自動2輪車のドレイン構造
【課題】ドレイン孔を必要最小限の大きさとし、しかも、車体の傾斜状態がどのように変化しても確実に液体を排出可能にする。
【解決手段】燃料タンク21下方に設けた車体下部を覆うアンダーカバー20の左側へ偏った位置に略筒状の第1ドレインジョイント61を上方へ突出させて設け、燃料タンク21上方に配置した給油トレー44から燃料タンク21の側方を通って下方へ延びる第1ドレインチューブ51の先端を第1ドレインジョイント61へ挿し込んで係止する。第1ドレインジョイント61の底部には抜き孔が設けられ、給油トレー44の余剰燃料はここから車外へ確実に排出される。
【解決手段】燃料タンク21下方に設けた車体下部を覆うアンダーカバー20の左側へ偏った位置に略筒状の第1ドレインジョイント61を上方へ突出させて設け、燃料タンク21上方に配置した給油トレー44から燃料タンク21の側方を通って下方へ延びる第1ドレインチューブ51の先端を第1ドレインジョイント61へ挿し込んで係止する。第1ドレインジョイント61の底部には抜き孔が設けられ、給油トレー44の余剰燃料はここから車外へ確実に排出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動2輪車における各種液体のドレイン構造に係り、車体の直立もしくはどのような傾斜状態でも確実にドレインできるようにしたものに関する。
なお、本願において車体の直立とは、水平な地面に対して車体を真っ直ぐ起立させた状態をいうものとし、自動2輪車においては、メインスタンドを立てて駐車した状態に相当する。またサイドスタンドを立てて駐車した場合は、車体がサイドスタンド側となる左右いずれか側へ傾いた状態になる。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動2輪車において、適所に設けられたドレイン孔から各種液体を排出する際に、ドレイン孔下方に位置するカバー部材の抜き孔から排出させるとともに、車体の傾きが変化してもスムーズに排出できるようにすることが知られている。
例えば、オイルパンの下方にカバー部材の一部であるエンジンガードを設け、オイルパンのドレイン孔下方となるエンジンガードの位置に、車幅方向の長孔状をなす抜き孔を設け、この抜き孔から車体の直立もしくは傾斜状態でも、ドレイン孔から出たオイルを排出できるようにしたものがある(特許文献1参照)。なお、以下の説明において、ドレイン孔から排出される各種液体をドレイン液ということにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−87479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の従来技術では、車体がある程度左右方向等へ傾いた状態であると、ドレイン液(オイル)は確実にエンジンガードに設けた抜き孔から排出される。しかし、車体がある程度以上に大きく傾くと、ドレイン孔が抜き孔から外れるため、ドレイン液が抜き孔から排出されなくなる可能性がある。
したがって、自動2輪車において、傾きがどのような状態でもドレイン液がカバー部材に設けた抜き孔から抜け出ていく構造が求められている。本願はこのような要請の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため請求項1に記載した発明は、ドレイン孔と、その下方を覆うカバーとを有し、このカバーに形成された抜き孔を通してドレイン孔から排出されたドレイン液を車外へ排出するようにした自動2輪車のドレイン構造において、
前記ドレイン孔から前記抜き孔まではドレインチューブで接続され、
このドレインチューブの前記抜き孔側端部に略筒状の差込部を備えた係止構造が設けられていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載した発明は上記請求項1において、前記ドレインチューブは、前記ドレイン孔から左右一対のフレームの平面視内側かつ燃料タンク側方を通って前記抜き孔に接続されることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載した発明は上記請求項2において、前記ドレイン孔は、キャニスターと、バッテリボックスと、給油トレーと、に設けられ、それぞれが前記カバーと一体に成形された別々の前記抜き孔へ接続されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載した発明は上記請求項3において、前記各抜き孔は一カ所に集められ、前方から一直線に並び、車体の中心線よりサイドスタンド側に位置することを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載した発明は上記請求項3において、前記各抜き孔は一カ所に集められ、
前記各抜き孔は一カ所に集められ、少なくとも一部が起立時のサイドスタンド前後方向領域内に設けられることを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載した発明は上記請求項1〜5のいずれかにおいて、前記係止構造が、前記カバーと一体に成形された断面視略C形状の筒部の最上部に位置する係止部と、前記ドレインチューブ先端に設けられた膨張部によって構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、ドレイン孔から抜き孔までがドレインチューブで接続されることから、自動2輪車がどのような傾斜状態でもドレイン孔からの液体が、確実にカバーに設けた抜き孔から排出される。
また、ドレインチューブの抜き孔側端部に係止構造を設けたことにより、メンテナンス時に不用意にドレインチューブがカバーから外れることを防止することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、ドレインチューブをドレイン孔から左右一対のフレームの平面視内側かつ燃料タンク側方を通って抜き孔に接続したので、収納スペースの限られた自動2輪車のスペースを有効利用できるとともに、ドレインチューブが左右一対のフレームの内側を通るため、ドレインチューブに外力が働く可能性を抑えることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、複数のドレインチューブをそれぞれ抜き孔へ接続したので、メンテナンス(交換)時に、必要な部分のみを脱着させることができ、メンテナンス性が向上する。
【0014】
請求項4の発明によれば、複数の抜き孔が一直線に並び、車体の中心線よりサイドスタンド側に位置することから、サイドスタンドを起立させた駐車時に、ドレイン液を道路の路側部側に流すことができる。また、抜き孔が車体中心からオフセット配置されるので、ドレイン液を自車のタイヤで踏む可能性を抑えることができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、複数の抜き孔が一カ所に集められ、少なくともその一部が起立時のサイドスタンド前後方向領域内に設けられることから、上記一部の抜き孔については、車体側方から見たとき、サイドスタンド起立時にはサイドスタンドによってドレイン液が排出される様子を隠すことが可能となる。
【0016】
請求項6の発明によれば、抜き孔が断面視略C形状の筒部と、その筒部最上部に位置する係止部とを有してカバーと一体に成形されるので、一体成形によりコストを抑えることができる。
また、抜き孔側の係止部と、ドレインチューブ先端に設けられた膨張部によって係止構造が構成されるので、膨張部を側方から容易に取付けることができるとともに、上下方向は係止構造によって抜けにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係るスクータ型自動2輪車の左側面図
【図2】車体フレームの左側面図
【図3】車体フレーム要部の平面図
【図4】左側のステップフロア近傍部を斜め上方から示す斜視図
【図5】図5の同部位に関する左側面図
【図6】同上部位の平面図
【図7】同上部位の底面図
【図8】ドレインチューブ接続部の拡大断面図
【図9】アンダーカバーの斜め下方から示す斜視図
【図10】アンダーカバーの平面図
【図11】アンダーカバーの左側面図
【図12】図10の12−12線断面図
【図13】図8の13−13線断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて一実施形態を説明する。なお、前後・左右・上下の各方向は車両を基準とし、必要に応じて図面に、前方を矢示FR、左方を矢示LH、上方を矢示UPとして示す。
【0019】
図1は、本実施形態に係るスクータ型自動2輪車の左側面図である。この車両は、車体フレーム1の前後に前輪2と後輪3を配置してある。前輪2はフロントフォーク4を介して車体フレーム1の前端部へ回動自在に支持されるとともに、ステアリングシャフト5を介してハンドル6で操舵される。後輪3はスイング式パワーユニット7を介して車体フレーム1へ揺動自在に支持されている。スイング式パワーユニット7はエンジン7a及び伝動部7bを一体化したものであり、伝動部7bの後端部に後輪3が支持される。
スイング式パワーユニット7の後部はリヤサスペンションをなすリヤクッションユニット8を介して車体フレーム1の後部へ支持される。
【0020】
ハンドル6の後方には、シート9が配置される。シート9は前席9a及び後席9bを有するダブルシートであり、前席9aに着座したライダーは足を低床式のステップフロア10上に置くようになっている。
ステップフロア10は左右一対で設けられ、前輪2の後部側方から前席9aの下方まで前後方向へ長く配置されている。
後席9bに着座した同乗者はステップフロア10の後方に左右一対で設けられたピニオンステップ11に足を乗せるようになっている。
【0021】
ステップフロア10は車体を覆う車体カバー12の一部をなし、この車体カバー12は樹脂製であって、フロントカバー13、フロントサイドカバー14、インナーカバー15、センターカバー16、リヤカバー17、サイドカバー18、ロアカバー19及び後述するアンダーカバー20(図5参照)を備える。
【0022】
フロントカバー13は車体前部を覆う。フロントサイドカバー14は左右一対で設けられ、インナーカバー15と共にステアリングシャフト5の周囲及び車体フレーム1の前部を覆うとともに、左右一対のサイドカバー18と共に、ステップフロア10の前半部上方かつセンターカバー16下方に配置されている燃料タンク21を覆う。
センターカバー16は、インナーカバー15の後方かつ前席9a前方で燃料タンク21上方となる車体中央上部を覆い、燃料タンク21へ給油するための給油リッド16aが開閉自在に設けられている。
【0023】
リヤカバー17はシート9の下方を左右一対で覆い、その前端部はセンターカバー16及びフロントサイドカバー14の各後端部と接続している。内側に収納ボックス22が配置されている。収納ボックス22は車体フレーム1の後部に支持され、上方に開放して、ヘルメットを収容可能な大容量の容器状をなし、上部の開口をシート9により開閉される。
サイドカバー18はフロントサイドカバー14の後部及びリヤカバー17の前部の各下端部とステップフロア10の上方の間を覆うよう左右一対で設けられ、車体フレーム1の一部及び燃料タンク21のみならずエンジン7aの側方を覆い、その後方側下部には、エンジン7aの点火プラグに対するメンテナンス用リッド18aが開閉自在に設けられている。
【0024】
フロントサイドカバー14、リヤカバー17及びサイドカバー18が接続する部分近傍には、これらのカバーにより、燃料タンク21の後方に配置されたキャニスター23が覆われ、その後方でリヤカバー17とサイドカバー18の境界部には、これらのカバーによりバッテリボックス24が覆われている。
ロアカバー19は、ステップフロア10に沿ってその下方へ突出するように左右一対で設けられ、車体フレーム1の下部及びスイング式パワーユニット7の前部側方を覆っている。
【0025】
車体左側におけるロアカバー19の前後方向中間部には開口19aが設けられ、ここからサイドスタンド25が外部へ突出している。サイドスタンド25は回動軸25aで車体フレーム1側へ回動自在に取付けられ、収納位置と起立位置の間を回動自在になっている。サイドスタンド25を起立させると車体を左側に傾けて駐車することができる。なお、サイドスタンド25は仕向地の仕様により、反対側の車体右側へ設けられることもある。
図中の符号26はフロントフェンダ、27はエアクリーナ、28はリヤフェンダである。
【0026】
次に、車体フレーム1について詳細に説明する。
図2は車体フレーム1の左側面図、図3は要部の平面図である。これらの図において、車体フレーム1の前端部にはヘッドパイプ30が車体中心CL(図3)上に設けられ、ここでステアリングシャフト5を回動自在に支持している。
ヘッドパイプ30からは車体中心CLに沿ってパイプ状をなす1本のメインフレーム31が斜め下がり後方へ延出している。メインフレーム31の下端部はクロスパイプ32へ溶接され、クロスパイプ32は左右方向へ延びて左右一対をなすアンダーフレーム33へ溶接されている。
【0027】
アンダーフレーム33はパイプ状をなし、略水平に車体の前後方向へ延びる本体部33bがステップフロア10の下方に配置されてアンダーボーンフレームを形成し、各前端部側は内側かつ上方へ屈曲して車体フレーム1の下部両側へ溶接される前側屈曲部33aをなす。
後部は上方へ屈曲して斜め上がりに後方へ延び、左右一対をなすリヤフレーム34の前部へ下方から溶接されている後側屈曲部33cなす。
【0028】
後側屈曲部33cの上端部は各リヤフレーム34の前部へ溶接されている。各リヤフレーム34の前端部は、後側屈曲部33cとの溶接部よりも前方へ延出して、前方へ凸に湾曲する平面視U字状の補強パイプ35の左右部分へ溶接されている。補強パイプ35の各後端部は、リヤフレーム34との溶接部よりも後方へ延出して、後側屈曲部33cの上下方向中間部へ溶接されている。
【0029】
本体部33bには外側方へ突出するステップフロアステー36a,36bが前後に設けられ、ここにステップフロア10を乗せて支持するようになっている。本体部33bの中間部には下方へ突出する前側アンダーカバーステー37aが設けられている。
左側の本体部33bにはスタンドブラケット38が設けられ、ここにサイドスタンド25の上端部が回動軸25aで回動自在に取付けられるようになっている。
【0030】
スタンドブラケット38の後方には、本体部33bから後側屈曲部33cに続く屈曲部にセンターブラケット33dが設けられ、この前部に後側アンダーカバーステー37bが斜め下がり前方へ突出して設けられている。
【0031】
補強パイプ35の前部左右には、斜め上がり前方へ突出するステー39が設けられ、ここにバッテリボックス24(後述)を支持するようになっている。
バッテリボックス24は収納ボックス22の前方へ突出し、リッド(図示省略)で開閉自在になっている。
リヤフレーム34は平面視で、前後を補強パイプ35及びクロスプレート34bで閉じられ、この閉ループ状の空間内に収納ボックス22を収容して支持するようになっている。
【0032】
次に、ドレイン構造について説明する。
図4は左側のステップフロア10近傍部を斜め上方から示す斜視図(但しステップフロア10は省略してある)、図5は同部位の左側面図、図6は同部位の平面図、図7は同部位の底面図、図8はドレインチューブ接続部の拡大断面図である。なお、図4〜図6ではステップフロア10及びそれより上方の車体カバーを適宜省略して、車体カバー内側の構造を示している。図4ではフロントサイドカバー14、リヤカバー17、サイドカバー18を省略してある。
【0033】
図4に示すように、ステップフロアステー36a,36bは本体部33bに溶接され、かつ本体部33bから外側方へ張り出し、それぞれの突出端にフロア補強フレーム40がボルト41で取付けられている。このフロア補強フレーム40にボルト42でステップフロア10が取付けられる。
ロアカバー19の上部はビス43にてステップフロア10と結合される。
【0034】
図5に示すように、給油リッド16aの下方かつ燃料タンク21の上方に給油トレー44が配置されている。給油トレー44は燃料タンク21の給油口(図示せず)を囲む容器状をなし、給油時に溢れた燃料を捕集するための部材であり、その底部に設けられたドレイン孔44aから第1ドレインチューブ51が燃料タンク21の左側方を通って下方へ延出し、先端(下端)をアンダーカバー20に設けられた第1ドレインジョイント61へ接続している。なお、第1ドレインチューブ51は見易いように綾目のハッチングで示す(以下、該当する各図においても同様。また、第2ドレインチューブ52及び第3ドレインチューブ53も同様)。
【0035】
第1ドレインチューブ51は給油トレー44に溢れた燃料をステップフロア10下方のアンダーカバー20に設けられた第1抜き孔64から車体外方(アンダーカバー20の下方)へ排出するための部材である。第1抜き孔64は第1ドレインジョイント61の底部に開口している。
【0036】
第1ドレインチューブ51の後方には、キャニスター23の側方突出端部に設けられたドレイン孔23aから延出する第2ドレインチューブ52が第1ドレインチューブ51と同様に燃料タンク21の左側方を通って下方へ延び、ステップフロア10に設けられた第2ドレインジョイント62へ接続している。
第2ドレインチューブ52はキャニスター23に溜まった液化燃料を第2抜き孔65から車体外方へ排出するためのものである。
符号23bは蒸発燃料をキャニスター23へ戻すためのホースである。
【0037】
第2ドレインチューブ52の後方には、バッテリボックス24の前端下部なる最低部に設けられたドレイン孔24aから延出する第3ドレインチューブ53が第1ドレインチューブ51、第2ドレインチューブ52と同様に燃料タンク21の左側方を通って下方へ延び、ステップフロア10に設けられた第3ドレインジョイント63へ接続している。
第3ドレインチューブ53はバッテリボックス24に溜まった液体、例えばバッテリ液や雨水等を第3抜き孔66から車体外へ排出するためのものである。
【0038】
バッテリボックス24は箱状をなし、内部にバッテリ(図示せず)を収容しており、左右両側をステー39へボルト73にて取付けられている。
バッテリボックス24は給油トレー44の後下方へ配置されたキャニスター23へ近接してキャニスター23をバッテリボックス24と共に囲むように配置され、その最も低くなる前部下方に第3ドレインチューブ53の一端が接続されている。
【0039】
第1ドレインチューブ51,第2ドレインチューブ52,第3ドレインチューブ53は前方から後方へこの順に燃料タンク21の左側方へ並んで配置される。第1ドレインジョイント61,第2ドレインジョイント62,第3ドレインジョイント63も同様に前後方向へ並んで配置される。
第3ドレインジョイント63の近傍後方にはサイドスタンド25が配置され、そのさらに後方かつ燃料タンク後部にはエンジン7aをなすシリンダヘッド7cが配置されている。
アンダーカバー20は前端をフロントカバー13の後端部である下端部13aへ取付具45で取付けられ、左右両側を本体部33b側へ取付けられている。
【0040】
図7に示すように、ステップフロア10は、左右のロアカバー19の間に配置され、前部は左右方向中間部の前側取付部80で下端部13aへ取付具45により取付けられ、燃料タンク21の下方を覆い、前輪2が跳ね上げる小石や泥及び水等を防いでいる。
【0041】
抜き孔64〜66は各ドレインジョイント61〜63の下方にてアンダーカバー20の左側を前後方向へ配列されている。最後部となる第3抜き孔66の近傍にサイドスタンド25が位置している。
アンダーカバー20の後方には、エンジン7aが位置している。7dはエンジン7aの排気口から後方へ延出する排気管であり、後輪3の右側方に配置されたマフラー7e(図1参照)へ接続している。
【0042】
図4に示すように、サイドスタンド25の回動軸25aによる本体部33b側の取付位置は、各第1ドレインジョイント61,第2ドレインジョイント62,第3ドレインジョイント63よりも高い位置にあり、Aで示す収納位置と、Bで示す起立位置との間に回動する。このとき、サイドスタンド25は反転スプリング25bによりA又はBのいずれかへ選択的に移動付勢される。
【0043】
図8に示すように、起立位置Bでは、サイドスタンド25が第3ドレインジョイント63下方の第3抜き孔66の下方を斜めに交差するようになっている。すなわち、第3抜き孔66を通る鉛直線L1が起立状態のサイドスタンド25の軸線L2と交差する。
また、回動軸25a(図示せず)を通る鉛直線をL3とし、これと平行に起立状態にあるサイドスタンド25の先端25cを通る直線L4の間を起立時におけるサイドスタンド前後方向領域Wとすると、第3抜き孔66はこの前後方向領域W内へ入るように配置されている。
【0044】
なお、図6の底面視では、鉛直線L3は回動軸25aの中心を通って車体中心CLと直交する直線、L4は鉛直線L3と平行かつ先端25cを通る直線となる。この状態でも、鉛直線L3と直線L4間のサイドスタンド前後方向領域Wの中に第3抜き孔66が位置している。
【0045】
なお、図6に示すように、第1ドレインチューブ51,第2ドレインチューブ52,第3ドレインチューブ53は、燃料タンク21の左側方を前後方向へ配線されたケーブル46を内側(燃料タンク21側)へ逃げるように屈曲してケーブル46と交差して上下方向へ通されている。また、各ドレインチューブ51〜53は、平面視で左右一対をなすアンダーフレーム33の内側に通されている。
【0046】
また、第1ドレインチューブ51,第2ドレインチューブ52,第3ドレインチューブ53は、車体右側へ配置されるメインハーネス47と燃料タンク21を挟んで反対側へ配置される。
なお、図6は、センターカバー16及び車体右側のフロントサイドカバー14、サイドカバー18を省略し、さらに車体左側では、フロントサイドカバー14、リヤカバー17、サイドカバー18を省略してある。符号48はメータパネルである。
【0047】
次に、アンダーカバー20を詳細に説明する。
図9はアンダーカバー20を斜め下方から見た斜視図、図10は平面図、図11はアンダーカバー20の左側面図、図12は図10の12−12線断面図、図13は図8の13−13線断面図である。
これらの図において、前後及び左右にかけて略コ字状をなす立て壁81に囲まれ、左右の立て壁81の前後にステー82,83が上方へ突出している。
【0048】
ステー82は本体部33bに設けられた前側アンダーカバーステー37aへボルト止めされる。ステー83はセンターブラケット33dに設けられた後側アンダーカバーステー37bへボルト止めされる(図2参照)。
これにより、アンダーカバー20は本体部33b側へ支持される。84は上面が凹曲面をなすように上方へ突出するクロスパイプ32の受け部、85は補強用のリブである。
各抜き孔64〜66の底面20a側は、隣り合うリブ85の谷間に開口し、リブ85より高くなっている。
【0049】
図8〜図10に示すように、第1ドレインジョイント61,第2ドレインジョイント62,第3ドレインジョイント63は、それぞれアンダーカバー20と一体に形成され、前後方向へ一直線状に並んで一カ所にまとめられ、車体の中心線CLよりサイドスタンド25側となる車体左側へオフセットされて配置されている。同様に各抜き孔64〜66も車体の中心線CLから車体左側へオフセットされ、一カ所にまとめられて前後方向へ一直線状に配置されることになる。
【0050】
また、図8に示すように、各ドレインジョイント61〜63には、各ドレインチューブ51〜53が別々に接続されている。このため、メンテナンス(部品交換等)時に、必要な部分のみを脱着させることができ、メンテナンス性が向上する。しかも、各ドレインチューブ51〜53の先端部が一カ所に集中しているので、ドレイン部分に関する作業が容易になる。
【0051】
図8〜図13において、第1ドレインジョイント61,第2ドレインジョイント62,第3ドレインジョイント63はそれぞれアンダーカバー20と一体に上方へ突出する略筒状に形成される。このようにアンダーカバー20と一体成形することにより、コストを抑えることができる。
【0052】
筒部61a、62a、63aの上端には内向きのフランジ61b、62b、63bをなし、ここにチューブ通し用開口61c、62c、63cが形成され、筒部61a、62a、63aの内側空間61d、62d、63dへ連通している。
これら各内側空間61d、62d、63dの下方側開口がそれぞれ第1抜き孔64、第2抜き孔65、第3抜き孔66をなす。
【0053】
チューブ通し用開口61c、62c、63cは、フランジ61b、62b、63bの各内周が属する円(内周円)に相当するが、その内周円の直径は第1ドレインチューブ51,第2ドレインチューブ52,第3ドレインチューブ53の各外径よりも若干小さくなっている。
【0054】
フランジ61b、62b、63bは図10の拡大部に示すように、円の一部を切り欠いた状態である平面視略C字状をなしている。この平面視略C字状にするための切り欠きは筒部61a、62a、63aの各側面にも形成され、この切り欠き部分を通る各筒部61a、62a、63aの横断面も略C字状をなしている。
【0055】
この切り欠きは、図13に示すように、下方へ向かって外開き状をなすように、フランジ61b、62b、63b及び筒部61a、62a、63aの一部側面にかけて斜めに形成されている。この切り欠きによる端面61e、62e、63eはそれぞれ一対をなし、この一対の61e・61e、62e・62e、63e・63e間に側面開口61f、62f、63fが形成されている。
【0056】
各側面開口61f、62f、63fは、それぞれ内側空間61d、62d、63dへ連通するとともに、下方へ行くほど開口幅が狭くなっている。また、各端面61e、62e、63eは、下方へ行くほど端面幅が広くなっている。
【0057】
各筒部61a、62a、63aの下部は、側面開口61f、62f、63fが形成されていない基部61g、62g、63gをなす。
この基部61g、62g、63gの各内周面には部分的に中心方向へ突出する突部61h、62h、63hが一体に形成されている。この突部61h、62h、63hは、図10の拡大部に示すように、平面視で側面開口61f、62f、63fの内側となる部位に、略山形状をなして形成されるが、先端は中心へ達しない程度にされ、各ドレインチューブ51、52、53の下部を接続したとき、その下端部を支持するとともに、ドレイン液の通過に支障を与えない程度の突出量及び大きさになっている。
【0058】
図13に示すように、第1ドレインチューブ51の内側空間61dには、第1ドレインチューブ51の先端(下端)が挿入される。第1ドレインチューブ51の先端は、膨大部54が形成され、この膨大部54が側面開口61fから内側空間61d内へ押し込まれる(図10の拡大部参照)。
【0059】
膨大部54は、外径が第1ドレインチューブ51の内側空間61dにおける内径と同程度であり、第1ドレインチューブ51と別体のリング状部材を第1ドレインチューブ51の先端へ外嵌して接着等で一体化することにより形成される。但し、第1ドレインチューブ51の先端を肉厚にすることにより連続一体に形成することもできる。
【0060】
膨大部54の高さは、第1ドレインチューブ51の高さ(基部61gの上端からフランジ61bまでの高さ)よりも低くなっている。膨大部54は突部61h上に乗る程度の肉厚を有する、第1ドレインチューブ51の外径は第1抜き孔64の内径よりも小さく、
膨大部54を第1ドレインチューブ51の内側空間61d内に挿入したとき、第1ドレインチューブ51の穴51aが第1抜き孔64の内側に位置して第1抜き孔64と連通する。
【0061】
なお、図10の拡大部には第1ドレインチューブ51のみを示し、図13は、第1ドレインチューブ51及び第1ドレインジョイント61のみを示すが、他の第2ドレインチューブ52及び第3ドレインチューブ53並びに第2ドレインジョイント62及び第3ドレインジョイント63においても同様である。
【0062】
第2ドレインチューブ52及び第3ドレインチューブ53は、それぞれ膨大部55,56を有し、第2ドレインジョイント62,第3ドレインジョイント63に対して、各側面開口62f、63fの側方よりへ押し込まれて接続する。
また、この接続時には、それぞれの膨大部55,56が突部62h、63hで支持され、かつ第2ドレインチューブ52及び第3ドレインチューブ53の各穴が第2抜き孔65及び第3抜き孔66の各内側に位置するようになっている。
【0063】
次に、ドレインチューブの接続及びドレイン作用を説明する。なお、以下は第1ドレインチューブ51を中心に説明するが、第2ドレインチューブ52及び第3ドレインチューブ53も同様である。
まず、第1ドレインチューブ51を燃料タンク21の左側方へ通して下方へ延ばし、図10の拡大部及び図13に示すように、先端部を第1ドレインジョイント61の側面開口61fに合わせ、側方より内側空間61dへ押し込む。
【0064】
すると、膨大部54は、チューブ通し用開口61cより大きいが、略C字状をなす側面開口61fが存在するため、端面61e、61eを押し広げ、同時に膨大部54自体も弾性変形することにより、内側空間61d内へ入り、膨大部54の下端が突部61hへ当接して支持される。
【0065】
このとき、第1ドレインチューブ51のうち膨大部54上方かつフランジ61bと一致する高さの部分は、フランジ61bの一部が切り欠かれて略C字状をなしているため、フランジ61bを押し広げてチューブ通し用開口61cへ入る。すると、フランジ61bの内周円は第1ドレインチューブ51の外径より小さいので、フランジ61bの内周縁部で第1ドレインチューブ51の外周部を若干くびれるように弾性変形させて固定する。このため、第1ドレインチューブ51はフランジ61bで固定されるとともに、チューブ通し用開口61cから上下に延出する。
【0066】
また、膨大部54の一部は側面開口61fから外方へ出ており、側面開口61fに臨む端面61e、61eと重なる部分より下方は弾性変形して内側空間61d内へ押し込まれ、筒部61a内壁へ密接するとともに、下端部は突部61hへ当接位置決めされ、さらに、第1ドレインチューブ51はフランジ61bで固定されているから、膨大部54は基部61gから浮き上がらないように固定された状態を維持する。
【0067】
その結果、第1ドレインチューブ51を第1ドレインジョイント61へ挿入して接続すると、給油トレー44のドレイン孔と第1抜き孔64が第1ドレインチューブ51で接続されるため、給油トレー44の余剰燃料であるドレイン液70は、第1ドレインチューブ51を通って穴51aから第1抜き孔64内へ確実に流出され、さらに第1抜き孔64から車外へ排出される。
【0068】
しかも、筒部61aの内側空間61dは第1抜き孔64に連通しているから、第1ドレインチューブ51の穴51aは上下方向にて常時第1抜き孔64の内側へ位置するようになり、車体の傾斜状態がどのように変化してもドレイン液70を第1抜き孔64へ確実に滴下させることが可能になる。
【0069】
また、第1ドレインチューブ51の接続時には、端面61eの弾性変形により、図8に示すように、筒部61aの上方側が外開き状に弾性変形しているが、側面開口61fが斜めに切り欠かれて形成されることにより、開口幅が上方ほど広くなるから、膨大部54を押し込みやすくなる。
【0070】
一方、側面開口61fは下方ほど開口幅が狭くなり、かつ端面61eの幅は下方ほど広くなるから、下方ほど弾性変形しにくくなり、膨大部54を内側空間61d内へ確実に固定し、第1ドレインチューブ51の穴51aを第1抜き孔64上に位置決めできる。
【0071】
さらに、フランジ61bが膨大部54上へ張り出しているので、仮に、膨大部54が基部61gから離れて上方へ移動するように浮いても、フランジ61bが膨大部54の上面へ当接することにより、第1ドレインジョイント61から脱出することを防ぐことができる。したがって、フランジ61bは係止部をなし、本実施形態では、フランジ61bと膨大部54とにより第1ドレインチューブ51先端の係止構造を構成している。
【0072】
このとき、第1ドレインチューブ51の下端が基部61gから離れることになるが、この離れる距離、すなわち当初状態におけるフランジ61bと膨大部54の離間距離を、想定される車体の傾斜範囲においてドレイン液70が抜き孔64内へ滴下できる状態を維持できるように設定すれば、ドレイン液70を抜き孔64から常時排出可能になる。
なお、膨大部54の上下方向長さを長くして当初から膨大部54をフランジ61bへ係止させておくこともできる。
【0073】
また、第1ドレインチューブ51の抜き孔側端部に、膨大部54と第1ドレインジョイント61にフランジ61bによる係止構造を設けたことにより、メンテナンス時に不用意に第1ドレインチューブ51がアンダーカバー20から外れることを防止することができる。
【0074】
そのうえ、各ドレインチューブ51〜53は、それぞれの接続するドレイン孔から、平面視で左右一対をなすアンダーフレーム33の内側かつ燃料タンク21の側方を通って第1抜き孔64に接続するので、収納スペースの限られた自動2輪車のスペースを有効利用できるとともに、各ドレインチューブ51〜53が左右一対のアンダーフレーム33の内側を通るため、各ドレインチューブ51〜53に外力が働く可能性を抑えることができる。
【0075】
また、複数のドレインジョイント61〜63が一直線に並び、さらに、各抜き孔64〜66も一カ所にまとまって一直線状をなし、それぞれ車体の中心線CLよりサイドスタンド25側に位置することから、サイドスタンド25を起立させた駐車時に、ドレイン液70を道路の路側部側に流すことができる。そのうえ、各抜き孔64〜66が車体中心CLからオフセット配置されるので、ドレイン液70を自車のタイヤで踏む可能性を抑えることができる。
【0076】
さらに、図8に示すように、複数のドレインジョイント61〜63が一カ所に集められ、少なくともその一部である第3ドレインジョイント63が起立時のサイドスタンドの前後方向領域W内に設けられることから、各ドレインジョイントに対応して設けられている各抜き孔64〜66も一カ所に集められ、そのうちの第3抜き孔66が起立時のサイドスタンドの前後方向領域W内に位置するので、車体側方から見たとき、サイドスタンド25の起立時にはサイドスタンド25によってドレイン液70が排出される様子を隠すことが可能となる。なお、他の第2抜き孔65もしくは第1抜き孔64までを起立時のサイドスタンドの前後方向領域W内へ位置させるようにすることは任意である。
【0077】
なお、本願発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えば、抜き孔を設けるカバーは、アンダーカバーに限定されず、各種の車体カバーや、エンジンガードのようなガード部材でもよい。
また、ドレインチューブの数は任意であり、接続するドレイン孔の数に応じて自由に増減できる。ドレインジョイントの数はドレインチューブの数に応じて自由に設けられる。
抜き孔についても同様である。
【符号の説明】
【0078】
1:車体フレーム、10:ステップフロア、20:アンダーカバー、21:燃料タンク、23:キャニスター、23a:ドレイン孔、24:バッテリ、24a:ドレイン孔、25:サイドスタンド、33:アンダーフレーム、44:給油トレー、44a:ドレイン孔、50:第1ドレインチューブ、51:第2ドレインチューブ、53:第3ドレインチューブ、54:膨大部、61:第1ドレインジョイント、61a、62a、63a:筒部、61b、62b、63b:フランジ、61c、62c、63c:チューブ通し用開口、61d、62d、63d:内側空間、61f、62f、63f:側面開口、62:第2ドレインジョイント、63:第3ドレインジョイント、64:第1抜き孔、65:第2抜き孔、66:第3抜き孔、70:ドレイン液
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動2輪車における各種液体のドレイン構造に係り、車体の直立もしくはどのような傾斜状態でも確実にドレインできるようにしたものに関する。
なお、本願において車体の直立とは、水平な地面に対して車体を真っ直ぐ起立させた状態をいうものとし、自動2輪車においては、メインスタンドを立てて駐車した状態に相当する。またサイドスタンドを立てて駐車した場合は、車体がサイドスタンド側となる左右いずれか側へ傾いた状態になる。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動2輪車において、適所に設けられたドレイン孔から各種液体を排出する際に、ドレイン孔下方に位置するカバー部材の抜き孔から排出させるとともに、車体の傾きが変化してもスムーズに排出できるようにすることが知られている。
例えば、オイルパンの下方にカバー部材の一部であるエンジンガードを設け、オイルパンのドレイン孔下方となるエンジンガードの位置に、車幅方向の長孔状をなす抜き孔を設け、この抜き孔から車体の直立もしくは傾斜状態でも、ドレイン孔から出たオイルを排出できるようにしたものがある(特許文献1参照)。なお、以下の説明において、ドレイン孔から排出される各種液体をドレイン液ということにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−87479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の従来技術では、車体がある程度左右方向等へ傾いた状態であると、ドレイン液(オイル)は確実にエンジンガードに設けた抜き孔から排出される。しかし、車体がある程度以上に大きく傾くと、ドレイン孔が抜き孔から外れるため、ドレイン液が抜き孔から排出されなくなる可能性がある。
したがって、自動2輪車において、傾きがどのような状態でもドレイン液がカバー部材に設けた抜き孔から抜け出ていく構造が求められている。本願はこのような要請の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため請求項1に記載した発明は、ドレイン孔と、その下方を覆うカバーとを有し、このカバーに形成された抜き孔を通してドレイン孔から排出されたドレイン液を車外へ排出するようにした自動2輪車のドレイン構造において、
前記ドレイン孔から前記抜き孔まではドレインチューブで接続され、
このドレインチューブの前記抜き孔側端部に略筒状の差込部を備えた係止構造が設けられていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載した発明は上記請求項1において、前記ドレインチューブは、前記ドレイン孔から左右一対のフレームの平面視内側かつ燃料タンク側方を通って前記抜き孔に接続されることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載した発明は上記請求項2において、前記ドレイン孔は、キャニスターと、バッテリボックスと、給油トレーと、に設けられ、それぞれが前記カバーと一体に成形された別々の前記抜き孔へ接続されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載した発明は上記請求項3において、前記各抜き孔は一カ所に集められ、前方から一直線に並び、車体の中心線よりサイドスタンド側に位置することを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載した発明は上記請求項3において、前記各抜き孔は一カ所に集められ、
前記各抜き孔は一カ所に集められ、少なくとも一部が起立時のサイドスタンド前後方向領域内に設けられることを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載した発明は上記請求項1〜5のいずれかにおいて、前記係止構造が、前記カバーと一体に成形された断面視略C形状の筒部の最上部に位置する係止部と、前記ドレインチューブ先端に設けられた膨張部によって構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、ドレイン孔から抜き孔までがドレインチューブで接続されることから、自動2輪車がどのような傾斜状態でもドレイン孔からの液体が、確実にカバーに設けた抜き孔から排出される。
また、ドレインチューブの抜き孔側端部に係止構造を設けたことにより、メンテナンス時に不用意にドレインチューブがカバーから外れることを防止することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、ドレインチューブをドレイン孔から左右一対のフレームの平面視内側かつ燃料タンク側方を通って抜き孔に接続したので、収納スペースの限られた自動2輪車のスペースを有効利用できるとともに、ドレインチューブが左右一対のフレームの内側を通るため、ドレインチューブに外力が働く可能性を抑えることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、複数のドレインチューブをそれぞれ抜き孔へ接続したので、メンテナンス(交換)時に、必要な部分のみを脱着させることができ、メンテナンス性が向上する。
【0014】
請求項4の発明によれば、複数の抜き孔が一直線に並び、車体の中心線よりサイドスタンド側に位置することから、サイドスタンドを起立させた駐車時に、ドレイン液を道路の路側部側に流すことができる。また、抜き孔が車体中心からオフセット配置されるので、ドレイン液を自車のタイヤで踏む可能性を抑えることができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、複数の抜き孔が一カ所に集められ、少なくともその一部が起立時のサイドスタンド前後方向領域内に設けられることから、上記一部の抜き孔については、車体側方から見たとき、サイドスタンド起立時にはサイドスタンドによってドレイン液が排出される様子を隠すことが可能となる。
【0016】
請求項6の発明によれば、抜き孔が断面視略C形状の筒部と、その筒部最上部に位置する係止部とを有してカバーと一体に成形されるので、一体成形によりコストを抑えることができる。
また、抜き孔側の係止部と、ドレインチューブ先端に設けられた膨張部によって係止構造が構成されるので、膨張部を側方から容易に取付けることができるとともに、上下方向は係止構造によって抜けにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係るスクータ型自動2輪車の左側面図
【図2】車体フレームの左側面図
【図3】車体フレーム要部の平面図
【図4】左側のステップフロア近傍部を斜め上方から示す斜視図
【図5】図5の同部位に関する左側面図
【図6】同上部位の平面図
【図7】同上部位の底面図
【図8】ドレインチューブ接続部の拡大断面図
【図9】アンダーカバーの斜め下方から示す斜視図
【図10】アンダーカバーの平面図
【図11】アンダーカバーの左側面図
【図12】図10の12−12線断面図
【図13】図8の13−13線断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて一実施形態を説明する。なお、前後・左右・上下の各方向は車両を基準とし、必要に応じて図面に、前方を矢示FR、左方を矢示LH、上方を矢示UPとして示す。
【0019】
図1は、本実施形態に係るスクータ型自動2輪車の左側面図である。この車両は、車体フレーム1の前後に前輪2と後輪3を配置してある。前輪2はフロントフォーク4を介して車体フレーム1の前端部へ回動自在に支持されるとともに、ステアリングシャフト5を介してハンドル6で操舵される。後輪3はスイング式パワーユニット7を介して車体フレーム1へ揺動自在に支持されている。スイング式パワーユニット7はエンジン7a及び伝動部7bを一体化したものであり、伝動部7bの後端部に後輪3が支持される。
スイング式パワーユニット7の後部はリヤサスペンションをなすリヤクッションユニット8を介して車体フレーム1の後部へ支持される。
【0020】
ハンドル6の後方には、シート9が配置される。シート9は前席9a及び後席9bを有するダブルシートであり、前席9aに着座したライダーは足を低床式のステップフロア10上に置くようになっている。
ステップフロア10は左右一対で設けられ、前輪2の後部側方から前席9aの下方まで前後方向へ長く配置されている。
後席9bに着座した同乗者はステップフロア10の後方に左右一対で設けられたピニオンステップ11に足を乗せるようになっている。
【0021】
ステップフロア10は車体を覆う車体カバー12の一部をなし、この車体カバー12は樹脂製であって、フロントカバー13、フロントサイドカバー14、インナーカバー15、センターカバー16、リヤカバー17、サイドカバー18、ロアカバー19及び後述するアンダーカバー20(図5参照)を備える。
【0022】
フロントカバー13は車体前部を覆う。フロントサイドカバー14は左右一対で設けられ、インナーカバー15と共にステアリングシャフト5の周囲及び車体フレーム1の前部を覆うとともに、左右一対のサイドカバー18と共に、ステップフロア10の前半部上方かつセンターカバー16下方に配置されている燃料タンク21を覆う。
センターカバー16は、インナーカバー15の後方かつ前席9a前方で燃料タンク21上方となる車体中央上部を覆い、燃料タンク21へ給油するための給油リッド16aが開閉自在に設けられている。
【0023】
リヤカバー17はシート9の下方を左右一対で覆い、その前端部はセンターカバー16及びフロントサイドカバー14の各後端部と接続している。内側に収納ボックス22が配置されている。収納ボックス22は車体フレーム1の後部に支持され、上方に開放して、ヘルメットを収容可能な大容量の容器状をなし、上部の開口をシート9により開閉される。
サイドカバー18はフロントサイドカバー14の後部及びリヤカバー17の前部の各下端部とステップフロア10の上方の間を覆うよう左右一対で設けられ、車体フレーム1の一部及び燃料タンク21のみならずエンジン7aの側方を覆い、その後方側下部には、エンジン7aの点火プラグに対するメンテナンス用リッド18aが開閉自在に設けられている。
【0024】
フロントサイドカバー14、リヤカバー17及びサイドカバー18が接続する部分近傍には、これらのカバーにより、燃料タンク21の後方に配置されたキャニスター23が覆われ、その後方でリヤカバー17とサイドカバー18の境界部には、これらのカバーによりバッテリボックス24が覆われている。
ロアカバー19は、ステップフロア10に沿ってその下方へ突出するように左右一対で設けられ、車体フレーム1の下部及びスイング式パワーユニット7の前部側方を覆っている。
【0025】
車体左側におけるロアカバー19の前後方向中間部には開口19aが設けられ、ここからサイドスタンド25が外部へ突出している。サイドスタンド25は回動軸25aで車体フレーム1側へ回動自在に取付けられ、収納位置と起立位置の間を回動自在になっている。サイドスタンド25を起立させると車体を左側に傾けて駐車することができる。なお、サイドスタンド25は仕向地の仕様により、反対側の車体右側へ設けられることもある。
図中の符号26はフロントフェンダ、27はエアクリーナ、28はリヤフェンダである。
【0026】
次に、車体フレーム1について詳細に説明する。
図2は車体フレーム1の左側面図、図3は要部の平面図である。これらの図において、車体フレーム1の前端部にはヘッドパイプ30が車体中心CL(図3)上に設けられ、ここでステアリングシャフト5を回動自在に支持している。
ヘッドパイプ30からは車体中心CLに沿ってパイプ状をなす1本のメインフレーム31が斜め下がり後方へ延出している。メインフレーム31の下端部はクロスパイプ32へ溶接され、クロスパイプ32は左右方向へ延びて左右一対をなすアンダーフレーム33へ溶接されている。
【0027】
アンダーフレーム33はパイプ状をなし、略水平に車体の前後方向へ延びる本体部33bがステップフロア10の下方に配置されてアンダーボーンフレームを形成し、各前端部側は内側かつ上方へ屈曲して車体フレーム1の下部両側へ溶接される前側屈曲部33aをなす。
後部は上方へ屈曲して斜め上がりに後方へ延び、左右一対をなすリヤフレーム34の前部へ下方から溶接されている後側屈曲部33cなす。
【0028】
後側屈曲部33cの上端部は各リヤフレーム34の前部へ溶接されている。各リヤフレーム34の前端部は、後側屈曲部33cとの溶接部よりも前方へ延出して、前方へ凸に湾曲する平面視U字状の補強パイプ35の左右部分へ溶接されている。補強パイプ35の各後端部は、リヤフレーム34との溶接部よりも後方へ延出して、後側屈曲部33cの上下方向中間部へ溶接されている。
【0029】
本体部33bには外側方へ突出するステップフロアステー36a,36bが前後に設けられ、ここにステップフロア10を乗せて支持するようになっている。本体部33bの中間部には下方へ突出する前側アンダーカバーステー37aが設けられている。
左側の本体部33bにはスタンドブラケット38が設けられ、ここにサイドスタンド25の上端部が回動軸25aで回動自在に取付けられるようになっている。
【0030】
スタンドブラケット38の後方には、本体部33bから後側屈曲部33cに続く屈曲部にセンターブラケット33dが設けられ、この前部に後側アンダーカバーステー37bが斜め下がり前方へ突出して設けられている。
【0031】
補強パイプ35の前部左右には、斜め上がり前方へ突出するステー39が設けられ、ここにバッテリボックス24(後述)を支持するようになっている。
バッテリボックス24は収納ボックス22の前方へ突出し、リッド(図示省略)で開閉自在になっている。
リヤフレーム34は平面視で、前後を補強パイプ35及びクロスプレート34bで閉じられ、この閉ループ状の空間内に収納ボックス22を収容して支持するようになっている。
【0032】
次に、ドレイン構造について説明する。
図4は左側のステップフロア10近傍部を斜め上方から示す斜視図(但しステップフロア10は省略してある)、図5は同部位の左側面図、図6は同部位の平面図、図7は同部位の底面図、図8はドレインチューブ接続部の拡大断面図である。なお、図4〜図6ではステップフロア10及びそれより上方の車体カバーを適宜省略して、車体カバー内側の構造を示している。図4ではフロントサイドカバー14、リヤカバー17、サイドカバー18を省略してある。
【0033】
図4に示すように、ステップフロアステー36a,36bは本体部33bに溶接され、かつ本体部33bから外側方へ張り出し、それぞれの突出端にフロア補強フレーム40がボルト41で取付けられている。このフロア補強フレーム40にボルト42でステップフロア10が取付けられる。
ロアカバー19の上部はビス43にてステップフロア10と結合される。
【0034】
図5に示すように、給油リッド16aの下方かつ燃料タンク21の上方に給油トレー44が配置されている。給油トレー44は燃料タンク21の給油口(図示せず)を囲む容器状をなし、給油時に溢れた燃料を捕集するための部材であり、その底部に設けられたドレイン孔44aから第1ドレインチューブ51が燃料タンク21の左側方を通って下方へ延出し、先端(下端)をアンダーカバー20に設けられた第1ドレインジョイント61へ接続している。なお、第1ドレインチューブ51は見易いように綾目のハッチングで示す(以下、該当する各図においても同様。また、第2ドレインチューブ52及び第3ドレインチューブ53も同様)。
【0035】
第1ドレインチューブ51は給油トレー44に溢れた燃料をステップフロア10下方のアンダーカバー20に設けられた第1抜き孔64から車体外方(アンダーカバー20の下方)へ排出するための部材である。第1抜き孔64は第1ドレインジョイント61の底部に開口している。
【0036】
第1ドレインチューブ51の後方には、キャニスター23の側方突出端部に設けられたドレイン孔23aから延出する第2ドレインチューブ52が第1ドレインチューブ51と同様に燃料タンク21の左側方を通って下方へ延び、ステップフロア10に設けられた第2ドレインジョイント62へ接続している。
第2ドレインチューブ52はキャニスター23に溜まった液化燃料を第2抜き孔65から車体外方へ排出するためのものである。
符号23bは蒸発燃料をキャニスター23へ戻すためのホースである。
【0037】
第2ドレインチューブ52の後方には、バッテリボックス24の前端下部なる最低部に設けられたドレイン孔24aから延出する第3ドレインチューブ53が第1ドレインチューブ51、第2ドレインチューブ52と同様に燃料タンク21の左側方を通って下方へ延び、ステップフロア10に設けられた第3ドレインジョイント63へ接続している。
第3ドレインチューブ53はバッテリボックス24に溜まった液体、例えばバッテリ液や雨水等を第3抜き孔66から車体外へ排出するためのものである。
【0038】
バッテリボックス24は箱状をなし、内部にバッテリ(図示せず)を収容しており、左右両側をステー39へボルト73にて取付けられている。
バッテリボックス24は給油トレー44の後下方へ配置されたキャニスター23へ近接してキャニスター23をバッテリボックス24と共に囲むように配置され、その最も低くなる前部下方に第3ドレインチューブ53の一端が接続されている。
【0039】
第1ドレインチューブ51,第2ドレインチューブ52,第3ドレインチューブ53は前方から後方へこの順に燃料タンク21の左側方へ並んで配置される。第1ドレインジョイント61,第2ドレインジョイント62,第3ドレインジョイント63も同様に前後方向へ並んで配置される。
第3ドレインジョイント63の近傍後方にはサイドスタンド25が配置され、そのさらに後方かつ燃料タンク後部にはエンジン7aをなすシリンダヘッド7cが配置されている。
アンダーカバー20は前端をフロントカバー13の後端部である下端部13aへ取付具45で取付けられ、左右両側を本体部33b側へ取付けられている。
【0040】
図7に示すように、ステップフロア10は、左右のロアカバー19の間に配置され、前部は左右方向中間部の前側取付部80で下端部13aへ取付具45により取付けられ、燃料タンク21の下方を覆い、前輪2が跳ね上げる小石や泥及び水等を防いでいる。
【0041】
抜き孔64〜66は各ドレインジョイント61〜63の下方にてアンダーカバー20の左側を前後方向へ配列されている。最後部となる第3抜き孔66の近傍にサイドスタンド25が位置している。
アンダーカバー20の後方には、エンジン7aが位置している。7dはエンジン7aの排気口から後方へ延出する排気管であり、後輪3の右側方に配置されたマフラー7e(図1参照)へ接続している。
【0042】
図4に示すように、サイドスタンド25の回動軸25aによる本体部33b側の取付位置は、各第1ドレインジョイント61,第2ドレインジョイント62,第3ドレインジョイント63よりも高い位置にあり、Aで示す収納位置と、Bで示す起立位置との間に回動する。このとき、サイドスタンド25は反転スプリング25bによりA又はBのいずれかへ選択的に移動付勢される。
【0043】
図8に示すように、起立位置Bでは、サイドスタンド25が第3ドレインジョイント63下方の第3抜き孔66の下方を斜めに交差するようになっている。すなわち、第3抜き孔66を通る鉛直線L1が起立状態のサイドスタンド25の軸線L2と交差する。
また、回動軸25a(図示せず)を通る鉛直線をL3とし、これと平行に起立状態にあるサイドスタンド25の先端25cを通る直線L4の間を起立時におけるサイドスタンド前後方向領域Wとすると、第3抜き孔66はこの前後方向領域W内へ入るように配置されている。
【0044】
なお、図6の底面視では、鉛直線L3は回動軸25aの中心を通って車体中心CLと直交する直線、L4は鉛直線L3と平行かつ先端25cを通る直線となる。この状態でも、鉛直線L3と直線L4間のサイドスタンド前後方向領域Wの中に第3抜き孔66が位置している。
【0045】
なお、図6に示すように、第1ドレインチューブ51,第2ドレインチューブ52,第3ドレインチューブ53は、燃料タンク21の左側方を前後方向へ配線されたケーブル46を内側(燃料タンク21側)へ逃げるように屈曲してケーブル46と交差して上下方向へ通されている。また、各ドレインチューブ51〜53は、平面視で左右一対をなすアンダーフレーム33の内側に通されている。
【0046】
また、第1ドレインチューブ51,第2ドレインチューブ52,第3ドレインチューブ53は、車体右側へ配置されるメインハーネス47と燃料タンク21を挟んで反対側へ配置される。
なお、図6は、センターカバー16及び車体右側のフロントサイドカバー14、サイドカバー18を省略し、さらに車体左側では、フロントサイドカバー14、リヤカバー17、サイドカバー18を省略してある。符号48はメータパネルである。
【0047】
次に、アンダーカバー20を詳細に説明する。
図9はアンダーカバー20を斜め下方から見た斜視図、図10は平面図、図11はアンダーカバー20の左側面図、図12は図10の12−12線断面図、図13は図8の13−13線断面図である。
これらの図において、前後及び左右にかけて略コ字状をなす立て壁81に囲まれ、左右の立て壁81の前後にステー82,83が上方へ突出している。
【0048】
ステー82は本体部33bに設けられた前側アンダーカバーステー37aへボルト止めされる。ステー83はセンターブラケット33dに設けられた後側アンダーカバーステー37bへボルト止めされる(図2参照)。
これにより、アンダーカバー20は本体部33b側へ支持される。84は上面が凹曲面をなすように上方へ突出するクロスパイプ32の受け部、85は補強用のリブである。
各抜き孔64〜66の底面20a側は、隣り合うリブ85の谷間に開口し、リブ85より高くなっている。
【0049】
図8〜図10に示すように、第1ドレインジョイント61,第2ドレインジョイント62,第3ドレインジョイント63は、それぞれアンダーカバー20と一体に形成され、前後方向へ一直線状に並んで一カ所にまとめられ、車体の中心線CLよりサイドスタンド25側となる車体左側へオフセットされて配置されている。同様に各抜き孔64〜66も車体の中心線CLから車体左側へオフセットされ、一カ所にまとめられて前後方向へ一直線状に配置されることになる。
【0050】
また、図8に示すように、各ドレインジョイント61〜63には、各ドレインチューブ51〜53が別々に接続されている。このため、メンテナンス(部品交換等)時に、必要な部分のみを脱着させることができ、メンテナンス性が向上する。しかも、各ドレインチューブ51〜53の先端部が一カ所に集中しているので、ドレイン部分に関する作業が容易になる。
【0051】
図8〜図13において、第1ドレインジョイント61,第2ドレインジョイント62,第3ドレインジョイント63はそれぞれアンダーカバー20と一体に上方へ突出する略筒状に形成される。このようにアンダーカバー20と一体成形することにより、コストを抑えることができる。
【0052】
筒部61a、62a、63aの上端には内向きのフランジ61b、62b、63bをなし、ここにチューブ通し用開口61c、62c、63cが形成され、筒部61a、62a、63aの内側空間61d、62d、63dへ連通している。
これら各内側空間61d、62d、63dの下方側開口がそれぞれ第1抜き孔64、第2抜き孔65、第3抜き孔66をなす。
【0053】
チューブ通し用開口61c、62c、63cは、フランジ61b、62b、63bの各内周が属する円(内周円)に相当するが、その内周円の直径は第1ドレインチューブ51,第2ドレインチューブ52,第3ドレインチューブ53の各外径よりも若干小さくなっている。
【0054】
フランジ61b、62b、63bは図10の拡大部に示すように、円の一部を切り欠いた状態である平面視略C字状をなしている。この平面視略C字状にするための切り欠きは筒部61a、62a、63aの各側面にも形成され、この切り欠き部分を通る各筒部61a、62a、63aの横断面も略C字状をなしている。
【0055】
この切り欠きは、図13に示すように、下方へ向かって外開き状をなすように、フランジ61b、62b、63b及び筒部61a、62a、63aの一部側面にかけて斜めに形成されている。この切り欠きによる端面61e、62e、63eはそれぞれ一対をなし、この一対の61e・61e、62e・62e、63e・63e間に側面開口61f、62f、63fが形成されている。
【0056】
各側面開口61f、62f、63fは、それぞれ内側空間61d、62d、63dへ連通するとともに、下方へ行くほど開口幅が狭くなっている。また、各端面61e、62e、63eは、下方へ行くほど端面幅が広くなっている。
【0057】
各筒部61a、62a、63aの下部は、側面開口61f、62f、63fが形成されていない基部61g、62g、63gをなす。
この基部61g、62g、63gの各内周面には部分的に中心方向へ突出する突部61h、62h、63hが一体に形成されている。この突部61h、62h、63hは、図10の拡大部に示すように、平面視で側面開口61f、62f、63fの内側となる部位に、略山形状をなして形成されるが、先端は中心へ達しない程度にされ、各ドレインチューブ51、52、53の下部を接続したとき、その下端部を支持するとともに、ドレイン液の通過に支障を与えない程度の突出量及び大きさになっている。
【0058】
図13に示すように、第1ドレインチューブ51の内側空間61dには、第1ドレインチューブ51の先端(下端)が挿入される。第1ドレインチューブ51の先端は、膨大部54が形成され、この膨大部54が側面開口61fから内側空間61d内へ押し込まれる(図10の拡大部参照)。
【0059】
膨大部54は、外径が第1ドレインチューブ51の内側空間61dにおける内径と同程度であり、第1ドレインチューブ51と別体のリング状部材を第1ドレインチューブ51の先端へ外嵌して接着等で一体化することにより形成される。但し、第1ドレインチューブ51の先端を肉厚にすることにより連続一体に形成することもできる。
【0060】
膨大部54の高さは、第1ドレインチューブ51の高さ(基部61gの上端からフランジ61bまでの高さ)よりも低くなっている。膨大部54は突部61h上に乗る程度の肉厚を有する、第1ドレインチューブ51の外径は第1抜き孔64の内径よりも小さく、
膨大部54を第1ドレインチューブ51の内側空間61d内に挿入したとき、第1ドレインチューブ51の穴51aが第1抜き孔64の内側に位置して第1抜き孔64と連通する。
【0061】
なお、図10の拡大部には第1ドレインチューブ51のみを示し、図13は、第1ドレインチューブ51及び第1ドレインジョイント61のみを示すが、他の第2ドレインチューブ52及び第3ドレインチューブ53並びに第2ドレインジョイント62及び第3ドレインジョイント63においても同様である。
【0062】
第2ドレインチューブ52及び第3ドレインチューブ53は、それぞれ膨大部55,56を有し、第2ドレインジョイント62,第3ドレインジョイント63に対して、各側面開口62f、63fの側方よりへ押し込まれて接続する。
また、この接続時には、それぞれの膨大部55,56が突部62h、63hで支持され、かつ第2ドレインチューブ52及び第3ドレインチューブ53の各穴が第2抜き孔65及び第3抜き孔66の各内側に位置するようになっている。
【0063】
次に、ドレインチューブの接続及びドレイン作用を説明する。なお、以下は第1ドレインチューブ51を中心に説明するが、第2ドレインチューブ52及び第3ドレインチューブ53も同様である。
まず、第1ドレインチューブ51を燃料タンク21の左側方へ通して下方へ延ばし、図10の拡大部及び図13に示すように、先端部を第1ドレインジョイント61の側面開口61fに合わせ、側方より内側空間61dへ押し込む。
【0064】
すると、膨大部54は、チューブ通し用開口61cより大きいが、略C字状をなす側面開口61fが存在するため、端面61e、61eを押し広げ、同時に膨大部54自体も弾性変形することにより、内側空間61d内へ入り、膨大部54の下端が突部61hへ当接して支持される。
【0065】
このとき、第1ドレインチューブ51のうち膨大部54上方かつフランジ61bと一致する高さの部分は、フランジ61bの一部が切り欠かれて略C字状をなしているため、フランジ61bを押し広げてチューブ通し用開口61cへ入る。すると、フランジ61bの内周円は第1ドレインチューブ51の外径より小さいので、フランジ61bの内周縁部で第1ドレインチューブ51の外周部を若干くびれるように弾性変形させて固定する。このため、第1ドレインチューブ51はフランジ61bで固定されるとともに、チューブ通し用開口61cから上下に延出する。
【0066】
また、膨大部54の一部は側面開口61fから外方へ出ており、側面開口61fに臨む端面61e、61eと重なる部分より下方は弾性変形して内側空間61d内へ押し込まれ、筒部61a内壁へ密接するとともに、下端部は突部61hへ当接位置決めされ、さらに、第1ドレインチューブ51はフランジ61bで固定されているから、膨大部54は基部61gから浮き上がらないように固定された状態を維持する。
【0067】
その結果、第1ドレインチューブ51を第1ドレインジョイント61へ挿入して接続すると、給油トレー44のドレイン孔と第1抜き孔64が第1ドレインチューブ51で接続されるため、給油トレー44の余剰燃料であるドレイン液70は、第1ドレインチューブ51を通って穴51aから第1抜き孔64内へ確実に流出され、さらに第1抜き孔64から車外へ排出される。
【0068】
しかも、筒部61aの内側空間61dは第1抜き孔64に連通しているから、第1ドレインチューブ51の穴51aは上下方向にて常時第1抜き孔64の内側へ位置するようになり、車体の傾斜状態がどのように変化してもドレイン液70を第1抜き孔64へ確実に滴下させることが可能になる。
【0069】
また、第1ドレインチューブ51の接続時には、端面61eの弾性変形により、図8に示すように、筒部61aの上方側が外開き状に弾性変形しているが、側面開口61fが斜めに切り欠かれて形成されることにより、開口幅が上方ほど広くなるから、膨大部54を押し込みやすくなる。
【0070】
一方、側面開口61fは下方ほど開口幅が狭くなり、かつ端面61eの幅は下方ほど広くなるから、下方ほど弾性変形しにくくなり、膨大部54を内側空間61d内へ確実に固定し、第1ドレインチューブ51の穴51aを第1抜き孔64上に位置決めできる。
【0071】
さらに、フランジ61bが膨大部54上へ張り出しているので、仮に、膨大部54が基部61gから離れて上方へ移動するように浮いても、フランジ61bが膨大部54の上面へ当接することにより、第1ドレインジョイント61から脱出することを防ぐことができる。したがって、フランジ61bは係止部をなし、本実施形態では、フランジ61bと膨大部54とにより第1ドレインチューブ51先端の係止構造を構成している。
【0072】
このとき、第1ドレインチューブ51の下端が基部61gから離れることになるが、この離れる距離、すなわち当初状態におけるフランジ61bと膨大部54の離間距離を、想定される車体の傾斜範囲においてドレイン液70が抜き孔64内へ滴下できる状態を維持できるように設定すれば、ドレイン液70を抜き孔64から常時排出可能になる。
なお、膨大部54の上下方向長さを長くして当初から膨大部54をフランジ61bへ係止させておくこともできる。
【0073】
また、第1ドレインチューブ51の抜き孔側端部に、膨大部54と第1ドレインジョイント61にフランジ61bによる係止構造を設けたことにより、メンテナンス時に不用意に第1ドレインチューブ51がアンダーカバー20から外れることを防止することができる。
【0074】
そのうえ、各ドレインチューブ51〜53は、それぞれの接続するドレイン孔から、平面視で左右一対をなすアンダーフレーム33の内側かつ燃料タンク21の側方を通って第1抜き孔64に接続するので、収納スペースの限られた自動2輪車のスペースを有効利用できるとともに、各ドレインチューブ51〜53が左右一対のアンダーフレーム33の内側を通るため、各ドレインチューブ51〜53に外力が働く可能性を抑えることができる。
【0075】
また、複数のドレインジョイント61〜63が一直線に並び、さらに、各抜き孔64〜66も一カ所にまとまって一直線状をなし、それぞれ車体の中心線CLよりサイドスタンド25側に位置することから、サイドスタンド25を起立させた駐車時に、ドレイン液70を道路の路側部側に流すことができる。そのうえ、各抜き孔64〜66が車体中心CLからオフセット配置されるので、ドレイン液70を自車のタイヤで踏む可能性を抑えることができる。
【0076】
さらに、図8に示すように、複数のドレインジョイント61〜63が一カ所に集められ、少なくともその一部である第3ドレインジョイント63が起立時のサイドスタンドの前後方向領域W内に設けられることから、各ドレインジョイントに対応して設けられている各抜き孔64〜66も一カ所に集められ、そのうちの第3抜き孔66が起立時のサイドスタンドの前後方向領域W内に位置するので、車体側方から見たとき、サイドスタンド25の起立時にはサイドスタンド25によってドレイン液70が排出される様子を隠すことが可能となる。なお、他の第2抜き孔65もしくは第1抜き孔64までを起立時のサイドスタンドの前後方向領域W内へ位置させるようにすることは任意である。
【0077】
なお、本願発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えば、抜き孔を設けるカバーは、アンダーカバーに限定されず、各種の車体カバーや、エンジンガードのようなガード部材でもよい。
また、ドレインチューブの数は任意であり、接続するドレイン孔の数に応じて自由に増減できる。ドレインジョイントの数はドレインチューブの数に応じて自由に設けられる。
抜き孔についても同様である。
【符号の説明】
【0078】
1:車体フレーム、10:ステップフロア、20:アンダーカバー、21:燃料タンク、23:キャニスター、23a:ドレイン孔、24:バッテリ、24a:ドレイン孔、25:サイドスタンド、33:アンダーフレーム、44:給油トレー、44a:ドレイン孔、50:第1ドレインチューブ、51:第2ドレインチューブ、53:第3ドレインチューブ、54:膨大部、61:第1ドレインジョイント、61a、62a、63a:筒部、61b、62b、63b:フランジ、61c、62c、63c:チューブ通し用開口、61d、62d、63d:内側空間、61f、62f、63f:側面開口、62:第2ドレインジョイント、63:第3ドレインジョイント、64:第1抜き孔、65:第2抜き孔、66:第3抜き孔、70:ドレイン液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレイン孔(44a・23a・24a)と、その下方を覆うカバー(20)とを有し、このカバーに形成された抜き孔(64・65・66)を通してドレイン孔から排出されたドレイン液を車外へ排出するようにした自動2輪車のドレイン構造において、
前記ドレイン孔から前記抜き孔(64・65・66)まではドレインチューブ(51・52・53)で接続され、
このドレインチューブ(51・52・53)の前記抜き孔側端部に略筒状の差込部を備えた係止構造が設けられていることを特徴とする自動2輪車のドレイン構造。
【請求項2】
前記ドレインチューブ(51・52・53)は、前記ドレイン孔(44a・23a・24a)から左右一対のフレーム(33)の平面視内側かつ燃料タンク(21)側方を通って前記抜き孔(64・65・66)に接続されることを特徴とする請求項1に記載した自動2輪車のドレイン構造。
【請求項3】
前記ドレイン孔(44a・23a・24a)は、キャニスター(23)と、バッテリボックス(24)と、給油トレー(44)と、に設けられ、それぞれが前記カバー(20)と一体に成形された別々の前記抜き孔(64・65・66)へ接続されていることを特徴とする請求項2に記載した自動2輪車のドレイン構造。
【請求項4】
前記各抜き孔(64・65・66)は一カ所に集められ、前方から一直線に並び、車体の中心線よりサイドスタンド(25)側に位置することを特徴とする請求項3に記載した自動2輪車のドレイン構造。
【請求項5】
前記各抜き孔(64・65・66)は一カ所に集められ、少なくとも一部(66)が起立時のサイドスタンド前後方向領域(W)内に設けられることを特徴とする請求項3に記載した自動2輪車のドレイン構造。
【請求項6】
前記係止構造は、前記カバー(20)と一体に成形された断面視略C形状の筒部(61a・62a・63a)の最上部に位置する係止部(61b・62b・63b)と、前記ドレインチューブ(51・52・53)先端に設けられた膨張部(54)によって構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載した自動2輪車のドレイン構造。
【請求項1】
ドレイン孔(44a・23a・24a)と、その下方を覆うカバー(20)とを有し、このカバーに形成された抜き孔(64・65・66)を通してドレイン孔から排出されたドレイン液を車外へ排出するようにした自動2輪車のドレイン構造において、
前記ドレイン孔から前記抜き孔(64・65・66)まではドレインチューブ(51・52・53)で接続され、
このドレインチューブ(51・52・53)の前記抜き孔側端部に略筒状の差込部を備えた係止構造が設けられていることを特徴とする自動2輪車のドレイン構造。
【請求項2】
前記ドレインチューブ(51・52・53)は、前記ドレイン孔(44a・23a・24a)から左右一対のフレーム(33)の平面視内側かつ燃料タンク(21)側方を通って前記抜き孔(64・65・66)に接続されることを特徴とする請求項1に記載した自動2輪車のドレイン構造。
【請求項3】
前記ドレイン孔(44a・23a・24a)は、キャニスター(23)と、バッテリボックス(24)と、給油トレー(44)と、に設けられ、それぞれが前記カバー(20)と一体に成形された別々の前記抜き孔(64・65・66)へ接続されていることを特徴とする請求項2に記載した自動2輪車のドレイン構造。
【請求項4】
前記各抜き孔(64・65・66)は一カ所に集められ、前方から一直線に並び、車体の中心線よりサイドスタンド(25)側に位置することを特徴とする請求項3に記載した自動2輪車のドレイン構造。
【請求項5】
前記各抜き孔(64・65・66)は一カ所に集められ、少なくとも一部(66)が起立時のサイドスタンド前後方向領域(W)内に設けられることを特徴とする請求項3に記載した自動2輪車のドレイン構造。
【請求項6】
前記係止構造は、前記カバー(20)と一体に成形された断面視略C形状の筒部(61a・62a・63a)の最上部に位置する係止部(61b・62b・63b)と、前記ドレインチューブ(51・52・53)先端に設けられた膨張部(54)によって構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載した自動2輪車のドレイン構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−75587(P2013−75587A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215750(P2011−215750)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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