説明

自己光開始性水分散性アクリレートイオノマーおよび合成法

本明細書に詳述された本発明は、水分散性であり、かつ光開始剤を組み込んだ、新規な多官能性アクリレートイオノマー樹脂のファミリーを含む。本発明の樹脂は、マイケル付加反応に「マイケルドナー」として参加できるβ-ケトエステル類(例えば、アセトアセテート類)、β-ジケトン類(例えば2,4-ペンタンジオン)、β-ケトアミド類(例えば、アセトアセトアニリド、アセトアセトアミド)、および/または他のβ-ジカルボニル化合物と反応することによって自己光開始性になる。これらの水分散性樹脂は、従来の光開始剤を添加せずに標準的な紫外線(UV)硬化条件下で硬化して、タックフリーコーティングを提供する。本発明はさらに、これらの樹脂のコーティングにおける使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に詳述された本発明は、水分散性であり、かつ光開始剤を組み込んだ、新規な多官能性アクリレートイオノマー樹脂のファミリーを含む。本発明の樹脂は、マイケル付加反応に「マイケルドナー」として参加できるβ-ケトエステル類(例えば、アセトアセテート類)、β-ジケトン類(例えば2,4-ペンタンジオン)、β-ケトアミド類(例えば、アセトアセトアニリド、アセトアセトアミド)、および/または他のβ-ジカルボニル化合物と反応することによって自己光開始性になる。これらの水分散性樹脂は、従来の光開始剤を添加せずに標準的な紫外線(UV)硬化条件下で硬化して、タックフリーコーティングを提供する。本発明はさらに、これらの樹脂のコーティングにおける使用に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に提供する知見は、本発明の先行技術であるとは認められず、もっぱら読者の理解を助けるために提供される。
【0003】
開始剤または光開始剤の使用の欠点は、環境的に安全ではない恐れのある揮発性の低分子量フラグメントを生成することである。
【0004】
これらの樹脂は、ペンダント部分としてのアクリレート基が存在すること、およびこれらの樹脂が従来の光開始剤を添加せずに標準的なUV硬化条件下で硬化して、タックフリーコーティングを提供できることを特徴とする。
【0005】
多官能性アクリレートおよびメタクリレート(「アクリレート類」)は、架橋フィルム、接着剤、鋳物砂粘結剤、複合構造体、およびその他の材料の作製に一般的に利用されている。アクリレートモノマーおよびオリゴマーは、フリーラジカル連鎖機構によって架橋することができ、これは、加熱されたとき、あるいは促進剤の存在下では周囲温度で分解してラジカルを形成し得る多くのフリーラジカル発生化学種、例えば過酸化物、ヒドロペルオキシド、アゾ化合物などのいずれかを必要とすることがある。
【0006】
反応を開始させる代替手段は、紫外線(UV)または電子ビーム(EB)を使用して光開始剤をフリーラジカルに分解することである。多数の用途で、この方法は、極めて迅速な加工の潜在的可能性を提供する。というのは、UVまたはEB放射に暴露したときの、液体の反応性組成物から架橋した固体への転換は、本質的に瞬間的であるからである。
【0007】
開始剤を使用してフリーラジカル反応を生じさせることの欠点は、開始剤および光開始剤の分解が、製造プロセス中および/またはその後に揮発する恐れのある低分子量フラグメントを生じることである。逸散排出は、労働者、消費者、および環境に関する安全問題を引き起こす。例えば、これらの低分子量フラグメントは、皮膚から容易に吸収される傾向があり、そのため健康に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0008】
これらの制約は、いくつかの重要な手法で対処されてきた。光開始剤フラグメントの製造過程での逸散排出またはその後の浸出という難題は、光開始剤を「組み込んだ」アクリレートモノマー/オリゴマーを作り出すことによって対処されてきた。光開始剤(または適切な誘導体)として機能することが知られている化合物から出発し、それを適切な不飽和基、すなわちアクリレートまたはメタクリレートで官能化して、モノマー/オリゴマーとしても光開始剤としても機能する新しい化合物を生成することにより、あるいはより高分子量の光開始剤を生成するために予め形成されたオリゴマー/ポリマー上に「グラフト」することによって、これを達成することができる。
【0009】
これらの方法の有効性に関係なく、これらは更なる製造手順およびコストを追加する。
【0010】
さらに、これらの手法は、低官能性の樹脂をもたらす。低官能性は、反応性および最終特性にとって有害であり、架橋を生じさせるために外部触媒または開始剤が必要となる恐れがある。
【0011】
本発明のイオン性UV硬化性樹脂の光重合可能単位は、β-ジカルボニル化合物のアクリレートアクセプターへのマイケル付加によって提供される。アセトアセテートドナー化合物が多官能性アクリレートレセプター化合物にマイケル付加して架橋されたポリマーを形成することが、文献に記載されている。例えば、MoznerおよびRheinbergerは、アセトアセテートのトリアクリレートおよびテトラアクリレートへのマイケル付加について報じた(Macromolecular Rapid Communications, 16, 135-138 (1995))。形成された生成物は、架橋したゲルであった。図1に示されたこのような反応の1つにおいて、Moznerは、3個の官能基を有するトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)1モルを、2個の官能基を有するポリエチレングリコール(分子量600)ジアセトアセテート(PEG600-DAA)1モルに付加させた(各アセトアセテート「官能基」は2回反応し、従ってジアセトアセテートの各モルは4反応当量をもつ。)。得られる網目構造は、未反応のアクリル官能基の存在にもかかわらず、「ゲル化」または硬化していると考えられる。更なる反応を促進することはできるが、この網目構造は、有効に架橋されているので熱を用いても溶媒を用いても液体にすることはできない。
【0012】
より最近の有効な解決策が、本出願の譲受人であるAshland, Inc.に譲渡されたMoy他の米国特許第5945489号および第6025410号に記載されている。このような手法は、未架橋アクリレート官能基の樹脂をもたらすような比で、マイケル付加によって多官能性アクリレートをアセトアセテートと反応させるものである。これらの樹脂は、光開始剤を添加せずとも、適切なUV源に暴露すると架橋する。
【0013】
紫外線(UV)硬化性水性コーティングは、環境保護、より低いエネルギー消費、高い硬化速度、レオロジー制御、および吹付けへの適合というその利点のために興味深い。通常、硬化性水性分散液は、外部乳化または自己乳化のいずれかによって得られる。アクリレートイオノマーの自己乳化は、親水性イオン基を硬化性樹脂の主鎖中に導入することによって実現される。分散性と耐水性のバランスは、ポリエチレンオキシドセグメントをイオン性硬化性樹脂の主鎖中に組み込むことによって達成することができる。
【特許文献1】米国特許第5945489号
【特許文献2】米国特許第6025410号
【特許文献3】米国特許出願第10/255541号
【非特許文献1】Macromolecular Rapid Communications, 16, 135-138(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
マイケル樹脂に共通する自己光開始の諸利点を組み込んだ水分散性UV硬化性樹脂が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書に詳述された本発明は、マイケル付加技術を従来のアクリレートイオノマー合成と組み合わせた、水分散性未ゲル化自己光開始性アクリレートイオノマーの合成を記載する。
【0016】
本発明は、イオン性UV硬化性多官能性アクリレートマイケル樹脂を提供する。図2に示す第1の実施形態においては、イオン性部分が、樹脂主鎖中に重合した少なくとも1つのイソシアネート反応性親水性モノマー部分として樹脂中に組み込まれる。イソシアネート反応性は、ヒドロキシル、第一級アミン、第二級アミン、およびチオールからなる群から選択される少なくとも1種の化学部分を組み込むことによって与えられる。モノマーのイオン性は、カルボキシレート、スルホネート、アンモニウム、第四級アンモニウム、およびスルホニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化学部分によって与えられる。カルボキシレートおよびスルホネート部分は、最終的な樹脂を陰イオン性にする。一方、アンモニウム、第四級アンモニウム、およびスルホニウムは、最終的な樹脂を陽イオン性にする。
【0017】
図3に示した本発明の第2の陽イオン性の実施形態は、樹脂主鎖からのペンダント鎖部分として第三級アミンを組み込んでいる。
【0018】
本発明は、本発明の樹脂を合成するのに使用されるオリゴマーを提供する。本発明は、上記の親水性モノマーおよび少なくとも1つのイソシアネート末端のウレタンオリゴマーから形成されるイオン性主鎖イソシアネート末端ウレタンオリゴマー(図2A)を提供する。親水性モノマーの各イソシアネート反応性官能基は、イソシアネート末端ウレタンオリゴマーにウレタン結合する。
【0019】
本発明は、ヒドロキシ官能性アクリル化マイケルオリゴマー(図2B)を提供する。本発明のマイケルオリゴマーは、β-ジカルボニル化合物、ヒドロキシ官能性アクリレートおよび多官能性アクリレートから合成される。
【0020】
イオン性主鎖イソシアネート末端ウレタンオリゴマー(図2A)の各イソシアネート末端は、ヒドロキシ官能性アクリル化マイケルオリゴマー(図2B)とウレタン結合で結合して、本発明のイオン性主鎖多官能性アクリレートマイケル樹脂(図2C)を形成する。
【0021】
本発明の一態様は、中央のメチレン炭素を有するβ-ジカルボニルモノマーと、メチレン炭素にマイケル付加した第1および第2の多官能性アクリレートモノマーを含む、イオン性ペンダントマイケル付加多官能性アクリレートオリゴマーを提供し、ペンダントアクリレート部分の一部分が、第二級アミンと反応して、第三級アミン基(図3)をもたらす。
【0022】
本発明の陰イオン性マイケル樹脂は、そのトリアルキルアンモニウム塩(図2D)として水中に分散させることができる。経路2および3からの陽イオン性樹脂はどちらも、アセテート塩またはホルメート塩(図3)として水中に分散させることができる。
【0023】
本発明は、ある量の水と混合されたイオノマー性マイケル付加樹脂を提供する。
【0024】
本発明によれば、本発明のイオノマー性マイケル付加樹脂組成物の水分散液をさらに、コーティング、塗料、積層品、シーラント、接着剤、鋳物砂粘結剤、およびインキを処方するのに適した顔料、光沢改変剤、流動化剤、レベリング剤、およびその他の添加剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤と混合することができる。
【0025】
本発明の一態様は、樹脂を基材に塗布する工程と、樹脂を乾燥させる工程と、樹脂を硬化させる工程とを含む、本発明の樹脂の使用方法を提供する。硬化は、外からの光開始剤の存在下で、あるいは好ましくは存在なしで、化学線または電子ビームへの暴露によって実現することができる。硬化は、従来のフリーラジカル発生因子(generator)の使用によって実現することもできる。
【0026】
本発明の一態様は、フリーラジカル発生因子で硬化させたイオノマー性マイケル付加樹脂組成物を含む重合生成物を提供する。本発明の更なる態様は、イオノマー性マイケル付加樹脂組成物で被覆された基材を提供する。
【0027】
本発明の更なる態様は、乾燥雰囲気を有する樹脂反応器を用意する工程と、前記反応器にポリオールを供給する工程と、前記反応器に少なくとも1つのイソシアネート反応性部分を有する親水性モノマーを供給する工程と、前記反応器に溶媒を供給する工程と、前記反応器にウレタン化触媒を供給する工程と、多官能性イソシアネートを添加する工程と、これらの反応混合物を反応有効温度に保つ工程とを含む、イオン性主鎖イソシアネート末端ウレタンオリゴマーの合成方法を提供する。
【0028】
本発明の一態様では、本発明の樹脂のペンダント第三級アミン基は、樹脂の硬化を促進するためのアミン協力剤(synergist)として作用し得る。
【0029】
本発明の一態様では、本発明の水分散性イオノマー性組成物は、従来の光開始剤を添加することなく標準のUV硬化条件下で硬化して、タックフリーコーティングを生成する。
【0030】
本発明の一態様によれば、重合生成物が提供される。この重合生成物は、本発明のイオノマー、および最終組成物に含まれ得る1種または複数の添加剤の性質に応じて、コーティング、塗料、積層品、シーラント、接着剤、鋳物砂粘結剤、インキまたはその他の生成物のいずれでもよい。適切な添加剤は、所望の処方物に適した、顔料、光沢改変剤、流動化剤、レベリング剤、およびその他の添加剤からなる群から選択してよい。
【0031】
一態様によれば、本発明は、イオノマーを基材に塗布する工程と、乾燥させる工程と、樹脂を硬化させる工程とを含む、本発明の樹脂およびイオノマーの使用方法を提供する。塗布は、それだけには限らないが、ロールコーティング、スプレーコーティング、はけ塗り、ディップコーティングおよび電着塗装を含む、当業界で周知のいずれの方法で実施することもできる。
【0032】
本発明の一態様によれば、本発明のイオノマーの使用方法が提供される。本発明の一態様によれば、本発明のイオノマーを、表面に塗布し、従来の光開始剤の存在なしで化学線で硬化させる。本発明の一態様によれば、本発明のイオノマーを、外部光開始剤と混合し、表面に塗布し、化学線で硬化させる。本発明の一態様によれば、本発明のイオノマーを、ペルオキシドまたはアゾ型開始剤と混合し、表面に塗布し、化学線の存在下で、あるいは存在なしに熱エネルギーを用いて硬化させる。
【0033】
本発明の一態様によれば、本発明のイオノマーを、所望の処方物に適した、顔料、光沢改変剤、流動化剤、レベリング剤、およびその他の添加剤からなる群から選択される適切な添加剤と混合し、表面に塗布し、乾燥させ、硬化させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
これらの新規材料の合成、およびコーティングにおけるその応用の詳細を説明する実施例が、次節で提供される。実施例に示されるいずれの液体オリゴマー性樹脂の特定の反応条件および反応パラメータも、本発明を限定するものではない。
【0035】
モノマーという用語は本明細書では、他の同種および/または異種の分子または化合物と組み合わせることによって、オリゴマー、ポリマー、合成樹脂、またはエラストマーに転換可能である、通常炭素を含有する、比較的低分子量で簡単な構造の、分子または化合物として定義される。
【0036】
オリゴマーという用語は本明細書では、数個の同種および/または異種のモノマーおよび/またはオリゴマー単位のみからなるポリマー分子として定義される。
【0037】
樹脂という用語は本明細書では、他の同種および/または異種の分子または化合物と組み合わせることによって高分子量ポリマーに転換することができるオリゴマーとして定義される。
【0038】
熱硬化性という用語は本明細書では、加熱されたときに不可逆的に固化するまたは固まる樹脂の高分子量ポリマー生成物であると定義される。この性質は、熱、放射および/または化学触媒作用によって誘発される、分子成分の架橋反応と関連がある。
【0039】
「ポリオール」という用語は、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する多価アルコールを意味する。本発明では、ポリオールはジオールを含むと理解される。末端ジオールは、分子の末端部分がヒドロキシル化された任意のポリオールである。
【0040】
「親水性モノマー」という用語は、少なくとも1つのイオン性部分を有する任意のモノマーを意味する。イオン性部分は、本質的に帯電した、あるいは水溶液中においてイオンと結合し、またはそれを解離することによって帯電することがある、化学基である。
【0041】
本発明の一態様は、水分散性アクリレートイオノマー性組成物を提供する。本明細書で定義される「イオノマー」という用語は、イオン性および非イオン性モノマー単位からなるイオン含有オリゴマーを意味する。「イオノマー」という用語はさらに、イオン性および非イオン性オリゴマーから合成されるポリマーを意味する。本発明の一態様は、水分散性アクリレートオリゴマー、および前記オリゴマーを含有する組成物を提供する。本発明のオリゴマーは、イオン性および非イオン性モノマーの組合せから合成される。適切な状況では、「イオノマー」および「イオノマー性」という用語は、少なくとも1種のイオン性モノマーを組み込んだオリゴマーを意味する。本発明のさらなる態様は、本発明のイオノマー性オリゴマーから重合したポリマー性コーティングを提供する。適切な状況では、「イオノマー」および「イオノマー性」という用語は、少なくとも1種のイオノマー性オリゴマーから重合したポリマーを意味する。
【0042】
本発明の一態様は、オリゴマーとポリマーの両方の、陰イオン性および陽イオン性イオノマーを提供する。「アニオノマー」は、負電荷を帯びた化学基を含有するオリゴマーまたはポリマーである。「カチオノマー」は、陽電荷を帯びた化学基を含有するオリゴマーまたはポリマーである。
【0043】
本発明の一態様は、イオン性主鎖官能化イソシアネート末端ウレタンオリゴマーと、-OH含有自己光開始性マイケル付加オリゴマーとの反応で得られるウレタンアクリレートを含む、水分散性UV硬化性オリゴマー性多官能性アクリルマイケル付加樹脂組成物を提供する。
【0044】
本発明の一実施形態は、主鎖がカルボキシレート基またはスルホネート基を含む親水性モノマーから合成されるアニオノマーを提供する。一実施形態は、主鎖がアンモニウム、第四級アミン、またはスルホニウム基を含む親水性モノマーから合成されるカチオノマーを提供する。
【0045】
本発明の好ましい一実施形態は、樹脂主鎖中に組み込まれたイソシアネート反応性親水性モノマーがカルボン酸であるアニオノマーを提供する。
【0046】
図2Aは、本発明のアニオノマー性樹脂を合成するのに使用される、代表的なカルボン酸官能化イソシアネート末端ウレタンオリゴマーの合成の概略図である。同図は、ヒドロキシ官能性カルボン酸、およびポリエーテルまたはポリエステルポリオールが、化学量論的に過剰の多官能性イソシアネート分子と反応したことを示している。
【0047】
本発明のイソシアネート反応性親水性モノマーは、少なくとも1つのイソシアネート反応性部分を有するが、複数のイソシアネート反応性部分を有してもよい。非限定的なイソシアネート反応性部分には、ヒドロキシル、第一級アミン、第二級アミン、およびチオールが含まれる。ヒドロキシルが、好ましい。イソシアネート反応性部分に加えて、親水性モノマーは、イオン性部分を有する。適切な親水性モノマーは、少なくとも1つのイオン性官能基を有し、好ましくは少なくとも2つのイオン性官能基を有するが、3つ以上のイオン性官能基を有してもよい。
【0048】
好ましいイオン性官能基は、酸である。特に好ましい酸は、カルボン酸である。好ましいカルボン酸モノマーは、ジメチロールプロピオン酸である。適切な、非限定的な親水性モノマーには、ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、ヒドロキシピバリン酸、リンゴ酸、グリコール酸、および乳酸が含まれる。
【0049】
イソシアネート末端ウレタンオリゴマーは、中央のポリオールモノマーおよび少なくとも2つのポリイソシアネートモノマーから形成される。好ましくは、ポリオールは、末端ジオールである。ポリオールが、3つ以上のヒドロキシル基を有する場合、3つ以上のポリイソシアネートモノマーと反応して、複数のイソシアネート末端を有する分枝構造を形成してもよい。オリゴウレタンの第1のイソシアネート末端は、親水性モノマー上のイソシアネート反応性部分の1つとウレタン結合を形成する。親水性モノマーが複数のイソシアネート反応性部分を有する場合、各部分は、ポリイソシアネート末端ウレタンオリゴマーによってウレタン化される。
【0050】
ヒドロキシル化アクリレート末端マイケルオリゴマーは、各イソシアネート末端ウレタンオリゴマーにウレタン結合している。マイケルオリゴマーは、3つのモノマー単位から形成される。第1のモノマーは、中央のメチレン炭素を有するβ-ジカルボニル分子である。ヒドロキシアクリレートモノマーおよび多官能性アクリレートモノマーが、このメチレン炭素にマイケル付加される。
【0051】
酸官能化イソシアネート末端ウレタンオリゴマーのポリオール部分は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、またはポリオールの混合物でよい。ポリオールが、約200〜約5000の範囲の分子量であることが好ましい。より好ましくは、ポリオールが、約1000〜約2000原子量単位の分子量である。ウレタンオリゴマーの分子量は、主に、ポリオールスペーサーの分子量、および各オリゴマー中に組み込まれたこのようなスペーサーの数によって決まる。
【0052】
ポリオールは、アルカンジオールまたはシクロアルカンジオールでよい。非限定的な例には、エタンジオール、1,2-および1,3-プロパンジオール、1,2-、1,3-および1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-および1,4-シクロヘキサンジオールおよび2-エチル-2-ブチルプロパンジオールが含まれる。同様に適切なのは、約5000、好ましくは約2000、より好ましくは約1000の最高分子量を有する、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、およびポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールまたはポリ(エチレングリコールアジペート)などのエーテル基またはエステル基を含有するジオールである。これらのジオールとε-カプロラクトンなどのラクトンとの反応生成物も、ジオールとして使用できる。好ましいポリオールは、ポリ(ネオペンチルグリコールアジペート)である。
【0053】
ポリオールは、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールおよびソルビトール、あるいはこれらのアルコールを出発原料とするポリエーテル、例えばトリメチロールプロパン1モルとエチレンオキシド4モルとの反応生成物など3官能性以上のアルコールでよい。
【0054】
本発明の非限定的な例として、数平均分子量(Mn)が約200〜約2000MWの範囲である、ポリエーテルまたはポリエステルポリオールから、カルボン酸官能化イソシアネート末端ウレタンオリゴマーが合成された。
【0055】
樹脂の硬化中に、組み込んだ光開始剤以外の発色団によって紫外線(UV)が吸収されるのを最小限に抑えるために、本発明の例である、カルボン酸官能化イソシアネート末端ウレタンオリゴマーが、脂肪族ジイソシアネートから合成された。しかし、脂肪族、脂環式、または芳香族ポリイソシアネートも使用できる。好ましい脂肪族ジイソシアネートには、それだけには限らないが、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体(HDT)、およびIPDI三量体が含まれる。
【0056】
図2Bは、ヒドロキシル基含有マイケル付加オリゴマーの合成の概略図である。β-ジカルボニルマイケルドナーを、強塩基の存在下で、ヒドロキシ官能性アクリレートモノマーおよび多官能性アクリレートモノマーまたはオリゴマーの等モル量と反応させる。ヒドロキシ官能性アクリレートマイケル付加オリゴマーの合成は、その内容の全体を参照によりあらゆる目的で本明細書に組み込んだ同時係属の米国特許出願(出願番号未定、整理番号第20435/0152号)に開示されている。
【0057】
好ましい一実施形態においては、β-ジカルボニルマイケルドナーは、β-ケトエステル(例えば、エチルアセトアセテート)である。適切には、本発明を、所望の樹脂の性質および最終用途に応じて、β-ジケトン(例えば、2,4-ペンタンジオン)、β-ケトアニリド(例えば、アセトアセトアニリド)、β-ケトアミド(例えば、アセトアセトアミド)、またはマイケルドナーの混合物で実施することもできる。本発明の好ましい実施形態においては、β-ジカルボニルは、官能基数(N)がN=2である。より高い官能基数(すなわち、N=4、6 ... )のβ-ジカルボニルドナーも適しているが、望ましくない系のゲル化を回避するために反応化学量論量のより注意深い制御がなされなければならない。
【0058】
官能基数=2である適切なβ-ジカルボニルドナー化合物には、それだけには限らないが、エチルアセトアセテート、メチルアセトアセテート、2-エチルヘキシルアセトアセテート、ラウリルアセトアセテート、t-ブチルアセトアセテート、アセトアセトアニリド、N-アルキルアセトアセトアニリド、アセトアセトアミド、2-アセトアセトキシルエチルアセトアセテート、2-アセトアセトキシルエチルメタクリレート、アリルアセトアセテート、ベンジルアセトアセテート、2,4-ペンタンジオン、イソブチルアセトアセテート、および2-メトキシエチルアセトアセテートが含まれる。
【0059】
官能基数=4である適切なβ-ジカルボニルドナー化合物には、それだけには限らないが、1,4-ブタンジオールジアセトアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセトアセテート、ネオペンチルグリコールジアセトアセテート、シクロヘキサンジメタノールジアセトアセテート、およびエトキシ化ビスフェノールAジアセトアセテートが含まれる。
【0060】
官能基数=6である適切なβ-ジカルボニルドナー化合物は、それだけには限らないが、トリメチロールプロパントリアセトアセテート、グリセリントリアセトアセテート、およびポリカプロラクトントリアセトアセテートが含まれる。
【0061】
官能基数=8である好ましいが非限定的なβ-ジカルボニルドナー化合物は、ペンタエリトリトールテトラアセトアセテートである。
【0062】
好ましいヒドロキシ官能性アクリレートには、それだけには限らないが、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、4-ヒドロキシブチルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、プロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、およびそれらの混合物が含まれる。
【0063】
適切な多官能性アクリレートマイケルアクセプターは、ジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、およびペンタアクリレートから選択される。上記の範囲のβ-ジカルボニルドナーおよび多官能性アクリレートアクセプターは、組成物設計者に最終製品の特性において広範囲の選択を行う機会を与える。
【0064】
好ましいジアクリレートには、それだけには限らないが、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、レソルシノールジグリシジルエーテルジアクリレート、1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、プロポキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、エポキシジアクリレート、アリールウレタンジアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、ポリエステルジアクリレート、およびそれらの混合物が含まれる。
【0065】
好ましいトリアクリレートには、それだけには限らないが、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトキシ化グリセロールトリアクリレート、プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、アリールウレタントリアクリレート、脂肪族ウレタントリアクリレート、メラミントリアクリレート、エポキシノボラックトリアクリレート、脂肪族エポキシトリアクリレート、ポリエステルトリアクリレート、およびそれらの混合物が含まれる。
【0066】
好ましいテトラアクリレートには、それだけには限らないが、ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、エトキシ化ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、アリールウレタンテトラアクリレート、脂肪族ウレタンテトラアクリレート、メラミンテトラアクリレート、エポキシノボラックテトラアクリレート、およびそれらの混合物が含まれる。
【0067】
好ましいペンタアクリレートには、それだけには限らないが、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、メラミンペンタアクリレート、およびそれらの混合物が含まれる。
【0068】
マイケル付加反応は、強塩基によって触媒される。好ましい塩基は、十分に強くモノマー混合物中に容易に可溶なジアザビシクロウンデセン(DBU)である。その他の環状アミジン、例えばジアザビシクロノネン(DBN)およびグアニジンも、この重合を触媒するのに適している。カリウムtert-ブトキシドなどのI族アルコキシド塩基は、反応媒体に十分に可溶であるなら、一般的に所望の反応を促進するのに十分である。テトラブチルアンモニウムヒドロキシドやベンジルトリメチルアンモニウムメトキシドなどの第四級ヒドロキシドおよびアルコキシドは、マイケル付加反応を促進するための好ましい塩基触媒の別のクラスを構成する。最後に、強い有機親和性アルコキシド塩基を、ハロゲン化物陰イオン(例えば、第四級ハロゲン化物)とエポキシド部分の間の反応でin situで生成することができる。このようなin situ触媒は、本出願の譲受人であるAshland, Inc.に譲渡された係属中の米国特許出願第10/255541号に開示されている。米国特許出願第10/255541号の内容の全体は、明確にその全体を参照によりあらゆる目的のために組み込む。
【0069】
図2Cは、本発明の非限定的な例であるカルボン酸官能化ウレタンアクリレートの合成を表している。図2Aのカルボン酸官能化イソシアネート末端ウレタンオリゴマーの各末端イソシアネート基は、図2Bのヒドロキシル基含有マイケル付加オリゴマー1当量と反応してウレタン結合を形成する。
【0070】
トリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、スズジオクトエートまたはジブチルスズジラウレートを含むが、それだけには限らない適切な触媒を添加することにより、イソシアネート付加反応を促進することができる。好適な触媒には、スズジオクトエートおよびジブチルスズジラウレートが含まれる。
【0071】
本発明はさらに、ペンダントアクリル官能基を有し、前記基の一部が第二級アミンによって誘導化されている未ゲル化で未架橋のマイケル付加オリゴマーを含む、ペンダント陽イオン性アクリレートオリゴマーを提供する。この第二級アミンは、ジアルキルアミン、ジアルケニルアミン、脂環式アミン、複素環式アミン、官能化第二級アミン、ならびにピペラジンなど複数の第二級アミン官能基を有する化合物でよい。この第二級アミンは、2個の有機基に共有結合した窒素を含むことができ、各基は、直鎖および分枝アルキル、直鎖および分枝アルケニルならびに直鎖および分枝アルキニルからなる群から選択される。2個の炭素基は、窒素と共に環化して複素環を形成してもよい。
【0072】
本発明のさらなる一実施形態は、少なくとも1つのイオン性基が、オリゴマー主鎖からのペンダント鎖によって結合しているオリゴマーを提供する。図3は、代表的なペンダント第四級アミン含有マイケル付加多官能性アクリレートオリゴマーの合成を表している。このオリゴマーは、中央のメチレン炭素と、この炭素にマイケル付加された第1および第2の多官能性アクリレートモノマーとを有する、β-ジカルボニルモノマーを含む。それぞれの組み込まれた多官能性アクリレートモノマー残基は、少なくとも1つのペンダントアクリレート基を有する。
【0073】
適切な好ましいβ-ジカルボニルモノマーは、イオン性主鎖樹脂について上述したものである。
【0074】
適切な好ましい多官能性アクリレートモノマーは、イオン性主鎖樹脂について上述したものである。
【0075】
マイケル付加反応は、上述のとおりである。
【0076】
カチオノマーは、図3に示されるように形成される。ペンダント第四級アミンマイケル付加多官能性アクリレートオリゴマーが、酸と混合されて、その塩が形成される。少なくとも1当量の、水に相溶性の酸が、アミン基を中和するために、陽イオン性になる前の(pre-cationic)オリゴマーと混合される。適切なプロトン供与性の有機および無機酸の非限定的な例には、リン酸、硫酸、塩酸、酢酸、ギ酸、および乳酸が含まれる。好ましい酸は、カルボン酸である。非限定的な好ましいカルボン酸には、ギ酸および酢酸が含まれる。好ましい酸は、乾燥させたときに乳濁液から容易に揮発するもの(それだけには限らないが、ギ酸および酢酸など)である。これにより、耐水性が良好な中性の硬化した樹脂コーティングが得られる。
【0077】
本発明は、共通の第四級アミン窒素原子を介して結合した、図3の樹脂の橋かけ型を含む。図3の樹脂2当量が、第一級アミン1当量と反応する。各樹脂単位からのペンダントアクリレート部分が、第一級アミンに付加して、第三級アミンを形成する。本発明は、より高次のオリゴマーを含む。第一級アミンと樹脂の比が変わると、より低次およびより高次の橋かけオリゴマーの混合物が形成され得る。
【0078】
一実施形態においては、水溶液中で対イオンと組み合わせることによって、樹脂からイオノマーが形成される。水と対イオンは、どの順に添加してもよい。樹脂の電荷に適した対イオンは、弱塩基性第三級アミン(約2.5〜約9.0のpKb)またはギ酸や酢酸などの弱酸(約5.0〜約3.0pKa)に由来するものである。対イオンは、存在する他のイオンを容易に解離させまたはそれと会合して、一般的に樹脂の予想される用途に関連した使用温度において中性で揮発性の化合物を形成できるものであることが好ましい。コバット指数は化合物の分子サイズおよび沸点に関係する記述子であり、従ってこの指数は化合物の相対的揮発性の測定であることが、化学分野の技術者には容易に理解される。コバット指数は、ガスクロマトグラフィーにより簡単に決定されることが、技術者には理解される。
【0079】
本発明のイオノマーは、基材に塗布する前に、約10%〜約75%の固体添加量で水に分散される。好ましい添加量は、約20%〜約60%である。より好ましい添加量は、約30%〜約40%である。添加量は、重量ベースで計算される。塗布後に、イオノマーは、乾燥させ硬化させることができる。
【0080】
本発明の樹脂は、コーティング、塗料、積層品、シーラント、接着剤、鋳物砂粘結剤、およびインキを処方するのに適した、顔料、光沢改変剤、流動化剤、レベリング剤、およびその他の添加剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤と混合してもよい。
【0081】
本発明のイオノマー系の諸特性は、反応剤を適切に選択することによってうまく実現することができる。-OH含有マイケル付加オリゴマーの合成のための、マイケルドナーおよび多官能性アクリレートモノマーは、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)などのヒドロキシ化(-OH含有)アクリレートと共に、変更することができる。反応で使用される、ポリオールの分子量、その分子構成、親水性モノマーの化学量論量、および多官能性イソシアネートのタイプも、最終材料の諸特性を規定する。これらの材料が光開始剤の存在なしに、良好な特性を有するタックフリーコーティングを形成できることも実証された。
【0082】
(実施例)
紫外光重合を、本発明の組成物の一部を表面に塗布することにより実際に行った。上記組成物を、表面に最高で約3ミル(76.2ミクロン)の厚さで展着させた。上記樹脂をアルミニウムまたはステンレス鋼の基材に「ドローダウン」技術により塗布した。試料を、約840 mJ/cm2のUV線量を供給するFusion Systems Corp.のUV硬化装置で、600ワットH電球および40フィート(12.2メートル)/分のベルト速度を使用して硬化させた。
【0083】
コーティング性能の諸特性を、当業界の技術者によく知られている様々な異なる試験方法により測定した。
【0084】
耐溶剤性。耐溶剤性は、コーティングが溶剤の攻撃またはフィルムの変形に抵抗する能力である。適切な溶媒をしみ込ませた布でコーティングを摩擦するのが、特定のレベルの耐溶剤性が達成される時間を評価する一方法である。摩擦試験は、メチルエチルケトン(MEK)または水(指示による)を使用して実施され、この試験では、コーティングを施した表面上での丸1往復の運動である、二重摩擦技術を用いた。試験のストロークを標準化するために、チーズクロスを16オンス(453g)のボールピーンハンマーの丸い端部に固定した。二重摩擦技術は、オペレータが柄の基部でハンマーを持つときのハンマーの重さを利用する。この試験は、二重摩擦動作によってフィルムに切込みが入るか、顕著な乱れが明らかになるまで実施した。この方法は、ASTM D4752の手順に手を加えた方法である。
【0085】
接着剤試験を、ASTM D3359に手を加えた方法を使用し、Test Tape Method Bにより、3mm間隔の6枚刃切断工具を用いて、硬い基材上でクロスハッチ法によって実施した。用いた試験テープは、Tesa 4970であった。このASTM試験では、0B〜5Bの値が記録された。ただし、0Bは完全な失敗であり、5Bは優れた接着性を特徴づけている。
【0086】
(実施例1)
OH含有マイケル付加樹脂Iの合成
トリメチロールプロパントリアクリレート(135.54g、0.4574モル)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(53.11g、0.4574モル)、エチルアセトアセテート(54.11g、0.0307モル)、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド(2.41g、0.0075モル)、およびグリシジルメタクリレート(9.71g、0.0746モル)を、ガラス反応器500ml中に装入した。反応器には、機械式撹拌装置、還流冷却器、および温度監視用熱電対を備えた蓋で栓をした。上記混合物を、撹拌しながら反応させた。温度を80℃にするために、50分の間、熱を加えた。次いで、一定の屈折率(1.4796)が得られるまで5時間、反応混合物を80℃に保った。反応混合物を、50℃に冷却し、エチレングリコールメタクリレートホスフェート2.35g(0.0112モル)(Ebecryl(登録商標)168、UCBの商標)を添加して触媒系をクエンチした。反応混合物を、50℃で15分間撹拌した。得られた樹脂は、屈折率が1.4796、粘度が50℃において593 cP(593ミリパスカル秒)、OH価が109mg KOH/gであった。
【0087】
(実施例2)
ポリウレタンアクリレートイオノマーIの合成
ポリプロピレングリコール(121.79g、0.0622モル、Pluracol(登録商標)P2010、ヒドロキシル数=57.3、公称分子量2,000)(Pluracol、BASF Corporationの商標)、ジメチロールプロピオン酸(16.67g、0.124モル)、アセトン133.17g、およびジブチルスズジラウレート0.24gを、1,000mlガラス反応器中に装入した。反応器には、機械式撹拌装置、還流冷却器、温度監視用熱電対、および添加漏斗を備えた蓋で栓をした。この漏斗には、イソホロンジイソシアネート(IPDI)55.48g(0.2488モル)を満たした均圧側枝が取り付けられている。この系を、乾燥窒素で十分にフラッシュし、乾燥窒素ブランケット下に保った。反応器の内容物を、撹拌しながら20分かけて45℃に加熱昇温した。温度を45℃に保ちながら、上記IPDIを、1時間かけて一滴ずつ添加した。IPDIの添加に続いて、温度を、3時間かけて60℃に上げた。1.72%NCOの終点に達するまで(22時間)、反応混合物を60℃に保った。次いで、実施例IのOH含有マイケル付加樹脂I(72.65g、0.1244モル)を、10分かけて徐々に添加し、この混合物を、さらに撹拌し加熱した。ゲル化を防ぐために、この段階でフェノチアジン(0.01g)を添加した。反応を、FTIRで監視した。2,300cm-1(-NCOバンド)の強度が、一定な最小値到達したとき(18時間後)、アセトンを、60℃で圧力40mmHg(5,300パスカル)での減圧蒸留によって除去した。得られた粘性の樹脂の温度を、45〜50℃に下げ、トリエチルアミン25.10g(0.248モル)を添加した。10分間撹拌しながら55℃に加熱した後、脱イオン水400.00gを添加し、さらに10分間撹拌した。生成物は、約40%の樹脂水性分散液を含む粘性で半透明の液体であった。上記分散液のアリコートを、脱イオン水でさらに希釈して、30%水性分散液を得た。両方の分散液は、暗所に周囲条件で貯蔵した場合、少なくとも6ヶ月間安定であった。
【0088】
(実施例3)
ポリウレタンアクリレートイオノマーIIの合成
第1段階:1,000mlガラス反応器に、ポリ(ネオペンチルグリコールアジペート)(Fomrez 55-112、ヒドロキシル数=113.2、FomrezはWitco Chemicalの商標である)236.1g(0.476当量)、ジメチロールプロピオン酸63.8g(0.951当量)、エチルアセテート238.1g、およびジブチルスズジラウレート0.5gを装入した。反応器には、機械式撹拌装置、還流冷却器、温度監視用熱電対、およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)211.5g(1.91当量)を満たした均圧側枝付きの添加漏斗を備えた蓋で栓をした。この系を、乾燥窒素で十分にフラッシュし、乾燥窒素ブランケット下に保った。反応器の内容物を、撹拌しながら30分かけて65℃に加熱した。温度を65℃に保ちながら、IPDIを、45分間かけて一滴ずつ添加した。次いで、反応温度を80℃に上げ、FTIRで監視した。約3,600cm-1(-OHバンド)が観察できなくなるまで、反応を80℃で続け、NCO濃度は2.2%に達した。
【0089】
第2段階:500mlガラス反応器に、第1段階の生成物170.22g(0.08912当量)、および実施例1のOH含有マイケル付加樹脂I 46.57g(0.09804当量)を装入した。反応器には、機械式撹拌装置、還流冷却器、および温度監視用熱電対を備えた蓋で栓をした。この内容物を、40分間撹拌しながら60℃に加熱し、FTIRで観測して約2,300cm-1NCOバンドが一定した最小強度に達するまで(18時間)、この温度に保った。トリエチルアミン(13.27g、0.1311当量)および脱イオン水419.91gを添加し、エチルアセテートを、380〜430mmHg(50,600〜57,300パスカル)で60℃での減圧蒸留により除去した。上記の結果は、約30%の樹脂を含有するかすかに曇った水性分散液であり、これは周囲条件で光を避けて少なくとも6ヶ月分離せず安定であった。
【0090】
(実施例4)
ポリウレタンアクリレートイオノマーIIのコーティング特性
実施例3の30%水性ポリウレタンアクリレートイオノマーIIのフィルムを、アルミニウムQ Panel (Q-Panel(登録商標)は、オハイオ州クリーブランド市のQ-Panel Lab Productsの商標)上にドローダウンし、45℃で10〜15分間乾燥させ、Fusion 600ワット/インチ「H」電球の下で1,000 mJ/cm2の線量で硬化させた。得られた透明フィルムは、硬くタックフリーであった。このフィルムは、200回を超える水二重摩擦に耐え抜き、かつ40回のMEK二重摩擦に耐え抜いた。
【0091】
市販の木製パーティクルボードのコーティング用に、ポリウレタンアクリレートイオノマーIIの30%分散液の2種の処方物、すなわち、69%分散液/31% Hubercarb Q6炭酸カルシウム(Hubercarbは、J.M. Huber, Engineered Materials Sectorの登録商標である)、および69%分散液/31% Zeeospheres W-610(3M Company)を調製した。それぞれを、パーティクルボード上に2つの8ミル(203ミクロン)厚の層にドローダウンし、各塗布後に50℃で乾燥させた。これらのフィルムを上記のとおり硬化させて、約3.5ミル(89ミクロン)厚の硬質フィルムを得た。これらは、クロスハッチ接着性試験で基材に対する優れた接着性(剥がれ0%)を示した。
【0092】
(実施例5)
OH含有マイケル付加樹脂IIの合成
水溶性トリアクリレートSR 9035(40.5g、0.042モル)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)(4.9g、0.042モル)、エチルアセトアセテート(EAA)(5g、0.385モル)を、マグネティックスターラー、熱電対を備えた100mL反応器に添加した。グリシジルメタクリレート(2,3-エポキシプロピルメタクリレート)1.01g、2重量/重量%、0.007モル)、およびテトラブチルアンモニウムブロミド(0.252g、0.5重量/重量%)を、助触媒として添加した。ひとつまみのフェノチアジンの添加によって、高温により誘発されるゲル化を防止した。反応混合物を、加熱マントルで80℃に加熱し4時間撹拌した。反応により、透明でわずかに黄色で中程度の粘度の液体が得られた(Brookfield粘度計を用いて粘度を測定した)。この液体を、貯蔵のために褐色ガラスビンに移した。炭素-13によるNMRによって、二置換EAA生成物の約97%が得られたことが確認された。この樹脂は、約200mJ/cm2で硬化してタックフリーになった。しかし、このコーティングは、標準の1ポンド(0.454kg)ハンマーを用いた水二重摩擦法で測定して耐水性が非常に悪かった。
【0093】
(実施例6)
ポリウレタンアクリレートイオノマーIIIの合成
機械式撹拌装置および熱電対を備えた100mL樹脂反応がまを、装入前に約2分間窒素でパージした。パージした反応がまに、ポリエチレングリコール(MW-200)(7.5g、0.0375モル)、ジメタノールプロピオン酸(1.7g、0.0125モル)を装入した。3滴のモノクロロフェニルホスフェートを、水を触媒とするウレタン反応によるゲル化を防止するために脱水剤として添加した。ウレタンオリゴマーの合成を、イソホロンジイソシアネート(IPDI)(22.2g、0.1モル)、およびジブチルスズラウレート(2滴)をゆっくりと添加することにより開始した。発熱量を、50℃未満に制御した。反応混合物の粘度を低下させるために、水溶性トリアクリレートSR9035(2.4g)を添加した。アクリレートが高温でゲル化するのを防ぐために、ひとつまみのフェノチアジンを添加した。添加の終了時に、赤外分光法(FTIR)で測定して、OH基の95%超が消費されるまで、樹脂を加熱し続けた。2時間後に、温度を約40℃に保ちながら、実施例1で合成されたOH含有マイケル付加樹脂I(30.65g、0.0255モル)、およびHEA(3g、0.0255モル)を、ゆっくりと添加した。室温で反応を終夜続行させた。HEA(約1g)およびひとつまみのフェノチアジンを添加し、FTIRにより-NCO基の残りが2%未満になるまで、反応を40℃でさらに1時間継続した。コーティング特性を確認するために、この樹脂のサンプルをアルミニウムパネルに塗布した。残りの樹脂を、トリエチルアミン(0.6035g)および水(70g)と撹拌することによって乳化させて、ポリウレタンアクリレートイオノマーの30%分散液を得た。この白色の分散液は、相分離の開始まで数時間安定であった。
【0094】
(実施例7)
ポリウレタンアクリレートイオノマーIIIのコーティング特性
実施例6の生成物のアリコートを、アルミニウムパネルに塗布し、UV光で(600ワット/インチ「H」電球、840 mJ/cm2の線量で)架橋させた。樹脂は硬化して、オーブン中で水を乾燥させた後、透明で光沢のあるタックフリーのコーティングになった。このコーティングは、高い耐溶剤性(>200回のMEK二重摩擦)および高い耐水性(>200回の水二重摩擦)を有した。
【0095】
(実施例8)
アミン改変マイケル付加樹脂の合成
1,000mlガラス反応器に、SR454(Sartomer Companyからのエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート)501.61g(1.1720モル)、およびLaromer PE 55 F(BASFからのポリエステルジアクリレート)390.66g(0.3907モル)、エチルアセトアセテート78.13g(0.6004モル)、テトラブチルアンモニウムブロミド4.98g(0.0155モル)、およびグリシジルメタクリレート19.92g(0.1402モル)を装入した。反応器には、機械式撹拌装置、還流冷却器、および温度監視用熱電対を備えた蓋で栓をした。混合物を撹拌しながら95℃で1時間加熱し、混合物の屈折率が一定値(25℃において1.4862)に達するまでこの温度に保った。次いで、ピペラジン(4.69g、0.0551モル)を添加し、反応混合物を撹拌しながら30分間かけて70℃に冷却した。最終樹脂は、屈折率が25℃で1.4866であり、粘度が25℃で18,000センチポイズ(18,000ミリパスカル秒)であった。
【0096】
(実施例9)
陽イオン性アクリレートオリゴマー乳濁液およびそのコーティング特性
実施例10で調製されたアミン改変マイケル付加樹脂2.00g、脱イオン水1.00g、および氷酢酸0.03gを、秤量して4ドラム(7g)のガラス製バイアルに入れた。混合物を振とうして白色乳濁液を得たが、これは1時間を超えても安定なままであった。
【0097】
この乳濁液のフィルムを、アルミニウムQ Panel上にドローダウンし、40℃で30分間乾燥させ、Fusion 600ワット/インチ「H」電球で、500 mJ/cm2の線量で硬化させた。得られた透明フィルムは、硬くタックフリーであった。このフィルムは、200回を超える水二重摩擦に耐え抜き、200回を超えるMEK二重摩擦に耐え抜いた。
【0098】
参照による組込み
本明細書に引用される、あらゆる刊行物、特許、特許出願公開、およびASTM試験方法を、各刊行物、特許、特許出願公開、および/またはASTM試験方法が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されていたかのように、参照により、あらゆる目的で本明細書に組み込む。とりわけ、同時係属中の米国特許出願(出願番号未定、整理番号20435/141、20435/144、20435/145、20435/147、20435/148、および20435/152)の内容の全体を、参照により、あらゆる目的で本明細書に組み込む。矛盾がある場合、本開示が優先する。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】代表的な架橋マイケル付加樹脂の概略図である。
【図2A】代表的なカルボン酸官能化イソシアネート末端ウレタンオリゴマーの合成の概略図である。
【図2B】代表的なヒドロキシ官能性マイケル付加多官能性アクリレートオリゴマーの合成の概略図である。
【図2C】本発明のイオン性主鎖樹脂を代表する、カルボン酸官能化ウレタンアクリレートマイケル付加オリゴマーの合成の概略図である。
【図2D】図2Cの樹脂のトリアルキルアンモニウム塩を代表するイオン性主鎖アニオノマーの概略図である。
【図3】代表的なペンダント第三級アミンマイケル多官能性アクリレートオリゴマー、およびそのカチオノマー、すなわちそのカルボン酸塩の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性UV硬化性多官能性アクリレートマイケル樹脂であって、
主鎖構造を有するマイケル樹脂と、
少なくとも1つのイオン性部分とを含む樹脂。
【請求項2】
前記イオン性部分が、前記樹脂の主鎖に組み込まれる、請求項1に記載のUV硬化性樹脂。
【請求項3】
前記イオン性部分が、前記樹脂の主鎖からペンダントしている、請求項1に記載のUV硬化性樹脂。
【請求項4】
前記主鎖が、
少なくとも1つのイオン性イソシアネート末端ウレタンオリゴマーと、
少なくとも1つのヒドロキシ官能性マイケル樹脂とを含む、請求項2に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項5】
前記イオン性イソシアネート末端ウレタンオリゴマーが、
イソシアネート反応性親水性モノマーと、
ポリオールと、
少なくとも1つの多官能性イソシアネートとを含む、請求項4に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項6】
前記ヒドロキシ官能性マイケル樹脂が、
β-ジカルボニルモノマーと、
ヒドロキシ官能性アクリレートモノマーと、
多官能性アクリレートとを含む、請求項4に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項7】
前記イソシアネート反応性が、ヒドロキシル、第一級アミン、第二級アミン、およびチオールからなる群から選択される化学部分を含む、請求項5に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項8】
好ましいイソシアネート反応性部分がヒドロキシルである、請求項7に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項9】
少なくとも2つのイソシアネート反応性部分を含む、請求項7に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項10】
前記イオン性部分が、カルボキシレート、スルホネート、アンモニウム、第四級アミン、およびスルホニウムからなる群から選択される化学部分を含む、請求項5に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項11】
好ましいイオン性部分がカルボキシレートである、請求項10に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項12】
前記イソシアネート反応性親水性モノマーが、ジメチロールプロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、ヒドロキシピバリン酸、リンゴ酸、グリコール酸、乳酸からなる群から選択される、請求項5に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項13】
好ましいイソシアネート反応性親水性モノマーが、ジメチロールプロピオン酸である、請求項12に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項14】
前記ポリオールが、ポリエーテルポリオール類およびポリエステルポリオール類からなる群から選択される、請求項5に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項15】
前記ポリオールが、ポリ(ネオペンチルグリコール)アジペート、ポリプロピレングリコール、およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、請求項14に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項16】
第1ヒドロキシルおよび第2ヒドロキシルが、前記ポリオールの末端にある、請求項14に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項17】
前記多官能性イソシアネートが、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、および芳香族イソシアネートからなる群から選択される、請求項5に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項18】
好ましいポリイソシアネートが、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、および2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)からなる群から選択される、請求項17に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項19】
前記β-ジカルボニルモノマーが、β-ケトエステル類、β-ジケトン類、β-ケトアミド類、およびβ-ケトアニリド類からなる群から選択される、請求項6に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項20】
好ましいβ-ジカルボニルモノマーが、エチルアセトアセテート、2,4-ペンタンジオン、およびアセトアセトアニリドからなる群から選択される、請求項19に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項21】
前記ヒドロキシ官能性アクリレートが、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項22】
好ましいヒドロキシ官能性アクリレートが、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)である、請求項21に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項23】
前記多官能性アクリレートが、ジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、およびペンタアクリレートからなる群から選択される、請求項6に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項24】
前記ジアクリレートが、
エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、
ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、
トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、
テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、
ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、
エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、
レソルシノールジグリシジルエーテルジアクリレート、1,3-プロパンジオールジアクリレート、
1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、
シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、
プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、
エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、
プロポキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アクリル化エポキシジアクリレート、
アリルウレタンジアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、ポリエステルジアクリレート、
およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項23に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項25】
前記トリアクリレートが、
トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールトリアクリレート、
エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、
プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、
トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトキシ化グリセロールトリアクリレート、
プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、
アリルウレタントリアクリレート、脂肪族ウレタントリアクリレート、
メラミントリアクリレート、脂肪族エポキシトリアクリレート、エポキシノボラックトリアクリレート、
ポリエステルトリアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項23に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項26】
前記テトラアクリレートが、
ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、
エトキシ化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、
プロポキシ化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、
エトキシ化ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、
プロポキシ化ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、アリルウレタンテトラアクリレート、
脂肪族ウレタンテトラアクリレート、メラミンテトラアクリレート、
エポキシノボラックテトラアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項23に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項27】
前記ペンタアクリレートが、
ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、メラミンペンタアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項23に記載のイオン性主鎖UV硬化性樹脂。
【請求項28】
中央のメチレン炭素を有するβ-ジカルボニルモノマーと、
前記炭素にマイケル付加された、少なくとも2つの多官能性アクリレートと、
前記アクリレートの少なくとも1つに付加された、少なくとも1つの第二級アミンとを含む、請求項3に記載のペンダント-イオン性UV硬化性樹脂。
【請求項29】
前記β-ジカルボニルモノマーが、β-ケトエステル類、β-ジケトン類、β-ケトアミド類、およびβ-ケトアニリド類からなる群から選択される、請求項28に記載のペンダント-イオン性UV硬化性樹脂。
【請求項30】
好ましいβ-ジカルボニルモノマーが、エチルアセトアセテート、2,4-ペンタンジオン、およびアセトアセトアニリドからなる群から選択される、請求項29に記載のペンダント-イオン性UV硬化性樹脂。
【請求項31】
前記第二級アミンが、
2個の有機基に共有結合した窒素を含み、前記それぞれの基は、直鎖および分枝アルキル、直鎖および分枝アルケニルならびに直鎖および分枝アルキニルからからなる群から選択される、請求項28に記載のペンダント-イオン性UV硬化性樹脂。
【請求項32】
前記の基2個が、前記窒素と共に環化して複素環を形成する、請求項31に記載のペンダント-イオン性UV硬化性樹脂。
【請求項33】
好ましい第二級アミンがジエタノールアミンである、請求項28に記載のペンダント-イオン性UV硬化性樹脂。
【請求項34】
請求項1に記載のイオン性UV硬化性マイケル樹脂と、
ある量の水と、
対イオンとを含むイオノマー。
【請求項35】
コーティング、塗料、積層品、シーラント、接着剤、鋳物砂粘結剤、およびインキを処方するのに適した顔料、光沢改変剤、流動化剤、レベリング剤、およびその他の添加剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項33に記載のイオノマー。
【請求項36】
請求項1に記載のイオン性UV硬化性マイケル樹脂でコートされた基材。
【請求項37】
フリーラジカル発生因子で硬化された、請求項1に記載のイオン性UV硬化性マイケル樹脂を含む重合生成物。
【請求項38】
前記フリーラジカル発生因子が化学線である、請求項37に記載の重合生成物。
【請求項39】
前記フリーラジカル発生因子が、電子ビーム放射である、請求項36に記載の重合生成物。
【請求項40】
前記フリーラジカル発生因子が、ペルオキシドである、請求項37に記載の重合生成物。
【請求項41】
前記ペルオキシドが、メチルエチルケトンペルオキシド(MEKP)、tert-ブチルペルベンゾエート(TBPB)、クミルペルオキシド、およびtert-ブチルペルオキシドからなる群から選択される、請求項40に記載の重合生成物。
【請求項42】
コーティング、塗料、積層品、シーラント、接着剤、鋳物砂粘結剤、およびインキを処方するのに適した顔料、光沢改変剤、流動化剤、レベリング剤、およびその他の添加剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項37に記載の重合生成物。
【請求項43】
基材を用意する工程と、
請求項1のイオン性マイケル樹脂を前記基材に塗布する工程と、
前記樹脂を硬化させる工程とを含む、イオン性マイケル樹脂の使用方法。
【請求項44】
塗布が、ロールコーティング、スプレーコーティング、はけ塗り、ディップコーティング、および電着塗装からなる群から選択されるコーティング方法を含む、請求項43に記載のイオン性マイケル樹脂の使用方法。
【請求項45】
イオン性主鎖UV硬化性イオノマーの作製方法であって、
乾燥雰囲気を有する樹脂反応器を用意する工程と、
前記反応器にポリオールを供給する工程と、
前記反応器にイソシアネート反応性親水性モノマーを供給する工程と、
前記反応器にウレタン化触媒を供給する工程と、
前記反応器にポリイソシアネートを供給する工程と、
反応混合物を反応有効温度に保つ工程と、
ヒドロキシ官能性多官能性アクリル化マイケルオリゴマーを供給する工程とを含む方法。
【請求項46】
好ましいイソシアネート反応性親水性モノマーが、ジメチロールプロピオン酸である、請求項45に記載のイオン性主鎖UV硬化性イオノマーの作製方法。
【請求項47】
前記ウレタン化触媒が、ジブチルスズジラウレート、スズ(II)オクトエート、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンからなる群から選択される、請求項45に記載のイオン性主鎖UV硬化性イオノマーの作製方法。
【請求項48】
ヒドロキシ官能性多官能性アクリル化マイケルオリゴマーを供給する工程が、
樹脂反応器を用意する工程と、
前記反応器にポリオール多官能性アクリレートモノマーを供給する工程と、
前記反応器にヒドロキシアクリレートモノマーを供給する工程と、
前記反応器にβ-ジカルボニルモノマーを供給する工程と、
マイケル付加触媒を供給する工程とを含む、請求項45に記載のイオン性主鎖UV硬化性イオノマーの作製方法。
【請求項49】
前記マイケル付加触媒が、モノマー混合物中に容易に可溶な強塩基である、請求項48に記載のイオン性主鎖UV硬化性イオノマーの作製方法。
【請求項50】
前記マイケル付加触媒が、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、I族アルコキシド塩基、第四級水酸化物およびアルコキシド、ならびにハロゲン化物陰イオンとエポキシド部分の間の反応でin situで生成される有機親和性アルコキシド塩基からなる群から選択される、請求項48に記載のイオン性主鎖UV硬化性イオノマーの作製方法。
【請求項51】
ある量の水を添加する工程と、場合によっては
対イオンを添加する工程とをさらに含む、請求項45に記載のイオン性主鎖UV硬化性イオノマーの作製方法。
【請求項52】
コーティング、塗料、積層品、シーラント、接着剤、鋳物砂粘結剤、およびインキを処方するのに適した顔料、光沢改変剤、流動化剤、レベリング剤、およびその他の添加剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を添加する工程をさらに含む、請求項51に記載のイオン性主鎖UV硬化性イオノマーの作製方法。
【請求項53】
ペンダント-イオン性UV硬化性イオノマーの作製方法であって、
乾燥雰囲気を有する樹脂反応器を用意する工程と、
β-ジカルボニルを供給する工程と、
多官能性アクリレートを供給する工程と、
マイケル付加触媒を供給する工程と、
反応有効温度に保つ工程とを含む方法。
【請求項54】
ある量の水を添加する工程と、場合によっては
対イオンを添加する工程とをさらに含む、請求項53に記載のペンダント-イオン性UV硬化性イオノマーの作製方法。
【請求項55】
コーティング、塗料、積層品、シーラント、接着剤、鋳物砂粘結剤、およびインキを処方するのに適した顔料、光沢改変剤、流動化剤、レベリング剤、およびその他の添加剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を添加する工程をさらに含む請求項53に記載のペンダント-イオン性UV硬化性イオノマーの作製方法。
【請求項56】
オリゴマー化ペンダント-イオン性多官能性アクリレートマイケル樹脂であって、
少なくとも2当量のペンダント-イオン性多官能性アクリレートマイケル樹脂と、
第一級アミンとを含み、前記アミンが前記樹脂によって二置換されている樹脂。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−534830(P2007−534830A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510814(P2007−510814)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/013666
【国際公開番号】WO2005/111104
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(505301103)アシュランド・ライセンシング・アンド・インテレクチュアル・プロパティー・エルエルシー (40)
【Fターム(参考)】