説明

自動車用内装部品へのフェルト材固定構造

【課題】ホットメルトによる接着や超音波溶着等の方法を用いずともフェルト材の捲り上がりを防止できると共に、しかもリサイクル時の内装部品からのフェルト材の分離作業が容易にする。
【解決手段】ドアトリム1の裏面に、吸音性或いは緩衝性を付与するフェルト材2を固定する場合、ドアトリム1の裏面にリブ3、3、3を互いに離間対向するように突設し、リブ3、3、3にそれぞれ第1の切欠き係合部3a−1、3a−1、3a−1を形成して、第1の切欠き係合部3a−1、3a−1、3a−1にフェルト材2の外周端末部を嵌入係止することによってフェルト材2をドアトリム1の裏面に固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアトリム、リアサイドトリム或いはラゲージサイドトリム等内装部品の裏面に、吸音性或いは緩衝性を付与するフェルト材を固定するための自動車用内装部品へのフェルト材固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用内装部品、例えば、図1に示すドアトリム1は、自動車用ドアを構成するドアパネル(いずれも不図示)の裏面側、すなわち車室側に装着されて、ドアパネルを美装するために使用されている。
【0003】
そして、ドアトリム1は、アームレスト1aが室内側に向けて膨出形成されており、その下方には備品を収容できるドアポケット1bが形成され、かつそのフロント側にはスピーカグリル1cが形成されている。
【0004】
又、ドアトリム1の裏側には、ドアトリム1に装着したガラス昇降装置等の装備部品間の擦れ音等を吸音するため或いは自動車の側突事故等に際して乗員の腕や腰部等の衝撃を緩和保護するために、通常、吸音性或いは緩衝性を付与するフェルト材2が装着されている。
【0005】
従来、フェルト材2をドアトリム1の裏側に装着固定するためには、図8に示すように、ドアトリム1の裏側に形成した溶着ピンをフェルト材2の取付け孔に挿通させた後超音波溶着等により形成した加締め溶着部4によって固定する場合や、別の方式として図示しないが、ドアトリム1の裏面側に予めホットメルトとの接着剤を塗布しておき、フェルト材2を接着することにより固定する等の方式が採用されていた。
【0006】
しかしながら、ドアトリム1の裏面にフェルト材2を超音波溶着やホットメルト接着等により装着固定する場合、超音波溶着作業やホットメルト塗布作業が必要となってフェルト材2の装着作業に時間を要するばかりでなく、ホットメルトによる接着の場合、予めドアトリムの裏面の所定箇所に正確にホットメルトを塗布しないと、装着部品等周辺部位への影響が出てきてしまうことから、ホットメルト塗布作業に高い熟練度が要求されることになり、しかも、製造工場においては、ホットメルトを塗布するための設備や超音波溶着のための設備を設置する必要があって、当該設備占有面積を大きくしてしまうことになる。
【0007】
又、当該自動車の廃車後の解体作業の際にドアトリム1をリサイクル化するために、ホットメルトによる場合は勿論高周波溶着等により装着されたフェルト材2を、ドアトリム1から取外そうとしても、当該取外し作業に多くの工数が掛かり、折角取外すことができたとしても、フェルト材2の一部やホットメルト等がドアトリム1の裏面側に付着したままとなってリサイクル品の材料別完全分別化が非常に難しいと共に、決して解体作業性が良いとはいいえない。
【0008】
そこで、上記したような課題を解決するために、超音波溶着やホットメルト接着のような方式を採らない、係合方式ともいうべき内装部品へのフェルト材取付け構造が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−81021号公報
【0010】
これによれば、フェルト材(クッションパッド)に孔部或いはスリットを開設する一方、内装部品の裏面に係止用突起を突設し、係止用突起を孔部或いはスリット部に係着することにより、ホットメルトによる接着や超音波溶着等による装着方式を採らずとも、フェルト材を内装部品の裏面に固定できるようにするとともに、リサイクル時にフェルト材の分離を容易にしようとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、フェルト材に孔部或いはスリットを開設して内装部品側の係止用突起に係着し、フェルト材を内装部品に装着固定したとしても、フェルト材における内装部品に係着される部位は、フェルト材の内方部位に限られてしまい、フェルト材の外周端末部は内装部品に固定されておらず、リサイクル時のフェルト材の分離が容易な反面、当該自動車の現用時において、フェルト材の外周端末部が捲り上がってしまうおそれがあり、固定方法としては不安定であること否めない。
【0012】
そこで、本発明は、ホットメルトによる接着や超音波溶着等の方法を用いずともフェルト材の捲り上がりを防止できると共に、しかもリサイクル時の内装部品からの分離作業が容易な自動車用内装部品へのフェルト材固定構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る自動車用内装部品へのフェルト材固定構造は、内装部品の裏面に、吸音性或いは緩衝性を付与するフェルト材を固定するための自動車用内装部品へのフェルト材固定構造であって、前記内装部品の裏面に少なくとも一対のリブを互いに離間対向するように突設し、該両リブにそれぞれ第1の切欠き係合部を形成して、該第1の切欠き係合部に前記フェルト材の外周端末部を嵌入係止することによって前記フェルト材を前記内装部品の裏面に固定したことを特徴とする。
【0014】
かかる構成により、本発明は、フェルト材の外周端末部を一対のリブにそれぞれ形成した第1の切欠き係合部に嵌入係止したことから、フェルト材の外周端末部がホットメルト接着や超音波溶着等の方法を用いずとも不用意に捲り上がることを防止でき、しかもフェルト材の装着がリブへの嵌入係止方式を採ることから容易に内装部品からフェルト材を分離することができ、リサイクル時フェルト材の内装部品からの分離作業が容易且つ完全に行うことができる。
【0015】
本発明に係る自動車用内装部品へのフェルト材固定構造は、前記第1の切欠き係合部を、前記両リブのそれぞれに互いに離間するように一対ずつ形成することにより、前記フェルト材の互いに対向する外周端末部を共に嵌入係止するように構成するようにしてもよい。
【0016】
かかる構成により、フェルト材は、互いに対向する両外周端末部において、それぞれ少なくとも2箇所ずつ嵌入係止されることから、内装部品への装着を更に確実なものとすることができると共に、リサイクル時フェルト材の内装部品からの分離作業が容易且つ完全に行うことができる。
【0017】
本発明に係る自動車用内装部品へのフェルト材固定構造は、前記フェルト材の内方部位には、切込み部を形成することによって係止片部を一体的に形成すると共に、前記係止片部が嵌入係止する第2の切欠き係合部を前記一対のリブのうち少なくとも一方のリブに形成して、前記係止片部を前記第2の切欠き係合部に係入することによって前記フェルト材の内方部位を前記内装部品の裏面に固定するように構成するようにしてもよい。
【0018】
かかる構成により、フェルト材は、その内方部位において係止片部が第2の切欠き係合部に係入することによって内装部品に固定されることになって、内装部品への装着を更に確実なものとすることができる。
【0019】
本発明に係る自動車用内装部品へのフェルト材固定構造は、前記第1の切欠き係合部又は前記第2の切欠き係合部の内壁に、嵌入係止された前記フェルト材を引掛け係止する引掛け突起を形成するように構成することができる。
【0020】
かかる構成により、第1又は第2の切欠き係合部に嵌入したフェルト材の係止片部を、引掛け突起に引っ掛け係止することにより、フェルト材のドアトリムへの装着力を増すことができる。
【発明の効果】
【0021】
上記のように構成する本発明によれば、フェルト材の外周端末部を一対のリブにそれぞれ形成した第1の切欠き係合部に嵌入係止したことから、フェルト材の外周端末部がホットメルト接着や超音波溶着等の方法を用いずとも不用意に捲り上がることを防止でき、しかもフェルト材の装着がリブへの嵌入係止方式を採ることから容易に内装部品からフェルト材を分離することができ、リサイクル時フェルト材の内装部品からの分離作業が容易且つ完全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は一般な自動車用内装部品であるドアトリムを車室側から描画した斜視図である。
【図2】本発明に係る実施の形態を採用した場合の図1のドアトリムについて、フェルト材を取外した状態で裏面側から拡大描画した部分的分解斜視図である。
【図3】同じくドアトリムの裏面側にフェルト材を装着固定した状態を描画した部分的斜視図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】本発明に係る第2の実施の形態を採用した場合のドアトリムの部分的斜視図である。
【図6】図5のB−B断面図である。
【図7】本発明に係る第3の実施の形態を採用した場合のドアトリムにおけるリブ周辺を拡大して描画した断面図である。
【図8】従来における自動車用内装部品であるドアトリムの裏面側を描画した部分的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係る実施の形態について、図を用いて説明する。
【0024】
図1は自動車用内装部品であるドアトリムを車室側から描画した斜視図、図2は本発明に係る実施の形態を採用した場合の図1のドアトリムについて、フェルト材を取外した状態で裏面側から拡大描画した部分的分解斜視図、図3は同じくドアトリムの裏面側にフェルト材を装着固定した状態を描画した部分的斜視図、図4は図3のA−A断面図である。なお、従来の技術に対応する構成については、同一の符号を使用して説明することとする。
【0025】
先ず、図1において、内装部品であるドアトリム1には、乗員が肘を掛けて休めるように構成したアームレスト1aが室内側に向けて膨出形成されており、その下方には地図等の備品を収容できるドアポケット1bが形成され、かつそのフロント側にはスピーカグリル1cが形成されており、ドアトリム1の裏面側を不図示のドアパネル側に対向させて装着することによって、ドアパネルの車室側を美装している。
【0026】
又、ドアトリム1は、その裏面にアームレスト1aを挟むように一対のフェルト材2を装着固定することにより、吸音性あるいは緩衝性を付与するようになっている。
【0027】
かかるフェルト材2をドアトリム1の裏面に装着固定するために、図2に示すように、ドアトリム1の裏面側には、互いに離間した状態で上下方向に延在する一対のリブ3、3が形成されているとともにリブ3、3の間には並行するように更に一本のリブ3が形成されている。
【0028】
各リブ3、3、3の上下端部位には、第1の幅広部位3a、3a、3aが形成され、幅広部位3a、3a、3aには、それぞれ外端部が開口する第1の切欠き係合部3a−1、3a−1、3a―1が形成されている。
【0029】
更に、各リブ3、3、3のほぼ中央部にも、やはり別の幅広部位3b、3b、3bが形成されていて、幅広部位3b、3b、3bには、それぞれ外端部が開口する第2の切欠き係合部3b−1、3b−1、3b−1が形成されている。
【0030】
一方、フェルト材2は、矩形状の外径形状を呈しており、その略中央部には横方向に互いに離間する状態で並列するように3個のコ字状を呈する切込み部2a、2a、2aが形成されており、切込み部2a、2a、2aは、下端側がヒンジ部となるように切離されず一体となった係止片部2b、2b、2bをそれぞれ形成している。
【0031】
このように構成されたフェルト材2をドアトリム1に装着固定するには、例えば先ず、フェルト材2の上下両外周端部をドアトリム側に順次折曲させて、図3及び図4に示すように、リブ3、3、3にそれぞれ設けた第1の切欠き係合部3a−1、3a−1、3a−1に嵌入係止して、フェルト材2をドアトリム1の裏面所定部位に固定装着し、更に、係止片部2b、2b、2bをそれぞれドアトリム1側にヒンジ部を中心として折曲して、今度は第2の切欠き係合部3b−1、3b−1、3b−1に嵌入係止して、フェルト材2の内方部をドアトリム1に固着することになる。
【0032】
従って、フェルト材2は、先ず上下両外周端部がリブ3、3、3にそれぞれ形成した第1の切欠き係合部3a−1、3a−1、3a−1に嵌入係止することにより、ホットメルト接着や超音波溶着等の方法を用いずとも、さほどの熟練度を要せずして容易にドアトリム1の裏面側に装着することができ、また、互いに対向する上下両外周端部がドアトリム1側に係止されていることから、不用意に捲り上がることを防止でき、しかも、フェルト材2がその外方端部を第1の切欠き係合部3a−1、3a−1、3a−1に嵌入係止すると共に、係止片部2b、2b、2bを第2の切欠き係合部3b−1,3b−1,3b−1に嵌入係止することにより行うために、廃車等における解体作業時においては、ドアトリム1からフェルト材2を容易に引き離すことができ、リサイクル時フェルト材2のドアトリム1からの分離作業が容易に行うことができる。
【0033】
図5ないし図7は本発明に係る他の実施の形態を示している。
【0034】
先ず、図5及び図6に示す第2の実施の形態においては、上記第1の実施の形態に対して、係止片部2bの形状を変形したもので、互いに対向する一対の切込み部2a、2aを形成して、両切込み部2a、2aの間に係止片部2bを一体的に形成したものであり、係止片部2bは、特に図6に示すように、略U字形に折曲された状態で、第2の切欠き係合部3b−1に嵌入係止されることになる。
【0035】
図7に示す本発明に係る第3の実施の形態においては、第2の切欠き係合部3b−1の形状を変形したものであり、上記いずれの実施の形態における第2の切欠き係合部3b−1の形状は、ストレート状の内壁に形成しているのに対し、内壁に適宜内方に突出する引掛け突起3b−1aを形成した点異なっており、第2の切欠き係合部3b−1に嵌入したフェルト材2の係止片部2bを、引掛け突起3b−1aに引っ掛け係止することにより、フェルト材2のドアトリム1への装着力を増したものである。
【0036】
また、この第3の実施の形態に関連して、図示しないが、第1の切欠き係合部3a−1側にも、同様に引っ掛け突起を形成するようにしてもよい。
【0037】
尚、上記実施の形態においては、ドアトリム1の裏面側に形成したリブ3は、上下方向縦列に3本形成しているが、これに限定されるものではなく、フェルト材2の大きさによって、4本以上形成してもよく、また、逆に、中央部のリブ3を廃止して互いに外側に存する一対のリブ3、3にて構成するようにしてもよく、また必ずしも上下方向縦列に延在するのではなく、左右方向横列に延在するように形成してもよい。
【0038】
また、リブ3は、更に簡略化して、外側に存する1本のリブにより構成することも考えられる。この場合、フェルト材2の一方の外周端末部は、リブ3により係着されることになるが、他方の外周端末部は係着されないことになるが、例えば、ドアトリム1をドアパネルに装着する際に、当該ドアパネルとドアトリム1との間で挟着することにより係着で切ることになる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明したように、本発明は、フェルト材の外周端末部を一対のリブにそれぞれ形成した第1の切欠き係合部に嵌入係止したことから、フェルト材の外周端末部がホットメルト接着や超音波溶着等の方法を用いずとも不用意に捲り上がることを防止でき、しかもフェルト材の装着がリブへの嵌入係止方式を採ることから容易に内装部品からフェルト材を分離することができ、リサイクル時フェルト材の内装部品からの分離作業が容易且つ完全に行うことができるために、ドアトリム、リアサイドトリム或いはラゲージサイドトリム等内装部品の裏面に、吸音性或いは緩衝性を付与するフェルト材を固定するための自動車用内装部品へのフェルト材固定構造等に好適であるといえる。
【符号の説明】
【0040】
1 ドアトリム(内装部品)
2 フェルト材
2a 切込み部
2b 係止片部
3 リブ
3a―1 第1の切欠き係合部
3b−1 第2の切欠き係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内装部品の裏面に、吸音性或いは緩衝性を付与するフェルト材を固定するための自動車用内装部品へのフェルト材固定構造であって、前記内装部品の裏面に少なくとも一対のリブを互いに離間対向するように突設し、該両リブにそれぞれ第1の切欠き係合部を形成して、該第1の切欠き係合部に前記フェルト材の外周端末部を嵌入係止することによって前記フェルト材を前記内装部品の裏面に固定したことを特徴とする自動車用内装部品へのフェルト材固定構造。
【請求項2】
前記第1の切欠き係合部は、前記両リブのそれぞれに互いに離間するように一対ずつ形成することにより、前記フェルト材の互いに対向する外周端末部を共に嵌入係止するように構成したことを特徴とする請求項1記載の自動車用内装部品へのフェルト材固定構造。
【請求項3】
前記フェルト材の内方部位には、切込み部を形成することによって係止片部を一体的に形成すると共に、前記係止片部が嵌入係止する第2の切欠き係合部を前記一対のリブのうち少なくとも一方のリブに形成して、前記係止片部を前記第2の切欠き係合部に係入することによって前記フェルト材の内方部位を前記内装部品の裏面に固定したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動車用内装部品へのフェルト材固定構造。
【請求項4】
前記第1の切欠き係合部又は前記第2の切欠き係合部の内壁に、嵌入係止された前記フェルト材を引掛け係止する引掛け突起を形成したことを特徴とする請求項3に記載の自動車用内装部品へのフェルト材固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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