説明

自動車用暖房装置

【課題】座席に着座した自然な姿勢で、暖房感を得ることができ、また使用中の姿勢変化にもよらず、快適な暖房を提供することを目的とする。
【解決手段】座席1の座面2前端部に配され、輻射熱を放出する輻射体5と、この輻射体5を変位させる駆動手段8と、人体の座面に対する近接を検知する超音波センサなどからなる近接検知手段7と、制御手段14とを具備し、前記制御手段14は、前記近接検知手段7から得られる情報により前記輻射体5への通電と前記駆動手段8の動作とを制御する構成とした。これにより、自動車用暖房装置の使用中は、常に近接検知手段16が人体5脚部との距離を計測し続け、人体5脚部の動きに合わせて輻射体14は最適な位置に移動して輻射暖房するため、座席に着座した自然な姿勢で、暖房感を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輻射熱を用いた自動車用暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車の一般的な車内暖房装置としては、エンジンの廃熱を利用して温風を車内に吹出して暖房する空調装置がある。
【0003】
また、別の例として、自動車等の車両の座席の下部に発熱体と反射板を設けて輻射等により下腿部を暖房するものも提案されている。
【0004】
具体的には、図6に示すように、座席101の座面の下部空間に多数の通気孔の開いた板部材102を設け、その板部材102の裏に複数の管状電気ヒータ103a,103bを縦に並べて配置するとともに、それらの背部に反射板104を設けた構成である。
【0005】
暖房使用時には、自動車のバッテリー(図示せず)により電力を供給して管状電気ヒータ103a,103bを発熱させ、輻射熱により座席101に着座した人体Aの脚部、特にふくらはぎを暖めるものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4―159124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の自動車用暖房装置は、管状電気ヒータ103a,103bの位置が常に固定されているため、使用者が自身の脚部を適度な位置に近づけ、その状態を継続保持する必要があり、非常に使い勝手が悪かった。
【0008】
本発明は前記従来の課題を解消したもので、使用性の良い自動車用暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記目的達成のため、座席の座面前端部に配され、輻射熱を放出する輻射体と、この輻射体を変位させる駆動手段と、人体の座面に対する近接を検知する近接検知手段と、制御手段とを具備し、前記制御手段は、前記近接検知手段から得られる情報により前記輻射体への通電と前記駆動手段の動作とを制御する構成としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自動車用暖房装置は、座席に着座した自然な姿勢で、暖房感を得ることができ、また使用中の姿勢変化にもよらず、快適な暖房を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における自動車用暖房装置の構成図
【図2】同自動車用暖房装置の平面図
【図3】同自動車用暖房装置の作用説明図
【図4】同自動車用暖房装置の他の例を示す構成図
【図5】同自動車用暖房装置のさらに他の例を示す構成図
【図6】従来の自動車用暖房装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、座席の座面前端部に配され、輻射熱を放出する輻射体と、この輻射体を変位させる駆動手段と、人体の座面に対する近接を検知する近接検知手段と、制御手段とを具備し、前記制御手段は、前記近接検知手段から得られる情報により前記輻射体への通電と前記駆動手段の動作とを制御する構成としたものである。
【0013】
これにより、自動車用暖房装置の使用中は、常に近接検知手段が人体脚部との距離を計測し続け、人体脚部の動きに合わせて輻射体は最適な位置に移動して輻射暖房する。
【0014】
よって座席に着座した自然な姿勢で、暖房感を得ることができ、また使用中の姿勢変化にもよらず、快適な暖房を提供することを提供することができる。
【0015】
第2の発明は、特に第1の発明において、座席に対する在席を検知する在席検知手段を有し、前記在席検知手段の検知にもとづき輻射体への通電を制御するようにした。
【0016】
これにより、使用者着座時の圧力変動がある場合のみ通電可能となるため、人体が不在である座席に通電しないので無駄な電力消費を抑えることができる効率の高い自動車用暖房装置を提供することができる。
【0017】
第3の発明は、特に第1の発明において、輻射体の熱源としてPTC特性を持つ電気ヒータを用いた。
【0018】
これにより、電気ヒータ自身の温度上昇とともに電気抵抗値が上昇することで電流を抑制されその結果、温度が上がりすぎることもないため、温度センサの設置の必要もなく、快適な温度を維持することができ、快適な自動車用暖房装置を提供することができる。
【0019】
第4の発明は、特に第1〜3のいずれか一つの発明において、非暖房時、輻射体を座席下に収容する構成とした。
【0020】
これにより、輻射体が部分的または全部、座面の下に入り込み、乗り込むとき、足部と輻射体が当ることを防ぎ、邪魔になることがなく利便性が高い暖房装置を提供することができる。
【0021】
第5の発明は、特に第1〜4のいずれか一つの発明において、輻射体に保護柵を配設した。
【0022】
これにより、電気ヒータなどの保護が図れ、信頼性の高い暖房装置を提供することができる。
【0023】
第6の発明は、特に第1〜5のいずれか一つの暖房装置をハイブリッド型自動車に搭載したもので、速暖性に優れたものとすることができる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1〜3は、ハイブリッド型自動車の暖房装置を示し、例えば運転席の座席1における座面2の前端部2aから一対のアーム3が伸設され、そのアーム3に軸4を介して輻射体
5が回転可能に設置されている。
【0026】
前記輻射体5は、人体Aの脚部に対向する表面5aにPTC特性をもつ電気ヒータ6が設置されており、ハイブリッド自動車に搭載されているバッテリー(図示せず)に電気的に接続されている。
【0027】
また、この表面5aには3個の超音波センサ7がほぼ等間隔に配置され、外方へ向かって放射された超音波の反射波を検出するように設定されている。
【0028】
そして、輻射体5は軸4を支点に俯仰方向に変位駆動されるようにしてあり、そのために、同輻射体5の内部には駆動手段8が内設してある。
【0029】
この駆動手段8は、モータなどの駆動源9の回転をベルトなどの伝達手段10を介して歯付プーリ11に伝達するようにしてあり、この歯付プーリ11が先の軸4に固定されている。
【0030】
また、電気ヒータ6と人体Aの脚部、足部や靴が直接接触しないように保護柵12が設けられている。
【0031】
前記保護柵12は、複数の棒状部材を平行に配置して構成したもので、前記棒状部材の間隔は、かかとや靴のヒールが入り込まない程度の大きさ、望ましくは、10mmから30mm程度に設定されている。材質としては、金属、または、耐熱性の高い樹脂、例えばフェノール樹脂などが考えられる。
【0032】
ところで、座面2の中央付近には着座検知手段として圧電センサ13が配置されており、この出力は座面2の下方に設けた制御手段としてマイコン14に入力されるようにしてある。
【0033】
以下、動作作用を説明する。
【0034】
暖房装置を使用していないときは、図3(a)に示すように、輻射体5が座面2の下方に部分的に入り込むような状態で格納されている。
【0035】
よって、輻射体5の座面2からの出っ張りを最小限に抑えることができるため、人体Aの足部と輻射体5が当ることを防ぎ、搭乗時や下車時に邪魔になることがない使い勝手の良い自動車用暖房装置を提供することができる。
【0036】
この状態で自動車に搭乗し、センターコンソールなどに配置された暖房装置のスイッチを入れると、マイコン14が圧電センサ13の信号をチェックし、人体の荷重や重心動揺などの荷重変化を検出すると着座ありと判断する。
【0037】
ここで、駆動手段8の駆動源9が通電されて回転し、伝達手段10を介して歯付プーリ11にその回転が伝達され、したがって、輻射体5は、図3(b)の仰角方向へ変位される。
【0038】
その間、超音波センサ7は人体Aの脚部との距離を計測し、その値が設定範囲になるように制御手段24を介して駆動手段8の動作を制御する。
【0039】
そして、電気ヒータ6に通電し、その輻射熱により暖房を開始する。暖房装置の使用中は、常に超音波センサ7が人体Aの脚部との距離を計測し続け、人体脚部の動きに合わせ
て輻射体5は変位される。
【0040】
これにより、座席1に着座した自然な姿勢で、暖房感を得ることができ、また使用中の姿勢変化にもよらず、快適な暖房を提供することを得ることができるものである。
【0041】
本実施の形態の暖房装置は、自動車内全体ではなく、人体Aの脚部という局所的な暖房であるため、省エネルギーが図れ、効率的な暖房ができる。さらに、エンジンの暖気によらず、バッテリーからの電力であるところから、エンジン廃熱の小さいハイブリッド自動車などに適したものとなる。
【0042】
加えて、PTC特性をもつ電気ヒータ6を用いているため、それ自体の温度上昇とともに電気抵抗値が上昇することで電流が抑制される結果、発熱が抑えられ、温度センサを設置しなくても温度が上がりすぎることもなく、快適な温度を維持することができ、快適な環境を提供することができる。
【0043】
このときの温度は、長時間接触しても低温やけどをしない温度以下にすることが望ましく、例えば、表面温度が60℃以下になるように設定されている。
【0044】
また、座面2に設けられた圧電センサ13により、人体Aが着座した時の圧力変動がある場合のみ通電するよう構成しているため、無駄な電力消費を抑え、暖房効率を高めることができる。
【0045】
なお、本実施の形態の暖房装置は、運転席に限られることはなく、助手席や後部座席に設置してもよい。その場合、圧電センサは各座席の座面に設置する。
【0046】
それにより、各座面に設けられた圧電センサにより人体の着座時の圧力変動がある場所に設置された電気ヒータのみ通電可能としている。
【0047】
そのため、人体が不在である座面に通電しないので無駄な電力消費を抑えることができる。
【0048】
着座検知手段としては圧電センサ以外にもマイクロスイッチでもかまわないし、赤外線センサを用いて人体の熱を検知することも考えられる。また、設置場所も座面ではなく背もたれ部に設置してもかまわない。
【0049】
保護柵は、図4に示すような網目状の保護柵12aでもよく、さらに、図5に示すように保護柵がない構成も可能である。但し、その場合は、汚損防止のため、電気ヒータ6は輻射体5の内部に配設されていることが望ましい。
【0050】
輻射体5としては、回転でなく、座面2の下にスライドさせて収容する構成でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明にかかる自動車用暖房装置は、システムのエネルギー効率が高く、エンジンの廃熱の小さいハイブリッド自動車のエアコン暖房の効き始めの遅さを補い、快適な暖房空間を提供できるため、エンジンの廃熱がなくエアコン暖房の効きにくい電気自動車用の暖房装置として適応できる。またさらに、効率を高めることでエンジン廃熱を抑制したディーゼルエンジンや、高効率のガソリンエンジン自動車(例えばアイドリングストップ機能を持つ自動車)の暖房装置としても応用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 座席
2 座面
5 輻射体
6 電気ヒータ
7 近接検知手段(超音波センサ)
8 駆動手段
12,12a 保護柵
13 在席検知手段(圧電センサ)
14 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席の座面前端部に配され、輻射熱を放出する輻射体と、この輻射体を変位させる駆動手段と、人体の座面に対する近接を検知する近接検知手段と、制御手段とを具備し、前記制御手段は、前記近接検知手段から得られる情報により前記輻射体への通電と前記駆動手段の動作とを制御する構成とした自動車用暖房装置。
【請求項2】
座席に対する在席を検知する在席検知手段を有し、前記在席検知手段の検知にもとづき輻射体への通電を制御するようにした請求項1記載の自動車用暖房装置。
【請求項3】
輻射体の熱源としてPTC特性を持つ電気ヒータを用いた請求項1記載の自動車用暖房装置。
【請求項4】
非暖房時、輻射体を座席下に収容する構成とした請求項1〜3のいずれか1項記載の自動車用暖房装置。
【請求項5】
輻射体に保護柵を配設した請求項1〜4のいずれか1項記載の自動車用暖房装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の自動車用暖房装置を搭載したハイブリッド型自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−11610(P2011−11610A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156719(P2009−156719)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】