説明

自発動力を援用する移動型浄水システム及びそれを使用する装置

【課題】 自発動力を援用する移動型飲料水製造システム及びそれを使用する装置の提供。
【解決手段】 移動可能な少なくとも一つの収納体に設営された濾過ユニットよりなる着脱可能端子を有する浄水機能部、給水端子付原水供給機能部、精製水配水機能部より構成された可搬型浄水機構に於いて、該給水端子付原水供給機能部のポンプ駆動軸力に、機器設定地に於ける自発動力を援用することを特徴とする移動型浄水システム及びこれを組み込んだ装置にある。
具体的な例として、重力を活用し人力を補助手段として回転輪を要し軸力を得る方式、他の方法として、災害時に現地で調達可能な放置状態の可動車輌の車輪より得られる回転力を物理的に移送しポンプの軸力として活用する方式、これらの手法によりポンプの回転動力を創出し原水を移動型水精製装置に供給し精製水を得るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予期せぬ事態、例えば震災ほか災害時に対応可能な浄水システム及びそのシステムを使用する移動型浄水製造手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、震災や洪水など災害発生時に飲料水を確保する事は、多くの困難を伴い並大抵の努力では対応出来ず多くの専門機関において検討がなされて来た。
例えば、自治体などでは学校等のプールの水を対象に緊急時の水源に利用する準備がなされている例が多く知られている。しかし、これらの水源を活用し浄水するにしても、商用電力が使用不可状態に備え動力源に専用のエンジン設備の稼動が必要とされている。
即ち、水源の確保と原水の浄水処理ユニットへの供給がなされてはじめて飲料水への精製が開始される事に繋がる。
【0003】
災害時の如く緊急時に於いて飲料水を得るには、応用形態を含め大略以下に示す六つのケースに分類出来る。
1) 平時より蓄えられている完全な飲料用備蓄水を活用する。
2) 防火用水、或いはプール、雨水など溜め水などを原水として予め用意された動力 を介して浄水して飲料水に精製する。
3) 既設の井戸水を緊急手段による動力を介して水を汲み上げて浄水して飲料水とす る。
4) 簡易な蒸発手段を通じて色んな原水より少量レヴェルでの飲料水を得る。
5) 本格的な造水設備を搭載し完備した車両にて、あらゆる原水を浄水して飲料水と する。
6) 人力及び電気、内燃機関などにて得られる動力にて駆動するポンプを用い広範囲 の原水を対象に、予め用意した浄水機構に移送して飲料水を得る。
【0004】
上述のケースで、上記1)及び4)を除外すると、何れの浄水方法も何らかの公知手段である濾過手段を組み込んだ水の精製工程を介し飲料水を得る点で共通する方式である。
これらの中で2)、3)、5)6)などのケースでは、原水を移送するポンプの動力として予め用意された商用電力或いは自家発電による電力、又は内燃機関を活用するものとされ、これらの手法は数多くの公知文献に報じられている。(例えば、特許文献1,2,3などを参照)
唯、ケース6)については、一部人力による回転力も一般論的に想定される手法の範囲として理解出来る。ところが、具体的に検討すると災害時など周辺が破壊された環境下に於いて、非常事態に即対応可能な汎用的手段として何を対象と出来るかに付いて、具体的に未だ不十分である。
【0005】
この様な観点より本発明者等は、その対策として従来飲料水の精製に実用されている各種浄水装置と、これに付随して緊急時にテンポラリーに活用できる原水ポンプを含む水移送手段に関し鋭意検討した。
結果として、ポンプの回転軸力の確保手段として、一つは災害時に現地で調達可能手段として放置状態の可動車輌の車輪より得られる回転力を活用し原水ポンプの軸力として活用する方式、その他の手段として常時何処でも発生可能な重力を活用する回転軸力を活用しポンプの軸力或いはその補助として活用する何らかのシステムの必要性を感得した。
【0006】
一方、既に人力による非常時用自転車駆動力を活用したペリスタルティックポンプとして、水を送水するポンプに活用出来るとした報告がなされている。(例えば、特許文献4を参照)又、自転車或いはモーターサイクルの駆動輪に直結して作動する如く組み込まれたポンプ並びに浄水装置(例えば、特許文献5を参照)、自転車の駆動輪に摩擦力を介してプーリー機構により得られた回転力にてポンプを駆動して濾過精製する浄水装置(例えば、特許文献6参照)などが知られている。
【0007】
しかしながら、これらは予め特殊装置を施した自転車或いはモーターサイクルなどの装置並びに付属機器類を使用現地に搬送する必要が有り、用意した浄水装置に連結し多大のエネルギーを要する原水の供給に人力(自転車のペダルを踏むなど)の継続的供給、或いはエンジン機動力の供給を必要とするなどの難点が多い。特に、エンジン稼動に要する燃料の調達や人力の供給者などの召集など連続稼動するには解決すべき問題が多い。
又他の報告として、上述したケース4)に類する現地調達型の飲料水精製手段として、最低限の飲料水を少数の人数で求める方法に簡易蒸留方式による飲料水製造も知られている。(例えば、特許文献7参照)
この方法は、極少数人のサバイバル手段とした方法で、活用可能性はあるが余りにも少量の飲料水しか期待出来ず緊急時とは言え実用性に乏しい。
【0008】
【特許文献1】 特開2002−136966
【特許文献2】 特開2006−102683
【特許文献3】 特開2006−346666
【特許文献4】 特開2005−163767
【特許文献5】 再公表特許WO00/59832
【特許文献6】 特開平9−285783
【特許文献7】 特開平10−192839
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者等は、予期せぬ事態、災害時の如き極限状態でも移動型浄水システムを確実に作動できる手段について鋭意検討した。即ち、緊急状態下に於いて如何にしてテンポラリーに得られる現地自発型動力を獲得しこれをポンプの軸動力源に活用するかに力を注いだ。
その結果、災害など全てが破壊された緊急時に於いても、確実に構築出来る手段が得られることに気付き、ここに課題を絞り目的を達成することにした。
【0010】
本発明の手段は、上記に示される公知例などの諸事実や文献などの報告を詳細に検討したが、手段の構成に於いても異なるが、技術的に見て本発明の如き課題を解決するべき意図は取上げられていない。本発明者等の対象とする課題解決に一部人力を使用するが、本発明の目的を達成するためには、他の手段を構成要件をも含める点で特徴を有する。
【0011】
本発明者等は、以上の考究を通じ例えば震災ほか災害時など周辺が破壊状態で商用電力が使用不可状態、或いは緊急車両などの活用が不可能な場合に備え、これらの事態に対応可能な浄水システムの構築を課題とし、特に浄水装置への原水の緊急供給手段の確保として、水移送ポンプ(膜濾過用)と薬液注入用ポンプの稼動手段を中心とした各種浄水装置などの運転を目標とした。
【0012】
原水の選択として、予め用意された防火用水、或いはプール、雨水などの溜め水又は井戸水の原水など比較的上質の素材が得られる場合には、格納庫に非常用機器として関連機材を保管すれば容易に対応出来る点で極めて好ましい。
しかし、河川水をはじめ汚濁水質を含む一般水に関しては、簡易な精製手段のみでは対応できず、場合により限外濾過膜、精密濾過膜の高度濾過、或いは凝集沈澱処理などの前処理工程を必要とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、これら重度の処理工程を必要とする場合に対応するには、緊急時にテンポラリーにポンプに高い回転力を供給する軸力を如何にして得るかを焦点に、各種併用手段も考慮の上、重力を活用しこれに人力を補助として回転力を創出する手段を第一とした。
他のポンプ用回転軸力を得る第二の確保手段として、災害時に現地で調達可能と目される放置状態の可動車輌の車輪より得られる回転力を物理的に移送しポンプの軸力として活用する方式として援用する。
特に、第一の手段に於いて常時何処でも発生可能な重力を活用するに際し、偏重荷重により回転する円輪工作物を要し、得られた回転軸力を物理的に移送しポンプの軸力或いはその補助として活用する方法が優れているものと考えた。
【0014】
即ち、本発明の要旨とするところは、移動可能な少なくとも一つの収納体に設営された濾過ユニットよりなる着脱可能端子を有する浄水機能部、給水端子付原水供給機能部、精製水配水機能部より構成された可搬型浄水機構に於いて、該給水端子付原水供給機能部のポンプ駆動軸力に、機器設定地に於ける自発動力を援用することを特徴とする移動型浄水システム及びこれを組み込んだ装置にある。
【0015】
給水端子付原水供給機能部とは、ポンプの回転軸力を自発動力により調達するものであり、本発明の特徴である。ここに言う自発動力とは、現地で調達活用出来るいかなるエネルギーをも対象とする。代表例として、重力応用による適当な径の回転輪を起動し、その軸力を活用するが、この場合に必要に応じ荷重と回転するアームの半径を調節する等の手段を講じる。
更に、回転輪の補助として人力を介入せしめる機構を付設することが出来る。
また、自発動力として、幸いにも利用可能な放置車両が存在すれば、その動輪の回転力を軸力として活用することも出来る。
【0016】
特に、動力が存在しない条件下で強力な軸力を得る場合、重力応用による軸力発生源となる荷重とアームの組合せは重要な本発明の手段で、運動力発生の原理に基づき可変調整型とする点に特徴がある。例えば、回転輪の荷重印荷部を回転輪の外周に少なくとも3箇所とするなど偏重荷重とする事により効率よく回転力を獲得する事が可能となる。
【0017】
本発明で、回転輪に印荷する荷重としては、移動可能であればいかなる物も対象とすることが出来る。現地に存在する石材、材木などの他に精製水を容器或いは給水袋に充填して活用する事が出来る。この場合、周辺に好ましい荷重となる対象物が得難い場合においても容易に調達可能である。同一荷重印荷点に少なくとも2個の如く複数荷重を印荷することも可能で、更により強力な回転軸力を得ること出来る。
【0018】
本発明で対象とする、浄水機能部にて採用する浄水精製方式は特に限定されない。例えば、精密濾過膜システム、限外濾過膜システムを組み込んだ濾過システムなどあらゆる水の濾過精製技術方式を採用することが可能である。
その他、前処理装置を必要とする場合、凝集剤の使用ほか複数の原理に基づく浄化作用を組み合わせた浄水方法などを採用することが出来る。特に、湖沼や河川の原水を対象とする場合には留意されるべきである。
【0019】
又、本発明に用いるポンプなどの回転軸に連結する動力伝達手段は、通常フレキシブルシャフトを動力伝達手段として活用し、その両端にカップリング機能を施し簡単な操作により脱着可能とする。カップリング機具は、予め予定された部分と不特定な動力部との接合を考慮してユニバーサルなジョイント補助部品として共に保管移動する必要がある。
更に、精製水配水機能部に配備する、機器類としては給水ホースを主体として精製水の配水に直接必要な備品を集約して保持することになる。
必要に応じ、前述の給水袋など移動時に取り扱い容易な非常用備品とすることが好ましい。
【0020】
本発明で言う移動型浄水システムで膜濾過用として使用するポンプを例示すれば、日機装エイコー株式会社製のモノフレックスポンプ(FA15−B6RC)が挙げられ。
このポンプは、インペラがフレキシブルな弾性体(クロロプレンゴム)、稼動原理にカム部で強制的に曲げられた羽根がゴムの弾性によって復元する機構によりポンプケーシング内に真空状態が発生し、自吸作用を活用出来る所謂容積型ポンプである点が好ましい。
また薬液注入用ポンプとしては、弾性のあるチューブの一点をローラーで押しつぶし、ローラーをそのまま移動させてチューブ内の液体を押し出す所謂チューブポンプを用いており、自吸式で空運転に強いタイプであり、災害時用に適している。メンテナンスはチューブの交換のみで、例えば株式会社セントラル化学貿易の商品で、MCP/BVPが挙げられる。
【0021】
ポンプ駆動軸力の具体的な例として、災害時に現地で調達可能な放置状態の可動車輌の車輪より得られる回転力を物理的に移送しポンプの軸力として活用する方式、他の方法として重力を活用し人力を補助手段として回転輪を要し軸力を得、これをポンプの回転動力として原水を移動型水精製装置に供給し精製水を得るものである。
又、シーソーによる往復運動をラチェットホイール方式の歯車で物理的にポンプの回転動力として利用、水車の原理を生かしたバケット車において水または砂をバケットに供給しその重量により回転力を発生させて利用の方法も可能である。
更に、手動ハンドルを単独に、或いは他の手段と併用して活用できる。
【0022】
一つの収納体に設営された濾過ユニットよりなる着脱可能端子を有する浄水機能部とは災害時に移動可能な少なくとも一つの収納体に、目的原水に対応可能な如く設営された浄水機能部分を指称する。
サイジングとしては、旅行用スーツケース程度の寸法と重量であることが望ましい。本発明で言う移動可能とは、長さ1,200mm程度、幅600mm程度、厚み300mm程度、重量を20〜30Kgを目安とした。このスーツケースはキャリータイプが好ましく、2個乃至4個のキャリロールと移動用の牽引アームが付属したタイプが好ましい。
このスーツケース内には2〜4段のフィルターを含む浄水処理ユニットが設営され、外壁には外部からの軸力伝達のための開放口、給水端子付原水供給機能部のための開放口、精製水配水機能部の処理水側のための開放口、フィルター圧力計監視用の窓よりなる。本収納体を保管する際には、一般のスーツケース同様の鍵で閉め、開放口はゴム栓で密閉できる方式が望ましい。
【0023】
移動時は、スーツケースの鍵を締結した状態で、牽引アームを伸ばして使用する。
浄水機能部で用いるフィルターは予め利用できる災害用井戸、河川、プール、貯水槽の水質の検査結果を基にして選択することができる。濁度除去が主目的であれば糸巻きフィルターと公称孔径0.1μmの中空糸膜フィルター程度の2段で濾過精製が可能である。原水に微粒子物質が多く含まれ、色度問題がある時には糸巻きフィルター、活性炭入りフィルターと公称孔径0.01μmの限外濾過クラスの中空糸膜フィルターを用いるのが望ましい。
【0024】
水溶性物質や臭気のある場合には、活性炭比率の高いフィルターを通し、且つ最終段のフィルターとして0.01μmクラスの限外濾過膜を使用するのが望ましい。
浄水との接触部、即ち配管材料、計器類、ジョイントの接液部分には水道法で認められた基準を満足する方式を採用する。
ポンプの稼動動力として、手動ハンドル方式、機器設定地に於ける自発動力を援用する方式など如何なる外部動力をも活用可能な如く設営された移動型浄水システム及びこれを組み込んだ装置である事を特徴とするにある。
【発明の効果】
【0025】
以上に詳説したとおり、本発明は予期せぬ事態、災害時の如き極限状態でも移動型浄水システムを確実に作動できる手段について、緊急状態下に於いてテンポラリーに得られる現地自発型動力を獲得してポンプ軸動力源として緊急調達するものである。
その調達方法として、一つは重力を活用し人力を補助手段として回転輪を要し軸力を得る方法を基本とする。他の方法として、災害時に現地で調達可能な放置状態の可動車輌の車輪より得られる回転力を物理的に移送しポンプの軸力として活用する方式である。
その結果、災害など全てが破壊された緊急時に於いても、確実に構築出来る手段としてポンプの回転を容易となし、緊急に精製水を獲得できるシステムを提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、夫々回転軸(B)、回転アーム(C)、錘容器(D)、回転軸の支持スタンド(E)、回転軸受け(F)、回転エネルギー伝達用可撓軸(G)、移動型浄水装置(H)、Jが原水供給管(J)、処理水供給管(K)であり、原水供給の流れ(a)、は処理水の流れ(b)を示す。
回転軸(B)には、3本の回転アーム(A)を設けその先端部に夫々3個の錘(D)を印荷し、補助人力にて回転することにより錘(D)の回転による遠心力を活用する。
本装置の組立てに際し、建築用の長さ約2メートル、直径50mmの鉄パイプを適当に組合せ、スタンド(E)を製作し回転軸(B)を取り付けた。
【0027】
この回転軸(B)を回転アーム(A)に錘容器(D)としてバケツに約20Lの水を満たして吊り下げ、人力で回転せしめて回転力を引き出せるように設営した。
かくて得られた回転エネルギーを活用し、フレキシブルシャフト(G)を介し移動型浄水装置(H)の内部にある膜濾過用ポンプ及び薬液注入用ポンプに伝達し駆動させ、原水並びに消毒薬剤を夫々の浄水機構に送液し飲料水を製造する如く設営した。
【0028】
図2は、夫々原水供給管(J)、処理水供給管(K)、移動型浄水器(H)へのショック吸収能を有するコネクティングカップリング(M)、カップリング留め具小(M−1)、カップリング留め具大(M−2)、可撓製ばね(M−3)、カップリング支持管(N)、ポンプ(P)、連結用回転軸(Q)、自動車のタイヤ(T)、自動車駆動軸(W)である。
【0029】
一方、放置された自動車を想定し、駆動側の駆動軸をジャッキなどにより車体を浮かせ浮かせて自由にし、がショック吸収能を有するコネクティングカップリング(M)、カップリング留め具小(M−1)、カップリング留め具大(M−2)、可撓製ばね(M−3)、カップリング支持管(N)を要して軸力を引き出す事にした。
自動車より得られた軸力は、フレキシブルシャフト(G)を介し、移動型浄水装置(H)内にセットされた膜ろ過用ポンプ及び薬液注入用ポンプを駆動させ、原水を膜により濾過し、次いで次亜塩素酸ナトリウムなどにより膜ろ過水を消毒することにより飲料水を製造できる如く設営した。
【0030】
図3は、本発明を実施する全体のフローチャートを示すものである。
移動可能な収納体(L)、ポンプ1(X−1)、ポンプ2(X−2)、ポンプ回転軸(X−10)、ユニバーサルジョイント(U)、ポンプ固定台(X−9)、圧力計(X−3)、フィルター1(X−4)、フィルター2(X−5)、フィルター3(X−6)、薬液タンク(X−8)、ミキシングタンク(X−7)、連結用回転軸(Q)回転計(X−11)、ショック吸収能を有するコネクティングカップリング(M)、フレキシブルシャフト(G)を夫々示す。
又、図3において原水供給管(1)、加圧原水供給管(2)、各フィルター間の連結間として(3)、(4)、(5)を設けた。薬液供給管(6)、薬液注入管(7)、消毒済の処理水供給管(8)を示す。
【0031】
外部からフレキシブルシャフト(G)により伝達される軸力により回転するポンプ(X−1)を要し、原水供給管(1)を介してフィルター群(X−3ないしX−6)に原水を送水し前濾過、吸着濾過及び精密濾過を順次に行う。
この処理により、原水中に含まれる不要物質を濾過分離並びに吸着処理を行い、最終的に大腸菌や微粒子類などを高度濾過処理にて除外する事が出来る。
この後、ミキシングタンク(X−7)にて薬液タンク(X−8)よりポンプ(X−2)により送液された次亜塩素酸ナトリウム水溶液を注入混合し浄水として飲用に供する。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【実施例1】
【0032】
図1に示した設営に基づき、重力を活用した自発動力を援用し移動型浄水装置(H)にホースで連結された取水ユニットを深さ4mの防災用井戸に浸漬し、自発動力による容積型吸引ポンプ1により呼び水なしで揚水し、3段のフィルターに圧送し、高度濾過水を得た。
この際、移動型浄水装置(H)に内臓する吸引ポンプは日機装エイコー社製モノフレックスポンプFA15−B6RC、自吸高は4〜6mであった。
この吸引ポンプと同軸で回転する如く設営した、他の内臓機器である容積圧送形式の柴田科学社製テフロンチューブセット式ポンプにて、予め濃度を6%に調整した次亜塩素酸ナトリウム溶液をミキシングタンクに注入し、3段フィルターを要して送入された高度濾過水を消毒した。
尚、始動時には手動ハンドルを回転しながら空気抜きのボタンを開放しフィルター内部に残存する空気抜きの操作を行い高度濾過水が採取出来るまで行った。所要時間は凡そ1分を要した。
【0033】
使用した移動型浄水装置(H)の濾過部分には、3段階のフィルターが組み込まれ、第1段が公称5μmのポリプロピレン糸巻きフィルター、第2段が有機物吸着能を有する粒状活性炭とアンスラサイトを50:50の比率で混合充填した吸着濾過用フィルター及び第3段のフィルターとして、実験1では公称0.1ミクロンの中空糸精密濾過膜フィルターを使用し、実験2ではポリ塩化ビニル共重合体製中空糸限外濾過膜を使用した。
これらのフィルターは、同じ寸法で同じ形式のカートリッジ方式であった。濾過圧力は、前者が0.1MPa、後者が0.14MPaであった。
【0034】
本件実施例1では、自発動力としては図1に示したアームは1,260mmの長さを有する鉄製ハンドルに約20Lの水を満たしたバケツを錘として、略70rpmの回転速度でまわして回転させ、その回転エネルギーはフレキシブルシャフト(G)を介し、回転エネルギー伝達用可撓軸を要して移動型浄水装置内にある、膜濾過用ポンプ及び薬液注入用ポンプの駆動力となり、原水の膜濾過並びに続く次亜塩素酸ナトリウムなどによる殺菌消毒を経て飲料水を製造できた。
濾過処理の条件は、2.8L/分の処理速度で10分間継続した。その結果は、次の表1に示す通りで、同一水質の井戸原水から実験1で得られた処理水(1)と実験2で得られた処理水(2)のそれぞれを各20L採取した。
遊離残留塩素酸濃度測定試薬DPD錠剤を用い、移動型浄水装置(H)により得られた処理水をチェックした結果、何れの実験でも0.4〜0.6mg/Lの範囲であった。
これらのサンプル水を分析し、その結果は次の表1に示す通りで有った。
【0035】
【表1】

【0036】
表1の結果より、本実施例では大腸菌、濁度、色度、鉄成分の除去を主目的として行った。これに対し本発明処理水試料の分析値からは大腸菌が検出されず、更に濁度、色度、鉄分の何れも水質基準を満足している。
この結果より、本発明の効果を証明し目的を達成した事が明白である。
【実施例2】
【0037】
実施例1において使用した、同一の移動型浄水装置(H)に於いて第3段目のフィルターのみを逆浸透膜型フィルターに取り替え実施例2で使用した。
ポンプの軸力を得るために、三菱自動車製パジェロミニ2004年式の駆動輪と移動式浄水装置のショック防止コネクティングカップリングとフレキシブルシャフトを介しカップリング留め金にて連結し、浄水装置の回転計(X−11)が150ないし200rpmと成る範囲内に自動車の回転数をアクセルペダルでコントロールして実験した。
これにより、膜濾過用ポンプと薬液ポンプを駆動させ、原水を吸引し、3.6L/分の処理速度にて浄水処理を行い、20Lの処理水(3)を製造した。
使用の原水は、工場地帯のクラブハウス敷地にある60m深さの井戸から水中ポンプにて揚水し予め災害用水槽に貯留した地下水を使用した。原水の水質は汚染されているが、本発明のシステムにて得られた処理水は十分に飲料水として使用できるレベルであった。
その結果は、次の表2に示す通りで有った。
【0038】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は予期せぬ事態、災害時の如き極限状態でも移動型飲料水製造システムを確実に作動できる手段について、緊急状態下に於いてテンポラリーに得られる現地自発型動力を獲得してポンプ軸動力源とする実現性のあるシステムを提供するものである。
その調達方法として、重力を活用し人力を補助手段として回転輪を要し軸力を得る方法、他に従来想定外とされる災害時に現地で放置状態の可動車輌の車輪より得られる回転力を物理的に移送しポンプの軸力として活用する方式等を基本とするものである。
このようなエネルギーを軸力として活用し、災害などで全てが破壊された緊急時に於いても、確実に供給水ポンプの回転力を確保し緊急に飲料水を獲得できるシステムを提供するものである。
本発明の効用は工業的に著大であるものと確信する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】 図1は、本発明の実施例の一つで重力を活用してポンプの軸力を得た実験を示した模式図である。
【図2】 図2は、本発明の実施例の一つで車の駆動力を活用してポンプの軸力として活用した実験を示した模式図である。
【図3】 図3は、本発明の自発動力を援用する移動型浄水システムに於いて、浄水機能を有する部分の例示として示したブロックダイヤグラムを模式図で表したものである。
【符号の説明】
【0041】
A 回転アーム
B 回転軸
C ユニバーサルジョイント
D 錘容器
E スタンド
F 処理水受け容器
G フレキシブルシャフト
H 移動型浄水装置
J 原水供給管
K 処理水供給管
M ショック吸収能を有するコネクティングカップリング
M−1 カップリング留め具小
M−2 カップリング留め具大
M−3 可撓製ばね
N カップリング支持管
P ポンプ1及び2
Q 連結用回転軸
T タイヤ
W 自動車駆動軸
X−1 膜ろ過ポンプ
X−2 薬液注入ポンプ
X−3 圧力計
X−4 フィルター1
X−5 フィルター2
X−6 フィルター3
X−7 ミキシングタンク
X−8 薬液タンク
X−9 ポンプ台
X−10 水器ポンプ共通回転軸
X−11 回転計
1 原水供給管
2 加圧原水供給管
3 フィルター水管1
4 フィルター水管2
5 フィルター水管3
6 薬液供給管
7 薬液注入管
8 処理水供給管
a 原水供給の流れ
b 処理水の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な少なくとも一つの収納体に設営された濾過ユニットよりなる着脱可能端子を有する浄水機能部、給水端子付原水供給機能部、精製水配水機能部より構成された可搬型浄水機構に於いて、該給水端子付原水供給機能部のポンプ駆動軸力に、機器設定地に於ける自発動力を援用することを特徴とする移動型浄水システム。
【請求項2】
該自発動力として、重力応用による回転輪の軸力を活用することを特徴とする請求項1に記載の移動型浄水システム。
【請求項3】
回転輪の補助として人力補助を介入せしめる機構を付設することを特徴とする請求項2に記載の移動型浄水システム。
【請求項4】
該自発動力として、車両の動輪の回転力を軸力として活用することを特徴とする請求項1に記載の移動型浄水システム。
【請求項5】
該重力応用によるとして、軸力発生源とする荷重とアームの組合せを可変型とすることを特徴とする請求項2ないし請求項3に記載の移動型浄水システム。
【請求項6】
該回転輪の荷重印荷部を回転輪の外周に少なくとも3箇所とする事を特徴とする請求項2ないし3及び5に記載の移動型浄水システム。
【請求項7】
該荷重として精製水充填容器を使用することを特徴とする請求項2ないし3及び請求項5ないし6に記載の移動型浄水システム。
【請求項8】
上記、請求項1ないし7記載のシステムを用いて行なうことを特徴とする浄水装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−188578(P2008−188578A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52026(P2007−52026)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(596136316)株式会社ウェルシィ (18)
【Fターム(参考)】