説明

自動車用モール

【課題】複雑な製造装置を用いることなく安価に製造でき、しかもルーフモール部とウインドモール部との境界付近において断面形状徐変部分を極力短くあるいは無くすことができるようにする。
【解決手段】頭部21と、頭部の裏側に頭部の幅よりも小の幅で突設された柱状の本体部25と、前記本体部の両側に突設され、前記頭部との間でウインドガラスの嵌合可能な溝30a,30bを構成する突部27a,27bと、前記本体部両側の突部の縁から突設された柔軟なリップ31a,31bとを備える押出成形品のモール素材10Aからなり、前記モール素材におけるウインドモール部とされる部分12Aでは一側のリップ31aが除去されると共に他側の前記リップ31bが非除去とされ、ルーフモール部とされる部分11Aでは両側のリップ31a,31bが非除去とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフモール部とウインドモール部が一連に成形された自動車用モールに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の自動車においては、ルーフサイドの溝部に装着されるルーフモールと、ウインドガラスの側部に装着されるウインドモールとの境界を見栄えよくするためなどの理由から、図9に示すように、ルーフモール部51とウインドモール部52を一連に形成した自動車用モール50を用いることが提案されている。図9における符号Rはルーフ、R1はルーフサイドの溝部、Gはウインドガラスである。
【0003】
しかし、ルーフモール部51とウインドモール部52が一連に形成された従来のモール50は、公知の可変断面押出工法によってルーフモール部51とウインドモール部52の断面形状を異ならせて押出成形されたものであり、成形装置が高いことから製品コストが嵩む問題がある。さらに、可変断面押出工法によって押出成形されたモール50は、ルーフモール部51とウインドモール部52間に、本来ならば不要な、あるいは極力短くすべき断面形状徐変部分が、可変断面押出工法の特質により所定長さで存在するため、ルーフモール部51とウインドモール部52の境界付近で車体の形状変化に正確に追従し難い問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開平9−24778号公報
【特許文献2】特開2002−274282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、複雑な製造装置を用いることなく安価に製造でき、しかもルーフモール部とウインドモール部との境界付近において断面形状の徐変部を極力短くあるいは無くすことができ、それによりルーフモール部とウインドモール部の境界付近で車体の形状変化に正確に追従することができる自動車用モールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、自動車のルーフサイドの溝部に装着されるルーフモール部とフロント又はリアの少なくとも一方のウインドガラスの側部に装着されるウインドモール部が一連に形成された自動車用モールにおいて、頭部と、前記頭部の裏側に前記頭部の幅よりも小の幅で突設された柱状の本体部と、前記本体部の両側に突設され、前記頭部との間でウインドガラスの嵌合可能な溝を構成する突部と、前記本体部両側又は前記突部両側から突設されたリップとを備える押出成形品のモール素材からなり、前記モール素材における前記ウインドモール部とされる部分では一側の前記リップが除去されることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ウインドモール部のリップ非除去側には、前記溝に基部が固定された第2リップを前記頭部と前記リップ間に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、一定断面形状で押出成形されたモール素材において、ウインドモール部とされる部分について一側のリップを除去するだけでよいため、複雑な製造装置が不要であり、モールを安価にすることができる。しかも、一側のリップの除去によって断面形状を変化させるため、可変断面押出工法のようにルーフモール部とウインドモール部間において断面形状の徐変部が長くなることがなく、ルーフモール部とウインドモール部の境界付近で車体の形状変化に正確に追従することができるようになる。
【0009】
請求項2の発明によれば、ウインドモール部のリップ非除去側には、前記溝に基部が固定された第2リップを前記頭部と前記リップ間に備えるため、ウインドモール部のリップ除去側の溝にウインドガラスが嵌着されて、リップ非除去側が窓枠の側壁側とされて車体にモールが装着された際、ウインドモール部は一側がウインドガラスの嵌着により固定され、他側がリップと第2リップからなる2段のリップと窓枠の側壁との当接により固定されることから、ウインドモール部が確実に位置固定され、走行時におけるモールの振動等による異音を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態に係る自動車用モールの一方向側の斜視図、図2は同実施形態に係る自動車用モールの他方向側の斜視図、図3は図1及び図2の3A−3A及び3B−3B断面図、図4は本発明におけるモール素材の一実施形態の斜視図、図5は図4の5−5断面図、図6は本発明の一実施形態に係る自動車用モールが装着された自動車の部分斜視図、図7は図6の7A−7A及び7B−7B断面図である。
【0011】
図1乃至図3に示す本発明の一実施形態に係る自動車用モール10は、図6及び図7に示すように自動車のルーフサイドに形成されている溝R1に装着されるルーフモール部11と、ウインドガラスGの側部に装着されて窓枠Fに組み付けられるウインドモール部12が一連に形成されたもので、図4及び図5に示すモール素材10Aから構成されている。
【0012】
前記モール素材10Aは、一定断面形状をした合成樹脂の押出成形品からなり、頭部21と、前記頭部21の裏側に前記頭部21の幅Wよりも小の幅W1で突設された柱状の本体部25と、前記本体部25の両側に前記頭部21から離して突設され、前記頭部21との間でウインドガラスの嵌合可能な溝30a,30bを構成する突部27a,27bと、前記本体部25の両側における前記突部27a,27bの縁から突設された柔軟なリップ31a,31bとを備える。なお、前記リップ31a,31bは、前記本体部25から形成されていてもよく、その場合の例については後述する。
【0013】
前記頭部21は、前記モール10の装飾部を構成し、前記ルーフの溝R1に蓋をすることができ、また前記ウインドガラスGの側部と窓枠Fの間の隙間に蓋をすることのできる幅Wからなる。なお、図示の例の頭部21は、耐候性及び耐傷付き性の良好な樹脂からなる表面層22が積層されている。前記表面層22は、前記モール素材10Aの押出成形時に頭部21と接着性の良好な樹脂とされる。例えば、前記頭部21をTPOとアイオノマーのポリマーアロイとし、前記表面層22をアイオノマーとする例を挙げる。なお、前記表面層22は設けられないこともある。
【0014】
前記本体部25は、前記頭部21を支持することが可能な剛性を有する材質からなり、図示の例では前記頭部21と一体にかつ同一材質で構成されている。また、前記本体部25には、前記モール10の伸縮を押さえるための芯材26が埋設されている。なお、前記芯材26は、鉄芯などの金属製のものが一般的であり、また埋設位置は前記頭部21とされることもある。
【0015】
前記突部27a,27bは、前記頭部21において前記本体部25の両側へ突出している張り出し部23a,23bの裏面から、前記ウインドガラスGの側部の厚みと略等しい距離離して前記本体部25の両側に突設されている。前記突部27a,27bは、前記本体部25の側面から段状に突出形成され、前記頭部21の張り出し部23a,23bとの間に前記ウインドガラスGの側部が嵌着可能な溝30a,30bを構成する。また、前記突部27a,27bにおける前記本体部25の両側への突出程度は前記頭部21における張り出し部23a,23bよりも小が好ましい。前記突部27a,27bの材質は、後述の窓枠Fにおける接着剤S(図7の7B−7B断面図に示す)との接着性が良好な材質が好ましい。例えば接着剤Sがウレタン系の場合、前記突部27a,27bをアイオノマーとする例を挙げる。
【0016】
前記リップ31a,31bは、前記モール10のルーフモール部11において、前記本体部25が前記ルーフの溝R1に挿入された際に前記溝R1の側壁R1a,R1bに前記リップ31a,31bの先端側が当接可能であって、かつウインドモール部12がウインドガラスGの側部に装着されて窓枠Fに組み付けられた際に、前記リップ31aまたはリップ31bの先端側が窓枠Fの側壁F1と当接することが可能な長さとされる。前記リップ31a,31bの材質は、柔軟性を有すると共に圧縮永久歪みの小さいものが好ましい。また、前記突部27a,27bを構成する合成樹脂が窓枠Fにおける接着剤S(ウレタン系)に対して接着の良好なアイオノマーからなる場合は、前記突部27a,27bにTPOとアイオノマーのポリマーアロイの層(図示せず)を介して、TPOからなるリップ31a,31bが形成される。これは、前記突部27a,27bを構成するアイオノマーと前記リップ31a,31bを構成するTPOは、押出成形時に互いの接着性が低いため、アイオノマーとTPOの双方に対して接着性の良好なTPOとアイオノマーのポリマーアロイからなる層を、前記突部27a,27bと前記リップ31a,31b間に介在させることにより、前記リップ31a,31bと前記突部27a,27bの確実な一体化を実現させたのである。また、前記突部27a,27bをアイオノマーとする場合、前記リップ31a,31b全体を、前記突部27a,27bのアイオノマーと押出成形時の接着性が良好なTPOとアイオノマーのポリマーアロイとしてもよい。
【0017】
前記モール素材10Aにおいて、前記モール10のウインドモール部12とされる部分12Aについては、一側の前記リップ31aが切断等により除去されると共に他側の前記リップ31bが非除去とされる。一方、前記ルーフモール部11とされる部分11Aについては、両側の前記リップ31a,31bが非除去とされる。前記リップ31aの除去される側は、前記ウインドガラスGの側部が嵌着される側とされる。そして、前記突部27a,27bが、窓枠Fにおける接着剤S(ウレタン系)に対し接着の良好な合成樹脂(例えばアイオノマー)からなる場合には、前記リップ31aを除去する際に、前記突部27aの一部(リップ31a側の部分)を同時に除去すれば、前記接着剤Sに対し接着性の良好な合成樹脂を、リップ除去面28aでも露出させることができ、前記突部27と前記接着剤Sの接着性を高めることができる。前記リップ31aを前記突部27aの一部と共に除去する際の切断位置の例を図5の切断線C−Cで示す。
【0018】
一方、前記リップ31bが非除去とされて残される側は、前記窓枠Fの側壁F1と対向する側とされる。さらに、前記ウインドモール部とされる部分12A、すなわち図1乃至図3に示す前記モール10のウインドモール部12において、前記リップ31bが除去されることなく残されているリップ非除去側には、前記溝30bに第2リップ41の基部42が固定されることにより、第2リップ41が前記頭部21と前記リップ31bの間に設けられる。前記第2リップ41は柔軟な材質からなり、前記基部42が接着テープや接着剤などによって前記溝30bに固定される。前記第2リップ41は、前記ウインドガラスGの側部に前記モール10のウインドモール部12が装着されて窓枠Fに組み付けられた際に、前記第2リップ41の先端側43が窓枠Fの側壁F1と当接可能な長さとされる。図示の例の第2リップ41は、一定断面形状の押出品からなる。なお、前記モール素材10Aにおいてウインドモール部とされる部分12Aに関し、非除去側の前記リップ31bは、窓枠Fの構造等に応じて適宜部分的に除去されてもよい。また、前記ルーフモール部とされる部分11Aに関し、非除去とされる前記リップ31a,31bは、ルーフモール部における端末の装飾性やルーフRの溝R1への係止構造等に応じて、適宜部分的に除去されてもよい。
【0019】
前記モール素材10Aのウインドモールモール部とされる部分12Aにおいて一側のリップ31aが除去され、反対側では前記リップ31bが非除去とされて前記第2リップ41が固定され、前記ルーフモール部とされる部分11Aにおいては前記リップ31a,31bが非除去とされた構成からなる図1乃至図3に示すモール10は、図6及び図7に示すように、自動車のピラーPに沿ってウインドガラスGの側部からルーフRの溝R1間に渡って連続して装着される。
【0020】
前記モール10が自動車に装着される際、前記ウインドモール部12は、前記リップ31aの除去された側の溝30aに、前記ウインドガラスGの側部が嵌着されることによってウインドガラスGの側部に装着される。その後、前記ウインドモール部12は、前記ウインドガラスGと共に前記窓枠F内に押し込まれることによって窓枠Fに組み付けられ、その際、前記窓枠Fの底壁F2とウインドガラスGの側部間に配設されている接着剤Sによって、前記ウインドガラスGと共に窓枠Fに固定される。また、前記ウインドガラスGと共にウインドモール部12が窓枠Fへ組み付けられる際、前記接着剤Sは、前記ウインドガラスGと窓枠Fの底壁F2間で押し潰されて広がり、前記ウインドモール部12におけるウインドガラス側の突部27aの表面等に密着して前記ウインドモール部12の窓枠Fへの固定に寄与する。しかも、前記ウインドモール部12では、前記リップ31aを除去する際に前記突部27aの一部も同時に除去することにより、前記接着剤Sと接着性の良好な合成樹脂(前記リップ除去面28a)を前記接着剤Sとの接着面で露出させることができると共に、前記接着剤Sと接着性の良好な合成樹脂との接着面積を増大させることができるので、前記接着剤SがウインドガラスGの側部の内面及び前記突部27a等に確実に接着することができ、前記ウインドガラスGとウインドモール部12を前記窓枠Fに強固に接着固定することができる。
【0021】
さらに、前記ウインドモール部12は、前記窓枠Fの側壁F1と対向する側に存在する前記リップ31bと前記第2リップ41とからなる2段のリップ31b,41が前記窓枠Fの側壁F1に当接して屈曲し、前記2段のリップ31b,41の反発復元力によって前記ウインドモール部12がウインドガラスG側へ強く押されるため、前記溝30aとウインドガラスGの側部との嵌合を、より確実に行うことができる。しかも、前記リップ31bのみが窓枠Fの側壁F1と当接する場合には、前記ウインドモール部12がウインドガラスGの側部と前記窓枠Fの側壁F1間で傾斜するおそれがあるが、前記第2リップ41が前記頭部21と前記リップ31bの間に位置し、前記2段のリップ31b,41が窓枠Fの側壁F1と当接してウインドモール部12を2カ所の位置でウインドガラスGの側部へ押すため、前記ウインドモール部12が傾くのを防止することができる。
【0022】
一方、前記ルーフモール部11は、前記自動車のルーフサイドの溝R1に前記リップ31a,31bが押し込まれることによって装着される。その際、前記リップ31a,31bは溝R1の側壁R1a,R1bと当接して屈曲し、その屈曲による反発復元力によって前記ルーフモール部11は溝R1内に固定される。
【0023】
また、前記モール10は、前記ルーフモール部11と前記ウインドモール部12間に断面形状の徐変部がほとんど存在しないため、前記ルーフモール部11と前記ウインドモール部12の境界付近において、前記自動車のウインドガラス側とルーフ側の境界付近の形状に追従し易く、正しく自動車に装着することができる。
【0024】
なお、前記の実施形態では、最も好ましい例として前記第2リップを設けた場合を示したが、前記窓枠Fの側壁F1とウインドガラスGの側部間の隙間が狭い場合等にあっては、前記第2リップを設けないことも可能である。
【0025】
図8は他の実施形態におけるモール素材10Bの断面図である。図8において、図1から図7で示した部分と同一名称部分については、図1から図7と同一の符号で示した。本実施形態のモール素材10Bは、本体部25の両側からリップ31a,31bが形成された例である。なお、各部の材質や構造、リップの除去等は、図1から図7で説明したものと同様である。また、図8における切断線C−Cは、本実施形態のモール素材10Bでウインドモール部とされる部分について、一側のリップ31aを突部27aの一部と共に除去する際の切断位置例を示す線である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動車用モールの一方向側の斜視図である。
【図2】同実施形態に係る自動車用モールの他方向側の斜視図である。
【図3】図1及び図2の3A−3A及び3B−3B断面図である。
【図4】本発明におけるモール素材の一実施形態の斜視図である。
【図5】図4の5−5断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る自動車用モールが装着された自動車の部分斜視図である。
【図7】図6の7A−7A及び7B−7B断面図である。
【図8】他の実施形態におけるモール素材の断面図である。
【図9】ルーフモール部とウインドモール部が一連に形成された従来のモールが装着された自動車の部分斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
10 モール
10A モール素材
11 モールのルーフモール部
11A モール素材のルーフモール部とされる部分
12 モールのウインドモール部
12A モール素材のウインドモール部とされる部分
21 頭部
23a,23b 頭部の張り出し部
25 本体部
26 芯材
27a,27b 突部
30a,30b 溝
31a,31b リップ
41 第2リップ
F 窓枠
F1 窓枠の側壁
F2 窓枠の底壁
G ウインドガラス
R 自動車のルーフ
R1 ルーフの溝
S 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のルーフサイドの溝部に装着されるルーフモール部とフロント又はリアの少なくとも一方のウインドガラスの側部に装着されるウインドモール部が一連に形成された自動車用モールにおいて、
頭部と、前記頭部の裏側に前記頭部の幅よりも小の幅で突設された柱状の本体部と、前記本体部の両側に突設され、前記頭部との間でウインドガラスの嵌合可能な溝を構成する突部と、前記本体部両側又は前記突部両側から突設されたリップとを備える押出成形品のモール素材からなり、
前記モール素材における前記ウインドモール部とされる部分では一側の前記リップが除去されることを特徴とする自動車用モール。
【請求項2】
前記ウインドモール部のリップ非除去側には、前記溝に基部が固定された第2リップを前記頭部と前記リップ間に備えることを特徴とする請求項1に記載の自動車用モール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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