説明

自己免疫性、炎症およびガンの経過を阻害し得る新規なケモカイン結合ポリペプチド

Fcドメインまたはそのフラグメントに結合される少なくとも1つのケモカイン結合ペプチドを含む新規なポリペプチドが開示される。ポリペプチドは、特定のケモカインに結合して、それらの活性を調節することができる。これらのポリペプチドは、炎症および自己免疫反応のような生体内ケモカイン依存工程を調節するため、および関連した状態を処置するために使用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケモカインに結合し得る新規なポリペプチドを開示し、より具体的には、しかし、限定ではないが、ケモカイン依存的プロセス、例えば、自己免疫性、炎症およびガンなどを調節し得るポリペプチドを開示する。
【背景技術】
【0002】
ケモカインは、炎症性疾患プロセスに関与する多くの生物学的因子の1つである。ケモカインは、それらの一次構造と、4つの保存されたシステイン残基の存在との両方において関連づけられる小さい、すなわち、約8kDa〜14kDaの、ほとんどが塩基性のヘパリン結合タンパク質の一群に属する。
【0003】
これらのケモカインは、インビトロにおいては白血球サブ集団に対する選択的な化学誘引物質であること、そして、インビボにおいては炎症細胞の蓄積を誘発することが示されている走化性ケモカインである。走化性に加えて、ケモカインは、白血球の脱顆粒[BaggioliniおよびDahinden、Immunol Today、1994、15:127〜133]、接着受容体のアップレギュレーション[VaddiおよびNewton、J Immunol、1994、153:4721〜4732]、および、ヒト免疫不全ウイルス複製の抑制[Cocchi他、Science、1995、270:1811〜1815]を媒介する。
【0004】
ケモカインは、免疫系からの細胞の動員および活性化において不可欠な役割を果たす。ケモカインはまた、広範囲の様々な影響を、免疫系を越えた多くの異なる細胞タイプにおいて有する;これらには、例えば、中枢神経系の様々な細胞における影響[Ma他、PNAS、1998、95:9448〜9453]、および、ケモカインが血管形成性または血管新生抑制性のどちらかの影響をもたらす内皮細胞における影響[Strieter他、J Biol Chem、1995、270:27348〜27357]が含まれる。特定のケモカインが、血管形成、成長および転移の促進、ならびに、ガンに対する免疫応答の抑制を含めて、多数の影響を腫瘍に対して有し得る一方で、他のケモカインにより、腫瘍媒介の血管形成が阻害され、また、抗腫瘍免疫応答が促進される。
【0005】
ケモカイン受容体が、炎症および関連状態(例えば、喘息、アテローム性動脈硬化、移植片拒絶、AIDSおよび自己免疫状態(例えば、多発性硬化症、関節炎、重症筋無力症、狼瘡)など)の進行におけるそれらの非常に重要な役割のためにますます注目を集めている。
【0006】
国際特許出願PCT/IL03/00155(これは国際公開WO03/072599として公開された)および米国特許第7488717号は、ケモカインと結合し、かつ、その生物学的機能を調節し得る新規なペプチドおよびペプチド模倣体を開示する。
【発明の概要】
【0007】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、Fcドメインまたはそのフラグメントに結合される少なくとも1つのケモカイン結合ペプチドを含む単離されたポリペプチドが提供される。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載されるポリペプチドと、医薬的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物が提供される。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、ケモカインの生物学的影響を調節するための医薬品の製造における本明細書中に記載されるポリペプチドの使用が提供される。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、ケモカインの生物学的影響を調節する方法であって、治療効果的な量の本明細書中に記載されるポリペプチドをその必要性のある対象に投与し、それにより、ケモカインの生物学的影響を調節することを含む方法が提供される。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、炎症、アレルギー、遅延型過敏症、最適でない免疫応答、異常な細胞遊走、自己免疫反応、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、同種移植片拒絶、糖尿病、敗血症、ガン、悪性細胞成長、細菌感染症、ウイルス感染症、関節炎、大腸炎、乾癬、アテローム性動脈硬化、高血圧、重症筋無力症および再灌流虚血からなる群から選択される状態を処置するための医薬品の製造における本明細書中に記載されるポリペプチドの使用が提供される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、炎症、アレルギー、遅延型過敏症、最適でない免疫応答、異常な細胞遊走、自己免疫反応、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、同種移植片拒絶、糖尿病、敗血症、ガン、悪性細胞成長、細菌感染症、ウイルス感染症、関節炎、大腸炎、乾癬、アテローム性動脈硬化、高血圧、重症筋無力症および再灌流虚血からなる群から選択される状態を処置する方法であって、本明細書中に記載されるポリペプチドをその必要性のある対象に投与し、それにより、ケモカインの生物学的影響を調節および/または阻害することを含む方法が提供される。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載されるポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載されるポリヌクレオチドを含む核酸構築物が提供される。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、上記の核酸構築物を含む細胞が提供される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、ポリペプチドを作製する方法であって、上記の細胞を培養すること、および、ポリペプチドを単離することを含む方法が提供される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、水溶性ポリマーに結合されている本明細書中に記載されるポリペプチドを含むコンジュゲートが提供される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ポリペプチドはさらに、リンカーを含む。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、リンカーはアミノ酸リンカーである。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Fcドメインは、IgGのFcドメイン、IgAのFcドメイン、IgDのFcドメイン、IgEのFcドメインおよびIgMのFcドメインからなる群から選択される。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ケモカイン結合ペプチドは、FcドメインまたはそのフラグメントのN末端に結合される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ケモカイン結合ペプチドは、FcドメインまたはそのフラグメントのC末端に結合される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、リンカーは4個〜10個のアミノ酸から構成される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、リンカーはヘキサペプチドである。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、リンカーは、配列番号162に示されるペプチドである。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ポリペプチドはさらに、シグナルペプチドを含む。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、シグナルペプチドはポリペプチドのN末端に存在する。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ポリペプチドは下記の式を有する:
W−X−Y−Z
式中、
Wはシグナルペプチドである;
Xはケモカイン結合ペプチドである;
Yはリンカーである;および
ZはFcドメインまたはそのフラグメントである。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ケモカイン結合ペプチドは長さが10アミノ酸〜20アミノ酸である。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ケモカイン結合ペプチドは長さが12アミノ酸〜13アミノ酸である。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ケモカイン結合ペプチドは、I−TAC、IP−10、MIG、MCP−1、エオタキシンおよびRANTESからなる群から選択される少なくとも1つのケモカインに結合できることによって特徴づけられる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ケモカイン結合ペプチドは、配列番号1〜配列番号157からなる群から選択される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ケモカイン結合ペプチドは、BKT−P2(配列番号101)およびBKT−P46(配列番号76)からなる群から選択される。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ケモカイン結合ペプチドは、配列番号1〜配列番号157からなる群から選択されるアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列相同性を示すアミノ酸配列を有する。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記の配列相同性は少なくとも95%である。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、シグナルペプチドはIL−6のシグナルペプチドを含む。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、シグナルペプチドは配列番号161を有する。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、シグナルペプチドは、配列番号161に対する少なくとも90%の配列相同性を示すアミノ酸配列を有する。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、FcドメインはヒトFcドメインである。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、FcドメインはIgGのFcドメインである。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、FcドメインはIgG1のドメインである。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Fcドメインまたはそのフラグメントはグリコシル化されていない。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Fcドメインまたはそのフラグメントは配列番号160を有する。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ポリペプチドは、少なくとも1つのケモカインがケモカイン受容体に結合することを阻害できることによって特徴づけられる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ポリペプチドは、少なくとも1つのケモカインがケモカイン受容体に結合することを強化できることによって特徴づけられる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、医薬組成物は包装材に詰められ、ケモカインの生物学的影響を調節することにおける使用のために包装材の内部または表面において特定される。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、医薬組成物は包装材に詰められ、炎症、アレルギー、遅延型過敏症、最適でない免疫応答、異常な細胞遊走、自己免疫反応、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、同種移植片拒絶、糖尿病、敗血症、ガン、悪性細胞成長、細菌感染症、ウイルス感染症、関節炎、大腸炎、乾癬、アテローム性動脈硬化、高血圧、重症筋無力症および再灌流虚血からなる群から選択される状態を処置することにおける使用のために包装材の内部または表面において特定される。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、静脈内投与、経口投与、皮下投与、局所投与および/または鼻腔内投与のために配合される。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、医薬品は、静脈内投与、経口投与、皮下投与、局所投与および/または鼻腔内投与のために配合される。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によれば、投与することは、静脈内投与、経口投与、皮下投与、局所投与および/または鼻腔内投与を含む。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によれば、調節することは、阻害することを含む。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ケモカインは、I−TAC、IP−10、MIG、MCP−1、エオタキシンおよびRANTESからなる群から選択される。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態によれば、生物学的影響は、炎症性影響、細胞遊走、腫瘍成長およびガン転移からなる群から選択される。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ポリペプチドは、炎症、アレルギー、遅延型過敏症、最適でない免疫応答、異常な細胞遊走、自己免疫反応、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、同種移植片拒絶、糖尿病、敗血症、ガン、悪性細胞成長、細菌感染症、ウイルス感染症、関節炎、大腸炎、乾癬、アテローム性動脈硬化、高血圧、重症筋無力症および再灌流虚血からなる群から選択される状態を処置するためのものである。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号168および配列番号169からなる群から選択される核酸配列を有する。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態によれば、水溶性ポリマーはポリエチレングリコールである。
【0057】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0059】
【図1A−1B】図1A−1Bは、本発明のいくつかの実施形態によるポリペプチドをコードするために使用されるベクター、すなわち、配列番号158(BKT−P2−FC)をコードするために使用されるベクター(図1A)、および、配列番号159(BKT−P46−FC)をコードするために使用されるベクター(図1B)で、アンピシリン耐性のための遺伝子(Amp)およびピューロマイシン耐性のための遺伝子(Puro)をさらにコードするベクターのベクターマップである。
【0060】
【図2】図2は、例示的ポリペプチド(配列番号158(レーン1およびレーン2)および配列番号159(レーン3〜レーン5))を産生させるために遺伝子操作されたHEK 293T細胞プールにおけるIgG Fcの発現、ならびに、コントロール(IgG Fc)の50ng(レーン6)、100ng(レーン7)、200ng(レーン8)および300ng(レーン9)を示すウエスタンブロットの画像である。
【0061】
【図3A−3C】図3A−3Cは、IP−10(図3A)、I−TAC(図3B)およびMIG(図3C)によって誘導されるVCAM−1へのT細胞接着を、ペプチドBKT−P2(配列番号101)への暴露の前後において剪断流れの関数として示すグラフである(熱不活性化SDF−1サイトカインの存在下でのT細胞接着がコントロールとして示される)。
【0062】
【図4A−4C】図4A−4Cは、IP−10(図4A)、I−TAC(図4B)およびMIG(図4C)によって誘導されるVCAM−1へのT細胞接着を、BKT−P2−FC(配列番号158)(本発明のいくつかの実施形態によるポリペプチド)への暴露の前後において剪断流れの関数として示すグラフである(熱不活性化SDF−1サイトカインの存在下でのT細胞接着がコントロール(den)として示される)。
【0063】
【図5A−5B】図5A−5Bは、コントロールマウスと、配列番号159を有する例示的ポリペプチド(BKT−P46−FC)により処置されるマウスとにおいて、EAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)についての平均臨床スコアを、急性疾患を誘導するためのPLP(プロテオリピドタンパク質)による免疫化後の時間の関数として示すグラフ(図5A)、および、EAEについての平均累積臨床スコアを示すグラフ(図5B)である。
【0064】
【図6A−6B】図6A−6Bは、コントロールマウスと、例示的ポリペプチド(これは配列番号159(BKT−P46−FC)または配列番号158(BKT−P2−FC)を有する)により処置されるマウスとにおいて、EAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)についての平均臨床スコアを、急性疾患を誘導するためのPLP(プロテオリピドタンパク質)による免疫化後の時間の関数として示すグラフ(図6A)、および、EAEについての平均累積臨床スコアを示すグラフ(図6B)である。
【0065】
【図7】図7は、コントロールマウスと、例示的ポリペプチド(これは配列番号158(BKT−P2−FC)または配列番号159(BKT−P46−FC)を有する)により処置されるマウスとにおいて、EAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)についての平均臨床スコアを、慢性疾患を誘導するためのMOGペプチドによる免疫化後の時間の関数として示すグラフである。
【0066】
【図8A−8B】図8A−8Bは、健康なマウス(陰性コントロール)、関節炎マウス(陽性コントロール)、および、配列番号158を有する例示的ポリペプチド(BKT−P2−FC)により処置される関節炎マウスの膝関節腔における好中球のレベル(図8A)および単球のレベル(図8B)を示すグラフである。
【0067】
【図9】図9は、配列番号159を有する例示的ポリペプチド(BKT−P46−FC)および配列番号158を有する例示的ポリペプチド(BKT−P2−FC)による遅延型過敏症の阻害を示すグラフである(デキサメタゾン(Dex.)による阻害が比較のために示される)。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明は、ケモカインに結合し得る新規なポリペプチドを開示し、より具体的には、しかし、限定ではないが、ケモカイン依存的プロセス、例えば、自己免疫性、炎症およびガンなどを調節し得るポリペプチドを開示する。
【0069】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部、または、実施例によって例示される細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、あるいは、様々な方法で実施または実行される。
【0070】
本明細書中上記の背景の節において述べられるように、様々なケモカインに結合し、かつ、それらの生物学的機能を調節し得るペプチドおよび構造的類縁化合物(ペプチド模倣物)が(例えば、国際特許出願PCT/IL03/00155(これは国際公開WO03/072599として公開された)および米国特許第7488717号において)記載されている。そのようなペプチドの例が配列番号1〜配列番号157に示される。ケモカインの機能を調節することができるために、そのようなペプチドは様々な治療的適用を有する。しかしながら、そのようなペプチドの治療的利益が典型的には、例えば、ペプチドのインビボにおける短い半減期によって制限される。
【0071】
改善された特性を有するケモカイン結合ペプチドを作製しようとしているとき、本発明者らはケモカイン結合ペプチドをFcドメインフラグメントに結合させた。
【0072】
下記の実施例の節において明らかにされるように、本発明を実施に移しているとき、ケモカイン結合ペプチドと、Fcドメインフラグメントとを含むポリペプチドが驚くべきことに、改善されたケモカイン結合能を示すことが見出された。このようなポリペプチドは、長い循環寿命と同様に、免疫に関連した疾患および障害(例えば、多発性硬化症、関節炎および遅延型過敏症など)を処置するためのインビボでの改善された効力を示すことがさらに見出された。
【0073】
次に図面および表を参照すると、図1Aおよび図1Bは、本発明のいくつかの実施形態による、本明細書中ではBKT−P2−FC(配列番号158)およびBKT−P46−FC(配列番号159)として示される例示的なポリペプチドを発現させるために使用される例示的なDNA構築物を例示する。図2は、ウエスタンブロットによって検出されるような、細胞培養における上記の例示的ポリペプチドの発現を示す。
【0074】
「BKT−P2−FC」および「BKT−P46−FC」は、本発明の所有者らによって所有される商標である。BKT−P2−FCは、米国仮特許出願第61/213493号において「IL6シグナルペプチド−BKT−P2−スペーサー−FC」、「P2−Fc」、「BKT−Fc−2」、「BKT−Fc−P2」、「IL6−P2−Fc」、「IL6−P2−Fc N297A」および「IL6−BioPep1−Fc N297A」としてもまた示されるポリペプチドを示す。BKT−P46−FCは、米国仮特許出願第61/213493号において「IL6シグナルペプチド−BKT−P46−スペーサー−FC」、「BKT−Fc−46」、「BKT−FC−46」、「P46−FC」、「IL6−P46−Fc」、「IL6−P46−Fc N297A」および「IL6−BioPep2−Fc N297A」としてもまた示されるポリペプチドを示す。
【0075】
表3は、様々なケモカインに対する上記の例示的ポリペプチドの結合についての解離定数を示す。
【0076】
図4A〜図4Cは、いくつかのケモカインの生物学的活性(T細胞接着の誘導)の例示的ポリペプチド(配列番号158)による阻害を示す。比較のために、図3A〜図3Cは、このポリペプチドが基づくケモカイン結合ペプチド(配列番号101)による同じ活性の阻害を示す。表4は、例示的ポリペプチド(配列番号158および配列番号159)、および、それらが基づくケモカイン結合ペプチド(それぞれ、配列番号101および配列番号76)の、様々なケモカインの活性を阻害する能力をまとめる。
【0077】
図5A、図5B、図6および図7は、マウスにおけるEAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)の進行に対する、本発明のいくつかの実施形態による例示的ポリペプチドの効力を示す。図8Aおよび図8Bは、マウスにおける関節炎に対する例示的ポリペプチドの効力を示す。図9は、遅延型過敏症に対する例示的ポリペプチドの効力を示す。
【0078】
表5は、本発明の実施形態によるポリペプチドに含まれ得るケモカイン結合ペプチドを示す。
【0079】
したがって、本明細書中に示される実験結果は、本発明の実施形態によるポリペプチドがケモカインに結合し得ること(例えば、表3を参照のこと)、対応するケモカイン結合ペプチドよりも一層強力な、ケモカイン活性の調節剤であること(例えば、表4、ならびに、図3A、図3B、図4Aおよび図4Bを参照のこと)、そして、様々な状態を処置するために治療効果的であること(例えば、図5A〜図9を参照のこと)を示す。
【0080】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、抗体(例えば、IgG抗体、IgA抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体)のFcドメインまたはFcドメインのフラグメントに結合される少なくとも1つのケモカイン結合ペプチドを含む単離されたポリペプチドが提供される。Fcドメインまたはそのフラグメントに結合されるペプチドを含む分子が、本明細書中では「ポリペプチド」として示されることがある。
【0081】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ただ1つだけのケモカイン結合ペプチドを含む。
【0082】
代替において、ポリペプチドは、2つ以上のケモカイン結合ペプチド(例えば、2個、3個、4個または5個のケモカイン結合ペプチド)を含む。これらのケモカイン結合ペプチドは互いに同じであってもよく、または、互いに異なっていてもよい。
【0083】
本明細書中で使用される場合、用語「ケモカイン結合ペプチド」は、少なくとも1つのケモカインに溶液中で結合できることによって特徴づけられる任意のペプチド(例えば、アミノ酸残基が20個までのペプチド)を示す。例示的なケモカインには、CCL1(この場合、CCLはケモカイン(C−Cモチーフ)リガンドの略である)、MCP−1(これはまた、この分野ではCCL2として示される)、MIP−1(MIP−1αおよび/またはMIP−1βを含む)、RANTES(これはまた、この分野ではCCL5として示される)、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、エオタキシン(これはまた、この分野ではCCL11として示される)、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CXCL1(この場合、CXCLはケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンドの略である)、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、インターロイキン−8(これはまた、この分野ではCXCL8として示される)、MIG(これはまた、この分野ではCXCL9として示される)、IP−10(これはまた、この分野ではCXCL10として示される)、I−TAC(これはまた、この分野ではCXCL11として示される)、SDF−1(これはまた、この分野ではCXCL12として示される)、BCA−1(これはまた、この分野ではCXCL13として示される)、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、XCL1、XCL2およびCX3CL1が含まれるが、これらに限定されない。1つの実施形態によれば、ペプチドは、I−TAC(インターフェロン誘導性のT細胞α化学誘引物質)、IP−10(10kDaのインターフェロン−γ誘導のタンパク質)、MIG(ガンマーインターフェロンによって誘導されるモノカイン)、MCP−1(単球走化性タンパク質−1)、エオタキシンおよびRANTES(Regulated upon activation,normal T−cell expressed,and secreted)からなる群から選択される少なくとも1つのケモカインに結合する。
【0084】
ケモカインに対する結合を、この技術分野において知られているいずれかの好適な技術(例えば、ELISA)に従って求めることができる。場合により、結合は、ケモカインに対するペプチドの結合についての解離定数(K)が10−4M未満(場合により10−5M未満、場合により10−6M未満)であるような結合である。解離定数を求めるための好適な技術が当業者には知られている。
【0085】
本発明の実施形態に従って使用され得るケモカイン結合ペプチドが、例えば、国際特許出願PCT/IL03/00155(これは国際公開WO03/072599として公開された)および米国特許第7488717号に記載される。
【0086】
いくつかの実施形態において、ケモカイン結合ペプチドは長さにおいて5個〜50個のアミノ酸であり、場合により長さにおいて5個〜40個のアミノ酸であり、場合により長さにおいて5個〜30個のアミノ酸であり、場合により長さにおいて7個〜20個のアミノ酸であり、場合により長さにおいて9個〜20個のアミノ酸であり、場合により長さにおいて10個〜20個のアミノ酸である。例示的な実施形態によれば、ケモカイン結合ペプチドは長さにおいて約12個のアミノ酸である。
【0087】
場合により、ケモカイン結合ペプチドは、配列番号1〜配列番号157からなる群から選択される。
【0088】
いくつかの実施形態において、ケモカイン結合ペプチドは、少なくとも2つのヒスチジン残基の存在および全体的な正電荷(例えば、正荷電のアミノ酸が数において負荷電のアミノ酸を上回る)によって特徴づけられ、この場合、ペプチドは、H、S、A、L、I、K、R、TおよびPからなる群から選択されるアミノ酸から主に構成される(例えば、ペプチドの少なくとも40%が、場合により少なくとも50%が上記アミノ酸からなる)。
【0089】
上記特徴を有するペプチドの例には、限定されないが、SIFAHQTPTHKN(配列番号100)、SIPSHSIHSAKA(配列番号101)、SAISDHRAHRSH(配列番号96)、SAGHIHEAHRPL(配列番号95)、ACHASLKHRC(配列番号44)、AHSLKSITNHGL(配列番号46)、ESDLTHALHWLG(配列番号54)、HSACHASLKHRC(配列番号69)、WSAHIVPYSHKP(配列番号143)、YATQHNWRLKHE(配列番号145)、CAHLSPHKC(配列番号1)、GVHKHFYSRWLG(配列番号61)、HPTTPIHMPNF(配列番号66)、SVQTRPLFHSHF(配列番号113)およびVHTSLLQKHPLP(配列番号133)が含まれる。SIPSHSIHSAKA(配列番号101)が本明細書中では「BKT−P2」として示されており、例示的なケモカイン結合ペプチドである。
【0090】
いくつかの実施形態において、ケモカイン結合ペプチドは、少なくとも2つの隣接するヒスチジン残基の存在および全体的な正電荷(例えば、正荷電のアミノ酸が数において負荷電のアミノ酸を上回る)によって特徴づけられ、この場合、ペプチドは、H、P、T、L、R、WおよびFからなる群から選択されるアミノ酸から主に構成される(例えば、ペプチドの少なくとも40%が、場合により少なくとも50%が上記アミノ酸からなる)。
【0091】
上記特徴を有するペプチドの例には、限定されないが、GDFNSGHHTTTR(配列番号59)、HHFHLPKLRPPV(配列番号64)、HHTWDTRIWQAF(配列番号65)、LDYPIPQTVLHH(配列番号76)、LLADTTHHRPWP(配列番号79)、TRLVPSRYYHHP(配列番号125)、CHHNLSWEC(配列番号7)およびSFWHHHSPRSPL(配列番号99)が含まれる。LDYPIPQTVLHH(配列番号76)が本明細書中では「BKT−P46」として示されており、例示的なケモカイン結合ペプチドである。
【0092】
場合により、ケモカイン結合ペプチドは、配列番号1〜配列番号157からなる群から選択されるアミノ酸配列(例えば、配列番号76および配列番号101)に対する少なくとも70%の配列相同性、少なくとも80%の配列相同性、少なくとも90%の配列相同性を示すアミノ酸配列を有する。場合により、配列相同性は少なくとも95%である。場合により、配列相同性は100%である。
【0093】
相同性を、初期設定されているパラメーターを使用する、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のBlastPソフトウエアを使用して求めることができる。相同性はまた、欠失変化体、挿入変化体または置換変化体を、そのアミノ酸置換およびその生物学的に活性なポリペプチドフラグメントを含めて示すことがある。
【0094】
本明細書中で使用される場合、「Fcドメイン」は、抗体の重鎖の領域で、重鎖の少なくとも2つの定常ドメイン(例えば、CH2ドメインおよびCH3ドメイン(これらの用語はこの技術分野で定義されるように))を典型的には含む領域を示す。Fcドメインは、例えば、パパインによる抗体の消化によってダイマーの形態で得ることができる。Fcドメインポリペプチドのダイマーは、ジスルフィド結合によってつながれる場合、抗体の「テール」領域を形成する。この技術分野では知られているように、抗体のいくつかのクラスのFcドメインはマルチマーの形態であり得る。したがって、Fcドメインは場合によりモノマー状であり、場合によりダイマー状であり、場合によりマルチマー状である。場合により、本明細書中に記載されるポリペプチドは、ダイマーの形態、すなわち、Fcダイマーを含むポリペプチド、または、マルチマーの形態、すなわち、Fcマルチマーを含むポリペプチドである。
【0095】
Fcドメインは、天然型Fcドメイン(すなわち、抗体において自然界で見出されるドメイン)の修飾された形態、例えば、天然型Fcドメインに対する少なくとも90%の相同性、場合により少なくとも95%の相同性、場合により少なくとも98%の相同性を有するポリペプチドを包含し得る。修飾されたFcドメインが、例えば、国際特許出願公開WO97/34631および同WO96/32478に記載される。
【0096】
場合により、天然型Fcは、構造的特徴または生物学的活性をもたらす部位の中で、本発明の実施形態のために要求されない部位を除くように修飾される。そのような部位の例には、ジスルフィド結合形成、選択された宿主細胞の不適合性、選択された宿主細胞における発現時のN末端不均一性、グリコシル化、補体との相互作用、Fc受容体(新生児型Fc受容体以外)への結合および/または抗体依存性細胞傷害性に影響を及ぼすか、または、それらに関与する残基が含まれる。
【0097】
本発明の実施形態によるポリペプチドはまた、Fcドメインのフラグメントを含むことができる。場合により、フラグメントは、本明細書中上記で定義されるようなFcドメインの少なくとも20%、場合により少なくとも50%、場合により少なくとも80%を含む。
【0098】
Fcドメインまたはそのフラグメントは場合により、新生児型Fc受容体(FcRn)のための結合部位を含む。
【0099】
下記の実施例の節において例示されるように、本発明の実施形態によるポリペプチドは血液循環における比較的長い寿命を示し、著しいレベルのポリペプチドが投与後少なくとも11日において血液中に留まっていた。
【0100】
1つの実施形態によれば、Fcドメインまたはそのフラグメントをケモカイン結合ペプチドに結合することにより、インビボでの半減期がケモカイン結合ペプチド自体よりも長いポリペプチドがもたらされる。これは、(FcRnへの結合によるFcのサルベージのためであるかもしれない)Fcドメインの長い血清半減期のためであるかもしれず、および/または、ポリペプチドのサイズがケモカイン結合ペプチドとの比較においてより大きく、これにより、糸球体ろ過による血流からのクリアランスが低下するためであるかもしれない。別の実施形態によれば、得られたポリペプチドは、ケモカイン結合ペプチドそれ自体と比較した場合、低下した免疫原性を有する。
【0101】
必要に応じた随意的な実施形態によれば、FcドメインまたはそのフラグメントはヒトFcドメイン(例えば、ヒト抗体に由来するもの)またはそのフラグメントである。
【0102】
例示的な実施形態によれば、Fcドメイン(またはそのフラグメント)はIgG(例えば、IgG1)のFcドメイン(またはそのフラグメント)である。場合により、Fcドメインまたはそのフラグメントはグリコシル化されていない。
【0103】
例示的な実施形態によれば、Fcフラグメントは配列番号160を有し、これは、N297A変異を有するヒトIgG1のFcフラグメントに対応する。
【0104】
場合により、Fcドメイン(またはそのフラグメント)のN末端がケモカイン結合ペプチドに(直接的または間接的に)結合させられる。N末端は場合により、例えば、2つ以上のケモカイン結合ペプチドを含む配列に結合させられることによって、2つ以上のケモカイン結合ペプチドに結合させられる。
【0105】
代替において、または、加えて、Fcドメイン(またはそのフラグメント)のC末端が、ケモカイン結合ペプチドに直接に、または、リンカー(例えば、アミノ酸リンカー)を介して結合させられる。C末端は場合により、2つ以上のケモカイン結合ペプチドに結合させられる。
【0106】
本明細書中に記載されるケモカイン結合ペプチドおよびFcドメインまたはFcフラグメントに加えて、本明細書中に記載されるポリペプチドはさらに、1つまたは複数のさらなるペプチド配列を含むことができる。そのような配列は場合により、望ましい生物学的活性または構造的特徴を提供するように、例えば、ポリペプチドの治療効力を改善するか、または、ポリペプチドの産生を容易にする活性または特徴を提供するように選択することができる。
【0107】
したがって、例えば、ポリペプチドは場合により、ポリペプチドの輸送を行わせることができるように選択される少なくとも1つのシグナルペプチドを含む。
【0108】
場合により、シグナルペプチドは、ポリペプチドを発現する細胞(例えば、哺乳動物細胞)からのポリペプチドの分泌を促進させることができようにように選択される。
【0109】
場合により、(植物のトランスフェクションによって産生されるポリペプチドのための)液胞シグナルペプチドが含まれる。
【0110】
例示的な実施形態において、ポリペプチドは、IL−6(インターロイキン−6)のシグナルペプチド(例えば、配列番号161)、または、IL−6のシグナルペプチドに対する少なくとも90%の相同性(場合により少なくとも95%の相同性)を示すアミノ酸配列を有するシグナルペプチドを含む。
【0111】
上記のさらなるペプチド配列(例えば、シグナルペプチド)は、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、または、ポリペプチドの中央(例えば、FcドメインまたはFcフラグメントと、ケモカイン結合ペプチドとの間、あるいは、2つのケモカイン結合ペプチドの間)に存在させることができる。
【0112】
したがって、本明細書中に記載されるFcドメインまたはFcフラグメント、ケモカイン結合ペプチド(1つまたは複数)および(存在するならば)任意のさらなるペプチド(1つまたは複数)は、任意の順序でポリペプチドの内部において互いに結合させることができる。
【0113】
FcドメインまたはFcフラグメント、ケモカイン結合ペプチド(1つまたは複数)および(存在するならば)任意のさらなるペプチド(1つまたは複数)は独立して、直接に、または、リンカー(例えば、アミノ酸リンカー)を介して互いに結合させられる。
【0114】
しかしながら、いくつかのシグナルペプチドの活性は、ポリペプチド内の特定の場所(例えば、N末端、C末端)に置かれることに依存する。したがって、いくつかの実施形態によれば、シグナルペプチドはポリペプチドにおいて特定の場所に置かれる。
【0115】
例示的な実施形態によれば、シグナルペプチド(例えば、IL−6のシグナルペプチド)はポリペプチドのN末端に存在する。シグナルペプチドをN末端に有するポリペプチドの例には、下記の式のポリペプチドが含まれる:
W−X−Z、W−X−Y−Z、W−Y−X−Z、W−Y−X−Y−Z、W−Z−X、W−Z−Y−X、W−Y−Z−XおよびW−Y−Z−Y−X、
上記式において、Wはシグナルペプチドであり、Xはケモカイン結合ペプチドであり、Yはリンカー(例えば、アミノ酸リンカー)であり、ZはFcドメインまたはFcフラグメントである。例示的な実施形態によれば、ポリペプチドは上記式のW−X−Y−Zを有する。
【0116】
リンカー(これはまた、「スペーサー」として示される)は場合により、アミノ酸、ジペプチド、トリペプチドまたは4個以上のアミノ酸を含むアミノ酸リンカーである。そのようなリンカーは、ポリペプチドが、融合タンパク質として容易に産生され得るただ1つだけの連続したポリペプチド鎖を含むことを可能にするという点で好都合である。リンカーは典型的には、ケモカイン結合ペプチドがその標的ケモカインに結合することを当該リンカーが妨害しないように選択される。場合により、リンカーは、4個〜10個のアミノ酸から構成されるペプチド(例えば、ヘキサペプチド)である。例示的な実施形態によれば、リンカーは、配列番号162に示されるペプチドである。2つ以上のリンカーを含む実施形態において、リンカーは同じであり得るか、または、互いに異なり得る。
【0117】
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリペプチドは、(例えば、ポリペプチドにおけるケモカイン結合ペプチドがケモカインと相互作用することを介して)少なくとも1つのケモカインに結合することができる。ポリペプチドがケモカインに結合することは多くの場合、ケモカイン(例えば、I−TAC、IP−10、MIG、MCP−1、エオタキシンおよび/またはRANTES)がケモカイン受容体に結合する能力に影響を与える。
【0118】
したがって、いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも1つのケモカインがケモカイン受容体に結合することを阻害できることによって特徴づけられる。場合により、結合の阻害は、ポリペプチドの存在下における(受容体へのケモカインの結合についての)解離定数がポリペプチドの非存在下における解離定数よりも少なくとも10%大きくなる、場合により少なくとも100%大きくなるようなものである。
【0119】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも1つのケモカインがケモカイン受容体に結合することを強化できることによって特徴づけられる。場合により、結合の強化は、ポリペプチドの存在下における(受容体へのケモカインの結合についての)解離定数がポリペプチドの非存在下における解離定数よりも少なくとも10%低くなる、場合により少なくとも50%低くなるようなものである。
【0120】
本発明の実施形態によるポリペプチドは場合により、少なくとも1つのケモカインがケモカイン受容体に結合することを阻害することができ、かつ、同様にまた、少なくとも1つのケモカインがケモカイン受容体に結合することを強化することができる。
【0121】
本明細書において使用される用語「ポリペプチド」には、天然のペプチド(例えば、分解産物または合成的に合成されたポリペプチドまたは組換えポリペプチド)、ペプチド模倣体(典型的には合成的に合成されたペプチド)そしてポリペプチドアナログであるペプトイドおよびセミペプトイドが含まれ、これらは、例えば、ポリペプチドを体内でより安定化させる修飾、またはポリペプチドの細胞浸透能力を高める修飾を有し得る。そのような修飾には、N’末端修飾、C’末端修飾、ポリペプチド結合の修飾(CH−NH、CH−S、CH−S=O、O=C−NH、CH−O、CH−CH、S=C−NH、CH=CHまたはCF=CHを含むが、これらに限定されない)、骨格の修飾、および残基の修飾が含まれるが、これらに限定されない。ポリペプチド模倣体化合物を調製するための方法はこの分野では十分に知られており、例えば、Quantitative Drug Design,C.A.Ramsden Gd.,Chapter 17.2,F.Choplin Pergamon Press(1992)に具体的に記載される。
【0122】
ポリペプチド内のポリペプチド結合(−CO−NH−)は、例えば、N−メチル化結合(−N(CH)−CO−)、エステル結合(−C(R)H−C−O−O−C(R)−N−)、ケトメチレン結合(−CO−CH−)、o−アザ結合(−NH−N(R)−CO−)(式中、Rは任意のアルキル(例えば、メチル)である)、カルバ結合(−CH−NH−)、ヒドロキシエチレン結合(−CH(OH)−CH−)、チオアミド結合(−CS−NH−)、オレフィン二重結合(−CH=CH−)、レトロアミド結合(−NH−CO−)、ポリペプチド誘導体(−N(R)−CH−CO−)(式中、Rは、炭素原子において自然界で示される「通常」の側鎖である)によって置換することができる。
【0123】
これらの修飾は、ポリペプチド鎖に沿った結合の任意のところに存在させることができ、そして同時に数カ所(2カ所〜3カ所)においてさえ存在させることができる。
【0124】
天然の芳香族アミノ酸(Trp、TyrおよびPhe)は、フェニルグリシン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(TIC)、ナフチルアラニン(Nal)、Pheの環メチル化誘導体、Pheのハロゲン化誘導体、またはo−メチル−Tyrなどの合成された非天然型の酸に置換することができる。
【0125】
天然に存在する本明細書中に記載されるペプチドおよびポリペプチド(例えば、Fcドメイン配列、シグナルペプチド)のアミノ酸配列は、天然に存在するタンパク質におけるポリペプチドのアミノ酸配列、あるいは、保存的置換または非保存的置換のどちらかを含むそのようなアミノ酸配列のどちらであってもよい。
【0126】
用語「保存的置換」は、本明細書中で使用される場合、ペプチドにおける生来的配列に存在するアミノ酸が、類似する立体的特性を有する天然に存在するアミノ酸または天然に存在しないアミノ酸あるいはペプチド模倣体により置き換えられることを示す。置き換えられることになる生来的アミノ酸の側鎖が極性または疎水性のどちらかである場合、保存的置換は、(置き換えられたアミノ酸の側鎖と同じ立体的特性を有することに加えて)同様に極性または疎水性である天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸またはペプチド模倣成分によるものでなければならない。
【0127】
天然に存在するアミノ酸は典型的にはそれらの特性に従ってグループ分けされるので、本発明によれば、荷電アミノ酸を立体的に類似する非荷電アミノ酸によって置き換えることは保存的置換であると見なされるということを念頭に置いて、天然に存在するアミノ酸による保存的置換は容易に決定することができる。
【0128】
保存的置換を天然に存在しないアミノ酸によって生じさせるために、この技術分野では広く知られているアミノ酸アナログ(合成アミノ酸)を使用することもまた可能である。天然に存在するアミノ酸のペプチド模倣体が、当業者に知られている文献において十分に記載される。
【0129】
保存的置換を行うとき、代用されるアミノ酸は、元のアミノ酸と同じまたは類似する官能基を側鎖に有しなければならない。
【0130】
表現「非保存的置換」は、本明細書中で使用される場合、親配列に存在するアミノ酸が、異なる電気化学的特性および/または立体的特性を有する別の天然に存在するアミノ酸または天然に存在しないアミノ酸によって置き換えられることを示す。したがって、代用されるアミノ酸の側鎖は、置換されようとする生来的アミノ酸の側鎖よりも著しく大きく(または小さく)することができ、かつ/または、置換されようとするアミノ酸とは著しく異なる電子的特性を有する官能基を有することができる。このタイプの非保存的置換の例には、アラニンに代わるフェニルアラニンまたはシクロヘキシルメチルグリシンへの置換、グリシンに代わるイソロイシンへの置換、あるいは、アスパラギン酸に代わる−NH−CH[(−CHCOOH]−CO−への置換が含まれる。本発明の範囲内に含まれるそのような非保存的置換は、天然型ペプチド(例えば、Fcドメイン配列、シグナルペプチド)の活性を有するペプチドまたはポリペプチドを依然として構成する非保存的置換である。
【0131】
従って、本明細書において使用される用語「アミノ酸」には、20個の天然に存在するアミノ酸;インビボで多くの場合には翻訳後修飾されたそのようなアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリンおよびホスホトレオニンを含む);および他の非通常型アミノ酸(2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリシン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシンおよびオルニチンを含むが、これらに限定されない)が含まれることが理解される。さらに、用語「アミノ酸」には、この用語が本明細書中で定義されるように少なくとも1つの付加アミノ酸にペプチド結合またはペプチド結合アナログを介して連結されるD−アミノ酸およびL−アミノ酸の両方が含まれる。
【0132】
下記の表1〜表2には、天然に存在するアミノ酸のすべて(表1)および非通常型アミノ酸または修飾型アミノ酸(表2)が示される。
【0133】




【0134】
組換え技術が好ましくは、本発明のポリペプチドを作製するために使用される。これは、これらの技術は、比較的長いポリペプチド(例えば、20アミノ酸よりも長いもの)およびその比較的多い量を作製するためにより良く適しているからである。そのような組換え技術が、Bitter他(1987)(Methods in Enzymol.、153:516〜544)、Studier他(1990)(Methods in Enzymol.、185:60〜89)、Brisson他(1984)(Nature、310:511〜514)、Takamatsu他(1987)(EMBO J.、6:307〜311)、Coruzzi他(1984)(EMBO J.、3:1671〜1680)、Brogli他(1984)(Science、224:838〜843)、Gurley他(1986)(Mol.Cell.Biol.、6:559〜565)、および、Weissbach&Weissbach(1988、Methods for Plant Molecular Biology、Academic Press、NY、第VIII節、421頁〜463頁)によって記載される。
【0135】
本発明のポリペプチドを、組換え技術を使用して製造するために、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが核酸発現ベクターに連結される。この場合、核酸発現ベクターは、ポリヌクレオチド配列を、宿主細胞における本発明のポリペプチドの構成的転写、組織特異的転写または誘導可能な転写を行わせるために好適なシス調節配列(例えば、プロモーター配列)の転写制御下に含む。
【0136】
ケモカイン結合ペプチドを発現させるために使用することができる単離されたポリヌクレオチドの例が、配列番号163および配列番号164に示される。Fcフラグメントを発現させるために使用することができる単離されたポリヌクレオチド配列の一例が、配列番号165に示される通りである。IL−6のシグナルペプチドを発現させるために使用することができる単離されたポリヌクレオチドの一例が、配列番号166に示される。リンカーを発現させるために使用することができる単離されたポリヌクレオチドの一例が、配列番号167に示される。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態によるポリペプチドを発現させるために使用することができる例示的なポリヌクレオチド配列が、配列番号168および配列番号169に示される。
【0138】
表現「単離されたポリヌクレオチド」は、RNA配列、相補的ポリヌクレオチド配列(cDNA)、ゲノムポリヌクレオチド配列および/または複合ポリヌクレオチド配列(例えば、上記の組合せ)の形態で単離および提供される一本鎖または二本鎖の核酸配列を示す。
【0139】
本明細書中で使用される表現「相補的ポリヌクレオチド配列」は、逆転写酵素または任意の他のRNA依存性DNAポリメラーゼを使用してメッセンジャーRNAの逆転写から生じる配列を示す。そのような配列は続いて、DNA依存性DNAポリメラーゼを使用してインビボまたはインビトロで増幅することができる。
【0140】
本明細書中で使用される表現「ゲノムポリヌクレオチド配列」は、染色体に由来する(染色体から単離される)配列を示し、従って、ゲノムポリヌクレオチド配列は染色体の隣接した一部分を表す。
【0141】
本明細書中で使用される表現「複合ポリヌクレオチド配列」は、少なくとも一部分が相補的であり、かつ、少なくとも一部分がゲノムである配列を示す。複合配列は、本発明のポリペプチドをコードするために要求されるいくつかのエキソン配列、ならびに、エキソン配列の間に介在するいくつかのイントロン配列を含むことができる。イントロン配列は、他の遺伝子のものを含めて、任意の供給源のものが可能であり、典型的には、保存されたスプライシングシグナル配列を含む。そのようなイントロン配列はさらに、シス作用の発現調節エレメントを含むことができる。
【0142】
述べたように、本発明の実施形態のポリヌクレオチドはさらに、ポリペプチドの分泌のためのシグナルペプチド(上述のようなもの)をコードするシグナル配列を含むことができる。
【0143】
発現および分泌の後、シグナルペプチドは典型的には、成熟タンパク質をもたらす前駆体タンパク質から除かれる。
【0144】
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、本明細書下記の実施例1において記載されるようなPCR技術、あるいは、2つの異なるDNA配列の連結のために当該技術分野において知られている何らかの他の方法または手法を使用して調製することができる。例えば、“Current Protocols in Molecular Biology”(Ausubel他編、John Wiley&Sons、1992)を参照のこと。
【0145】
本明細書中上記で述べられたように、本発明のポリヌクレオチド配列は、組換えポリペプチドの発現を可能にするために発現ベクター(すなわち、核酸構築物)に挿入される。本発明の実施形態の発現ベクターは、このベクターを原核生物または真核生物または好ましくは両方における複製および組込みのために好適にするさらなる配列(例えば、シャトルベクター)を含む。典型的なクローニング用ベクターは、転写開始配列および翻訳開始配列(例えば、プロモーター、エンハンサー)、ならびに、転写ターミネーターおよび翻訳ターミネーター(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含有する。
【0146】
真核生物プロモーターは典型的には、2つのタイプの認識配列(TATAボックスおよび上流側のプロモーター要素)を含有する。TATAボックス(これは転写開始部位の25塩基対〜30塩基対上流側に位置する)は、RNAポリメラーゼに、RNA合成を開始させることに関与していると考えられる。それ以外の上流側のプロモーター要素は、転写が開始される速度を決定する。
【0147】
エンハンサー要素は、転写を、連結された相同的プロモーターまたは異種プロモーターから1000倍まで刺激することができる。エンハンサーは、転写開始部位の下流側または上流側に置かれたとき、活性がある。ウイルスに由来する多くのエンハンサー要素は広い宿主範囲を有しており、様々な組織において活性がある。例えば、SV40の初期遺伝子エンハンサーが多くの細胞タイプについて好適である。本発明のために好適である他のエンハンサー/プロモーター組合せには、ポリオーマウイルス、ヒトまたはマウスのサイトメガロウイルス(CMV)、様々なレトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス、マウス肉腫ウイルスまたはラウス肉腫ウイルス、およびHIVなど)からの長末端反復に由来するものが含まれる。Enhancers and Eukaryotic Expression(Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1983)を参照のこと(これは参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0148】
発現ベクターの構築において、プロモーターは好ましくは、その天然の環境における転写開始部位からの距離とほぼ同じ距離で異種の転写開始部位から配置される。しかしながら、当該分野で既知のように、この距離におけるある程度の変動が、プロモーター機能の喪失を伴うことなく受け入れられ得る。
【0149】
既に述べられた要素に加えて、本発明の発現ベクターは、典型的には、クローン化された核酸の発現レベルを増大させるために、または、組換えDNAを有する細胞の特定を容易にするために意図された他の特殊化された要素を含有することができる。例えば、数多くの動物ウイルスは、許容細胞タイプにおけるウイルスゲノムの染色体外の複製を促進させるDNA配列を含有する。このようなウイルスレプリコンを有するプラスミドは、適切な因子が、プラスミドにおいて運ばれる遺伝子によるか、または、宿主細胞のゲノムとともに運ばれる遺伝子によるかのいずれかで提供される限り、エピソームとして複製する。
【0150】
ベクターは真核生物のレプリコンを含んでも、含まなくてもよい。真核生物のレプリコンが存在するならば、ベクターは、適切な選択マーカーを使用して真核生物細胞において増幅可能である。ベクターが真核生物のレプリコンを含まないならば、エピソーム増幅ができない。その代わり、組換えDNAは、操作された細胞のゲノムに組み込まれ、その細胞において、プロモーターが所望の核酸の発現を行わせる。
【0151】
本発明の発現ベクターはさらに、例えば、1つのmRNAからの数個のタンパク質の翻訳を可能にするさらなるポリヌクレオチド配列(例えば、内部リボソーム進入部位(IRES)など)、および、プロモーターキメラポリペプチドのゲノム組み込みのための配列を含むことができる。
【0152】
哺乳動物発現ベクターの例には、Invitrogenから入手可能であるpcDNA3、pcDNA3.l(+/−)、pGL3、pZeoSV2(+/−)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1、pSinRep5、DH26S、DHBB、pNMT1、pNMT41、pNMT81、Promegaから入手可能であるpCI、Strategeneから入手可能であるpMbac、pPbac、pBK−RSVおよびpBK−CMV、Clontechから入手可能であるpTRES、ならびに、それらの誘導体が含まれる。
【0153】
真核生物ウイルス(例えば、レトロウイルスなど)に由来する調節要素を含有する発現ベクターもまた使用することができる。SV40系ベクターには、pSVT7およびpMT2が含まれる。ウシパピローマウイルスに由来するベクターには、pBV−1MTHAが含まれ、エプスタイン・バールウイルスに由来するベクターには、pHEBOおよびp2O5が含まれる。他の例示的なベクターには、pMSG、pAV009/A、pMTO10/A、pMAMneo−5、バキュロウイルスpDSVE、および、SV−40初期プロモーター、SV−40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または、真核生物細胞での発現のために効果的であることが示されている他のプロモーターの指揮下でのタンパク質の発現を可能にする他のベクターが含まれる。
【0154】
ウイルスは、多くの場合において宿主の防御機構を回避するように進化してきた非常に特殊化された感染性因子である。典型的には、ウイルスは特定の細胞タイプに感染し、特定の細胞タイプにおいて増殖する。ウイルスベクターの標的化特異性では、その天然の特異性が、所定の細胞タイプを特異的に標的化し、それにより、組換え遺伝子を感染細胞に導入するために利用される。従って、本発明によって使用されるベクターのタイプは、形質転換された細胞タイプに依存する。
【0155】
組換えウイルスベクターは、側方感染のような利点を提供するので、本発明の実施形態のポリペプチドの発現のために有用でありうる。側方感染は、例えば、レトロウイルスの生活環において固有のものであり、出芽し、周りの細胞に感染する多くの子孫ビリオンを1個の感染細胞が産生するプロセスである。その結果は、最初のウイルス粒子によってそのほとんどが最初に感染していなかった広い面積が急速に感染することである。これは、感染性因子が娘核種を介してのみ広がる垂直型の感染とは対照的である。横方向に広がることができないウイルスベクターもまた作製することができる。この特徴は、所望する目的が、指定された遺伝子を局在化した多数の標的化された細胞のみに導入することであるならば、有用であり得る。
【0156】
様々な原核生物細胞または真核生物細胞を、本発明のポリペプチドを発現させるための宿主−発現システムとして使用することができる。これらには、微生物、例えば、ポリペプチドコード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA発現ベクター、プラスミドDNA発現ベクターまたはコスミドDNA発現ベクターにより形質転換される細菌(例えば、E.coli(これには、BL21(DE3)plysS、BL21(DE3)RPおよびBL21のE.coli株が挙げられるが、これらに限定されない)、および、B.subtilis);ポリペプチドコード配列を含有する組換え酵母発現ベクターにより形質転換される酵母など;ポリペプチドコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)が感染させられるか、または、ポリペプチドコード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミドなど)により形質転換される植物細胞システムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
様々な方法を、本発明の発現ベクターを宿主発現系の細胞に導入するために使用することができる。そのような方法が、一般には、Sambrook他、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Springs Harbor Laboratory、New York(1989、1992);Ausubel他、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、Baltimore、Md.(1989);Chang他、Somatic Gene Therapy、CRC Press、Ann Arbor、Mich.(1995);Vega他、Gene Targeting、CRC Press、Ann Arbor Mich.(1995);Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses、Butterworths、Boston Mass.(1988);および、Gilboa他[Biotechniques 4(6):504〜512、1986]に記載され、そのような方法には、例えば、組換えウイルスベクターを用いた安定的トランスフェクションまたは一過性トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーションおよび感染が含まれる。加えて、陽性−陰性の選択法については米国特許第5464764号および同第5487992号を参照のこと。
【0158】
ウイルス感染による核酸の導入では、より高いトランスフェクション効率をウイルスの感染性のために得ることができるので、他の方法(例えば、リポフェクションおよびエレクトロポレーションなど)を上回る利点がいくつかもたらされる。
【0159】
本発明のポリペプチドの核酸配列は特定の宿主細胞の発現のために最適化することができる。そのような配列改変の例には、目的とする種において典型的に見出されるG/C含有量により近づけるための変化させたG/C含有量、および、コドン最適化として一般に示される、種において典型的に見出されないコドンの除去が挙げられるが、これらに限定されない。
【0160】
語句「コドン最適化」は、目的とする種におけるコドン使用頻度に近づける、構造遺伝子またはそのフラグメントにおける使用のための適切なDNAヌクレオチドの選択をいう。したがって、最適化された遺伝子または核酸配列は、生来的遺伝子または天然に存在する遺伝子のヌクレオチド配列が、選択された種における統計学的に好まれるコドンまたは統計学的に好都合であるコドンを利用するために改変されている遺伝子を示す。ヌクレオチド配列は典型的にはDNAレベルで調べられ、この種における発現のために最適化されたコード領域が、何らかの好適な手法を使用して、例えば、Sardana他(1996、Plant Cell Reports、15:677〜681)に記載されるように決定される。この方法では、コドン使用頻度の標準偏差、すなわち、コドン使用頻度の偏りの尺度を、高発現の選択された種の遺伝子の各コドンに対する生来的遺伝子の各コドンの使用頻度の二乗比例偏差を最初に見出し、その後、平均二乗偏差を計算することによって計算することができる。使用される式が、1SDCU=n=1N[Xn−Yn]/Yn]2/Nであり、この式において、Xnは高発現の遺伝子におけるコドンnの使用の頻度を示し、Ynは、目的とする遺伝子におけるコドンnの使用の頻度を示し、Nは、目的とする遺伝子におけるコドンの総数を示す。
【0161】
核酸配列を特定の細胞タイプのための好ましいコドン使用頻度に従って最適化することの1つの方法が、コドン最適化表、例えば、日本のNIAS(独立行政法人農業生物資源研究所)DNAバンクからコドン使用頻度データベース(www.kazusa.or.jp/codon/)においてオンラインで提供されるコドン最適化表などの、何らかの余分な統計学的計算を行うことを伴わない直接的な使用に基づく。このコドン使用頻度データベースは、いくつかの異なる種についてのコドン使用頻度表を含有しており、それぞれのコドン使用頻度表が、Genbankに存在するデータに基づいて統計学的に決定されている。
【0162】
最も好ましいコドンまたは最も好都合であるコドンを特定の種においてそれぞれのアミノ酸について決定するために上記の表を使用することによって、目的とするタンパク質をコードする天然に存在するヌクレオチド配列をその特定の種のためにコドン最適化することができる。これが、低い統計学的出現率を特定の種のゲノムにおいて有し得るコドンを、アミノ酸に関して、統計学的により好都合である対応するコドンにより置き換えることによって達成される。しかしながら、1つ以上のあまり好都合でないコドンを、存在する制限部位を欠失するために、または、新しい制限部位を潜在的に有用な接合部(シグナルペプチドカセットまたは終結カセットを加えるための5’末端および3’末端、正しい全長配列を作製するためにセグメントを切断し、一緒にスプライスするために使用されるかもしれない内部部位)において作るために、または、mRNAの安定性もしくは発現に負の影響を及ぼし得るヌクレオチド配列を排除するために選択することができる。
【0163】
天然に存在するコードヌクレオチド配列は既に、何らかの改変に先立って、特定の種における統計学的に好都合であるコドンに対応するいくつかのコドンを含有する場合がある。したがって、生来的ヌクレオチド配列のコドン最適化では、どのコドンが、生来的ヌクレオチド配列において、特定の種に関して統計学的に好都合でないかを決定すること、および、これらのコドンをその特定の種のコドン使用頻度表に従って改変して、コドン最適化された派生物を作製することを含むことができる。改変されたヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質が、対応する天然に存在する遺伝子または生来的遺伝子によってコードされるタンパク質よりも高いレベルで産生されるならば、改変されたヌクレオチド配列は、特定の種のコドン使用頻度について完全または部分的に最適化され得る。コドン使用頻度を変更することによる合成遺伝子の構築が、例えば、PCT特許出願公開93/07278号に記載される。
【0164】
したがって、本発明は、本明細書中上記の核酸配列、そのフラグメント、それとのハイブリダイゼーションが可能な配列、その相同的配列、そのオルソロガス配列、異なるコドン使用頻度を有する類似したポリペプチドをコードする配列、変異(例えば、天然に存在するか、または、人為的に誘導されたかのどちらであっても、ランダムまたは標的化された様式のどちらであっても、1つ以上のヌクレオチドの欠失、挿入または置換など)によって特徴づけられる変化した配列を包含する。
【0165】
宿主細胞系とは無関係であるが、(ポリペプチドをコードする)挿入されたコード配列の転写および翻訳のための必要なエレメントを含有すること以外に、本発明の発現構築物はまた、発現ポリペプチドの安定性、産生、精製、収量または活性を最適化するために操作された配列を含むことができることが理解される。
【0166】
形質転換された細胞が、多量の組換えポリペプチドの発現を可能にする効果的な条件のもとで培養される。効果的な培養条件には、タンパク質の産生を可能にする効果的な培地、バイオリアクター、温度、pHおよび酸素条件が挙げられるが、これらに限定されない。効果的な培地は、細胞が、本発明の組換えポリペプチドを産生するために培養される任意の培地を示す。そのような培地には典型的には、同化可能な炭素源、窒素源およびリン酸源、ならびに、適切な塩、ミネラル、金属および他の栄養分(例えば、ビタミンなど)を有する水溶液が含まれる。本発明の細胞は、従来の発酵用バイオリアクター、振とうフラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュおよびペトリ皿で培養することができる。培養を、組換え細胞に適切な温度、pHおよび酸素含有量において行うことができる。そのような培養条件は当業者の専門的知識の範囲内である。
【0167】
産生のために使用されるベクターおよび宿主の系に依存して、得られる本発明のポリペプチドは組換え細胞内に留まり得るか、または、発酵培地に分泌され得るか、または、2つの細胞膜の間の空間(例えば、E.coliにおける細胞膜周辺腔など)に分泌され得るか、または、細胞膜もしくはウイルス膜の外側表面に保持され得るかのいずれかである。
【0168】
培養での所定期間の後、組換えポリペプチドの回収が行われる。
【0169】
本明細書中で使用されるとき、語句「組換えポリペプチドを回収する」は、ポリペプチドを含有する発酵培地全体を集めることを示し、分離または精製のさらなる工程を意味する必要はない。
【0170】
したがって、本発明のポリペプチドは、様々な標準的なタンパク質精製技術を使用して、例えば、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ろ過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、コンカナバリンAクロマトグラフィー、クロマトフォーカシングおよび示差的可溶化など(これらに限定されない)を使用して精製することができる。
【0171】
本発明の実施形態のポリペプチドはアフィニティークロマトグラフィーによって都合良く精製することができる。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの好適性は、キメラ体において使用される免疫グロブリンFcドメインの種およびイソタイプに依存する。プロテインAを、ヒトのγ1重鎖、γ2重鎖またはγ4重鎖に基づくキメラ分子を精製するために使用することができる[Lindmark他、J.Immunol.Meth.、62:1〜13(1983)]。プロテインGが、好ましくは、すべてのマウスイソタイプについて、また、ヒトγ3について使用される[Guss他、EMBO J.、5:1567〜1575(1986)]。アフィニティーリガンドが結合される固体担体は、ほとんどの場合アガロースであるが、他の固体担体もまた利用可能である。機械的に安定な固体担体(例えば、制御細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなど)は、アガロースを用いて達成され得るよりも速い流速および短い処理時間を可能にする。キメラ分子をプロテインAまたはプロテインGのアフィニティーカラムに結合するための条件は、Fcドメインの特徴、すなわち、その種およびイソタイプによって完全に決定される。一般には、適切なリガンドが選ばれるとき、効率的な結合が未調整の培養液から直接に生じる。本発明のこの態様の結合したポリペプチドは、酸性pH(約3.0以上)において、または、穏和なカオトロピック塩を含有する中性pH緩衝液で、そのどちらでも効率よく溶出することができる。このアフィニティークロマトグラフィー工程により、95%を超える純度のポリペプチド調製物を得ることができる。
【0172】
当該技術分野で知られている他の方法を、本発明の実施形態のポリペプチドを精製するために、プロテインAまたはプロテインGでのアフィニティークロマトグラフィーの代わりに、あるいは、プロテインAまたはプロテインGでのアフィニティークロマトグラフィーに加えて使用することができる。例えば、ポリペプチドはイオウ親和性(thiophilic)ゲルクロマトグラフィー[Hutchens他、Anal.Biochem.、159:217〜226(1986)]および固定化金属キレートクロマトグラフィー[Al−Mashikhi他、J.Dairy Sci.、71:1756〜1763(1988)]において抗体と同様に挙動することが期待される。
【0173】
回収を容易にするために、発現したコード配列は、本発明のポリペプチドと、融合された切断可能な成分(例えば、ヒスチジン)とをコードするように操作することができる。そのような融合タンパク質は、ポリペプチドがアフィニティークロマトグラフィーによって、例えば、切断可能な成分に対して特異的なカラムでの固定化によって容易に単離され得るように設計することができる。
【0174】
切断部位が、ポリペプチドと、切断可能な成分との間で操作される場合、ポリペプチドは、融合タンパク質をこの部位において特異的に切断する適切な酵素または薬剤による処理によってクロマトグラフィーカラムから遊離させることができる[例えば、Booth他、Immunol.Lett.、19:65〜70(1988);および、Gardella他、J.Biol.Chem.、265:15854〜15859(1990)を参照のこと]。
【0175】
本発明のポリペプチドは好ましくは、「実質的に純粋な」形態で回収される。
【0176】
本明細書中で使用されるとき、語句「実質的に純粋な」は、本明細書中に記載される適用におけるポリペプチドの効果的な使用を可能にする純度を示す。
【0177】
宿主細胞において合成可能であることに加えて、本発明のポリペプチドはまた、インビトロ発現システムを使用して合成することができる。これらの方法が当該技術分野では広く知られており、そのようなシステムの構成成分が市販されている。
【0178】
ポリペプチドはそのまま使用することができ、または、さらに修飾することができる。
【0179】
例えば、ポリペプチドは、水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)をポリペプチドに結合することによって修飾することができる。水溶性ポリマーのそのような結合は、ポリペプチドの生物学的活性を、例えば、ポリペプチドの溶解性を増大させることによって、ポリペプチドの毒性を低下させることによって、ポリペプチドの循環半減期を(例えば、糸球体ろ過を低下させることにより)延ばすことによって、および/または、ポリペプチドをタンパク質分解的分解から保護することによって改善することができる。
【0180】
したがって、本発明の必要に応じた随意的な実施形態によれば、本明細書中に記載されるポリペプチドは水溶性ポリマーに結合させられる。ポリエチレングリコールが好適な水溶性ポリマーである。薬学的投与のために意図されるポリペプチドへの結合のために好適な(例えば、非毒性の)さらなる水溶性ポリマーが当業者には明らかである。
【0181】
水溶性ポリマーは、(直接に、または、リンカーを介して)ポリペプチドのどのような部分にでも結合させることができる。場合により、水溶性ポリマーは、ケモカイン結合ペプチド以外のポリペプチドの部分に、そのケモカイン結合活性を妨害しないように結合させられる。
【0182】
本明細書中に記載されるように、また、下記の実施例の節において例示されるように、本明細書中に記載されるポリペプチドは、ケモカインの活性を調節することに効果的であり、このことは数多くの好都合な治療的適用を有し得る。したがって、ケモカイン活性を調節し、かつ/または、様々な医学的状態を処置するための新規かつ効率的な方法が本明細書中に提供される。
【0183】
それによれば、本発明の実施形態の1つの局面において、ケモカイン(例えば、I−TAC、IP−10、MIG、MCP−1、エオタキシンおよび/またはRANTES)の生物学的影響を調節する方法であって、治療効果的な量の本明細書中に記載されるポリペプチド(例えば、本明細書中に記載される修飾型または非修飾型のポリペプチド)をその必要性のある対象に投与することを含む方法が提供される。
【0184】
本明細書中で使用される場合、用語「方法」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これらには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の分野の当業者に知られているか、または、そのような当業者によって、既知の様式、手段、技術および手順から容易に開発されるかのどちらであってもそのような様式、手段、技術および手順(これらに限定されない)が含まれる。
【0185】
下記の実施例の節において明らかにされるように、本明細書中に記載されるポリペプチドは、様々な医学的状態を処置するためのものであり得る。そのような状態を処置することが、本明細書中に記載されるポリペプチド(例えば、本明細書中に記載される修飾型または非修飾型のポリペプチド)をその必要性のある対象に投与することを含む方法によって行われる。本発明の実施形態に従って処置することができる状態の例には、限定されないが、炎症、アレルギー、遅延型過敏症、最適でない免疫応答、異常な細胞遊走、自己免疫反応、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、同種移植片拒絶、糖尿病、敗血症、ガン、悪性細胞成長、細菌感染症、ウイルス感染症、関節炎、大腸炎、乾癬、アテローム性動脈硬化、高血圧、重症筋無力症および再灌流虚血が含まれる。
【0186】
場合により、投与は、静脈内投与、経口投与、皮下投与、局所投与および/または鼻腔内投与を含む。
【0187】
本明細書中に記載されるポリペプチドのFcドメインまたはFcフラグメントは、ケモカイン結合ペプチドそれ自体の半減期と比較した場合、循環におけるポリペプチドのより長い半減期をもたらし得ることが理解される。このより長い半減期のために、ポリペプチドの治療効果的なレベルを、より少ない頻度の投与によりインビボで維持することができる。
【0188】
したがって、いくつかの実施形態によれば、投与が、1週間あたりせいぜい1回、場合により1ヶ月あたりせいぜい2回、場合により1ヶ月あたりせいぜい1回、場合により2ヶ月あたりせいぜい1回、場合により3ヶ月あたりせいぜい1回、場合により6ヶ月あたりせいぜい1回行われる。
【0189】
代わりの実施形態において、ただ1回だけの投与が、所望される治療効果を達成するために十分である。
【0190】
同様に、本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、ケモカイン(例えば、I−TAC、IP−10、MIG、MCP−1、エオタキシンおよび/またはRANTES)の生物学的影響を調節する(例えば、本明細書中に記載されるように、阻害および/または強化する)ための医薬品の製造における、本明細書中に記載されるポリペプチド(例えば、本明細書中に記載される修飾型または非修飾型のポリペプチド)の使用が提供される。
【0191】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、炎症、アレルギー、遅延型過敏症、最適でない免疫応答、異常な細胞遊走、自己免疫反応、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、同時移植片拒絶、糖尿病、敗血症、ガン、悪性細胞成長、細菌感染症、ウイルス感染症、関節炎、大腸炎、乾癬、アテローム性動脈硬化、高血圧、重症筋無力症および再灌流虚血からなる群から選択される状態を処置するための医薬品の製造における、本明細書中に記載されるポリペプチド(例えば、本明細書中に記載される修飾型または非修飾型のポリペプチド)の使用が提供される。
【0192】
本明細書で使用される場合、用語「治療する/処置する」には、状態の進行を取り消すこと、実質的に阻害すること、遅くすること、または、逆向きにすること、状態の臨床的症状または審美的症状を実質的に改善すること、あるいは、状態の臨床的症状または審美的症状の出現を実質的に防止することが含まれる。
【0193】
処置されるべき対象はヒトまたは非ヒト動物であり得る。好ましくは、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。
【0194】
本明細書中に記載されるようなポリペプチドを利用する処置は単独で施すことができ、または、特定の疾患を処置することにおいて有用であることが知られている他の薬剤と一緒に施すことができる。本明細書中に記載される医薬品または医薬組成物は場合によりさらに、1つまたは複数のそのような薬剤を含むことができる。
【0195】
場合により、本明細書中に記載される医薬品は、静脈内投与、経口投与、皮下投与、局所投与および/または鼻腔内投与のために配合される。
【0196】
本明細書中に記載される本発明の実施形態に従って調節することができるケモカインの生物学的影響の例には、限定されないが、炎症性影響、細胞遊走、腫瘍成長およびガン転移が含まれる。
【0197】
本明細書中に記載される本発明のいずれかの局面において、生物学的影響を調節することは、生物学的影響を阻害または強化することを含むことができる。例示的な実施形態において、調節することは、阻害することを含む。場合により、少なくとも1つのケモカインの生物学的影響が阻害され、かつ、別のケモカインの生物学邸影響が強化される。
【0198】
本明細書中に記載される方法および使用のいずれかにおいて、ポリペプチドはそれ自体で使用することができ、または、好ましいことではあるが、医薬的に許容されるキャリアをさらに含む医薬組成物の一部として使用することができる。
【0199】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載されるようなポリペプチドと、医薬的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物が提供される。
【0200】
いくつかの実施形態において、組成物は包装材に詰められ、本明細書中に記載されるように、ケモカイン(例えば、I−TAC、IP−10、MIG、MCP−1、エオタキシンおよび/またはRANTES)の生物学的影響を調節することにおける使用のために包装材の内部または表面において印刷により特定される。
【0201】
いくつかの実施形態において、組成物は包装材に詰められ、炎症、アレルギー、遅延型過敏症、最適でない免疫応答、異常な細胞遊走、自己免疫反応、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、同種移植片拒絶、糖尿病、敗血症、ガン、悪性細胞成長、細菌感染症、ウイルス感染症、関節炎、大腸炎、乾癬、アテローム性動脈硬化、高血圧、重症筋無力症および再灌流虚血からなる群から選択される状態を処置することにおける使用のために包装材の内部または表面において印刷により特定される。
【0202】
本明細書中に記載されるポリペプチドは、そのままで、または、その医薬的に許容される塩としてそのどちらでも、本発明の様々な局面において投与することができ、または、そうでない場合には利用することができる。
【0203】
表現「医薬的に許容される塩」は、親化合物の溶解度特性を改変するために、および/または、親化合物による生物に対する何らかの著しい刺激を軽減するために典型的には使用され、一方で、投与された化合物の生物学的な活性および性質を妨げない、親化合物の荷電化学種およびその対イオンを示す。医薬的に許容される塩の限定されない一例がカルボキシレートアニオンおよびカチオン(例えば、アンモニウム、ナトリウムおよびカリウムなど、これらに限定されない)である。
【0204】
好適な投与経路には、例えば、吸入経路、経口経路、口内経路、直腸経路、経粘膜経路、経皮経路、皮内経路、経鼻経路、腸管経路および/または腸管外経路;筋肉内注射経路、皮下注射経路および/または髄膜内注射経路;髄空内注入経路、直接心室内注入経路、静脈内注射経路、腹腔内注射経路、鼻腔内注射経路および/または眼内注射経路;ならびに/あるいは、対象の組織領域に直接注入する経路が含まれ得る。必要に応じた随意的な実施形態において、静脈内経路、経口経路、皮下経路、局所経路および/または鼻腔内経路が使用される。
【0205】
皮膚の疾患および障害(例えば、乾癬、皮膚アレルギー、皮膚過敏症)については、局所投与が場合により、例えば、局所投与のために配合されるクリーム、ローション、ゲルまたは粉末剤を使用して使用される。
【0206】
本明細書に記載される方法、組成物および使用は治療有効量のポリペプチドを利用する。治療有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0207】
本発明の方法および使用において使用されるいかなる調製物についても、投与量または治療有効量は、生体外アッセイから最初に推定されることができる。例えば、投与量は、動物モデルにおいて決定されることができ、そのような情報は、ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定するために使用されることができる。
【0208】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、生体外、細胞培養物、または実験動物における標準的な薬学的手法によって決定されることができる。これらの生体外、細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量範囲を定めるために使用されることができる。投与量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化しうる。正確な配合、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択されることができる(例えば、Finglら、(1975)「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1 p.1を参照のこと)。
【0209】
投与は、本明細書中に記載されるように、単回投与または複数回投与であることができる。
【0210】
本明細書に記載される一つ以上のポリペプチドを含む医薬組成物は、この分野で十分に知られているプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥のプロセスによって製造されることができる。
【0211】
本発明の実施形態に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用されることができる調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容されるキャリアを使用して従来の様式で配合されることできる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0212】
注射の場合、有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合しうる緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な食塩緩衝液など)において配合されることができる。
【0213】
経口投与の場合、化合物は、活性化合物をこの分野でよく知られている医薬的に許容されるキャリアと組み合わせることによって容易に配合されることができる。そのようなキャリアは、本発明の化合物が、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物などとして配合されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物は、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、錠剤または糖衣錠コアを得るために、望ましい好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製されることができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容されるポリマーである。もし望むなら、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤が加えられることができる。
【0214】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有しうる。色素または顔料は、活性化合物の量を明らかにするために、または活性化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えられることができる。
【0215】
経口使用されうる医薬組成物としては、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが挙げられる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分は、好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁されることができる。さらに、安定化剤が加えられることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0216】
口内投与の場合、組成物は、従来の方法で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0217】
鼻吸入による投与の場合、本発明による使用のための有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投与量は、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定されることができる。ディスペンサーにおいて使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジは、化合物および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含有して配合されることができる。
【0218】
本明細書中に記載される調製物は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために配合されることができる。注射用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは多回用量容器における単位投薬形態で提供されることができる。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物または溶液剤またはエマルションにすることができ、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの配合剤を含有することができる。
【0219】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態の活性調製物の水溶液が含まれる。さらに、有効成分の懸濁物は、適切な油性または水性の注射用懸濁物として調製されることができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが挙げられる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために、有効成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
【0220】
あるいは、有効成分は、好適なビヒクル(例えば、無菌の、パイロジェン不含水溶液)を使用前に用いて構成される粉末形態であることができる。
【0221】
本発明の実施形態による調製物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合されることができる。
【0222】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存するだろう。
【0223】
本発明の組成物は、所望されるならば、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、ガラスまたはプラスチックホイル(例えば、ブリスターパック)を含むことができる。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随し得る。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、容器に関連した通知によって適応させることがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態、あるいはヒトまたは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きであり得るか、または、承認された製品添付文書であり得る。
【0224】
本明細書中に記載されるポリペプチドはケモカインに結合することができ、したがって、少なくともいくつかのケモカインの構造に対して相補的な構造を有する。ケモカイン受容体もまた、ケモカインに対して相補的な構造を有するので、本明細書中に記載される少なくともいくつかのポリペプチドの構造がケモカイン受容体の構造との著しい類似を有することが予想される。したがって、ポリペプチドをケモカイン受容体の代用物としていくつかの適用において使用することができる(例えば、ケモカイン受容体に結合し得る抗体を作製するとき)。
【0225】
したがって、本発明の実施形態の別の局面において、ケモカイン受容体の少なくとも一部分を認識することができる抗体が提供される。抗体は場合により、本明細書中に記載されるポリペプチドに対する抗体を、抗体を生じさせるための標準的な技術を使用して生じさせることによって作製される。
【0226】
本明細書中に同様にまた提供されるものが、自己抗体を生じさせるための、本明細書中に記載されるポリペプチドを含むワクチンである。ワクチンは、ポリペプチドに対して対象において抗体を生じさせるように設計される。この場合、抗体はさらに、対象において少なくとも1つのケモカイン受容体の少なくとも一部分を認識し、この部分に結合する。ワクチンは場合により、アジュバントおよびキャリアなど(これらに限定されない)を含めて、当業者によって容易に選択され得る任意の好適なワクチンキャリアを含む。
【0227】
免疫原性組成物またはワクチン組成物を調製するための一般的な方法が、Remington’s Pharmaceutical Science(Mack Publishing Company、Easton、Pa.;最新版)に記載される。免疫原性を増大させるために、本発明のポリペプチドは、ビーズ(例えば、ラテックスビーズまたは金ビーズなど)およびISCOMなどに吸着またはコンジュゲート化することができる。免疫原性組成物はアジュバントを含むことができ、この場合、アジュバントは、免疫原性成分の免疫刺激特性を高めるために免疫原またはワクチン配合物に加えることができる物質である。リポソームもまた、アジュバントであると見なされる(Gregiruades,G.他、Immunological Adjuvants and Vaccines、Plenum Press、New York、1989)。ポリペプチド免疫原の有効性を増大させ得るアジュバントまたは薬剤の例には、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸ベリリウム、シリカ、カオリン、炭素、油中水型エマルションおよび水中油型エマルションが含まれる。好ましいタイプのアジュバントが、ムラミルジペプチド(MDP)ならびに様々なMDP誘導体およびMDP配合物であり、例えば、N−アセチル−D−グルコサミニル−(β−1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(GMDP)(Hornung,RL他、Ther Immunol、1995、2:7〜14)またはISAF−1(0.4mgのトレオニル−ムラミルジペプチドを伴うリン酸塩緩衝化溶液における5%スクアレン、2.5%プルロニックL121、0.2%Tween80;Kwak,LW他(1992)、N.Eng.J.Mol.、327:1209〜1238)である。他の有用なアジュバントが、コレラトキシン、細菌エンドトキシン、脂質X、細菌プロピオノバクテリウム・アクネス(Propionobacterium acnes)または百日咳菌(Bordetella pertussis)の生物全体または細胞成分分画物、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、リゾレシチン、ビタミンA、サポニンおよびサポニン誘導体(例えば、QS21(White,A.C.他(1991)、Adv.Exp.Med.Biol.、303:207〜210)、これは現在、臨床において使用されている(Helling,F他(1995)、Cancer Res.、55:2783〜2788;Davis,TA他(1997)、Blood、90:509))、レバミソール、DEAE−デキストラン、ブロック型コポリマーまたは他の合成アジュバントであり、あるいは、それらに基づく。数多くのアジュバントが様々な供給源から市販されている:例えば、Merck Adjuvant65(Merck and Company,Inc.、Rahway、N.J.)またはフロイントの不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories、Detroit、Mich.)、Amphigen(水中油型)、Alhydrogel(水酸化アルミニウム)、または、AmphigenおよびAlhydrogelの混合物。アルミニウムがヒト使用のために承認されている。
【0228】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0229】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0230】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0231】
用語「例示的」は、本明細書では「例(example,instance又はillustration)として作用する」ことを意味するために使用される。「例示的」として記載されたいかなる実施形態も必ずしも他の実施形態に対して好ましいもしくは有利なものとして解釈されたりかつ/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。
【0232】
用語「任意選択的」は、本明細書では、「一部の実施形態に与えられるが、他の実施形態には与えられない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も対立しない限り複数の「任意選択的」な特徴を含むことができる。
【0233】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0234】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0235】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての数とを含むことが意味される。
【0236】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0237】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0238】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0239】
材料および方法
材料:
増幅緩衝液(×10)をInvitrogenから得た;
デキストランT−500をPharmacosmos A/S(デンマーク)から得た;
ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)をBiological Industries(Beit Haemek、イスラエル)から得た;
ECL溶液をAmersham Biosciencesから得た;
EcoRIをNew England Biolabsから得た;
エンハンサー溶液(×10)をInvitrogenから得た;
エオタキシン(ヒト)をPeproTech(Rocky Hill、NJ、米国)から得た;
EX−CELL(登録商標)293培地をSAFC Biosciencesから得た;
ウシ胎児血清(FCS)をBiological Industries(Beit Haemek、イスラエル)から得た;
フィコール1077をSigmaから得た;
フロイント完全アジュバントをSigmaまたはDifcoから得た;
FuGENE(登録商標)6をRocheから得た;
IP−10(ヒト)をPeproTechから得た;
IL−8(ヒト)をPeproTechから得た;
I−TAC(ヒト)をPeproTechから得た;
MCP−1(ヒト)をPeproTechから得た;
メチル化ウシ血清アルブミン(mBSA)をSigmaから得た;
MIG(ヒト)をPeproTechから得た;
NotIをNew England Biolabsから得た;
NuPAGE(登録商標)BisTrisゲルをInvitrogenから得た;
pIRESpuro3ベクターをBD Biosciences Clontechから得た;
プロテインA−Sepharose(登録商標)ビーズをAmershamから得た;
RANTES(ヒト)をPeproTechから得た;
RPMI培地をBiological Industries(Beit Haemek、イスラエル)から得た;
SDF−1α(ヒト)をPeproTechから得た;
Taqポリメラーゼ(Platinum(登録商標)Pfx DNAポリメラーゼ)をInvitrogenから得た;および
VCAM−1(ヒト)をR&D Systems,Inc.(Minneapolis、MN)から得た。
【0240】
すべてのケモカインを供給者の推奨法に従って調製した。
【0241】
IL6−BKTペプチドのDNAフラグメントを得るための2工程PCR:
最初のPCR工程において、IL6のシグナルペプチドのDNA配列(配列番号166)を、それぞれのBKTペプチドの最初の9アミノ酸に対応するDNA配列に加えた。このPCR反応の生成物を、BKTペプチドの残り3アミノ酸に対応するDNA配列、スペーサー配列(配列番号167)および3’末端でのBstBI制限部位を加えるためのテンプレートとして第2のPCR工程で使用した。
【0242】
IL6−Fc pIRESpuroのDNAが、最初のPCR工程における3つすべてのPCR反応のためのDNAテンプレートとして役立った。3つすべてのPCR反応を、同じフォワードプライマー(T7プライマー;配列番号170)を使用して行った。ユニバーサルT7プライマーを使用することにより、サブクローニングのために後で使用されたNheIを含めて、5’末端におけるマルチクローニング部位を含有したPCR産物が得られた。リバースプライマーはそれぞれのペプチドについて特異的であった;配列番号171がBKT−P2のために使用され、配列番号172がBKT−P46のために使用された。
【0243】
PCR反応条件は下記の通りであった:20ngのDNAテンプレート;5μlの増幅(×10)緩衝液;0.2mMの各デオキシリボヌクレオチド(dNTP);0.5mMのMgSO;5μlのエンハンサー溶液(×10);0.2μMの各プライマー;2.5ユニットのTaqポリメラーゼ;水を加えて、50μlの総反応体積にした。
【0244】
増幅を、94℃で3分間の最初の変性工程、続いて、94℃で30秒間、52℃で30秒間および72℃で30秒間の30サイクル、その後、72℃で10分間により行った。
【0245】
PCR増幅が終了したとき、5μlのそれぞれの反応混合物を、臭化エチジウムにより染色され、UV光により可視化される2%アガロースゲルで分析した。
【0246】
上記手順によって得られるPCR産物を第2のPCR工程のためのテンプレートとして使用した。上記T7プライマーを3つすべての反応においてフォワードプライマーとして使用し、一方、リバースプライマーはそれぞれのペプチドについて特異的であった;配列番号173がBKT−P2のために使用され、配列番号174がBKT−P46のために使用された。それぞれのリバースプライマーが、所望されるペプチドのアミノ酸10〜12と、ヘキサペプチドスペーサー配列(配列番号162)とをコードし、BstB1制限部位を含んだ。
【0247】
PCR反応条件は下記の通りであった:0.5μlのDNAテンプレート;5μlの増幅(×10)緩衝液;0.2mMの各dNTP;0.5μMのMgSO;5μlのエンハンサー溶液(×10);0.2μMの各プライマー;2.5ユニットのTaqポリメラーゼ;水を加えて、50μlの総反応体積にした。
【0248】
増幅およびPCR産物の分析を、最初のPCR工程について上記で記載されるように行った。PCR産物を、QiaQuick(商標)ゲル抽出キット(Qiagen(商標))を使用してゲルから抽出した。
【0249】
IL6−BKTペプチドのDNAフラグメントのFc配列への連結:
抽出されたIL6−BKTペプチドDNA産物をNheIおよびBstBIにより消化し、上記で詳述されるようにアガロースゲルから精製し、同じ酵素により事前に消化されたFc N297A pIRESpuro3に連結した。配列番号158および配列番号159をコードするためのベクターのマップが図1Aおよび図1Bにそれぞれ示される。連結混合物をDH5αコンピテント細胞に形質転換した。アンピシリン抵抗性の形質転換体をスクリーニングし、陽性クローンをコロニーPCRによってさらに分析した。
【0250】
DNAをアンピシリン抵抗性コロニーから抽出し、EcoRIおよびNotIの制限酵素による37℃での2時間の消化に供した。反応液をアガロースゲルで分離した。陽性コロニーは、5123bpおよび868bpの2つのバンドを生じさせることが予想された。陽性コロニーをDNA配列決定によって確認した。
【0251】
ウエスタンブロット:
細胞サンプルからの培地を集め、遠心分離した(1000回転/分、7分)。1mlの細胞除去培地を50μlのプロテインA−Sepharose(登録商標)ビーズと室温で45分間インキュベーションした。インキュベーション時間が終了したとき、タンパク質を、100mMのクエン酸塩リン酸塩緩衝液(pH3.5)および10mMのDTT(ジチオスレイトール)を含有する50μlのサンプル緩衝液によりビーズから溶出した。サンプルを3分間煮沸し、その後、25μlのサンプルを12%NuPAGE(登録商標)BisTrisゲルに負荷した。タンパク質をニトロセルトースメンブランに転写し、PBST(0.05%Tween−20が補充されたPBS)における10%低脂肪ミルクによりブロッキング処理した。その後、メンブランを、ブロッキング溶液における1:40000の濃度でのヒト抗IgG Fcフラグメント抗体により、その後で、HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)にコンジュゲート化されたヤギ抗ヒト抗体により1時間、室温でブロッティングした。ECL溶液とのインキュベーションの後、メンブランをフィルムに感光させた。
【0252】
表面プラズモン共鳴(SPR):
カルボキシメチルデキストランにより被覆されるチャンバーにおいて、ペプチドまたはポリペプチドを、典型的にはリシン残基またはN末端のアミノ基を介してチャンバーに共有結合により結合させた。ケモカインを増大する濃度で注入してチャンバーに通した。
【0253】
表面から反射される光における変化が、結合したタンパク質の量に比例しており、検出器によって検出される。
【0254】
ケモカインの種々の濃度で結合するタンパク質の量をプロットすることにより、解離係数の計算が可能であった。
【0255】
新鮮血からのT細胞の精製:
50mlの血液を、PBS(リン酸塩緩衝液生理的食塩水)におけるデキストランT−500の溶液(6%w/v)の10mlおよび7mlのクエン酸塩緩衝液(500mlのPBSにおける25グラムのクエン酸塩、8グラムのクエン酸)に加えた。この溶液を25℃で30分間インキュベーションした。10mlのフィコール1077をチューブの底に加えた。その後、チューブを、(遠心分離機のブレーキモードをオフにして)2000回転/分で30分間、18℃で遠心分離した。相間部を集め、5%のFCS(ウシ胎児血清)を含む8mlのPBSにより2回洗浄し、その後、1400回転/分における5分間の18℃での遠心分離を行った。細胞を10個/ml未満の濃度で、5%のFCSを含むPBSに再懸濁した。2mlの細胞溶液を、PBS−5%FCSに事前に浸されたポリ(メタクリル酸メチル)ナイロンウールカラムに加え、その後、25℃で45分間インキュベーションした。それぞれのカラムを8mlのPBS−5%FCSにより洗浄し、細胞(T細胞および赤血球)をPBSにおける5mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)の50mlによって溶出した。赤色ペレットを、(ブレーキをオンにした)1400回転/分における5分間の4℃での遠心分離によって得た。
【0256】
赤血球の溶解を行うために、赤色ペレットを5mlの溶解緩衝液(155mM NHCl、10mM KHCO、0.1mM EDTA、×0.1PBS)に4分間再懸濁し、その後、EDTAを含むPBSの50mlを直ちに加えた。1400回転/分における5分間の4℃での遠心分離の後、ペレットを再び50mlのPBS−EDTAにより洗浄し、同じ条件のもとで再び遠心分離した。白色ペレットが得られた。これを、10%のFCS、L−グルタミン、ピルビン酸ナトリウムおよび抗生物質を含むRPMI培地に、3×10細胞/mlの濃度で再懸濁した。細胞を37℃で2時間インキュベーションし、その後、非接着性細胞を集めた。細胞は、37℃での一晩のインキュベーションの後、実験で使用できる状態であった。
【0257】
インビトロT細胞接着アッセイ:
10μg/mlのヒトVCAM−1および2μg/mlのケモカイン(無傷のMIG、IP−10、I−TAC、MCP−1、RANTES、SDF−1(間質細胞由来因子−1)、BCA−1(Bリンパ球化学誘引物質−1)、IL−8(インターロイキン−8)またはエオタキシン、あるいは、コントロールとしての熱不活化SDF−1を、20mM重炭酸塩により緩衝化されたPBS(pH8.5)に溶解し、ポリスチレンプレートにおいて4℃で一晩インキュベーションした。代替では、10μg/mlのケモカインを使用し、プレートを室温で30分間インキュベーションした。その後、プレートを3回洗浄し、PBSにおける20mg/mlのヒト血清アルブミンと37℃で2時間インキュベーションすることによってブロッキング処理した。
【0258】
その後、プレートを平行壁フローチャンバーの下部壁として組み立て、倒立顕微鏡のステージに取り付けた。10μg/mlの試験されているペプチドを、37℃で10分間、基質被覆チャンバー壁に定着させ、その後、洗浄した。T細胞を、本明細書中上記で記載されるように新鮮血から精製し(5×10個/ml、98%を越える純度)、結合緩衝液に懸濁し、チャンバーの中に灌流させ、37℃で1分間、基質被覆チャンバー壁に定着させた。流れを開始し、5秒毎に2倍〜2.5倍の増分で増大させ、これにより、壁面における制御された剪断ストレスを生じさせた。細胞を倒立型位相差Diaphot顕微鏡(Nikon)の20倍対物レンズで可視化し、AG−6730 S−VHSビデオレコーダー(Panasonic)に接続されたロング・インテグレーションLIS−700CCDビデオカメラ(Applitech;イスラエル)により写真撮影した。高まった剪断力による剥離に耐える接着性細胞の数を、ビデオテープに録画された細胞画像の分析によってそれぞれの時間間隔の後で求め、最初に定着した細胞のパーセントとして表した。すべての接着実験を多数の試験領域で少なくとも3回行った。
【0259】
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE):
EAEをメスのSJLマウスおよびC57BL/6マウスにおいて誘導した。マウスを100μgのPLP139−151ペプチドまたは250μgのMOG35−55ペプチドによりわき腹の皮下にそれぞれ免疫化した(0日目)。PLPペプチドおよびMOGペプチドを、800μgの結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37RA(Difco、Detroit、MI)を含有する等体積の完全フロイントアジュバント(CFA)に乳化した。マウスにはまた、300ngの百日咳トキシンを0日目および2日目に腹腔内注射した。
【0260】
マウスに、BKT−P2−FCまたはBKT−P46−FC(50μg/マウス)を免疫化後9日目に静脈内注射した。いくつかの実験では、マウスを、疾患のピーク時に、すなわち、疾患誘導後14日で処置した。このとき、マウスに、BKT−P2−FCまたはBKT−P46−FCを静脈内注射した。
【0261】
脊髄組織サンプルを疾患誘導後30日で集め、4%パラホルムアルデヒドにおいて固定処理し、脱水し、パラフィンに包埋した。脊髄切片を6μmで切断し、免疫細胞の浸潤を評価するためのヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)を用いた染色、ならびに、脱髄領域に印を付けるためのルクソールファストブルーを用いた染色による組織学的分析のために処理した。
【0262】
血液サンプルを免疫化後30日目に集め、血清をサイトカイン分析のために取り出した。サイトカインのレベルを製造者の説明書に従ってマウスTh1/Th2サイトカインキット(BDサイトメトリービーズアッセイ(CBA))によって評価した。
【0263】
BKT−P2−FCポリペプチドおよびBKT−P46−FCポリペプチドの影響を、動物対象におけるEAEの臨床スコアをモニターすることによって求めた。EAEについての臨床スコアを下記の判定基準に従って決定した:0−疾患なし;1−低下した尾の緊張;2−後肢衰弱または部分的麻痺;3−完全な後肢麻痺;4−前肢および後肢の麻痺;5−瀕死状態。累積スコアを、実験終了時に、すべての結果を実験群におけるすべての動物について合計することによって計算した。
【0264】
すべてのEAE実験のために、群あたり10匹〜12匹のマウスが存在した。
【0265】
実施例1
ポリペプチドの調製
BKT−P2ペプチド(配列番号101)およびBKT−P46ペプチド(配列番号76)(これらは本明細書中では「BKTペプチド」として示される)を、分泌型非グリコシル化ヒトIgG1Fc(Fc N297A)のN’末端に融合されるBKTペプチドを有するポリペプチドを調製するための基礎として使用した。
【0266】
DNAクローニングを可能にするために、BKT−P2およびBKT−P46のペプチド配列をDNA配列に逆翻訳した。それぞれのBKTペプチド配列を、哺乳動物システムにおけるタンパク質分泌を可能にするためにヒトIL6シグナルペプチドをコードするDNA配列に融合した。この手順を、本明細書中上記に記載されるような2工程PCRによって行った。その後、PCRによって得られるIL6−BKTペプチドのDNAフラグメントを消化し、本明細書中上記に記載される手順を使用して、非グリコシル化Fc配列(これは点変異N297Aを含有する)に読み枠を合わせて連結して、IL6−P2−Fc N297A(配列番号168)およびIL6−P46−Fc N297A(配列番号169)と称されるフラグメントを得た。
【0267】
その後、IL6−BKTペプチド−FcのDNA構築物を、FuGENE(登録商標)6トランスフェクション試薬を使用してHEK−293T細胞にトランスフェクションした。それぞれの構築物を6ウエルプレートの2つのウエルに移した。1つのウエルをウエスタンブロット(WB)分析のために割り当て、第2のウエルを、安定なプールを確立するために割り当てた。細胞をウエルあたり500000細胞の濃度で6ウエルプレートに置床した。翌日、細胞を6μlのFuGENEおよび2μgのDNAにより(3:1の比率で)トランスフェクションした。
【0268】
WB分析のために割り当てられるウエルにおいて、培地を無血清培地により24時間後に取り替え、培地を48時間後に集めた。一過性トランスフェクションによる細胞を、抗Fc抗体を使用するウエスタンブロット分析によって分析した。細胞は、BKT−P2−FC(配列番号158)およびBKT−P46−FC(配列番号159)と称される所望のポリペプチドを発現することが見出された(データは示されず)。
【0269】
他方のウエルにおいて、培地を、10%FCS(ウシ胎児血清)を含有するDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)により24時間後に取り替え、48時間後、細胞をトリプシン処理し、安定なクローンを得るための選抜培地(10%のFCSおよび5μg/mlのピューロマイシンを含有するDMEM)を含有するT75フラスコに移した。
【0270】
ピューロマイシン選抜を生き延びた細胞集団(安定なクローン)を増殖させ、細胞集団の培地を、所望されるポリペプチドの発現を確認するために、本明細書中上記に記載されるようにウエスタンブロットによって分析した。
【0271】
図2に示されるように、所望されるBKT−P2−FCポリペプチドおよびBKT−P46−FCポリペプチドが、試験された細胞培養物のすべてにおいて発現された。
【0272】
加えて、上記プールからの上清を、Fcフラグメントに対するELISAによって試験した。結果は、試験された培養物のすべてにおける所望されるBKT−P2−FCポリペプチドまたはBKT−P46−FCポリペプチドの発現を示した(データは示されず)。
【0273】
細胞の正体を確認するために、ゲノムPCRを行った。結果は、正しい配列が細胞ゲノムに組み込まれたことを示した(データは示されず)。
【0274】
所望されるポリペプチドを発現するそれぞれのプールのいくつかのアリコートを液体窒素において凍結保存した。数日後、細胞生存性を確認するために、それぞれのストックからの1つのアンプルを解凍した。
【0275】
その後、BKT−P2−FCポリペプチド(配列番号158)およびBKT−P46−FCポリペプチド(配列番号159)を、懸濁状態で成長させられる哺乳動物培養で産生させた。トランスフェクション細胞のT175フラスコの1つを、選抜用抗生物質(5μg/mlのピューロマイシン)を含有する10%血清補充培地で維持し、37℃で5%COにおいてインキュベーションした。トリプシン処理後、細胞を、4mMのグルタミンおよび選抜用抗生物質(1μg/mlのピューロマイシン)が補充される無血清培地(EX−CELL(登録商標)293培地)に移し、37℃で5%COにおいてフラスコでさらにインキュベーションした。3日後、細胞を、125回転/分の撹拌速度による37℃での振とうフラスコに移した。細胞密度が2.0〜3.5×10細胞/mlに達したとき、培養体積を、2つのスピナーフラスコにおいて4リットルに至るまで連続的に希釈することによって増大させた。200mlの培養物を含有する1つの振とうフラスコを予備として保った。
【0276】
4日の産生期の後、2つのスピナーフラスコの培養液は、91%の生存性で3.7×10細胞/mlに、92%の生存性で4.0×10細胞/mlにそれぞれ達した。2つのスピナーフラスコからの培地および振とうフラスコからの200mlを遠心分離(5000回転/分、15分)によって集めた。合計で3.5リットルを採取し、0.22μmのフィルターでろ過し、−80℃で保った(2つの1.5mlサンプルを取った)。ポリペプチド(配列番号158または配列番号159)をプロテインAカラムでさらに精製した。
【0277】
実施例2
ケモカインに対するポリペプチドの親和性
実施例1に記載されるポリペプチドのケモカインに対する親和性を、材料および方法の節に記載されるように表面プラズモン共鳴(SPR)によって求めた。結果が下記の表3にまとめられる。
【0278】
表3に示されるように、ポリペプチドが、感知できる程度に、I−TAC、IP−10、MIG、MCP−1、エオタキシンおよびRANTESのケモカインのそれぞれに結合した。

【0279】
実施例3
ポリペプチドのインビトロ活性
本明細書中上記で記載されるインビトロ接着アッセイを使用して、VCAM−1へのT細胞の接着に対する、ケモカイン結合ペプチドのBKT−P2(配列番号101)およびBKT−P46(配列番号76)の影響を、上記ケモカイン結合ペプチド配列の一方を含む実施例1に記載されるポリペプチドの影響と比較した。VCAM−1へのT細胞の接着を阻害する上記のペプチドおよびポリペプチドの能力が下記の表4にまとめられる。

【0280】
表4、ならびに、図3A、図3Bおよび図3Cに示されるように、ペプチドBKT−P2は、IP−10、I−TAC、MCP−1、RANTESおよびエオタキシンによって誘導されるT細胞接着を阻害したが、MIGによって誘導される接着は阻害しなかった。
【0281】
表4、ならびに、図4A、図4Bおよび図4Cに示されるように、ポリペプチドBKT−P2−FCは、MIGによって誘導されるT細胞接着を、IP−10、I−TAC、MCP−1、RANTESおよびエオタキシンによって誘導される接着と同様に阻害した。
【0282】
表4においてさらに示されるように、ペプチドBKT−P46は、I−TAC、MIG、MCP−1およびRANTESによって誘導されるT細胞接着を阻害したが、エオタキシンによって誘導される接着は阻害せず、これに対して、ポリペプチドBKT−P46−FCは、エオタキシンによって誘導されるT細胞接着を、I−TAC、MIG、MCP−1およびRANTESによるのと同様に阻害した。
【0283】
上記結果は、ポリペプチドが、ケモカイン活性を調節する対応するケモカイン結合ペプチドの能力と比較された場合、ケモカイン活性を調節する高まった能力を有することを示している。これは、ペプチドと比較してポリペプチドの長くなった寿命および高まった安定性の結果であるかもしれず、ならびに/または、それらの三次的立体配座における変化のためであるかもしれない。
【0284】
実施例4
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に対するポリペプチドのインビボ影響
実施例1に記載されるBKT−P2−FCポリペプチドおよびBKT−P46−FCポリペプチドの脳炎症に対する影響を、材料および方法の節に記載されるようなインビボでの実験的自己免疫性脳脊髄炎モデルを使用して試験し、スコア化した。
【0285】
図5Aおよび図5Bに示されるように、BKT−P46−FCポリペプチドはPLP誘導EAEの平均臨床スコアおよび累積臨床スコアを(55日目までの)実験継続期間にわたってかなり低下させた。
【0286】
実験の37日目において、13匹中6匹のコントロールマウスが、少なくとも2のEAE臨床スコアを有し、これに対して、BKT−P46−FCポリペプチドを受けた10匹すべてのマウスが0のEAE臨床スコアを有した。
【0287】
加えて、図6Aおよび図6Bに示されるように、BKT−P46−FCポリペプチドおよびBKT−P2−FCポリペプチドの両方がPLP誘導EAEの平均臨床スコアおよび累積臨床スコアを(33日目までの)実験継続期間にわたって低下させた。
【0288】
実験の27日目において、10匹中8匹のコントロールマウスが、少なくとも2のEAE臨床スコアを有し、これに対して、BKT−P2−FCポリペプチドを受けた10匹中9匹のマウス、および、BKT−P46−FCポリペプチドを受けた10匹中8匹のマウスが、0のEAE臨床スコアを有した。
【0289】
同様に、図7に示されるように、BKT−P46−FCポリペプチドおよびBKT−P2−FCポリペプチドの両方がMOG誘導EAEの平均臨床スコアを(55日目までの)実験継続期間にわたって低下させた。
【0290】
これらの結果は、本ポリペプチドが、マウスの脳における炎症性応答、例えば、EAE(多発性硬化症のモデル)の炎症性応答などを阻害することに効果的であることを示している。
【0291】
実施例5
関節炎に対するポリペプチドのインビボ影響
実施例1に記載されるBKT−P2−FCポリペプチドの関節炎に対する影響を、インビボでのマウス誘導関節炎モデルを使用して試験した。アッセイを、Coelho他[Arthritis Rheum、2008、58:2329〜2337]、Grespan他[Arthritis Rheum、2008、58:2030〜2040]およびLemos他[PNAS、2009、106:5954〜5959]に記載されるように行った。
【0292】
0日目に、マウスを、生理的食塩水と、等体積のフロイント完全アジュバント(CFA)とのエマルションの100μlにおける500μgのメチル化ウシ血清アルブミン(mBSA)により尾の基部において皮内に免疫化した。11日目に、BKT−P2−FCポリペプチドを2mg/kgの用量で投与した。24時間後、抗原攻撃をマウスにおいて行った。それぞれのマウスが、(10μlの殺菌された生理的食塩水における)10μgのmBSAの注射を左膝関節において受けた。ポリペプチド投与後48時間で、マウスを殺し、膝関節腔をPBSにより洗浄し、組織中の白血球の数を、蛍光活性化細胞分取(FACS)を使用して白血球を計数することによって求めた。
【0293】
図8Aおよび図8Bに示されるように、BKT−P2−FCポリペプチドは、関節炎の膝関節腔における好中球の数および単球の数をかなり減少させた。
【0294】
これらの結果は、本ポリペプチドが、炎症性応答、例えば、関節リウマチの炎症性応答などを阻害することに効果的であることを示している。
【0295】
実施例6
遅延型過敏症(DTH)に対するポリペプチドのインビボ影響
実施例1に記載されるBKT−P2−FCポリペプチドおよびBKT−P46−FCポリペプチドの免疫応答に対する影響を、インビボでの遅延型過敏症マウスモデルを使用してさらに試験した。
【0296】
マウス(8週齢〜10週齢のオスのC57BL/6マウス)を、0日目に、生理的食塩水と、等体積のフロイント完全アジュバントとのエマルションの100μlにおける500μgのメチル化ウシ血清アルブミン(mBSA)により尾の基部において皮内に免疫化した。12日後、抗原攻撃をマウスにおいて行った。それぞれのマウスが、Coelho他[Arthritis Rheum、2008、58:2329〜2337]およびHealy他[J Immunol、2006、177:1886〜1893]に記載されるように、(10μlの殺菌された生理的食塩水における)10μgのmBSAの注射を左膝関節において受けた。一部のマウスにおいて、BKT−P2−FC(50μg/マウス)を攻撃の24時間前に静脈内注射した。PBSの擬似免疫化により攻撃されたナイーブマウスがコントロールマウスとして役立った。抗原攻撃後24時間でマウスを殺した。
【0297】
図9に示されるように、上記ポリペプチドの両方が遅延型過敏症を阻害し、BKT−P2−FCがBKT−P46−FCよりも強力であった。
【0298】
これらの結果は、本ポリペプチドが、遅延型過敏症の炎症性応答を阻害することに効果的であることを示している。
【0299】
実施例7
ポリペプチドの薬物動態学
マウスにおけるポリペプチドの薬物動態学を、50μg/マウスのBKT−P46−FCポリペプチド(配列番号159)またはBKT−P2−FCポリペプチド(配列番号158)が静脈内注射されたC57BL/6マウスにおいて求めた。
【0300】
マウスを、注射後2時間、24時間、5日および11日で採血し、血清を取り出した。血清中のポリペプチドのレベルを、ヒト総IgG ELISAキット(ICL)を製造者の説明書に従って使用して調べた。
【0301】
ポリペプチドが、注射後11日においてさえ、血液中に検出された。
【0302】
これらの結果は、本ポリペプチドがインビボにおける相当の安定性を有することを示している。
【0303】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0304】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。
【0305】






【配列表フリーテキスト】
【0306】
配列番号1〜157は、合成ペプチドの配列である。
配列番号158は、BKT−P2−FCポリペプチドの配列である。
配列番号159は、BKT−P46−FCポリペプチドの配列である。
配列番号160は、ヒトIgG1 Fc (Fc N297A)の配列である。
配列番号161は、IL6シグナルペプチドの配列である。
配列番号162は、ヘキサペプチドスペーサーの配列である。
配列番号163は、BKT−P2ペプチドのDNAコーディング配列である。
配列番号164は、BKT−P46ペプチドのDNAコーディング配列である。
配列番号165は、ヒトIgG1 Fc (Fc N297A)のDNAコーディング配列である。
配列番号166は、IL6シグナルペプチドのDNAコーディング配列である。
配列番号167は、スペーサーのDNAコーディング配列である。
配列番号168は、IL6−P2−Fc N297AのDNAコーディング配列である。
配列番号169は、IL6−P46−Fc N297AのDNAコーディング配列である。
配列番号170〜174は、一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fcドメインまたはそのフラグメントに結合される少なくとも1つのケモカイン結合ペプチドを含む単離されたポリペプチド。
【請求項2】
リンカーをさらに含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記リンカーはアミノ酸リンカーである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記Fcドメインは、IgGのFcドメイン、IgAのFcドメイン、IgDのFcドメイン、IgEのFcドメインおよびIgMのFcドメインからなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記ケモカイン結合ペプチドは、前記FcドメインまたはそのフラグメントのN末端に結合される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記ケモカイン結合ペプチドは、前記FcドメインまたはそのフラグメントのC末端に結合される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記リンカーは4個〜10個のアミノ酸から構成される、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記リンカーはヘキサペプチドである、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記リンカーは、配列番号162に示されるペプチドである、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項10】
シグナルペプチドをさらに含む、請求項1〜9のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記シグナルペプチドはポリペプチドのN末端に存在する、請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
下記の式を有する、請求項10に記載のポリペプチド:
W−X−Y−Z
式中、
Wはシグナルペプチドである;
Xは前記ケモカイン結合ペプチドである;
Yは前記リンカーである;および
Zは前記Fcドメインまたはそのフラグメントである。
【請求項13】
前記ケモカイン結合ペプチドは長さが10アミノ酸〜20アミノ酸である、請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記ケモカイン結合ペプチドは長さが12アミノ酸〜13アミノ酸である、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
前記ケモカイン結合ペプチドは、I−TAC、IP−10、MIG、MCP−1、エオタキシンおよびRANTESからなる群から選択される少なくとも1つのケモカインに結合できることによって特徴づけられる、請求項1〜14のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項16】
前記ケモカイン結合ペプチドは、配列番号1〜配列番号157からなる群から選択される、請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記ケモカイン結合ペプチドは、BKT−P2(配列番号101)およびBKT−P46(配列番号76)からなる群から選択される、請求項16に記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記ケモカイン結合ペプチドは、配列番号1〜配列番号157からなる群から選択されるアミノ酸配列に対する少なくとも90%の配列相同性を示すアミノ酸配列を有する、請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項19】
前記配列相同性は少なくとも95%である、請求項18に記載のポリペプチド。
【請求項20】
前記シグナルペプチドはIL−6のシグナルペプチドを含む、請求項10〜12のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項21】
前記シグナルペプチドは配列番号161を有する、請求項20に記載のポリペプチド。
【請求項22】
前記シグナルペプチドは、配列番号161に対する少なくとも90%の配列相同性を示すアミノ酸配列を有する、請求項20に記載のポリペプチド。
【請求項23】
前記FcドメインはヒトFcドメインである、請求項1〜22のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項24】
前記FcドメインはIgGのFcドメインである、請求項1〜23のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項25】
前記FcドメインはIgG1のドメインである、請求項24に記載のポリペプチド。
【請求項26】
前記Fcドメインまたはそのフラグメントはグリコシル化されていない、請求項1〜25のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項27】
前記Fcドメインまたはそのフラグメントは配列番号160を有する、請求項26に記載のポリペプチド。
【請求項28】
少なくとも1つのケモカインがケモカイン受容体に結合することを阻害できることによって特徴づけられる、請求項1〜27のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項29】
少なくとも1つのケモカインがケモカイン受容体に結合することを強化できることによって特徴づけられる、請求項1〜27のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項30】
前記少なくとも1つのケモカインは、I−TAC、IP−10、MIG、MCP−1、エオタキシンおよびRANTESからなる群から選択される、請求項28または29に記載のポリペプチド。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれかに記載のポリペプチドと、医薬的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項32】
包装材に詰められ、ケモカインの生物学的影響を調節することにおける使用のために前記包装材の内部または表面において特定される、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
包装材に詰められ、炎症、アレルギー、遅延型過敏症、最適でない免疫応答、自己免疫反応、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、同種移植片拒絶、糖尿病、敗血症、ガン、悪性細胞成長、細菌感染症、ウイルス感染症、関節炎、大腸炎、乾癬、アテローム性動脈硬化、高血圧、重症筋無力症および再灌流虚血からなる群から選択される状態を処置することにおける使用のために包装材の内部または表面において特定される、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項34】
静脈内投与、経口投与、皮下投与、局所投与および/または鼻腔内投与のために配合される、請求項31〜33のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項35】
ケモカインの生物学的影響を調節するための医薬品の製造における請求項1〜30のいずれかに記載のポリペプチドの使用。
【請求項36】
前記医薬品は、静脈内投与、経口投与、皮下投与、局所投与および/または鼻腔内投与のために配合される、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
ケモカインの生物学的影響を調節する方法であって、治療効果的な量の請求項1〜30のいずれかに記載のポリペプチドをその必要性のある対象に投与し、それにより、ケモカインの生物学的影響を調節することを含む方法。
【請求項38】
前記投与することは、静脈内投与、経口投与、皮下投与、局所投与および/または鼻腔内投与を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記調節することは、阻害することを含む、請求項32、35〜37のいずれかに記載の医薬組成物、ポリペプチド、使用または方法。
【請求項40】
前記ケモカインは、I−TAC、IP−10、MIG、MCP−1、エオタキシンおよびRANTESからなる群から選択される、請求項32、35〜39のいずれかに記載の医薬組成物、ポリペプチド、使用または方法。
【請求項41】
前記生物学的影響は、炎症性影響、細胞遊走、腫瘍成長およびガン転移からなる群から選択される、請求項32、35〜40のいずれかに記載の医薬組成物、ポリペプチド、使用または方法。
【請求項42】
炎症、アレルギー、遅延型過敏症、最適でない免疫応答、異常な細胞遊走、自己免疫反応、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、同種移植片拒絶、糖尿病、敗血症、ガン、悪性細胞成長、細菌感染症、ウイルス感染症、関節炎、大腸炎、乾癬、アテローム性動脈硬化、高血圧、重症筋無力症および再灌流虚血からなる群から選択される状態を処置するためのものである、請求項1〜30のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項43】
炎症、アレルギー、遅延型過敏症、最適でない免疫応答、異常な細胞遊走、自己免疫反応、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、同種移植片拒絶、糖尿病、敗血症、ガン、悪性細胞成長、細菌感染症、ウイルス感染症、関節炎、大腸炎、乾癬、アテローム性動脈硬化、高血圧、重症筋無力症および再灌流虚血からなる群から選択される状態を処置するための医薬品の製造における請求項1〜30のいずれかに記載のポリペプチドの使用。
【請求項44】
前記医薬品は、静脈内投与、経口投与、皮下投与、局所投与および/または鼻腔内投与のために配合される、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
炎症、アレルギー、遅延型過敏症、最適でない免疫応答、異常な細胞遊走、自己免疫反応、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、同種移植片拒絶、糖尿病、敗血症、ガン、悪性細胞成長、細菌感染症、ウイルス感染症、関節炎、大腸炎、乾癬、アテローム性動脈硬化、高血圧、重症筋無力症および再灌流虚血からなる群から選択される状態を処置する方法であって、請求項1〜30のいずれかに記載のポリペプチドをその必要性のある対象に投与し、それにより、ケモカインの生物学的影響を調節および/または阻害することを含む方法。
【請求項46】
前記投与することは、静脈内投与、経口投与、皮下投与、局所投与および/または鼻腔内投与を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
請求項1〜30のいずれかに記載のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項48】
配列番号168および配列番号169からなる群から選択される核酸配列を有する、請求項47に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項49】
請求項47に記載のポリヌクレオチドを含む核酸構築物。
【請求項50】
請求項49に記載の核酸構築物を含む細胞。
【請求項51】
ポリペプチドを作製する方法であって、請求項50に記載の細胞を培養すること、および、ポリペプチドを単離することを含む方法。
【請求項52】
水溶性ポリマーに結合されている請求項1〜30のいずれかに記載のポリペプチドを含むコンジュゲート。
【請求項53】
前記水溶性ポリマーはポリエチレングリコールである、請求項52に記載のコンジュゲート。

【図9】
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【図1A−1B】
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【図2】
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【図3A−3C】
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【図4A−4C】
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【図5A−5B】
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【図6A−6B】
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【図7】
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【図8A−8B】
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【公表番号】特表2012−529906(P2012−529906A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515627(P2012−515627)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000473
【国際公開番号】WO2010/146584
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511304383)バイオカイン セラピューティックス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】