説明

自由度6の航跡を入れるコンピュータ入力装置

【課題】コンピュータやゲーム装置に3D運動を表現し入力することを可能にする直観的で直接的で人間工学的な入力装置を提供する。
【解決手段】コンピュータのために6つの自由度を有する3次元データを入力するための入力装置であり、第1軸線を定義する航跡ポイントの第1列と第2軸線又は平面を定義する第2列とを有する。航跡ポイントから反射するか発せられる光が画像化デバイスでキャプチャされる。キャプチャされた2次元画像から、アルゴリズムと参照テーブルを用いて、航跡ポイントの相対位置から、入力装置の位置と方向に関する3次元データが得られる。入力装置はしなやか棒と交差片の形状をしており、航跡ポイントは、コンピュータに、操作者のスイング運動をゲームや3次元適用例のバーチャル環境へと入力するのを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンピュータ入力装置に関する。
【0002】
特に、本発明は、コンピュータやゲーム装置内に、3次元(3D)で自由度6のデータをエントリーさせるための、複数の航跡(tracking)ポイントや画像化デバイス(イメージ化装置)を有するコンピュータ入力装置に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、コンピュータ用の主な入力手段はキーボード及び「マウス」と呼ばれるポインターデバイスである。コンピュータゲームの目的のためには、ジョイスティックやゲーム盤のような追加のデバイスが用いられ、ユーザーがゲームのバーチャル(仮想的)な環境下でより多くの入力の選択ができるように、特別に作られたボタンが利用可能となっている。しかしながら、これらは3Dの情報を入れるために2次元の入力装置を用いている。さらに最近では、「コンピュータインターフェース用アパレル(衣服)」として、実際にゲーマー(ゲーム操作者)によって織られたゲーム用手袋などが、彼らの運動の選択をコンピュータゲームに入力できるように用いられている。
【0004】
このように入力装置が過多に存在するにもかかわらず、ある種のコンピュータゲームにおいて、剣を用いた格闘や、ラケット・クラブ・バットなどをスイングするような運動を望む通りの動きとして受け入れられるような満足な装置は存在していない。他の可能な適用例として、ゲームのマジック的なトリックを遂行するために、バトンの動きと調和的な動作をさせたり、「魔法の杖」を使って振り動かすような動作がある。カーソルコントロールキーとトラックボールの回転を組み合わせるだけでは、ある種のコンピュータゲームの操作においては、バーチャルな対象物やキャラクターに対し、ユーザーが意図した動きを満足に伝達することはできない。
【0005】
加えて、コンピュータゲームの領域を超えた他の適用例、例えばコンピュータ補助設計(CAD)やコンピュータ補助製造(CAM)を活用するには、デザインの3D演出を修正する際に、3D入力が必要となる。現在の入力装置ではそのような適用例に容易に用いることはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、ユーザーがコンピュータやゲーム装置に3D運動を表現し入力することを可能にする直観的で直接的で人間工学的な入力装置が必要であることは明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コンピュータのために、6つの自由度を有する3次元データを入力するための入力装置であって、第1軸線を定義するための航跡ポイントを有する1つの列と、第1軸線に垂直な第2軸線又は平面を定義するための航跡ポイントを有する第2の列とを有し、前記航跡ポイント間の距離は、画像化デバイスによってキャプチャされた前記航跡ポイントの2次元イメージが、供給されたアルゴリズムを用いて、3次元空間内で前記入力装置の位置及び方向をプロセッサ(processor:処理装置)を用いて決定付けるのに用いられるように、注意深く選定されているような配置を有する入力装置を提供する。
【0008】
また、本発明は1つの面において、交差片を有する1つのしなやか棒(wand)であってこのしなやか棒と交差片が複数の航跡ポイントを有しているような棒と、少なくとも1つの画像化デバイスと、少なくとも1つの発光手段と、少なくとも1つのプロセッサとを包含しているコンピュータ入力装置を提供する。
【0009】
本発明の好適な実施態様について、例示として示した図面を参照しながら、さらに詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明の実施態様を図示している。
【0011】
図2は初期条件からのしなやか棒の並進運動(translation )と配置方向(orientation )を表しており、初期条件においてその基準のフレームは画像化デバイスの基準のフレームと一致している。
【0012】
図3はしなやか棒の2つの主要軸線が、本発明のアルゴリズムの反復処理において、いかにして決定されるかを示している。
【0013】
図4は本発明によるしなやか棒の2つの実施態様を表している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の好適な実施態様に従い、本発明について詳細な説明を行う。以下の記述において、詳細は実施態様を説明するために提供される。しかしながら、当業者であれば、かかる詳細がなくても本発明を実施できることは明らかである。これら詳細の一部は、本発明をあいまいなものとしないために、長さについては説明していない。
【0015】
本発明の1つの目的は、3D入力を受け入れるコンピュータ及びゲーム装置のための入力装置を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、3D入力を受け入れるコンピュータ及びゲーム装置のための入力装置であって、バーチャル環境において、バーチャル対象物が意図する3D運動や6自由度運動を再生できるようにする入力装置を提供することにある。この形式の運動入力は、本発明がより単純で小さく低価格なコンピュータ及びゲーム装置に用いられ、かつ他の現在使用中の処理からあまり多くの処理資源(リソース)を要求することがないように、最低限のプロセッサ要求で遂行されなければならない。
【0017】
ここで、「コンピュータ」及び「ゲーム装置」という用語は、CAD/CAMワークステーション、「パーソナルコンピュータ」、特注されたコンピュータゲーム盤及び装置、パーソナルデジタルアシスタント、及び本発明によってキャプチャされたイメージを処理するための特注プロセッサなど3D入力を必要とするあらゆる種類のコンピュータ装置を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明の実施態様により、多くの利点が得られる。本発明の実施態様の1つの利点は、剣による格闘のスラスト(突き)や受け流し(よけ)、ゴルフのドライブ(球打ち)、ラケットやバットのスイング運動など、コンピュータゲームのバーチャル環境下でユーザーが所望する運動を、本発明によって航跡を追いかつ表現することが可能になることである。
【0019】
他の利点は、これまで不可能とされていた、バーチャル美術技法におけるペインティングや彫刻ストロークのような適用例での入力様式や、さらには電話による医術や外科的訓練での医学的道具としての正確な手動操作における入力様式としても、本発明が実現できるということである。
【0020】
本発明は、ある配置(arrangement )を用いる入力装置を包含し、この配置は第1軸線を定義するための航跡ポイントを有する第1列と、第1軸線に垂直な第2軸線又は平面を定義するための航跡ポイントを有する第2列とを有し、前記航跡ポイント間の距離は、前記航跡ポイントの2次元イメージが、3次元空間内で前記入力装置の位置及び方向を決定付けるのに用いられるように、注意深く選定されている。
【0021】
図1を参照すると本発明に基づく実施態様が図示されている。この列(array)はここで説明される実施態様に限定されてはならない。本発明の好適な実施態様の1つの要素は、しなやか棒(wand)101であり、これは長手方向に概ね直線状に延伸するデバイスであって、ハンドル端部100と基準端部103とを有する。ユーザーは、概ねそのハンドル端部を握ることによりこのしなやか棒を手動操作する。
【0022】
交差片120は、しなやか棒の基準端部の付近に垂直に配置されている。好適な実施態様において、交差片の平面はしなやか棒の長手方向軸線の平面と同じ平面上にある。好適な実施態様の交差片は概ね直線状の材料で作られているが、L字形の形状や三角形あるいはポリゴン(多角形)の形状とすることもできる。
【0023】
しなやか棒の上の基準端部上には、第1の複数の航跡(tracking)ポイントがある。交差片の上にも第2の複数の航跡ポイントがある。これらの航跡ポイント110は、アクティブな光エミッター(発光体)であるか、あるいはパッシブな光リフレクタ(反射体)である。
【0024】
アクティブな発光体が航跡ポイントに用いられるときは、発光体は光を全ての方向に放出することができなければならない。これは、航跡ポイントが本発明の1つの要素である画像化デバイスによって、航跡ポイントが不鮮明でなく画像化デバイスの視界の中にある限り、しなやか棒の全ての方向からキャプチャ(捕捉)されなければならないからである。
【0025】
光の波長は、赤外線波長から可視光の波長、さらに紫外線の波長の範囲まで使用が可能である。
【0026】
好適な実施態様において、航跡ポイントはパッシブな赤外線反射体で、T字形の配置に作られる。これら航跡ポイントの多くの好適な形状は、光の反射を最大化するために地球儀あるいはボールの形状に作られる。例外は、ハンドル端部(「最後」の航跡ポイント)に最も近いしなやか棒の航跡ポイントである。地球儀又は半地球儀の形状とする代わりに、この航跡ポイントはわずかにドーム状になっている。多くの適用例において、しなやか棒は30cm以下で、ユーザーの広い領域を満たす長さとする。しなやか棒上には、直線上に少なくとも2つの航跡ポイントがあり、好適なのは3つである。図1では、交差片の両側に2つの航跡ポイントがあり、交差片の長さは約6cmである。
【0027】
本発明の他の要素として、好適な波長の範囲の光を供給する少なくとも1つの発光手段150と、少なくとも1つの画像化デバイス130とが含まれ、画像化デバイスは例えばCMOS(complementary metal oxide semiconductor )やCCD(charge-coupled device )センサーを備えたカメラである。好適な実施態様において、1つの発光手段と1つの画像化デバイスが用いられ、画像化デバイスは処理装置に接続される。
【0028】
操作時において、ユーザーは本発明によるしなやか棒を握りしめ、あたかも彼が選択のためのバーチャルな道具を操作しているかのように、振り回す。光源からの光はパッシブな航跡ポイントから反射され、画像化デバイスやカメラにより、輝くスポットとしてキャプチャされる。それから、その画像化デバイスはそのイメージ(画像)を処理装置へと伝達する。
【0029】
本発明は視界の範囲内及び画像化デバイスやカメラの視界のライン内で機能する。かくして、発光手段と画像化手段との両方にとっての理想的な位置は、コンピュータ又はゲーム装置のディスプレイスクリーンに極めて接近した位置であり、発光手段と画像化手段の両方は、ユーザーがしなやか棒を振り回したいと希望する空間の容積に概ねポイントが置かれることになる。
【0030】
ユーザーが画像化手段の視界でカバーされる空間の容積内にとどまるのを補助するために、境界線のマーキング180が付されたパッド160を用いて、ユーザーがカメラの視界を見積もるのを補助することができる。パッドの中心にマークされた円170は、ユーザーがしなやか棒を、適用例あるいはゲームのスタート時に中心に置くのを補助する。パッドの表面材料もまた、用いられる光の反射を最小化するように選定される。
【0031】
図2において、しなやか棒の位置(並進運動T=(tx ,ty ,tz ))及び方向、すなわちピッチ201、ロール203、ヨー(yaw )202など全ての変化パラメータは、画像化デバイス又はカメラの基準フレーム(Xc ,Yc ,Zc)に対して表現される。
【0032】
しなやか棒のフレーム(Xw ,Yw ,Zw )は、その初期条件として、カメラのフレーム(Xc ,Yc ,Zc )と整合している(同一線上にある)ものと仮定される。しなやか棒上のあるポイントW=(x,y,z,1)がカメラの空間で他のポイントW’=(x’,y’,z’,1)に変化したときは、次のXYZの符号が付けられた角度へと変化させられる。
W’=T+RzRyRxW
ここで、RxはXc 軸線回りのピッチ回転マトリックス、
RyはYc 軸線回りのヨー回転マトリックス、
RzはZc 軸線回りのロール回転マトリックスである。
【0033】
キャプチャされた各イメージにおいて輝いている各スポット相互間の相対位置は、本発明による添付アルゴリズムによって用いられ、各時間間隔でのしなやか棒の位置と方向が再構成される。それから、この情報は、バーチャル環境において、ユーザーにより制御された対象物の対応する運動を形成するのに用いられる。
【0034】
かくして、カメラによりキャプチャされたイメージ内でのしなやか棒の航跡ポイントの相対位置は、本発明において、しなやか棒の運動を再構成するために用いられる。
【0035】
ここで用いられる他の情報は、交差片の2つの航跡ポイント間の距離d1(この値は図3の線323で指示される)と、交差片に最も近いしなやか棒の2つの航跡ポイント間の距離d2(この値は図3の線322で指示される)とである。カメラによりキャプチャされたこれら2つの明白な距離の比率は、しなやか棒によって表現されたバーチャル環境での対象物の位置を再構成する際に用いられる。
【0036】
ハンドル端部に最も近いしなやか棒上の航跡ポイント210は、しなやか棒が画像化デバイスに向かったり離れたりしている方向によっては、画像化デバイスによってキャプチャされないかもしれない。しかしながら、本発明のアルゴリズムによれば、4つ又は5つの航跡ポイントでキャプチャされたイメージを分析することができる。
【0037】
キャプチャされたイメージ内の4つ又は5つの航跡ポイントは、本発明のアルゴリズムにより、図3に示すような長手方向軸線とそれが包含する角度θ324を確定させるために用いられる。
【0038】
図3Aは、2D表現でカメラによりキャプチャされた3D空間内での5つの航跡ポイントのイメージの例を示している。図3Bに示すように、どれか2つのポイントを連結して10本の線を得ることもできる。
【0039】
図3Cに示すように、アルゴリズムは、これら10本の仮想線の第1線320をこれら10本の仮想線の他の1つと比較して、第1の線320が他の線321を二等分(bisect)していないかどうかを確定することから開始する。このプロセスは繰り返され、図3Dに示す例は成功していない例であるが、これら2つの線がこの関係を満たすと判断される(図3E)まで繰り返される。かくして、他の線を二等分している線322がしなやか棒の長手方向軸線である。二等分されている線323は、交差片の航跡ポイントによって定義された線であり、すなわち、交差片の軸線である。
【0040】
アルゴリズムによって2つの軸線が同定されると、2つの軸線の交点(intersection)はしなやか棒上の基準原点103(図2)の位置を定義し、しなやか棒とその交差片の結合部を定義する。これは、キャプチャされたイメージ上の位置326によって表現される。
【0041】
加えて、カメラによりキャプチャされたd1とd2の比率と同様に、これら2つの軸線の間の角度θも確定することができる。線323とイメージのX軸線とから、両者が形成する角度δ325、すなわち交差片の突出する軸線とイメージの水平軸線とにより形成される角度もまた確定することができる。それから、ロール角度を、角度δにより直接割り当てることができる。
【0042】
付随的なこととして、キャプチャされたイメージ内のしなやか棒の基準原点326の位置から、並進運動tx 及びty が直接導き出される。
【0043】
ここで必要な最後の小さな情報は、しなやか棒(ハンドル端部に最も近い)上の最後の航跡ポイント210がキャプチャされたイメージ上で見られるかどうかである。この情報はP5で表現され、ポイントが存在する場合は1、ポイントが存在しない場合は0である。
【0044】
これらの重要なパラメータがいったん知られたならば、マッピングを遂行する参照テーブル内に準備された6自由度を有する情報から、しなやか棒の位置を再構成したり取得したりすることができる。マッピングでは、
<θ,d1/d2,P5> → <ピッチ,ヨー,l1 ,l2
ここで、ll 及びlu は次の一方からの突出した距離であり、
a.もしもd1/d2>=1ならば、交差片の2つの航跡ポイント
b.もしもd1/d2<1ならば、しなやか棒の原点326からしなやか棒上の4番目の航跡ポイント300までの距離である。
これらは、しなやか棒の原点が、カメラから使用可能な操作範囲であるそれぞれ下限zl ,上限zu にあるカメラからの距離にあるときの、キャプチャされたイメージであり、そこでしなやか棒の方向は上記マッピングにおいて与えられた特定のピッチ及びヨーにある場合である。
【0045】
かくして、ここで定義された使用可能な操作範囲は重要である。なぜならば、参照テーブルはカメラからのこの使用可能な操作範囲を基礎として生成されるからである。使用可能な操作範囲は本発明を限定するものではない。なぜならば、異なる適用例に対し、添付される参照テーブルによって、操作範囲は変化させられ寸法が変えられるからである。多くのデスクトップでの適用例のためには、zl 及びzu はそれぞれ25cmと50cmにセットされる。
【0046】
距離tz 、すなわちカメラから並進運動したしなやか棒の原点までの距離は、次の公式によって概算できる。
d1/d2>=1ならば
z =zl +((zu −zl )x(li −d1)/(ll −lu ))
d1/d2<1ならば
z =zl +((zu −zl )x(li −d2)/(ll −lu ))
【0047】
本発明によれば、しなやか棒の航跡となるユーザーの動きは、航跡ポイントの相対位置をキャプチャすることを伴い、しなやか棒の位置と方向の本質的なパラメータを決定し、それから当該バーチャル環境での運動を再構成する。このプロセスは、本発明が使用される限り、所要の時間間隔で繰り返される。
【0048】
当業者であれば、ユーザーの身体の部分やしなやか棒それ自身の一部である他の物体が、カメラの視界となる線から、1つ又は複数の航跡ポイントをマスクしてしまうことがあり得ることに気付くであろう。これが起こったときは、単純なアルゴリズムではかかる状況を吸収することができない。この限界をカバーするためには、このアルゴリズムを満足させるようなドライバーソフトウェアをプログラムすれば、しなやか棒の意図した軌道や運動を予言し、かかる状況を無視して、充分な航跡ポイントがふたたび検知されるようになるまで、操作を続行することができる。ユーザーの手の動きが続くならば、かかる状況は頻繁に発生するわけではなく、ユーザーに不安を与えることもない。
【0049】
好適な実施態様のための航跡ポイントの最小数は4つである。所定の回数の時間間隔の後で、画像化デバイスによって、この最小数の航跡ポイントが得られない時は、ここで用いられるドライバーソフトウェアによって、ユーザーに、航跡ポイントの許容できないあいまいさが発生したことを警告表示する。
【0050】
かかる状況は、カメラがその視界から外れた時か、あるいは何かの物体によってあいまいさが継続している時である。図1のパッド160は、ユーザーがしなやか棒を画像化デバイスの視界の内部に保持したままにするのを補助することにより、かかる状況が発生するのを防止する。
【0051】
航跡ポイント間の距離は、画像化デバイスによってキャプチャされた画像上で航跡ポイントを解析する際のあいまいさを最小限にするように注意深く決定され、しなやか棒の位置と方向が迅速に再構成されるようにする。
【0052】
キャプチャされた画像内での航跡ポイントの相対位置から、しなやか棒の位置と方向を再構成するための他の可能な方法は、ロボットを用いた画像認識やコンピュータグラフィックスなどについて書かれた文献に見られるような標準の3D再構成アルゴリズムを用いることである。しかしながら、かかるアルゴリズムは、代表的なコンピュータにおいて、コンピュータ処理が高価となり、リアルタイム操作を失望させるものとなる。また、かかるアルゴリズムを装備することは、その適用例として、本発明が意図する単純なコンピュータ装置における装備という目的に反するものとなる。また、参照テーブルは、妥当性のある迅速な応答を供給するための中間的な対策として用いられるのである。
【0053】
それにもかかわらず、本発明における要素は、処理装置の能力がかかるアルゴリズムを吸収することが可能である時は、3D運動を再構成するアルゴリズムとして機能することが可能である。
【0054】
好適な実施態様として、光源は、カメラのレンズの周囲の同軸配置として搭載されるもので、概ね750−1000nmのリング状の光を放出するものである。
【0055】
もしも狭い波長範囲の光が用いられるならば、最適な結果を得るためには、航跡ポイントのためのリフレクタ、光源のためのフィルター、画像化デバイスのためのレンズなどに対して適当な材料が必要となるであろう。好適な実施態様では、赤外線領域の光を用いるので、航跡ポイントは、この波長領域で最大の反射率となるように、例えば「レーザ−ゴールド(Laser Gold)」のようなコーティングを有することになる。
【0056】
本発明では、白黒やカラーのカメラを使用可能であるが、データの転送における要求が最小化されるように、ピクセルあたり1ビット(すなわち、厳密に白と黒を表現できるような方式)を用いて画像を表現するように最適化されたカメラが好適である。
【0057】
当業者であれば、本発明の範囲内で多くの実施態様が可能であることを理解できよう。例えば、交差片はV字形又はL字形(図4A)、等辺三角形(図4B)、あるいは規則的な多角形にすることができる。本発明は、交差片の全ての航跡ポイントがしなやか棒の長手方向軸線に垂直な平面上に存在する限り、機能することになる。
【0058】
本発明の各航跡ポイントは、画像化デバイスによって識別可能な異なるユニークな色や波長を放出したり反射したりすることもできるであろう。かかる実施態様において、カラーの画像化デバイスが用いられる時には、しなやか棒の位置の重要なパラメータを識別することが、より簡単でより迅速になり、しなやか棒の位置を再構成する速度が大きく増加するであろう。
【0059】
この実施態様において、光源は可視光での照明とすることもでき、航跡ポイントの反射用コーティングは選択された色を反射するように選定することもできる。他の方法として、アクティブな光放出航跡ポイントとしての実施態様において、発光ダイオード(LEDs)のような小さな発光源を用いることもできる。
【0060】
本発明はまた適用例によって量的に変化させることができる。本発明の感度は、例えば外科医の手の航跡を追うために、画像化デバイスをしなやか棒にもっと近く寄せたり、さらに高い解像度の画像化デバイスを用いるなどの方法で、増大させることができる。
【0061】
他の方法として、修正されたラケット・バット・クラブなどのスイングのようなもっと巨大な動きを、カメラをその位置からさらに遠くまで移動させることにより、キャプチャすることもできる。これらスポーツ器具から画像をキャプチャすることは、それらの上に航跡ポイントを位置決めするか、あるいはこれらを代表するようにシミュレートした器具の上に位置決めすることでなされる。
【0062】
技術が進歩するにつれて、処理装置の速度や能力が増大するので、イメージをキャプチャするためのリフレッシュレートや運動航跡を追う感度などもまた増大することになろう。
【0063】
本発明を1つの画像化デバイスについて説明してきたが、本発明では複数の画像化デバイスを用いることも可能である。複数の画像化デバイスが用いられたときは、三角測量の技法を用いて、画像化デバイスからしなやか棒までの距離をさらに良好に再構成できるかもしれない。
【0064】
当業者であれば、ここで説明したアルゴリズムは、高いレベルのプログラミング言語からアセンブリ言語やマシン語にいたるまで、各種のプログラミング言語に容易に移植することができることは理解できよう。本発明を各種のゲームやCAD/CAMの適用例へと統合させることは、当業者なら容易にできることであろう。
【0065】
従って、本発明は、交差片を有するしなやか棒と、発光手段と、画像化デバイスと、処理装置と、アルゴリズム及び参照テーブルを包含して、ユーザーが従来技術による問題点を克服し、あるいは少なくとも軽減させることができるような入力装置を提供する。
【0066】
好適な実施態様において、用いられる処理装置(processor )は画像化デバイスが接続されているコンピュータであるとして説明してきたが、分離した特別な処理装置を用いて、キャプチャされた画像を解読し、しなやか棒の位置と方向を取得するような処理装置も、本発明の範囲内として用いることができる。
【0067】
加えて、本発明は3Dで6つの自由度を有する入力データを解読する能力を有するが、当業者であれば、本発明による航跡の解読を3つの自由度を有する入力データだけに適用したり、6つの自由度を有するデータだけに適用したりするように容易に修正できることは明らかである。
【0068】
1つの実施態様についてだけ詳細に説明してきたが、当業者であれば、本発明の範囲から離れることなく、多くの修正や改良をなすことができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明による入力装置の実施態様の斜視図。
【図2】本発明におけるしなやか棒の並進運動と配置方向を表す斜視図。
【図3】しなやか棒の2つの主要軸線が本発明のアルゴリズムで決定される概念図。
【図4】しなやか棒の2つの実施態様を表す斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータのために、6つの自由度を有する3次元データを入力するための入力装置であって、
第1軸線を定義するための航跡ポイントを有する第1列と、第1軸線に垂直な第2軸線又は平面を定義するための航跡ポイントを有する第2列とを有し、前記航跡ポイント間の距離は、前記航跡ポイントの2次元イメージが、供給されたアルゴリズムを用いて、3次元空間内で前記入力装置の位置及び方向を決定付けるのに用いられるように、注意深く選定されているような配置と、
少なくとも1つの画像化デバイスと、
少なくとも1つのプロセッサとを備える入力装置。
【請求項2】
前記供給されたアルゴリズムは、
キャプチャされた2次元イメージから航跡ポイントの位置と方向を同定し、
前記キャプチャされたイメージから第1軸線と第2軸線又は平面を同定し、
同定された第1軸線と第2軸線又は平面から前記配置の本質的なパラメータを決定し、
参照テーブルから前記入力装置の位置と方向を取得し、
コンピュータのために、前記入力装置の3次元的位置と方向を再構成することを包含している請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記入力装置は、3次元空間内でのそれ自身の位置を決定するためだけに修正可能となっている請求項1記載の入力装置。
【請求項4】
前記入力装置は、3次元空間内でのそれ自身のピッチ、ロール及びヨーを決定するためだけに修正可能となっている請求項1記載の入力装置。
【請求項5】
前記入力装置はさらに少なくとも1つの発光手段を包含している請求項1記載の入力装置。
【請求項6】
コンピュータのために、6つの自由度を有する3次元データを入力するためのコンピュータ入力装置であって、
1つのしなやか棒であって、このしなやか棒はその棒の長手方向軸線に対し垂直に配置された交差片を有し、前記しなやか棒と交差片はさらに複数の航跡ポイントを有しているような棒と、
少なくとも1つの画像化デバイスと、
少なくとも1つのプロセッサと、
参照テーブルから、少なくとも1つの画像化デバイスによってキャプチャされた前記しなやか棒上の航跡ポイントの2次元イメージから、前記しなやか棒の位置と方向を決定付けることができるようなアルゴリズムとを包含しているコンピュータ入力装置。
【請求項7】
前記交差片は前記しなやか棒に垂直に配置されている請求項6記載の入力装置。
【請求項8】
前記しなやか棒の複数の航跡ポイントは、パッシブライトリフレクタを有し、そこでは前記入力装置がさらに少なくとも1つの発光手段を有している請求項6記載の入力装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの発光手段は、前記画像化デバイスのレンズの周囲に同軸に配置されたリング形状をしている請求項8記載の入力装置。
【請求項10】
前記しなやか棒の複数の航跡ポイントは、アクティブライトエミッタを有する請求項6記載の入力装置。
【請求項11】
前記複数の航跡ポイントは、波長の異なるアクティブライトエミッタを有する請求項10記載の入力装置。
【請求項12】
前記複数の航跡ポイント間の距離は、前記アルゴリズムによって、前記しなやか棒の位置と方向を決定付ける際のあいまいさを回避するように注意深く選定されている請求項6記載の入力装置。
【請求項13】
前記画像化デバイスはさらに、用いられる光の選定された波長の範囲のためのゼロ又は複数のフィルタを包含している請求項6記載の入力装置。
【請求項14】
前記入力装置はさらに、前記画像化デバイスの視界の範囲をユーザーが見積もるのを助けるためのパッドを有している請求項6記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−521559(P2007−521559A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517064(P2006−517064)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/SG2004/000175
【国際公開番号】WO2004/114112
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(505470856)アフィネオン・テクノロジーズ・ピーティーイー・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】