説明

自動車用視聴覚システム

【課題】 自動車12内で混信や妨害を生じることのない簡便な高品質の視聴覚システムを提供する。
【解決手段】
それぞれ所定の指向性を持ち独立に制御される複数の赤外線ビームを送出する赤外線ラジエータ16と、自動車12の室内に固定されたディスプレイ58,60と、乗客66用のヘッドホン20とを備える。赤外線ラジエータ16は、ディスプレイへ画像信号を伝送するための第1の赤外線ビーム24を送出する発光ダイオード群を備える。赤外線ラジエータ16は、さらに、ヘッドホン20に音声信号を送出するための、第2の赤外線ビーム30を送出する発光ダイオード群を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車内で乗客が個別に音楽や映像を視聴するような用途に使用される、自動車用視聴覚システムに関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線を使用した赤外線音声伝送システム(ワイヤレスリスニングシステム)の通信装置があることは、従来から知られている。赤外線音声伝送システムによれば、外来電波による影響を受けないばかりでなく聴取位置による音質のばらつきが全くなく、騒音による影響も極めて低い等の利点がある。そして、このような通信装置において音声を赤外線に乗せて送信するのに使用される赤外線ラジエータの存在も従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
例えば、旅客機の座席には、乗客が個々に映画や音楽を楽しむことができるように、テレビジョンディスプレイが据え付けられている。各乗客は、それぞれ自由に好みのチャンネルを選択して表示される画像を選択し、ヘッドホンを装着してその音を聴取する。旅客機の座席には、こうしたシステムを実現するために、予め、ディスプレイやヘッドホンへの配線用ワーヤーハーネスが組み込まれている。こうした乗客サービスは、観光バス等にも採用されている。
【特許文献1】特開平9−116195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、従来の自動車用視聴覚システムには、次のような解決すべき課題があった。
乗用車に広く搭載されているカーナビゲーションシステムは、DVDを再生する機能を持つ。この機能を利用して、ワゴンタイプの乗用車や大型乗用車にも、旅客機同様の映画や音楽を楽しむシステムを装備することが可能である。しかしながら、乗用車の座席に、旅客機のような配線用ワーヤーハーネスを組み込むには、自動車の製造ラインの大幅な変更が必要になる。また、自動車の部品点数も増加するため、コストが著しく増大するという難点がある。しかも、カーナビゲーションシステムと同様に、ユーザは自動車の購入後、非装備車に追加装備をするケースが多く、ディスプレイやヘッドホンへの接続用コードの取り付けが煩雑になり、外観上も体裁が悪くなる。
【0004】
これを解決するために、無線LAN(ローカルエリアネットワーク)等で採用されている電波を使用したコードレス接続も考えられる。しかしながら無線LANは、自動車から発せられる雑音の妨害を受けやすい。しかも、自動車が隣り合って停車しているときや、他の自動車と並走しているときなどに、混信を生じるおそれがある。
本発明は、以上の点に着目してなされたもので、所定の指向性を持たせた赤外線ラジエータを利用することにより、ディスプレイやヘッドホンをコードレスで利用することができる自動車用視聴覚システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の各実施例においては、それぞれ次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉
自動車の室内で、それぞれ所定の指向性を持ち独立に制御される複数の赤外線ビームを送出する赤外線ラジエータと、上記自動車の室内に固定されたディスプレイと、乗客用のヘッドホンとを備え、上記赤外線ラジエータは、上記ディスプレイへ画像信号を伝送するための第1の赤外線ビームを送出する第1の発光部と、上記ヘッドホンへ音声信号を伝送するための第2の赤外線ビームを送出する第2の発光部とを備えたことを特徴とする自動車用視聴覚システム。
【0006】
〈構成2〉
構成1に記載の自動車用視聴覚システムにおいて、上記赤外線ラジエータは、上記自動車の前部座席方向と後部座席方向を見通せる、車の中心線付近に配置されることを特徴とする自動車用視聴覚システム。
【0007】
自動車室内を縦方向に左右に分割する車の中心線付近に赤外線ラジエータを配置すれば、指向性の強い赤外線ビームを、目的とする方向に直接送出したり、自動車室内の壁の反射を適切に利用する制御が容易になる。
【0008】
〈構成3〉
構成1に記載の自動車用視聴覚システムにおいて、赤外線ラジエータの配置場所は、自動車の運転席と助手席に挟まれたコンソールボックス上であることを特徴とする自動車用視聴覚システム。
【0009】
コンソールボックス上は、赤外線ラジエータの取り付け作業が容易であり、また、位置的にも指向性のある赤外線ビームを送出するのに最適である。
【0010】
〈構成4〉
構成1に記載の自動車用視聴覚システムにおいて、上記赤外線ラジエータに備えられた、上記第1の発光部は、第1グループと第2グループの発光ダイオード群からなり、上記第2の発光部は、第3グループと第4グループの発光ダイオード群からなり、上記第1グループは運転席の背部のディスプレイ方向に赤外線を送出し、上記第2グループは、助手席の背部のディスプレイ方向に赤外線を送出し、上記第3グループは、後部座席方向に赤外線を送出し、上記第4グループは、前部座席前方の計器盤等が配置されたフロントパネル方向に赤外線を送出することを特徴とする自動車用視聴覚システム。
【0011】
それぞれ指向性のある赤外線ビームを送出する発光ダイオード群を設けた。第1グループと第2グループは、ディスプレイ専用の赤外線ビームを送出する。第3グループの赤外線は、後部座席の乗客のヘッドホンに向かって直接送出される。一方、第4グループの赤外線は、フロントパネルや車内の壁面で反射して車内の各部に送出される。
【0012】
〈構成5〉
構成1に記載の自動車用視聴覚システムにおいて、上記赤外線ラジエータに備えられた第1の発光部と第2の発光部とは、自動車の窓の下縁の線よりも低い位置かあるいは、窓の上縁の線よりも高い位置に配置することを特徴とする自動車用視聴覚システム。
【0013】
第1の発光部や第2の発光部を、窓の下縁の線よりも低い位置や窓の上縁の線よりも高い位置に配置すると、強力な赤外線ビームが窓を通して直接隣の自動車に飛び込むおそれが少ない。車内で数回以上反射して窓を抜ける赤外線ビームは十分強度が低下しているので、外部に放射されても弊害が小さい。
【0014】
〈構成6〉
構成1に記載の自動車用視聴覚システムにおいて、赤外線ラジエータの発光部を、コンソールボックスの、ボトルフォルダの上縁に取り付けたことを特徴とする自動車用視聴覚システム。
【0015】
ボトルフォルダの上縁は物を置くことができない。これにより、赤外線ラジエータの発光部上に物が置かれるのを防止した。
【0016】
〈構成7〉
構成1に記載の自動車用視聴覚システムにおいて、上記ディスプレイ用受光器を座席下に配置し、このディスプレイ用受光器とディスプレイとを延長コードを用いて接続し、上記第1の発光部は、上記座席下のディスプレイ用受光器に向けて赤外線ビームを送出することを特徴とする自動車用視聴覚システム。
【0017】
赤外線ラジエータとディスプレイとの間に物が置かれるとディスプレイが作動しない。
このため、ディスプレイ用受光器を座席下まで延長コードでのばし、座席下に向けて赤外線ビームを送出することで、解決する。
【0018】
〈構成8〉
構成1に記載の自動車用視聴覚システムにおいて、上記赤外線ラジエータに備えられた音声信号用の発光部は、自動車の天井方向に赤外線を送出することを特徴とする自動車用視聴覚システム。
【0019】
音声信号用ビームは全て天井反射方式として、他の装置への妨害を最小にしつつ、自動車内の全範囲に音声信号を送信できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明では、自動車の室内で、それぞれ所定の指向性を持ち独立に制御される複数の赤外線ビームを用いて、音声信号と画像信号とを個別に送信する。こうした赤外線ビームを送出する赤外線ラジエータが、自動車の室内に据え付けられている。以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、実施例1の自動車用視聴覚システムを使用した自動車の平面図である。また、図2は、赤外線ラジエータの内部回路のブロック図である。両図を参照して説明をすすめる。
自動車12の室内には、それぞれ所定の指向性を持ち独立に制御される複数の赤外線ビームを送出する赤外線ラジエータ16と、自動車12の室内に固定されたディスプレイと、乗客用のヘッドホン20とが設けられている。ディスプレイは、運転席の背部のディスプレイ58と助手席の背部のディスプレイ60とからなる。赤外線ラジエータ16は、例えば、図2に示したDVD装置21から、上記ディスプレイへ画像信号22を伝送するための第1の赤外線ビーム24を送出する第1の発光部26と、ヘッドホン20へ音声信号28を伝送するための第2の赤外線ビーム30を送出する第2の発光部32とを備える。
【0022】
この実施例では、自動車12は、乗用車である。ワゴンタイプの車両などにも適する。赤外線ラジエータ16は、運転者の肘にあるコンソールボックスや自動車の天井に設けられたオーバーヘッドコンソールなどにを配置するとよい。ディスプレイは、乗客の人数に合わせて任意の数だけ固定すればよい。音声信号や画像信号を供給する装置は、カーオーディオやカーナビゲーションシステムのDVD装置など様々な装置を利用できる。この実施例では、DVD装置21から出力される画像信号22が第1の発光部26において、赤外線ビームに変換されて送出される。また、音声信号28は、第2の発光部32において、赤外線ビームに変換されて送出される。こうした電気−光変換技術や赤外線ビームに信号を乗せる技術は既存のものを使用する。従って、さらに詳細な説明は省略する。
【0023】
図1に示したように、自動車の上方から見ると、赤外線ラジエータ16は、自動車12の前部座席36方向と後部座席38方向を見通せる、車の中心線40付近に配置されている。自動車12の室内を縦方向に左右に分割する車の中心線40付近に赤外線ラジエータ16を配置すると、運転席42の背部のディスプレイ58と助手席44の背部のディスプレイ60には、図中の矢印に示すように、赤外線ラジエータ16から直接第1の赤外線ビーム24を送出できる。距離が短いので微弱なパワーでよい。一方、第2の赤外線ビーム30は、乗客66が前後左右に移動しても自動車の室内の壁面68を利用して反射させて到達するように、十分なバワーのビームとする。この実施例では、赤外線ラジエータ16の配置場所は、自動車12の運転席42と助手席44に挟まれたコンソールボックス46上である。
【0024】
上記の画像信号22の送信には、例えば12MHzの赤外線を利用する。ヘッドホン20には、乗客66が動き回っても良好に受信できるように、比較的大パワーの、広がりの大きい赤外線ビームを送出する。従って、車内各部で数回反射したものでも、十分に受信ができる。ヘッドホンではステレオで右,左の2chを必要としこのために第1CHは2.3MHz、第2CHは2.8MHzを変調周波数として使用している。
【0025】
図2に示すように、第1の発光部は、第1グループ48と第2グループ50からなる発光ダイオード群を備えている。具体的には、グループ毎に、それぞれ5〜10個程度の発光ダイオードをその赤外線放射方向をそろえて配置する。同様に、第2の発光部は、第3グループ54と第4グループ56からなる発光ダイオード群を備えている。第1グループ48は運転席42の背部のディスプレイ58方向に赤外線を送出する。第2グループ50は、助手席44の背部のディスプレイ60方向に赤外線を送出する。第3グループ54は、後部座席38方向に赤外線を送出する。第4グループ56は、前部座席36前方の計器盤62等が配置されたフロントパネル64方向に赤外線を送出する。
【0026】
ディスプレイ58,60は、運転席42の背部と助手席44の背部の、後席から見やすい位置に1台ずつ固定するとよい。ディスプレイの固定位置や台数は自動車の構造により任意に変更できる。ディスプレイは2台、ヘッドホンも2台で、それぞれ別々のチャンネルを独自にセレクトできるようにした。実施例では、第3グループ54の赤外線は、後部座席38の乗客66のヘッドホン20に向かって直接送出されるが、第4グループ56の赤外線は、フロントパネル64や車内の壁面68で反射して車内の各部に送出される。
【実施例2】
【0027】
図3は、赤外線ラジエータ16の取り付け位置に関する実施例を示す説明図である。(a)は車の中心線40(図1)を含む自動車12の垂直縦断面図、(b)は赤外線ラジエータ16を、ディスプレイ58のある位置で車の中心線40に垂直な面で切断した横断面図である。
図の(a)に示すように、赤外線ラジエータ16には、音声信号用の第2の赤外線ビーム30A,30Bを送出するための、第3グループ54と第4グループ56の発光ダイオード群が設けられている。さらに、図の(b)に示すように、赤外線ラジエータ16には、画像信号用の第1の赤外線ビーム24A,24Bを送出するための第1グループ48と第2グループ50の発光ダイオード群が設けられている。
【0028】
この第3グループ54と第4グループ56とを有する第2の発光部は、自動車12の後窓70下縁の線72よりも低い位置かあるいは、窓70の上縁の線74よりも高い位置に配置する。また、第1グループ48と第2グループ50とを有する第1の発光部は、横窓71の下縁の線73よりも低い位置かあるいは、横窓71の上縁の線75よりも高い位置に配置する。
【0029】
第1グループ48と第2グループ50、あるいは、第3グループ54と第4グループ56を、横窓71や後窓70と同じ高さに配置すると、図の矢印77や矢印80に示す方向に強度の高い赤外線ビームが直接送出されて、隣を走行する他の自動車の窓からその自動車の車内に飛び込む。これは、混信や妨害の原因になる。車内で数回以上反射してから窓を抜ける赤外線ビームは十分強度が低下しているので、外部に放射されても弊害が小さい。従って、赤外線ラジエータ16の配置の選定により、本発明の装置の効果的な利用を図ることができる。
【実施例3】
【0030】
図3の(b)に示すように、前部座席の背部に固定されているディスプレイ58の左側面には、ディスプレイ用受光器78が取り付けられている。ディスプレイ用受光器78には、第1の赤外線ビーム24Aが壁面で反射をすることなく直接入力する。この赤外線ビーム24Aのビーム径は、ディスプレイ用受光器78の口径の数倍以下に選定することが好ましい。また、赤外線ビーム24Aパワーは、ディスプレイ用受光器78を通り越して、自動車12の室内の壁面で反射した後は、音声信号用の赤外線ビームに影響を与えない程度の十分に低いレベルに選定する。これにより、狭い自動車室内でそれぞれ別々の信号を送信する赤外線ビーム相互の干渉を予防できる。この他に、例えば、偏光フィルタを利用して、各赤外線ビームの偏光角を異ならせたり、異なる波長の赤外線を使用することで干渉防止を図ることができる。
【実施例4】
【0031】
図4は、本発明の装置において画像信号や音声信号が処理される回路構成を示すブロック図である。
図に示すように、カーオーディオやナビゲータに取り付けられたDVD装置21からは、画像信号22と音声信号28とが出力される。画像信号22は、第1の発光部26の信号処理回路27で処理され、発光ダイオード49を発光させる。これによって画像信号に対応する第1の赤外線ビーム24A,24Bが、ディスプレイ58や60(図1)に向けて送出される。一方、音声信号28は、第2の発光部32の信号処理回路33で処理され、発光ダイオード51を駆動する。発光ダイオード51により送出された第2の赤外線ビーム30A,30Bは、ヘッドホン20に向けて送出される。なお、発光ダイオード49,51はそれぞれ2グループの発光ダイオード群からなることは既に説明したとおりである。
【0032】
ディスプレイ58側には、ディスプレイ用受光器78が設けられている。このディスプレイ用受光器78は受信した赤外線を電気信号に変換する。この信号を信号再生回路79が処理する。これによって赤外線ビームが電気信号に変換され表示部59に画像を表示する。また、ヘッドホン20側では、ヘッドホン用受光器84が受信した赤外線ビームを信号再生回路85が処理する。この信号は、ヘッドホンに組み込まれたスピーカ87を駆動する。
【実施例5】
【0033】
図5は実施例5を説明するためのコンソールボックス46の主要部上面図である。
図の例では、コンソールボックス46の上面にボトルフォルダ88を固定して、そこに赤外線ラジエータ16を一体に組み込む。そして、赤外線ラジエータ16の発光部を、コンソールボックス46の、ボトルフォルダ88の上縁に取り付ける。自動車の車内には、鞄やコート、新聞や雑誌等の様々な持ち物が置かれる。本発明の装置は赤外線を使用することから、赤外線ラジエータ16の上を覆うように物が置かれるとその機能が阻害される。この実施例はそれを防止する。
【0034】
図5は、ボトルフォルダ88の上面図である。図に示すようにボトルフォルダ88の一方の辺に沿って、第1グループ48と第2グループ50の発光ダイオード群が取り付けられている。これらは、矢印に示す方向に第1の赤外線ビーム24A,24Bを発する。これによって運転席の背部のディスプレイ58と助手席の背部のディスプレイ60に対し、映像信号を送出する。一方、ボトルフォルダ88の中央付近には、第3グループ54と第4グループ56の赤外線発光器群が配置されている。これらは図に示すようにそれぞれ車の前部座席方向と後部座席方向に向かって第2の赤外線ビーム30A,30Bを送出する。これによって音声信号の送出が行われる。このような構造にすれば、赤外線ラジエータ16の大部分を図に示すようなボトルフォルダの下側に組み込むことができ、全体として装置を小型に見せることができる。また、この第1グループ、第2グループ、第3グループ、第4グループの赤外線発光器群の上に物を置かれることを防止できる。
【実施例6】
【0035】
図6は、ディスプレイ用受光器を椅子の下側に取り付けた例を示す図面で、後部座席から前部座席方向を見たときの正面図である。
図3(b)に示した構造では、赤外線ラジエータ16とディスプレイ58,60との間に新聞等の物が置かれると、赤外線ビームが遮られて、ディスプレイが作動しない。このため、図のように、画像信号用受光器101,102を、座席下まで延長コード92、93でのばし、赤外線ラジエータ16から座席下に向けて赤外線ビームを送出する。
【0036】
図6に示すディスプレイ58には、延長コード92を介してディスプレイ用受光器78が接続されている。また、ディスプレイ60には、延長コード93を介してディスプレイ用受光器79が接続されている。ディスプレイ用受光器78と79は、運転席と助手席の座席下に配置される。赤外線ラジエータ16の第1グループ48は画像信号用受光器101に向けて赤外線ビームを送出し、第2グループ50は画像信号用受光器102に向けて赤外線ビームを送出する。ディスプレイ58は、運転席の背部に取り付けられており、ディスプレイ60は、助手席の背部に取り付けられている。延長コード92と93は、いずれもこれらの席の座席下まで延長され、その先端にディスプレイ用受光器78や79を接続している。赤外線ラジエータ16に設けた第1グループ48と第2グループ50の赤外線発光器は、座席下側に向けて赤外線ビームを発射することになり、第1グループ48とディスプレイ用受光器98の間の距離、あるいは、第2グループ50とディスプレイ用受光器99との距離は非常に短いため、赤外線ビームの出力は十分に弱くできる。
【0037】
こうして、妨害の極めて少ないワイヤレス通信が可能になる。なお、第3グループや第4グループの赤外線発光器は赤外線ラジエータ16の上面にこれまで説明したとおりの要領で取り付ければよい。なお、この図に示すような例では、延長コード92を直接赤外線ラジエータ16に接続をし、ディスプレイについては、ワイヤレス化をしないという選択も可能である。しかしながら、こうするとディスプレイ58や60の配置の自由度が小さくなる。しかも、延長コード92の長さ調整も必要になる。これは、取り付け工事を煩雑にする。従って、この図に示すような構造が最も適するといえる。
【0038】
以上説明した本発明の自動車12用視聴覚システムは、以下の効果を有する。
1.画像信号22と音声信号28のコードレス送信に赤外線を利用するので、コードレス化ができ、自動車12への組み込みコストが低減できる。
2.送信に使用する赤外線は、可視光と異なり肉眼で見えないので、運転の妨げにならない。
3.反射を利用して車内の隅々にまでヘッドホン20駆動用の音声信号28を送信することができる。例えば、音声信号は、全て自動車の天井で反射させるものとすれば、画像信号への干渉を少なくし、かつ、自動車の全席に対してほぼ均等なパワーで音声信号を送信できる。
4.窓70から直接放射されるエネルギを少なくするように、赤外線ラジエータ16の指向性を設定できるから、窓70越しに近くの自動車12やその他の設備に飛び込んで混信を発生させるおそれがない。電波よりも制御が容易である。
5.赤外線ラジエータ16を複数のグループに分けて独立に制御すれば、各ディスプレイ18もヘッドホン20も、それぞれ任意のチャンネルのコンテンツを再生できるから、個々の乗客66が独立して、好みのコンテンツを鑑賞できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
上記の説明では、主として自家用車の内部に自動車用視聴覚システムを据え付ける例を説明したが、予め自動車用視聴覚システム専用の配線設備を持たず、事後的にオプションで自動車用視聴覚システムを取り付けることが要求されるバスやワゴン車、電車等に広く採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1の自動車用視聴覚システムを使用した自動車の平面図である。
【図2】赤外線ラジエータの内部回路のブロック図である。
【図3】赤外線ラジエータ16の取り付け位置に関する実施例を示す説明図で、(a)は車の中心線40(図1)を含む自動車12の垂直縦断面図、(b)は赤外線ラジエータ16を、ディスプレイ58のある位置で車の中心線40に垂直な面で切断した横断面図、(c)と(d)は赤外線ビームの説明図である。
【図4】本発明の装置において画像信号や音声信号が処理される回路構成を示すブロック図である。
【図5】実施例5を説明するためのコンソールボックスの主要部上面図である。
【図6】ディスプレイ用受光器を椅子の下側に取り付けた例を示す図面で、後部座席から前部座席方向を見たときの正面図である。
【符号の説明】
【0041】
12 自動車
16 赤外線ラジエータ
20 ヘッドホン
36 前部座席
38 後部座席
40 車の中心線
42 運転席
44 助手席
46 コンソールボックス
58 運転席の背部のディスプレイ
60 助手席の背部のディスプレイ
62 計器盤
64 フロントパネル
66 乗客
68 車内の壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の室内で、それぞれ所定の指向性を持ち独立に制御される複数の赤外線ビームを送出する赤外線ラジエータと、
前記自動車の室内に固定されたディスプレイと、
乗客用のヘッドホンとを備え、
前記赤外線ラジエータは、前記ディスプレイへ画像信号を伝送するための第1の赤外線ビームを送出する第1の発光部と、前記ヘッドホンへ音声信号を伝送するための第2の赤外線ビームを送出する第2の発光部とを備えたことを特徴とする自動車用視聴覚システム。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用視聴覚システムにおいて、
前記赤外線ラジエータは、前記自動車の前部座席方向と後部座席方向を見通せる、車の中心線付近に配置されることを特徴とする自動車用視聴覚システム。
【請求項3】
請求項1に記載の自動車用視聴覚システムにおいて、
赤外線ラジエータの配置場所は、自動車の運転席と助手席に挟まれたコンソールボックス上であることを特徴とする自動車用視聴覚システム。
【請求項4】
請求項1に記載の自動車用視聴覚システムにおいて、
前記赤外線ラジエータに備えられた、
前記第1の発光部は、第1グループと第2グループの発光ダイオード群からなり、
前記第2の発光部は、第3グループと第4グループの発光ダイオード群からなり、
前記第1グループは運転席の背部のディスプレイ方向に赤外線を送出し、
前記第2グループは、助手席の背部のディスプレイ方向に赤外線を送出し、
前記第3グループは、後部座席方向に赤外線を送出し、
前記第4グループは、前部座席前方の計器盤等が配置されたフロントパネル方向に赤外線を送出することを特徴とする自動車用視聴覚システム。
【請求項5】
請求項1に記載の自動車用視聴覚システムにおいて、
前記赤外線ラジエータに備えられた第1の発光部と第2の発光部とは、
自動車の窓の下縁の線よりも低い位置かあるいは、窓の上縁の線よりも高い位置に配置することを特徴とする自動車用視聴覚システム。
【請求項6】
請求項1に記載の自動車用視聴覚システムにおいて、
赤外線ラジエータの発光部を、コンソールボックスの、ボトルフォルダの上縁に取り付けたことを特徴とする自動車用視聴覚システム。
【請求項7】
請求項1に記載の自動車用視聴覚システムにおいて、
前記ディスプレイ用受光器を座席下に配置し、このディスプレイ用受光器とディスプレイとを延長コードを用いて接続し、
前記第1の発光部は、前記座席下のディスプレイ用受光器に向けて赤外線ビームを送出することを特徴とする自動車用視聴覚システム。
【請求項8】
請求項1に記載の自動車用視聴覚システムにおいて、
前記赤外線ラジエータに備えられた音声信号用の発光部は、
自動車の天井方向に赤外線を送出することを特徴とする自動車用視聴覚システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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