圧力センサーが設けられた自動車用ハンドルと、この自動車用ハンドルの前記圧力センサーからの出力に基づいて自動車を停止させる非常停止装置とを備えたことを特徴とする自動車用ハンドルを利用した自動車用安全装置。
【請求項5】
前記圧力センサーからの出力に基づく前記非常停止装置の作動レベルを複数段階に調整する調整手段が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の自動車用ハンドルを利用した自動車用安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−240908(P2011−240908A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126270(P2010−126270)
【出願日】平成22年5月15日(2010.5.15)
【出願人】(501458232)
【Fターム(参考)】