説明

自立袋

【課題】開封のための破断の応力を注出口形成部に設けた易破断部の一部に集中させ易くして、よりスムーズに破断させ、注出口をさらに容易に形成することのできる自立袋を提供する。
【解決手段】底部14と注出口形成部13を備える胴部12とからなる合成樹脂製の袋本体11を金型成形してなり、注出口形成部13の易破断部15の破断によって切除予定部16が除かれて注出口を形成する自立袋10であって、注出口形成部13は、底部14による載置面P1に対して垂直な上方向Xに向けて胴部12から突出して設けられており、易破断部15は、載置面P1と平行な面P2に対して傾斜する面P3に沿って形成されている。注出口形成部13の切除予定部16には、つまみ片17が、易破断部15の最も高い位置に近接して一体成形されて取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底部と注出口形成部を備える胴部とからなる合成樹脂製の袋本体を金型成形して形成される自立袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ブロー成形等の金型成形によって形成され、底部と注出口形成部を備える胴部とからなり、底部を載置面として被載置面に載置することが可能な自立袋が知られている。これらの自立袋では、封入された内容物を、注出口形成部をカットして注出口を形成し内容物を注出する。
【0003】
この場合、注出口形成部をカットする作業をナイフやハサミ等を用いて行うのは面倒であり、慣れない使用者にとっては手間のかかる作業になる。このようなことから、注出口形成部に薄肉の切り口部や細溝状凹部による環状の易破断部を設けると共につまみ片を設けておき、易破断部を引きちぎったり引き裂く操作により破断させて、注出口を形成する作業を容易に行えるようにしたブロー成形容器が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−183457号公報
【特許文献2】特開2004−59141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献2に記載のブロー成形容器では、薄肉の切り口部や細溝状凹部による易破断部は、いずれも底部による載置面と平行な面に沿って環状に形成されていることから、使用者は、当該載置面と平行な面に沿って注出口形成部を捻る操作を誘導され易い。このような捻り操作では破断のための応力が薄肉の切り口部や環状凹溝の全体にかけられるものとなり、容器の材質や、易破断部の薄肉部分の肉厚等によっては、破断が困難となり、注出口を形成し難くなる場合がある。
【0005】
また、特許文献1や特許文献2に記載のブロー成形容器では、つまみ片に操作する方向を明示して、易破断部にかけられる応力をつまみ片を設けた部分に集中させる工夫もなされているが、易破断部が載置面と平行な面に沿って延設している印象が強いことから、使用者は、やはり注出口形成部を捻る操作を誘導され易い。
【0006】
本発明は、開封のための破断の応力を注出口形成部に設けた易破断部の一部に集中させ易くして、よりスムーズに破断させ、注出口をさらに容易に形成することのできる自立袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、底部と注出口形成部を備える胴部とからなる合成樹脂製の袋本体を金型成形してなり、前記注出口形成部の易破断部の破断によって切除予定部が除かれて注出口を形成する自立袋であって、前記注出口形成部は、前記底部による載置面に対して略垂直な上方向に前記胴部から突出して設けられており、前記易破断部は、前記載置面と平行な面に対して傾斜する面に沿って形成されている自立袋を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自立袋によれば、開封時に、注出口形成部に設けた易破断部の一部に開封のための破断の応力を集中させ易い。また、つまみ片を設けた場合につまみ片を上方に引き上げる動作を誘導しやすいので、よりスムーズに破断させることができ、注出口形成部に注出口をさらに容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1(a),(b)に示す本発明の好ましい一実施形態に係る自立袋10は、金型成形として、例えばダイレクトブロー成形やインジェクションブロー成形等のブロー成形によって形成されたものである。また、本実施形態の自立袋10は、内容物として例えば液剤、特に毛髪洗浄剤や全身洗浄剤、液体洗剤や洗浄剤等を封入した状態で収容し、使用時には開封して他の容器に内容物を詰替えるための、詰替え用の袋容器として用いられる。さらに、本実施形態の自立袋10は、袋本体11の胴部12から突出して設けられた注出口形成部13の一部を切断して注出口を形成する操作を、容易且つスムーズに行えるようにする。
【0010】
そして、本実施形態の自立袋10は、底部14と注出口形成部13を備える胴部12とからなる合成樹脂製の袋本体11を金型成形してなり、注出口形成部13の易破断部15の破断によって、易破断部15よりも先端域の切除予定部16を取り除くことによって注出口を形成する袋容器であって、注出口形成部13は、底部14による載置面P1に対して垂直又は略垂直な上方向(底部14を下にして水平面に載置したとき、鉛直上方向となる方向)に向かって胴部12から突出して設けられており、易破断部15は、図2にも示すように、載置面P1と平行な面P2に対して傾斜する面P3に沿って形成されている。注出口形成部13は、注出口形成部13の中心軸が、鉛直線Xに沿って形成され、例えば、図1からもわかるように、鉛直線Xに沿って底部14を下にして正面から見たとき、その中央を通る鉛直線Xに対して略対称な形状である。
【0011】
また、本実施形態では、注出口形成部13の切除予定部16につまみ部としてつまみ片17が設けられている。つまみ片17は、載置面P1と平行な面P2に対して傾斜する面P3に沿って形成された易破断部15の最も高い位置に近接して、切除予定部16のみに連続し、易破断部15を跨って注出口形成部13の基部20に延びて設けられていると共に、切除予定部16の外周面に一体に設けられている。即ち、つまみ片17は、自立袋10の成形時に切除予定部16と一体成形されている。そして、本実施形態のつまみ片17は、載置面P1と平行な面P2に対して概ね直交した面を備えた平板状に形成されている。
【0012】
本実施形態では、合成樹脂製の袋本体11は、好ましくはブロー成形によって底部14と注出口形成部13を備える胴部12とからなる形状に形成される。ブロー成形としては、ダイレクトブロー成形やインジェクションブロー成形等の公知の各種の成形方法を採用することができる。
【0013】
また、袋本体11を形成するための合成樹脂材料としては、LDPE(低密度ポリエチレン)、L−LDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、OPP(延伸ポリプロピレン)等のポリオレフィン系樹脂等の軟質の合成樹脂材料、又はPET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル系樹脂等を単層として採用することができる。これらの合成樹脂と他の合成樹脂との積層樹脂を採用することもできる。例えば、LDPE又はL−LDPEを内側層とし、外側層をHDPEとする積層樹脂を採用することができる。また、EVOH樹脂(エチレンビニルアルコール共重合樹脂)、EVA樹脂(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)、ナイロン樹脂等を積層した樹脂や、EVA、EVOH、ナイロン等の樹脂をPE(ポリエチレン)等の樹脂とブレンドした樹脂を採用することもできる。
【0014】
そして、本実施形態では、上述の合成樹脂材料を用いたブロー成形によって、袋本体11は、その胴部12が、胴部を横断する断面において、金型のパーティングライン18を介して正面部12Aの側縁と背面部12Bの側縁とが連続し、正面視及び背面視が広幅で側面視が狭幅の扁平形状で、楕円又は角にアールをとった長方形の中空断面形状を備える。また胴部12は、その下端縁が底部14と接合されると共に、その上部が肩部19として徐々に縮径し、肩部19の中央部分から注出口形成部13を口首部として上方に突出させた形状を備えている。
【0015】
ここで、合成樹脂製の袋本体11の胴部12及び底部14は、安定した自立性を確保できるように、100μm以上の厚さで成形されることが好ましい。また、適度な可撓性を備えると共に、潰したり折ったり曲げたり可能で、概ね平坦にすることが可能なように、例えば700μm以下の厚さ、さらに好ましくは500μm以下の厚さの薄肉に成形されることが好ましい。
【0016】
本実施形態では、胴部12の肩部19の中央部分から上方に突出する注出口形成部13は、閉塞された上端面が好ましくはドーム形状に湾曲する、例えば先端に向かって徐々に先細りとなった中空の略切頭円錐形状を備えている。注出口形成部13は、その中心軸を載置面P1に対して垂直な方向Xに向けて、胴部12の肩部19から上方に突出して設けられている。
【0017】
また、本実施形態では、注出口形成部13は、これの外周面に沿って環状にとりまくように形成された細溝状凹部からなる易破断部15によって、これより下方の基部20と、これより上方の切除予定部16とに区画される。易破断部15よりも先端域の切除予定部16を基部20からきり離すことによって注出口を形成し、自立袋10が封止状態から開放される。
【0018】
ここで、易破断部15を構成する細溝状凹部は、例えば略V字状の断面形状を備える細溝によって形成されている。細溝状凹部の最深部又は溝状をなす二つの面が交わる接線部分は、破断が容易なように薄肉となっていることが好ましい。易破断部15に囲まれる断面形状は例えば楕円形状、好ましくは銀杏形状や涙滴形状等で(図4(a),(b)参照)、正円の径の長さが一方向又はニ方向において最長部分が設けられていると、この最長部分において応力が集中し易くなる。尚、図4(c)のように、断面形状の半分が半円形状で、他方半分が角にアールをとった角型とすることで、この角部において応力が集中し易くなる。
【0019】
また、易破断部15は、載置面P1と平行な面P2に対して傾斜する面P3に沿って形成されており、載置面P1と平行な面P2に対する傾斜する面P3の傾斜角度θは、例えば5〜45°とすることが好ましい。傾斜角度θが大きすぎると、破断距離が長くなり、また、溝と注出口形成部13の壁面のなす角が鋭角になる領域があり、易破断部15を成形しにくくなる。傾斜角度θが小さすぎると易破断部15に囲まれる破断面が水平に近くなるため、水平方向に注出口形成部を捻る操作を誘導され易く、易破断部15の全体、例えば環状凹溝の全体で捻り力を受けるものとなり、破断のための応力が分散され、開封しにくくなる。つまり、傾斜角度θが5〜45°であることにより、易破断部15の一部に開封のための応力を集中させ易く、上方への引き上げ動作を想起しやすいし、上方への引き上げ動作を誘導しやすい。
【0020】
本実施形態では、注出口形成部13の切除予定部16につまみ部として取り付けられるつまみ片17は、板状であって、載置面P1と平行な面P2に対して概ね直交し、切除予定部16に連続して周縁部が概ね半円形状に張出して一体成形されている。即ち、つまみ片17は、注出口形成部13の基部20とは連続しないが間隔をおいて基部20まで延在し、切除予定部16のみに連続して一体成形されている。即ち、本実施形態では、つまみ片17は、切除予定部16に連続して、易破断部15を跨って基部20まで延在し、注出口形成部13の外周面から外側に張り出して設けられている。また、本実施形態では、つまみ片17は、金型のパーティングライン18に沿って設けられている。本実施形態では、載置面P1と平行な面P2に対して傾斜する面P3は、パーティングライン18に沿った方向において傾斜角度θで傾斜している。したがって、つまみ片17は、パーティングライン18に沿ってパーティングライン18から張り出して上方向、側方向に延びて形成され、パーティングライン18を含む面において、易破断部15の最も高い位置に近接して形成されている。
【0021】
なお、本実施形態では、つまみ片17の周縁部分に滑止め用の凸条部21が設けられており、つまみ片17を手指で把持して注出口形成部13を開封する操作を行い易くしている。また、つまみ片17の周縁部分よりも内側の部分に、エンボス加工等によって凹凸面や粗面を形成することにより、つまみ片17の把持性をさらに向上させることもできる。
【0022】
そして、上述の構成を備える本実施形態の自立袋10によれば、注出口形成部13に設けた易破断部15の一部に開封のための破断のための応力を集中させ易くして、易破断部15をよりスムーズに破断させることにより、注出口形成部に注出口をさらに容易に形成することが可能になる。
【0023】
すなわち、本実施形態によれば、注出口形成部13は、底部14による載置面P1に対して垂直な方向Xに向けて胴部12から突出して設けられており、易破断部15は、載置面P1と平行な面P2に対して傾斜する面P3に沿って形成されているので、使用者は、載置面P1と平行な方向に注出口形成部13を捻る操作を行い難くなる。また捻る操作を行っても、例えば易破断部15の最も高い位置や低い位置に応力が集まって、破断のための応力が易破断部15の一部に集中することになるので、易破断部15はスムーズに破断して、注出口(開口)を容易に形成することが可能になる。
【0024】
また、本実施形態では、易破断部15の最も高い位置に近接して、つまみ片17が切除予定部16の外周面に一体に設けられているので、使用者は、注出口形成部13を捻るのではなく、つまみ片17を把持して上方に持ち上げる操作を行うように誘導され易くなる。さらに、つまみ片17を把持して上方に持ち上げる操作を行った場合や、つまみ片17を介して注出口形成部13を捻る操作を行った場合の何れにおいても、開封時にかけられる応力が易破断部15の最も高い部分に集中するので、易破断部15をさらにスムーズに破断させることが可能になる。
【0025】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、注出口形成部の切除予定部につまみ部を設ける必要は必ずしもなく、つまみ部は、板状のつまみ片以外にも、リング状のつまみ部等、その他の種々の形状のもの採用することができる。また、つまみ部(つまみ片17)は、切除予定部16の周方向のいずれの位置にも設けることができるが、好ましくは図3に示すように、載置面P1と平行な面P2に対して傾斜する面P3に沿って形成された易破断部15の最も低い位置に近接して、切除予定部16の外周面に一体に設けることもできる。さらに、つまみ部(つまみ片17)に、つまみ部を操作する方向を明示する矢印22等を設けて、易破断部15を破断させ易い方向につまみ部を操作するように使用者を誘導することもできる。さらにまた、易破断部は、細溝状凹部以外にも、切り込み線等のその他の公知の種々の易破断部を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は、本発明の好ましい一実施形態に係る自立袋の正面図、(b)は、(a)を左側から見た側面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る自立袋の要部正面図である。
【図3】本発明の好ましい他の実施形態に係る自立袋の要部正面図である。
【図4】易破断部によって囲まれる部分の断面形状を例示する略示上面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 自立袋
11 袋本体
12 袋本体の胴部
12A 胴部の正面部
12B 胴部の背面部
13 注出口形成部
14 袋本体の底部
15 易破断部
16 切除予定部
17 つまみ片(つまみ部)
18 パーティングライン
19 胴部の肩部
20 注出口形成部の基部
21 滑止め用の凸条部
22 矢印
P1 載置面
P2 載置面と平行な面
P3 載置面と平行な面に対して傾斜する面
X 載置面に対して垂直な方向
θ 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と注出口形成部を備える胴部とからなる合成樹脂製の袋本体を金型成形してなり、前記注出口形成部の易破断部の破断によって切除予定部が除かれて注出口を形成する自立袋であって、
前記注出口形成部は、前記底部による載置面に対して略垂直な上方向に前記胴部から突出して設けられており、
前記易破断部は、前記載置面と平行な面に対して傾斜する面に沿って形成されている自立袋。
【請求項2】
前記注出口形成部の切除予定部につまみ部が設けられている請求項1記載の自立袋。
【請求項3】
前記つまみ部は、前記傾斜する面に沿って形成された前記易破断部の最も高い位置又は最も低い位置に近接して、前記切除予定部にのみ連続し、易破断部を跨って注出口形成部の基部に延びて設けられている請求項2記載の自立袋。
【請求項4】
前記易破断部は、前記注出口形成部を環状にとりまく細溝状凹部からなる請求項1〜3のいずれかに記載の自立袋。
【請求項5】
前記合成樹脂製の袋本体が、ブロー成形によって形成される請求項1〜4のいずれかに記載の自立袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−154897(P2009−154897A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333594(P2007−333594)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】