説明

自発光ディスプレイ内スペクトル成分制御

【課題】 プラズマ表示パネル、有機発光ダイオード等の「自発光」デバイスで、発せられる光のスペクトル成分や輝度の経時変化、画素要素間のばらつきを減じる。
【解決手段】 複数の自発光画素要素(102〜106)、(108〜112)、(114〜118)の間に、これらの画素要素が発する光を計測する複数の光センサ(122、124、128)が配設される。制御手段200は、自発光画素要素を発光させた状態で光センサが計測した結果を1以上のスペクトル基準と比較し、比較の結果に応じて駆動信号基準値を設定し、この駆動信号基準値に基づいて動的画素要素駆動信号を生成して自発光画素要素のスペクトルや輝度を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイを構成する画素要素自体が発光する、自発光ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばコンピュータシステムや携帯電子機器や看板やテレビジョン受像機等の分野で用いられる一般的なタイプのディスプレイは、液晶ディスプレイ(LCD;liquid crystal display)である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
LCDは、「透過型」ディスプレイである。すなわち、それらの画素要素は色を生成又は濾波するが、それらの色の照明にバックライトを必要とする。
【0004】
プラズマ表示パネル(PDP;plasma display panel)と有機発光ダイオード(OLED;organic light emitting diode)ディスプレイは、それらが「自発光」である点でLCDとは異なる。すなわち、それらの画素要素は色を発生するだけでなく、それらの色の照明もする。PDPやOLEDや他の自発光ディスプレイ技術は、バックライトの撤廃が時としてこれらのディスプレイをより薄型にかつ低コストで製造できるようにする点に関心をもたれている。自発光ディスプレイはまた、透過型ディスプレイよりも広い視野角をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、自発光ディスプレイは複数の自発光画素要素と複数の光センサと制御系を備える。光センサは、画素要素が発する光を計測するよう、画素要素の間に配設してある。制御系は光センサに結合してあり、画素要素は、
1)計測の結果を1以上のスペクトル基準と比較し、
2)この比較に応じて駆動信号基準値を設定し、
3)この基準値に基づいて動的画素要素駆動信号を生成する。
【0006】
別の実施形態では、自発光ディスプレイのスペクトル成分較正方法は、複数の自発光画素要素の少なくとも一部に光を生成させるステップを含む。この光をそこで計測し、1以上のスペクトル基準と比較する。これらの比較に応じ、駆動信号基準値を設定する。そこで、基準値に基づき動的画素要素駆動信号を生成する。
【0007】
他の実施形態も、開示してある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の例示的かつ現在の好適な実施形態が、図面中に図示してある。
【0009】
透過型ディスプレイ(例えば、LCD)と異なり、自発光ディスプレイの画素要素(例えば、OLEDディスプレイやPDP)は色と照明の両方を生成することができる。しばしば、複数(又は一群)の画素要素を単一画素(すなわち、表示画像内の一点)の色を規定するのに用いることになる。一般に、一群の画素要素は赤、緑、青(RGB)の画素要素の形をとることになる。
【0010】
製造期間中又は試験期間中に、自発光ディスプレイの画素要素を較正し、同一の色情報でもってプログラムしたときに、同様の色の画素要素が同一の色及び色輝度を生成するよう較正することができる。RGB画素要素の組み合わせからなる場合、この組み合わせが生成する色は、組み合わせ中の個々の画素要素が生成する輝度比を変化させることで変えることができ、この組み合わせが生成する色の輝度は、組み合わせ内の全画素要素の輝度を増減することで変えることができる。画素要素の輝度は、画素要素の1以上の駆動信号を変化させることで調整される。一般に、これらの駆動信号は各画素要素又は画素要素群に印加する電流又は電圧の形をとる。
【0011】
経年変化や環境条件(例えば、温度)や製造公差(ばらつき)の結果として、自発光ディスプレイ内の画素要素の一又は複数の色及び輝度が変動(ドリフト)することがある。これらの変動を補償する手段を備えなければ、ユーザはディスプレイの画像に不満をもつかも知れない。
【0012】
図1と図2は、複数の自発光画素要素(すなわち、画素要素102〜118)を備える自発光ディスプレイ100を示す。一例を挙げれば、画素要素102〜118はR、G、Bの群にまとめられた、赤色(R)画素要素と緑色(G)画素要素と青色(B)画素要素で構成して図示してある。ディスプレイ100の通常動作期間中、RGB群の画素要素102〜106は互いに混成して単一画素(表示画像内の単一点)の色を生成する様々な輝度の光を生成するようプログラムされる。代替実施形態では、一画素の色はより多数又は少数の画素要素により生成されよう。例えば、単色表示では、単一画素要素が単一画素の色を指定し得る。
【0013】
図1と図2に示した画素要素102〜118の数は代表的例に過ぎず、実際のディスプレイ100は多分数千或いは数百万の画素要素で構成され得る。また、図1と図2に示した画素要素102〜118の構成及び配向は代表的例に過ぎず、実際の画素要素はそれらが一部を形成する自発光ディスプレイ(例えば、PDPやOLED)の種類に応じて様々に構成することができる。
【0014】
ディスプレイ100は、検出手段120,122,124,126,128と制御手段200をさらに備える。検出手段120〜128は画素要素102〜118が発する光の計測用に配設され、一方で制御手段200は
1)1以上のスペクトル基準との測光値の比較と、
2)その比較に応答した駆動信号基準値の設定と、
3)この基準値に基づく動的画素要素駆動信号の生成用に配設してある。
【0015】
一例を挙げるに、検出手段120〜128は光強度を計測するフォトダイオード等の複数の光センサで構成することができる。一実施形態では、少なくとも一部の光センサ120〜128を画素要素102〜118間に点在させ、1以上の画素要素が出力する光を計測する。例えば、図1は4個のRGB画素要素群130,132,134,136間に配置した一部フォトセンサ(例えば、フォトセンサ122)を示す。
【0016】
図1に示すRGB画素要素が生成する光を計測する一つの方法は、赤色画素要素102,108,114のみを駆動し、そこから出力された光を検出手段120〜128に計測させるものである。光センサを各画素要素(或いはRGB画素要素群)ごとに配設した場合、光センサが計測する光は対応する赤色画素要素用の駆動信号基準値の設定に用いることができる。他方で、図1に示す如く光センサ122を画素要素群130〜136のいずれにも隣接するように配置した場合、その測光値は、光センサ122で検出するように構成されている各々の赤色画素要素に関する一(又は複数)の駆動信号基準値の設定に用いることができる。あるいは、1つの赤色画素要素から影響を受ける多数の光センサの測光値を組み合わせることもできる。こうして、複数の光センサの測光値を用い単一赤色画素要素の光出力を推定することができる。
【0017】
赤色画素要素102,108,114(或いは他の任意の色を有する画素要素)が生成する光を計測した後、他色の画素要素(緑色104,110,116や青色106,112,118)を同様の方法で計測することができる。
【0018】
図1に示したRGB画素要素130〜136が生成する光を計測する別の方法は、各光センサ120〜128を2以上の光センサで置換するものであり、各光センサは所定色(或いは色範囲)の光だけを計測させるようにするフィルタを備える。こうして、全ての画素要素102〜118を同時に駆動し、全ての測光値を同時に採取することが可能である。個々の画素要素102〜118に対し最大の制御をもたらす(最もきめ細かく制御可能とする)には、RGB画素要素群130〜136のそれぞれごとに一群のフィルタ付き光センサを組み合わせることが可能であることに留意されたい。さもなくば、経費節減のため、図1に示すものよりも低頻度で(配設ピッチを粗くして)光センサを実装することもできる。しかしながら、光センサの数を少なくすればするほど、その画素要素102〜118の個々が生成する光に対する自発光ディスプレイ100の制御は低下する(きめ細かい制御が困難となる)。
【0019】
ディスプレイ100の一実施形態では、測光はフォトダイオード120〜128を介してなされ、その電流は電圧に変換され、続いてディジタル化される。
【0020】
制御手段200(図2)は、ハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアベースの制御系とすることができる。制御系200の一実施形態では、赤色光や緑色光や青色光等の幾つかの光色(すなわち波長)のそれぞれについてスペクトル基準を維持する。異なる各色の光の計測結果は、対応するスペクトル基準と比較される。一例を挙げれば、各スペクトル基準はディジタル値の形態を取ることができる。これらのディジタル値は、ハードウェア結線したり、メモリに焼き付けたり、ソフトウェアやファームウェアにてプログラムしたりすることができる。一実施形態では、スペクトル基準は(例えば、ユーザがディスプレイ用に色温度を設定することで)ユーザによるディスプレイ100への入力或いはそのディスプレイに接続したコンピュータへの入力によって得ることができる。その対応するスペクトル基準に対する測光値の比較により、1以上の画素要素102〜118が生成するスペクトル成分が所定範囲内にあるかどうかの指示をもたらす。
【0021】
制御手段200は、ディスプレイ内の1以上(好ましくは全て)の画素要素102〜118に関する駆動信号基準値を記憶することもできる。これらの駆動信号基準値が、動的(ダイナミック)画素要素駆動信号を生成する際の基準(ベースライン)となる。換言すれば、駆動信号基準値は複数の画素要素102〜106に所定のスペクトル成分を生成させる駆動信号を示す。しかしながら、大半のディスプレイ100が本来動的(すなわち、それらの表示された文字や画像が時間と共に変化する)であることを考慮すると、それらの画素要素は必ずや可変スペクトル成分を生成する必要があろう。この可変スペクトル成分は、駆動信号基準値に応答して動的画素要素駆動信号を生成することにより生成される。こうして、ディスプレイの画素要素102〜118のスペクトル成分は、ディスプレイの画素要素102〜118の計測されたスペクトル成分から少なくとも部分的に導出される基準(ベースライン)に関連付けられる(ディスプレイの画素要素102〜118のスペクトル成分は、ディスプレイの画素要素102〜118の計測されたスペクトル成分が少なくとも部分的に反映される)。ディスプレイのスペクトル成分の計測結果が、ディスプレイのスペクトル成分は範囲外であることを示すときは、ディスプレイのスペクトル成分を所定範囲内に収めるべく、駆動信号基準値を新しい値に設定する。
【0022】
制御手段200がディスプレイの画素要素102〜118のそれぞれに対し異なる駆動信号基準値を設定するときに(設定することによって)、ディスプレイのスペクトル成分に対する大半の制御が得られる。しかしながら、画素要素のスペクトル成分を所定範囲内に持ち込むための駆動信号を生成することが不可能であるような程度にまで画素要素のスペクトル成分が劣化するときも存在しよう。
【0023】
一実施形態では、ディスプレイ100のディスプレイ設定モード期間中に、制御手段200は検出手段120〜128から測光値を取得し、測光値の比較と基準値設定を実行する。そして、ディスプレイ100の通常動作期間中に動的駆動信号を生成することができる。ディスプレイ設定モードは、様々な方法でトリガ(起動)することができる。例えば、ディスプレイ100には、操作された時にディスプレイ100の通常動作に先立ってディスプレイ設定モードを起動する電源スイッチを具備させることができる。さもなくば(或いは追加的に)、ディスプレイ100をコンピュータシステムへ接続するI/Oポートをディスプレイに備え、ディスプレイのI/Oポートを介して所定のコマンドを受信したときにディスプレイ設定モードを起動することもできる。
【0024】
別の実施形態では、ディスプレイ100の通常の動作期間中に測光値を採取することができ、そして基準値を設定することができる。本実施形態では、ディスプレイの画素要素102〜118の一部又は全てがディスプレイの制御手段200による評価用に計測することのできる所定のスペクトル成分を周期的或いは一時的に表示することができる。しかしながら、実行可能ではあるものの、この種の実施形態は時として画面のフリッカを招こう。
【0025】
図1と図2において、ディスプレイの画素要素102〜118と検出手段120〜128は共通の基板138上に取り付けて図示してある。しかしながら、それらは必ずしもそうする必要はない。一実施形態では、基板138はディスプレイの画素要素102〜118と検出手段(例えば、光センサ120〜128)と制御手段200との間の相互接続をもたらすのに用いられる。また、制御手段200は必ずしも集中制御系(例えば、独立した1又は複数の集積回路)とする必要はなく、制御手段200の要素を例えば画素要素102〜118間に配設することもできる。
【0026】
ディスプレイの画素要素102〜118のスペクトル成分を較正する「当該分野」での使用に加え、本願明細書に開示した検出及び制御手段120〜128,200は初期表示較正期間中(例えば、製造及び試験期間中)にも使用できる点に留意されたい。
【0027】
図3は、自発光ディスプレイのスペクトル成分を較正する例示方法300を示す。一例を挙げるに、本方法300は図1と図2に示す装置100により実行することもできる。本方法300によれば、複数の自発光素子のうちの少なくとも一部を発光(302)させる。それらの光をそこで計測(304)し、1以上のスペクトル基準と比較(306)する。その後、この比較に応答して駆動信号基準値を設定(308)し、基準値に基づいて動的画素要素駆動信号を生成(310)する。好ましくは、本方法の措置は自動的に遂行され、かくしてそれ自体を較正するのにディスプレイへはユーザ入力は一切必要ない。
【0028】
本方法300の一実施形態では、このディスプレイの画素要素は2色以上の画素要素から構成してあり、画素要素は色群(複数の色の集合)として発光するように構成され、測光はそれぞれの色群に対して行われる。一例を挙げるに、ディスプレイに取り付けたコンピュータの起動時或いはディスプレイの電源投入時に、画素要素は色群として光を生成するように構成される。画素要素はまた、ディスプレイ設定モード期間中に色群として発光するように構成され、次いでディスプレイの通常の動作期間中に動的画素要素駆動信号が生成される。
【0029】
本発明の例示的かつ現在好適な実施形態をここに詳細に説明してきたが、本発明概念を別途様々に実施し採用したり、添付特許請求の範囲が先行技術による限定を除きこの種変形例を包含すると解釈されることを意図するものであることは理解されたい。
【0030】
なお、本発明は例として次の態様を含む。( )内の数字は添付図面の参照符号に対応する。
[1] 複数の自発光画素要素(102〜118)と、
前記複数の自発光画素要素の間に配設され、前記画素要素が発する光を計測する複数の光センサ(120〜128)と、
前記光センサ及び前記画素要素に結合され、計測した結果を1以上のスペクトル基準と比較し、前記比較の結果に応じて駆動信号基準値を設定し、前記基準値に基づき動的画素要素駆動信号を生成する制御系(200)と
を備えることを特徴とする自発光ディスプレイ(100)。
[2] 前記自発光画素要素(102〜108)は、プラズマ表示パネル画素要素を有することを特徴とする、上記[1]に記載のディスプレイ(100)。
[3] 前記自発光画素要素(102〜118)は、有機発光ダイオード画素要素を有することを特徴とする、上記[1]に記載のディスプレイ(100)。
[4] 前記光センサ(120〜128)の少なくとも一部は、一群の画素要素(102〜118)からの光を計測するよう位置決めされることを特徴とする、上記[1]に記載のディスプレイ(100)。
[5] 前記一群の画素要素(102〜118)は、対応する赤、緑、青の画素要素を備えることを特徴とする、上記[4]に記載のディスプレイ(100)。
[6] 前記一群の画素要素(102〜118)は、複数の類似色画素要素を備えることを特徴とする、上記[4]に記載のディスプレイ(100)。
[7] 異なる光センサ(120〜128)が異なる色の光を計測するように構成され、前記制御系(200)が異なる色の光を異なるスペクトル基準と比較するように構成されることを特徴とする、上記[1]に記載のディスプレイ(100)。
[8] i)前記制御系(200)は前記光センサから前記光の計測結果を取得し、前記自発光ディスプレイのディスプレイ設定モード期間中に前記比較及び前記基準値の設定の動作を実行し、
ii)前記自発光ディスプレイの通常動作期間中に前記動的画素要素駆動信号の生成を実行するように構成されることを特徴とする、上記[1]に記載のディスプレイ(100)。
[9] 操作した時に前記ディスプレイの通常動作に先立って前記ディスプレイ設定モードを起動させるように構成される電源スイッチをさらに備えることを特徴とする、上記[8]に記載のディスプレイ(100)。
[10] 前記ディスプレイをコンピュータシステムへ接続するためのI/Oポートをさらに備え、予め定められたコマンドを前記ディスプレイのI/Oポートを介して受信することにより、前記ディスプレイ設定モードを起動するように構成されることを特徴とする、上記[8]に記載のディスプレイ(100)。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】自発光ディスプレイ内の画素要素と検出手段とスペクトル成分制御用制御手段を示す例示的正面図である。
【図2】図1に示した装置の側面図である。
【図3】自発光ディスプレイのスペクトル成分を較正する例示的な方法を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
100 自発光ディスプレイ
102,104,106,108,110,112,114,116,118 画素要素
120,122,124,126,128 フォトセンサ(検出手段)
130,132,134,136 RGB画素要素群
138 基板
200 制御系(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の自発光画素要素と、
前記複数の自発光画素要素の間に配設され、前記画素要素が発する光を計測する複数の光センサと、
前記光センサ及び前記画素要素に結合され、計測した結果を1以上のスペクトル基準と比較し、前記比較の結果に応じて駆動信号基準値を設定し、前記基準値に基づき動的画素要素駆動信号を生成する制御系と
を備えることを特徴とする自発光ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−3904(P2006−3904A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177626(P2005−177626)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】