説明

自転車

【課題】チェーンと前輪の干渉を排除し、安全安価な低重心自転車を提供する。
【解決手段】操舵ハンドル軸8、前輪12a、本体フレーム4、後輪15から成る自転車において、ペダルスプロケット2と第一の中継スプロケット10aに係歯される第一のチェーン3の往路、復路の前記ハンドル軸の延長線が横切る各交点付近に一対の括れ形成プーリー5,6を設け、前輪の回転面を含む前輪フレームの面に対して平行なオフセット面に前輪スプロケット12b、第二の中継スプロケット10b、前記両スプロケットに係歯される第二のチェーン11を設ける。また後輪に方向安定化装置60を備え、作動変換器32と作動調整器36から成る前後輪連携装置61、乃至は前記後輪の方向自在軸60と後輪の接地点との間に間隔を設けた方向自在装置の少なくともいづれか一方を設け、前記前後輪連携装置の要素間連結部の少なくとも一箇所にあそびを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は前輪駆動・前輪操舵、後輪による操舵補助自転車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
操舵により転向する前輪を一つのチェーンによって駆動する先行技術は、特許文献1がある。
【0003】
ユニバーサルジョイント(等速ジョイント、自在軸継手、自在継手機構、ユニバーサルカプリング、方向可変両軸接合機、等種々の呼称があり、以後UJと記す)により転向する前輪を駆動する先行技術は特許文献2など多数ある。
【0004】
UJ両軸の関係位置の厳密さを緩和する手段としてUJを2個使用する先行技術として特許文献3がある。
【0005】
体重移動による本体フレームの傾斜で後輪の転向を行い、後輪を操舵に補助的に関与させる先行技術として前記特許文献1がある。
【0006】
前輪と後輪をリンク機構で連携し転向を行う操舵の先行技術として特許文献4がある。
【0007】
二つの後輪を連携させる先行技術として特許文献5がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2010−508188号公報(段落0010〜0012、段落0017〜0018、第1図〜第3図)
【特許文献2】特許2858334号公報(2-3頁、課題を解決するための手段、第1図〜第2図)
【特許文献3】WO2006/106592号公報(段落0004〜0006、第1図〜第3図)
【特許文献4】特許2860900号公報(段落0010、第1図、第3図)
【特許文献5】特表2002−516220号(段落0021、第3図)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ブリヂストンサイクル株式会社発行 取扱説明書 大人用三輪編 ブリヂストンワゴン 4〜7頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一つのチェーンで前輪を駆動する構成で、操舵ハンドルを操作して前輪を転向させると、チェーンと前輪が干渉・接触する(特許文献1、段落0017参照)。
【0011】
同軸回転する一対の中継スプロケットの間に、屈曲点が操舵ハンドル軸の仮想延長線上に位置するようにUJを設け、操舵による転向時も、前輪を駆動し、チェーンと前輪が干渉・接触することなく前輪駆動・前輪操舵機能を実現できる(特許文献2参照)。しかしUJは屈曲点が操舵ハンドル軸の延長線上に厳密に一致していること、及び入力軸と出力軸の両軸が同一平面にあり続けることが前提でる。
入出力軸にズレを生じた場合、磨耗や騒音が増大し遂には破損する。通常の使用条件であっても長期間の使用で自転車のフレームに歪みが生じ、軸間の距離・姿勢にズレを生ずるから、長持ちさせるには厳重な点検保守を要する。結果として、製造、維持管理に高コストを要する(特許文献3、段落0004参照)。
【0012】
UJの二個組み合わ使用で、UJ両軸を同一平面に維持し続ける厳格さを緩和できるが(特許文献3参照)、コストは二倍になる。
【0013】
体重の左右移動で、重心位置を移動させ本体フレームを傾斜させることによって、後輪の転向を行う方式は訓練が必須である(特許文献1参照)。
【0014】
前輪フレーム、中間フレーム、後輪フレームの三つのフレームが夫々縦軸で回動可能につながり、前輪フレームの転向を中間フレームを介して後輪フレームに伝える特許文献4の方式は、後輪フレームに乗る運転者を基準に作動をみると、左右に操舵ハンドル軸の位置がブレる操舵ハンドルを操作することになる。
自転車を複数のフレームに分けるに当り、人と自転車のマン−マシンシステムのインターフェース部(座席、ペダル、操舵ハンドル)に求められる条件人間工学的観点から下記2件に集約される。
1)座席とペダルが同一フレームに設けられること。
2)操舵ハンドルは隣り合うフレームに設けられること。
【0015】
特許文献4の方式は、上記2)の条件に合致しない。2)の条件を充たす為、座席を中間フレームに設けると、1)は充たされるが、座席(中間フレーム)とペダル(後輪フレーム)がばらける。座席とペダルを中間フレームに設けると、前記1)、2)の条件は充たされるが、機構上チェーンの三次元屈曲装置を付設しない限り、旋回走行時、チェーンが後輪フレームに設けられた後輪を駆動できない。
また、前輪の転向を厳格に後輪に伝えるから、後輪は敏感に反応し、安定した操舵ができない。
【0016】
二つの後輪を互いに上下逆方向に動くように連携させ、車体の傾斜を防ぎ、ローリング安定性を増す懸架装置としての先行技術(特許文献5参照)はあるが、両後輪は固定された方向に進むのみで、転向に関与していない。
【0017】
本発明は、このような従来の問題を解決し、円滑な転向を可能にすると共に、低重心の安全な自転車を安価に提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
操舵ハンドルと、
前記操舵ハンドルにより操舵ハンドル軸を中心に転向し、前記操舵ハンドル軸を含む面に回転可能に軸支された前輪と、
前記操舵ハンドルが転向自在に取付けられた本体フレームと、
前記本体フレーム後方に回転自在に設けられた後輪と、
から成る自転車において、
前記操舵ハンドル軸を含む前記本体フレームの進行方向に伸びる面に駆動スプロケットの回転面が略納まり、前記本体フレームの下方に設けた軸受に回転自在に軸支された駆動スプロケットと、
前記ハンドル軸から前方に伸びる前肢、前記ハンドル軸から下方に伸びる前輪支持軸、前記前輪支持軸の下端から上方に伸びるスプロケットステーの何れかで構成される前輪フレームと、
前記前輪フレームの面に第一の中継スプロケットの回転面が略納まる第一の中継スプロケットと、
前記前輪フレームの面に対して平行な面に納まり、前記第一の中継スプロケットと同軸回転する第二の中継スプロケットと、
前記前輪に設けた前輪スプロケットと、
前記駆動スプロケットと前記第一の中継スプロケットに係歯する第一のチェーンと、
前記第二の中継スプロケットと前記前輪スプロケットに係歯する第二のチェーンと、
前記第一のチェーンに囲まれた前記本体フレームの面又は前輪フレームの面に納まるように前記操舵ハンドル軸の仮想延長線と略垂直に交わる姿勢で設けたプーリー揺動軸と、
前記プーリー揺動軸に揺動自在に軸支された一対のプーリー基板と、 前記第一のチェーンが往路、復路において前記ハンドル軸の仮想延長線が横切る各交点付近で瓢箪形に括れを生ずるように、夫々のプーリー基板に回転自在に軸支された一対の括れ形成プーリーと、
から構成される前輪駆動・前輪操舵装置を設けた自転車を提供することにより上記課題を解決したものである。
【0019】
また、
二つの後輪を備えると共に、
前記後輪の転向を可能にする方向自在軸と、
前記方向自在軸から下方に伸び、前記後輪を回転自在に軸支する後輪支持軸と、
前記方向自在軸又は前記後輪支持軸から前方に伸びる第二の連結板と、
前記第二の連結板の前端どうしを回動自在に繋ぐ第一の連結板と、
前記第一の連結板に一端が係止され他端が前記本体フレーム側に係止され、前記後輪を直進中立姿勢に付勢する後輪中立ばねと、
を備えた自転車を提供することにより上記課題を解決したものである。
【0020】
また、
前記前輪の転向を変換して、前記第一の連結板まで伝達する前後輪連携装置を備える自転車を提供することにより上記課題を解決したものである。
【0021】
また、
前記前後輪連携装置は、
前記前輪フレームの転向作動を変換・伝達する作動変換器と、
伝達された作動を後輪の転向に適した作動に整え、前記第一の連結板に伝える作動調整器と、
を備え、
前記前輪フレームと前記作動変換器との連結部、前記作動変換器と前記作動調整器との連結部、前記作動調整器と前記第一の連結板との連結部、の少なくとも一箇所にあそびを有する、又はばねによる連結機構を有する自転車を提供することにより上記課題を解決したものである。
【0022】
前記後輪の前記方向自在軸の仮想延長線の接地点と前記後輪の接地点との間に間隔がある自転車を提供することにより上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の前輪駆動・前輪操舵装置により、チェーンと前輪の干渉・接触を排除し、チェーンを三次元的に曲げることにより、UJの使用を回避し、組立・調整を容易化し、さらに使用中の調整を不要化し、結果として安価になる。また本発明の後輪の操舵補助装置は訓練をしなくても、安全に乗車でき、前輪の転向が緩やかに後輪に伝わり、安定した操舵操作ができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一の実施例の側面図である。
【図2】本発明の第一の実施例の斜視図である。
【図3】直線走行時の本発明の括れ形成プーリーを示す斜視図である。
【図4】旋回走行時の本発明の括れ形成プーリーを示す斜視図である。
【図5】ハンドル軸が後傾の場合の操舵効率を示すグラフである。
【図6】本発明の第二の実施例を示す斜視図である.
【図7】本発明の第三の実施例を示す斜視図である。
【図8】本発明の第四の実施例を示す側面図である。
【図9】リカンベントタイプ実施例を示す側面図である。
【図10】本発明の別の第一の実施例を示す側面図である。
【図11】本発明のさらに別の実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
スプロケット、チェーン、プーリーによる前輪駆動・前輪操舵装置と後輪の操舵補助装置により安定した駆動・操舵が可能になり、低重心自転車を実現した。
【実施例1】
【0026】
図1、図2は本発明を三輪自転車に適用した第一の実施例を示す。全ての図には前輪12a、後輪15ともにスポークを省略してある。
図2において本体フレーム4の前方に設けられた軸受4bに、進行方向に伸びる本体フレームの面4aに略納まる姿勢で、操舵ハンドル軸8が回動自在に軸支される。
本体フレーム4の下方に設けられた軸受4cに、本体フレームの面4aに回転面2pが略納まるように回転自在に駆動スプロケット2が軸支され、ループ状の第一のチェーン3が掛り係歯される。第一のチェーン3は他方で、操舵ハンドル軸8が略納まる前輪フレームの面14dに回転面10apが略納まる第一の中継スプロケット10aに掛り係歯される。ペダル1によって回転する駆動スプロケット2の回転力が第一の中継スプロケット10aに伝わる。
【0027】
ループ状の第一のチェーン3が、その往路、復路で操舵ハンドル軸8の延長線が略垂直に横切る交点付近において括れを生じて瓢箪形を形成するように一対の括れ形成プーリー5、6が設けられる。
【0028】
ハンドル軸8から下方に伸びる前輪支持軸14aの下端に軸受14gが設けられ、前輪12aと前輪スプロケット12bとから成る前輪アセンブリー12が回転自在に軸支される。なお、図1、図2において、括れ形成プーリー5、6を明示するため手前側の前輪支持軸14aは一部切り欠いてある。ハンドル軸8から前方に張り出す前肢14bの前端に設けられた軸受14eに、第一の中継スプロケット10aと第二の中継スプロケット10bとから成る中継スプロケットアセンブリー10が回転自在に軸支される。中継スプロケットアセンブリー10と前輪アセンブリー12の間はスプロケットステー14cで架橋されてもよい。前輪支持軸14a、前肢14b、スプロケットステー14cは側方から見ると三角形を形成し、前輪フレーム14を構成している。前輪フレーム14は、前肢14b又はスプロケットステー14cのいずれかを備えていればよく、前輪フレーム14は必ずしも三角系を形成する必要はない。
さらに又、図11に示すように、前輪フレーム14はスプロケットステー14c、前肢14bで構成される。操舵ハンドル7はスプロケットステー14cが上方に伸びた上端部に取り付けられる。ハンドル軸8は本体フレーム4に固定されてもよいし、又前輪フレーム14に固定されてもよいし、さらに抜け落ち防止手段をもうけるなら(図示せず)本体フレーム4にも前輪フレーム14にも固定する必要はない。
【0029】
前輪12aと第一の中継スプロケット10aは夫々の回転面12ap、10apが前輪フレーム14の面14dに略一致するように設けられる。
前輪フレーム14の面14dからd距離隔たったオフセット面14fに回転面10bpが一致するように、第一の中継スプロケット10aと同軸回転する第二の中継スプロケット10bが軸受14eに軸支される。またオフセット面14fに回転面12bpが略一致するように、前輪12aと同軸回転する前輪スプロケット12bが軸受14gに軸支される。
第二の中継スプロケット10bと前輪スプロケット12bにループ状の第二のチェーン11が掛り系歯される。
【0030】
第一の中継スプロケット10aと第二の中継スプロケット10bは結合されて同軸回転が保たれてもよいし、前進方向の回転のみ伝えるラチェット等の一方向クラッチ(図示せず)が設けられてもよい。また第一の中継スプロケット10aの回転軸を入力軸、第二の中継スプロケット10bの回転軸を出力軸とする内装型変速機(図示せず)を設けてもよい。また電動アシスト化する場合に踏み込みトルクセンサー(図示せず)を設けてもよいし、さらに電動アシストモーター(検出された踏み込みトルクに応じた回転を出力するモーター、図示せず)を設けてもよい。
【0031】
前輪スプロケット12bと前輪12aは固定され同軸回転が保たれてもよいし、一方向クラッチ(図示せず)が介在してもよいし、内装型変速機(図示せず)が介在してもよい。電動アシスト化する場合、前輪12aのハブ12hに電動アシストモーター(図示せず)が組み込まれてもよい。
【0032】
図3に示すように、直進走行時は本体フレームの面4a付近に駆動スプロケット2の回転面2p、ハンドル軸8、一対の括れ形成プーリー5、6、第一の中継スプロケット10aの回転面10ap、第一のチェーン3が略納まり整列している。直進走行時は一対の括れ形成プーリー5、6は特別な機能を果たしていない。
【0033】
一対の括れ形成プーリー5、6はプーリー基盤5a、6aに植設されたプーリー軸5b、6bに回転自在に軸支される。ループ状の第一のチェーン3で囲まれた本体フレーム4の面4aに、プーリー揺動軸9が操舵ハンドル軸8の延長線と略垂直に交わるように本体フレーム4に植設され、プーリー基盤5a、6aはプーリー揺動軸9に揺動自在に軸支されている。
【0034】
図4に旋回走行時の括れ形成プーリー5、6および第一の中継スプロケット10aの挙動を示す。右方向(時計方向)への旋回走行時、ハンドル7の操作によって、第一の中継スプロケット10aは矢印10d方向に転向し、第一の中継スプロケット10aの転向に従い第一のチェーン3は、括れ形成プーリー5、6がプーリー搖動軸9を中心に夫々矢印5d、6d方向に振れることにより、三次元的に屈曲する。
【0035】
本来ローラータイプのチェーンは一つの平面内に納まるように使用され、三次元的に屈曲するように作られていない。本発明では、括れ形成プーリー5、6が予め括れを形成し、かつハンドル軸8に略垂直な揺動軸9を中心に揺動するように設けておくことにより第一のチェーン3は駆動スプロケット2の側で捻れを生じて、三次元屈曲が可能になる。
図1、図2にはプーリー揺動軸9は本体フレーム4に植設されているが、図11に示すように前輪フレーム14の一対のスプロケットステー14cをつなぐブリッジ部14kに植設されてもよい。前輪フレーム14に植設された場合は、旋回走行時、第一のチェーン3は、第一の中継スプロケット10aの側で捻れを生じて三次元屈曲する。
ローラータイプのチェーンの一駒毎の捻れは僅かであるが多数個繋がれば、捻れが集積されて充分な捻れになになり、三次元屈曲を可能にする。
【0036】
以上述べた本発明の前輪駆動・前輪操舵装置において前輪スプロケット12bを回転駆動する第二のチェーン11は、前輪12aと共に転向回動するから、操舵ハンドル7を大きく操作しても、転向する前輪12aに干渉・接触することはない。
【0037】
本発明のチェーン、スプロケット、プーリーによる前輪駆動・前輪操舵システムを成立させる各要素間の関係を要約すれば、下記の如くになる。
下記要素が、本体フレームの面4aに、操舵ハンドル軸8に対する位置・姿勢の条件(括弧内に示す)を満たして位置している。
1)駆動スプロケット2の回転面2a
2)操舵ハンドル軸8
3)第一のチェーン3(操舵ハンドル軸8の延長線に略直交する)
旋回走行時、第一の中継スプロケット10aの側は本体フレーム面4aから外れる。
4)括れ形成プーリー5、6(操舵ハンドル軸8の延長線付近に位置する)
5)括れ形成プーリー揺動軸9(操舵ハンドル軸8の延長線に略直交する)
前輪フレーム14に植設の場合は旋回走行時、本体フレームの面4aから外れる。
6)第一の中継スプロケット10aの回転面10ap
旋回走行時は本体フレームの面4aから外れる。
【0038】
図10に示すように第一の中継スプロケット10aを小型のスプロケット10a1、と小型プーリー10a2に分けてもよい。第一のチェーン3は括れ形成プーリー5、6で充分括れている必要があり、第一の中継スプロケット10aを単独では小型化できない。第一の小型スプロケット10a1と小型プーリー10a2を設けることで小型化を図れる。小型プーリー10a2は前輪フレーム14に設けた軸14jを中心に反時計方向に付勢された(付勢手段図示せず)アーム14mの先端に回転自在に軸支され、テンショナーとして作用させてもよい。
【0039】
実施例を示す図において、スプロケットは全て歯を省略してあるが、チェーンに噛み合う歯を備える必要がある。また第一のチェーン3、第二のチェーン11も駒を省略してある。駒を省略しベルト状に簡略化し、図4に示すように横縞を描くことにより、カーブ走行時の第1のチェーン3が駆動スプロケット2側で捻れる状態(揺動軸9が本体フレーム4に植設された場合)を示し、第一のチェーン3の三次元屈曲を表してある。
【0040】
以上チェーンとスプロケットの組み合わせで述べたが、歯付きベルト(タイミングベルト)と歯付きプーリーの組み合わせを用いてもよい。
【0041】
また駆動スプロケット2、第一の中継スプロケット10a、第二の中継スプロケット10b、前輪スプロケット12bには、スプロケットの歯の保護、周囲への油汚れ、飛散防止、チェーン外れ防止などの目的でスプロケットの外径寸法よりもやや大きめなフランジを取り付けてもよいし、包み込むカバーを付けることが望ましい(図示せず)。また括れ形成プーリー5、6は外装変速機に用いられる歯丈の低い歯付きプーリーを用いてもよいが、必ずしも歯付きである必要はなく、チェーンの凹凸形状に沿う形状を備えていればよいし、さらにはチェーンの凹凸をある程度吸収し、振動や騒音を抑えるゴム状の外周を持つプーリーでもよい。また括れ形成プーリー5、6にはチェーン外れ防止のためにガイド又はフランジを付けることが望ましい(図示せず)。
【0042】
本体フレーム4の後方に後輪15の転向を自在にする方向自在軸16、方向自在軸16の下方に伸びる後輪支持軸19、後輪支持軸19の下端に回転自在な後輪15を設ける。 後輪支持軸19から前方に伸びる第二の連結板17、第二の連結板17の前端どうしを繋ぐ第一の連結板18、第一の連結板18に一端が系止される後輪中立ばね20、から成る方向安定化装置60が後輪15に付設される。
方向安定化装置60を付設することで、後輪15の操舵補助機能が安定的に発揮される。第二の連結板17は、泥除けのためのフェンダーを支える機能を副次的に果たしてもよいし、また方向自在軸16に直接植設されてもよい。
【0043】
図1、図2に操舵を補助するための前後輪連携装置61の第一の実施例を示す。前後輪連携装置61は、前輪12aの一定角度以上の転向を後輪15の方向安定化装置60に伝え後輪15を安定的に操舵補助する。
前後輪連携装置61は主たる要素として作動変換器32と作動調整器36から成る。前輪支持軸14aから後方に伸びる前輪ステー31に植設された旋回ピン34は、作動変換器(レバー)32に植設されたばね掛けピン33と前輪中立ばね30で繋がれ、互いに引き合うことで前輪12aは直進中立姿勢に保たれる。また旋回ピン34は作動変換器32の二股部39と適度のあそびを以って緩く繋がっており、前輪フレーム14が一定角度以上転向した場合、旋回ピン34が二股部39に作用し軸40に回動可能に軸支された作動変換器32を動かし、他端に植設された伝達ピン35があそびをもって嵌る長穴部37に作用して、軸38によって回動自在に軸支された作動調整器(レバー)36を動かす。
【0044】
作動調整器36は作動方向や作動量を調整して後輪中立ばね20を介して第一の連結板18に伝え、方向安定化装置60に作用し、後輪15を前輪12aと逆方向に転向して操舵を補助する。
ハンドル7を僅かに転向するだけでは、旋回ピン34は二股部39に作用せず前輪中立ばね30に引かれて作動変換器32は僅かに転向するが、伝達ピン35は作動調整器36の長穴部37とあそびを以って緩やかに繋がっており後輪15はほとんど転向しない。
【0045】
長穴部37、二股部39は夫々伝達ピン35、旋回ピン34とあそびをもって緩く嵌っていればよく、必ずしも長穴形状、二股形状に限定されない。
上記の旋回ピン34から作動変換器32、作動調整器36、第一の連結板17に至る前後輪連携装置61の連結部のうち少なくとも一箇所にあそび、乃至はばねによる柔軟性のある結合を持たせておくことが必要である。また、前後輪連携装置61は駆動スプロケット2の下側で、左右をペダル1の回転動作によって幅(一般に約150ミリ)の制限を受る。従って作動変換器32の軸40は駆動スプロケット2の中心付近の下側に配置し、作動変器32の振れ幅を左右のペダル1の回転動作で制約される範囲に納める。
【0046】
後輪中立ばね20、前輪中立ばね30の張力を加減することにより、また旋回ピン34と二股部39、伝達ピン35と長穴部37のあそびを調節して後輪15の操舵補助の程度を調整する。
【0047】
ハンドル軸8の後傾角度が大きくなると、ハンドル7による操舵の効率が低下する状態を図5に示す。鉛直線に対するハンドル軸8の傾き(後傾角度)をα、ハンドルの操舵角度をθ、進行方向に対する前輪の実効転向角度をωとしたときの操舵効率ω/θ(%)を図5に示す。操舵角度θが45度以内の範囲で、後傾角度αが30度では、操舵効率は90%近くを維持しているが、後傾角度αが45度では70%代、後傾角度αが60度では50%代に落ちる。後輪15が操舵に寄与するように、コントロールされた方向自在輪にしておくことで、操舵は効率よく行われる。
【実施例2】
【0048】
前輪12aの転向を後輪15に伝え操舵を補助する前後輪連携装置61の第二の実施例を図6に示す。本実施例においても前後輪連携装置61は主たる要素部材として作動変換器32と作動調整器36から成り、前輪12aの転向を変換・調整して第一の連結板18に伝え、操舵を補助する。
【0049】
前輪支持軸14aの両脇のブラケット14hに植設されたブラケットピン14iに第一のロッド51の一端が回動自在に軸支される。第一のロッド51の他端に軸40によって本体フレーム4に回動自在に軸支されたL字形の作動変換器(レバー)32の第一のピン32aが嵌り回動自在に軸支され、作動変換器32のもう一方の第二のピン32bに第二のロッド52の一端が回動自在に軸支される。図6において第一のロッド51、作動変換器32、第二のロッド52は並列して一対設けられているが、片側のみでも作動する。第二のロッド52の他端は作動調整器(レバー)36に回動自在に軸支される。
【0050】
前輪12aの転向は作動変換器32で前後方向の往復運動に変換され、本体フレーム4に軸支された作動調整器36で調整され、後輪15の方向安定化装置60の方向中立ばね20に伝わり、後輪15が前輪12aと逆に転向し旋回走行に寄与する。図6に示す矢印は、操舵ハンドル7を右方向(時計回り)に操舵したときの各部の作動方向を示す。
後輪中立ばね20は後輪15を中立姿勢に保つばかりでなく、前後輪連携装置61を遡って前輪12aを直進中立姿勢に付勢する。
【実施例3】
【0051】
前輪12aと後輪15を連携させる前後輪連携装置61の第三の実施例を図7に示す。本実施例において前後輪連携装置61は、第一、第二の作動変換器(プーリー)32a、32bと作動調整器(レバー)36、ワイヤー53、54により前輪12aの転向を変換・調整して後輪中立ばね20及び第一の連結板18に伝え操舵を補助する。
【0052】
ブラケットピン14iにワイヤー53、54の一端が固定され、第一の作動変換器(プーリー)32aで、前輪フレーム14の転向は前後の往復運動に変わり、同時に一対のワイヤー53、54どうしの間隔が狭められて駆動スプロケット2の下を通り、第二の作動変換器(プーリー)32bに至り間隔が広げられて作動調整器(レバー)36に固定される。作動調整器36の後方に伸びる二股部36aは第一の連結板18に植設されたピン18aがあそびをもって緩く嵌ると同時に後輪中立ばね20により、互いに引き合っている。直進走行時には、後輪中立ばね20、第一の連結板18、第二の連結板17、方向自在軸16から成る後輪15の方向安定化装置60により後輪15が中立姿勢に保たれると同時に、前後輪連携装置61を遡って前輪12aを直進中立姿勢に付勢される。
図7に示すように、操舵ハンドル7を時計方向に操舵すると前輪12aは時計方向に転向し、各部は図7に示す矢印の方向に動き、後輪15が反時計方向に転向することで時計方向の旋回走行を補助する。
【0053】
第一の実施例(図1、図2)と第二の実施例(図6)においては、後輪中立ばね20のみで第一の連結板18と作動調整器36が繋がるが、第三の実施例(図7)においては、後輪中立ばね20の引っ張り力と共に、作動調整器36の後方に伸びる二股部36aと第一の連結板18に植設されたピン18aがあそびを持った緩い嵌め合いにより後輪15を転向させる。第一の実施例と第二の実施例においても、第三の実施例と同じく、後輪中立ばね20と共に、二股部36aとピン18aのあそびのある嵌め合いによる繋がりを適用してもよい。
【実施例4】
【0054】
図8に示す方向自在軸16の延長接地点16aと後輪の接地点15bと間隔Lを隔てる後輪支持軸19により、前記の前後輪連携装置61を代替、乃至は補強できる。前記間隔Lを有する後輪支持軸19と方向自在軸16を設けることで、直進走行時には後輪15の方向が中立に保たれるように付勢され、安定した直線走行が得られる。
【0055】
旋回走行時、時計回り方向(図8において紙面手前側)にハンドル7を操舵したとき、前輪12aが紙面手前側に進み、紙面向う側への遠心力がはたらき、方向自在軸16を持つ一対の後輪15は紙面向う側への旋回走行となり、時計回りの旋回走行を補助する。ハンドル7を中立姿勢に戻せば遠心力は消え、後輪15は中立姿勢に落ち着く。間隔Lを長くすると、過剰な旋回走行(ドリフト走行)をしたり、直進走行時であっても道路の横方向の傾斜に過剰に反応する。また、間隔Lを短くし過ぎると、後輪15の転向動作が鈍くなり機能不全になる。従って後輪中立ばね20の張力と共に、最適な間隔Lに設定する必要がある。
【0056】
図8に示すように、間隔Lを有する後輪支持軸19を備える後輪の方向自在装置62と前後輪連携装置61を併せ採用して互いに補助し合うようにしてもよい。間隔Lを有する後輪支持軸19のみで操舵を補助する場合は、一端が第一の連結板18に係止される後輪中立ばね20の他端は本体フレーム4に係止される(図示せず)。
【0057】
図1に示す座席21の下方に積載スペース25が生まれる。電動自転車の場合、電池積載スペースとして活用でき長距離走行可能な電動自転車乃至は電動アシスト自転車とすることができる。
【0058】
どの実施例においても、座席21は本体フレーム4に、図示しない手段で取り付けられる。運転者23の体形に応じて座席21を前後に動かせるように、スライド・固定式取り付け可能(図示せず)にしておくことが望ましい。背凭れ22はペダル1を前方に踏み出す反作用としての運転者23の後退を阻止するストッパーとしても機能するから、必須である。また、座席21の背凭れ22の角度調節装置(図示せず)により可変式にしてもよい。
【実施例5】
【0059】
図9に示すように、本体フレーム4をさらに低い構造とし空気抵抗を低減すると共に、座席21を低い位置に設け背凭れ22を大きく後に倒し、運転者23が安楽な姿勢で乗車できるリカンベントタイプ三輪自転車とすることができる。従来のリカンベント自転車では運転者の両脇に配置した操舵桿で操舵を行い、運転者の前方に何も遮る物が無く、前方からの飛来物に対して無防備であった。操舵桿式操舵操作が違和感や不安感を抱かせる要因となる恐れがあった。図9に示すように本発明の操舵ハンドル7は、ハンドル軸8を後に大きく傾斜させ運転者23の近傍に位置させ、従来の自転車の操舵ハンドル7と同様に運転者23の近くに配置するため、運転者にとって安全であると同時に安心感を与える。
【0060】
本発明を三輪自転車に適用すれば、、横風にも強く、転倒の危険がないから、防風、防雨、遮光のため、図9に示すように、キャノピー(天蓋)27で座席を覆い、全天候型の乗り物にすることもできる。キャノピー27をソーラーパネルで覆い、駆動を補助するモーター電源としてもよい。全ての実施例においてブレーキ、ランプ等の付帯品は従来の市販品が使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明を三輪自転車に適用すれば、転倒を避けるための注意事項(非特許文献1)を排除し転倒の危険性を低減でき、前輪駆動・前輪操舵装置と、後輪の操舵補助によって低重心設計が可能になり、快適安全な乗物が実現できる。さらに本発明は自転車以外の、原動機付オートバイ、電動オートバイにも適用できる。
UJを使わずに、チェーン・スプロケット・プーリーの駆動伝達装置でチェーンと前輪の接触を回避し、コスト高を回避できる。
トータルの効果として、転倒の危険性が低減し、寛いで乗車でき、低速でも転倒せず、停車してそのままの姿勢で休息でき、若者から年寄りまで全ての年代の人々に適合する乗り物を実現できる。
【符号の説明】
【0062】
1 ペダル
2 駆動スプロケット
3 第一のチェーン
4 本体フレーム
4a 本体フレームの面
5 括れ形成プーリー
6 括れ形成プーリー
7 操舵ハンドル
8 操舵ハンドル軸
9 揺動軸
10 中継スプロケットアセンブリー
10a 第一の中継スプロケット
10b 第二の中継スプロケット
11 第二のチェーン
12 前輪アセンブリー
12a 前輪
12b 前輪スプロケット
14 前輪フレーム
14a 前輪支持軸
14b 前肢
14c スプロケットステー
14d 前輪フレームの面
14e 中継スプロケット軸受
14f オフセット面
14k ブリッジ部
15 後輪
15b 後輪接地点
16 方向自在軸
17 第二の連結板
18 第一の連結板
19 後輪支持軸
20 後輪中立ばね
21 座席
27 キャノピー
30 前輪中立ばね
31 前輪ステー
32 作動変換器
33 ばね掛けピン
34 旋回ピン
35 伝達ピン
36 作動調整器
37 長穴部
39 二股部
51 第一のロッド
52 第二のロッド
53 ワイヤー
54 ワイヤー
60 方向安定化装置
61 前後輪連携装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵ハンドルと、
前記操舵ハンドルにより操舵ハンドル軸を中心に転向し、前記操舵ハンドル軸を含む面に回転可能に軸支された前輪と、
前記操舵ハンドルが転向自在に取り付けられた本体フレームと、
前記本体フレーム後方に回転自在に設けられた後輪と、
から成る自転車において、
前記操舵ハンドル軸を含む前記本体フレームの進行方向に伸びる面に駆動スプロケットの回転面が略納まり、前記本体フレームの下方に設けた軸受に回転自在に軸支された駆動スプロケットと、
前記ハンドル軸から前方に伸びる前肢、前記ハンドル軸から下方に伸びる前輪支持軸、前記前輪支持軸の下端から上方に伸びるスプロケットステーの何れかで構成される前輪フレームと、
前記前輪フレームの面に第一の中継スプロケットの回転面が略納まる第一の中継スプロケットと、
前記前輪フレームの面に対して平行な面に納まり、前記第一の中継スプロケットと同軸回転する第二の中継スプロケットと、
前記前輪に設けた前輪スプロケットと、
前記ペダルスプロケットと前記第一の中継スプロケットに係歯する第一のチェーンと、
前記第二の中継スプロケットと前記前輪スプロケットに係歯する第二のチェーンと、
前記第一のチェーンに囲まれた前記本体フレームの面又は前輪フレームの面に納まるように前記操舵ハンドル軸の仮想延長線と略垂直に交わる姿勢で設けたプーリー揺動軸と、
前記プーリー揺動軸に揺動自在に軸支された一対のプーリー基板と 前記第一のチェーンが往路、復路において前記ハンドル軸の仮想延長線が横切る各交点付近で瓢箪形に括れを生ずるように、夫々のプーリー基板に回転自在に軸支された一対の括れ形成プーリーと、
から構成される前輪駆動・前輪操舵装置を設けたことを特長とする自転車。
【請求項2】
二つの後輪を備えると共に、
前記後輪の転向を可能にする方向自在軸と、
前記方向自在軸から下方に伸び、前記後輪を回転自在に軸支する後輪支持軸と、
前記方向自在軸又は前記後輪支持軸から前方に伸びる第二の連結板と、
前記第二の連結板の前端どうしを回動自在に繋ぐ第一の連結板と、
前記第一の連結板に一端が係止され他端が前記本体フレーム側に係止され、前記後輪を直進中立姿勢に付勢する後輪中立ばねと、
を備えたことを特長とする請求項1記載の自転車。
【請求項3】
前記前輪の転向を変換して、前記第一の連結板まで伝達する前後輪連携装置を備えることを特長とする請求項2記載の自転車。
【請求項4】
前記前後輪連携装置は、
前記前輪フレームの転向作動を変換・伝達する作動変換器と、
伝達された作動を後輪の転向に適した作動に整え、前記第一の連結板に伝える作動調整器と、
を備え、
前記前輪フレームと前記作動変換器との連結部、前記作動変換器と前記作動調整器との連結部、前記作動調整器と前記第一の連結板との連結部、の少なくとも一箇所にあそびを有する、又はばねによる連結機構を有することを特長とする請求項3記載の自転車。
【請求項5】
前記後輪の前記方向自在軸の仮想延長線の接地点と前記後輪の接地点との間に間隔があることを特長とする請求項2記載の自転車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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