説明

自吸式ポンプ

【課題】ケーシングと、モータと、モータにより回転駆動される羽根車とを備え、ケーシングは、羽根車を収納する羽根車室と、羽根車室の吸込部に連通する吸込室15と、羽根車室の吐出部に連通する吐出室16とを有する自吸式ポンプにおいて、モータの回転数を高く設定してもキャビテーションの発生を防止できるようにする。
【解決手段】吐出室16の水を羽根車室の吸込部に臨む吸込室15の下流端部に還流させる、常時開通する還流路18を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風呂追い焚き機能を有する熱源機等に組み込まれる自吸式ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自吸式ポンプとして、ケーシングと、モータと、モータにより回転駆動される羽根車とを備え、ケーシングに、羽根車を収納する羽根車室と、羽根車室の吸込部に連通する吸込室と、羽根車室の吐出部に連通する吐出室と、吐出室内の水を吸込室に還流する還流路とを形成して成るものが知られている(例えば、特許文献1参照)。尚、このもので還流路は、吐出室の水を羽根車室の吸込部に臨む吸込室の下流端部に還流させるように構成されており、後述する通常運転状態に移行したときに閉じる開閉弁を還流路に介設している。
【0003】
自吸式ポンプは、起動時に自吸運転を行う。自吸運転では、空気が混入した水を羽根車の回転で吐出室に送り、吐出室で気液分離した水を還流路を介して吸込室に戻し、再度空気と共に吐出室に送ることを繰り返す。これによりケーシング内の空気が次第に排出されて吸込室が負圧になり、吸込室に連なる吸込管内の水位が上昇して、遂には吸込管からの水でケーシング内が満たされ、ポンプは水のみの揚水を行う通常運転状態に移行する。
【0004】
ところで、風呂追い焚き機能を有する熱源機に浴槽の水を循環させるために自吸式ポンプを組み込む場合、モータとしてDCモータを用いることが考えられる。DCモータは印加電圧に応じて回転数が変化するため、各家庭で熱源機と浴槽との高低差が異なっても、この高低差に応じた所要の揚水能力が得られるようにモータの回転数を可変設定することができ、有利である。
【0005】
然し、熱源機と浴槽との高低差が大きく、モータの回転数を高く設定した場合、上記従来例の自吸式ポンプでは以下の不具合を生ずることが判明した。即ち、従来例の自吸式ポンプでは、通常運転状態に移行すると、還流路に介設した開閉弁が閉じられて、吐出室から吸込室への水の還流が停止されるため、モータの回転数を高く設定すると、吸込管の管路抵抗が大きな場合、羽根車室の吸込部の負圧が過大になり、キャビテーションを生じて、これによる異音が発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−162591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、モータの回転数を高く設定してもキャビテーションの発生を防止できるようにした自吸式ポンプを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、ケーシングと、モータと、モータにより回転駆動される羽根車とを備え、ケーシングは、羽根車を収納する羽根車室と、羽根車室の吸込部に連通する吸込室と、羽根車室の吐出部に連通する吐出室とを有する自吸式ポンプにおいて、吐出室の水を羽根車室の吸込部に臨む吸込室の下流端部に還流させる、常時開通する還流路を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、還流路が常時開通しているため、通常運転状態に移行しても吸込室の下流端部に吐出室からの水が還流される。従って、モータとしてDCモータを用い、所要の揚水能力を得られるようにモータの回転数を高く設定した場合でも、羽根車室の吸込部の負圧が過大にならず、キャビテーションの発生を防止できる。尚、羽根車室の吸込部から離れた吸込室の部分に水を還流させることも考えられるが、吸込部の近傍に水を還流させる本発明と比較して、吸込部の負圧が大きくなり勝ちであり、キャビテーションの発生を有効に防止することはできない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の自吸式ポンプの断面図。
【図2】図1のポンプのケーシングカバー及び仕切り板を取り外した状態の側面図。
【図3】図1のポンプのケーシングカバーを取り外した状態の側面図。
【図4】図1のポンプのケーシングカバーの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、風呂追い焚き機能を有する熱源機に浴槽a(図4参照)の水を循環させるために組み込む自吸式ポンプを示している。このポンプは、ケーシング1と、DCモータから成るモータ2と、モータ2により回転駆動される羽根車3とを備えている。
【0012】
ケーシング1は、モータ2側のケーシング本体11と、ケーシング本体11のモータ2とは反対側の側面にパッキン12a付きの仕切り板12を挟み込んだ状態で取り付けたケーシングカバー13とで構成されている。ケーシング本体11には、図2に示す如く、羽根車3を収納する羽根車室14と、羽根車室14の吐出部となる上部の吐出通路14bとが形成されている。これら羽根車室14と吐出通路14bは仕切り板12で覆われている。仕切り板12には、図1及び図3に示す如く、羽根車3と同心の開口から成る羽根車室14の吸込部14aと、吐出通路14bに臨む連通孔14cとが形成されている。
【0013】
ケーシングカバー13には、図4に示す如く、羽根車室14の吸込部14aに連通する吸込室15と、吐出通路14bに連通孔14cを介して連通する吐出室16とが隔壁13aにより相互に仕切られた状態で形成されている。吐出室16は、内部で気液分離できるように、下方から上方に亘って延在している。
【0014】
また、ケーシングカバー13の上面には、吸込室15に連通し、浴槽a内の水を吸込む吸込管bを接続する吸込口17と、吐出室16に連通し、熱源機に設けた風呂追い焚き用の熱交換器cを介して浴槽aに水を送る吐出管dを接続する吐出口17とが設けられ、ケーシングカバー13の下面には、吐出室16の下端に連通する水抜き口17が設けられている。尚、吸込管bには、電磁弁eを介設した湯張り管fが接続されている。
【0015】
ケーシングカバー13には、更に、吐出室16の水を羽根車室14の吸込部14aに臨む吸込室15の下流端部に還流させる還流路18が設けられている。本実施形態では、還流路18を、吸込室15の下流端部を囲う隔壁13aの部分に形成した所定の大きさ(例えば、1mm×1mm)の切欠きで構成している。そして、還流路18は常時開通している。
【0016】
風呂の追い焚き時には、先ず、湯張り管fから呼び水として所定量の水を供給した後、モータ2を駆動して自吸運転を行う。自吸運転では、空気が混入した水が羽根車3の回転で吐出室16に送られ、吐出室16で気液分離した空気が吐出管17から排出されると共に、気液分離後の水が還流路18を介して吸込室15の下流端部に戻され、再度空気と共に吐出室16に送られる。この繰り返しにより、ケーシング1内から次第に空気が排出されて吸込室15が負圧になり、吸込室15に連なる吸込管b内の水位が上昇して、遂には吸込管bからの水でケーシング1内が満たされ、ポンプは水のみの揚水を行う通常運転状態に移行する。
【0017】
ここで、本実施形態の如くモータ2としてDCモータを用いれば、印加電圧に応じて回転数を可変できるため、各家庭で熱源機と浴槽aとの高低差が異なっても、この高低差に応じた所要の揚水能力が得られるようにモータ2の回転数を可変設定することができ、有利である。尚、モータ2の回転数は、熱源機に内蔵するモータ用制御基板に付設されているディップスイッチの操作で可変される。また、熱源機を設置した後の試運転時に熱源機と浴槽aとの高低差を自吸運転にかかる時間等から自動的に計測し、この高低差に応じてモータ2の回転数を自動的に可変設定することも可能である。
【0018】
ところで、熱源機と浴槽aとの高低差が大きく、モータ2の回転数を高く設定すると、吸込管bの管路抵抗が大きな場合、通常運転状態において羽根車室14の吸込部14aの負圧が大きくなり易く、この負圧が過大になるとキャビテーションを生じて、これによる異音が発生してしまう。
【0019】
これに対し、本実施形態では、還流路18が常時開通しているため、通常運転状態においても吸込室15の下流端部に吐出室16からの水が還流される。従って、モータ2の回転数を高く設定した場合でも、羽根車室14の吸込部14aの負圧が過大にならず、キャビテーションの発生を防止できる。尚、羽根車室14の吸込部14aから離れた吸込室15の部分に水を還流させることも考えられるが、吸込部14aの近傍に水を還流させる本実施形態と比較して、吸込部14aの負圧が大きくなり勝ちであり、キャビテーションの発生を有効に防止することはできない。
【0020】
但し、還流路18からの水の還流量が増大すると、ポンプの効率が低下するため、還流路18の開口面積は、吸込部14aの負圧が過大にならない範囲で可及的に小さくする必要がある。ここで、モータ2の回転数が低い場合は、吸込部14aの負圧は然程大きくならない。そのため、図示しないが、還流路18の開口面積を可変する可変絞り手段を設け、モータ2の回転数が低下するのに伴い開口面積を減少させるようにしてもよい。これによれば、キャビテーションの発生を防止して、且つ、モータ2の回転数が低い場合の効率低下を防止できる。
【0021】
ところで、従来、吐出室16からの水を直接羽根車室14に還流させる還流路を形成したものが知られている。本実施形態の還流路18に加えてこのような従来の還流路を設けることも考えられる。然し、この場合には、還流路18からの還流量が減少し、モータ2の回転数を高く設定した場合、吸込部14aの負圧が大きくなって、キャビテーションの発生を有効に防止できなくなる。そのため、本実施形態の還流路18のみを介して水を還流させることが必要である。
【0022】
以上、風呂追い焚き機能を有する熱源機に組み込む自吸式ポンプに本発明を適用した実施形態について説明したが、ヒートポンプ装置等の他の装置に組み込む自吸式ポンプにも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0023】
1…ケーシング、14…羽根車室、14a…吸込部、14b…吐出通路(吐出部)、15…吸込室、16…吐出室、18…還流路、2…モータ、3…羽根車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、モータと、モータにより回転駆動される羽根車とを備え、ケーシングは、羽根車を収納する羽根車室と、羽根車室の吸込部に連通する吸込室と、羽根車室の吐出部に連通する吐出室とを有する自吸式ポンプにおいて、
吐出室の水を羽根車室の吸込部に臨む吸込室の下流端部に還流させる、常時開通する還流路を備えることを特徴とする自吸式ポンプ。
【請求項2】
前記モータとしてDCモータを用いることを特徴とする請求項1記載の自吸式ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−285972(P2010−285972A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142641(P2009−142641)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】