説明

自発光表示パネルおよびその駆動制御方法

【課題】デュアルスキャン表示を行なうパッシブマトリクス駆動形式の表示パネルにおいて、上半分と下半分の境界線で瞬間的に輝線が生ずるような問題を解消すると共に、上半分と下半分に跨るようにして移動表示される図形が不自然な表示状態になることを解消する。
【解決手段】上半分と下半分の表示領域において、走査選択動作の方向が互いに異なるように、上半分のパネルは画面の上端から中央に向かってスキャンし、同時に下半分のパネルは画面の下端から中央に向かってスキャンし、上半分表示領域の走査選択動作の開始時刻と、下半分の表示領域の走査選択動作の開始時刻とが、少なくとも一走査線の走査時間以上異なるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子として例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を用い、表示パネルを二つの表示領域に分けてデュアルスキャン表示を行なうパッシブマトリクス駆動形式の自発光表示パネルおよびその駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や携帯型情報端末機(PDA)などの普及によって、高精細な画像表示機能を有し、薄型かつ低消費電力を実現することができる表示パネルの需要が増大しており、従来より液晶表示パネルがその要求を満たす表示パネルとして多くの製品に採用されてきた。一方、昨今においては自発光型表示素子であるという特質を生かした有機EL素子が製品化され、これが従来の液晶表示パネルに代わる次世代の表示パネルとして注目されている。これは素子の発光層に、良好な発光特性を期待することができる有機化合物を使用することによって、実用に耐え得る高効率化および長寿命化が進んだことも背景にある。
【0003】
前記した有機EL素子は、基本的にはガラス等の透明基板上に、例えばITOによる透明電極と有機EL媒体と金属電極とが順次積層されることで構成されている。そして、前記有機EL媒体は、有機発光層の単一層、あるいは有機正孔輸送層と有機発光層からなる二層構造の媒体、または有機正孔輸送層と有機発光層および有機電子輸送層からなる三層構造の媒体、さらにこれらの適切な層間に電子もしくは正孔の注入層を挿入した多層構造の媒体になされる場合もある。
【0004】
前記した有機EL素子は、電気的にはダイオード特性を有する発光エレメントと、この発光エレメントに並列に結合する寄生容量成分とによる構成に置き換えることができ、有機EL素子は容量性の発光素子であると言うことができる。この有機EL素子は、発光駆動電圧が印加されると、先ず、当該素子の電気容量に相当する電荷が電極に変位電流として流れ込み蓄積される。続いて当該素子固有の一定の電圧(発光閾値電圧=Vth)を越えると、一方の電極(ダイオード成分の陽極側)から発光層を構成する有機層に電流が流れ初め、この電流に比例した強度で発光すると考えることができる。
【0005】
そして、有機EL素子は電流・輝度特性が温度変化に対して安定しているのに対して、電圧・輝度特性が温度変化に対して不安定であること、また、有機EL素子は過電流を受けた場合に劣化が激しく、発光寿命を短縮させるなどの理由により、一般的には定電流駆動がなされる。かかる有機EL素子を用いた表示パネルとして、素子をマトリクス状に配列したパッシブ駆動型表示パネルが、すでに一部において実用化されている。
【0006】
図1には、従来のパッシブマトリクス型表示パネルと、その駆動回路の基本構成が示されている。このパッシブマトリクス駆動方式における有機EL素子のドライブ方法には、陰極線走査・陽極線ドライブ、および陽極線走査・陰極線ドライブの2つの方法があるが、図1に示された構成は前者の陰極線走査・陽極線ドライブの形態を示している。すなわち、m本のデータ線としての陽極線A1 〜Am が縦方向に配列され、n本の走査選択線としての陰極線K1 〜Kn が横方向に配列され、各々の交差した部分(計m×n箇所)に、ダイオードのシンボルマークによって示した有機EL素子E11〜Emnが配置されて、表示パネル1を構成している。
【0007】
そして、画素を構成する各EL素子E11〜Emnは、縦方向に沿う陽極線A1 〜Am と横方向に沿う陰極線K1 〜Kn との各交点位置に対応して、一端(EL素子の等価ダイオードにおけるアノード端子)が陽極線に、他端(EL素子の等価ダイオードにおけるカソード端子)が陰極線に接続されている。さらに、各陽極線A1 〜Am はその一端部においてデータドライバ2にそれぞれ接続され、各陰極線K1 〜Kn はその一端部において走査ドライバ3に接続されてそれぞれ駆動される。
【0008】
前記走査ドライバ3は、これに接続された前記陰極線K1 〜Kn を、順次択一的に例えば基準電位点(グランド)に接続することで走査選択し、前記データドライバ2は前記走査選択に同期して、各陽極線A1 〜Am に発光駆動電流を適宜供給することで、EL素子による画素を選択的に発光させるように動作する。
【0009】
ところで、この種のパッシブマトリクス駆動方式による表示パネルにおいては、パネルサイズを大型化させるにしたがって、ライン抵抗やライン容量が増加し、これによりRC応答時間が増大する。前記RC応答時間の増大による信号遅延はディスプレイにおける画像表示のレスポンス(応答動作)を悪くするだけでなく、個々の発光エレメントにおける走査時において発光閾値電圧に達する時間が遅れることから、ディスプレイの実質的な発光輝度を減少させる原因になる。この様な問題を解決するために、ディスプレイパネルを例えば上下に二分し、それぞれのディスプレイパネルを同時にスキャン(走査)する二重スキャン、すなわちデュアルスキャン方式が提案されている。
【0010】
前記したデュアルスキャン方式を採用した場合には、二つに分けたディスプレイパネルをそれぞれ同時にスキャン動作させることができるので、走査線一本ごとの走査時間を長く設定することが可能となり、発光素子の発光時間率(発光duty)を増大させることができる。したがって、発光素子に与える駆動電流を下げて素子の瞬間発光輝度を低下させるようにしても表示画面の明るさを十分に確保することが可能となる。なお、前記したデュアルスキャン駆動方式は次に示す特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2003−302937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図2は、前記したデュアルスキャン駆動方式を採用した場合の動作例を示したものであり、このデュアルスキャン駆動方式は、一般的に図2(A)または図2(B)に示す走査制御方法が考えられている。図2(A)および(B)において、パネルに配列されたn本(nは2の倍数の自然数)の走査線(以下、これをスキャンラインとも言う。)は、上半分と下半分に分けられてディスプレイパネル1Aおよび1Bを構成している。
【0012】
図2において、各パネル1Aおよび1Bの右側にそれぞれ上から数えたスキャンラインを数字で示したとおり、上半分のパネル1Aには、1番目のスキャンラインから、n/2番目のスキャンラインまでのスキャンラインを有しており、これは上半分のパネル1Aに対応した図示せぬデータドライバおよび走査ドライバによって発光駆動される。また、下半分のパネル1Bには、n/2+1番目のスキャンラインから、n番目のスキャンラインまでのスキャンラインを有しており、これは下半分のパネル1Bに対応した図示せぬ同様のデータドライバおよび走査ドライバによって発光駆動される。
【0013】
ここで、図2(A)に示す走査制御方法においては、1番目〜n/2番目の上半分のスキャンラインを、1番目から順にn/2番目に向かってスキャンし、同時にn/2+1番目〜n番目の下半分のスキャンラインを、n/2+1番目から順にn番目に向かってスキャンするようになされる。すなわち、図2(A)における左側に表示した矢印は、上半分および下半分の各パネルをスキャンする走査方向を示している。
【0014】
また、図2(B)に示す走査制御方法においては、前記とは逆の方向にそれぞれスキャンする例を示している。すなわち、図2(B)に示す走査制御方法においては、1番目〜n/2番目の上半分のスキャンラインを、n/2番目から順に1番目に向かってスキャンし、同時にn/2+1番目〜n番目の下半分のスキャンラインを、n番目から順にn/2+1番目に向かってスキャンするようになされる。すなわち、図2(B)における左側に表示した矢印は、上半分および下半分の各パネルをスキャンする走査方向を示している。
【0015】
ところで、前記した図2(A)および(B)に示すいずれの走査制御方法を採用しても、上半分と下半分に跨るように表示される図形が、例えば水平方向に速く動くような表示がなされる場合においては、以下のような不具合が発生することになる。図3は前記した図2(A)に示すように上半分と下半分の各パネル1A,1Bを上から下方向に同時にスキャン(走査)する場合の例を示している。そして、図3(A)は上半分と下半分に跨るように表示されるブロック状の図形Fが、画面の右寄りに表示されている状態を示しており、図3(B)は次のフレームにおいて、前記ブロック状の図形Fが白抜きの矢印で示すように画面の中央寄りに移動して表示される状況を示している。
【0016】
図4は、図3に示したようなブロック状の図形Fの移動表示に伴う、スキャンラインごとの点灯画素の動きを模式的に説明するものであり、上半分と下半分に跨る境界付近を拡大して示した点灯画素の模式図である。そして、図4(a)〜(g)が1フレームの期間における点灯画素の動きを示している。なお、前記した有機EL素子に代表される自発光素子を画素に用いた表示パネルにおいては、いわゆるノーマリーブラックの特性であるので、本来は非点灯状態が黒で、点灯状態が白で示されるところ、図4においては図示の都合により前記黒と白の関係は反転させて表示している。
【0017】
図4(a)は、図3(A)に示すようにブロック状の図形Fが、画面の右寄りに表示されている状態を示している。この図4(a)に示す状態において、走査の開始と同時に、まず下半分のパネルにおける第1行、すなわち前記したn/2+1番目のラインのスキャンが実行されるため、図4(b)中に白抜きの矢印で示すようにn/2+1番目のラインにおける画素が画面の中央寄りに移動して点灯されることになる。次にn/2+2番目のラインのスキャンが実行されるため、図4(c)中に白抜きの矢印で示すようにn/2+2番目のラインにおける画素が画面の中央寄りに移動して点灯されることになる。
【0018】
さらに同様に、次にn/2+3番目のラインのスキャンが実行されるため、図4(d)中に白抜きの矢印で示すようにn/2+3番目のラインにおける画素が画面の中央寄りに移動して点灯されることになる。以上説明した図4(a)〜(d)の期間においては、上半分のパネルにおいては、上から順に1番目〜3番目のラインがスキャンされているので、画面の上半分における境界付近の点灯画素は、画面の中央寄りに移動することはない。
【0019】
そして各ラインのスキャンが進行して、1フレームの終わりに近い図4(e)に示す状態となった時に、上半分におけるn/2−2番目のラインのスキャンが実行されるため、ここで初めて上半分における点灯画素が白抜きの矢印で示したとおり画面の中央寄りに移動して点灯されることになる。これに続いて、上半分のパネルにおけるn/2−1番目のラインのスキャンが実行されるため、図4(f)中に白抜きの矢印で示すようにn/2−1番目のラインにおける画素が画面の中央寄りに移動して点灯される。
【0020】
さらに1フレーム期間の最後においてn/2番目のラインのスキャンが実行されるため、図4(g)中に白抜きの矢印で示すようにn/2番目のラインにおける画素が画面の中央寄りに移動して点灯されることになる。これにより、図3(B)に示したようにブロック状の図形Fが画面の中央寄りに移動して表示されることになる。
【0021】
前記した説明で明らかなように、図4(d)に示すように下半分のパネルに表示される点灯画素の移動の終了から、図4(e)に示すように上半分のパネルに表示される点灯画素の移動の開始に至る期間は、1フレームに近い期間を要することになる。これは人間の視覚において残像感として認識されるため、1つのブロック状の図形でありながら、二つに分かれたような違和感を抱くように認識される。なお、前記した説明はブロック状の図形が画面の右端から中央寄りに移動する場合のような比較的単純な動作を例にしているが、現実には前記図形がさらに画面の左端に、また急速に往復移動するような複雑な変化も発生し得る。この様な場合には前記した違和感がさらに顕著に感じられることになる。
【0022】
そこで、前記したような違和感が発生するのを防止させるために図5に示したように、上半分のパネルは1番目〜n/2番目のスキャンラインを、1番目から順にn/2番目に向かって(すなわち、画面の上端から中央に向かって)スキャンし、同時に下半分のパネルはn/2+1番目〜n番目のスキャンラインを、n番目から順にn/2+1番目に向かって(すなわち、画面の下端から中央に向かって)スキャンする手段を採用することが考えられる。なお、図5(a)における左側に表示した矢印は、上半分および下半分の各パネルをスキャンする走査方向を示している。
【0023】
図5(a)〜(d)は、図3に示したように1フレームの期間において、上半分と下半分に跨るように表示されるブロック状の図形Fが、すでに説明した例と同様に画面の右寄りから画面の中央寄りに移動して表示される状況を示している。すなわち、図5(a)〜(d)が1フレームの期間における点灯画素の動きを示している。
【0024】
図5に示した走査方法によると、1フレーム期間の終了間際まで、図5(a)に示すように上半分のパネルおよび下半分のパネルにおける点灯画素の動きはない。そして、その終了間際において図5(b)に示すように上半分のパネルにおけるn/2−2番目のラインおよび下半分のパネルにおけるn/2+3番目のラインが同時にスキャンされるため、これに対応するラインの画素が、それぞれ画面の中央寄りに移動して点灯されることになる。
【0025】
また、次の走査タイミングにおいて図5(c)に示すように上半分のパネルにおけるn/2−1番目のラインおよび下半分のパネルにおけるn/2+2番目のラインにおける画素が同時に中央寄りに移動して点灯される。同様に1フレームの最後の走査タイミングにおいて、図5(d)に示すように上半分のパネルにおけるn/2番目のラインおよび下半分のパネルにおけるn/2+1番目のラインにおける画素が同時に中央寄りに移動して点灯される。
【0026】
図5に示した走査方法を採用しても、1つのブロックの図形Fが時間的に分割されて画面を移動する状況が発生するが、そのブロック全体が移動に要する時間は、すでに説明した図4に示す走査方法を採用した場合に比較してきわめて短時間となる。したがって、人間の視覚による残像作用は受けにくく、図4に示した例のように違和感を抱く問題を解消することができる。
【0027】
ところで、図5に示した走査方法を採用した場合においては、パネルの上半分における最も下の走査線(n/2番目の走査線)と、下半分における最も上の走査線(n/2+1番目の走査線)とが同時に走査選択状態になされる。すなわち、上下に隣り合う走査線にある画素が発光することになる。この様な場合には、人間の視覚においては前記二本の走査線が通常よりも明るい線として認識されてしまうという不都合が生ずる。
【0028】
なお、先行技術文献として先に示した特許文献1においては、上半分と下半分のパネルにおいて同じ方向に走査した場合、すなわち、すでに説明した図2(A)もしくは(B)に示した走査方法を採用した場合には、瞬間的に強い光が発光されると記載されている。ただし、その根拠は明確にしていない。しかし、輝線が生ずるのは中央部を対称軸とした走査方法を採用した図5に示したような場合であって、隣合った走査線が走査選択状態にある場合、人間の視覚には発光がより強く認識されることは、本件の発明者においても実験において確認している。
【0029】
この発明は、前記したような技術的な観点に基づいてなされたものであり、デュアルスキャン表示を行なうパッシブマトリクス駆動形式の表示パネルにおいて、その上半分と下半分の境界線で瞬間的に輝線が生ずるような問題を解決すると共に、上半分と下半分に跨るように表示される図形が急激に水平方向に移動するような場合において、人間の視覚の残像感によって認識されるすでに説明したような違和感の発生を効果的に解消することができる自発光表示パネルおよびその駆動制御方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる自発光表示パネルは、請求項1に記載のとおり、第一の表示領域と第二の表示領域を有し、それぞれの表示領域に配列された自発光素子に対してデータドライバより表示データを与えると共に、走査ドライバによって前記第一と第二の表示領域の走査選択動作が互いに同期して順次実行されるように構成されたデュアルスキャン表示を行なうパッシブマトリクス型の自発光表示パネルであって、各フレーム期間ごとにおける前記第一の表示領域の走査選択動作の開始時刻と、前記第二の表示領域の走査選択動作の開始時刻とが、少なくとも一走査線の走査時間以上異なるように制御する走査手段が具備されている点に特徴を有する。
【0031】
また、前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる自発光表示パネルの駆動制御方法は、請求項6に記載のとおり、第一の表示領域と第二の表示領域を有し、それぞれの表示領域に配列された自発光素子に対してデータドライバより表示データを与えると共に、走査ドライバによって前記第一と第二の表示領域の走査選択動作が互いに同期して順次実行されるように構成されたデュアルスキャン表示を行なうパッシブマトリクス型自発光表示パネルの駆動制御方法であって、各フレーム期間ごとにおける前記第一の表示領域の走査選択動作の開始時刻と、前記第二の表示領域の走査選択動作の開始時刻とが、少なくとも一走査線の走査時間以上異なるように制御する点に特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、この発明にかかるパッシブマトリクス型自発光表示パネルとその駆動制御方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図6はこの発明にかかる駆動制御方法を採用した第1の実施の形態を示したものであり、これは最も基本的な駆動制御方法を示したものである。この図6(a)〜(f)は1フレーム期間における走査状況を順に示したものであり、図6において上半部と下半分、すなわち第一の表示領域と第二の表示領域において、すでに説明したとおりデュアルスキャン表示が行なわれる。
【0033】
この場合、図6(a)に矢印で示したように第一の表示領域の走査選択動作の方向と、第二の表示領域の走査選択動作の方向が互いに異なるように、すなわち上半分のパネルは1番目〜n/2番目のスキャンラインを、1番目から順にn/2番目に向かって(すなわち、画面の上端から中央に向かって)スキャンし、同時に下半分のパネルはn/2+1番目〜n番目のスキャンラインを、n番目から順にn/2+1番目に向かって(すなわち、画面の下端から中央に向かって)スキャンする手段が採用される。
【0034】
さらに図6に示す実施の形態においては、フレーム期間ごとにおける上半分のパネルにおける走査選択動作の開始時刻と、下半分のパネルにおける走査選択動作の開始時刻とが、一走査線の走査時間分異なるように制御される。なお、図6(a)〜(f)においては走査選択動作がなされているライン、すなわちスキャンラインを白抜きで示しており、その右側にスキャンラインのラインナンバーを示している。
【0035】
まず、1フレーム期間の開始時においては、図6(a)に示すように上半分のパネルにおける1番目のラインがスキャンされる。この時、下半分のパネルにおいてはいずれのラインもスキャンされない状態になされる。次の走査タイミングにおいては図6(b)に示すように上半分のパネルにおける2番目のラインがスキャンされ、下半分のパネルにおけるn番目のラインがスキャンされる。この様に、上半分のパネルにおける走査選択動作の開始時刻と、下半分のパネルにおける走査選択動作の開始時刻とが、一走査線の走査時間分異なるようになされる。
【0036】
さらに次の走査タイミングにおいては、図6(c)に示すように上半分のパネルにおける3番目のラインがスキャンされ、下半分のパネルにおけるn−1番目のラインがスキャンされる。以上のようにして、上半分および下半分の各パネルにおいては、前記走査タイミングに同期して順次走査選択動作が実行される。
【0037】
図6(d)以降は、1フレーム期間の終了直前における走査の状況を説明するものである。すなわち、図6(d)においては上半分のパネルにおけるn/2−1番目のラインがスキャンされ、この時、下半分のパネルにおいてはn/2+3番目のラインがスキャンされる。次の走査タイミングにおいては図6(e)に示すように上半分のパネルにおけるn/2番目のラインがスキャンされ、同時に下半分のパネルにおけるn/2+2番目のラインがスキャンされる。
【0038】
そして、1フレーム期間の最後の走査タイミングにおいては図6(f)に示すように上半分のパネルにおいてはすでにスキャン動作は終了し、いずれのラインもスキャンされない状態になされる。この時、下半分のパネルにおいてはn/2+1番目の最後のラインがスキャンされる。以上説明した走査状態をまとめると、次の表1のように示すことができる。なお、表1において「なし」との表示は、上半分もしくは下半分のパネルにおいて、いずれのラインもスキャンされない状態を示している。
【0039】
【表1】

【0040】
前記した走査方法を採用した場合によると、隣合った走査線が同時に走査選択状態になされることはなく、したがって上半分と下半分のパネルの境界線で瞬間的に輝線が生ずるような問題を回避することができる。また、上半分のパネルの走査選択動作の方向と、下半分のパネルの走査選択動作の方向が互いに異なるようになされるので、上半分と下半分のパネルの境界線付近の走査タイミングの時間的なずれを少なくすることができ、人間の視覚の残像感によって認識されるすでに説明したような違和感の発生を効果的に解消させることができる。
【0041】
ところで、前記した走査方法を採用した場合によると、表1に「なし」と表示したように、1フレームの期間において上半分もしくは下半分のパネルにおいて、いずれのラインもスキャンされない状態が発生することになる。そこで、この「なし」の期間を積極的に利用して、上半分もしくは下半分のパネルにおける全てのEL素子に対して、逆バイアス電圧を印加する手段を採用することができる。この様にEL素子に対して、定期的に逆バイアス電圧を印加するようにした場合、EL素子の発光寿命を延ばすことができることが知られている(例えば、特開2004−70057号公報、特開2002−169510号公報参照)。
【0042】
図7は、発光動作に寄与しない逆バイアス電圧を印加させることができるパッシブマトリクス型表示パネルとそのドライブ回路(データドライバ2と走査ドライバ3)の構成例を示したものである。なお、図7に示す構成はデュアルスキャン表示方式に利用される一方の表示パネル(例えば上半分の表示パネル1A)とそのドライブ回路の例を示したものであり、他方の表示パネルとそのドライブ回路についても図7に示す構成と同様になされる。なお、図7に示す上半分の表示パネル1Aの構成については、すでに説明した図1に示した表示パネル1とその構成は同一であり、したがって、その詳細な説明は省略する。
【0043】
図7におけるデータドライバ2には、駆動電圧源VH からの駆動電圧Vh を利用して動作する定電流源I1 〜Im およびドライブスイッチSa1〜Samが備えられており、ドライブスイッチSa1〜Samが、前記定電流源I1 〜Im 側に接続されることにより、定電流源I1 〜Im からの電流が、陽極線A1 〜Am に対応して配置された個々のEL素子E11〜Emnに対して駆動電流として供給されるように作用する。また、前記ドライブスイッチSa1〜Samは、逆バイアス電圧源VM からの逆バイアス電圧Vm 、プリチャージ電圧源VR からのプリチャージ電圧Vr 、もしくは基準電位点としてのグランド電位GNDが陽極線に対応して配置された個々のEL素子E11〜Emnに対して供給されるように構成されている。
【0044】
一方、走査ドライバ3には、各陰極線K1 〜Kn に対応して走査スイッチSk1〜Sknが備えられ、クロストーク発光等を防止するための前記した逆バイアス電圧源VM からの逆バイアス電圧Vm 、もしくは基準電位点としてのグランド電位GNDのうちのいずれか一方を、対応する陰極線に接続するように作用する。
【0045】
なお、前記したデータドライバ2および走査ドライバ3には、図示せぬCPUを含む発光制御回路よりコントロールバスを介してそれぞれに制御信号が供給され、表示すべき映像信号に基づいて、前記走査スイッチSk1〜SknおよびドライブスイッチSa1〜Samの切り換え操作がなされる。これにより、映像信号に基づいて陰極走査線を所定の周期でグランド電位に設定しながら所望の陽極線に対して定電流源I1 〜In が接続され、前記各EL素子E11〜Emnが選択的に発光されることで、表示パネル1上に前記映像信号に基づく画像が表示される。
【0046】
なお、図7に示す状態は、第2の陰極線K2 がグランド電位に設定されて走査状態になされ、この時、非走査状態の各陰極線K1 ,K3 〜Km には、前記した逆バイアス電圧源VM からの逆バイアス電圧Vm が印加される。ここで、走査発光状態におけるEL素子の順方向電圧をVf とした時、〔(順方向電圧Vf )−(逆バイアス電圧Vm )〕<(発光閾値電圧Vth)の関係となるように各電位設定がなされており、したがってドライブされている陽極線と走査選択がなされていない陰極線との交点に接続された各EL素子がクロストーク発光するのが防止されるように作用する。
【0047】
ところで、表示パネル1Aに配列された各有機EL素子は前記したように個々に寄生容量を有しており、これが陽極線と陰極線との交点位置にマトリクス状に配列されているがため、例えば1つの陽極線に数十個のEL素子が接続されている場合を例にすると、当該陽極線から見て各寄生容量の数百倍もしくはそれ以上の合成容量が負荷容量として陽極線に接続されることになる。この合成容量はマトリクスのサイズが大きくなるにしたがって顕著に増大する。
【0048】
したがって、EL素子の点灯走査期間の先頭においては、陽極線を介した前記定電流源I1 〜Im からの電流は前記した合成負荷容量を充電するために費やされ、EL素子の発光閾値電圧(Vth)を十分に超えるまでに前記負荷容量を充電するには時間遅れが発生する。それ故、EL素子の発光の立ち上がりが遅れる(緩慢になる)という問題が発生する。特に、前記したようにEL素子の駆動源として定電流源I1 〜Im を用いた場合においては、定電流源は動作原理上、ハイインピーダンス出力回路であるがため、電流が制限されてEL素子の発光立ち上がりの遅れが著しくなる。
【0049】
これは、EL素子の点灯時間率を低下させることとなり、したがってEL素子の実質的な発光輝度を低下させるという問題を抱えることになる。そこで、前記した寄生容量によるEL素子の発光立ち上がりの遅れを無くすために図1に示す構成においては、プリチャージ電圧源VR が備えられている。
【0050】
図8は、前記したプリチャージ電圧源VR による電圧Vrを用いて、EL素子の寄生容量に対して電荷を充電するプリチャージ期間を含むEL素子の点灯駆動動作を示すタイミングチャートである。また図9は各期間においてデータ線(陽極線)、および走査線(陰極線)に印加される各電位の関係を示した図である。なお、図9に示す「非点灯走査期間」は、1フレームの期間において、例えば上半分のパネル1Aのいずれのラインもスキャンされない状態、すなわち前記した表1に「なし」と表示した期間を示す。
【0051】
図8における(a)は走査同期信号を示しており、この例においては前記走査同期信号に同期して、図8(b)に示すように先ずリセット期間が設定される。このリセット期間は表示パネル1Aに配列された各EL素子の寄生容量に蓄積されている電荷を放電させるために設定される。このリセット期間においては、図9に示されたようにデータ線および走査線の全てに対して、逆バイアス電圧源VM からの逆バイアス電圧Vm 、もしくはグランド電位GNDが供給される。
【0052】
すなわち、図7においてドライブスイッチSa1〜Samは、逆バイアス電圧源VM 側に接続されて各データ線A1 〜Am には逆バイアス電圧Vm が印加される。この時、走査スイッチSk1〜Sknも、逆バイアス電圧源VM 側に接続されて各走査線K1 〜Kn には逆バイアス電圧Vm が印加される。したがって、表示パネル1A上における各EL素子の寄生容量に蓄積されている電荷は放電され、リセット状態になされる。なお、図7に示す構成においてはドライブスイッチSa1〜Sam、および走査スイッチSk1〜Sknを全てグランド電位GNDに接続することによっても、同様にリセット状態にすることができる。
【0053】
前記したリセット期間の経過後には、図8(c)に示すようにプリチャージ期間に入り、走査対象となるEL素子の寄生容量に対して、発光閾値電圧Vthに近い電圧を充電させる動作がなされる。このプリチャージ期間においては、図9に示されたようにデータ線に対してプリチャージ電圧Vr が印加され、走査対象となる選択走査線にはグランド電位GNDが印加される。また、非選択走査線には逆バイアス電圧Vm が印加される。
【0054】
すなわち、図7においてドライブスイッチSa1〜Samはプリチャージ電圧源VR 側に選択され、走査選択線である例えば第2走査線K2 に対応する走査スイッチSk2がグランドに選択され、他の走査スイッチSk1,Sk3〜Sknは逆バイアス電圧源VM 側に選択される。これにより、走査選択線である第2走査線K2 に接続された各EL素子の寄生容量に対してプリチャージ電圧源VR からのプリチャージ電圧Vr が印加され、第2走査線K2 に接続されたEL素子の寄生容量に対して電圧Vr が充電される。
【0055】
続いて図8(d)に示すように点灯走査期間に入り、この点灯走査期間においては図9に示されたように点灯対象となるEL素子には定電流源I1 〜Im からの電流が供給される。また、走査選択線である例えば第2走査線K2 に対応する走査スイッチSk2がグランドに選択され、他の走査スイッチSk1,Sk3〜Sknは逆バイアス電圧源VM 側に選択される。
【0056】
これにより、走査選択線である第2走査線K2 に接続されてプリチャージを受けたEL素子のうち、点灯対象とされるEL素子は直ちに発光駆動され、結果として当該データ線にはEL素子の順方向電圧Vf が発生する。この時、非選択走査線には逆バイアス電圧Vm が印加され、前記したとおりドライブされているデータ線と走査選択がなされていない走査線との交点に接続された各EL素子がクロストーク発光するのが防止されるように作用する。そして、前記したリセット期間、プリチャージ期間、および点灯走査期間は、図8(a)に示された走査同期信号に同期して順次繰り返される。
【0057】
ところで、パッシブ駆動型の表示パネルにおいては、すでに説明したように非選択走査線に対して逆バイアス電圧Vm を印加することで、クロストーク発光を防止するように構成されているものの、その逆バイアス電圧Vm は一般にEL素子の順方向電圧Vf よりも小さな値である。したがって、表示パネルを構成するいくつかのまたは全てのEL素子が、数フレームもしくは数十フレームにわたって点灯状態が継続される場合には、各EL素子の極性に対して完全な逆バイアス電圧を印加させる機会が発生せず、前記したようにEL素子の発光寿命を延ばす効果を享受することができない。
【0058】
そこで、1フレーム期間内において、いずれのラインもスキャンされない前記した表1に「なし」と表示した期間において、全てのEL素子に対して逆バイアス電圧を印加させるようになされる。この期間を図9に「非点灯走査期間」として示している。
【0059】
この非点灯走査期間においては、図9に示すようにデータ線をグランドGNDに設定し、各走査線を逆バイアス電圧Vm に設定する操作が行われる。すなわち、図7に示すドライブスイッチSa1〜SamはグランドGNDを選択し、走査スイッチSk1〜Sknは逆バイアス電圧源VM を選択する。これにより、表示パネル1に配列された各EL素子は、画素の点灯状態に拘りなく、少なくとも1フレームの期間内に必ず全てのEL素子に対して逆バイアス電圧Vm が印加される。
【0060】
次に図10はこの発明にかかる駆動制御方法を採用した第2の実施の形態を示したものであり、この図10(a)〜(f)においても1フレーム期間における走査状況を順に示している。そして、図10における上半部と下半分、すなわち第一の表示領域と第二の表示領域においても、すでに説明したとおりデュアルスキャン表示が行なわれる。
【0061】
この図10に示す実施の形態においては、図10(a)に矢印で示したように第一の表示領域の走査選択動作の方向と、第二の表示領域の走査選択動作の方向が互いに異なるように、すなわち上半分のパネルは1番目〜n/2番目のスキャンラインを、n/2番目から順に1番目に向かって(すなわち、画面の中央から上端に向かって)スキャンし、同時に下半分のパネルはn/2+1番目〜n番目のスキャンラインを、n/2+1番目から順にn番目に向かって(すなわち、画面の中央から下端に向かって)スキャンする手段が採用される。
【0062】
そして、図10に示す実施の形態においては、フレーム期間ごとにおける上半分のパネルにおける走査選択動作の開始時刻と、下半分のパネルにおける走査選択動作の開始時刻とが、一走査線の走査時間分異なるように制御される。なお、図10(a)〜(f)においても走査選択動作がなされているライン、すなわちスキャンラインを白抜きで示しており、その右側にスキャンラインのラインナンバーを示している。
【0063】
まず、1フレーム期間の開始時においては、図10(a)に示すように上半分のパネルにおけるn/2番目のラインがスキャンされる。この時、下半分のパネルにおいてはいずれのラインもスキャンされない状態になされる。次の走査タイミングにおいては図10(b)に示すように上半分のパネルにおけるn/2−1番目のラインがスキャンされ、下半分のパネルにおけるn/2+1番目のラインがスキャンされる。この様に、上半分のパネルにおける走査選択動作の開始時刻と、下半分のパネルにおける走査選択動作の開始時刻とが、一走査線の走査時間分異なるようになされる。
【0064】
さらに次の走査タイミングにおいては、図10(c)に示すように上半分のパネルにおけるn/2−2番目のラインがスキャンされ、下半分のパネルにおけるn/2+2番目のラインがスキャンされる。以上のようにして、上半分および下半分の各パネルにおいては、前記走査タイミングに同期して順次走査選択動作が実行される。
【0065】
図10(d)以降は、1フレーム期間の終了直前における走査の状況を説明するものである。すなわち、図10(d)においては上半分のパネルにおける2番目のラインがスキャンされ、この時、下半分のパネルにおいてはn−2番目のラインがスキャンされる。次の走査タイミングにおいては図10(e)に示すように上半分のパネルにおける1番目のラインがスキャンされ、同時に下半分のパネルにおけるn−1番目のラインがスキャンされる。
【0066】
そして、1フレーム期間の最後の走査タイミングにおいては図10(f)に示すように上半分のパネルにおいてはすでにスキャン動作は終了し、いずれのラインもスキャンされない状態になされる。この時、下半分のパネルにおいてはn番目の最後のラインがスキャンされる。以上説明した走査状態をまとめると、次の表2のように示すことができる。なお、表2において「なし」との表示は、上半分もしくは下半分のパネルにおいて、いずれのラインもスキャンされない状態を示している。
【0067】
【表2】

【0068】
図10に示した走査方法を採用した場合においても、隣合った走査線が同時に走査選択状態になされることはなく、したがって上半分と下半分のパネルの境界線で瞬間的に輝線が生ずるような問題を回避することができる。また、上半分のパネルの走査選択動作の方向と、下半分のパネルの走査選択動作の方向が互いに異なるようになされるので、上半分と下半分のパネルの境界線付近の走査タイミングの時間的なずれを少なくすることができ、人間の視覚の残像感によって認識されるすでに説明したような違和感の発生を効果的に解消させることができる。
【0069】
そして、図10に示した上半分のパネルと下半分のパネルにおいても、すでに説明したとおり図7に示した表示パネル1Aとそのドライブ回路(データドライバ2と走査ドライバ3)の構成を用いることで、図8および図9に示したようなリセット動作およびプリチャージ動作を実行することができる。さらに表2に「なし」として示した期間において、前記したように表示パネル1Aに配列された各EL素子に対して逆バイアス電圧Vm を印加することができ、これによりEL素子の発光寿命を延命させることが可能となる。
【0070】
図11はこの発明にかかる駆動制御方法を採用した第3の実施の形態を示したものであり、この図11(a)〜(f)においても1フレーム期間における走査状況を順に示している。そして、図11における上半部と下半分、すなわち第一の表示領域と第二の表示領域においても、すでに説明したとおりデュアルスキャン表示が行なわれる。
【0071】
この図11に示す実施の形態においても、図11(a)に矢印で示したように第一の表示領域の走査選択動作の方向と、第二の表示領域の走査選択動作の方向が互いに異なるように、すなわち上半分のパネルは1番目〜n/2番目のスキャンラインを、n/2番目から順に1番目に向かって(すなわち、画面の中央から上端に向かって)スキャンし、下半分のパネルはn/2+1番目〜n番目のスキャンラインを、n/2+1番目から順にn番目に向かって(すなわち、画面の中央から下端に向かって)スキャンする手段が採用される。
【0072】
そして、図11に示す実施の形態においては、フレーム期間ごとにおける上半分のパネルにおける走査選択動作の開始時刻と、下半分のパネルにおける走査選択動作の開始時刻とが、二本の走査線の走査時間分異なるように制御される。なお、図11(a)〜(f)においても走査選択動作がなされているライン、すなわちスキャンラインを白抜きで示しており、その右側にスキャンラインのラインナンバーを示している。
【0073】
まず、1フレーム期間の開始時においては、図11(a)に示すように上半分のパネルにおけるn/2番目のラインがスキャンされる。この時、下半分のパネルにおいてはいずれのラインもスキャンされない状態になされる。次の走査タイミングにおいては図11(b)に示すように上半分のパネルにおけるn/2−1番目のラインがスキャンされるが、この時においても、下半分のパネルにおいてはいずれのラインもスキャンされない状態になされる。
【0074】
さらに次の走査タイミングにおいては、図11(c)に示すように上半分のパネルにおけるn/2−2番目のラインがスキャンされ、同時に下半分のパネルにおけるn/2+1番目のラインがスキャンされる。この様に、上半分のパネルにおける走査選択動作の開始時刻と、下半分のパネルにおける走査選択動作の開始時刻とは、二本の走査線の走査時間分異なるようになされる。そして、以上のようにして、上半分および下半分の各パネルにおいては、前記走査タイミングに同期して順次走査選択動作が実行される。
【0075】
図11(d)以降は、1フレーム期間の終了直前における走査の状況を説明するものである。すなわち、図11(d)においては上半分のパネルにおける1番目のラインがスキャンされ、この時、下半分のパネルにおいてはn−2番目のラインがスキャンされる。次の走査タイミングにおいては図11(e)に示すように上半分のパネルにおいてはすでにスキャン動作は終了し、いずれのラインもスキャンされない状態になされる。この時、下半分のパネルにおいてはn−1番目のラインがスキャンされる。
【0076】
そして、1フレーム期間の最後の走査タイミングにおいては図11(f)に示すように上半分のパネルにおいては同様にスキャン動作は終了し、いずれのラインもスキャンされない状態になされ、この時、下半分のパネルにおいてはn番目の最後のラインがスキャンされる。以上説明した走査状態をまとめると、次の表3のように示すことができる。なお、表3において「なし」との表示は、上半分もしくは下半分のパネルにおいて、いずれのラインもスキャンされない状態を示している。
【0077】
【表3】

【0078】
図11に示した走査方法を採用した場合においても、隣合った走査線が同時に走査選択状態になされることはなく、したがって上半分と下半分のパネルの境界線で瞬間的に輝線が生ずるような問題を回避することができる。また、上半分のパネルの走査選択動作の方向と、下半分のパネルの走査選択動作の方向が互いに異なるようになされるので、上半分と下半分のパネルの境界線付近の走査タイミングの時間的なずれを少なくすることができ、人間の視覚の残像感によって認識されるすでに説明したような違和感の発生を効果的に解消させることができる。
【0079】
そして、図11に示した上半分のパネルと下半分のパネルにおいても、すでに説明したとおり図7に示した表示パネル1Aとそのドライブ回路(データドライバ2と走査ドライバ3)の構成を用いることで、図8および図9に示したようなリセット動作およびプリチャージ動作を実行することができる。さらに表3に「なし」として示した期間において、前記したように表示パネル1Aに配列された各EL素子に対して逆バイアス電圧Vm を印加することができ、これによりEL素子の発光寿命を延命させることが可能となる。
【0080】
なお、以上説明したこの発明にかかる実施の形態においては、表示パネルに配列される自発光素子として有機EL素子を用いた例を示しているが、前記自発光素子としては、ダイオード特性を有する他の素子を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】パッシブマトリクス型表示パネルとその駆動回路の一例を示した結線図である。
【図2】デュアルスキャン駆動方式を採用した場合の走査の例を示した模式図である。
【図3】同じくデュアルスキャン駆動方式を採用し、上半分と下半分の画面に跨るようブロック状の図形が表示された例を示す模式図である。
【図4】図3に示した図形の移動表示に伴うスキャンラインごとの点灯画素の動きを説明する模式図である。
【図5】スキャン方向を変えて図4に示した点灯画素の動きの不自然さを解消する例を示した模式図である。
【図6】この発明にかかる第1の実施の形態における走査状況を説明する模式図である。
【図7】図6に示す実施の形態において好適に採用し得る表示パネルとそのドライブ回路の例を示した回路構成図である。
【図8】図7に示した回路構成における点灯駆動動作を示すタイミングチャートである。
【図9】図8に示した各期間においてデータ線および走査線に印加される各電位の関係を示した図である。
【図10】この発明にかかる第2の実施の形態における走査状況を説明する模式図である。
【図11】同じく第3の実施の形態における走査状況を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0082】
1 発光表示パネル
1A 発光表示パネル(第一の表示領域)
1B 発光表示パネル(第二の表示領域)
2 データドライバ
3 走査ドライバ
A1 〜Am ドライブ線(陽極線)
E11〜Emn 自発光素子(有機EL素子)
I1 〜Im 定電流源
K1 〜Kn 走査線(陰極線)
Sa1〜Sam ドライブスイッチ
Sk1〜Skn 走査スイッチ
VH 駆動電圧源
VM 逆バイアス電圧源
VR プリチャージ電圧源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の表示領域と第二の表示領域を有し、それぞれの表示領域に配列された自発光素子に対してデータドライバより表示データを与えると共に、走査ドライバによって前記第一と第二の表示領域の走査選択動作が互いに同期して順次実行されるように構成されたデュアルスキャン表示を行なうパッシブマトリクス型の自発光表示パネルであって、
各フレーム期間ごとにおける前記第一の表示領域の走査選択動作の開始時刻と、前記第二の表示領域の走査選択動作の開始時刻とが、少なくとも一走査線の走査時間以上異なるように制御する走査手段が具備されていることを特徴とする自発光表示パネル。
【請求項2】
前記走査手段は、前記第一の表示領域における走査選択動作の方向と、前記第二の表示領域における走査選択動作の方向が、互いに異なる方向に走査できるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の自発光表示パネル。
【請求項3】
前記第一の表示領域と前記第二の表示領域における走査線数が、互いに等しく構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自発光表示パネル。
【請求項4】
走査選択がなされない一部の期間において、前記走査ドライバと前記データドライバにより前記自発光素子に逆バイアス電圧が印加されるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の自発光表示パネル。
【請求項5】
前記自発光素子は電極間に少なくとも一層の有機発光機能層を有する有機EL発光素子であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の自発光表示パネル。
【請求項6】
第一の表示領域と第二の表示領域を有し、それぞれの表示領域に配列された自発光素子に対してデータドライバより表示データを与えると共に、走査ドライバによって前記第一と第二の表示領域の走査選択動作が互いに同期して順次実行されるように構成されたデュアルスキャン表示を行なうパッシブマトリクス型自発光表示パネルの駆動制御方法であって、
各フレーム期間ごとにおける前記第一の表示領域の走査選択動作の開始時刻と、前記第二の表示領域の走査選択動作の開始時刻とが、少なくとも一走査線の走査時間以上異なるように制御することを特徴とする自発光表示パネルの駆動制御方法。
【請求項7】
走査選択がなされない一部の期間において、前記走査ドライバと前記データドライバにより前記自発光素子に逆バイアス電圧を印加することを特徴とする請求項6に記載の自発光表示パネルの駆動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−23539(P2006−23539A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201459(P2004−201459)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】