説明

自己注射デバイス

本体内に配置され、薬剤を含むリザーバ(164、176)と、患者の皮膚を貫通し、リザーバ(164、176)と患者との間に薬剤の経路を形成する注射針(152)とを有する本体を含む薬物供給デバイス(100)。このデバイス(100)は、注射針(152)を選択的に覆う針カバー(114)と、デバイスを患者に選択的に接着する接着剤(264)と、接着剤(264)の患者側を選択的に覆う解放ライナ(500)と、針カバー(114)と解放ライナ(500)を連結し、それによって、針カバー(114)および解放ライナ(500)の一方がデバイス(100)から取り外すことにより針カバー(114)および解放ライナ(500)の他方がデバイスから取り外されるようにする連結手段(112、520、512、508、524)も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、患者にとっての利便性、使いやすさ、および効率が改善された物質供給デバイスに関する。本発明は、一般に、様々な物質または薬剤を患者に供給するのに使用できるパッチ状の自給式物質注入デバイスまたは自給式自己注射デバイスに関する。より詳細には、本発明は、針カバーおよび接着剤解放ライナを一体的に取り外すことのできるパッチ状の注入デバイスまたは自己注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病などの疾病に罹患している人など、多くの人が、日常的なインスリン注入など何らかの形態の注入療法を使用し、厳密に調整された血糖値を維持している。現在、インスリン注入治療の例には、日常的なインスリン療法の2つの基本的な形態がある。第1の形態には、注射器およびインスリンペンが含まれる。これらのデバイスは、使いやすく、比較的低コストであるが、通常1日当たり3回から4回の注射ごとに針を刺す必要がある。第2の形態には注入ポンプ療法が含まれ、この場合、約3年使用できる高価なポンプを購入する必要がある。コストが高く(注射器療法の日常的なコストの概ね8倍から10倍)、ポンプの寿命が限られていることが、この種の療法の難点である。インスリンポンプは、比較的旧式の技術であり、面倒である。さらに、生活様式の点から、ポンプを患者の腹部の供給部位と連結するチューブ(「注入セット」と呼ばれる)は非常に不便であり、ポンプはかなり重く、ポンプを持ち運ぶのは困難である。しかし、患者からすれば、ポンプを使用したことのある患者の圧倒的多数がポンプを一生使用することを望む。これは、注入ポンプは、注射器およびペンよりも複雑であるが、インスリンを連続的に注入し、厳密に投与するのを可能にし、かつ投与スケジュールをプログラム可能にする利点をもたらすからである。このため、血糖値がより厳密に調整され、健康であることの感覚が改善される。
【0003】
ポンプ療法に対する関心が高まっているため、ポンプ療法が改善されており、日常的な注射の回数が増大している。この注入の例および同様の注入の例において、このような高い関心に十分に応えるには、日常的な注射療法の最良の特徴(低コストおよび使いやすさ)とインスリンポンプの最良の特徴(連続的な注入および厳密な投与)を組み合わせ、また、各々の両方の欠点を回避するインスリン供給形態またはインスリン注入形態が必要である。
【0004】
低コストで使い勝手がよい持ち運び可能または「装着可能な」薬物注入デバイスを提供するいくつかの試みがなされている。このようなデバイスのいくつかは、部分的または全体的に使い捨てになっている。理論的には、この種のデバイスは、コストおよび不便さを伴わずに注入ポンプの利点の多くをもたらすことができる。しかし、残念なことに、このようなデバイスの多くは、(使用される注射針の太さおよび/または長さによる)患者の不快感、供給される物質と注入デバイスを構成するのに使用される材料との適合性および相互作用、場合によっては、患者が適切に作動させなかった場合の誤動作(たとえば、デバイスの作動が早すぎた場合の「ウェット」注射)を含む欠点を伴う。特に短くかつ/または微細な注射針を使用するときには、針を製造し、針の貫通深さを調節するのも困難である。使用済みのデバイスに接触した人が針を刺して怪我をする可能性があることも問題である。
【0005】
したがって、製造が簡単であり、インスリン用途においても非インスリン用途においても使い勝手が向上した、インスリン用注入ポンプなど現在の注入デバイスに対する代替的な注入デバイスが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6569143号明細書
【特許文献2】国際公開第02/083214号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Biochem Biophys Acta, 1989,67,1007; Rubins et al., Microbial Pathogenesis, 25,337-342
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、皮膚に都合よく装着することができ、一方、所望の物質を注入するのを可能にし、かつ1本または複数の微細針を使用することによって不快感を最低限に抑えることのできるパッチ状の注入デバイスまたは自己注射デバイスを提供することである。本発明の追加的な態様は、そのような注入デバイスまたは自己注射デバイスの針カバーおよび接着剤解放ライナの取り外しが単一の動作として一体化することができるそのような注入デバイスまたは自己注射デバイスを提供することである。
【0009】
本発明の前述の態様および/または他の態様は、本体内に配置され、薬剤を含むリザーバと、患者の皮膚を貫通し、リザーバと患者との間に薬剤の経路を形成する注射針とを有する本体を含む薬物供給デバイスを提供することによって実現される。このデバイスは、注射針を選択的に覆う針カバーと、デバイスを患者に選択的に接着する接着剤と、接着剤の患者側を選択的に覆う解放ライナと、針カバーと解放ライナを連結し、それによって、針カバーおよび解放ライナの一方をデバイスから取り外すことにより針カバーおよび解放ライナの他方がデバイスから取り外されるようにする連結手段も含む。
【0010】
本発明の前述の態様および/または他の態様は、患者の皮膚を貫通する注射針と、デバイスを患者に選択的に接着する接着剤と、接着剤の患者側を選択的に覆い、開口部を有する解放ライナと、注射針を選択的に覆う針カバーとを含む薬物供給デバイスを提供することによっても実現される。針カバーは、解放ライナ開口部よりも大きいフランジを有する針被覆部と、フランジに隣接して位置し、解放ライナ開口部よりも小さい中央部と、中央部に隣接して位置し、解放ライナ開口部よりも大きい部分を有し、解放ライナを中央部に保持する保持部とを含む。
【0011】
本発明の追加的なかつ/または他の態様および利点は、一部が以下の説明に記載されており、一部が説明から明らかになるか、または一部を、本発明を実施することによって知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の各実施形態の上記の態様および/または他の態様は、以下の詳細な説明を添付の図面に関連して検討することによってより容易に理解されよう。
【0013】
【図1】作動させる前の前作動状態におけるパッチ状の注入デバイスまたは自己注射デバイスの実施形態の斜視図である。
【図2】前作動状態における図1の注入デバイスの部分分解図である。
【図3】細部を示すようにアクティベータボタンが回転された前作動状態における図1の注入デバイスの部分分解図である。
【図4】前作動状態における図1の注入デバイスのより完全な分解図である。
【図5】前作動状態における図1の注入デバイスの断面図である。
【図6】アクティベータボタンが回転された前作動状態における図1の注入デバイスの断面図である。
【図7】安全機構の設置時の図1の注入デバイスの部分分解図である。
【図8】作動後の図1の注入デバイスの部分分解図である。
【図9】作動後の図1の注入デバイスのより完全な分解図である。
【図10】作動後の図1の作動デバイスの断面図である。
【図11】安全機構の展開後の図1の注入デバイスの部分分解図である。
【図12】安全機構の展開後の図1の注入デバイスの断面図である。
【図13】安全機構の底面図である。
【図14】安全機構の構造をさらに示す図である。
【図15A】図1の注入デバイスにおける投与終了インジケータおよびその動作を示す図である。
【図15B】図1の注入デバイスにおける投与終了インジケータおよびその動作を示す図である。
【図15C】図1の注入デバイスにおける投与終了インジケータおよびその動作を示す図である。
【図15D】図1の注入デバイスにおける投与終了インジケータおよびその動作を示す図である。
【図16】注入ポートを有する注入デバイスの実施形態を示す図である。
【図17】図1の注入デバイス内の接着剤パッドおよび接着剤解放ライナの実施形態を示す図である。
【図18】図1の注入デバイス内の針カバーの針被覆部を示す図である。
【図19】図18の針被覆部を含む針カバーの実施形態を示す図である。
【図20A】図18の針被覆部を含む図1の注入デバイス内の針カバーの実施形態を示す図である。
【図20B】図18の針被覆部を含む図1の注入デバイス内の針カバーの実施形態を示す図である。
【図20C】図18の針被覆部を含む図1の注入デバイス内の針カバーの実施形態を示す図である。
【図21A】図18の針被覆部を含む図1の注入デバイス内の針カバーの実施形態を示す図である。
【図21B】図18の針被覆部を含む図1の注入デバイス内の針カバーの実施形態を示す図である。
【図22A】図1の注入デバイス内の針カバーの実施形態を示す図である。
【図22B】図1の注入デバイス内の針カバーの実施形態を示す図である。
【図22C】図1の注入デバイス内の針カバーの実施形態を示す図である。
【図22D】図1の注入デバイス内の針カバーの実施形態を示す図である。
【図23A】図1の注入デバイス内の針カバーの実施形態を示す図である。
【図23B】図1の注入デバイス内の針カバーの実施形態を示す図である。
【図24】図1の注入デバイス内の針カバーの実施形態を示す図である。
【図25A】図1の注入デバイス内の針カバーの実施形態を示す図である。
【図25B】図1の注入デバイス内の針カバーの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の各実施形態を詳しく参照する。実施例が添付の図面に示されており、図面全体にわたって同じ参照符号は同じ部材を示す。説明する各実施形態は、各図面を参照することによって本発明を例示している。
【0015】
以下に説明する本発明の各実施形態を好都合なパッチ状の注入デバイスまたは自己注射デバイス100として使用して液体の薬物または薬剤のような事前に測定された用量の物質をある期間にわたってまたは一度に患者に供給することができる。このデバイスは、事前に充填された状態、すなわち、薬物または薬剤がデバイスリザーバ内に入っている状態でエンドユーザに供給されることが好ましい。本明細書で説明するパッチ状の注入デバイスまたは自己注射デバイス100(たとえば、図1に示されている)は患者および/または介護者によって使用することができるが、便宜上、以下ではデバイスの使用者を「患者」と呼ぶ。また、便宜上、「垂直」および「水平」ならびに「頂部」および「底部」などの用語は、水平面上に配置された注入デバイス100に対する相対的な方向を表すのに使用される。しかし、注入デバイス100がそのような向きに限定されず、かつ注入デバイス100を任意の向きで使用してよいことを理解されたい。また、用語「注入デバイス」および「自己注射デバイス」を使用して本発明を具現化するデバイスを表す代替的な使用法は、限定的な意味の使用法ではない。自己注射機能を有さない注入デバイスも、連続的な注入を実施しない自己注射デバイスと同様に、本発明の範囲内である。制限としてではなく、便宜上、以下の説明では、用語「注入デバイス」を使用する。
【0016】
図1のパッチ状の注入デバイス100は、自給式であり、(以下に詳しく説明するように)注入デバイス100の底面上に配置された接着剤によって患者の皮膚表面に取り付けられる。患者によって適切に位置決めされかつ作動されると、デバイス内の可撓性のリザーバ上の解放されたばねの圧力を使用して1本または複数の患者針を通じ針マニフォルド(たとえば、微細針)を介してリザーバの中身を空にすることができる。次いで、リザーバ内の物質は、皮膚に刺された微細針によって患者の皮膚を通して供給される。ばねが、機械的なデバイス、電気的なデバイス、および/または化学的なデバイスであってもよい異なる種類の貯蔵エネルギーデバイスで置き換えられる他の実施形態が考えられることが理解されよう。
【0017】
当業者には、本明細書において開示されるパッチ状の注入デバイス100を組み立てて使用する多数の方法があることが理解されよう。図面および以下の説明において示される各実施形態を参照するが、本明細書において開示される各実施形態が、開示される発明によって包含される様々な代替的な構成および実施形態を網羅するものではない。開示される各実施形態では、デバイスを注入デバイスと呼ぶが、デバイスは、通常の注入デバイスによって一般に実現されるよりもずっと速い(ボーラス)速度で物質を注入することもできる。たとえば、内容物を数秒程度の短い期間だけ供給することも、数日程度の長い期間にわたって供給することもできる。
【0018】
図1から図12に示されているデバイスの実施形態では、デバイスの作動および付勢が単一の多機能/ステッププロセスにおいて実施される、パッチ状の注入デバイス100の押しボタン構成が示されている。図1は、前作動状態の注入デバイス100の組み立て済み実施形態を示している。図2〜図6は、前作動状態における注入デバイス100の部分拡大断面図を示し、図7は、安全の設置時の注入デバイス100の部分分解図を示し、図8〜図10は、作動後の注入デバイス100の分解断面図を示し、図11および図12は、安全機構の展開後の注入デバイス100の分解断面図を示している。注入デバイス100は、前作動状態(たとえば、図1、図2、および図5に示されている)と作動状態または発射状態(たとえば、図8〜図10に示されている)と引き込み状態または安全状態(たとえば、図11および図12に示されている)との間で切り替わって動作するように構成されている。
【0019】
図1に示されているように、パッチ状の注入デバイス100の実施形態は、底部エンクロージャ104と、安全機構108と、針カバー114の可撓性の針被覆部112と、頂部エンクロージャ116と、リザーバ部分組立体120と、投与終了インジケータ(EDI)124と、患者接触面132を含むアクティベータボタン128とを含む。また、図2〜図6に示されているように、注入デバイス100は、ロータまたは作動リング136と、加圧ばね140と、ドーム状金属プランジャ144と、駆動ばね148も含む。
【0020】
可撓性の針被覆部112は、少なくとも1本の針152(以下に詳しく説明する)を保護し、滅菌バリアを形成することによって患者およびデバイスの安全を確保する。針被覆部112は、デバイス製造時に針152を保護し、使用前に患者を保護し、かつ取り外しの前の任意の時点において滅菌バリアを形成する。一実施形態によれば、針被覆部112には、少なくとも1本の針152が配置された針マニフォルドが押しばめによって取り付けられる。また、一実施形態によれば、安全機構108の針開口部156(以下に詳しく説明する)は、針被覆部112の周縁に厳密に対応するように形作られている。
【0021】
たとえば、図2、図3、図5、図6、図8、図10、および図12に示されているように、リザーバ部分組立体120は、リザーバ160と、リザーバドームシール164と、弁168と、少なくとも1本の針152と、弁168と針152との間に配置され、間に流路を形成する少なくとも1つの流路172(たとえば、図8参照)とを含む。リザーバ160は、ドーム176を含む。また、リザーバ部分組立体120は、少なくとも1本の針152を選択的に覆う取り外し可能な針被覆部112を含む。一実施形態によれば、リザーバ部分組立体120は、流路172を覆うリザーバアームシール180も含む。針152は、針マニフォルドと複数の微細針152とを含むことが好ましい。
【0022】
リザーバ部分組立体120のリザーバドームシール(可撓性シール)164は、たとえば図5に示されているように、プランジャ144とドーム176との間に配置されている。注入デバイス100用のリザーバ内容物(たとえば、薬剤材料)は、リザーバドームシール164とドーム176との間の空間内に配置されている。リザーバドームシール164とドーム176とそれらの間の空間との組み合わせがリザーバ160を形成する。ドーム176は、リザーバ内容物が見えるように透明であることが好ましい。リザーバドームシール164は、金属被覆膜または他の同様の物質のような非膨張性の材料または積層体によって形成されてよい。たとえば、リザーバドームシール164に使用できる考えられる1つの可撓性積層膜は、第1のポリエチレン層と、当業者にはバリア特性に基づいて選択される第3の金属層用の付着機構を形成することが知られている第2の化学物質層と、ポリエステルおよび/またはナイロンを含む第4の層とを含む。金属で被覆されるかまたは金属化された膜を剛性部(たとえば、ドーム176)と一緒に利用することによって、リザーバ160のバリア特性が改善され、それによって、内部に含まれる内容物の保存可能期間が延びるかまたは改善される。たとえば、リザーバ内容物がインスリンを含む場合、リザーバ160の主要な接触材料には、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、環状オレフィンコポリマー(COC)、およびテフロン(登録商標)が含まれる。以下に詳しく説明するように、リザーバ内容物の残りの流路内の主要な接触材料には、COCおよびLLDPEと、熱可塑性エラストマ(TPE)、医療用アクリル、ステンレススチール、および針接着剤(たとえば、紫外線硬化接着剤)を含めてもよい。押し出し成形されてリザーバ160の内容物に接触したままになるそのような材料は、ISO10−993および他の適用可能な生体適合性試験に合格することが好ましい。
【0023】
リザーバ部分組立体120は、内容物に悪影響を与えずに適用可能な調整された環境内にリザーバ内容物の所定の保存可能期間にわたって貯蔵することができ、かつ様々な環境条件に適用できることがさらに好ましい。また、リザーバ部分組立体120の構成部材によって形成されるバリアは、所望の保存可能期間を満たすうえで許容される速度を超えた速度で気体、液体、および/または固体の材料を内容物に対して出し入れできないようにする。上記に示した実施形態では、リザーバ材料は、約34°F(1.1℃)から120°F(48.9℃)の温度範囲で貯蔵しかつ動作させることができ、2年以上の保存可能期間を有する。
【0024】
リザーバ部分組立体120は、安定性要件を満たすだけでなく、30psi(207kPa)のサンプルを漏れなしで20分間保持するような、任意の回数の漏れ試験に首尾よく合格することによって動作をさらに保証することができる。リザーバの構成による充填、貯蔵、および供給に関する他の利点には、以下に詳しく説明する最小限のヘッドスペースおよび適合性が含まれる。
【0025】
一実施形態では、リザーバ160は、充填される前に排気される。リザーバ160を充填する前に排気し、ドーム176内にわずかなくぼみしか有さないことによって、リザーバ160内のヘッドスペースおよび余分な廃棄物を最低限に抑えることができる。また、リザーバの形状を使用される付勢機構(たとえば、加圧ばね140およびプランジャ144)の種類に適応するように構成することができる。また、排気された可撓性のフランジを充填時に使用すると、充填後のリザーバ160内の空気または気泡が最低限に抑えられる。可撓性のリザーバ160を使用することは、注入デバイス100が外部圧力または温度の変動を受け、内部リザーバ圧力が増大する可能性があるときにも非常に有用である。そのような場合、可撓性のリザーバ160は、リザーバの内容物と一緒に膨張し収縮し、それによって膨張力および収縮力による漏れが発生するが防止される。
【0026】
リザーバ160の他の特徴には、充填時、または患者によって使用時に、自動化された微粒子検査を行うことができることが含まれる。ドーム176のような1つまたは複数のリザーババリアを、リザーバ内に含まれる物質の検査を可能にする透過的で透明なプラスチック材料によって成形することができる。透過的で透明なプラスチック材料は、透過性および透明度が高く、抽出物が少なく、リザーバ160内に含まれる物質との生体適合性を特徴とする環状オレフィンポリマーであることが好ましい。適切な材料は、「BD CCP Resin」の商標でルイスビルのZeon Chemicalsから市販されており、アメリカ食品医薬品局およびDMF第16368号によるリストに掲載されている。このような用途において、リザーバ160では、検査を妨害する可能性のある機構が最小限に抑えられる(すなわち、検査中に回転することができる)。
【0027】
流路アーム172は、弁168から針マニフォルドまたは微細針152まで延びる少なくとも1つの孤状アームの形で設けられている。孤状アームには溝174(たとえば、図2参照)が形成されている。弁168と針マニフォルドまたは微細針152との間に流体経路を形成するために、リザーバアームシール180が溝174を覆っている。リザーバ160と微細針152との間の流体経路(流路アーム172内に配置されている。たとえば図8を参照されたい)は、上記にリザーバ160に関して説明したのと同様なまたは同一の材料で構成されている。たとえば、流路アーム172は、ドーム160と同じ材料で構成されてもよく、リザーバアームシール180は、リザーバドームシール164と同じ材料で構成されてもよい。一実施形態によれば、どちらの流路アーム172も弁168と針マニフォルドまたは微細針152との間の流体経路として使用される。別の実施形態によれば、一方の流路アーム172のみが流体経路として使用され、残りの流路アーム172が構造的支持を実現する。このような実施形態では、溝174は、流体経路として使用される流路アーム172内を完全に弁168から針マニフォルドまたは微細針152まで延びる。
【0028】
流路アーム172は、作動動力に耐えるのに十分な可撓性を有さなければならない。図2および図8の流路アーム172の位置に対して、(図を明確にするために図8では取り外されている図2のリザーバアームシール180によって覆われている)流路アーム172は、微細針152が患者の皮膚に刺されたとき(以下に詳しく説明する)に弾性的に変形する。このような変形時に、流路アーム172は、弁168と針マニフォルドまたは微細針152との間に流体経路の完全性を維持しなければならない。また、流路アーム172の材料は、多数の生体適合性および貯蔵試験に合格した材料である。たとえば、以下の表1に示されているように、インスリンデバイス内容物がインスリンを含む場合、リザーバ160内の主要な接触材料には直鎖状ポリエチレン、環状オレフィンコポリマー、およびテフロン(登録商標)が含まれ、透明なプラスチックが含まれてもよい。リザーバ160と針マニフォルドの微細針152との間の残りの流路(流路62)の主要な接触材料には、COCおよび/または医療用アクリル、LLDPE、TPE、およびステンレススチールと、針接着剤が含まれる。
【0029】
【表1】

【0030】
より具体的には、微細針152はステンレススチールによって構成されてよく、針マニフォルドはポリエチレンおよび/または医療用アクリルによって構成されてよい。このような材料は、リザーバの内容物に接触して延ばされたときに、ISO10−993生体適合性試験に合格することが好ましい。
【0031】
リザーバ160と流路172との間に配置された弁168は、リザーバ160と流路172との間の流体流を選択的に可能にし、制限する。弁168は前作動位置(たとえば、図2、図3、および図6に示されている)と作動位置(たとえば、図8〜図10に示されている)との間を移動する。弁は、作動位置にあるときに、リザーバ160と流路172との間の流体流、したがって、針マニフォルドおよび微細針152までの流体流を可能にする。
【0032】
使用時には、弁168は、図5と図10の間の弁168の移動によって最もよく示されている、アクティベータボタン128の移動によって最終的に作動位置に押し込まれる。図10に示されているように、弁168が移動すると、弁168の拡径遠位端が前進し、それによって、薬物がリザーバ160から流路172内に流れ、流体経路に沿って針マニフォルドまで流れることが可能になる。
【0033】
上述の実施形態は、少なくとも1本の針152または微細針152を含むが、2本のような数本の図示の微細針152を含んでもよい。各微細針152は、少なくとも31ゲージまたは34ゲージのようにそれよりも小さいことが好ましく、リザーバ160と流体連通するように配置することのできる患者の針マニフォルド内に固定される。微細針152は、2本以上の微細針152が注入デバイス100に含まれるときには、それぞれの異なる長さまたは太さ、あるいはそれぞれの異なる長さとそれぞれの異なる太さの組み合わせを有してもよく、微細針152の先端の近く、またはいずれかの微細針152が1つのポートを有する場合には先端斜面の近くに配置される、1つまたは複数のポートを本体の長さに沿って含んでもよい。
【0034】
一実施形態によれば、微細針152の太さは注入デバイス100のリザーバ内容物の供給速度を調節する。注入が、ずっと大きなカニューレまたは針を必要とする緊急の注射に通常伴うよりも長い期間にわたって行われるときには、複数の34ゲージ微細針152を使用してリザーバ内容物を供給するのが実際的である。開示される各実施形態では、皮内空間または皮下空間を目標とするあらゆる微細針152を使用してよいが、図示の実施形態は、長さが1mmから7mmの間(すなわち、4mm)の皮内微細針152を含む。微細針152の配置は直線状アレイであっても非直線状アレイであってもよく、特定の用途によって必要とされるような任意の数の微細針152を含んでよい。
【0035】
上記に指摘したように、微細針152は針マニフォルド内に位置している。針マニフォルド内には、各微細針152に少なくとも1つの流体連通経路または流路172が設けられている。マニフォルドは、単に1本または複数の微細針152への単一の経路を有しても、リザーバ内容物を各微細針152に別個に送る複数の流体経路または流路を形成してもよい。これらの経路または流路は、内容物が通過する曲がりくねった経路をさらに備えてよく、それによって流体の圧力および供給速度に影響を与え、流量制限器として働く。針マニフォルド内の流路または経路は、用途に応じて一定範囲内の幅、深さ、および構成を有してよく、流路幅は通常、約0.015インチ(0.381mm)から0.04インチ(1.016mm)の間、好ましくは0.02インチ(0.508mm)であり、マニフォルド内の死空間を最小限に抑えるように構成される。
【0036】
一実施形態によれば、リザーバ部分組立体120は一対の穴184および188を有し、底部エンクロージャ104に対するリザーバ部分組立体120の位置合わせを助ける。底部エンクロージャ104の第1のポート192および第2のポート196(以下に詳しく説明する)は、それぞれの穴184および188に挿入される。
【0037】
図4、図7、および図9は、リザーバ部分組立体120が取り外された分解図において、底部エンクロージャ104が、加圧ばね140およびプランジャ144が配置された実質的に円筒形のハウジング200を含むことを示している。一実施形態によれば、円筒形ハウジング200は、複数のくぼんだ流路204を含み、プランジャがハウジング200内を並進するにつれてプランジャ144のそれぞれの複数の脚部208および足部212を案内する。脚部208と足部212は集合的にプランジャタブ214を構成する。図4、図7、および図9に示されているように、たとえば、くぼんだ流路204は、円筒形ハウジング200の頂部から下方にハウジング200の一部のみに延びている。くぼんだ流路204の下方に、プランジャ144の足部212が通過して円筒形ハウジング200の外側に延びることができる開口部216がある。開口部216は、実質的にL字形であり、円筒形ハウジング200の基部の所の水平部とくぼんだ流路204に実質的に揃えられた垂直部とを有する。
【0038】
注入デバイス100が前作動状態にあるときには、加圧ばね140が(たとえば、図4〜図6に示されているように)プランジャ144によって圧縮され、プランジャ144の足部212が開口部216の水平部内に配置される。加圧ばね140の力が、プランジャ144の足部212を開口部216の水平部の頂部(すなわち、円筒形ハウジング200のレッジ)に対して偏らせる。以下に詳しく説明するように、注入デバイス100が作動されると、加圧ばね140とプランジャ144が一緒に加圧システムを形成してリザーバ160を加圧する。
【0039】
以下に詳しく説明するように、ロータ136は、円筒形ハウジング200の基部の周りにおいて前作動位置(たとえば、図2〜図4に示されている)と作動位置(たとえば、図8〜図10に示されている)との間を回転する。ロータ136が前作動位置から作動位置まで回転すると、ロータ136の少なくとも1つの足部係合面220(たとえば図4に示されている)が、プランジャ144の少なくとも1つの足部212に係合し、プランジャ144を回転させ、それによって、足部212が開口部216の垂直部およびくぼんだ流路204と揃う。この時点で、加圧ばね140がプランジャ144を上向きに移動させ、足部212が、持ち上げられる流路204によって案内される。
【0040】
加圧ばね140は、注入デバイス100内に含まれ、基本的に均等な力をリザーバ160に加えてリザーバ160から内容物を押し出す。加圧ばね140は、使用時に解放されたときにリザーバ160を加圧するエネルギーを貯蔵するのに使用される。加圧ばね140は、プランジャ144の足部212と円筒形ハウジング200との係合によって圧縮状態に保持される。この係合は、加圧ばね140が、貯蔵時にリザーバ160の膜(後述)またはあらゆる残りのデバイス構成部材(底部エンクロージャ104およびプランジャ144)に応力を加えるのを防止する。プランジャ144は、ばねの張力および変形に抵抗するのに十分な剛性を有し、通常の荷重を受けたときに破壊されてはならない。
【0041】
上記に指摘したように、ロータ136は、前作動位置から作動位置に回転すると、プランジャ144の少なくとも1つの足部212に係合し、プランジャ144を回転させて足部212を開口部216の垂直部およびくぼんだ流路204に揃える。圧縮された加圧ばね140は次いで、プランジャ144を上向きに移動させ、そうする際に、リザーバ160の膜に力を加える。加圧ばね140は、リザーバ内容物を皮内供給できるように好ましくは約1psi(7kPa)から50psi(345kPa)、より好ましくは約2psi(14kPa)から約25psi(172kPa)の圧力をリザーバ116内に生じさせるように構成されてもよい。皮下注射または皮下注入の場合、約2psi(14kPa)から5psi(34kPa)の範囲で十分である。
【0042】
一実施形態によれば、アクティベータボタン128は、患者が注入デバイス100を作動させるために押す患者接触面132を含む。アクティベータボタン128はヒンジアーム224と作動アーム228(どちらも、たとえば図3に示されている)も含む。アクティベータボタン128のヒンジアーム224は、開口部を有する円筒形部を含む。作動アーム228はタブ230(たとえば、図3参照)を含む。一実施形態によれば、タブ230は、支持面232と、支持面232の片持ち式端部に隣接して配置されたロック面234とを含む。一実施形態によれば、タブ230は、作動アーム228の主要部と鋭角を形成する。
【0043】
底部エンクロージャ104上に配置された第1のポスト192は、底部エンクロージャ104から上向きに延びている。一実施形態(たとえば、図4および図7に示されている)によれば、第1のポスト192の基部は、一対の平坦な側面236と一対の丸い側面240とを含む。また、たとえば、図4および図7に示されているように、第2のポスト196ならびに第1の駆動ばね基部244および第2の駆動ばね基部248が底部エンクロージャ104から上向きに延びている。以下に詳しく説明するように、第1の駆動ばね基部244および第2の駆動ばね基部248は駆動ばね148のそれぞれの端部を固定する。第1の駆動ばね基部244は、第2のポスト196に隣接して配置され、第1の駆動ばね基部244と第2のポスト196との間に空間が形成される。
【0044】
一実施形態によれば、図3および図6は、アクティベータボタン128を組み立てる場合の、底部エンクロージャ104に対するアクティベータボタン128の位置決めを示している。この位置では、ヒンジアーム224の円筒形部の開口部が、アクティベータボタン128が水平方向に滑って(平坦な側面236を通過して)第1のポスト192に係合するのを可能にする。次いで、ヒンジアーム224(したがって、アクティベータボタン128)は第1のポスト192の周りを回転することができる。作動アーム228が第2のポスト196と第1の駆動ばね基部244との間の空間に進入すると、タブ230および作動アーム228の少なくとも一方は、タブ230の支持面232の片持ち式端部が第2のポスト196の保持面252を通過するまで弾性的に変形する。タブ230の支持面232の片持ち式端部が第2のポスト196の保持面252(たとえば、図4参照)を通過し、タブ230のロック面234が保持面252と係合すると、アクティベータボタン128が前作動位置に来たことを示すカチッという音が聞こえ、かつそれを示す感触が得られる。
【0045】
再び図2〜図4および図7〜図9を参照するとわかるように、ロータ136は作動突出部256と駆動ばねホルダ260も含む。アクティベータボタン128の作動アーム228は、患者がアクティベータボタン128を押したときに作動突出部256に係合し、それによって、ロータ136を前作動位置から作動位置に回転させる。
【0046】
駆動ばねホルダ260は、ロータ136が前作動位置にあるときに駆動ばね148を前作動位置に維持する。上記に指摘したように、第1の駆動ばね基部224および第2の駆動ばね基部248は駆動ばね148の互いに向かい合う端部を固定する。駆動ばね148のほぼ中点には、たとえば図2および図3に示されているように実質的にU字形の突起があり、ロータ136の駆動ばねホルダ260に係合する。また、ロータ136が前作動位置にあり、駆動ばね148が駆動ばねホルダ260に係合すると、駆動ばね148は引張状態に維持される。駆動ばねホルダ260が駆動ばね148を解放すると(すなわち、たとえば図8〜図10に示されているように、ロータが前作動位置から作動位置に回転すると)、駆動ばね148は、微細針152を駆動して注入デバイス100の外側に延ばし、底部エンクロージャ104の開口部300を貫通させる(さらに、以下に詳しく説明するように安全機構108の開口部を貫通させる)。
【0047】
したがって、以下に詳しく説明するように、単一の多機能/ステッププロセスにおいて実施される注入デバイス100の作動および付勢は、患者がアクティベータボタン128を押すことと、アクティベータボタン128の作動アーム228とロータ136の作動突出部256が係合することによってロータ136が回転することとを含む。上述のように、ロータ136が回転すると、プランジャ144が回転して解放され、リザーバ160内の流体が加圧される。また、ロータ136が回転すると、駆動ばね148が駆動ばねホルダ260から解放され、それによって微細針152が駆動されて注入デバイス100の外側に延ばされる。単一の多機能/ステッププロセスは、アクティベータボタン128が押されたときにアクティベータボタン128が弁168に係合して弁168を移動させることによって弁168が前作動位置から作動位置に移動し、それによって、流路172を介したリザーバと微細針152との間の流体流が開始することも含む。
【0048】
上記に指摘したように、パッチ状の注入デバイス100は安全機構108も含む。誤ったまたは偶然の針刺し事故を防止し、デバイスを意図的に再使用するのを防止し、かつ露出された針を遮蔽するために、ロック針安全機構108が設けられている。安全機構108は、注入デバイス100が患者の皮膚表面から取り外されたときにただちに自動的に作動する。以下に詳しく説明する一実施形態によれば、可撓性の接着剤パッド264が、底部エンクロージャ104の底部および安全機構108の底部に付着する。接着剤パッド264は、使用時に、患者の皮膚に接触し、注入デバイス100を皮膚表面上の所定の位置に保持する。たとえば図11および図12に示されているように、注入デバイス100が皮膚表面から取り外されると、安全機構108が微細針152を遮蔽する位置まで延びる。安全機構108は、完全に延ばされると、所定の位置にロックされ、誤って患者針152によって怪我したり患者針152に接触したりするのを防止する。
【0049】
一般に、受動安全機構が最も望ましい。これによって、デバイスは、誤って取り外された場合、または患者が安全ステップがあることを忘れた場合に自己保護を実施することができる。この注入デバイス100の1つの代表的な使用方法は、通常夜間に投与されるヒト成長ホルモンを供給することなので、デバイスを装着している患者(子供など)は、供給に10分未満しかかからないにもかかわらず、実際には一晩中装着する場合があると考えられる。受動システムがない場合、注入デバイス100が外れた場合に、微細針152が患者または介護者に再び刺さる恐れがある。これを解決するには、使用中の活動を制限するかまたは受動安全システムを含める。
【0050】
安全システムに関して、通常3つの選択肢がある。第1の選択肢は、針152をデバイス内に引き込むことである。第2の選択肢は、針152を遮蔽して接触できないようにすることであり、第3の選択肢は、針刺し事故を防止するように針152を破壊することである。能動システムのような他のシステムは、手動の遮蔽および/もしくは破壊、または追加的なボタン押圧もしくは同様の措置を伴う手動による安全機構の解放を利用する。本発明の受動安全実施形態について以下に詳しく説明する。
【0051】
本発明の一安全実施形態は、安全機構108のような受動完全密閉式引き出し構成実施形態である。図5、図10、および図12は、それぞれ、作動前の安全機構108、作動後の安全機構108、および安全機構108の展開後を示す、注入デバイス100の斜視切り欠き図である。
【0052】
注入デバイス100が皮膚から取り外されると、(底部エンクロージャ104の底面と安全機構108の底面の両方に取り付けられた)可撓性の接着剤パッド264は、皮膚表面から解放される前に、安全機構108を引き出して所定の位置にロックする。言い換えれば、接着剤パッドを皮膚表面から取り外すのに必要な力は、安全機構108を展開するのに必要な力よりも大きい。一実施形態によれば、安全機構108は、たとえば図13に示されているように、患者の皮膚に接触する平坦な表面部268を含む。平坦な表面268において、接着剤パッド264の一部(図13では点線として示されている)が安全機構108に固定され、それによって、注入デバイス100が患者によって皮膚から取り外されたときに、接着剤パッド264が安全機構108を注入デバイス100から展開させるように働き、それによって、他の場合には注入デバイス100が患者から取り外されたときに露出される微細針152を遮蔽する。安全機構108は、完全に延ばされると、所定の位置にロックされ、誤って怪我したり、微細針152に接触したりするのを防止する。
【0053】
一実施形態によれば、接着剤パッド264は、実質的に2つの部分、すなわち底部エンクロージャ104の底面の大部分上の部分と安全機構108の底面上の部分に設けられている。注入デバイス100が取外されると、この2つのパッチが互いに独立に移動し、安全機構108が底部エンクロージャ104に対して回転可能になる。別の実施形態によれば、この2つの部分が、一方の部分が底部エンクロージャ104の底面の大部分上に配置され、一方の部分が安全機構108の底面上に配置された、単体の可撓性接着剤パッド264として形成される。
【0054】
一実施形態によれば、安全機構108は打ち抜き加工された金属部品である。別の実施形態によれば、安全機構108は底部エンクロージャ104と実質的に同じ材料によって作られる。図14に示されているように、安全機構108は、前部シールド272と、安全機構108の後部に配置された一対の挿入タブ276と、それぞれ安全機構108のリム部284の後部上端に配置された一対のピボットタブ280と、安全機構108の実質的に平坦な内側底面から延びる案内ポスト288と、やはり安全機構108の内側底面から上向きに延びるロックポスト292とを含む。前部シール272は、リム部284の上方を延び、安全機構108が展開されるときに患者を微細針152から遮蔽する。案内ポスト288は、切り欠きを含み、ロータ136が前作動位置に来たときにロータ136の安全保持突起296(たとえば、図7および図9に示されている)に係合し、安全機構108が、注入デバイス100が作動される前に展開するのを防止する。
【0055】
また、上記に指摘したように、安全機構108は針開口部156を含む。安全機構108が展開される前に、針開口部156が底部エンクロージャ104の開口部300と少なくとも部分的に重なり合い、微細針152が移動する空間を形成する。ロックポスト292はそれぞれ、針開口部156の前部側縁部に隣接して配置されている。底部エンクロージャ104は、案内ポスト開口部304(たとえば、図7および図9に示されている)と、底部エンクロージャ104の互いに向かい合う側縁部に隣接して配置された一対の挿入タブ開口部308(一方がたとえば図4に示されている)と、底部エンクロージャ104の互いに向かい合う側面上に配置された一対のピボットレスト312(たとえば、図7および図9に示されている)とを含む。
【0056】
再び図14を参照すると分かるように、挿入タブ276はそれぞれ、連結部316と伸長部320とを含む。一実施形態によれば、連結部316は、安全機構108の内側底面から注入デバイス100の後部の方へ、安全機構108の内側底面に対して垂直でない角度に延びている。伸長部320はそれぞれ、伸長部320から安全機構108のそれぞれの外側側面の方へ実質的に垂直に延びている。安全機構108を底部エンクロージャ104に組み付ける場合、安全機構108が底部エンクロージャ104に対して約45°の角度に保持され、挿入タブ276が挿入タブ開口部308に挿入される。次いで、安全機構108は、案内ポスト288が案内ポスト開口部304に挿入され、かつ安全機構108の内側底面が底部エンクロージャ104の底面に実質的に平行になりかつこの底面に接触するような位置に回転される。
【0057】
再び図7および図9を参照するとわかるように、これらの図は作動位置にあるロータ136を示しているが、図7および図9は分解図であるため、安全機構108を底部エンクロージャ104に組み付けるこの段階を示すのに好都合である。しかし、デバイスを作動させる前に安全機構108を底部エンクロージャに組み付けるべきであることが理解されよう。図4に示されているように安全機構108を上向きに回転した後、安全機構108が底部エンクロージャ104に対して後方に並進し、それによって、ピボットタブ280がピボットレスト312のそれぞれの前縁部から離れ、ピボットレスト312の上方に配置され、ロックポスト292が底部エンクロージャ104の開口部300の側縁部に隣接して配置され、ロータ136の安全保持突起296が案内ポスト288に係合する。
【0058】
図14を参照するとわかるように、各ロックポスト292は、安全機構108の平坦な内側底面から実質的に垂直に延びるポスト伸長部324と、ポスト伸長部324の端部に配置された楔部328とを含む。安全機構108の内側底面に対する楔部328の高さが高くなるにつれて、楔部328の幅が大きくなる。
【0059】
安全機構108が展開され底部エンクロージャ104に対して下向きに回転すると、楔部328が底部エンクロージャ104の開口部180のそれぞれの側縁部に接触し、ロックポスト192同士が互いの方へ弾性的に変形する。安全機構108が完全に展開されると、タブ280がピボットレスト312内に位置する。また、楔部328の上縁部が開口部300の底縁部を通過し、ロックポスト292が実質的に未変形の状態に戻り、安全機構108が完全に展開され、したがって、微細針152が覆われたことを示すカチッという音が聞こえ、かつそれを示す感触が得られる。図11および図12を参照するとわかるように、安全機構108が完全に展開され、ロックポスト292がその実質的に未変形の状態に戻ると、楔部328の上縁部が開口部300に隣接して底部エンクロージャ104の底面に係合し、それによって、安全機構108が底部エンクロージャ104に対して上向きに回転し微細針152を露出させるのが防止される。また、上記に指摘したように、前部シールド272が患者を微細針152から遮蔽する。
【0060】
したがって、安全機構108は、単一の部品として設けられた受動安全実施形態であり、人間の負荷がかかっても潰れない良好なロックを実現する。この受動安全機構では、注射時に皮膚に追加的な力が加わることがなく、微細針152は使用後に注入デバイス100内に安全に保持される。
【0061】
患者は、注入デバイス100を使用した後、再びデバイスを検査して用量全体が供給されたことを確認することができる。なお、図15A〜図15Dに示されているように、注入デバイス100は、投与終了インジケータ(EDI)124を含む。EDI124は、本体332と、本体332の頂部に対して実質的に水平方向に延びる第1のアーム336および第2のアーム340とを含む。
【0062】
EDI124は、本体332の頂部から上向きに湾曲するばねアーム344も含む。一実施形態によれば、ばねアーム344がリザーバ部分組立体120の底側面を押し、EDI124を底部エンクロージャ104の方へ弾性的に偏らせ、たとえば注入デバイス100の出荷時および輸送時にEDI124が注入デバイス100から自由に出られないようにする。
【0063】
図4を再び参照するとわかるように、本体332は、EDI流路348内に配置され、EDI流路348内を実質的に垂直方向に並進する。EDI流路は、プランジャ144の脚部208および足部212を案内する一方のくぼんだ流路204に隣接する。第1のアーム336はこのくぼんだ流路204の頂部を横切って延びている。
【0064】
再び図15Aを参照するとわかるように、垂直エクスカージョン352が第2のアーム340の端部から上向きに延びている。リザーバ内容物が供給されると、垂直エクスカージョンが頂部エンクロージャ116のEDI開口部356(たとえば図15C参照)を貫通して延び、投与が終了したことを示す。一実施形態によれば、EDI124は一体構成として形成される。
【0065】
図15Bに示されているように、作動後に加圧ばね140によってプランジャ144が円筒形ハウジング200内を上向きに移動すると、プランジャ144の一方の足部212がEDI124の第1のアームに接触する。足部212は、リザーバ内容物の供給時に、EDI124を上向きに持ち上げ、ばねアーム344の付勢に打ち勝ち、垂直エクスカージョン352をEDI開口部356内において徐々に延ばす。再び図10を参照するとわかるように、垂直エクスカージョン352はその一部が注入デバイス100から延びている。リザーバ内容物の供給が完了し、プランジャがその全行程を実施した後、図15Dに示されているように、垂直エクスカージョン352が完全に延ばされる。したがって、EDI124は、プランジャ144の直線運動を使用して、注入デバイス100の外側から見えるEDI124の直線運動を生じさせ、それによって、リザーバ内容物が供給されたことを示す。
【0066】
図16は、注入ポート404を有する注入デバイス400の実施形態を示している。この注入ポートは、排気後のリザーバ408または部分的に充填されたリザーバ408に手を届かせるのを可能にし、したがって、患者は物質または複数の物質の組み合わせをデバイスを作動させる前にリザーバ内に注入することができる。あるいは、薬剤製造業者または薬剤師は、注入ポート404を使用して、注入デバイス400を販売する前に注入デバイス400に物質または複数の物質の組み合わせを充填することができる。実質的にすべての点で、デバイス400は前述の注入デバイス100に類似している。
【0067】
次に、注入デバイス100の動作について説明する。上述の本発明の各実施形態は押しボタン(アクティベータボタン128)構成を含み、注入デバイス100を皮膚表面に位置させて固定することができ、かつアクティベータボタン128を押すことによって注入デバイス100の付勢および/または作動を実施できることが好ましい。より具体的には、第1のステップにおいて、患者はデバイスを滅菌パッケージ(不図示)から取り外し、接着剤パッド264の解放ライナ(以下に詳しく論じる)を取り外す。患者は、針カバー114も取り外す(同じく以下に詳しく論じる)。注入デバイス100をパッケージから取り外してから使用するまでの間に(たとえば、図1、図2、図4、および図5参照)、注入デバイス100が前作動状態であるので、患者は、構成部材の紛失または損傷、1つまたは複数の期限の満了、薬物の濁りまたは色の変化などの検査を含む、デバイスとその内容物の両方を検査することができる。
【0068】
次のステップは、注入デバイス100を患者の皮膚表面に位置させて貼り付けるステップである。医療パッチと同様に、患者は注入デバイス100を皮膚にしっかりと押し付ける。接着剤パッド264の一方の側が底部エンクロージャ104の底面および安全機構108の底面に付着し、接着剤パッド264の反対側が注入デバイス100を患者の皮膚に固定する。代替的実施形態では、接着剤パッドを、底部エンクロージャ104の底面および安全機構108の底面に直接塗布された接着剤によって置き換えてもよい。このような接着剤は、注入デバイス100を使用する前には解放ライナによって覆われている。(底部エンクロージャ104および安全機構108の)これらの底面は、平坦であっても、輪郭付けられても、または任意の適切な方法によって形作られてもよく、接着剤パッド264はこれらの底面上に固定される。以下に詳しく論じるように、一実施形態によれば、デバイスを出荷する前に、膜などの解放ライナが接着剤パッド264の患者側に貼り付けられ、出荷時に接着剤が保存される。上記に指摘したように、患者は、デバイスを使用する前に、解放ライナを剥がし、それによって、接着剤パッド264(または接着剤)を皮膚に接触するように露出させる。
【0069】
患者は、解放ライナを取り外した後、注入デバイス100を皮膚に接触させて押し、適切に付着させる。上記に指摘したように、デバイスは、適切に位置決めされた後、アクティベータボタン128を押すことによって作動される。この作動ステップは、プランジャ144および加圧ばね140を解放し、プランジャ144をリザーバ160の可撓性の膜(リザーバドームシール164)に押し付け、それによってリザーバを加圧する。この作動ステップは、駆動ばね148をロータ136の駆動ばねホルダ260から解放し、それによって、微細針152を駆動して(底部エンクロージャ104の開口部300および安全機構108の針開口部156を通して)注入デバイスの外側に延ばし、微細針152を患者内に位置させる働きをする。また、作動ステップでは、弁168を開き、流路172を介してリザーバ160と微細針152との間に流体連通経路を確立する(たとえば、図8〜図10参照)。これらの作用の各々を単一の押しボタン動作において実現できることによって顕著な利点がもたらされる。また、他の顕著な利点には、全体的にリザーバ部分組立体120内に構成された連続的な流体連通経路を使用することが含まれる。
【0070】
患者は、デバイスを作動させた後、通常、リザーバ内容物を完全に供給できるように(10分から72時間までのような)ある期間にわたって、注入デバイス100を所定の位置に残すかまたはデバイスを装着する。患者は次いで、下方の皮膚または組織を損傷せずにデバイスを取り外すかまたは破棄する。デバイスが意図的にまたは誤って取り外されると、1つまたは複数の安全機構が展開して露出されている微細針152が遮蔽される。より具体的には、注入デバイス100が患者によって皮膚から取り外されると、接着剤パッド264が安全機構108を注入デバイス100から展開させるように働き、それによって、他の場合には注入デバイス100が患者から取り外されたときに露出される微細針152を遮蔽する。安全機構108は、完全に延ばされると、所定の位置にロックされ、誤って怪我したり、微細針152に接触したりするのを防止する。しかし、安全機構は、アクティベータボタン128が押されず、かつ微細針152が延ばされていない場合には展開せず、それによって、使用前に安全機構が展開するのを防止するように構成してもよい。患者は、使用後に、デバイスを再び検査して用量全体が供給されたことを確認することができる。たとえば、患者は、透明なドーム176を通してリザーバの内部を見て、EDI124を検査してもよい。
【0071】
詳細な各実施形態は、薬剤および医薬品を含む様々な物質を患者、特に人間の患者に投与する際に使用するのに適している。本明細書では、医薬品は、生物学的活性を有し、人体の膜および表面、特に皮膚を通して供給することのできる物質を含む。以下に詳しく列挙する例には、抗生物質、抗ウイルス薬、鎮痛薬、麻酔薬、食欲抑制薬、抗関節炎薬、抗欝薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗新生物薬、DNAワクチンを含むワクチンなどが含まれる。患者に皮内供給または皮下供給することのできる他の物質には、ヒト成長ホルモン、インスリン、タンパク質、ペプチド、およびそれらの断片が含まれる。タンパク質およびペプチドは、自然に発生させても、合成または組み換えによって生成されてもよい。また、デバイスは、樹枝状細胞の皮内注入時のような細胞療法に使用されてもよい。本発明の方法に従って供給することのできる他の物質は、疾患の予防、診断、軽減、治療、または治癒に使用される薬物、ワクチンなどから成る群から選択されてもよく、薬物には、アルファ1抗トリプシン、抗血管形成剤、アンチセンス、ブトルファノール、カルシトニンおよび類似体、セレデース、COX−II抑制剤、皮膚病薬、ドーパミン作動薬およびドーパミン拮抗薬、エンケファリンおよびその他のオピオイドペプチド、上皮細胞増殖因子、エリスロポエチンおよび類似体、卵胞刺激ホルモン、G−CSF、グルカゴン、GM−CSF、グラニセトロン、成長ホルモンおよび類似体(成長ホルモン放出ホルモンを含む)、成長ホルモン拮抗薬、ヒルジンおよびヒルログなどのヒルジン類似体、IgE抑制因子、インスリン、インスリノトロピンおよび類似体、インスリン様成長因子、インターフェロン、インターロイキン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモンおよび類似体、低分子量ヘパリン、M−CSF、メトクロプラミド、ミダゾラム、モノクローナル抗体、麻薬性鎮痛剤、ニコチン、非ステロイド性抗炎症剤、オリゴ糖、オンダンセトロン、副甲状腺ホルモンおよび類似体、副甲状腺ホルモン拮抗薬、プロスタグランジン拮抗薬、プロスタグランジン、組み換え可溶性受容体、スコポラミン、セロトニン作動薬およびセロトニン拮抗薬、シルデナフィル、テルブタリン、血栓溶解剤、組織プラスミノーゲン活性化因子、TNF−−、およびTNF−−拮抗薬が含まれ、ワクチンには、キャリア/補助剤を含むものと含まないものがあり、中毒、関節炎、コレラ、コカイン中毒、ジフテリア、破傷風、HIB、ライム病、髄膜炎菌、はしか、おたふく風邪、風疹、水痘、黄熱病、呼吸器合胞体ウイルス、日本脳炎、肺炎球菌、連鎖球菌、腸チフス、インフルエンザ、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、およびE型肝炎を含む肝炎、中耳炎、狂犬病、ポリオ、HIV、パラインフルエンザ、ロタウイルス、エプスタインバールウイルス、CMV、クラミジア、類型化不能ヘモフィルス(non−typeable Hemophilus)、モラクセラカタラーリス、ヒト乳頭腫ウイルス、BCGを含む結核、淋病、喘息、アテローム性動脈硬化マラリア(atheroschlerosis malaria)、大腸菌、アルツハイマー病、ヘリコバクターピロリ、サルモネラ症、糖尿病、癌、単純ヘルペス、ヒト乳頭腫などに関連する(サブユニットタンパク質、ペプチド、および多糖類、多糖抱合体、トキソイド、遺伝子ワクチン、弱毒化細胞、再集合体細胞、不活化細胞、全細胞、ウイルスベクターおよび細菌ベクターを含むがそれらに限らない)予防薬および治療抗原が含まれ、同様の他の物質には、一般的な風邪用の薬剤、抗中毒薬(Anti−addiction)、鎮痛薬、麻酔薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙攣薬、抗欝薬、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗片頭痛薬、抗動揺病薬、制嘔吐剤、抗新生物薬、抗パーキンソン病薬、かゆみ止め薬、抗精神病薬、解熱剤、合成抗コリン薬、ベンゾジアゼピン拮抗剤、一般的な冠状動脈、末梢血管、および脳血管を含む血管拡張剤、骨刺激剤、中央神経系刺激剤、ホルモン、睡眠薬、免疫抑制薬、筋肉弛緩剤、副交感神経遮断薬、副交感神経作用薬、プロスタグランジン、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、およびその他の巨大分子、精神刺激薬、鎮痛薬、性機能低下、および精神安定剤、ならびにツベルクリンのような主要な診断薬、および「Method of Intradermally Injecting Substances」という名称を有し、内容全体が引用によって明示的に本明細書に組み込まれる特許文献1に記載されたような他の過敏症薬剤(hypersensitivity agent)のようなすべての主要な治療薬が含まれる。
【0072】
本発明のシステムおよび方法に従って供給することのできるワクチンの処方は、ヒト病原体に対する免疫反応を生じさせることができる抗原または抗原組成からなる群から選択することができ、この抗原または抗原組成は、HIV−1(tat、nef、gp120、もしくはgp160など)、gDもしくはその誘導体またはHSVIもしくはHSV2由来のICP27のような前初期タンパク質のようなヒトヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV(特にヒト))(gBもしくはその誘導体など)、ロタウイルス(弱毒化生ワクチンを含む)、エプスタインバーウイルス(gp350もしくはその誘導体など)、水痘帯状ヘルペスウイルス(VSV、gpl、II、およびIE63)、あるいはB型肝炎ウイルス(たとえば、A型肝炎表面抗原もしくはその誘導体)、A型肝炎ウイルス(HAV)、C型肝炎ウイルス、およびE型肝炎ウイルスのような肝炎ウイルス、あるいはパラミクソウイルス、たとえば呼吸器合胞体ウイルス(RSV、Fタンパク質およびGタンパク質もしくはその誘導体)、パラインフルエンザウイルス、はしかウイルス、おたふく風邪ウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV、たとえばHPV6、HPV11、HPV16、HPV18)、フラビウイルス(たとえば、黄熱病、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)、またはインフルエンザウイルス(全生ウイルスもしくは不活化ウイルス、卵もしくはMDCK細胞において成長させた分割インフルエンザウイルス、または全インフルエンザビロゾーム、その精製タンパク質もしくは組み換えタンパク質、たとえば、HAタンパク質、NPタンパク質、NAタンパク質、もしくはMタンパク質、もしくはそれらの組み合わせ)、あるいは淋菌および髄膜炎菌(たとえば、莢膜多糖およびその抱合体、トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PilC、アドヘシン)を含むナイセリア菌種、ピロゲン菌(たとえば、Mタンパク質もしくはその断片)、アガラクティア菌、ミュータンス菌、デュクレー桿菌、カタル球菌とも呼ばれるモラクセラカタラーリス(たとえば、高分子量および低分子量のアドヘシンおよびインバシン)を含むモレクセラ菌種、百日咳菌(たとえば、パータクチン、百日咳毒素、もしくはその誘導体、線維状赤血球凝集素、アデニル酸シクラーゼ、フィムブリエ)、パラ百日咳菌、および気管支敗血症菌を含むボルデテラ菌種、ヒト型結核菌(たとえば、ESAT6、抗原85A、抗原85B、または抗原85C)、ウシ型結核菌、らい菌、鳥型結核菌、副結核菌、スメグマ菌を含む結核菌種、在郷軍人病菌、毒素性大腸菌(enterotoxic E.coli)(たとえば、定着因子、易熱性毒素もしくはその誘導体、耐熱性毒素もしくはその誘導体)、腸管出血性大腸菌、病原性大腸菌(たとえば、志賀毒素様毒素もしくはその誘導体)を含む大腸菌を含むレジオネラ菌種、コレラ菌(たとえば、コレラ毒素もしくはその誘導体)を含むビブリオ菌種、ソネイ菌、志賀赤痢菌、フレクスナー赤痢菌を含む赤痢菌種、エンテロコリチカ菌(たとえば、yopタンパク質)、ペスト菌、偽結核菌を含むエルシニア菌種、ジェジュニ菌(たとえば、毒素、アドヘシン、およびインバシン)ならびにC.coliを含むカンピロバクター菌種、腸チフス菌、パラチフス菌、豚コレラ菌、腸炎菌を含むサルモネラ菌種、リステリア菌を含むリステリア菌種、ピロリ菌(たとえば、ウレアーゼ、カタラーゼ、空胞化毒素)を含むヘリコバクター菌種、緑膿菌を含むシュードモナス菌種、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌を含むブドウ球菌種、フェカリス菌、フェシウム菌を含む腸球菌種、破傷風菌(たとえば、破傷風毒素およびその誘導体)、ボツリヌス菌(たとえば、ボツリヌス毒素およびその誘導体)、クロストリジウムディフィシル(たとえば、A型クロストリジウム毒素もしくはB型クロストリジウム毒素およびその誘導体)を含むクロストリジウム菌種、炭疽菌(たとえば、ボツリヌス毒素およびその誘導体)を含む桿菌種、ジフテリア菌(たとえば、ジフテリア毒素およびその誘導体)を含むコリネバクテリウム菌種、ボレリアブルグドルフェリ(たとえば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリアガリニ(たとえば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリアアフゼリ(たとえば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリアアンデルソニー(たとえば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリアヘルムシーを含むライム病ボレリア菌種、エーリキアエクイおよびヒト顆粒球エーリキア症の薬剤を含むエーリキア菌種、リケッチアリケッチを含むリケッチア菌種、トラコーマクラミジア(たとえば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、肺炎クラミジア(たとえば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、オウム病クラミジアを含むクラミジア菌種、レプトスピライントロガンスを含むレプトスピラ菌種、梅毒トレポネーマ(たとえば、希少外膜タンパク質)、トレポネーマデンティコラ、トレポネーマヒオディセンテリアを含むトレポネーマ菌種、あるいはマラリア原虫を含むマラリア原虫菌種、トキソプラズマゴンヂ(たとえば、SAG2、SAG3、SAG4)を含むトキソプラズマ菌種、赤痢アメーバを含むアメーバ菌種、バベシアミクロチを含むバベシア菌種、トリパノソーマクルージを含むトリパノソーマ菌種、ランブル鞭毛虫を含むジアルジア菌種、森林型熱帯リーシュマニアを含むリーシュマニア菌種、ニューモスティスカリニを含むニューモスティス菌種、膣トリコモナスを含むトリコモナス菌種、マンソン住血吸虫を含む住血吸虫菌種のような寄生菌、あるいは「Vaccine Delivery System」という名称を有し、内容全体が引用によって本明細書に明示的に組み込まれる特許文献2に記載されたような、鵞口瘡カンジダ菌を含むカンジダ菌種、クリプトコックスネオフォルマンスを含むクリプトコックス菌種のような酵母菌から誘導される。
【0073】
これらのワクチンには、ヒト型結核菌用の他の好ましい特定の抗原、たとえばヒト型結核菌用のTb Ral2、Tb H9、Tb Ra35、Tb38−1、Erd 14、DPV、MTI、MSL、mTTC2、hTCC1が含まれる。ヒト型結核菌用のタンパク質には、融合タンパク質およびその変異体が含まれ、この場合、ヒト型結核菌の少なくとも2つ、好ましくは3つのポリペプチドがより大形のタンパク質として融合される。好ましい融合タンパク質には、Ra12−TbH9−Ra35、ERd4−DPV−MTI、DPV−MTI−MSL、Erdl4−DPV−MTI−MSL−mTCC2、Erdl4−DPV−MTI−MSL、DPV−MTI−MSL−mTCC2、TbH9−DPV−MTIが含まれる。クラミジアの最も好ましい抗原は、高分子量タンパク質(HWMP)、ORF3、および推定膜タンパク質(Pmps)が含まれる。好ましい細菌性ワクチンには、肺炎連鎖球菌(たとえば、莢膜多糖およびその抱合体、PsaA、PspA、ストレプトリジン、コリン結合タンパク質)およびタンパク質抗原ニューモリシン(非特許文献1参照)、ならびにその変異無毒化誘導体(mutant detoxified derivatives)を含む連鎖球菌種から誘導された抗原が含まれる。他の好ましい細菌性ワクチンには、B型インフルエンザ菌(「Hib」、たとえば、PRPおよびその抱合体)、類型化不能インフルエンザ菌、たとえばOMP26、高分子量アドヘシン、P5、P6、タンパク質Dおよびリポタンパク質D、ならびにフィンブリンおよびフィンブリン由来ペプチドまたはその多重コピー変異体もしくは融合タンパク質を含むヘモフィルス菌種から誘導された抗原が含まれる。B型肝炎表面抗原の誘導体が当技術分野において公知であり、このような誘導体には特にPreS1 S抗原、PreS2 S抗原が含まれる。本発明のワクチン処方の好ましい一態様には、HIV−1抗原、特にCHO細胞で発現されたgp120が含まれる。他の実施形態では、本発明のワクチン処方には上記に定義されたgD2tが含まれる。
【0074】
注入デバイス100は、上記に列挙した物質を供給するだけでなく、物質を患者から排出するかまたは患者内の物質のレベルを監視するのに使用することもできる。監視または排出することのできる物質の例には血液、間質液、または血漿が含まれる。排出された物質を次いで、アナライト、ブドウ糖、薬物などに関して分析することができる。
【0075】
上記に指摘したように、一実施形態によれば、注入デバイス100は、針カバー114と接着剤パッド264用の解放ライナとを含む。針カバー114と解放ライナはどちらも、注入デバイス100を使用する前に取り外される。また、針カバー114と解放ライナは、注入デバイス100から取り外された後で処分される。1つの方法は、針カバーと解放ライナを組み合わせて、針カバーを取り外したときに解放ライナも取り外されるようにすることである。他の方法は、針カバーと解放ライナを組み合わせて、解放ライナを取り外したときに針カバーも取り外されるようにすることである。任意に、針カバーと解放ライナを同時に処分してもよい。
【0076】
図17は、注入デバイス100の接着剤パッド264および接着剤解放ライナ500の実施形態を示し、図18は、針カバー114の針被覆部112を示している。また、図19は、針カバー114A(針被覆部112を含む)と解放ライナ500の組み合わせの実施形態を示している。図17に示されているように、接着剤パッド164は針被覆部504を含み、解放ライナ500はライナ開口部508を含む。図18は、針被覆部112がアイレット開口部516を有するアイレット512と、ショルダまたはフランジ520とを含むことを示している。上記に指摘したように、一実施形態によれば、針被覆部112は、押しばめによって針マニフォルドに取り付けられる。図17と図18は同じ縮尺ではないが、ライナ開口部508はアイレット512よりも大きいがフランジ520よりも小さく、したがって、アイレット512をライナ開口部508に挿入し、それによってフランジ520を解放ライナ500に接触させることができる。また、針カバー開口部504は針被覆部112の断面よりも大きく、したがって、針被覆部112全体を針カバー開口部504に挿入することができる。
【0077】
図19に示されているように、針カバー114Aは針被覆部112と保持部またはプルタブ部524の両方を含む。プルタブ部524は、アイレット開口部516に挿入可能なプルタブアーム528を含む。図19は、アイレット512がライナ開口部508に挿入された後、プルタブアーム528がアイレット開口部516に挿入されると、プルタブ部524が解放ライナ500を針カバー114A上に保持することを示している。一実施形態では、アイレット512とプルタブ部524の少なくとも一方が十分な可撓性を有し、したがって、プルタブアーム部528がアイレット開口部516に挿入された後、プルタブ部524を図19に示されている位置から約90°回転させて、注入デバイス100の外部寸法または外形を包装できるように最小限にすることができる。また、プルタブ部524を順方向に回転させることも、逆方向に回転させることもできるが、(図20Bに示されている実施形態と同様に)プルタブ部524をアクティベータボタン128の方へ回転させると、注入デバイス100の外形をより効果的に縮小することができる。
【0078】
図19に示されている実施形態を設置するには、針被覆部112を針開口部156に挿入し、押しばめによって針マニフォルドに取り付け、それによって、アイレット512を注入デバイス100の外側に延ばす。それに続いて、接着剤パッド264を底部エンクロージャ104および安全機構108に接着し、接着剤パッド264の開口部504を針開口部156に実質的に対応させる。また、解放ライナ500を接着剤パッド264に接着し、それによって、アイレット512をライナ開口部508に挿入し、解放ライナ500をフランジ520に接触させる。接着剤パッド264および解放ライナ500を単一の動作で取り付けることができることが理解されよう。次に、プルタブアーム528をアイレット開口部516に挿入し、それによって、解放ライナ500を固定し、解放ライナ500と針カバー114Aを組み合わせる。
【0079】
患者は、解放ライナ500および針カバー114Aを取り外す場合、プルタブ部524を掴んで引っ張る。解放ライナ500はプルタブ部524とフランジ520との間に保持されているので、患者によるこのような単一の動作によって、針カバー114が針マニフォルドから取り外されるだけでなく、解放ライナ500も接着剤パッド264から取り外される。また、解放ライナ500が注入デバイス100から取り外された後にプルタブ部524とフランジ520の間に保持されたままになるので、患者は、組み合わされた解放ライナ500と針カバー114Aを容易に処分することができる。
【0080】
図19の実施形態と同様に、図20A〜図20Cは、針カバー114Bの実施形態を示している。この実施形態では、図20Aに示されているように、プルタブ部532は、接着剤パッド264および解放ライナ500が設置された後でアイレット512のアイレット開口部516に挿入されるプルタブアーム536を有する。ただし、図19の実施形態とは異なり、プルタブ部532は実質的に平面状である。図20Bに示されているように、このような平面状構成は図19の実施形態と比べてさらに小さい外形を実現し、そのため、必要な包装材料が小さくなる。また、組み立て時に、図20Bに示されているようなプルタブ部532の構成は、針被覆部112と針マニフォルドとの間のシールを損なう恐れのある針カバー114Bへの横応力を軽減することができる。
【0081】
また、一実施形態によれば、プルタブアーム536は、実質的に針被覆部112に揃う第1の位置および底部エンクロージャ104の底面に実質的に平行な第2の位置にプルタブ部532を揃えるのを助ける指標を含む。図20Cは、注入デバイス100から取り外された後、処分する準備の整った組み合わされた解放ライナ500と針カバー114Bを示している。
【0082】
図21Aおよび図21Bは、針カバー114Cおよび解放ライナ560の別の実施形態を示している。解放ライナ560はプルタブ564を含む。また、針カバー114Cは、針被覆部112とスナップクリップ部568とを含む。スナップクリップ部568は、一対の片持ち式スナップクリップウイング572を含む。各スナップクリップウイング572は、弾性的に変形可能であり、斜面を有し、そのため、スナップクリップ部568がアイレット開口部516に挿入され、斜面がアイレット512に係合し、斜面とアイレット512が接触することによってスナップクリップウイング572が徐々に変形される。斜面の後縁部がアイレット開口部516を通過した後、スナップクリップウイング572は実質的にそのそれぞれの未変形位置に戻り、それによって、スナップクリップ部568をアイレット512内にロックし、解放ライナ560をスナップクリップ部568とフランジ520との間に保持する。
【0083】
患者は、組み合わされた解放ライナ560と針カバー114Cを取り外す場合、解放ライナ560のプルタブ564を掴んで引っ張る。解放ライナ560は、スナップクリップ部568とフランジ520との間に保持されているので、このような単一の動作によって解放ライナ560と針カバー114Cの両方が注入デバイス100から取り外される。図21Bは、注入デバイス100から取り外された後、処分する準備の整った組み合わされた解放ライナ560と針カバー114Cを示している。
【0084】
図18、図19、図20A〜図20C、図21A、および図21Bとは異なり、図22A〜図22D、図23A、図23B、図24、図25A、および図25Bに示されている各針カバーでは、針被覆部とプルタブ部が単体構造として一体的に形成されている。たとえば、図22A〜図22Dは、生体ヒンジによって連結され、したがって、単体構造として一体に形成された針被覆部112Dおよびプルタブ部580を含む針カバー114Dを示している。生体ヒンジは、より剛性の高い2つのプラスチック部品を接合し、より剛性の高い部分同士が互いに対して回転するのを可能にする薄い可撓性のプラスチック部分として設けることができ、そのため、生体ヒンジは回転軸として働く。言い換えれば、この薄い網目状の生体ヒンジは、それによって連結された部材同士が回転するのを可能にする。図示のように、たとえば図22Bおよび図22Cにおいて、生体ヒンジは、プルタブ部580が実質的に針被覆部112Dに揃う第1の位置(図22B)と第1の位置から約90°の第2の位置(図22C)との間を移動するのを可能にする。第2の位置では、針カバー114Dは、より小さい外形を実現し、包装材料を小さくすることができる。また、第1の位置では外形および構成が小さくなるので、針カバー114Dが組み立て時に誤って衝撃を受ける可能性が低くなり、したがって、針被覆部112Dと針マニフォルドとの間のシールを損なう恐れのある針カバー114Dへの横応力が軽減される。
【0085】
図22Aに示されているように、プルタブ部580は一対の片持ち式プルタブウイング584を含む。各プルタブウイング584は、弾性的に変形可能であり、斜面を有し、そのため、プルタブ部580がライナ開口部508に挿入され、斜面が解放ライナ500に係合し、斜面と解放ライナ500が接触することによってプルタブウイング584が徐々に変形される。斜面の後縁部がライナ開口部508を通過した後、プルタブウイング584は実質的にそのそれぞれの未変形位置に戻り、それによって、解放ライナ500を針カバー114D上にロックし、解放ライナ500をプルタブウイング584とフランジ520Dとの間に保持する(たとえば、図22Aおよび図22D参照)。
【0086】
患者は、組み合わされた解放ライナ500と針カバー114Dを取り外す場合、プルタブ部580を第2の位置から第1の位置に回転させ、それによって、プルタブ部580を実質的に針被覆部112Dに揃える。次いで、患者はプルタブ部580を掴んで引っ張る。解放ライナ500は、プルタブ部584とフランジ520Dとの間に保持されているので、このような単一の動作によって解放ライナ500と針カバー114Dの両方が注入デバイス100から取り外される。図22Aは、注入デバイス100から取り外される際の組み合わされた解放ライナ500と針カバー114Dを示している。この後、組み合わされた解放ライナ500と針カバー114Dを処分する準備を整える。
【0087】
図23Aおよび図23Bは、解放ライナ500と組み合わせることのできる針カバー114Eの別の実施形態を示している。針カバー114は、針被覆部112Eと、一対のプルタブフック592を含むプルタブ部588とを含む。解放ライナ500と一対のプルタブフック592の少なくとも一方は、プルタブフック592をライナ開口部508に挿入できるほど弾性的に変形可能である。そのような挿入に続いて、解放ライナ500はフランジ520Eとプルタブフック592との間の針カバー114E上に保持される。
【0088】
針被覆部112Eは、フランジ520Eだけでなく、図23Aに示されているようにポストフック600を有するポスト596が、針被覆部112Eから延びている。プルタブ部588は、ポスト596に対応する長穴604を含む。一実施形態によれば、針カバー114Eは単体構造として一体に形成され、プルタブ部588は生体ヒンジによって針被覆部112Eに連結されている。
【0089】
プルタブ部588が実質的に針被覆部112Eの主軸すなわち長手方向軸に揃う第1の位置(図23A)から第1の位置から約90°の第2の位置(図23B)に回転すると、ポストフック600が長穴600の縁部に係合してプルタブ部588および第2の位置を維持またはロックする。針カバー114Eのプルタブ部588は、注入デバイス100上に設置されたときに第2の位置に構成され、小さい外形を有し、したがって、注入デバイス100の包装材料を小さくするのを可能にする。また、組み立て時には、針カバー114Eが第2の位置に構成され、針被覆部112Eと針マニフォルドとの間のシールを損なう恐れのある針カバー114Eへの横応力を軽減することができる。
【0090】
患者は、組み合わされた解放ライナ500と針カバー114Eを注入デバイス100から取り外す場合、まず、長穴604の縁部をポストフック600から外すのに十分な力を加え、プルタブ部588を第2の位置から第1の位置に回転させ、それによって、プルタブ部588を実質的に針被覆部112Eに揃える。次いで、患者は、プルタブ部588を掴んで引っ張る。解放ライナ500は、プルタブフック592とフランジ520Eとの間に保持されているので、このような単一の動作によって解放ライナ500と針カバー114Eの両方が注入デバイス100から取り外される。この後、組み合わされた解放ライナ500と針カバー114Eを処分する準備を整える。
【0091】
図24は、解放ライナ500と組み合わせることができる針カバー114Fの別の実施形態を示している。針カバー114Fは、針被覆部112Fと、一対のプルタブフック612を含むプルタブ部608とを含む。解放ライナ500と一対のプルタブフック612の少なくとも一方は、プルタブフック612をライナ開口部508に挿入できるほど弾性的に変形することができる。そのような挿入に続いて、解放ライナ500はフランジ520Fとプルタブフック612との間の針カバー114F上に保持される。
【0092】
一実施形態によれば、針被覆部114Fは、単体構造として一体に形成される。図24に示されているように、プルタブ部608の主軸すなわち長手方向軸は、針被覆部112Fの主軸すなわち長手方向軸に対して約90°の角度を形成している。
【0093】
プルタブ部608を含む針カバー114Fは、注入デバイス100上に設置されたときに小さい外形を有し、したがって、注入デバイス100の包装材料を小さくするのを可能にする。また、組み立て時に、針カバー114Fの構成は、針被覆部112Fと針マニフォルドとの間のシールを損なう恐れのある針カバー114Fへの横応力を軽減することができる。
【0094】
患者は、組み合わされた解放ライナ500と針カバー114Fを注入デバイス100から取り外す場合、プルタブ部608を掴んで引っ張る。解放ライナ500は、プルタブフック612とフランジ520Fとの間に保持されているので、このような単一の動作によって解放ライナ500と針カバー114Fの両方が注入デバイス100から取り外される。この後、組み合わされた解放ライナ500と針カバー114Fを処分する準備を整える。
【0095】
図25Aおよび図25Bは、解放ライナ500と組み合わせることのできる針カバー114Gの別の実施形態を示している。図25Aおよび図25Bに示されているように、針カバー114Gは、針被覆部112Gと、一対のプルタブフック620を含むプルタブ部616とを含む。解放ライナ500と一対のプルタブフック620の少なくとも一方は、プルタブフック612をライナ開口部508に挿入できるほど弾性的に変形することができる。そのような挿入に続いて、解放ライナ500は針被覆部112Gのフランジ520Gとプルタブフック620との間の針カバー114G上に保持される。
【0096】
一実施形態によれば、針カバー114Gは、単体構造として一体に形成され、プルタブ部588は、双安定ヒンジに組み込まれた生体ヒンジによって針被覆部112Gに連結される。たとえばシャンプーまたは化粧品瓶の蓋に見られるような双安定ヒンジは、2つの位置において安定する。たとえば、針カバー114Gの2つの安定位置は、実質的に針被覆部112Gの主軸すなわち長手方向軸に揃う第1の位置(図25A)および第1の位置から約90°の第2の位置(図25B)である。針カバー114Gの双安定ヒンジでは、薄い網目状の材料がばねのように働いてプルタブ部616を第1の位置と第2の位置の両方へ偏らせる。たとえば、第1の位置から第2の位置の方への回転時に、双安定ヒンジは、プルタブ部616を、転換点に達するまで第1の位置の方へ偏らせ、転換点において、プルタブ部616を第2の位置の方へ偏らせる。
【0097】
針カバー114Gのプルタブ部616は、注入デバイス100上に設置されたときに第2の位置に構成され、小さい外形を有し、したがって、注入デバイス100の包装材料を小さくするのを可能にする。また、組み立て時には、針カバー114Gが第2の位置に構成され、針被覆部112Gと針マニフォルドとの間のシールを損なう恐れのある針カバー114Gへの横応力を軽減することができる。
【0098】
患者は、組み合わされた解放ライナ500と針カバー114Gを注入デバイス100から取り外す場合、まず、プルタブ部616を第2の位置から第1の位置に回転させ、それによって、プルタブ部616を実質的に針被覆部112Gに揃える。次いで、患者は、プルタブ部616を掴んで引っ張る。解放ライナ500は、プルタブフック620とフランジ520Gとの間に保持されているので、このような単一の動作によって解放ライナ500と針カバー114Gの両方が注入デバイス100から取り外される。この後、組み合わされた解放ライナ500と針カバー114Gを処分する準備を整える。
【0099】
一実施形態によれば、針カバー114(たとえば、針カバー114D、114E、114F、または114G)は、単一の構成部材、たとえば熱可塑性エラストマ(TPE)として射出成形される。別の実施形態によれば、針カバー114(たとえば、針カバー114D、114E、114F、または114G)はツーショットプロセスにおいて射出成形される。たとえば、針カバー114Dのプルタブ部580はポリプロピレンから成形されてよく、針カバー114Dの針被覆部112Dは、針マニフォルドによる押しばめに対応する可撓性または弾性変形能力を有するTPEから成形されてよい。
【0100】
また、一実施形態によれば、針カバー114が注入デバイス100上に設置されるとき、たとえば、針マニフォルドによる押しばめによって、針カバー114がロータ136と連動し、針カバー114が取外される前にロータ136が回転するのを防止する。
【0101】
上記に指摘したように、針カバー114と解放ライナ(たとえば、500)はどちらも注射デバイス100を使用する前に取り外される。したがって、前述の各実施形態を使用することによってこれらの取り外し動作を単一の動作として一体化することができ、それによって、患者の利便性、使いやすさ、および効率が向上する。また、前述の各実施形態では、注入デバイス100を取り外した後、任意に針カバー114と解放ライナとの連結を維持することにより、それらの処分を単純化することによって、患者の利便性、使いやすさ、および効率をさらに向上させることができる。
【0102】
上記に、本発明のいくつかの例示的な実施形態のみを詳しく説明したが、当業者には、本発明の新規の教示および利点から逸脱せずに例示的な実施形態に多くの修正を施すことが可能であることが容易に理解されよう。したがって、すべてのそのような修正は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内に含められるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に配置され薬剤を含むリザーバを有する本体と、
患者の皮膚を貫通し、前記リザーバと前記患者との間に前記薬剤の経路を形成する注射針と、
前記注射針を選択的に覆う針カバーと、
前記デバイスを前記患者に選択的に接着する接着剤と、
前記接着剤の患者側を選択的に覆う解放ライナと、
前記針カバーと解放ライナを連結し、それによって、前記針カバーおよび前記解放ライナの一方を前記デバイスから取り外すことにより前記針カバーおよび前記解放ライナの他方が前記デバイスから取り外されるようにする連結手段であって、前記針カバーおよび前記解放ライナの前記一方が前記デバイスから取り外された後で前記針カバーおよび前記解放ライナを固定する連結手段と
を備えることを特徴とする薬物供給デバイス。
【請求項2】
前記針カバーを前記デバイスから取り外すと、前記解放ライナが前記デバイスから取り外されることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記連結手段は、
前記針カバーの第1の部分から第3の部分と、
前記針カバーに対応し、前記針カバーの前記第1の部分よりも大きい前記解放ライナの開口部とを備え、
前記針カバーの前記第2の部分および前記第3の部分は、前記第1の部分の互いに向かい合う側に配置され、前記解放ライナ開口部よりも大きく、前記解放ライナを保持することを特徴とする請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記針カバーは、
針被覆部と、
プルタブ部とを備えることを特徴とする請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記針被覆部と前記プルタブ部は単体構造として一体に形成されることを特徴とする請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記針カバーの前記第2の部分は、前記プルタブ部上に配置され、少なくとも1つのフックを備え、
前記フックと前記解放ライナの少なくとも一方は、前記フックを前記解放ライナの前記開口部内に第1の方向に挿入できるほど変形可能であり、
前記フックは、前記第1の方向と逆の第2の方向に対して前記解放ライナを保持するように形付けられることを特徴とする請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記針カバーの前記第2の部分は、前記プルタブ部上に配置され、少なくとも1つの片持ち式ウイングを備え、
前記ウイングは、第1のウイング位置と第2のウイング位置との間を弾性的に変形可能であり、それによって、前記ウイングは、前記第2のウイング位置において前記解放ライナの前記開口部に挿入可能であり、かつ前記ウイングは、前記第1のウイング位置において前記針カバー上に前記解放ライナを保持することを特徴とする請求項5に記載のデバイス。
【請求項8】
前記プルタブ部の主軸は、前記針被覆部の主軸に対して約90°の角度を形成することを特徴とする請求項5に記載のデバイス。
【請求項9】
前記針被覆部と前記プルタブ部は生体ヒンジによって連結されることを特徴とする請求項5に記載のデバイス。
【請求項10】
前記プルタブ部は、実質的に前記針被覆部に揃う第1の位置と前記第1の位置から約90°の第2の位置との間を回転可能であることを特徴とする請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記針被覆部からポストが延びており、前記ポストがフックを有し、
前記プルタブ部は、前記第1の位置と前記第2の位置との間を回転する際に前記ポストが通過する長穴を有し、
前記プルタブ部が前記第2の位置に回転する際に、前記フックが前記プルタブ部に係合して前記プルタブ部を前記第2の位置に維持することを特徴とする請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記生体ヒンジは、双安定ヒンジに組み込まれ、それによって、前記プルタブ部が前記第1の位置と前記第2の位置との間に位置したときに、前記双安定ヒンジが前記プルタブ部を前記第1の位置と前記第2の位置の一方の方へ偏らせることを特徴とする請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
前記針被覆部はアイレットを含み、前記針カバーの前記第1の部分が前記アイレットを含み、前記アイレットは、前記解放ライナ開口部に挿入可能であり、
前記プルタブ部は、前記アイレットに挿入可能なアームを備え、
前記針カバーの前記第2の部分は、前記プルタブ部上に配置され、それによって、前記アイレットが前記解放ライナ開口部に挿入された後で、前記アームが前記アイレットに挿入されることによって、前記解放ライナが前記針カバー上に保持されることを特徴とする請求項4に記載のデバイス。
【請求項14】
前記プルタブ部は、実質的に前記針被覆部に揃う第1の位置と前記第1の位置から約90°の第2の位置との間を回転可能であることを特徴とする請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記解放ライナはプルタブを含み、
前記解放ライナを前記デバイスから取り外すと、前記針カバーが前記デバイスから取り外されることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記連結手段は、
前記針カバーの第1の部分から第3の部分と、
前記針カバーに対応し、前記針カバーの前記第1の部分よりも大きい前記解放ライナの開口部とを備え、
前記針カバーの前記第2の部分および前記第3の部分は、前記第1の部分の互いに向かい合う側に配置され、前記解放ライナ開口部よりも大きく、前記解放ライナを保持することを特徴とする請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記針カバーは、
針被覆部と、
スナップクリップ部とを備え、
前記針被覆部はアイレットを含み、前記針カバーの前記第1の部分が前記アイレットを含み、前記アイレットは、前記解放ライナ開口部に挿入可能であり、
前記スナップクリップ部は、前記アイレットに挿入可能なアームを備え、
前記針カバーの前記第2の部分は、前記スナップクリップ部上に配置され、それによって、前記アイレットが前記解放ライナ開口部に挿入された後で、前記アームが前記アイレットに挿入されることによって、前記解放ライナが前記針カバー上に保持されることを特徴とする請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記アーム部は、少なくとも1つの片持ち式ウイングを備え、
前記ウイングは、第1の位置と第2の位置との間を弾性的に変形可能であり、それによって、前記ウイングは、前記第2の位置において前記アイレットに挿入可能であり、かつ前記ウイングは、前記第1の位置において前記スナップクリップ部上に前記針被覆部を保持することを特徴とする請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記針カバーおよび前記解放ライナが取外された後で、前記針カバーおよび前記解放ライナが連結されたままになり、同時に処分することが可能になることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
患者の皮膚を貫通する注射針と、
前記デバイスを前記患者に選択的に接着する接着剤と、
前記接着剤の患者側を選択的に覆い、開口部を有する解放ライナと、
前記注射針を選択的に覆う針カバーとを備え、前記針カバーは、
前記解放ライナ開口部よりも大きいフランジを有する針被覆部と、
前記フランジに隣接して位置し、前記解放ライナ開口部よりも小さい中央部と、
前記中央部に隣接して位置し、前記解放ライナ開口部よりも大きい部分を有し、前記注射針を露出させた後で前記解放ライナを中央部に保持する保持部とを備える
ことを特徴とする薬物供給デバイス。
【請求項21】
前記針カバーは単体構造として一体に形成されることを特徴とする請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記保持部は少なくとも1つのフックを備え、
前記フックと前記解放ライナの少なくとも一方は、前記フックを前記解放ライナの前記開口部内に第1の方向に挿入できるほど変形可能であり、
前記フックは、前記第1の方向と逆の第2の方向に対して前記解放ライナを保持するように形付けられることを特徴とする請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記保持部は、少なくとも1つの片持ち式ウイングを備え、
前記ウイングは、第1のウイング位置と第2のウイング位置との間を弾性的に変形可能であり、それによって、前記ウイングは、前記第2のウイング位置において前記解放ライナの前記開口部に挿入可能であり、かつ前記ウイングは、前記第1のウイング位置において前記針カバー上に前記解放ライナを保持することを特徴とする請求項21に記載のデバイス。
【請求項24】
前記保持部の主軸は、前記針被覆部の主軸に対して約90°の角度を形成することを特徴とする請求項21に記載のデバイス。
【請求項25】
前記針被覆部と前記プルタブ部は生体ヒンジによって連結されることを特徴とする請求項21に記載のデバイス。
【請求項26】
前記保持部は、実質的に前記針被覆部に揃う第1の位置と前記第1の位置から約90°の第2の位置との間を回転可能であることを特徴とする請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記針被覆部からポストが延びており、前記ポストがフックを有し、
前記保持部は、前記第1の位置と前記第2の位置との間を回転する際に前記ポストが通過する長穴を有し、
前記保持部が前記第2の位置に回転する際に、前記フックが前記プルタブ部に係合して前記プルタブ部を前記第2の位置に維持することを特徴とする請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
前記生体ヒンジは、双安定ヒンジに組み込まれ、それによって、前記保持部が前記第1の位置と前記第2の位置との間に位置したときに、前記双安定ヒンジが前記保持部を前記第1の位置と前記第2の位置の一方の方へ偏らせることを特徴とする請求項26に記載のデバイス。
【請求項29】
前記中央部は、前記針被覆部から延びるアイレットを含み、前記アイレットは、前記解放ライナ開口部に挿入可能であり、
前記保持部は、前記アイレットに挿入可能なアームを備え、それによって、前記アイレットが前記解放ライナ開口部に挿入された後で、前記アームが前記アイレットに挿入されることによって、前記解放ライナが前記針カバー上に保持されることを特徴とする請求項20に記載のデバイス。
【請求項30】
前記保持部は、実質的に前記針被覆部に揃う第1の位置と前記第1の位置から約90°の第2の位置との間を回転可能であることを特徴とする請求項29に記載のデバイス。
【請求項31】
前記アーム部は、少なくとも1つの片持ち式ウイングを備え、
前記ウイングは、第1の位置と第2の位置との間を弾性的に変形可能であり、それによって、前記ウイングは、前記第2の位置において前記アイレットに挿入可能であり、かつ前記ウイングは、前記第1の位置において前記アイレット上に前記保持部を保持することを特徴とする請求項29に記載のデバイス。
【請求項32】
前記針カバーおよび前記解放ライナが取外された後で、前記針カバーおよび前記解放ライナが連結されたままになり、同時に処分することが可能になることを特徴とする請求項20に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図22D】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【公表番号】特表2013−514132(P2013−514132A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544449(P2012−544449)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/006573
【国際公開番号】WO2011/075101
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】