説明

自転車用人力発電機

【課題】小型かつ軽量で携行も可能となると共に、大きな容量の電力を得ることのできる、自転車用人力発電機を提供する。
【解決手段】この発明に係る自転車用人力発電機は、ローラ2と、前記ローラ2の一方の側方位置に配置された第1発電機3と、前記ローラ2の他方の側方位置に配置された第2発電機4とを備えてなり、前記第1発電機3及び前記第2発電機4は、いずれも、コアレス型の固定コイル部7と、前記ローラ2の回転に連動して回転する永久磁石6と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人力による自転車のタイヤの回転を利用して発電を行うための発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
地震等の災害時における避難所等では、停電になった場合、電気照明器具、電気加熱調理器、電気暖房機等様々な電気器具が使用できなくなり日常生活に大きな支障を来すという問題を抱えている。また、停電になっていない場合でも、地震等の災害時における避難所では、多くの人が避難してくるので所定の電気容量以上の電力、即ち緊急電源が必要になる場合が多い。このようなケースに対応する緊急電源としては、燃料を用いた発電機が知られているが、このような発電機は大型で重量も重いという難点があるし、そもそも地震等の災害時においてはライフラインが絶たれて燃料を準備することが困難なことも多く、実際の場面では使用適性に劣るという問題があった。
【0003】
このような状況の中、人力を利用した発電機として、回転自在なクランク型シャフトと発電機本体とが、3〜4段の増速ギヤまたは遊星ギヤ等からなるギヤトレーンを介して連結された構成の足踏式発電装置が公知である(特許文献1参照)。この発電装置によれば、足で踏むという人力で発電を行うことができる。
【特許文献1】特開平11−275808号公報(請求項1、段落0018)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記足踏式発電装置では、ハンドル、サドル等を備えたフレーム体に、シャフト、ギヤトレーン、発電機本体等が一体に組み込まれて自転車様(車輪なし)の発電装置として構成されたものであり、装置としては非常に大型のものになるという問題があった。即ち、携行できるようなものではなかった。また、3〜4段の増速ギヤまたは遊星ギヤ等からなるギヤトレーンを採用しているので、コストが増大するという問題もあった。
【0005】
更に、一般の自転車に取り付けて発電できるタイプのものではなく汎用性に乏しいという問題もあった。
【0006】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、低コストであり、小型かつ軽量で携行も可能となると共に、大きな容量の電力を得ることのできる、自転車用人力発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]ローラと、
前記ローラの一方の側方位置に配置された第1発電機と、
前記ローラの他方の側方位置に配置された第2発電機とを備えてなり、
前記第1発電機及び前記第2発電機は、いずれも、コアレス型の固定コイル部と、前記ローラの回転に連動して回転する永久磁石と、を備えることを特徴とする自転車用人力発電機。
【0009】
[2]前記第1発電機の永久磁石及び前記第2発電機の永久磁石は、いずれも、前記ローラに連結固定された盤状体に固定されることによって、前記ローラの回転に連動して回転する前項1に記載の自転車用人力発電機。
【0010】
[3]前記第1発電機の永久磁石及び前記第2発電機の永久磁石は、いずれも、前記ローラに連結固定された中空盤状体の対向する一対の側壁の内面に固定されることによって、前記ローラの回転に連動して回転するものとなされ、前記中空盤状体の内部空間内に、前記固定コイル部が配置されている前項1に記載の自転車用人力発電機。
【0011】
[4]ローラと、
前記ローラの一方の側方位置に配置された第1発電機と、
前記ローラの他方の側方位置に配置された第2発電機とを備えてなり、
前記第1発電機及び前記第2発電機は、いずれも、固定永久磁石と、前記ローラの回転に連動して回転するコアレス型のコイル部と、を備えることを特徴とする自転車用人力発電機。
【0012】
[5]前記永久磁石として希土類磁石が用いられている前項1〜4のいずれか1項に記載の自転車用人力発電機。
【0013】
[6]自転車の車輪の軸部に着脱自在に取付固定可能な取付部を一端側に有した左右一対の支持杆の他端側同士が連結杆により連結されてなるスタンド台と、
前記スタンド台の連結杆の中間部から該連結杆の軸線に対して略直交する方向に向けて延設された取付台座部と、
前記ローラ、前記第1発電機及び前記第2発電機を含む発電機構部を支持した支持体とをさらに備え、
前記取付台座部に長孔が形成される一方、前記支持体に固定用孔が形成され、前記取付台座部の長孔及び前記支持体の固定用孔にボルトが挿通されて該ボルトにナットが螺合されることによって前記取付台座部に前記支持体が固定されるものとなされている前項1〜5のいずれか1項に記載の自転車用人力発電機。
【0014】
[7]前記支持体は、前記ローラの下側に配置された支持基部と、該支持基部の両端側から上方に向けて延ばされた左右一対の支承部とを備えてなり、該支承部によって前記発電機構部が支持されている前項6に記載の自転車用人力発電機。
【0015】
[8]前記取付台座部に、相互に離間して平行状に配置された少なくとも2つ以上の長孔が形成され、前記支持体の支持基部に相互に離間して配置された少なくとも2つ以上の固定用孔が形成されている前項7に記載の自転車用人力発電機。
【0016】
[9]自転車の車輪の軸部に着脱自在に取付固定可能な取付部を一端側に有した左右一対の支持杆の他端側同士が連結杆により連結されてなるスタンド台と、
前記スタンド台の連結杆の中間部から該連結杆の軸線に略直交する方向に向けて延設された取付台座部と、
前記ローラ、前記第1発電機及び前記第2発電機を含む発電機構部を支持した支持体とをさらに備え、
前記支持体に長孔が形成される一方、前記取付台座部に固定用孔が形成され、前記支持体の長孔及び前記取付台座部の固定用孔にボルトが挿通されて該ボルトにナットが螺合されることによって前記取付台座部に前記支持体が固定されるものとなされている前項1〜5のいずれか1項に記載の自転車用人力発電機。
【発明の効果】
【0017】
[1]の発明では、ローラの左右両側に発電機を配置した構成が採用されているので、自転車に取り付けた時のバランスが良く、これによりローラを自転車のタイヤの外周面に圧接した状態時においてタイヤの回転がローラに十分に伝達されるものとなり(回転の伝達ロスが少なくなり)、発電効率に優れている。また、発電機を構成するコイル部は、コアレス型(鉄芯を有しない構成)であるから、小型かつ軽量であり、携行することも可能となる。また、永久磁石方式の発電機を用いているので、大きな容量の電力を得ることができる。例えば、数百W程度の電力を得ることができる。
【0018】
[2]の発明では、発電機の永久磁石は、ローラに連結固定された盤状体に固定されることによって、ローラの回転に連動して回転するものとなされているから、構成の簡素化を図ることができて、さらなる小型化及び軽量化を実現できる。
【0019】
[3]の発明では、発電機の永久磁石は、ローラに連結固定された中空盤状体に固定されることによって、ローラの回転に連動して回転するものとなされているから、構成の簡素化を図ることができて、さらなる小型化及び軽量化を実現できる。また、発電機の永久磁石は、中空盤状体の対向する一対の側壁の内面に固定されていて、コイルの両側に永久磁石が配置されているので、磁束密度が増大して、より大きな容量の電力を得ることができる。
【0020】
[4]の発明では、ローラの左右両側に発電機を配置した構成が採用されているので、自転車に取り付けた時のバランスが良く、これによりローラを自転車のタイヤの外周面に圧接した状態時においてタイヤの回転がローラに十分に伝達されるものとなり(回転の伝達ロスが少なくなり)、発電効率に優れている。また、発電機を構成するコイル部は、コアレス型(鉄芯を有しない構成)であるから、小型かつ軽量であり、携行することも可能となる。また、永久磁石方式の発電機を用いているので、大きな容量の電力を得ることができる。例えば、数百W程度の電力を得ることができる。
【0021】
[5]の発明では、永久磁石として希土類磁石が用いられているから、より一層大きな容量の電力を得ることができる。
【0022】
[6]の発明では、自転車の車輪の軸部に着脱自在に取付固定可能な取付部を有したスタンド台を備えているから、一般の自転車に取り付け可能で汎用性がある。また、スタンド台を自転車に取り付けて車輪を浮かした状態で支承すると共に、ローラを自転車のタイヤの外周面に圧接せしめた状態で取付台座部の長孔及び支持体の固定用孔に挿通されたボルトにナットを螺合することによって、ローラを自転車のタイヤの外周面に十分に圧接せしめた状態で人力発電機を自転車に装着固定することができる。
【0023】
[7]の発明では、支持体は、ローラの下側に配置された支持基部と、該支持基部の両端側から上方に向けて延ばされた左右一対の支承部とを備えてなり、このような簡単な構成であるから、より小型化及び軽量化を図ることができる。
【0024】
[8]の発明では、取付台座部に、相互に離間して平行状に配置された少なくとも2つ以上の長孔が形成され、支持体の支持基部に相互に離間して配置された少なくとも2つ以上の固定用孔が形成されているので、取付台座部に支持体を十分に安定した状態に取付固定することができる。これにより、ローラを自転車のタイヤの外周面に安定して十分に圧接せしめることができるから、発電効率をさらに向上させることができる。
【0025】
[9]の発明では、自転車の車輪の軸部に着脱自在に取付固定可能な取付部を有したスタンド台を備えているから、一般の自転車に取り付け可能で汎用性がある。また、スタンド台を自転車に取り付けて車輪を浮かした状態で支承すると共に、ローラを自転車のタイヤの外周面に圧接せしめた状態で支持体の長孔及び取付台座部の固定用孔に挿通されたボルトにナットを螺合することによって、ローラを自転車のタイヤの外周面に十分に圧接せしめた状態で人力発電機を自転車に装着固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
この発明に係る自転車用人力発電機(1)の一実施形態を図1に示す。図1において、(2)はローラ、(3)は第1発電機、(4)は第2発電機、(11)はスタンド台、(21)は取付台座部、(31)は支持体である。
【0027】
前記スタンド台(11)は、相互に離間して平行状に配置された一対の支持杆(12)(12)の下端部同士が連結杆(13)により接合されると共に、前記支持杆(12)の上端側から該支持杆(12)の軸線に対して交差する方向に補助杆(14)が延ばされてなる(図1、3参照)。前記支持杆(12)の上端部から内方に向けて管状の取付部(17)が突設される一方、前記支持杆(12)の上端部から外方に向けてハンドル(18)が回転可能な態様で突設されている。即ち、前記ハンドル(18)は、前記支持杆(12)の上端部に螺合機構により回転可能な態様で取り付けられると共に、前記ハンドル(18)の基端部は、前記管状の取付部(17)の基端部に連結されており、該ハンドル(18)を回転操作することによって前記管状取付部(17)の内方への進出・外方への退出を制御することができる。即ち、前記ハンドル(18)を時計回転させることによって前記管状取付部(17)を内方に向けて進出させることができる一方、前記ハンドル(18)を反時計回転させることによって前記管状取付部(17)を外方に向けて後退させることができるものとなされている。しかして、前記スタンド台(11)の一対の管状取付部(17)(17)の間のスペースに、自転車の車輪の軸部(G)を挿入配置せしめると共に、前記ハンドル(18)を時計回転させて前記管状取付部(17)を内方に向けて進出させて該管状取付部(17)を車輪の軸部(G)に外嵌め状態に取付固定することによって、前記スタンド台(11)の支持杆(12)(12)を、自転車の車輪の軸部(G)に着脱自在に取付固定することができる(図8参照)。
【0028】
図5に示すように、前記スタンド台(11)の連結杆(13)の中間部から該連結杆(13)の軸線に対して略直交する方向に向けて略矩形状の突出板(15)が延ばされている。前記突出板(15)には固定用孔(16)(16)が穿設されている。更に、平面視略矩形状の平板部(23)の幅方向の両端縁部から下方に向けて補強板部(24)(24)が突設されてなる取付台座部(21)が、その長さ方向の一端側を前記突出板(15)を外覆状態に配置されて、この状態で前記突出板(15)の固定用孔(16)(16)及び前記取付台座部(21)の固定用孔(25)(25)にボルト(26)(26)が挿通されて該ボルトにナット(27)(27)が螺合締付されることによって(図5参照)、前記突出板(15)に前記取付台座部(21)が固定されている。即ち、前記スタンド台(11)の連結杆(13)の中間部から該連結杆(13)の軸線に対して略直交する方向に向けて前記取付台座部(21)が延設されて固定されている(図1、2参照)。
【0029】
前記取付台座部(21)の平板部(23)には、図5、6に示すように、幅方向に相互に離間して平行状に配置された3つの長孔(22)(22)(22)が設けられている。即ち、これら長孔(22)(22)(22)は、ローラ(2)の回転軸線方向に略直交する方向に沿って延ばされている(図2参照)。
【0030】
一方、前記支持体(31)は、平板からなる支持基部(32)と、該支持基部(32)の両端縁から上方に向けて延ばされた左右一対の平板からなる支承部(33)(34)とを備えている(図1、2参照)。前記支持基部(32)は略矩形状の平板からなり、前記支承部(33)(34)は略矩形状の平板からなる。前記支持体(31)によって、前記ローラ(2)、第1発電機(3)及び第2発電機(4)を備えた発電機構部(5)を支持している。即ち、図2に示すように、前記支承部(33)(34)の中央部に突出部(33a)(34a)が突設され、該突出部(33a)(34a)によって前記発電機(3)(4)を支承している。
【0031】
また、図5に示すように、前記支持体(31)の支持基部(32)には、相互に離間して配置された3つの固定用孔(35)(35)(35)が穿設されている。前記取付台座部(21)の上に前記支持体(31)の支持基部(32)を重ね合わせた状態で、前記取付台座部(21)の長孔(22)(22)(22)及び前記支持体(31)の支持基部(32)の固定用孔(35)(35)(35)にボルト(36)(36)(36)がそれぞれ挿通されて該ボルト(36)(36)(36)にそれぞれナット(37)(37)(37)が螺合締付されることによって(図5参照)、前記取付台座部(21)に前記支持体(31)が固定されている(図1、2参照)。
【0032】
前記ローラ(2)は、中に中空部を備えた円柱状体からなる。前記ローラ(2)の一方の側方位置に第1発電機(3)が配置され、前記ローラ(2)の他方の側方位置に第2発電機(4)が配置されている。即ち、前記第1発電機(3)と前記第2発電機(4)の間に前記ローラ(2)が挟み込み状態に配置されている。
【0033】
前記第1発電機(3)は、図4に示すように、中空盤状体(51)の対向する一対の側壁の内面に永久磁石(6)が固定されてなる回転子(50)と、前記中空盤状体(51)の内部空間内に配置された円板からなる固定子(53)とを備えている。前記固定子(53)の中にコアレス型の電機子コイル部(7)が埋設されている。前記中空盤状体(51)は、連結部(52)を介して前記ローラ(2)の側面部(図4で左側の側面部)に連結固定されている。前記固定子(53)は、連結部(54)を介して前記支承部(33)の中央部の突出部(33a)に固定されている。また、前記中空盤状体(51)は、図4に示すように、ベアリング(55)を介して前記連結部(54)に枢支されている。しかして、前記ローラ(2)が回転すると、該ローラ(2)に連結固定された中空盤状体(51)も回転し、これにより中空盤状体(51)に固定された永久磁石(6)は、前記ローラ(2)の回転に同期して回転する。なお、(56)は配線であり、前記突出部(33a)、連結部(54)を介して前記固定子(53)の電機子コイル部(7)に接続されている。
【0034】
また、前記第2発電機(4)は、図4に示すように、中空盤状体(61)の対向する一対の側壁の内面に永久磁石(6)が固定されてなる回転子(60)と、前記中空盤状体(61)の内部空間内に配置された円板からなる固定子(63)とを備えている。前記固定子(63)の中にコアレス型の電機子コイル部(7)が埋設されている。前記中空盤状体(61)は、連結部(62)を介して前記ローラ(2)の側面部(図4で右側の側面部)に連結固定されている。前記固定子(63)は、連結部(64)を介して前記支承部(34)の中央部の突出部(34a)に固定されている。また、前記中空盤状体(61)は、図4に示すように、ベアリング(65)を介して前記連結部(64)に枢支されている。しかして、前記ローラ(2)が回転すると、該ローラ(2)に連結固定された中空盤状体(61)も回転し、これにより中空盤状体(61)に固定された永久磁石(6)は、前記ローラ(2)の回転に同期して回転する。なお、(66)は配線であり、前記突出部(34a)、連結部(64)を介して前記固定子(63)の電機子コイル部(7)に接続されている。
【0035】
上記人力発電機(1)の自転車への装着は例えば次のようにして行う。まず、前記スタンド台(11)のハンドル(18)を反時計回転させることによって前記管状取付部(17)を外方に向けて後退させて一対の管状取付部(17)(17)の間の間隔を十分にあける。次いで、前記スタンド台(11)の一対の管状取付部(17)(17)の間のスペースに自転車の車輪の軸部(G)を挿入配置せしめた後、前記ハンドル(18)を時計回転させて前記管状取付部(17)を内方に向けて進出させて該管状取付部(17)を車輪の軸部(G)に外嵌め状態に取付固定する(図8参照)。これにより、前記スタンド台(11)の支持杆(12)(12)を、自転車の車輪の軸部(G)に着脱自在に取付固定することができる。こうして、図7に示すように、前記スタンド台(11)を自転車に取り付けて車輪を浮かした状態で支承することができる。
【0036】
次に、前記ナット(37)(37)(37)の螺合締付を緩めて、前記人力発電機(1)の支持体(31)の支持基部(32)を前記取付台座部(21)に対して車輪側にスライド移動させることによって、ローラ(2)を自転車のタイヤの外周面に十分に圧接せしめる(図7、8参照)。この状態で、前記取付台座部(21)の長孔(22)(22)(22)及び前記支持基部(32)の固定用孔(35)(35)(35)に挿通されたボルト(36)(36)(36)に対してナット(37)(37)(37)を螺合締付することで、ローラ(2)を自転車のタイヤの外周面に十分に圧接せしめた状態で人力発電機(1)を自転車に装着固定する。
【0037】
上記装着固定状態で、自転車のペダルを踏んで自転車のタイヤを回転させると、該タイヤに当接しているローラ(2)も回転する。この時、ローラ(2)と中空盤状体(51)(61)は前記連結部(52)(62)を介して連結固定されているから、この中空盤状体(51)(61)に固定された永久磁石(6)は、前記ローラ(2)の回転に同期して回転する。しかして、前記固定子(53)(63)に埋設された固定状態のコイル部(7)に対して前記永久磁石(6)が回転移動するので、前記コイル部(7)に電流が発生し、該電流が配線(56)(66)を通じて他の電機機器等に送電される。配線(56)(66)を蓄電器に接続すれば蓄電することもできる。
【0038】
また、この発明の自転車用人力発電機(1)では、ローラ(2)の左右両側に発電機(3)(4)を配置した構成を採用しているので、自転車に取り付けた時のバランスが良く、これによりローラ(2)を自転車のタイヤの外周面に圧接した状態時においてタイヤの回転がローラ(2)に十分に伝達されるものとなり(回転の伝達ロスが少なくなり)、発電効率に優れている。また、発電機(1)を構成するコイル部(7)は、コアレス型(鉄芯を有しない構成)であるから、小型かつ軽量であり、携行することも可能である。また、永久磁石方式の発電機であるので、大きな容量の電力を得ることができる。例えば、数百W程度の電力を得ることができる。
【0039】
なお、図8に示すように、前記支持体(31)と前記車輪の軸部(G)とを連結鎖(70)で連結しても良い。この連結鎖(70)は、金属製鎖部(71)の両端にフック(72)(72)が取り付けられたものからなる。即ち、図8に示すように、この連結鎖(70)の一方のフック(72)を前記支持体(31)の左側の支承部(33)の取付孔に引っ掛け、他方のフック(72)を車輪の左側の軸部(G)に引っ掛けると共に、もう1本の連結鎖(70)の一方のフック(72)を前記支持体(31)の右側の支承部(34)の取付孔に引っ掛け、他方のフック(72)を車輪の右側の軸部(G)に引っ掛けることによって、前記支持体(31)と前記車輪の軸部(G)とを連結するようにしても良い。この場合には、ローラ(2)を自転車のタイヤの外周面により十分に圧接させることができる利点がある。
【0040】
この発明において、前記永久磁石(6)としては、特に限定されるものではないが、希土類磁石が好適に用いられる。希土類磁石を用いれば、より一層大きな容量の電力を得ることができる。前記希土類磁石としては、特に限定されないが、例えばSm−Co磁石、Nd−Fe−B磁石等が挙げられる。
【0041】
なお、上記実施形態では、コイル部(7)が固定子であり、永久磁石(6)が回転子である構成が採用されているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えば、永久磁石(6)が固定子であり、コイル部(7)が回転子である構成を採用することもできる。
【0042】
また、第1発電機(3)及び第2発電機(4)の構成も上記実施形態の構成に特に限定されるものではなく、永久磁石(6)及びコアレス型のコイル部(7)を備えた構成であればどのようなものであっても良い。
【0043】
また、上記実施形態では、前記取付台座部(21)に長孔(22)が形成され、前記支持体(31)に固定用孔(35)が形成され、ボルト(36)及びナット(37)を用いることで前記取付台座部(21)に前記支持体(31)が固定されているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えば、前記支持体(31)に長孔が形成される一方、前記取付台座部(21)に固定用孔が形成され、前記支持体(31)の長孔及び前記取付台座部(21)の固定用孔にボルトが挿通されて該ボルトにナットが螺合されることによって前記取付台座部(21)に前記支持体(31)が固定された構成を採用することもできる。
【実施例】
【0044】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0045】
<実施例1>
図1〜4に示す人力発電機(1)を自転車の後輪に取付固定し(図7、8参照)、20代前半の男性が自転車を漕いでその時の人力発電機(1)の発電特性を調べた。得られた結果を図9に示す。この図9から発電機回転数が3300rpmのとき最大416Wもの出力を得ることができることがわかった(この出力値は発電機の定格を超えているために瞬間的に到達した値を短時間で計測した)。この時の時速は約70km/hに相当し、体力のある成人男性であれば比較的達成可能な値である。
【0046】
なお、第1発電機(3)及び第2発電機(4)としては、株式会社マザーズ製の165型発電機(定格回転数2000rpm、定格出力150W)を用いた。また、ローラ(2)の外径は115mmとした。自転車の後輪の直径は680mmであった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
この発明に係る自転車用人力発電機は、例えば、地震等の災害時における避難所等の緊急電源、或いは山間部等の電源のない場所での電源として利用できる。また、この発明の自転車用人力発電機は、小型で軽量であるので、携行可能であり、地震等の災害時において緊急電源として輸送される場合にも好都合である。また、数百W程度の電力を一時的にでも発生させることができるので、照明や通信機器等のほか、中規模の蓄電システム等と組み合わせて医療機器用の緊急電源としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明に係る自転車用人力発電機の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同平面図である。
【図3】同側面図である。
【図4】図3におけるX−X線の断面図である。
【図5】スタンド台、取付台座部、及び発電機構部を支持した支持体を分離状態で示す斜視図である。
【図6】取付台座部を示す図であって、(イ)は平面図、(ロ)は正面図である。
【図7】この発明の人力発電機を自転車に取り付けた状態の一例を、一部を切り欠いて示す側面図である。
【図8】ローラと自転車タイヤの接触状態を示す斜視図である。
【図9】実施例1での人力発電機の出力特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0049】
1…自転車用人力発電機
2…ローラ
3…第1発電機
4…第2発電機
5…発電機構部
6…永久磁石
7…電機子コイル部
11…スタンド台
12…支持杆
13…連結杆
14…補助杆
17…取付部
21…取付台座部
22…長孔
31…支持体
32…支持基部
33…支承部
34…支承部
35…固定用孔
36…ボルト
37…ナット
51…中空盤状体
61…中空盤状体
G…車輪の軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラと、
前記ローラの一方の側方位置に配置された第1発電機と、
前記ローラの他方の側方位置に配置された第2発電機とを備えてなり、
前記第1発電機及び前記第2発電機は、いずれも、コアレス型の固定コイル部と、前記ローラの回転に連動して回転する永久磁石と、を備えることを特徴とする自転車用人力発電機。
【請求項2】
前記第1発電機の永久磁石及び前記第2発電機の永久磁石は、いずれも、前記ローラに連結固定された盤状体に固定されることによって、前記ローラの回転に連動して回転する請求項1に記載の自転車用人力発電機。
【請求項3】
前記第1発電機の永久磁石及び前記第2発電機の永久磁石は、いずれも、前記ローラに連結固定された中空盤状体の対向する一対の側壁の内面に固定されることによって、前記ローラの回転に連動して回転するものとなされ、前記中空盤状体の内部空間内に、前記固定コイル部が配置されている請求項1に記載の自転車用人力発電機。
【請求項4】
ローラと、
前記ローラの一方の側方位置に配置された第1発電機と、
前記ローラの他方の側方位置に配置された第2発電機とを備えてなり、
前記第1発電機及び前記第2発電機は、いずれも、固定永久磁石と、前記ローラの回転に連動して回転するコアレス型のコイル部と、を備えることを特徴とする自転車用人力発電機。
【請求項5】
前記永久磁石として希土類磁石が用いられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の自転車用人力発電機。
【請求項6】
自転車の車輪の軸部に着脱自在に取付固定可能な取付部を一端側に有した左右一対の支持杆の他端側同士が連結杆により連結されてなるスタンド台と、
前記スタンド台の連結杆の中間部から該連結杆の軸線に対して略直交する方向に向けて延設された取付台座部と、
前記ローラ、前記第1発電機及び前記第2発電機を含む発電機構部を支持した支持体とをさらに備え、
前記取付台座部に長孔が形成される一方、前記支持体に固定用孔が形成され、前記取付台座部の長孔及び前記支持体の固定用孔にボルトが挿通されて該ボルトにナットが螺合されることによって前記取付台座部に前記支持体が固定されるものとなされている請求項1〜5のいずれか1項に記載の自転車用人力発電機。
【請求項7】
前記支持体は、前記ローラの下側に配置された支持基部と、該支持基部の両端側から上方に向けて延ばされた左右一対の支承部とを備えてなり、該支承部によって前記発電機構部が支持されている請求項6に記載の自転車用人力発電機。
【請求項8】
前記取付台座部に、相互に離間して平行状に配置された少なくとも2つ以上の長孔が形成され、前記支持体の支持基部に相互に離間して配置された少なくとも2つ以上の固定用孔が形成されている請求項7に記載の自転車用人力発電機。
【請求項9】
自転車の車輪の軸部に着脱自在に取付固定可能な取付部を一端側に有した左右一対の支持杆の他端側同士が連結杆により連結されてなるスタンド台と、
前記スタンド台の連結杆の中間部から該連結杆の軸線に略直交する方向に向けて延設された取付台座部と、
前記ローラ、前記第1発電機及び前記第2発電機を含む発電機構部を支持した支持体とをさらに備え、
前記支持体に長孔が形成される一方、前記取付台座部に固定用孔が形成され、前記支持体の長孔及び前記取付台座部の固定用孔にボルトが挿通されて該ボルトにナットが螺合されることによって前記取付台座部に前記支持体が固定されるものとなされている請求項1〜5のいずれか1項に記載の自転車用人力発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−288909(P2007−288909A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112921(P2006−112921)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年10月20日 日本太陽エネルギー学会発行の「太陽/風力エネルギー講演論文集(2005)」に発表
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【出願人】(302024191)株式会社マザーズ (4)
【Fターム(参考)】