説明

自動車用ヘッドレストの抜け止め機構

【課題】 取付けも簡単であって、安易に引き抜いたり、故意に引き抜くことが防止でき、しかも必要時には特別な操作において引き抜きが可能となる自動車用ヘッドレストの抜け止め機構を提供する。
【解決手段】 ヘッドレストを支持するヘッドレストステーが、ヘッドレストブッシュに上下調整可能に挿入されて支持されており、ヘッドレストステーの下方に抜け止め機構が設けられる。抜け止め機構は、ヘッドレストステーの下方に設けられたスリットから出入する回転ストッパが、姿勢保持手段でスリットから外出するように保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用ヘッドレストの抜け止め機構に関し、特に、高さ調整機構を備えたヘッドレストがシートバックから容易に抜けることがないような自動車用ヘッドレストの抜け止め機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車用シートには衝突等の事故時に、乗員の安全性を向上させ保護する目的としてヘッドレストが取り付けられているのが一般的である。このヘッドレストは、乗員の体格や好みにより上下位置を任意の位置に調整できるように高さ調整機構を備えている。一般的には、ヘッドレストに2本のヘッドレストステーが固着され、このヘッドレストステーがシートバック側に固設された2個のヘッドレストブッシュにそれぞれ挿入されて支持されてなり、高さ調整機構は、一方のヘッドレストブッシュに設けられ、他方はフリーの状態になっている。
自動車用ヘッドレストは、衝突(追突も含む)事故時の際に、シートに着座している乗員の頭がその衝撃によって後方へ傾きすぎるのを防止するが、その時ヘッドレストには乗員の頭の衝撃力が荷重となってヘッドレストに押し下げようとする力が作用する。従って、自動車用ヘッドレストの高さ調整機構は、上方への移動はヘッドレストに引き抜く力を作用させると可能となり、任意の高さに停止でき、下方への移動はロックされており、ロックを解除しなければ移動できないように構成されているのが通常である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
即ち、ヘッドレストのヘッドレストステーが、シートバック側に固設されたヘッドレストブッシュに上下調整可能に挿入されて支持されてなり、ヘッドレストブッシュのシートバック上端部位置には、弾発力により進退するロック部材が設けられてヘッドレストステーに当接され、ヘッドレストステーに複数の高さ調整用ノッチが所定間隔で設けられ、ロック部材がノッチに係合することにおいて所定の高さ位置に保持される。この時、前記高さ調整用ノッチの形状が、ロック部材との関係においてヘッドレストステーの上方への移動は許容するが、下方への移動は阻止する形状となっているものである。
【0004】
図9および図10は、その一例を示す一部破断の分解斜視図および要部の断面斜視図であり、ヘッドレストのヘッドレストステー3は、筒状のヘッドレストブッシュ6に挿入して支持されており、高さ調整機構7は、ヘッドレストブッシュ6のシートバック上端部位置に設けられる。この高さ調整機構7は、ヘッドレストブッシュ6にロックプレート(ロック部材)8がヘッドレストステー3と直交する方向に進退自在に取り付けられ、ヘッドレストステー3は、このロックプレート8を貫通している。このロックプレート8の一部8aは、ばね9の弾発力により貫通したヘッドレストステー3に押圧当接されている。実際にはロックプレート8およびばね9は、ケース10に収納され、ロックプレート8の操作部8bだけが外出している。ヘッドレストステー3には、複数の高さ調整用ノッチ4が所定間隔で設けられており、前記ロックプレート8がばね9の弾発力でノッチ4に係合することによってロックされる。この高さ調整用ノッチ4は、図9および図10に示すようにヘッドレストステー3の中心に向かう水平面4aと、この水平面4aの最深部から下方に徐々に拡径する傾斜面4bとから形成されている。
【0005】
このような構成では、ヘッドレストを上方に引っ張る(引き抜く)ことによりロックプレート8のヘッドレストステー3との当接部8aが、ノッチ4の傾斜面4bの作用によりばね9の弾発力(ばね力)に抗してノッチ4から外れヘッドレストステー3が上方に移動可能であり、ヘッドレストの高さが調整でき、逆に、ヘッドレストを下方に押圧したときは、ロックプレート8がノッチ4の水平面4aに係合した状態でノッチ4から外れない。従って、ロックプレート8の操作部8bをばね9に抗して押してノッチ4から外すことでヘッドレストステー3の下方への移動が可能となり、ヘッドレストが下方に調整できる。
【0006】
このような従来の高さ調整機構を備えたヘッドレストは、前記構成から明らかな通り簡単にシートから引き抜くことができるため、安易に、または故意にヘッドレストを抜いてしまい、衝突時の事故時に、乗員の安全性を確保できない課題がある。また、このようなヘッドレストは、米国規格FMVSS 202の規格にも応じられない。
そこで、このような課題を解決し、米国規格FMVSS 202にも対応するものとして、ヘッドレストの抜け止め機構を備えたヘッドレストが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平4−193109号公報
【特許文献2】特開2003−259935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来のヘッドレストの抜け止め機構は、ヘッドレストの抜けるのは防止できるが、シートから抜くことができない課題がある。しかし、実際には、清掃、メンテナンス等によりシートからヘッドレストを抜く必要性もある。
また、従来のヘッドレストは、ヘッドレストブッシュやヘッドレストステーに、特別なヘッドレスト抜け止め機構を設ける必要があり、組立性も悪いという課題もある。
さらに、シートを倒した状態で事故の場合は、ヘッドレストが勢いよく飛び出そうとする力が作用するが、その場合でも抜け止めが確実に行なわれることが必要となるが、例えば、前記従来例では、このような場合にヘッドレストの抜けるスピードが速いことにより、ロック部材が係合用凹部に係合する前に係合凹部を通過してしまい、抜け止めが作用せず、ヘッドレストが抜けてしまう課題もある。
この発明は、このような課題に鑑み提案されたものであり、その目的は、取付けも簡単であって、安易に引き抜いたり故意に引き抜くことが防止でき、しかも必要時には特別な操作において引き抜きが可能となる自動車用ヘッドレストの抜け止め機構の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、この発明の自動車用ヘッドレストの抜け止め機構は、ヘッドレストを支持するヘッドレストステーが、ヘッドレストブッシュに上下調整可能に挿入されて支持されてなる自動車用ヘッドレストの抜け止め機構であって、ヘッドレストステーの下方にはスリットが設けられ、ヘッドレストステー内の該スリット位置に、回転ストッパが回動することによってスリットより出入可能に枢着されており、該回転ストッパは、ヘッドレストステーのスリットより外出する姿勢保持手段を備え、通常は回転ストッパ自身でスリットより外出した姿勢を保持して出入可能となっていることを特徴とする。
前記姿勢保持手段は、ヘッドレストステーの回転ストッパ位置の内部に設けられる、回転ストッパを常にヘッドレストステーのスリットより外出させるように付勢する弾性部材、および回転ストッパの重量差により常にスリットより外出する位置に復帰するように枢着され、通常は回転ストッパ自身でスリットより外出する位置を保持する構成を挙げることができる。
【0009】
ヘッドレストステー内の回転ストッパは、回動することによってスリットから出入可能であり、この回転ストッパは、姿勢保持手段で常にスリットより外出するように構成されているので、ヘッドレストステーをヘッドレストブッシュに挿通するときは、回転ストッパを姿勢保持手段に抗してヘッドレストステー内に位置させて挿通でき、挿通してこのヘッドレストステーの回転ストッパの位置がヘッドレストブッシュの下端より抜け出ると、回転ストッパは姿勢保持手段によりスリットより外出するので、ヘッドレストを引き抜こうとしても、ヘッドレストステーの該回転ストッパがヘッドレストブッシュの下端に係止して抜け止めされるため、ヘッドレストを引き抜くことができない。従って、ヘッドレストは、この抜け止め機構において抜け止めされるためヘッドレストが常に確保され、衝突時等において乗員の安全が確保される。また、抜け止め機構は、シートバック内に位置するため、ヘッドレストを安易に、あるいは故意に引き抜くことを防止できる。しかも、清掃、メンテナンス等によりシートからヘッドレストを抜く必要が生じた時は、シートバックを開放し、回転ストッパを弾性部材に抗して回動させヘッドレストステーのスリット内に引っ込めると、ヘッドレストステーをヘッドレストブッシュより引き抜き可能となるので、ヘッドレストを引き抜くことができる。
【0010】
姿勢保持手段が弾性部材では、回転ストッパは弾性部材で常にスリットより外出するように付勢されているので、ヘッドレストステーをヘッドレストブッシュに挿通するときは、回転ストッパを弾性部材の付勢力(弾性力)に抗してヘッドレストステー内に位置させて挿通でき、挿通してこのヘッドレストステーの回転ストッパの位置がヘッドレストブッシュの下端より抜け出ると、回転ストッパは弾性部材の付勢力(弾性力)によりスリットより外出する。
姿勢保持手段が、回転ストッパの重量差により常にスリットより外出する位置に復帰し、通常は回転ストッパ自身でスリットより外出する位置を保持する構成では、回動は自由であるので、ヘッドレストステーをヘッドレストブッシュに挿通するときは、回転ストッパを手動で回転させヘッドレストステー内に位置させて挿通でき、挿通してこのヘッドレストステーの回転ストッパの位置がヘッドレストブッシュの下端より抜け出ると、回転ストッパは重量差により自身で復帰しスリットより外出する。
【0011】
また、この発明の前記弾性部材としては、合成樹脂部材、ゴム部材またはばねを挙げることができる。
合成樹脂部材、ゴム部材は、ヘッドレストステー内に充填することによって設けることができ、合成樹脂部材として、弾性力およびヘッドレストステーの易装着性を考慮するとポリウレタンの発泡体が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
この発明の自動車用ヘッドレストの抜け止め機構によれば、次のような効果を奏する。
(1)ヘッドレストは、抜け止め機構において抜け止めされるため、ヘッドレストが常に確保され、衝突時等において乗員の安全が確保される。
(2)抜け止め機構は、シートバック内に位置するため、ヘッドレストを安易に、あるいは故意に引き抜くことを防止でき、これにより乗員の安全が確保できる。しかし、清掃、メンテナンス等によりシートからヘッドレストを抜く必要が生じた時は、シートバックを開放することで、回転ストッパの係止を解除することができ、ヘッドレストを引き抜くことができる。
(3)ヘッドレストステーをヘッドレストに挿通(挿入)するだけで抜け止め効果が得られ、ヘッドレストの装着操作が容易である。
(4)抜け止め機構の構造が簡単であり、また、従来から使用するヘッドレストステーに容易に設けることができる。従って、従来から使用するヘッドレストステーが使用可能となり、安価に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の自動車用ヘッドレストの抜け止め機構の最良の形態は、ヘッドレストを支持するヘッドレストステーが、ヘッドレストブッシュに上下調整可能に挿入されて支持されており、ヘッドレストステーの下方にはスリットが設けられ、ヘッドレストステー内の該スリット位置に、回転ストッパが回動することによってスリットより出入可能に枢着されており、ヘッドレストステーの該回転ストッパ位置の内部には、姿勢保持手段として、該回転ストッパを常にスリットより外出させるように付勢する弾性部材が設けられている。
従って、ヘッドレストステー内の回転ストッパは、回動することによってスリットから出入可能であり、この回転ストッパは姿勢保持手段としての弾性部材で常にスリットより外出するように付勢されているので、ヘッドレストステーをヘッドレストブッシュに挿通(挿入)するときは、回転ストッパを弾性部材の付勢力(弾性力)に抗してヘッドレストステー内に位置させて挿通でき、挿通してこのヘッドレストステーの回転ストッパの位置がヘッドレストブッシュの下端より抜け出ると、回転ストッパは弾性部材の付勢力(弾性力)によりスリットより外出するので、ヘッドレストを引き抜こうとしても、ヘッドレストステーの該回転ストッパがヘッドレストブッシュの下端に係止して抜け止めされるため、ヘッドレストを引き抜くことができない。
【0014】
以下、この発明をより詳細に説明するために、図面に示す実施の形態についてこれを説明する。図1はこの発明の実施の形態を示す斜視図、図2はこの発明の実施の形態を示すヘッドレストを取り外した状態の斜視図、図3はこの発明の実施の形態を示す要部の一部破断斜視図、図4はこの発明の実施の形態を示す分解斜視図であり、前記図9および図10に示す従来例と同一構成要素には同一符号を付して説明する。
【0015】
ヘッドレスト2は、ヘッドレスト2に取り付けられて支持するヘッドレストステー3a、3bが、シートバック1側に固設された筒状のヘッドレストブッシュ6a、6bに挿入されて支持されている。ヘッドレストステー3a、3bは左右に2本が設けられており、その一方3aの下方に抜け止め機構11が設けられている。ヘッドレストブッシュ6a、6bは図4に示すようにシートバック1のシートバックフレーム15に固定して設けられる。具体的には、シートバックフレーム15に筒状の取付部材16が固着され、この取付部材16に挿入されて固定されている。ヘッドレストブッシュ6a、6bの一方のヘッドレストブッシュ6aには、上方に高さ調整機構7が設けられている。ヘッドレストステー3a、3bは、このヘッドレストブッシュ6a、6bに挿入され、高さ調整機構7によりヘッドレストステー3aを任意の位置に保持することによってヘッドレスト2を任意の高さに停止(保持)できる。また、ヘッドレストブッシュ6aに挿入されたヘッドレストステー3aは、下方の抜け止め機構11によって抜け止めされ、これによりヘッドレスト2が抜け止めされる。
本例では高さ調整機構7が設けられているヘッドレストブッシュ6aに挿入されているヘッドレストステー3aの下方に抜け止め機構11設けられているが、これは限定されるものではなく、例えば、ヘッドレストブッシュ6bに挿入されているヘッドレストステー3bの下方に設けてもよい。いずれにしても抜け止め機構11が設けられるヘッドレストステー3aまたは3bは、ヘッドレストブッシュ6a、6bに挿入したとき、ヘッドレストブッシュ6a、6bを貫通し下方がヘッドレストブッシュ6a、6bより突出する長さとなっており、抜け止め機構11はこの突出した部分に設けられる。しかも、高さ調整機構7により高さの調整できる範囲の長さをとった下方となる。即ち、高さ調整機構7でヘッドレスト2の高さは自由に調整は可能であるが、その調整範囲を越えて引き抜こうとすると抜け止め機構11が作用するようにするためである。
【0016】
高さ調整機構7はヘッドレストブッシュ6aのシートバック1の上端部位置に設けられており、図9および図10に示す構成と同様である。重複するが図3において説明する。
即ち、高さ調整機構7は、図3に示すようにヘッドレストブッシュ6aにロック部材としてのロックプレート8がヘッドレストステー3aと直交する方向に進退自在に取り付けられ、ヘッドレストステー3aは、このロックプレート8を貫通してヘッドレストブッシュ6aに挿入されている。このヘッドレストステー3aがロックプレート8を貫通している部分は、ヘッドレストステー3aとロックプレート8との間にロックプレート8が移動(進退)できる間隔を有しており、ロックプレート8の一部8aが、ばね9の弾発力により貫通したヘッドレストステー3aに押圧当接されている。ロックプレート8およびばね9はケース10に収納され、ロックプレート8の操作部8bだけが外出しており、この操作部8bを押すことによってロック解除ができるようになっている。ヘッドレストステー3aには、複数の高さ調整用ノッチ4が所定間隔で設けられている。高さ調整用ノッチ4は、ヘッドレストステー3aの中心に向かう水平面4aと、この水平面4aの最深部から下方に徐々に拡径する傾斜面4bとから形成されている。
【0017】
従って、ヘッドレスト2を上方に引っ張る(引き抜く)ことによりロックプレート8のヘッドレストステー3aとの当接部8aが、高さ調整用ノッチ4の傾斜面4bの作用によりばね12の弾発力(ばね力)に抗してノッチ4から外れヘッドレストステー3aが上方に移動可能であり、ヘッドレスト2の高さが調整でき、下方への移動はノッチ4の水平面4aがロックプレート8に係合してロックされ、その位置で停止する。逆に、ヘッドレスト2を下方に押し下げたときは、ロックプレート8がノッチ4の水平面4aに係合した状態でノッチ4から外れない。そこで、ロックプレート8の操作部8bを押すとロックが解除され、ヘッドレストステー3aの下方への移動が可能となり、ヘッドレスト2が下方に調整できる。
【0018】
前記高さ調整機構7は、ヘッドレストブッシュ6aの上端に設けられ、シートバック1の上端部外側に位置し、ケース10が設けられている。前記抜け止め機構11は、このヘッドレストブッシュ6aに挿入(挿通)されたヘッドレストステー3aの下方に設けられており、シートバック1の内部に位置する。
この抜け止め機構11は、ヘッドレストステー3aの下端側にスリット5が設けられ、ヘッドレストステー3a内の該スリット5位置に回転ストッパ12が回動することによってスリット5より出入(出没)可能に枢着13されており、該回転ストッパ12が位置するヘッドレストステー3aの内部には、姿勢保持手段として、該回転ストッパ12を常にスリット5より外出させるように付勢する弾性部材14が設けられている。
【0019】
図5乃至図8において更に詳しく説明する。図5は抜け止め機構を示す一部破断の斜視図、図6は抜け止め機構の分解斜視図、図7(a)は抜け止め機構の回転ストッパ係止時の状態を示す正面図、(b)は(a)のA−A線断面図、図8(a)は抜け止め機構の回転ストッパ解除時の正面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【0020】
ヘッドレストステー3aはヘッドレストブッシュ6aに挿通したとき、図3および図7(a)(b)に示すように下方がヘッドレストブッシュ6aの下端より突出する長さになっており、抜け止め機構11はこのヘッドレストステー3aのヘッドレストブッシュ6aより下方に突出した部分(以下、「ヘッドレストステー3aの下方」と称す)に設けられる。しかも、高さ調整機構7により高さの調整できる範囲の長さをとった下方となる。即ち、高さ調整機構7でヘッドレスト2の高さは自由に調整は可能であるが、その調整範囲を越えて引き抜こうとすると抜け止め機構11が作用するようにするためである。
このヘッドレストステー3aの下方には、下端より一定長のスリット5、5が縦方向(軸方向)に設けられている。本例では、スリット5、5が対向(円周方向に180°間隔)して設けられている。このスリット5、5が設けられているヘッドレストステー3aの内部には、回転ストッパ12が枢軸13により回転自在に枢着され、回動することによってスリット5、5よりヘッドレストステー3aの外方に外出するようになっている。本例では、回転ストッパ12としてストッパプレートを示している。このストッパプレート12は、ヘッドレストステー3aの外径長さより長く形成され、ストッパプレート12が回動すると両端がスリット5、5から突出する構成となっている。
【0021】
この回転ストッパとしてのストッパプレート12が位置するヘッドレストステー3aの内部には、姿勢保持手段として該ストッパプレート12を常にスリット5、5より外出させるように回動付勢する弾性部材14が設けられている。この弾性部材14としては、合成樹脂部材、ゴム部材およびばねを例示できる。本例では弾性部材14としてポリウレタン発泡体を示している。このポリウレタン発泡体14によれば、図6に示すようにヘッドレストステー3aの下端開口より挿入するだけで装着できるので組み付けが容易となり好ましい。
弾性部材14は、ヘッドレストステー3aをヘッドレストブッシュ6aに挿入(挿通)させるときは、回転ストッパ12を弾性力(付勢力)に抗して許容しヘッドレストステー3a内に位置させ挿通することができ、挿通してヘッドレストステー3aの回転ストッパ12の位置がヘッドレストブッシュ6aの下端より抜け出ると、回転ストッパ12を弾性力(付勢力)でスリット5より外出させるものであるので、その性能を備えるものであれば、特に制限はないが、構造が簡単で製造が容易であり、組み付け性もよく、安価に提供できる等の点を考慮すると、樹脂弾性部材およびゴム弾性部材が好ましい。
【0022】
この抜け止め機構11によれば、ヘッドレストステー3aをヘッドレストブッシュ6aに挿入させるときは、回転ストッパとしてのストッパプレート12に回動させる外力を加えると図8(a)(b)に示すように弾性部材14の弾性力に抗してストッパプレート12をヘッドレストステー3a内に位置させることができ、この図8(b)に示す状態でヘッドレストブッシュ6a内に挿入すると、ストッパプレート12はスリット5、5より外出すようとするが、ヘッドレストブッシュ6aの内周壁面で阻止され、そのままの状態で挿通することができ、挿通してヘッドレストステー3aのストッパプレート12の位置がヘッドレストブッシュ6aの下端より抜け出るとヘッドレストブッシュ6aの内周壁面での阻止が解除されるので、ストッパプレート12は弾性部材14の弾性力(付勢力)でスリット5、5より外出する。従って、ヘッドレストステー3aを引き抜こうとしても、図7(b)に示すようにストッパプレート12がヘッドレストブッシュ6aの下端に係止されて引き抜くことが阻止される。これによりヘッドレストステー3aをヘッドレストブッシュ6aに挿入するだけで抜け止め効果が得られ、ヘッドレストの抜け止めを図ることができる。また、ヘッドレストの装着も容易である。
【0023】
また、姿勢保持手段は、前記実施の形態で示した弾性部材14だけでなく、回転ストッパ12の場所により重量を異にさせ、重量差(偏心して枢着する場合も含む)により自分で常にスリット5より外出する位置に復帰し、通常は回転ストッパ自身でスリット5より外出する位置を保持する構成であってもよい。この構成では、弾性部材14を設ける必要がなく、部品点数が少なくて済む。この構成の姿勢保持手段でも、前記実施の形態と同様の作用、効果を奏する。
【0024】
なお、前記実施の形態は、この発明を制限するものではなく、この発明は要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が許容される。例えば、回転ストッパも、ストッパプレートだけでなく、回動することによってスリットより出入して係止する機能を備えるものであれば、その構成を問うものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態を示すヘッドレストを取り外した状態の斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態を示す要部の一部破断斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図5】抜け止め機構を示す一部破断の斜視図である。
【図6】抜け止め機構の分解斜視図である。
【図7】(a)は抜け止め機構の回転ストッパ係止時の状態を示す正面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図8】(a)は抜け止め機構の回転ストッパ解除時の正面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図9】従来の高さ調整機構を示す一部破断の分解斜視図である。
【図10】従来の高さ調整機構を示す要部の断面斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 シートバック
2 ヘッドレスト
3a、3b ヘッドレストステー
4 高さ調整用ノッチ
5 スリット
6a、6b ヘッドレストブッシュ
7 高さ調整機構
8 ロックプレート
9 ばね
10 ケース
11 抜け止め機構
12 回転ストッパ(ストッパプレート)
13 枢軸
14 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストを支持するヘッドレストステーが、ヘッドレストブッシュに上下調整可能に挿入されて支持されてなる自動車用ヘッドレストの抜け止め機構であって、ヘッドレストステーの下方にはスリットが設けられ、ヘッドレストステー内の該スリット位置に、回転ストッパが回動することによってスリットより出入可能に枢着されており、該回転ストッパは、ヘッドレストステーのスリットより外出する姿勢保持手段を備え、通常はスリットより外出した姿勢を保持して出入可能となっていることを特徴とする自動車用ヘッドレストの抜け止め機構。
【請求項2】
前記姿勢保持手段は、ヘッドレストステーの回転ストッパ位置の内部に設けられる、回転ストッパを常にヘッドレストステーのスリットより外出させるように付勢する弾性部材であることを特徴とする請求項1記載の自動車用ヘッドレストの抜け止め機構。
【請求項3】
前記姿勢保持手段は、回転ストッパの重量差により常にスリットより外出する位置に復帰し、通常は回転ストッパ自身でスリットより外出する位置を保持する構成であることを特徴とする請求項1記載の自動車用ヘッドレストの抜け止め機構
【請求項4】
前記弾性部材は、合成樹脂部材、ゴム部材またはばねである請求項2記載の自動車用ヘッドレストの抜け止め機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−346342(P2006−346342A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179510(P2005−179510)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】