説明

自転車のギアシフトのアクチュエータ装置および該アクチュエータ装置に用いられるナット

【課題】衝撃から効果的に保護されるシステムを備え、簡単な構造で且つ小形なアクチュエータ装置を提供する。
【解決手段】ギアシフトのディレイラを移動させるように変形する作動運動機構101と、作動運動機構101の変形を制御する駆動部材120と、作動運動機構101および駆動部材120の駆動軸122に結合されたナット10と、スナップ機構とを備える。スナップ機構は、第1の動作状態では、ナット10を係合状態に駆動軸122に保持して、駆動軸122が回転すると作動運動機構101が変形するようにし、アクチュエータ装置100が所定の値を超える力を受けると、ナット10を解除形態に設定して、駆動軸122が回転しても作動運動機構101が変形しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車のギアシフトのアクチュエータ装置および該アクチュエータ装置に用いられるナットに関する。
【背景技術】
【0002】
本願の明細書および特許請求の範囲をとおして、「ギアシフト」は、自転車の後輪に結合された種々のスプロケット間でチェーンを移動させる後側のギアシフト、またはクランクアームに結合された種々のクラウン(crown)、すなわち歯車間でチェーンを移動させる前側のギアシフトを区別せずに指すものとする。一般的に、チェーンは、作動運動機構に接続された変速機(ディレイラ)の動作を介して移動する。
【0003】
近年、モータ駆動式の自転車用ギアシフトが市場に出回っている。このようなギアシフトでは、ディレイラは、例えば電気的に、適切に制御された駆動部材を介して動作する。
【0004】
そのようなギアシフトの開発にあたっては、従来の手動によるギアシフトと少なくとも同程度の速さおよび精度でギアシフトを実行できるように、十分な注意が払われている。
【0005】
しかしながら、通常使用時において、ギアシフトが何かに接触して軽微な損傷が発生した場合であっても、モータ駆動のギアシフトの性能が低下することがある。
【0006】
実際、この種のギアシフトでは、作動運動機構は、駆動部材に機械的に固定されたシステムである。例えば、自転車の転倒時の衝撃や、車両に自転車を積んだり、車両から自転車を降ろしたり、車両で自転車を輸送したりするといった作業時の衝撃によって、ギアシフトは様々な程度の損傷を受ける。特に激しい衝撃では、最悪の場合、ギアシフトの部品が破損してしまうこともある。それよりも弱い衝撃であっても、肉眼では直ぐに分からない程度の、ギアシフトの部品の小さな変形やギアシフトの部品間の小さな位置ずれが生じる場合があり、そのように小さなものであっても、ギアシフトの精度を低下させ、それによりギアシフトの正確な動作に支障をきたす可能性がある。他の事例では、このような変形や位置ずれは、ギアシフト実行中に運動機構が駆動部材に対して一時的にロックすることでも起こり得る。このようなロックは、チェーンとスプロケットとの間の機械的な干渉後に(特に、チェーンが小径のスプロケットから大径のスプロケットに移動する際に)生じることがある。
【0007】
これに鑑みて、衝撃や不所望な一時的変形/位置ずれからギアシフトを保護するシステムを備えたアクチュエータ装置が開発された。以降、不所望な一時的変形/位置ずれのことを、単に「過剰な力」と称する。
【0008】
モータの動作を複数のギア歯車を介して作動運動機構に伝達する、モータ駆動式ギアシフト用アクチュエータ装置がある(例えば、特許文献1)。このアクチュエータ装置では、過剰な力からギアシフトを保護するために、モータと作動運動機構との間にクラッチ装置を設け、該クラッチ装置は、モータ軸に連結固定された駆動部材と、作動運動機構に連結固定された被駆動部材と、被駆動部材を駆動部材に付勢するねじりばねとからなり、被駆動部材は、通常動作状態で駆動部材に形成された台座(seat)内に収容される歯部を有している。過剰な力が生じると、所定の値を超える回転力が被駆動部材に発生する。このような力により、被駆動部材と駆動部材との間で相対回転が生じ、歯部が台座から滑り外れる。このようにして過剰な力は吸収され、作動運動機構の部品には伝達されない。歯部と駆動部材とのカップリング面は、歯部が台座から外れても互いの接触面が十分に大きくなるように形成されている。これにより、歯部が台座から外れた動作状態であってもギアシフト動作を通常どおり行うことができる。
【0009】
本願の出願人は、特許文献1の装置は、モータと作動運動機構との間に複数のギア歯車があるから、構造的に極めて複雑なうえに、装置が過剰に大きくなることに気付いた。
【0010】
本願の出願人は、過剰な力からギアシフトを保護するためのシステムを備え、前記装置よりも簡単な構造のアクチュエータ装置を提案している(特許文献2)。このアクチュエータ装置では、作動運動機構にナットが結合されており、このナットが駆動軸に直接係合している。ナットには、予圧ばねが設けられ、該ばねは駆動軸と同心に配置されている。アクチュエータ装置の最初の動作状態では、ナットが駆動軸と係合状態にあって、駆動軸が回転すると作動運動機構が変形する。過剰な力が生じても、ばねが変形してこの過剰な力を吸収するので、過剰な力が作動運動機構の部品には伝達されない。このばねは、一端部でカラー(collar)に接続されており、特に大きな過剰な力を受けると変形する。
【0011】
前述のアクチュエータ装置は、駆動軸と直接係合するナットを用いているので、構造が簡単で且つ小形化できるという大きな利点を備えており、本願の出願人は、このアクチュエータ装置に関連して、過剰な力かギアシフトを保護する新たなシステムを開発した。
【0012】
上述のアクチュエータ装置では、大きな過剰な力を受けるとカラーが破損し、これにより、ナットの交換が必要になったり、カラーやばね等の機械部品が制限を受けずに自由に動くことで自転車の部品やギアシフトの部品が損傷したりする可能性があることに、出願人は気付いた。
【0013】
また、出願人は、上述のアクチュエータ装置では、変形後もばねが、過剰な力に対して反力を及ぼし続けていることにも気付いた。そのため、長期間にわたって過剰な力を受けた場合、作動運動機構の部品は、過剰な力とばねの反力との合成力による応力に曝されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第1970299号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1504989号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、前述の課題に鑑みてなされたもので、衝撃から効果的に保護されるシステムを備え、簡単な構造で且つ小形なアクチュエータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の構成は、自転車のギアシフトに用いられるアクチュエータ装置に関する。このアクチュエータ装置は:
前記ギアシフトのディレイラを移動させるように変形する作動運動機構と、
モータと当該モータによって回転されるねじ付きの駆動軸を有し、前記作動運動機構の変形を制御する駆動部材と、
前記作動運動機構および前記駆動軸に接続されるナットと、を備え、
当該アクチュエータ装置の第1の動作状態では、前記ナットは、前記駆動軸と係合状態にあり、前記駆動軸が回転すると前記作動運動機構が変形するように設定された自転車のギアシフトのアクチュエータ装置において、
さらに、スナップ機構を備え、
当該アクチュエータ装置の前記第1の動作状態では、前記スナップ機構が、前記ナットを前記係合状態に保持し、
当該アクチュエータ装置が所定の値を超える力を受けると、前記スナップ機構が、前記ナットを解除状態にして、前記駆動軸が回転しても前記作動運動機構が変形しないように設定することを特徴とする。
【0017】
本明細書および特許請求の範囲をとおして、「スナップ機構」とは、第1の動作状態から別の状態への突然の移行またはその逆の移行を制御することが可能な、あらゆる機構を指す。このような突然の移行は、例えば、本明細書および特許請求の範囲に記載されている、「解除」という用語で表現される効果をもたらすものである。
【0018】
有利なことに、ナットと駆動軸との接続にスナップ機構を使用することにより、所定の値を超える力が生じた際に、作動運動機構をアクチュエータ装置から完全に分離することができる。ある程度の衝撃や不所望な一時的変形/位置ずれは、スナップ機構により完全に吸収され、作動運動機構の部品やアクチュエータ装置のほかの部品に伝達しない。
【0019】
スナップ機構は可逆的な機構であるから、ギアシフトの動作を妨げる残留変形が発生せず、しかも部品を交換する必要なしに、元の動作形態に戻す(すなわち、解除前の状態に戻す)ことができる。実際、機械部品が凹んだり破損したりすることがなく、また、機械部品が(損傷して、位置を保持されなくなることにより)何の制限もなく自由に移動し、自転車やギアシフトの部品に衝突してそれを損傷することもない。
【0020】
さらに、前記スナップ機構を使用することにより、ギアシフトが故障したりロックしたりした場合でも、作動運動機構を手動で動かすことができるので、所望の変速比に常に設定することができる。また、後側のギアシフトの場合には、車輪の取付け、取外しが容易になる。実際、前述の解除を利用することにより、チェーンの着脱が容易になる。
【0021】
好ましくは、前記ナットは、
第1方向に沿って延びる第1の空洞、および前記第1方向に直交する第2方向に沿って延びる第2の空洞を備えたチューブ状本体と、
前記チューブ状本体に連結固定され、前記第1方向および前記第2方向の両方に直交する第3方向に沿って延びる2つの対向するピン部と、
前記第2方向に沿って摺動可能に前記チューブ状本体内に挿入され、前記駆動軸と係合するねじ付きのチューブ状スリーブと、
を有し、
前記スナップ機構が、前記チューブ状本体と前記チューブ状スリーブとの間で前記第1方向に沿って動作する。
【0022】
この構成によれば、前記解除がナットの内部で生じるので、アクチュエータ装置の他の構成品に対して特別な変更を施す必要がない。さらに、スナップ機構が、ギアシフト実行時のナットの運動方向に直交する方向に作用するので、解除とギアシフト動作との干渉を避けることができる。
【0023】
そのうえ、そのようなナットは、既存のアクチュエータ装置の動作を妨げることなく従来のナットと置換可能であり、既存のアクチュエータ装置を容易に本発明のアクチュエータ装置に変更することができる。
【0024】
好ましくは、前記スナップ機構が、前記動作状態では、前記チューブ状本体を前記チューブ状スリーブに対して所定の動作位置に保持し、前記解除状態では、前記チューブ状本体(11)を前記所定の動作位置から前記第2方向に沿って自由に移動可能とする。
【0025】
本明細書および特許請求の範囲をとおして、「自由に動く」(または「自由運動」、あるいは、これらと類似した表現)は、反作用(counteraction)のない運動を指す(ただし、摩擦は無視する)。上記の例では、解除状態におけるナットの2つの構成品(チューブ状本体とチューブ状スリーブ)間の所定方向(第2方向)に沿った相対運動のことであり、そのような相対運動は何の反作用も受けない。
【0026】
この構成によれば、前述したスナップ機構により、手動で解除状態にして、元の動作状態に戻すときまで、そのような解除状態(手動で達成した解除状態、あるいは、衝撃または不所望な移動/変形によって引き起こされた解除状態)を維持することができる。例えば、自転車の車両への積み下ろし作業または輸送作業の前、あるいは、自転車の使用前後に、意図的に解除状態とすることもできる。
【0027】
好ましくは、前記スナップ機構は、
前記チューブ状本体の前記第1の空洞内に少なくとも一部が収容されるボールと、
前記チューブ状本体の前記第1の空間内に収容され、前記ボールに作用して当該ボールを前記第1方向に沿って前記チューブ状スリーブに向かって押圧する予圧ばねと、
前記チューブ状スリーブに設けられ、前記動作状態において前記ボールを部分的に収容する第1シートと、
前記チューブ状スリーブにおける前記第2方向に沿って前記第1シートに隣接する位置に設けられ、前記解除状態において前記ボールを部分的に収容する、少なくとも1つの第2シートと、
を有する。
【0028】
「ばね」という用語は、あらゆる種類の弾性的反応を示すことができる部材のことを包括的に指す。そのような弾性的反応として、例えば、引張、圧縮、捻れ、曲げ等が挙げられる。ばねは、例えば、金属製のコイルばね、金属製のねじりばね、金属製の皿ばね、可撓性の金属箔、空気ばね、様々な形状のエラストマーばね等である。「予圧された」という形容詞は、ばねが予め付勢された状態、例えば、予め圧縮された状態、あるいは予め引っ張られた状態で用いられ、静止時でも弾性応力の数値がゼロではなく所望の値の力に等しいことを示す。つまり、ばねは、衝撃を受けた場合に付加された力がその所定の値を超えると弾性変形する。一方で、ギアシフトの通常使用時のように、付加された力が所定の値よりも小さい場合、ばねは全く変形しない。したがって、後者の状態では、ばねは実質的に剛体のように機能し、その変形(yielding)がギアシフトの通常動作に干渉しない。
【0029】
この構成によれば、システムが高速で応答できる動作範囲を広げたい場合、所定の値を高く設定すればよい。一方で、小さい衝撃も吸収するようにアクチュエータ装置を構成したい場合、この場合システムが高速で応答できる範囲は狭まるが、所定の値を低く設定すればよい。所定の値の量は、ばねのサイズを適宜設定すると共に、ばねが正確に圧縮するようにチューブ状本体の長さを適宜選択することによって簡単に決定することができる。特に、様々な厚さのスペーサリングを使用することにより、圧縮量を微調節することができる。
【0030】
この構成によれば、スナップ機構により、前述のボールは第1シートから第2シートに移動する。よって、ナットは、解除状態(ボールが第2シートに位置する状態)においても、構造的に完全な状態を維持したままであり、部品を交換する必要なく元の形態に戻すことができる。
【0031】
好ましくは、前記少なくとも1つの第2シートは、前記第2方向に沿って延びる溝で形成されている。これにより、ボールは、解除状態に移行した場合に前述の第2方向に沿って自由に移動できるので、第2方向に沿った所定の位置に保持されない。
【0032】
より好ましくは、このような溝の長さは、少なくとも前記チューブ状スリーブの半分の長さに等しい。
【0033】
好ましくは、前記第1シートと前記少なくとも1つの第2シートとは、前記チューブ状スリーブの隆起部(すなわち、丘部)により互いに分離されている。
【0034】
好ましくは、前記隆起部は、前記第1シートと前記少なくとも1つの第2シートに、傾斜した接合面を介して接合されている。これにより、動作状態から解除状態への移行またはその逆の移行が容易になり、衝撃または望ましくない移動/変形に対する反力をばねの予圧のみとすることができる。
【0035】
好ましくは、前記チューブ状本体は、前記空洞内で摺動する押圧部材と、前記空洞を閉じるカバーとを有し、前記ばねは、前記押圧部材と前記カバーとの間で押し付けられることによって作用する。
【0036】
この構成によれば、空洞を閉じるカバーは、チューブ状本体に塵やホコリが入るのを防止する機能と、ばねを予圧状態に維持する上側当接部を形成する機能との2つの機能を有する。他方、押圧部材は、ボールを押圧する機能と、ばねを前述の予圧状態に維持する下側当接部を形成する機能とを有する。
【0037】
本発明にかかるアクチュエータ装置の一実施形態において、前記カバーは、ねじによって前記チューブ状本体に接続され、前記チューブ状本体に対する前記カバーの位置が、を回すことでねじ調節可能である。これにより、ばねの予圧が調節可能となり、その結果、所定の値を変化させることができる。
【0038】
本発明にかかるアクチュエータ装置の他の実施形態において、前記カバーは、圧入によって前記チューブ状本体に接続され、前記チューブ状本体に対する前記カバーの位置が、所定の位置となる。この場合、ばねの予圧は、設計段階で設定される固有値となる。
【0039】
好ましくは、前記チューブ状スリーブの少なくとも一部の外側部分が、前記チューブ状本体の多角形状の内側部分と合致する多角形状である。これにより、前記ナットが回転して解除状態に移行するのを防ぐことができる。
【0040】
好ましくは、前記チューブ状スリーブは、一端部において、着脱可能な閉塞キャップを有する。このようなキャップにより、チューブ状スリーブに塵やホコリが入るのを防ぐことができる。
【0041】
好ましくは、前記閉塞キャップは、前記解除状態において前記チューブ状本体が滑り外れるのを防ぐ鍔状当接部を有する。
【0042】
本発明の第2の構成は、自転車のギアシフトのアクチュエータ装置に用いられるナットに関する。このようなナットは、
第1方向に沿って延びる第1の空洞、および前記第1方向に直交する第2方向に沿って延びる第2の空洞が設けられたチューブ状本体と、
前記チューブ状本体に連結固定され、前記第1方向および前記第2方向の両方に直交する第3方向に沿って延びる2つの対向するピン部と、
前記第2方向に沿って摺動可能に前記チューブ状本体内に挿通されたチューブ状スリーブと、
を備え、
前記チューブ状スリーブは内面にねじが切られ、このねじにより、前記チューブ状スリーブが前記アクチュエータ装置のモータの駆動軸と係合する、アクチュエータ装置用のナットにおいて、
さらに、前記チューブ状本体と前記チューブ状スリーブとの間で作用するスナップ機構を備え、
前記スナップ機構により、前記チューブ状本体が前記チューブ状スリーブに対して所定の動作位置に保持される第1の動作状態と、前記チューブ状本体が前記所定の動作位置から前記第2方向に沿って自由に動く解除状態とが設定されることを特徴とする。
【0043】
有利なことに、そのようなナットは、前述の本発明にかかるアクチュエータ装置に使用可能である。
【0044】
好ましくは、前述のナットは、本発明にかかるアクチュエータ装置に関して説明した構造的特徴および機能的特徴の各特徴またはそれらの特徴の組合せを有するので、上述の全ての利点および技術的効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の好ましい一実施形態にかかるアクチュエータ装置を示す斜視図である。
【図2】図1のアクチュエータ装置の他の斜視図である。
【図3】図1のアクチュエータ装置に使用されている、本発明にかかるナットを示す斜視図である。
【図4】図3のナットの拡大断面図である。
【図5】図3のナットの第1の構造細部を示す側面図である。
【図6】図3のナットの第2の構造細部を上方からみた平面図である。
【図7】図3のナットの第1実施形態の第1の動作状態を示す断面図である。
【図8】図7のナットの第2の動作状態を示す断面図である。
【図9】図3のナットの第2実施形態の第1の動作形態を示す断面図である。
【図10】図9のナットの第2の動作形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照しながら行う好ましい実施形態についての以下の説明から明らかになる。なお、図面は例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0047】
図1および図2には、本発明の好ましい一実施形態にかかる自転車のギアシフト、詳細には、後側のギアシフトのアクチュエータ装置が、符号100で表されている。
【0048】
このアクチュエータ装置100は、連結式の四角形、詳細には、平行四辺形のような形状の作動運動機構101を備える。この作動運動機構101は、駆動部材120によって移動して、自転車の後側のギアシフトの一般的なディレイラ(図示せず)を動作させる。他の実施形態(図示せず)では、連結式の四角形は、平行四辺形でなく不等辺四角形であってもよい。
【0049】
作動運動機構101は、4つのピン部材で互いに結合された4つのコネクティングロッドを有する。これらのコネクティングロッドは、自転車のフレームに取り付けるためのサポート112に結合された第1のコネクティングロッド102と、第1のコネクティングロッド102に対向し、ディレイラを取り付けるためのサポート113に結合された第2のコネクティングロッド103と、第3のコネクティングロッド104と、第4のコネクティングロッド105とで構成される。ピン部材は、第1のピン部材106(第1のコネクティングロッド102と第3のコネクティングロッド104との間)と、第1のピン部材106に対向する第2のピン部材107(第2のコネクティングロッド103と第4のコネクティングロッド105との間)と、第3のピン部材108(第1のコネクティングロッド102と第4のコネクティングロッド105との間)と、第3のピン部材108に対向する第4のピン部材109(第2のコネクティングロッド103と第3のコネクティングロッド104との間)とで構成される。
【0050】
第1のピン部材106に、駆動部材120用のサポート116が結合されている。なお、本明細書おいて、ある部材とピン部材またはコネクティングロッドとが「結合」しているという表現は、部材がピン部材またはコネクティングロッドと機械的に接続されている状態、部材がピン部材またはコネクティングロッドと一体に形成されている状態、あるいは、部材がピン部材またはコネクティングロッドの機能を果たすように構成されている状態を指すものとする。
【0051】
駆動部材120は、ねじ付きの駆動軸122を備えた電動モータ121(図示されていないケーブルおよび制御部材によって給電、制御される)を有し、駆動軸122は、駆動軸心123に沿って延び、モータ121によって回転される。図示の例において、サポート116は、ゆりかご形状をしており、駆動軸心123を有するモータ121を第1のピン部材106の軸で収容している。
【0052】
駆動部材120は、ナット10を介して、作動運動機構101と接続されている。ナット10は、ねじ付きの駆動軸122にねじ係合されて、第2のピン部材107に連結されている。駆動部材120は、ナット10とサポート116とを介して作動運動機構101を作動させ、第1のピン部材106と第2のピン部材107との間の対角線を長くしたり短くしたりする。具体的には、アクチュエータ装置100を自転車の後側のギアシフトに使用した場合、そのような対角線を長くすることにより、ギアのアップシフト(スプロケットアセンブリの内側に位置する大径のスプロケットに向かうギアシフト)を実行することができる。一方で、対角線を短くすることにより、ギアのダウンシフト(スプロケットアセンブリの外側に位置する小径のスプロケットに向かうギアシフト)を実行することができる。
【0053】
本発明に係るナット10(図3および図4)は、方向Aに沿って延びるチューブ状本体11を有し、このチューブ状本体11は、方向Aに対してほぼ垂直な方向Cに沿って延びて互いに対向して並んだ2つのピン部12を有する。2つのピン部12は同一形状で、チューブ状本体11に連結固定されており、好ましくは、チューブ状本体11に一体に形成されている。ピン部12は、作動運動機構101の第2のピン部材107と結合している。
【0054】
図4に示すように、チューブ状本体11の内側には、方向Aに沿って延びる円形断面の貫通孔からなる、第1の空洞131が設けられている。この空洞131は、一端部がカバー14で閉じられている。チューブ状本体11の内側には、また、方向Aおよび方向Cの両方に直交する方向Bに沿って延びる多角形状断面の貫通孔からなる第2の空洞132(図5)が設けられている。
【0055】
第1の空洞131は、ボール15の少なくとも一部を収容する幅狭断面部131aを有する。第1の空洞131内部に、ばね30と、第1の空洞131の壁に摺動可能に接合された押圧部材31とが設けられている。
【0056】
ばね30は、カバー14と押圧部材31との間に予圧をかけられた状態で配置され、押圧部材31をカバー14から遠ざかる方向に押圧している。
【0057】
押圧部材31は、ばね30と接する側と反対側の端部において、第1の空洞131の幅狭断面部131a内部で摺動する縮小部31aを有する。押圧部材31の縮小部31aは、その自由端に、ボール15の表面と合致する形状のシート32を有する。ボール15は、ばね30の予圧によってカバー14から遠ざかる方向に押圧され、ボール15の少なくとも一部をチューブ状本体11の第2の空洞132に突出させる。
【0058】
図示のばね30は金属製のコイルばねであるが、金属製のコイルばねの代わりに、チューブ状のエラストマーばねを使用してもよいし、あるいは、同様の押圧動作をナット10内で行うことができるあらゆる種類のばねを使用することもできる。ばね30の選択、サイズ、および圧縮強さは、ばね30が取り付けられるアクチュエータ装置内においてナット10が提供する保護作用に応じて決定される。その詳細は、後述する。
【0059】
図7および図8には、本発明にかかるアクチュエータ装置100が所定の値を超える力を受けた際における、図3のチューブ状本体11の動作を示す。このような動作の詳細は、後述する。
【0060】
図9および図10は、図7および図8と類似しているが、本発明にかかるナット10の他の実施形態に関する。このナットは、チューブ状本体11の構造において、他の図のナットと異なる。
【0061】
詳細には、図4、図7および図8の実施形態では、カバー14は、所定の相対位置となるように圧入によってチューブ状本体11に接続されている。図9および図10の実施形態では、カバー14およびチューブ状本体11は、互いに噛み合うねじを有し、カバー14をチューブ状本体11にねじ込むことで接続されている。したがって、カバー14のチューブ状本体11に対するねじ込み量を調整することにより、ばね30の予圧を調節することができ、これにより、ボール15に対する押圧を調節できる。他の構成に関しては、図9および図10の実施形態は図4、図7および図8の実施形態と同一である。
【0062】
ナット10は、さらに、駆動軸122の外面のねじ部と合致するねじ部が内面に設けられたチューブ状スリーブ16を有し、これにより、駆動軸122とナット10とが係合可能となっている。
【0063】
図6に示すように、チューブ状スリーブ16は、その長手方向軸(使用時に、ディレイラ100の駆動軸心123およびチューブ状本体11の方向Bと合致する)に沿って延びており、円形外表面部16aと、多角形外表面部16b(図示の例では六角形)とを有する。円形外表面部16aの外径は、多角形外表面部16bの断面に外接する理想円周の直径よりも大きい。このような円形外表面部16aから多角形外表面部16bへの遷移部により、チューブ状本体11に対する当接面16cが形成されている。
【0064】
図7から図10に示すように、チューブ状スリーブ16は、チューブ状本体11の内側の第2の空洞132内を摺動する。図3および図5に示すように、多角形外表面部16bの外面は内側の第2の空洞132の断面と合致しており、チューブ状本体11の第2の空洞132に挿通されたチューブ状スリーブ16が、方向B周りに回転不能で、方向Bに沿って摺動可能となっている。
【0065】
図4および図6に示すように、チューブ状スリーブ16の多角形状外表面の一表面部で、円形外表面部16aと方向Bに沿って隣接する位置に、ボール15の表面と合致する形状を有する第1シート(第1ハウジングシート)17aが形成されている。第1シート17aの方向Bに沿った側方に、方向Bに沿って延びる長手方向の溝からなる第2シート(第2ハウジングシート)17bが形成されている。第2シート17bは、チューブ状スリーブ16の半分の長さを超える長さを有し、好ましくは、チューブ状スリーブ16の3分の2の長さ以上である。
【0066】
前記の第1および第2シート17a,17bは、チューブ状スリーブ16の隆起部である丘部17cにより互いに分離されている。図4に示すように、丘部17cは、第1シート17aおよび第2シート17bのそれぞれに、傾斜した結合面を介して結合されている。
【0067】
チューブ状本体11のボール15、押圧部材31、ばね30およびカバー14と、チューブ状スリーブ16の第1シート17a、第2シート17bおよび丘部17cとで、ナット10におけるスナップ機構200を構成している(図4)。後述するように、このスナップ機構200により、ディレイラ100が第1の動作状態(図3、4、7,9)から第2の動作状態である解除形態(図8,10)に移動する。ここで、第1の動作状態とは、ボール15が第1シート17aに収容され、駆動軸122が回転することにより作動運動機構101が変形してギアシフトが実行される状態をいい、解除状態とは、ボール15が第2シート17bに収容され、駆動軸が回転しても作動運動機構101が変形しない状態をいう。ばね30のばね力により、ボールは、丘部17cを介して第1シート17aから第2シート17bに移動する。
【0068】
図7から図10には、着脱可能な閉塞キャップ18が円形外表面部16aの自由端に設けられた様子が示されている。この閉塞キャップ18は、駆動部材120の駆動軸122が通過できるように孔が開けられている。多角形状外表面部16bの自由端部にも、着脱可能な閉塞キャップ19が配設されている。この閉塞キャップ19には、鍔状の当接部19aが設けられ、ボール15が第2シート17bに収容された状態でチューブ状本体11がチューブ状スリーブ16から滑り外れるのを防いでいる。
【0069】
アクチュエータ装置100では、アクチュエータ装置100に対する衝撃によって作動運動機構101が損傷しないようにする必要がある。
【0070】
このような衝撃は、図8および図10に示されている方向Uの成分を有する。このような衝撃(上述の不所望な移動/変形)には、ばね30がボール15をチューブ状スリーブ16に向かって押圧する圧力で決まる反力が対抗する。ばね30の寸法および初期の圧縮(予圧)を設定することにより、所定の値の力が決まる。
【0071】
通常使用時の動作状態(ギアシフトを実行するとき)では、チューブ状本体11がチューブ状スリーブ16に結合し、ボール15が第1シート17aに収容された第1の動作状態となる(図3、図4、図7および図9)。
【0072】
アクチュエータ装置100に対する衝撃が、ばね30が所定の値よりも小さい力を受ける程度であれば、ばね30は変形せず、チューブ状本体11はチューブ状スリーブ16に対する上記の位置に留まる。この場合、ナット10は剛体のように機能するので、駆動軸122が回転するとチューブ状スリーブ16が駆動軸心123方向(すなわち方向B)に移動する。チューブ状本体11は、ボール15と第1シート17aとのカップリングによってチューブ状スリーブ16に結合固定されているので、チューブ状スリーブ16に連結固定した状態で移動する。このような移動により、(第1のピン部材106と第2のピン部材107との間の対角線の長さが変化して)作動運動機構101が変形することで、チェーンが移動し、その結果としてギアが切り換えられる。
【0073】
一方、アクチュエータ装置100に対する衝撃が、ばね30が所定の値よりも大きい力を受ける程度であると、ばね30は押し戻され、ボール15が第1シート17aから丘部17cを乗り越えて第2シート17bに移動する。この状態では、チューブ状本体11は駆動軸心123方向に沿ってチューブ状スリーブ16から完全に外れている。つまり、チューブ状スリーブ16が(駆動軸122の回転によって)駆動軸心123方向に沿って移動するが、チューブ状本体11は一緒に移動しない。これは、チューブ状本体11は第2シート17bに係合されているが、チューブ状スリーブ16に駆動軸心123方向に沿って固定連結されていないからである。これにより、連結式の作動運動機構101が駆動軸122から解除した状態が達成される。
【0074】
前述の所定の力の値は、通常動作時で作動運動機構101に生じる最大応力の駆動軸心123に沿った成分よりも確実に大きくなるように、かつ、衝撃によって発生して作動運動機構101の部品を損傷し得る応力の駆動軸心123に沿った成分よりも確実に小さくなるように選択される。
【0075】
ナット10が剛体として作用することにより、駆動部材120作動後の作動運動機構の応答は速くなる。上記構成では、システムが高速で応答できる動作範囲を広げたい場合、所定の値を高く設定すればよい。一方で、小さな衝撃も吸収するようにしたい場合、システムが高速で応答できる範囲は狭まるが、所定の値を低く設定すればよい。
【0076】
なお、上述したシステムは完全な可逆的システムである。つまり、最初に解除状態(図8および図10)であっても、チューブ状本体11をボール15が第1シート17aに収容される位置まで手動で動かすことにより、通常使用の第1の動作状態(図7および図9)に戻すことができる。さらに、上述したシステムでは、ユーザが必要に応じて通常使用時の第1の動作状態(図7および図9)から解除状態(図8および図10)に手動で移行させることもできる。これは、例えば自転車を輸送する前や、使用時にギアシフトが故障した場合に、ディレイラを手動で変位させることができるので便利である。
【0077】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、当業者であれば、前述の特許文献2に記載されているような前側のギアシフトのアクチュエータ装置に本発明のアクチュエータ装置を適用することができる。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
10 ナット
11 チューブ状本体
12 ピン部
14 カバー
15 ボール
16 チューブ状スリーブ
17a 第1シート
17b 第2シート
17c 隆起部(17c)
19 閉塞キャップ
19a 鍔状当接部
30 ばね
31 押圧部材
100 アクチュエータ装置
101 作動運動機構
120 駆動部材
121 モータ
122 駆動軸
131 第1の空洞
132 第2の空洞
200 スナップ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のギアシフトに用いられるアクチュエータ装置(100)であって、
前記ギアシフトのディレイラを移動させるように変形する作動運動機構(101)と、
モータ(121)と当該モータ(121)によって回転されるねじ付きの駆動軸(122)を有し、前記作動運動機構(101)の変形を制御する駆動部材(120)と、
前記作動運動機構(101)および前記駆動軸(122)に接続されるナット(10)と、を備え、
当該アクチュエータ装置(100)の第1の動作状態では、前記ナット(10)は、前記駆動軸(122)と係合状態にあり、前記駆動軸(122)が回転すると前記作動運動機構(101)が変形するように設定された自転車のギアシフトのアクチュエータ装置において、
さらに、スナップ機構(200)を備え、
当該アクチュエータ装置(100)の前記第1の動作状態では、前記スナップ機構(200)が、前記ナット(10)を前記係合状態に保持し、
当該アクチュエータ装置(100)が所定の値を超える力を受けると、前記スナップ機構(200)が、前記ナット(10)を解除状態にして、前記駆動軸(122)が回転しても前記作動運動機構(101)が変形しないように設定することを特徴とする、自転車のギアシフトのアクチュエータ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ナット(10)は、
第1方向(A)に沿って延びる第1の空洞(131)、および前記第1方向(A)に直交する第2方向(B)に沿って延びる第2の空洞(132)を備えたチューブ状本体(11)と、
前記チューブ状本体(11)に連結固定され、前記第1方向(A)および前記第2方向(B)の両方に直交する第3方向(C)に沿って延びる2つの対向するピン部(12)と、
前記第2方向(B)に沿って摺動可能に前記チューブ状本体(11)内に挿入され、前記駆動軸(122)と係合するねじ付きのチューブ状スリーブ(16)と、
を有し、
前記スナップ機構(200)が、前記チューブ状本体(11)と前記チューブ状スリーブ(16)との間で前記第1方向(A)に沿って動作する、自転車のギアシフトのアクチュエータ装置。
【請求項3】
請求項2において、前記スナップ機構(200)が、
前記動作状態では、前記チューブ状本体(11)を前記チューブ状スリーブ(16)に対して所定の動作位置に保持し、
前記解除状態では、前記チューブ状本体(11)を前記所定の動作位置から前記第2方向(B)に沿って自由に移動可能とする、自転車のギアシフトのアクチュエータ装置。
【請求項4】
請求項2または3において、前記スナップ機構(200)は、
前記チューブ状本体(11)の前記第1の空洞(131)内に少なくとも一部が収容されるボール(15)と、
前記チューブ状本体(11)の前記第1の空間(131)内に収容され、前記ボール(15)に作用して当該ボール(15)を前記第1方向(A)に沿って前記チューブ状スリーブ(16)に向かって押圧する予圧ばね(30)と、
前記チューブ状スリーブ(16)に設けられ、前記動作状態において前記ボール(15)を部分的に収容する第1シート(17a)と、
前記チューブ状スリーブ(16)における前記第2方向(B)に沿って前記第1シート(17a)に隣接する位置に設けられ、前記解除状態において前記ボール(15)を部分的に収容する、少なくとも1つの第2シート(17b)と、
を有する、自転車のギアシフトのアクチュエータ装置。
【請求項5】
請求項4において、前記少なくとも1つの第2シート(17b)が、前記第2方向(B)に沿って延びる溝で形成されている、自転車のギアシフトのアクチュエータ装置。
【請求項6】
請求項5において、前記溝の長さが、少なくとも前記チューブ状スリーブ(16)の半分の長さに等しい、自転車のギアシフトのアクチュエータ装置。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか一項において、前記第1シート(17a)と、前記少なくとも1つの第2シート(17b)とは、前記チューブ状スリーブ(16)に設けられた隆起部(17c)により互いに分離されている、自転車のギアシフトのアクチュエータ装置。
【請求項8】
請求項7において、前記隆起部(17c)が、前記第1シート(17a)と前記少なくとも1つの第2シート(17b)とに、傾斜した接合面を介して接合されている、自転車のギアシフトのアクチュエータ装置。
【請求項9】
請求項4から8のいずれか一項において、前記チューブ状本体(11)が、前記空洞(131)内で摺動する押圧部材(31)と、前記空洞(131)を閉じるカバー(14)とを有し、
前記予圧ばね(30)が、前記押圧部材(31)と前記カバー(14)との間で押し付けられることによって作用する、自転車のギアシフトのアクチュエータ装置。
【請求項10】
請求項9において、前記カバー(14)は、ねじによって前記チューブ状本体(11)に接続され、
前記チューブ状本体(11)に対する前記カバー(14)の位置が、ねじを回すことで調節可能である、自転車のギアシフトのアクチュエータ装置。
【請求項11】
請求項9において、前記カバー(14)は、圧入によって前記チューブ状本体(11)に接続され、
前記チューブ状本体(11)に対する前記カバー(14)の位置が、所定の位置となる、自転車のギアシフトのアクチュエータ装置。
【請求項12】
請求項2から11のいずれか一項において、前記チューブ状スリーブ(16)の少なくとも一部の外側部分が、前記チューブ状本体(11)の多角形状の内側部分と合致する多角形状である、自転車のギアシフトのアクチュエータ装置。
【請求項13】
請求項2から12のいずれか一項において、前記チューブ状スリーブ(16)が、一端部に、着脱可能な閉塞キャップ(19)を有する、自転車のギアシフトのアクチュエータ装置。
【請求項14】
請求項13において、前記閉塞キャップ(19)が、前記解除状態において前記チューブ状本体(11)が抜け外れるのを防ぐ鍔状当接部(19a)を有する、自転車のギアシフトのアクチュエータ装置。
【請求項15】
自転車のギアシフトのアクチュエータ装置(100)に用いられるナット(10)であって、
第1方向(A)に沿って延びる第1の空洞(131)、および前記第1方向(A)に直交する第2方向(B)に沿って延びる第2の空洞(132)が設けられたチューブ状本体(11)と、
前記チューブ状本体(11)に連結固定され、前記第1方向(A)および前記第2方向(B)の両方に直交する第3方向(C)に沿って延びる2つの対向するピン部(12)と、
前記第2方向(B)に沿って摺動可能に前記チューブ状本体(11)内に挿通された、チューブ状スリーブ(16)と、
を備え、
前記チューブ状スリーブ(16)は内面にねじが切られ、このねじにより、前記チューブ状スリーブ(16)が前記アクチュエータ装置(100)のモータ(121)の駆動軸(122)と係合する、アクチュエータ装置(100)用のナット(10)において、
さらに、前記チューブ状本体(11)と前記チューブ状スリーブ(16)との間で作用するスナップ機構(200)を備え、
前記スナップ機構(200)により、前記チューブ状本体(11)が前記チューブ状スリーブ(16)に対して所定の動作位置に保持される第1の動作状態と、前記チューブ状本体(11)が前記所定の動作位置から前記第2方向(B)に沿って自由に動く解除状態とが設定されることを特徴とする、アクチュエータ装置用のナット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−121566(P2012−121566A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−268541(P2011−268541)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(592072182)カンパニョーロ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (94)
【氏名又は名称原語表記】CAMPAGNOLO SOCIETA A RESPONSABILITA LIMITATA
【Fターム(参考)】