説明

自動食器洗浄機用洗浄剤

【課題】ゴム状物質が発生せず、常温保管時や低温保管時でも分離しにくい自動食器洗浄機用洗浄剤を提供すること。
【解決手段】低泡性非イオン界面活性剤(A)と、
洗浄ビルダー(B)と、
炭素数6〜10の直鎖脂肪族カルボン酸(C)と、
炭素数6〜10の分岐脂肪族カルボン酸(D)とを必須成分として含有する自動食器洗浄機用洗浄剤であって、
上記(A)の含有量は、0.1〜20重量%であり、
上記(B)の含有量は、5〜40重量%であり、
上記(C)の含有量は、0.1〜15重量%であり、
上記(D)の含有量は、0.1〜15重量%であることを特徴とする自動食器洗浄機用洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動食器洗浄機用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動食器洗浄機用洗浄剤としては、非イオン界面活性剤等の界面活性剤と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸塩、リン酸塩、ポリリン酸等を含む洗浄ビルダーとからなる自動食器洗浄機用洗浄剤が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、非イオン界面活性剤と、洗浄ビルダーと、カルボキシビニルポリマーからなる乳化剤とを含んでなる乳化型の自動食器洗浄機用洗浄剤が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、非イオン界面活性剤と、洗浄ビルダーと、炭素数6〜10の直鎖脂肪族カルボン酸とを含んでなる可溶型の自動食器洗浄機用洗浄剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−80998号公報
【特許文献2】特開平06−33100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された乳化型の自動食器洗浄機用洗浄剤は、食器に特有な油脂汚れ等に対して充分な洗浄力を有しており、ウォータースポットを抑制することができるとされている。
【0007】
しかしながら、自動食器洗浄機用洗浄剤の使用条件によっては、乳化剤と洗浄に使用する水に含まれるカルシウム等とが反応してゴム状物質を形成し、このゴム状物質が自動食器洗浄機の内部に堆積して洗浄力が低下することがあった。そのため、ゴム状物質を定期的に除去しなければならないという問題があった。
【0008】
一方、特許文献2に記載された可溶型の自動食器洗浄機用洗浄剤は、油脂汚れ等に対して充分な洗浄力及び抑泡性を有しており、異臭の発生がないとされている。
また、乳化剤を使用していないので、ゴム状物質の発生を抑制することができると考えられる。
【0009】
しかしながら、常温で長期間保管した場合(以下、単に常温保管時ともいう)や低温で保管した場合(以下、単に低温保管時ともいう)には、自動食器洗浄機用洗浄剤が塩析作用により分離しやすく、分離した状態で使用すると洗浄力が低下するという問題があった。
特に、低温保管時には、自動食器洗浄機用洗浄剤が凍結して固化しやすいという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような従来の自動食器洗浄機用洗浄剤が有する問題に鑑み、本発明者は、ゴム状物質が発生せず、常温保管時や低温保管時でも分離しにくい自動食器洗浄機用洗浄剤を開発することを目的として鋭意検討を行った。
その結果、乳化剤を使用しない可溶型の自動食器洗浄機用洗浄剤をベースとして所定の炭素数の直鎖脂肪族カルボン酸と所定の炭素数の分岐脂肪族カルボン酸とを併用することにより、ゴム状物質が発生せず、しかも常温保管時や低温保管時でも分離しにくいことを見出した。そして、係る知見に基づいてさらなる検討を行った結果、上述した課題を解決することのできる本発明に想到した。
【0011】
即ち、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤は、低泡性非イオン界面活性剤(A)と、洗浄ビルダー(B)と、炭素数6〜10の直鎖脂肪族カルボン酸(C)と、炭素数6〜10の分岐脂肪族カルボン酸(D)とを必須成分として含有する自動食器洗浄機用洗浄剤であって、
上記(A)の含有量は、0.1〜20重量%であり、
上記(B)の含有量は、5〜40重量%であり、
上記(C)の含有量は、0.1〜15重量%であり、
上記(D)の含有量は、0.1〜15重量%であることを特徴とする。
【0012】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤は、泡立ちが少なく良好な洗浄力を発揮する低泡性非イオン界面活性剤(A)と、上記(A)の洗浄力を補助する洗浄ビルダー(B)とが所定量含まれているため、充分な洗浄力及び抑泡性を発揮することができる。
【0013】
また、炭素数6〜10の直鎖脂肪族カルボン酸(C)と、炭素数6〜10の分岐脂肪族カルボン酸(D)とが所定量含まれているため、常温保管時や低温保管時であっても、分離しにくい。
【0014】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤では、上記(A)の含有量が0.1〜10重量%であり、上記(B)の含有量が10〜30重量%であり、上記(C)の含有量が0.5〜10重量%であり、上記(D)の含有量が0.5〜15重量%であることが望ましい。
【0015】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤では、上記(D)が炭素数8の分岐脂肪族カルボン酸であることが望ましい。
【0016】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤では、上記(C)がオクタン酸であり、上記(D)が2−エチルヘキサン酸であることが望ましい。
【0017】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤は、単糖類、オリゴ糖類、アルキルグルコシド及びアルキルポリグルコシドからなる群から選択される一の糖類(E)をさらに含有していることが望ましく、上記アルキルグルコシド又は上記アルキルポリグルコシドのアルキル基は、炭素数が1〜12であることがより望ましく、上記(E)は、ブチルグルコシドであることが特に望ましい。
また、上記(E)の含有量は、0.05〜10重量%であることが望ましい。
【0018】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤では、上記(A)が、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、プルロニック型ブロックポリマー、リバースプルロニック型ブロックポリマー、テトロニック型ブロックポリマー、リバーステトロニック型ブロックポリマー及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルからなる群から選択される1又は2以上の低泡性非イオン界面活性剤であることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤は、充分な洗浄力及び抑泡性を発揮することができるし、常温保管時や低温保管時であっても、分離しにくい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤について、詳しく説明する。
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤は、低泡性非イオン界面活性剤(A)と、
洗浄ビルダー(B)と、
炭素数6〜10の直鎖脂肪族カルボン酸(C)と、
炭素数6〜10の分岐脂肪族カルボン酸(D)とを必須成分として含有する自動食器洗浄機用洗浄剤であって、
上記(A)の含有量は、0.1〜20重量%であり、
上記(B)の含有量は、5〜40重量%であり、
上記(C)の含有量は、0.1〜15重量%であり、
上記(D)の含有量は、0.1〜15重量%であることを特徴とする。
【0021】
低泡性非イオン界面活性剤(A)としては、例えば、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、プルロニック型ブロックポリマー、リバースプルロニック型ブロックポリマー、テトロニック型ブロックポリマー、リバーステトロニック型ブロックポリマー及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルからなる群から選択される1又は2以上の低泡性非イオン界面活性剤を挙げることができる。
これらのポリマーは、泡立ちがより少なく、より良好な洗浄力を発揮することができるため、低泡性非イオン界面活性剤(A)として望ましい。
また、低泡性非イオン界面活性剤(A)と、例えば、ポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミド等の比較的泡立ちのよい非イオン界面活性剤とを混合してもよい。この場合、上記(A)とポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミドとの混合物におけるポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミドの配合量は、50重量%以下であることが望ましい。
【0022】
ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルとしては、例えば、下記の化学式(1)で表される構造式を有するものが挙げられる。
【化1】

式中、x、yはそれぞれ1以上の整数であり、Rはアルキル基である。特に好ましくは、xが約10、yが約4であり、RがC13〜C15のアルキル基であるか、xが約5、yが約3.5であり、RがC12〜C14のアルキル基であるか、xが約2、yが約4であり、RがC13〜C15のアルキル基である。
【0023】
また、別のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルとしては、例えば、下記の化学式(2)で表される構造式を有するものが挙げられる。
【化2】

式中、xは1以上の整数であり、Rはアルキル基である。
特に好ましくは、xが約3であり、RがC12のアルキル基であるか、xが約5であり、RがC12のアルキル基である。
【0024】
また、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテルとしては、例えば、下記の化学式(3)で表される構造式を有するものが挙げられる。
【化3】

式中、xは1以上の整数であり、特に好ましくは約5であり、Rはアルキル基であり、特に好ましくは、C8のアルキル基である。
【0025】
プルロニック型ブロックポリマーとしては、例えば、下記の化学式(4)で表される構造式を有するものが挙げられる。
【化4】

式中、x、y、x’はそれぞれ1以上の整数を示している。
特に好ましくは、平均分子量が約3800であり、エチレンオキサイド(EO)含有量が総分子量の約10%であるか、平均分子量が約3500であり、エチレンオキサイド(EO)含有量が総分子量の約40%である。
【0026】
また、リバースプルロニック型ブロックポリマーとしては、例えば、下記の化学式(5)で表される構造式を有するものが挙げられる。
【化5】

式中、x、y、x’はそれぞれ1以上の整数を示している。
特に好ましくは、平均分子量が約3100であり、エチレンオキサイド(EO)含有量が総分子量の約20%である。
【0027】
また、テトロニック型ブロックポリマーとしては、例えば、下記の化学式(6)で表される構造式を有するものが挙げられる。
【化6】

式中、x、x’x’’、x’’’、y、y’、y’’、y’’’は、それぞれ1以上の整数を示している。特に好ましくは、平均分子量が約3600であり、エチレンオキサイド(EO)含有量が総分子量の約10%である。
【0028】
また、リバーステトロニック型ブロックポリマーとしては、例えば、下記の化学式(7)で表される構造式を有するものが挙げられる。
【化7】

式中、x、x’x’’、x’’’、y、y’、y’’、y’’’は、それぞれ1以上の整数を示している。特に好ましくは、平均分子量が約7700であり、エチレンオキサイド(EO)含有量が総分子量の約20%である。
【0029】
また、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルとしては、例えば、下記の化学式(8)で表される構造式を有するものが挙げられる。
【化8】

式中、xは1以上の整数であり、Rはアルキル基である。
特に好ましくは、xが約5であり、RがC9のアルキル基であるか、xが約7であり、RがC9のアルキル基であるか、xが約10であり、RがC9のアルキル基である。
【0030】
また、別のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルとしては、例えば、下記の化学式(9)で表される構造式を有するものが挙げられる。
【化9】

式中、x、yはそれぞれ1以上の整数であり、Rはアルキル基である。
特に好ましくは、xが約7であり、yが約7であり、RがC9のアルキル基である。
【0031】
また、ポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミドとしては、例えば、下記の化学式(10)で表される構造式を有するものが挙げられる。
【化10】

式中、xは1以上の整数であり、Rはアルキル基である。
特に好ましくは、xが約2であり、Rがヤシ油脂肪酸残基であるか、xが約5であり、Rがヤシ油脂肪酸残基である。
【0032】
低泡性非イオン界面活性剤(A)の含有量は、0.1〜20重量%である。そのため、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤は、泡立ちが少なく、良好な洗浄力を発揮することができる。
これに対して、上記(A)の含有量が0.1重量%未満であると、上記(A)の含有量が少なすぎて、充分な洗浄力が得られない。また、上記(A)の含有量が20重量%を超えると、上記(A)の量が多すぎて自動食器洗浄機用洗浄剤が分離する。
【0033】
上記(A)の含有量は、0.1〜10重量%であることが望ましい。かかる自動食器洗浄機用洗浄剤は、洗浄力により優れるからである。
また、上記(A)の含有量は、0.5〜5重量%であることがより望ましい。
【0034】
洗浄ビルダー(B)としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、その他のリン酸塩等のアルカリ系化合物の他、クエン酸塩、リンゴ酸塩、ケイ酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)塩、ニトリロ三酢酸塩、ポリアクリル酸塩等を使用してもよい。
【0035】
洗浄ビルダー(B)の含有量は、5〜40重量%である。そのため、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤は、洗浄ビルダー(B)が低泡性非イオン界面活性剤(A)の洗浄力を補強し、良好な洗浄力を発揮することができる。
【0036】
上記(B)の含有量が5重量%未満であると、洗浄ビルダー(B)の量が少なすぎて洗浄力が低くなり、上記(B)の含有量が40重量%を超えると、洗浄ビルダー(B)の量が多すぎて自動食器洗浄機用洗浄剤が分離する。
【0037】
上記(B)の含有量は、10〜30重量%であることが望ましい。
かかる自動食器洗浄機用洗浄剤は、洗浄力により優れ、常温保管時のみならず、低温保管時での自動食器洗浄機用洗浄剤の分離を確実に抑えることができるからである。
【0038】
炭素数6〜10の直鎖脂肪族カルボン酸(C)としては、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(ヘプチル酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)が挙げられる。
これに対して、炭素数が10を超える直鎖脂肪族カルボン酸を使用すると、自動食器洗浄機用洗浄剤が泡立ちすぎて自動食器洗浄機を使用して食器を洗浄することができず、炭素数が6未満の直鎖脂肪族カルボン酸を使用すると、常温保管時及び低温保管時での溶液安定性が低くなり、分離する。
また、炭素数6〜10の直鎖脂肪族カルボン酸(C)は、ナトリウム、カリウム等と塩を形成していてもよいし、塩を形成していない場合は、アルカリ水溶液を添加して中和してもよい。なお、中和用のアルカリ水溶液は、洗浄ビルダー(B)に含めないこととする。
【0039】
炭素数6〜10の直鎖脂肪族カルボン酸(C)の含有量は、0.1〜15重量%である。
そのため、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤は、常温保管時や低温保管時であっても、分離しにくい。
【0040】
上記(C)の含有量が0.1重量%未満であると、上記(C)の量が少なすぎて自動食器洗浄機用洗浄剤が分離する。
上記(C)の含有量が15重量%を超えると、上記(C)の量が多すぎて、相対的に他の必須成分の含有量が少なくなるので、充分な洗浄力を発揮することができない。
なお、上記(C)が全く含まれていない場合には、自動食器洗浄機用洗浄剤が分離してしまう。
【0041】
上記(C)の含有量は、0.5〜10重量%であることが望ましい。かかる自動食器洗浄機用洗浄剤は、高い洗浄力を発揮することができるし、常温保管時のみならず、低温保管時での分離を確実に抑えることができるからである。
上記(C)の含有量は、1〜5重量%であることがより望ましい。
【0042】
上記直鎖脂肪族カルボン酸(C)は、オクタン酸であることが望ましい。
溶液安定性をより高くすることができるので、自動食器洗浄機用洗浄剤がより分離しにくくなるからである。
【0043】
炭素数6〜10の分岐脂肪族カルボン酸(D)としては、2−エチルヘキサン酸、4−イソカプロン酸、4−エチルオクタン酸等が挙げられる。
分岐脂肪族カルボン酸(D)のなかでは、炭素数8の分岐脂肪族カルボン酸であることが望ましい。上記(D)が炭素数8の分岐脂肪族カルボン酸であると、常温保管時及び低温保管時での溶液安定性をより高くすることが可能となり、自動食器洗浄機用洗浄剤がより分離しにくいからである。なかでも、上記(D)が2−エチルヘキサン酸であることがより望ましい。特に、上記(C)がオクタン酸であり、上記(D)が2−エチルヘキサン酸であると、常温保管時及び低温保管時での溶液安定性をさらに高くすることができるので、自動食器洗浄機用洗浄剤が極めて分離しにくい。
これに対して、炭素数が10を超える分岐脂肪族カルボン酸を使用すると、自動食器洗浄機用洗浄剤が泡立ちすぎて自動食器洗浄機を使用して食器を洗浄することができず、炭素数が6未満の分岐脂肪族カルボン酸を使用すると、常温保管時及び低温保管時での溶液安定性が低くなり、自動食器洗浄機用洗浄剤が分離する。
また、炭素数6〜10の分岐脂肪族カルボン酸(D)は、ナトリウム、カリウム等と塩を形成していてもよいし、塩を形成していない場合は、アルカリ水溶液を添加して中和してもよい。中和用のアルカリ水溶液は、洗浄ビルダー(B)に含めないこととする。
【0044】
炭素数6〜10の分岐脂肪族カルボン酸(D)の含有量は、0.1〜15重量%である。
そのため、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤は、常温保管時及び低温保管時であっても、分離しにくい。
【0045】
上記(D)の含有量が0.1重量%未満であると、上記(D)の量が少なすぎて、常温保管時及び低温保管時に自動食器洗浄機用洗浄剤が容易に分離する。
上記(D)の含有量が15重量%を超えると、上記(D)の量が多すぎて相対的に他の必須成分の含有量が少なくなるので、充分な洗浄力を発揮することができない。
【0046】
炭素数6〜10の分岐脂肪族カルボン酸(D)の含有量は、0.5〜15重量%であることが望ましい。かかる自動食器洗浄機用洗浄剤は、高い洗浄力を発揮することができるし、常温保管時及び低温保管時での分離を確実に抑えることができるからである。
炭素数6〜10の分岐脂肪族カルボン酸(D)の含有量は、2〜8重量%であることがより望ましい。
【0047】
また、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤は、単糖類、オリゴ糖類、アルキルグルコシド及びアルキルポリグルコシドからなる群から選択される一の糖類(E)をさらに含有していることが望ましい。
上記糖類(E)が配合されていると、自動食器洗浄機用洗浄剤を分離させることなく、低泡性非イオン界面活性剤(A)をより多量に配合することができる。そのため、より高い洗浄力を発揮することができる。
【0048】
上記単糖類としては、例えば、ジヒドロキシアセトン、グリセルアルデヒド、エリトルロース、エリトロース、トレオース、リブロース、キシルロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、デオキシリボース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、フコース、フクロース、ラムノース等が挙げられる。
【0049】
上記オリゴ糖類としては、例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース等の二糖類、ラフィノース、マルトトリオース等の三糖類等が挙げられる。
【0050】
アルキルグルコシド及びアルキルポリグルコシド(以下、単にアルキル(ポリ)グルコシドともいう)は、下記一般式(11)で表すことができる。
【化11】

は、炭素数1〜12のアルキル基であり、nは、1又は2である。
【0051】
上記アルキル(ポリ)グルコシドにおいて、炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、s−ヘプチル基、t−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、s−オクチル基、t−オクチル基、イソオクチル基、n−ノニル基、s−ノニル基、t−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、s−デシル基、t−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、s−ウンデシル基、t−ウンデシル基、イソウンデシル基、n−ドデシル基、s−ドデシル基、t−ドデシル基、イソドデシル基等のアルキル基が挙げられる。
【0052】
これらのなかでは、アルキル基がブチル基であることが特に好ましい。即ち、上記糖類(E)は、ブチル(ポリ)グルコシドであることが望ましい。
上記(E)がブチル(ポリ)グルコシドであると、自動食器洗浄機用洗浄剤を分離させることなく、低泡性非イオン界面活性剤(A)をさらに多量に配合することができる。そのため、さらに高い洗浄力を発揮することができる。
これに対して、上記アルキル(ポリ)グルコシドにおいて、アルキル基の炭素数が12を超えると、自動食器洗浄機を使用して洗浄した場合に泡立ちが問題となることがある。
【0053】
糖類(E)の含有量は、0.05〜10重量%であることが望ましい。
上記糖類(E)の含有量が0.05〜10重量%であると、自動食器洗浄機用洗浄剤を分離させることなく、低泡性非イオン界面活性剤(A)をさらに多量に配合することができるので、さらに高い洗浄力を発揮することができる。
これに対して、上記糖類(E)の含有量が0.05重量%未満であると、糖類(E)の含有量が少なすぎて、特に、低泡性非イオン界面活性剤(A)の配合量を増やした場合に分離しやすくなることがある。また、上記糖類(E)の含有量が10重量%を超えると、糖類(E)の含有量が多すぎて、相対的に上記(A)及び(B)の含有量が減ってしまい、洗浄力が低下することがある。
上記糖類(E)の含有量は、0.5〜10重量%であることがより望ましい。
【0054】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤には、必須成分以外の成分として、水、エタノール等のアルコール類、シリコン等の抑泡剤、消臭剤、帯電防止剤等を補助成分として、自動食器洗浄機用洗浄剤の洗浄力、溶液安定性に支障のない範囲で適宜に配合することができる。
【0055】
次に、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤の製造方法について説明する。
【0056】
まず、洗浄ビルダー(B)の水溶液に、上述した低泡性非イオン界面活性剤(A)と、炭素数6〜10の直鎖脂肪族カルボン酸(C)と、炭素数6〜10の分岐脂肪族カルボン酸(D)と、必要に応じて糖類(E)とを添加し、ミキサーを用いて攪拌する。
これにより、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤を製造することができる。
【実施例】
【0057】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
低泡性非イオン界面活性剤としてポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル(純度:100%)を1.0重量%と、洗浄ビルダーとしてKOH水溶液(純度:49%)を10.0重量%と、洗浄ビルダーとしてNaOH水溶液(純度:49%)を10.0重量%と、洗浄ビルダー(キレート剤)としてニトリロ三酢酸三ナトリウム(純度:100%)を10.0重量%と、洗浄ビルダー(スケール防止剤)としてポリアクリル酸ナトリウム(MW=4000〜8000、純度:40%)を4.0重量%と、2−エチルヘキサン酸(純度:100%)を6.0重量%と、オクタン酸(純度:100%)を4.0重量%と、中和用のNaOH水溶液(純度:49%)を5.7重量%と、水49.3重量%とを混合し、攪拌することにより、実施例1の自動食器洗浄機用洗浄剤を製造した。
【0059】
(実施例2)
オクタン酸に代えてデカン酸(カプリン酸、純度:100%)を使用し、ニトリロ三酢酸三ナトリウムに代えてエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(純度:100%)を使用し、配合比率を下記する表1に記載したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして自動食器洗浄機用洗浄剤を製造した。
【0060】
(実施例3)
ニトリロ三酢酸三ナトリウムに代えてエチレンジアミン四酢酸四ナトリウムを使用し、配合比率を下記する表1に記載したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして自動食器洗浄機用洗浄剤を製造した。
【0061】
(実施例4)
炭素数4〜8のアルキル基を有するアルキルポリグルコシドの混合物として、Simulsol AS48(SEPPIC社製、純度:50%)を添加し、ニトリロ三酢酸三ナトリウムに代えてエチレンジアミン四酢酸四ナトリウムを使用し、配合比率を下記する表1に記載したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして自動食器洗浄機用洗浄剤を製造した。
【0062】
(実施例5)
炭素数4のアルキル基を有するアルキルポリグルコシド(ブチルポリグルコシド)として、ノニオシド(登録商標)B−15(第一工業製薬社製、純度:50%)を添加し、配合比率を下記する表1に記載したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして自動食器洗浄機用洗浄剤を製造した。
【0063】
(実施例6)
炭素数10〜12のアルキル基を有するアルキルポリグルコシドの混合物として、マイドール12(花王株式会社製、純度:50%)を添加し、配合比率を下記する表1に記載したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして自動食器洗浄機用洗浄剤を製造した。
【0064】
(実施例7)
グルコース(純度:100%)を1重量%添加し、配合比率を下記する表1に記載したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして自動食器洗浄機用洗浄剤を製造した。
【0065】
(実施例8)
スクロース(純度:100%)を8重量%添加し、配合比率を下記する表1に記載したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして自動食器洗浄機用洗浄剤を製造した。
【0066】
(比較例1)
2−エチルヘキサン酸を添加せず、配合比率を下記する表1に記載したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして自動食器洗浄機用洗浄剤を製造した。
【0067】
(比較例2)
低泡性非イオン界面活性剤を添加せず、ニトリロ三酢酸三ナトリウムに代えてエチレンジアミン四酢酸四ナトリウムを使用し、配合比率を下記する表1に記載したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして自動食器洗浄機用洗浄剤を製造した。
【0068】
(比較例3)
オクタン酸に代えてドデカン酸(ラウリン酸、純度:100%)を使用し、ニトリロ三酢酸三ナトリウムに代えてエチレンジアミン四酢酸四ナトリウムを使用し、配合比率を下記する表1に記載したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして自動食器洗浄機用洗浄剤を製造した。
【0069】
(比較例4)
オクタン酸を添加せず、ニトリロ三酢酸三ナトリウムに代えてエチレンジアミン四酢酸四ナトリウムを使用し、配合比率を下記する表1に記載したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして自動食器洗浄機用洗浄剤を製造した。
【0070】
【表1】

【0071】
(溶液安定性の評価)
各実施例及び各比較例で製造した自動食器洗浄機用洗浄剤を用いて、溶液安定性を以下のようにして評価した。
【0072】
100mlの自動食器洗浄機用洗浄剤を、透明なポリプロピレン製のボトルに入れてキャップで封口した。
ボトルに入れた自動食器洗浄機用洗浄剤が分離しているか否かについて、(i)自動食器洗浄機用洗浄剤を製造してボトルに充填した直後(自動食器洗浄機用洗浄剤の温度:約50℃)、(ii)上記ボトルを室温で1日保管した後、(iii)上記ボトルを−7℃の冷蔵庫で一日保管した後の各状態につき、目視により確認した。
【0073】
溶液安定性の評価結果については、下記する表2に示す。
表2では、自動食器洗浄機用洗浄剤が透明であり、分離していなかった場合を○で示し、自動食器洗浄機用洗浄剤が2層以上に分離したか、凍結して固化した場合を×で示している。
【0074】
【表2】

【0075】
(食器洗浄性の評価)
各実施例及び各比較例で製造した自動食器洗浄機用洗浄剤を用いて、食器洗浄性評価試験を以下のようにして行った。
【0076】
(1)サンプルの前処理工程
ポリプロピレン製の箱状プラスチック食器(長さ170mm×幅115mm×深さ30mm)を準備した。
【0077】
プラスチック食器は、市販の中性洗浄剤によって手洗いし、水ですすぎ洗いした後、その表面をエタノールで拭くことにより乾燥させた。
【0078】
(2)汚垢調製工程
汚垢材料として小麦粉、牛乳、鶏卵、バター及び天ぷら油を用意した。
小麦粉10gを精製水90g中に加えて撹拌し、これを加熱して80〜90℃の温度に10分間保つことにより小麦粉を糊化させた。
得られた糊化水溶液を常温にまで放冷した。
【0079】
牛乳、鶏卵、バター及び天ぷら油を、それぞれ20gずつ順に同一のビーカー内に入れて混合することにより混合材料を作製した。
この混合材料中に糊化水溶液20gを加え、20〜30℃の温度下、丸筆を用いて混ぜた。
バターが完全に溶解したところで、これを汚垢材料とした。
【0080】
(3)汚垢塗布工程
プラスチック食器に対しては、約1gの汚垢材料を丸筆に浸み込ませ、プラスチックの食器の内表面積の約50%に塗布したものを被洗浄食器とした。
【0081】
(4)自動洗浄工程
次に、各実施例及び各比較例で製造した洗浄剤を使用し、自動食器洗浄機により被洗浄食器を洗浄した。
自動食器洗浄機としては、45L容量の洗浄タンクを備えるホシザキ電機社製JW650型の自動食器洗浄機を利用し、洗浄時間を後記するように標準に設定して行った。
この自動洗浄工程は、具体的には次のようにして行った。
【0082】
まず、自動食器洗浄機の洗浄タンク内に洗浄用水(水温;58±3℃)を給水し、洗浄用水中に実施例、比較例等で製造した一の洗浄剤90gを加えることにより洗浄剤溶液とした。
別途、被洗浄食器として、プラスチック製容器1個とを、口部を下向きにしてラック上にセットした。
【0083】
次に、洗浄剤溶液の散布による洗浄処理を1分間行い、続いて、80±4℃のすすぎ湯水を散布することによるすすぎ洗いを20秒間行ない、さらにその後2分間放置することにより洗浄処理を行った。
1回の洗浄処理ごとに、被洗浄食器を新たな被洗浄食器と取り替えて、合計5回の洗浄処理を連続して行った。
なお、連続して洗浄処理を行う途中の過程では、洗浄剤を補給しなかった。そのため、洗浄剤溶液中の洗浄剤濃度は、洗浄処理ごとに順次希釈されて低くなっていたと考えられる。洗浄剤の濃度は、洗浄1回目で0.2%、洗浄5回目で0.1%になる。
【0084】
食器洗浄性の評価結果を、溶液安定性の評価結果と合わせて表2に示す。
食器洗浄性の評価は、目視で食器を観察することにより行い、汚垢が落ちているか否か及び汚垢が落ちているとすればその程度を確認することにより判定した。
表2では、汚垢が全て落ちていると確認できた場合を◎で示しており、汚垢がわずかに残っている場合を○で示しており、汚れが多く残っている場合を△で示しており、汚れがかなり多く残っている場合を×で示している。
【0085】
各実施例の結果が示すように、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤を用いると、常温保管時や低温保管時でも分離することがなく、充分な洗浄力を発揮することができた。
特に、実施例4〜8で示すように、必須成分の他に所定量の糖類(E)を加えることにより分離を生じさせることなく、低泡性非イオン界面活性剤(A)をより多量に配合することができた。この結果、実施例4〜8では、プラスチック食器に対する洗浄力がより優れていた。
【0086】
比較例1の自動食器洗浄機用洗浄剤は、分岐脂肪族カルボン酸が含まれていなかったので、常温保管時には液状であったものの分離し、低温保管時には凍結して固化した。
比較例2の自動食器洗浄機用洗浄剤は、低泡性非イオン界面活性剤(A)が含まれていなかったので、プラスチック食器に対する洗浄力が極めて低かった。
比較例3の自動食器洗浄機用洗浄剤は、分岐脂肪族カルボン酸の炭素数が12であったため泡立ちが発生し、自動食器洗浄機を使用して食器を洗浄することができなかった。
比較例4の自動食器洗浄機用洗浄剤は、炭素数6〜10の直鎖脂肪族カルボン酸(C)が含まれていなかったため、製造直後の状態であっても、自動食器洗浄機用洗浄剤が分離した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低泡性非イオン界面活性剤(A)と、
洗浄ビルダー(B)と、
炭素数6〜10の直鎖脂肪族カルボン酸(C)と、
炭素数6〜10の分岐脂肪族カルボン酸(D)とを必須成分として含有する自動食器洗浄機用洗浄剤であって、
前記(A)の含有量は、0.1〜20重量%であり、
前記(B)の含有量は、5〜40重量%であり、
前記(C)の含有量は、0.1〜15重量%であり、
前記(D)の含有量は、0.1〜15重量%であることを特徴とする自動食器洗浄機用洗浄剤。
【請求項2】
前記(A)の含有量は、0.1〜10重量%であり、
前記(B)の含有量は、10〜30重量%であり、
前記(C)の含有量は、0.5〜10重量%であり、
前記(D)の含有量は、0.5〜15重量%である請求項1に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤。
【請求項3】
前記(D)は、炭素数8の分岐脂肪族カルボン酸である請求項1又は2に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤。
【請求項4】
前記(C)は、オクタン酸であり、
前記(D)は、2−エチルヘキサン酸である請求項1〜3のいずれかに記載の自動食器洗浄機用洗浄剤。
【請求項5】
単糖類、オリゴ糖類、アルキルグルコシド及びアルキルポリグルコシドからなる群から選択される一の糖類(E)をさらに含有している請求項1〜4のいずれかに記載の自動食器洗浄機用洗浄剤。
【請求項6】
前記アルキルグルコシド又は前記アルキルポリグルコシドのアルキル基は、炭素数が1〜12である請求項5に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤。
【請求項7】
前記(E)は、ブチルグルコシドである請求項5又は6に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤。
【請求項8】
前記(E)の含有量は、0.05〜10重量%である請求項5〜7のいずれかに記載の自動食器洗浄機用洗浄剤。
【請求項9】
前記(A)は、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、プルロニック型ブロックポリマー、リバースプルロニック型ブロックポリマー、テトロニック型ブロックポリマー、リバーステトロニック型ブロックポリマー及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルからなる群から選択される1又は2以上の低泡性非イオン界面活性剤である請求項1〜8のいずれかに記載の自動食器洗浄機用洗浄剤。

【公開番号】特開2012−82253(P2012−82253A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227384(P2010−227384)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000190736)株式会社ニイタカ (33)
【Fターム(参考)】