説明

舌下及び口腔用膜組成物

本発明は患者の様々な症状の治療(患者が感じる苦痛の治療を含む)のための生成物及び方法に関する。本発明はより具体的には、製剤形態が十分な口腔接着を提供している間に有効成分を提供する、自立製剤形態に関する。さらに本発明は、有効成分の転用の乱用可能性を低減するのに有用な製剤形態を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、治療有効成分を含む膜に関する、組成物、製造方法、生成物及び使用方法に関する。本発明はより具体的には自立製剤形態に関し、それは単独又は作動薬の治療上の吸収を最大にする緩衝系との組み合わせにおいて作用する、作動薬を提供する。いくつかの態様は拮抗薬も含み、緩衝系は拮抗薬の吸収を最小にするように作用する。そのような組成物は、製剤形態の十分な口腔内接着を提供して、有効成分の誤用を防ぐのに特に有効である。
【背景技術】
【0002】
関連技術の背景
単独製剤薬形態での2つの治療有効成分の経口投与は、その目的が一方の有効成分を体内に吸収させ、かつ他方の有効成分を実質的に吸収させずに残しておくことである場合、複雑になり得る。例えば、一方の有効成分があるpHにある口腔内で比較的溶けやすく、かつ他方の有効成分が同じpHにおいて比較的溶けにくい場合である。更には、荷電及び非荷電種の異なる吸収性により、それぞれの治療剤の吸収動態が、実質上異なり得る。これらの要因が、治療薬剤を適切に同時投与する際の課題を示している。
【0003】
治療薬剤の同時投与には多くの適用例がある。治療のそのような領域の中には苦痛又は他の病状を患っている人を治療することが含まれる。そのような人は治療薬剤への深刻な身体的依存症を患う傾向を有することがあり、治療薬剤がその人へ投与されなかった場合に危険な禁断症状を引き起こす可能性がある。患者に治療を施すために、減じられた量の治療薬剤を提供することが知られており、それは病状の治療効果を提供するもののその治療薬剤により提供され得る「高い」効果を提供するものではない。提供される薬物は作動薬又は部分的作動薬であってもよく、苦痛又は患者が直面している他の症状の軽減をもたらし得る。しかしながら、たとえこれらの治療薬剤が低水準の陶酔薬効果のみを提供したとしても、その人により非経口で乱用される可能性がある。このような場合においては、治療薬剤と2つ目の治療薬剤との組み合わせを提供することが望ましく、それにより第1の薬物の転用及び乱用の可能性を減らし得る。例えば、作動薬又は部分作動薬との組み合わせで拮抗薬の製剤を提供することが知られている。麻酔性の拮抗薬は脳内の受容体と結合して受容体を遮断し、これにより作動薬の効果を低減させる。
【0004】
麻酔性薬剤のそのような組み合わせの1つは、経口摂取可能な錠剤としてサボキソン(Suboxone(商標))なる商用名の下で市販されてきた。しかしながら、錠剤形態のそのような組み合わせは乱用を招く可能性がある。いくつかの例において、薬物を提供されてきた患者は、その錠剤を飲み込まずにその口の中に保持し、後に錠剤から作動薬を抽出して、ある人の体に注射することがある。特定の拮抗薬(例えば高い水溶性の拮抗薬)は、作動薬を分離できないようにするために使用され得るが、乱用の可能性は依然として存在する。さらに、拮抗薬を、苦痛を緩和する作動薬との組み合わせにおいて組み込むことは、作動薬投与に関係する副作用、例えば便秘及び他の望ましくない効果を減らすことが発見されてきた。一旦投与されたら、容易には口から取り除くことができない製剤を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、口の中で接着効果を提供し、一旦口の中に設置されたら取り除きにくく、及び拮抗薬の吸収を阻害しながら作動薬の最適な吸収を実現しつつ、作動薬及び拮抗薬の所望の吸収レベルを提供する、経口溶解性の膜製剤形態に対する要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明のある態様において、自立膜製剤組成物を提供し、それは以下を含む:ポリマー担体マトリクス;治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び作動薬の吸収を最大にするのに十分な緩衝剤。
【0007】
本発明の別の態様においては、自立膜製剤組成物を提供し、それは以下を含む:ポリマー担体マトリクス;治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;治療上効果のある量の拮抗薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び緩衝系;その緩衝系は組成物が使用者の口腔内にある時間拮抗薬の吸収を阻害するのに十分な緩衝能力を有する。
【0008】
本発明の更に別の態様においては、治療方法を提供し、それは以下の段階を含む:以下を含む膜製剤組成物の提供:ポリマー担体マトリクス;治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び作動薬の吸収を最大にするのに十分な量の緩衝剤;及び患者への膜製剤組成物の投与。
【0009】
本発明の他の態様においては、治療方法を提供し、それは以下の段階を含む:以下を含む膜製剤組成物の提供:ポリマー担体マトリクス;治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;治療上効果のある量の拮抗薬又はその薬学的に許容可能な塩;約4から約9の作動薬の局所pHを得るために十分な量の第1の緩衝剤;約2から約4の拮抗薬の局所pHを得るために十分な量の緩衝剤;及び使用者への膜製剤組成物の投与。
【0010】
本発明の別の態様においては、自立膜製剤組成物を提供し、それは以下を含む:以下を含む第1の領域:第1のポリマーマトリクス;治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び作動薬の吸収を最適化するのに十分な量の第1の緩衝系;以下を含む第2の領域:第2のポリマーマトリクス;治療上効果のある量の拮抗薬;及び拮抗薬の吸収を阻害するのに十分な量の第2の緩衝系。
【0011】
本発明の更なる態様においては、治療上効果のある量の作動薬を含む第1の領域及び治療上効果のある量の拮抗薬を含む第2の領域を含む、経口溶解性の膜製剤を提供する。その製剤は、約0.868−6.94ng/mlの作動薬のCmaxを有するin vivo血漿プロファイル及び約32.5−260pg/mlの拮抗薬のCmaxを有するin vivo血漿プロファイルを提供する。
【0012】
本発明の別の態様においては、自立膜製剤組成物を提供し、それは以下を含む:ポリマー担体マトリクス;治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;治療上効果のある量の拮抗薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び約2から約4の拮抗薬の局所pHを得るために十分な緩衝系。
【0013】
本発明のある態様においては、自立膜製剤組成物を提供し、それは以下を含む:ポリマー担体マトリクス;治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;治療上効果のある量の拮抗薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び膜製剤組成物が使用者の口の中に設置された際に拮抗薬の吸収を阻害し及び作動薬の吸収を最適化するのに十分な緩衝系。
【0014】
本発明の別の態様においては、自立膜製剤組成物を提供し、それは以下を含む:以下を含む第1の領域:第1のポリマーマトリクス;治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び膜製剤組成物が使用者の口の中に設置された際に作動薬の吸収を最適化するのに十分な量の第1の緩衝系;及び以下を含む第2の領域:第2のポリマーマトリクス;治療上効果のある量の拮抗薬;及び膜製剤組成物が使用者の口の中に設置された際に拮抗薬の吸収を阻害するのに十分な量の第2の緩衝系。
【0015】
本発明の更に別の態様においては、膜製剤組成物の形成工程を提供し、その工程は以下の段階を含む:以下を含む膜形成組成物の成型:ポリマー担体マトリクス;治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;治療上効果のある量の拮抗薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び膜製剤組成物が使用者の口の中に設置された際に作動薬の吸収を最適化するのに十分な、及び拮抗薬の吸収を阻害するのに十分な量の緩衝剤;及び自立膜製剤組成物を形成するためのその膜形成組成物の乾燥。
【0016】
本発明のまだ別の態様においては、治療方法を提供し、それは以下の段階を含む:以下を含む膜製剤組成物の提供:ポリマー担体マトリクス;治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;治療上効果のある量の拮抗薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び約0.624−5.638ng/mlの作動薬のCmaxを有するin vivo血漿プロファイル及び約324pg/ml未満の拮抗薬のCmaxを有するin vivo血漿プロファイルを提供するのに十分な量の緩衝系;及び使用者への膜製剤組成物の投与。
【0017】
本発明の別の態様においては、自立膜製剤組成物を提供し、それは以下を含む:以下を含む第1の領域:第1のポリマーマトリクス;治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び作動薬の吸収を最適化するのに十分な量の第1の緩衝系;以下を含む第2の領域:第2のポリマーマトリクス;治療上効果のある量の拮抗薬;及び拮抗薬の吸収を阻害するのに十分な量の第2の緩衝系;ここで使用者の口腔内に設置された際に第2の領域が第1の領域よりも早い速度で溶解する。
【0018】
本発明の別の態様においては、膜製剤組成物の形成工程を提供し、その工程は以下の段階を含む:以下を含む第1の膜形成組成物の成型:ポリマー担体マトリクス;治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び膜製剤組成物が使用者の口の中に設置された際に作動薬の吸収を最適化するのに十分な量の緩衝剤;以下を含む第2の膜形成組成物の成型:ポリマー担体マトリクス;治療上効果のある量の拮抗薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び膜製剤組成物が使用者の口の中に設置された際に拮抗薬の吸収を阻害するのに十分な量の緩衝剤;及び自立膜製剤組成物を形成するための第1の膜形成組成物及び第2の膜形成組成物の貼合。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好ましい態様の詳細な説明
定義
本明細書で使用されるように、用語Cmaxは、ヒト被験者へ組成物を投与した後の平均最大血漿濃度を表す。同様に本明細書で使用されるように、用語AUCは、本明細書で形成された組成物を投与した後の血漿濃度−時間曲線値下の平均面積を表す。下記により詳細に示されるように、用語「吸収の最適化」は必ずしも組成物の最大吸収に到達することを意味せず、むしろ与えられたpHにおいて吸収の最適レベルに到達することを意味する。「最適な」吸収は、例えば、現在入手可能なSuboxone(商標)錠剤の投与と生物学的に同等な吸収を提供するレベルであってもよい。このように、Suboxone(商標)と生物学的に同等な吸収が要求されるならば、与えられたpHにおける2−16mgのブプレノルフィンの用量において、ブプレノルフィンのCmaxは、約0.67から約5.36ng/mlとなり得る。同時に、与えられたpHにおける2−16mgのブプレノルフィンの用量において、ブプレノルフィンの「最適な」AUCは、約7.43から約59.46時間×ng/mlとなり得る。下記により詳細に記載されるように、特別な作動薬の1つであるブプレノルフィンは、局所pHが約5.5−6.5である場合と同様に約3−4においても、最適な吸収を提供できることが意外にも発見された。このように、約3−4又は約5.5−6.5の局所pHの提供により、ブプレノルフィンの吸収を「最適化する」ことができる。
【0020】
「吸収を最大にする」とは、約4から約9の局所pHにおいて到達されるin vivoでの吸収値の最大限度を表す。
【0021】
用語「局所pH」は、例えば使用者の口の中において、マトリクスが水和及び/又は溶解する際に、有効成分を直ちに包囲する担体マトリクスの領域の局所pHを表す。
【0022】
有効成分の吸収の「阻害」により、測定可能な吸収性の有効成分がほとんど又は全くなくなるように、可能な限り有効成分の完全なイオン化状態に到達することを意味する。例えば、3−3.5の局所pHにおいて、0.5mgから4.0mgの用量のナロキソンのような有効成分のCmaxは、32.5から260pg/mlの範囲であり、及び0.5mgから4.0mgの用量のナロキソンのAUCは、90.55から724.4時間×pg/mlの範囲である。3.0未満の局所pHにおいては、更なるイオン化が生じ、その結果吸収が低下すると理解される。
【0023】
用語「生物学的同等性」は、異なる生成物において与えられた有効成分に対して、Cmax及びAUCの値の80%から125%を得ることを意味する。例えば、市販のSuboxone(商標)錠剤(2mgのブプレノルフィン及び0.5mgのナロキソンを含む)のブプレノルフィンのCmax及びAUCの値がそれぞれ0.780ng/ml及び6.789時間×ng/mlであると仮定すると、生物学的に同等な生成物は0.624−0.975ng/mlの範囲のブプレノルフィンのCmax、及び5.431−8.486時間×ng/mlのブプレノルフィンのAUC値を有することとなる。
【0024】
用語「膜」は、長方形、正方形、又は他の所望の形を含む任意の形の、薄い膜、シート及びウェハーを含むと理解される。本明細書に記載の膜は、使用者の口腔内に設置できる任意の所望の厚さ及び大きさであってもよい。例えば、膜は約0.1から約10ミルの比較的薄い厚さを有していてもよく、又は約10から約30ミルのいくらか厚い厚さを有していてもよい。いくつかの膜は、厚さがより厚く、すなわち約30ミルよりも厚くてもよい。膜は単層にて又は貼合膜を含む複層であってもよい。
【0025】
経口溶解性膜は一般に3つの主要クラス:即溶性、中度の溶性及び遅溶性に分類される。即溶性の膜は、口の中で一般に約1秒から約30秒で溶解する。中度の溶性膜は、口の中で一般に約1から約30分で溶け、及び遅溶性膜は口の中で一般に30分よりも長い時間で溶ける。即溶性膜は低分子量の親水性ポリマー(すなわち、約1,000から9,000の間の分子量を有するポリマー又は、200,000未満の分子量を有するポリマー)から成り得る。その一方で、遅溶性膜は一般に高分子量ポリマー(すなわち何百万もの分子量を有する)を有する。
【0026】
中度の溶性膜は、即溶性及び遅溶性膜の間に分類される傾向にある。中度の溶性膜はやや速やかに溶解するが、良好なレベルの粘膜接着力も有する。中度の溶性膜は柔軟でもあり、素早く湿らすことができ、及び一般に使用者に対する刺激がない。本発明に関しては、即溶性及び中度の溶性の間の分類区分に分類される膜を使用することが望ましい。そのような中度の溶性膜は、十分に早い溶解速度(最も望ましくは約1分及び約20分の間)を提供し、一方で使用者の口腔内に一旦膜が設置されたならば容易には取り除けないような許容可能なレベルの粘膜接着力を提供する。
【0027】
本明細書に記載の発明膜は1以上の作動薬または部分作動薬を含んでもよい。本明細書で使用されるように、用語「作動薬」は、使用者の体内で生理学的な反応又は活性を提供することができる化学物質を表している。本明細書に記載の膜は更に1以上の拮抗薬を含んでもよい。本明細書で使用されるように、用語「拮抗薬」は使用者の体内で別の化学物質の生理学的作用を減少させるように作用する任意の化学物質を表す。ある態様においては、本明細書で使用される拮抗薬は作動薬の生理学的作用を減少及び/又は遮断するように作用し得る。その有効成分は水溶性であってもよく、又はそれらは水不溶性であってもよい。本明細書で使用されるように、用語「水溶性の」は少なくとも部分的に溶媒中に溶解できる物質を表し、溶媒は水を含むが水に限定されるものではない。用語「水溶性の」は必ずしもその物質が100%溶媒中に溶解できることを意味しない。用語「水不溶性の」は溶媒中に容易に溶解できない物質を表し、溶媒は水を含むが水に限定されるものではない。溶媒は水を含んでもよく、又は代わりに他の極性溶媒を、単独で又は水と組み合わせて含んでもよい。
【0028】
本発明の膜
本発明は、治療乱用の可能性を制限しながら、個人における苦痛又は他の症状を治療する方法に関する。より望ましくは、本発明は、個人における身体的苦痛の治療に関し、例えば鎮痛剤又は他の苦痛を緩和する治療薬剤の投与によるものがある。個人における苦痛の治療をするものとして知られているそのような治療薬剤の1つには、ブプレノルフィンのような作動薬が含まれる。しかしながら、ブプレノルフィンは部分作動薬であることが知られており、それゆえに乱用されやすく、及びブプレノルフィンを拮抗薬と組み合わせることが望ましく、それにより非経口の注射による乱用の可能性を減らすことができる。薬剤のそのような組み合わせは現在、Suboxone(商標)なる商用名の下に市販される製品を通じて提供され、それは経口溶解性の錠剤である。この錠剤はブプレノルフィン(オピオイド作動薬)及びナロキソン(オピオイド拮抗薬)の組み合わせを提供する。しかしながら、ナロキソンのような拮抗薬を使用することさえも、使用者によって乱用されることがある。従って、本発明は、経口溶解性の膜製剤を提供することにより、Suboxone(商標)と生物学的に同等な効果を提供する、患者における苦痛又は他の症状を治療する方法を提供する。膜製剤は更に好ましくは、使用者の口の中にある間は設置後の除去を困難な状態にして口内接着を提供する。
【0029】
膜製剤組成物は好ましくはポリマー担体マトリクスを含む。経口溶解性ならば、任意の所望のポリマー担体マトリクスが使用されてもよい。望ましくは、製剤は容易に取り除けない程の十分な生物学的接着を有し、投与された際はゲルのような構造を形成すべきである。検討される様々な態様の中には早くかつ持続して放出される組成物があるものの、経口で消費できる膜は、好ましくは口腔内で中度の溶性であり、及び有効成分の送出に特に適切なものである。いくつかの態様においては、下記により詳細に記載されるように、発明の組み合わせは、それぞれの領域が異なる溶解特性を有する、2以上の領域を有する膜を含んでいてもよい。
【0030】
医薬品において使用される膜は、少なくとも1つのポリマー及び溶媒の組み合わせによって調製されてもよく、技術的に知られる他の充填剤を含んでもよい。溶媒は水、あるいはエタノール、イソプロパノール、アセトン、又はこれらの組み合わせを含む極性有機溶媒であってもよいが、これらに限定されない。いくつかの態様においては、溶媒は塩化メチレンのような非極性有機溶媒であってもよい。膜は、選択されたキャスティング又はデポジション法及び制御された乾燥工程を利用することにより調製され得る。例えば、膜は、粘弾性構造を形成するために湿った膜マトリクスへ熱及び/又は放射エネルギーを適用することを含み、これにより膜含有物の均一性を調整する、制御された乾燥工程を通して調製されてもよい。そのような工程は、同一出願人による米国特許番号7,425,292においてより詳細に記載されており、その中の内容はそのまま全て参照により本明細書に組み込まれる。あるいは、膜は、2004年5月28日に出願され米国特許公開番号2005/0037055 A1として公開された、同一出願人による米国特許出願番号10/856,176において記載されているような方法で押し出され、その中の内容はそのまま全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
膜に含まれるポリマーは水溶性、水膨潤性、水不溶性、又は水溶性、水膨潤性又は水不溶性ポリマーの1以上の組み合わせであってもよい。ポリマーはセルロース又はセルロース誘導体を含んでもよい。有用な水溶性ポリマーの具体例は、限定されるものではないが、ポリエチレンオキシド、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、トラガカントガム、グァーガム、アカシアガム、アラビアガム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルコポリマー、デンプン、ゼラチン、及びそれらの組み合わせを含む。有用な水不溶性ポリマーの具体例は、限定されるものではないが、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート及びそれらの組み合わせを含む。高い用量に関しては、低い用量にふさわしいポリマーと比較すると、高いレベルの粘度を提供するポリマーを組み込むことが望ましい。
【0032】
本明細書で使用される表現「水溶性ポリマー」及びその変形(variants)は、少なくとも部分的に水に溶解でき、及び望ましくは完全に又は大部分が水に溶解でき、あるいは水を吸収するポリマーを表す。水を吸収するポリマーは水膨潤性ポリマーとしてしばしば表現される。本発明において有用な原材料は、室温又は室温を超えるような他の温度において水溶性または水膨潤性であってもよい。さらに、その原材料は、大気圧よりも低い圧力において水溶性または水膨潤性であってもよい。望ましくは、水溶性ポリマーは、少なくとも20質量%の吸水力を有する、水溶性または水膨潤性のポリマーである。25質量%以上の吸水力を有する水膨潤性ポリマーもまた有用である。ある態様においては、そのような水溶性ポリマーから形成された膜は、体液との接触により溶解可能な程度に十分に水溶性であってもよい。
【0033】
膜に組み込むのに有用な他のポリマーは、生分解性ポリマー、コポリマー、ブロックポリマー及びこれらの組み合わせを含む。用語「生分解性の」は、溶媒の存在下で化学的に分解する原材料を含むことを意図し、物理的に分解する原材料とは対立するものとして理解されている(すなわち、生体内分解性の原材料である)。上記基準を満たす公知の有用なポリマー又はポリマーのクラスは、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリジオキサン、ポリオキサレート、ポリ(α−エステル)、ポリ無水物、ポリアセテート、ポリカプロラクトン、ポリ(オルトエステル)、ポリアミノ酸、ポリアミノカーボネート、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、及びこれらの混合物及びコポリマーである。追加の有用なポリマーは、L−及びD−乳酸のステレオポリマー、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン酸とセバシン酸とのコポリマー、セバシン酸のコポリマー、カプロラクトンのコポリマー、ポリ(乳酸)/ポリ(グリコール酸)/ポリエチレングリコールのコポリマー、ポリウレタンとポリ(乳酸)とのコポリマー、ポリウレタンとポリ(乳酸)とのコポリマー、α−アミノ酸のコポリマー、α−アミノ酸とカプロン酸とのコポリマー、α−ベンジルグルタメートとポリエチレングリコールとのコポリマー、サクシネートとポリ(グリコール)とのコポリマー、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシアルカノエート、及びこれらの混合物を含む。二成分系及び三成分系が意図される。
【0034】
その他の具体的な有用なポリマーは、メディソーブ(Medisorb)及びバイオデル(Biodel)なる商標の下で市販されているものを含む。メディソーブ材料は、デラウェア州ウィルミントンのデュポン社(Dupont Company of Wilmington,Delaware)により販売されており、一般的に「プロパン酸、ヒドロキシ酢酸を含むヒドロキシポリマーとの2−ヒドロキシポリマー(2−hydroxy−polymer with hydroxy−polymer with hydroxyacetic acid)」を含む、「ラクチド/グリコライドコポリマー」として同定されている。4種のかかるポリマーは、170°−175℃(338°−347°F)の範囲内の融点を持つ100%ラクチドであると考えられる、ラクチド/グリコライド100L;225°−235℃(437°−455°F)の範囲内の融点を持つ100%グリコライドであると考えられる、ラクチド/グリコライド100L;170°−175℃(338°−347°F)の範囲内の融点を持つ85%ラクチド及び15%グリコライドであると考えられる、ラクチド/グリコライド85/15;及び170°−175℃(338°−347°F)の範囲内の融点を持つ50%ラクチド及び50%グリコライドのコポリマーであると考えられる、ラクチド/グリコライド50/50を含む。
【0035】
該バイオデル材料は、化学的に異なる様々なポリ無水物のファミリーを表す。
【0036】
様々な異なるポリマーを使用することができるが、粘膜接着特性、並びに望ましい溶出速度及び/又は分解速度を膜に与えるポリマーを選択することが望ましい。特に、膜の粘膜組織への接着を維持するために望まれる時間は、組成物に含まれる有効成分の種類に依存する。いくらかの有効成分は粘膜組織を通って送達するのに数分しか必要としない可能性があるが、一方で他の有効成分は最大数時間又はそれより長い時間が必要となる可能性がある。従って、ある態様においては、上述のような1以上の水溶性ポリマーが膜を形成するために使用され得る。他の実施態様においては、しかしながら、上述のように水溶性ポリマー、及び、水膨潤性、水不溶性及び/又は生分解性であるポリマーとの組み合わせを用いることが望まししいことがある。水膨潤性、水不溶性及び/又は生分解性である1以上のポリマーを含むことは、水溶性ポリマーのみから形成された膜よりも、より遅い溶解速度又は分解速度を膜に与え得る。このように、膜は粘膜組織により長い期間又は時間(例えば最大数時間)にわたって接着できるため、特定の有効成分の送達に望ましいことがある。
【0037】
望ましくは、個々の膜製剤は約0.5−1インチ×約0.5−1インチの間にある小さなサイズを有する。より好ましくは、膜製剤は約0.75インチ×0.5インチである。膜製剤は、使用者の口腔内又は舌下領域に置かれた場合に、良好な接着性を有していなくてはならない。更には、膜製剤は、適度な速度、つまり約1分から約30分の間、最も望ましくは約10分と約20分の間にて分散及び溶解するべきである。ある態様においては、しかしながら、個々の膜製剤がより遅く、約30分より長い時間に渡って溶解することを可能にすることが望ましいことがある。そのような遅い溶解の態様においては、膜製剤が強い粘膜接着特性を有することが望ましい。他の態様においては、しかしながら、より早い溶解の材料(例えば約1分から約3分の間)を使用することが望ましいことがある。更に、膜製剤は、使用者の口腔の内表面(例えば頬の内側又は舌下)に対する接着を補助する成分を含むべきである。具体的には、2層膜においては、作動薬を含む領域は、拮抗薬を含む領域よりも高い度合いの接着力を有するべきである。この方法においては、作動薬はより早く放出され使用者により摂取され得る。
【0038】
例えば、ある態様においては、膜はポリエチレンオキシド単独又はポリエチレンオキシドと第2のポリマー成分との組み合わせを含んでもよい。ある態様においては、膜はポリエチレンオキシド以外のポリマーを含んでもよい。第2のポリマーは別の水溶性ポリマー、水膨潤性ポリマー、水不溶性ポリマー、生分解性ポリマー又はこれらの組み合わせであってもよい。適切な水溶性ポリマーは、限定されるものではないが、上述のいずれかの水溶性ポリマーを含んでもよい。ある態様においては、水溶性ポリマーは、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースのような親水性のセルロース誘導体ポリマーを含んでいてもよい。有用な水溶性ポリマーのその他の具体例は、限定されるものではないが、ポリエチレンオキシド(PEO)、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリデキストロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カラギーナン、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、トラガカントガム、グァーガム、アカシアガム、アラビアガム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、ポロキサマーポリマー、アクリル酸とアルキルアクリレートとのコポリマー(ペムレン(Pemulen(商標))ポリマーとして入手できる)、カルボキシビニルコポリマー、デンプン、ゼラチン、ペクチン、及びこれらの組み合わせを含む。
【0039】
有用な水不溶性ポリマーの具体例は、限定されるものではないが、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、アクリルポリマー、ビニルアセテート、ナトリウムスルホン酸化ポリエステル、カルボキシル化アクリル、トリメチルペンタンジオール/アジピン酸/グリセリンのクロスポリマー、ポリグリセロール−2−ジイソステアレート/IPDIのコポリマー、カルボキシル化ビニルアセテートコポリマー、ビニルピロリドン/ビニルアセテート/アルキルアミノアクリレートのターポリマー、ビニルピロリドン/ビニルアセテートのコポリマー、及びこれらの組み合わせを含む。
【0040】
いくつかの態様に従って、ポリエチレンオキシドは、ポリマー成分中に、約20質量%から100質量%に及んでもよく、より具体的には約30質量%から約70質量%、及び更により具体的には約40質量%から約60質量%であってもよい。ある態様においては、1以上の水膨潤性、水不溶性及び/又は生分解性のポリマーが、ポリエチレンオキシドベースの膜に含まれていてもよい。上述の水膨潤性、水不溶性又は生分解性の任意のポリマーを採用することができる。第2のポリマー成分は、ポリマー成分中、約0質量%から約80質量%、より具体的には約30質量%から約70質量%、及び更により具体的には約40質量%から約60質量%の量において採用され得る。
【0041】
ポリエチレンオキシドの分子量は変化させてもよい。ある態様においては、高い分子量のポリエチレンオキシド(例えば400万)が、膜の粘膜接着性を向上させるために望ましいことがある。いくつかの他の態様においては、分子量は約100,000から900,000、より具体的には約100,000から600,000、及び更により具体的には約100,000から300,000である。ある態様においては、高い分子量(例えば600,000から900,000)と低い分子量(例えば100,000から300,000)のポリエチレンオキシドをポリマー成分中で組み合わせることが望ましいことがある。適切なポリマーは、出願人の同時係属の米国公開番号2008−0260809(全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のポリマーを含む。
【0042】
様々な任意成分及びフィラーを膜に添加することもできる。これらは、限定されるものではないが:界面活性剤;可塑剤;ポリアルコール;膜から酸素を放出させることにより、より滑らかな膜表面の形成を助けるシリコン含有成分のような消泡剤;成分の分散状態を維持するのに役立つ、例えばペクチン、カラギーナン、及びゼラチンのような、熱硬化性ゲル;シクロデキストリン及びケージド分子のような包接化合物;着色剤;及び香味料を含み得る。ある態様においては、2以上の有効成分を膜中に含んでもよい。
【0043】
添加剤が膜中に含まれていてもよい。添加剤のクラスの例は、賦形剤、潤滑剤、緩衝剤、安定化剤、発泡剤、顔料、着色剤、フィラー、充填剤、甘味料、香味料、香料、離型調整剤、アジュバント、可塑剤、流動促進剤、離型剤、ポリオール、造粒剤、希釈剤、バインダー、バッファー、吸収剤、グライダント、接着剤、接着防止剤、酸味料、柔軟剤、樹脂、緩和薬、溶媒、界面活性剤、乳化剤、エラストマー、及びこれらの混合物を含む。これらの添加剤は有効成分と共に添加されてもよい。
【0044】
有用な添加剤は、例えば、ゼラチン、食用タンパク質、例えばヒマワリタンパク質、大豆タンパク質、綿実タンパク質、ピーナッツタンパク質、ブドウ種子タンパク質、ホエータンパク質、ホエータンパク単離物質、血液タンパク質、卵のタンパク質、アクリレート化タンパク質、水溶性多糖類、例えばアルギナート、カラギーナン、グァーガム、寒天、キサンタンガム、ジェランガム、アラビアガム及び関連するガム(ガッチガム、カラヤガム、トラガカントガム)、ペクチン、セルロースの水溶性誘導体:アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルアルキルセルロース、例えばメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースエステル及びヒドロキシアルキルセルロースエステル、例えばセルロースアセテートフタレート(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースエステル、例えばカルボキシメチルセルロース及びこれらのアルカリ金属塩;水溶性合成ポリマー、例えばポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸及びポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVY/酢酸ビニルコポリマー、及びポリクロトン酸を含み;同様に適切なものはフタレート化ゼラチン、ゼラチンサクシネート、架橋ゼラチン、セラック、デンプンの水溶性化学的誘導体、例えば第3又は第4アミノ基、例えば所望により4級化できるジエチルアミノエチル基を有するカチオン変性アクリレート及びメタクリレート;及び他の同様なポリマーである。
【0045】
そのようなエキステンダーは、所望の量で、膜の全成分の質量を基準として、望ましくは約80質量%までの範囲内で、望ましくは約3質量%から50質量%及びより望ましくは3質量%から20質量%までの範囲内で添加され得る。
【0046】
更なる添加剤は、フロー剤及び乳白剤、例えばマグネシウム、アルミニウム、シリコン、チタン等の酸化物であってもよく、これらは望ましくは膜の全成分の質量を基準として、約0.02質量%から約3質量%及び望ましくは約0.02質量%から約1質量%の濃度範囲にある。
【0047】
添加剤の更なる例は、可塑剤であり、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−プロピレングリコール、低分子量の有機可塑剤、例えばグリセロール、グリセロールモノアセテート、ジアセテート又はトリアセテート、トリアセチン、ポリソルベート、セチルアルコール、プロピレングリコール、ソルビトール、ナトリウムジエチルスルホサクシネート、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、及び同様のものを含み、これらはポリマーの質量を基準として約0.5質量%から約30質量%の範囲、及び望ましくは約0.5質量%から約20質量%の範囲の濃度において添加される。
【0048】
更に、デンプン材料の質感特性を改善するための成分、例えば動物又は植物脂肪、望ましくはその水素添加状態にあるこれらの脂肪、特に室温において固体であるものを添加することができる。これらの脂肪は、望ましくは50℃以上の融点を持つ。好ましいのは、C12−、C14−、C16−、C18−、C20−及びC22−の脂肪酸によるトリグリセリドである。これらの脂肪は、エキステンダー又は可塑剤を添加することなく単独で添加されてもよく、及び有利には単独で又はモノ−及び/又はジ−グリセリド又はホスファチド、特にレシチンと共に添加されてもよい。該モノ−及びジ−グリセリドは、望ましくは、上記した型の脂肪から、すなわちC12−、C14−、C16−、C18−、C20−及びC22−の脂肪酸によって誘導される。
【0049】
使用される該脂肪、モノ−、ジ−グリセリド及び/又はレシチンの全量は、膜組成物全体の、最大5質量%及び好ましくは約0.5質量%から約2質量%の範囲内であってもよい。
【0050】
二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、又は二酸化チタンを組成物全体の約0.02質量%から約1質量%の濃度で添加することが更に有用である。これらの化合物はフロー剤及び乳白剤として作用する。
【0051】
レシチンは本明細書に記載される膜内で使用するための界面活性薬剤の1つである。レシチンは原材料中に約0.25質量%から約2.00質量%の量で含めることができる。他の界面活性薬剤、すなわち界面活性剤は、限定されるものではないが、セチルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ICIアメリカ社(ICI Americas, Inc.)より市販品として入手できる、スパン(商標)(SpansTM)及びツイーン(商標)(TweensTM)を含む。バスフ(BASF)社より市販品として入手できるクレモフォア(Cremophor)(商標)ELのようなエトキシル化ヒマシ油を含むエトキシル化油も有用である。カーボワックス(商標)(CarbowaxTM)は、本発明において極めて有用な、更に別の調整剤である。ツイーン(商標)又は界面活性薬剤の組み合わせは、所望の親水−親油バランス(「HLB」)を達成するために使用され得る。
【0052】
他の成分は、膜の形成容易性及び一般の性質に寄与するバインダーを含む。バインダーの非限定的な例は、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルオキサゾリドン及びポリビニルアルコールを含む。必要に応じて、膜は他の添加剤、例えばケラチン、又はタンパク質、ゲル形成に有効なタンパク質(例えばゼラチン)を含んでもよい。
【0053】
更に可能な添加剤は溶解促進剤、例えば有効成分と包接化合物を形成する物質を含んでもよい。そのような薬剤は、極めて不溶性の及び/又は不安定な有効成分の特性を改善する上で有用であり得る。一般に、これらの物質は、疎水性の内部空洞及び親水性の外部を有するドーナツ形状の分子である。不溶性及び/又は不安定な有効成分は疎水性の空洞に適合でき、水に溶解する包接複合体を形成する。従って、包接複合体の構成は、極めて不溶性の及び/又は不安定な有効成分が水に溶解することを可能とする。そのような薬剤の特に望ましい例は、デンプン由来の環状の炭水化物であるシクロデキストリンである。しかしながら、他の同様な物質も、本発明の範囲内に入るものと考えられる。
【0054】
適切な着色薬剤は、食品、薬物及び化粧品の着色剤(FD&C)、薬物及び化粧品の着色剤(D&C)、又は外用薬物及び化粧品の着色剤(Ext. D&C)を含む。これらの着色剤は、染料、それらに対応するレーキ、及び特定の天然及び誘導着色剤である。レーキは水酸化アルミニウムに吸収された染料である。
【0055】
着色薬剤の他の例は、既知のアゾ染料、有機又は無機の顔料、又は天然由来の着色薬剤を含む。無機顔料が好ましく、例えば鉄又はチタンの酸化物であり、これらの酸化物は全ての成分の質量を基準として約0.001から約10質量%、及び好ましくは約0.5から約3質量%の範囲の濃度にて添加される。
【0056】
香味料は天然及び合成の芳香性液体から選択され得る。このような薬剤の例示的な一覧は、揮発性油、合成芳香油、風味芳香剤、油、液体、オレオレジン又は植物、葉、花、果物、茎及びこれらの組み合わせから誘導された抽出物を含む。これらの例の非限定的、代表的な一覧は、ミント油、ココア、及びレモン、オレンジ、グレープ、ライム及びグレープフルーツのような柑橘油、並びにリンゴ、ナシ、モモ、グレープ、イチゴ、キイチゴ、サクランボ、プラム、パイナップル、アンズ、又は他の果実香料を包含する果物エキスを含む。
【0057】
他の有用な香味料は、アルデヒド及びエステル、例えばベンズアルデヒド(サクランボ、アーモンド)、シトラール、すなわちα−シトラール(レモン、ライム)、ネラール、すなわちβ−シトラール(レモン、ライム)、デカナール(オレンジ、レモン)、アルデヒドC−8(柑橘類果実)、アルデヒドC−9(柑橘類果実)、アルデヒドC−12(柑橘類果実)、トリルアルデヒド(サクランボ、アーモンド)、2,6−ジメチルオクタノール(未熟な果実)、及び2−ドデセナール(柑橘類、マンダリン)、これらの組み合わせ及び同等物を含む。
【0058】
甘味料は以下の非限定的な一覧から選択され得る:グルコース(コーンシロップ)、デキストロース、転化糖、フルクトース、及びこれらの組み合わせ;サッカリン及びその様々な塩、例えばナトリウム塩;ジペプチド甘味料、例えばアスパルテーム;ジヒドロカルコン化合物、グリチルリチン;ステビア(Stevia Rebaudiana)(ステビオシド);スクロースのクロロ誘導体、例えばスクラロース;糖アルコール、例えばソルビトール、マンニトール、キシリトール、及び同等物である。同様に意図しているものは、水添デンプン加水分解物及び合成甘味料である3,6−ジヒドロ−6−メチル−1−1−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキシド、特にそのカリウム塩(アセスルファム−K)、及びそのナトリウム塩及びカルシウム塩、及び天然強力甘味料、例えばローハンクー(Lo Han Kuo)である。その他の甘味料も使用可能である。
【0059】
膜は、有効成分の味遮蔽を提供するため1以上の添加剤を含んでもよい。例えば、膜は、イオン交換樹脂を含んでもよく、イオン交換樹脂には水不溶性有機若しくは無機マトリクス材料であって、イオン又は適切な条件下でイオン化される共有結合官能基を有する材料が含まれるが、これらに限定されない。有機マトリクスは、合成でき(例えば、ポリマー又はコポリマー、又はアクリル酸、メタクリル酸、スルホン化スチレン又はスルホン化ジビニルベンゼン)又は、部分的に合成できる(例えば修飾セルロースまたはデキストラン)。無機マトリクスは、例えば、イオン基を添加することによって修飾されるシリカゲルであってもよい。多くのイオン交換樹脂は、ジビニルベンゼンのような架橋剤によって架橋される。
【0060】
消泡及び/又は脱泡成分も、また膜と共に使用できる。これらの成分は、膜形成組成物から取込み空気のような空気の除去において役立つ。このような取込み空気により、不均一な膜が生成され得る。シメチコンは、特に有用な消泡及び/又は脱泡剤の1つである。本発明は、しかしながら、これらに限定されず、他の消泡及び/又は脱泡剤が使用に適切であり得る。
【0061】
関連事項として、シメチコン及び関連する薬剤は、緻密化目的のために採用され得る。より具体的には、このような薬剤は、空隙、空気、水分及び同様な望ましくない成分の除去を容易にし、それによってより高密度の、このようにより均一な膜を提供することができる。この機能を果たす薬剤又は成分は、緻密化剤又は高密度化剤として表現され得る。上述のように、取込み空気又は望ましくない成分によって、不均一な膜が生成され得る。
【0062】
シメチコンは、一般に医学分野において、幼児におけるガス又は疝痛の治療で使用されている。シメチコンは、トリメチルシロキシ末端−ブロック単位で安定化されている、ポリジメチルシロキサンの繰返し単位を含む、完全にメチル化された線状のシロキサンポリマーと二酸化ケイ素との混合物である。これは、通常90.5〜99%のポリメチルシロキサン及び4〜7%の二酸化ケイを含む。この混合物は、水に不溶性の、灰色、半透明かつ粘性の流体である。
【0063】
水に分散されると、シメチコンは表面に広がり、低表面張力の薄い膜を形成する。このようにして、シメチコンは、発泡気泡のような溶液中に存在する気泡の表面張力を低下させ、これらを破壊する。シメチコンのこの機能は、水中での油及びアルコールの二重作用に類似している。例えば、油状液は水溶液と比較してより低い密度を持つことから、油状溶液中のあらゆる取込まれた気泡は、表面に向かって上昇しより迅速かつ容易に消散する。他方で、アルコール/水混合物は、水の表面張力を低下させると同時に水の密度を低下させることが知られている。従って、この混合溶液中に取込まれたあらゆる気泡も、容易に消散する。シメチコン溶液は、これら利点の両者を提供する。この溶液は、水性溶液の表面張力を低下させると同時に、水性溶液中に取込まれたあらゆる気泡の表面エネルギーを低下させる。この固有の機能の結果として、シメチコンは、生理的なプロセス(腹部における脱ガス)並びに生成物から気泡を除去する必要のある、任意の外部工程に対して使用することのできる、優れた消泡特性を有する。
【0064】
膜中の気泡形成を防止するため、混合段階を真空条件下で行うことができる。しかしながら、混合段階が完了して膜溶液が通常の大気条件に戻された途端に、空気が混合物中に再導入又は接触されることになる。多くの場合において、微小気泡はこのポリマーの粘性溶液内に再度取込まれることになる。膜形成組成物へのシメチコン混入は、混合中及び混合後の気泡形成を実質的に減らすか、あるいは排除する。
【0065】
シメチコンは、膜形成混合物に、消泡剤として、約0.01質量%から約5.0質量%、より望ましくは約0.05質量%から約2.5質量%及び最も望ましくは約0.1質量%から約1.0質量%の量で添加され得る。
【0066】
上記に示される同一出願人による米国特許番号7,425,292及び米国出願番号10/856,176に記載される他の任意成分もまた、本明細書に記載される膜に含まれ得る。
【0067】
製剤形態が作動薬に加えて少なくとも1つの拮抗薬を含む場合、経口で摂取された際の製剤形態からの拮抗薬の吸収を最小にするか又は完全に防止するために拮抗薬の放出を制御することが望ましいことがある。この方法においては、拮抗薬はより早く放出され、及びそのより高い比率が溶液中でイオン形態として存在し、それにより体内でのその吸収の可能性を減らすことができる。望ましくは、製剤形態は、使用者の口腔に設置される自立膜組成物である。口腔内に配置される製剤形態においては、使用者の体内への作動薬の早い吸収を提供できるよう、作動薬を頬側吸収することが望ましい。同時に、いかなる拮抗薬の頬側吸収も妨げるか又は減じることが必要となることがあり、その結果として拮抗薬が飲み込まれ及び胃の中で破壊され、場合によっては結腸で吸収されることとなる。もうひとつの方法として、拮抗薬の吸収防止は、拮抗薬を吸収を妨げる材料内に封入するといった、物理的手段を通して達成され得る。しかしながら、拮抗薬の吸収は、製剤形態の局所pHを調整するといった、化学的手段によって減じることが望ましい。
【0068】
製剤形態の局所pHを調整することにより、その中の有効成分の放出及び/又は吸収を調節できることが分かっている。例えば、ある量のある作動薬を含む製剤において、局所pHは、使用者の口腔内への放出及び/又は吸収を最適化するレベルに調整される。ある量のある作動薬及びある量のある拮抗薬を取り入れている製剤において、局所pHは、作動薬の放出及び/又は経口吸収を最大にし、同時に拮抗薬の放出及び/又は経口吸収を最小にするレベルに調整され得る。例えば、膜製剤は別個の領域を有してもよく、一方の領域は作動薬を含み、かつ他方の領域は拮抗薬を含み、それぞれの領域の局所pHは所望の効果のために最適化される。
【0069】
製剤形態は好ましくは、製剤が調整された局所pHを有している状態で、作動薬及び拮抗薬の組み合わせを含む。本発明はいかなる1つの特定の作動薬及び/又は拮抗薬を使用することに限定されるものではなく、任意の作動薬(又は部分作動薬)及び任意の拮抗薬が本発明に包含され得る。当然のことながら作動薬及び任意の拮抗薬は、治療されている特定の症状の治療において有効な作動薬及び拮抗薬から選択されるべきである。本明細書で検討されている本発明の膜は事実上基準となる作動薬及び/又は拮抗薬に対して最適なものである。適切な作動薬(及び/又は部分作動薬)は、ブプレノルフィン(pKa=8.42)、スフェンタニル(pKa=8.0)、モルヒネ(pKa=8.0)、フェンタニル(pKa=8.4)、アルフェンタニル(pKa=6.5)、ペチジン(pKa=8.7)、アポモルヒネ(pKa=8.9)、アルファプロジン(pKa=8.7)、レミフェンタニル(pKa=7.0)、メタドン(pKa=9.2)、コデイン(pKa=8.2)、ジヒドロコデイン(pKa=9.4)、モルヒネ(pKa=8.0)、オキシコドン(pKa=8.53)、オキシモルホン(pKa=8.17)、トラマドール(pKa=9.41)、又はこれらの薬学的に許容可能な塩を含み得る。適切な拮抗薬(及び/又は部分拮抗薬)は、ナロキソン、ナルトレキソン、ナロルフィン及びレバロルファン、又はこれらの治療上許容可能な塩を含み得る。
【0070】
上記で検討したように、製剤の局所pHは、好ましくは作動薬及び拮抗薬の所望の放出及び/又は吸収を提供できるように調整される。適切な作動薬は約5から約9.5、及び最も好ましくは約8.0から約9.0のpKaを有し得る。適切な拮抗薬は約6.0から約9.0、及び最も好ましくは約7.0から約9.0のpKaを有し得る。例えば、ナロキソンは約7.94のpKaを有する。
【0071】
pH分配仮説によれば、唾液(局所pHが約6.5)は両方の有効成分の吸収を最大にすることが予測できる。一般に理解されているように、有効成分の吸収は有効成分の得られる非イオン化形態に依存する。このように、周囲環境の局所pHが低くなると、基準となる有効成分はよりイオン化され、かつ吸収されにくくなる。約8のpKaを有する有効成分に対しては、高いレベルの吸収が約6.5の局所pHレベルで起こり、一方で大部分の有効成分がイオン化されていることから、低いレベルの吸収が、約3.5の局所pHで起こることが予測できる。下記の実施例においてより詳細に記載されるように、本発明の膜組成物の局所pHの調節は、成分の所望の放出及び/又は吸収が得られるシステムを提供する。
【0072】
ある態様において、製剤形態は自立膜である。この態様においては、膜製剤は、ポリマー担体マトリクス、治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩、及び緩衝剤を含む。好ましくは、作動薬は部分作動薬であり、及び最も望ましくは、作動薬はブプレノルフィンのようなオピオイド作動薬である。緩衝剤は、調節可能なレベル及び望ましくは作動薬の吸収の最適治療レベルを提供する範囲内にある、組成物の局所pHを提供することができることが好ましい。例えば、Suboxone(商標)錠剤と生物学的に同等なブプレノルフィンの吸収を提供することが望ましい。
【0073】
意外にも、出願人により、特定の作動薬(例えばブプレノルフィン)は、膜組成物の局所pHが約3から約4の間又は約5から約9の間のいずれにあるときでも、適切に吸収されることができることが発見された。従って、作動薬を含む膜の局所pHは約3から約4の間又は約5から約9の間のいずれであってもよい。ブプレノルフィンの最大吸収を提供するために、例えば、膜組成物の局所pHは約5.5であってもよい。Suboxone(商標)錠剤と生物学的に同等なブプレノルフィンの吸収を提供するために、膜組成物の局所pHは約6から約7であってもよい。結果として生じる製剤は、使用者の口腔内への作動薬(例えばブプレノルフィン)の迅速かつ効果的な放出を可能にする、膜製剤である。同時に、膜組成物は、望ましくは、膜が一旦口腔内に設置されたならば使用者の口腔から容易には取り除くことができず、又は全く取り除くことができないような、十分な接着特性を有する。作動薬の完全な放出は約30分未満以内にされてもよく、例えば約10分から約30分以内に放出され、及び好ましくは口腔内に少なくとも1分及び望ましくは約1から30分にわたって維持されてもよい。
【0074】
膜組成物中のオピオイド作動薬(又は部分作動薬)をオピオイド拮抗薬又はその薬学的に許容可能な塩と組み合わせることが望ましいことがある。作動薬及び拮抗薬は製剤の全体にわたって別々に分散され、あるいは作動薬及び拮抗薬はそれぞれの膜領域内に別々に分散されてもよい。最も望ましくは、拮抗薬はナロキソンを含むが、適切な拮抗薬が所望により選択されてもよい。拮抗薬は、拮抗薬及び作動薬の分離を困難にし、これにより作動薬の転用の可能性を減らすよう、水溶性であってもよい。
【0075】
膜が作動薬を含んでいるため、作動薬及び拮抗薬を含んでいる膜は緩衝剤を含有することによりpH調整されることが望ましい。作動薬及び拮抗薬の所望の局所pHレベルにおいては、拮抗薬の吸収が大幅に阻害されると共に作動薬の最適な吸収が達成され得る。
【0076】
膜は、自立膜組成物が提供されるよう、自立膜形成ポリマーの所望レベルを含んでいてもよい。ある態様においては、膜組成物は膜形成ポリマーを組成物の少なくとも25質量%含んでいてもよい。膜形成ポリマーは代わりに少なくとも組成物の50質量%、及び望ましくは組成物の約25質量%から約75質量%、及び最も望ましくは組成物の約30質量%から約50質量%の範囲で存在してもよい。上記で説明したように、任意の膜形成ポリマーが要求どおり使用されることが望ましい。
【0077】
所望の治療効果を提供するため、任意の所望レベルの作動薬及び最適な拮抗薬が1回分の服用量中に含まれていてもよい。ある具体的な態様においては、膜組成物は作動薬を1用量あたり約2mgから約16mg含む。より望ましくは、膜組成物は作動薬を1用量あたり約4mgから約12mg含む。必要であれば、膜組成物は拮抗薬を1用量あたり約0.5mgから約5mg含んでいてもよい。より望ましくは、膜組成物は拮抗薬を1用量あたり約1mgから約3mg含む。拮抗薬が膜中へ組み入れられた場合、膜組成物は約6:1−2:1の作動薬対拮抗薬の割合で拮抗薬を含み得る。より望ましくは、膜組成物は1用量あたり約4:1の作動薬対拮抗薬を含む。例えば、ある態様においては、1回分の服用量は約12mgの量の作動薬を含み、約3mgの量の拮抗薬を含む。
【0078】
膜組成物は更に望ましくは膜組成物の局所pHを調整するため少なくとも1つの緩衝剤を含む。緩衝剤の所望レベルが所望の局所pHレベルを提供するために膜組成物に組み込まれていてもよい。緩衝剤は好ましくは作動薬及び場合により拮抗薬の膜からの放出及び/又は体内への吸収を調整するのに十分な量で提供される。望ましい態様においては、膜組成物は約2:1から約1:5(緩衝剤:作動薬)の量の緩衝剤対作動薬の割合で緩衝剤を含む。緩衝剤は代わりに緩衝剤対作動薬の1:1の割合で提供され得る。拮抗薬を含む膜組成物は好ましくは約2から約4の局所pHを有する。任意の緩衝剤が要求どおりに使用されてもよい。いくつかの態様においては、緩衝剤は、クエン酸ナトリウム、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、リン酸、ホウ酸、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。緩衝剤は、例えばクエン酸/クエン酸ナトリウム、コハク酸/コハク酸ナトリウム、グリシン/グリシンナトリウム、リンゴ酸/リンゴ酸ナトリウム、リン酸/リン酸ナトリウム、フマル酸/フマル酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム/リン酸二ナトリウム、及びホウ酸/ホウ酸ナトリウムのような、成分の組み合わせを含む緩衝系を含んでもよい。
【0079】
この態様において、結果として得られる膜組成物は、膜組成物が所望のレベルに調整された局所pHを有している状態で、ポリマーマトリクス、作動薬、及び任意の拮抗薬を含む。緩衝剤は望ましくは拮抗薬の実質的な吸収を制限又は防止すると同時に、作動薬の治療上適切な吸収を提供する量で存在する。局所pHの調整は、成分の所望の放出及び/又は吸収を可能にし、及びこのようにしてより有用かつ効果のある用量を提供する。
【0080】
膜製剤組成物はポリマー担体マトリクス、治療上効果のある量の作動薬、治療上効果のある量の拮抗薬、及び緩衝系を含み得る。拮抗薬の「治療上効果のある量」は使用者による作動薬の乱用の転換に有効な拮抗薬の量を表すことを意図する。緩衝系は溶媒に加えて緩衝剤を含んでもよい。緩衝系は望ましくは膜製剤組成物の所望の局所pHレベルを提供するため十分な量の緩衝剤を含む。
【0081】
所望の局所pHレベルに加えて、緩衝剤は望ましくは組成物が使用者の口腔内にある時間任意の拮抗薬のイオン化状態を維持するのに十分な緩衝能を有する。拮抗薬のイオン化状態の維持は、拮抗薬の吸収を制限することに役立ち、従って拮抗薬の所望の調整を提供する。拮抗薬のイオン化が制限されていても、作動薬のイオン化は制限されなくてもよい。このように、結果として得られる投薬形態が使用者に作動薬の吸収を提供し、同時に拮抗薬の吸収を十分に低減及び/又は抑制している。
【0082】
他の態様においては、本発明の膜製剤組成物はより多い量の作動薬を含む錠剤と生物学的に同等な放出特性を提供するために十分な量の作動薬を含んでもよい。作動薬及び同時に膜製剤組成物の局所pHを調整する膜製剤組成物を提供することにより、製剤中に存在するより少ない作動薬で作動薬の効果的な放出及び吸収が達成され得る。例えば、膜製剤組成物は、錠剤に必要とされる作動薬の量よりも少なくとも1.5倍少ない量で作動薬を含み得るが、それでも生物学的に同等な放出特性を提供する。ある態様においては、作動薬は部分作動薬でもよい。ある態様においては、作動薬はオピオイド作動薬であってもよい。望ましい態様においては、作動薬はブプレノルフィン又はその薬学的に許容可能な塩を含む。
【0083】
膜製剤組成物は作動薬を含み、所望の範囲にある平均最大血漿濃度(Cmax)を有するin vivo血漿プロファイルを提供するように設定されてもよい。例えば、所望のCmaxはSuboxone(商標)錠剤のそれと生物学的に同等であってもよい。出願人は、膜組成物のCmaxを調整することにより、使用者への有効成分(例えば作動薬)の吸収を調整できることを発見した。結果として得られる膜組成物は使用者への送出により効果的かつ適切である。
【0084】
ある態様においては、膜組成物のCmaxは約6.4ng/ml以下であってもよい。必要であれば、膜組成物のCmaxは、所望の用量レベルに応じて約5.2ng/ml未満、約3.8ng/ml未満、約1.9ng/ml未満、又は約1.1ng/ml未満であってもよい。そのような態様において、作動薬は1用量あたり約2mgから約16mgの量で、又は、必要であれば1用量あたり約4mgから約12mgで存在しうる。作動薬はブプレノルフィン又はその薬学的に許容可能な塩を含んでもよい。
【0085】
更に、膜組成物の曲線(AUC)値下の平均面積を調整することにより、より効果的な製剤形態が提供され得ることが発見された。ある態様においては、膜組成物は約6.8時間×ng/ml以上の平均AUC値を含み得る。代わりとして、膜組成物は約6.8時間×ng/mlから約66時間×ng/mlの平均AUCinf値を含み得る。
【0086】
上述のように、膜組成物は任意の拮抗薬を含んでもよい。膜組成物が作動薬及び拮抗薬の組み合わせを含むとき、膜組成物は拮抗薬の特定のCmax及び/又はAUCを提供するように設定され得る。例えば、ブプレノルフィン作動薬及びナロキソン拮抗薬が膜組成物に組み込まれた場合、ナロキソンは約400pg/ml未満、約318pg/ml未満、約235pg/ml未満、約92pg/ml未満又は約64pg/ml未満のCmaxを提供するように設定され得る。このような膜においては、ナロキソンは約1030時間×ng/ml未満の平均AUC値を提供し得る。
【0087】
作動薬を拮抗薬との組み合わせで含む製剤においては、膜組成物は作動薬及び拮抗薬それぞれについて所望のCmax及び/又はAUC値を提供するように調製され得る。例えば、作動薬16mg及び拮抗薬4mgを有する製剤は、作動薬について約6.4ng/ml未満のCmaxを有するin vivo血漿プロファイル及び拮抗薬について約400pg/ml未満のCmaxを有するin vivo血漿プロファイルを提供し得る。そのような製剤は、作動薬について約6.8時間×ng/mlよりも大きいAUC値を提供し得る。必要であれば、製剤は拮抗薬について約1030時間×pg/ml未満のAUCinf値を提供し得る。生物学的同等な値は下記に述べる実施例の中でより詳細に示される。そのような組成物は作動薬及び拮抗薬を所望の量で含んでもよく、及び好ましい態様においては、組成物は1用量あたり作動薬を約2mgから約16mg及び1用量あたり拮抗薬を約0.5mgから約4mg含む。最も望ましくは、作動薬及び拮抗薬は作動薬対拮抗薬の質量で約4:1の量で存在する。
【0088】
ある特定の態様においては、2以上の領域を含む自立膜製剤組成物を提供し得る(「2重膜生成物」又は「2領域生成物」として表される)。複数の領域は互いの上端、互いの側面、又は互いの内部に配置され得る。例えば、製剤組成物は2つの分離した領域を含んでもよく、第1の領域が第2の領域の上端、又はその逆の構成であるように配置されていてもよい。必要であれば、2つの領域は単独の製剤形態を提供するために互いに貼合されていてもよい。そのような態様においては、第1の領域はそれに任意の追加領域を貼合する前に乾燥されてもよい。同様に、第2の領域はそれに第1の領域を貼合する前に乾燥されてもよい。代わりとして、第1又は第2の領域のどちらも、それに任意の追加領域を貼合する前に少なくとも部分的に乾燥されていてもよい。
【0089】
そのような複数領域の態様においては、第1のポリマーマトリクス及び治療上効果のある量の作動薬を含む第1の領域が提供される。作動薬は部分作動薬であってもよく、及び作動薬はオピオイド作動薬であってもよい。そのようなオピオイド作動薬の1つはブプレノルフィンを含むが、任意の所望の作動薬が必要とされる特定の症状の治療に使用され得る。第1の領域は望ましくは作動薬の放出及び/又は吸収を最適化するための作動薬の局所pHを提供するために十分な量の第1の緩衝系を含む。第1の領域は第2の領域と連携していてもよい。第2の領域は、第2のポリマーマトリクス及び治療上効果のある量の拮抗薬を含みうる。そのような拮抗薬の1つはナロキソンを含むが、任意の所望の拮抗薬が必要とされるとおりに使用され得る。第2の領域は更に拮抗薬の吸収を阻害するための拮抗薬の局所pHを提供するために十分な量の第2の緩衝系を含んでもよい。ある態様においては、使用者の口の中に設置された際に第2の領域よりも早い速度で溶解する1つの領域を有していることが望ましいことがある。例えば、作動薬を含む領域よりもより早い速度で溶解する拮抗薬を含む領域を有していることが望ましいことがあり、又はその逆の場合も同様である。
【0090】
そのような複数領域の膜製剤においては、第1及び第2の領域は、作動薬及び拮抗薬の所望の吸収特性を提供するために連携して作用し得る。例えば、第1の緩衝系は作動薬の増加した吸収を提供するのに十分な量で存在してもよく、同時に第2の緩衝系は拮抗薬の減少した吸収を提供するのに十分な量で存在する。ある態様においては、第1の緩衝系は、作動薬の最適な吸収を提供するための第1の領域の局所pH(すなわち約3から約4又は約4から約9のいずれか、及びより具体的には約6から約9)を提供するのに十分な量で存在し得る。ある態様においては、第2の緩衝系は、約2から約4、及びより具体的には約2から約3である第2の領域の局所pHを提供するのに十分な量で存在し得る。第1の領域にブプレノルフィンを含み第2の領域にナロキソンを含む複数領域の膜製剤においては、ブプレノルフィン領域の局所pHは望ましくは約3から約4又は約5.5から約6.5のいずれかであり、及びナロキソン領域の局所pHは約2.0から約3.0である。
【0091】
製剤中に組み込まれた特定の作動薬及び拮抗薬に応じて、拮抗薬の吸収を阻害すると同時に作動薬の吸収を最適化するため、それぞれの領域の所望の局所pHレベルはより高くなったりあるいは低くなったりし得る。一般に、作動薬含有領域の局所pHは、望ましくは約4から約9であり、及び最も望ましくは約6から約9である。拮抗薬含有領域の局所pHは最も望ましくは約2から約4である。再度、しかしながら、製剤へ組み込まれた特定の作動薬はより高い又はより低いpHにおいてより最適に吸収され得ることが理解されるであろう。
【0092】
第1及び第2の緩衝系は同じであってもよく、又は異なっていてもよい。加えて、第1のポリマーマトリクス及び第2のポリマーマトリクスは同じであってもよく、又は異なっていてもよい。作動薬及び拮抗薬の所望レベルが提供されてもよく、及び望ましくは、製剤組成物は1用量単位あたり作動薬を約2mgから約16mg及び拮抗薬を約0.5mgから約4mg含む。より望ましくは、製剤組成物は1用量単位あたり作動薬を約4mgから約12mg及び拮抗薬を約1mgから約3mg含む。
【0093】
第1及び第2の領域は任意の所望の方法により一緒に形成されてもよい。ある態様において、第2の領域は第1の領域の少なくとも1つの表面上に被覆、噴霧、又は設置されてもよい。代わりの方法としては、第1及び第2の領域は同時押出しされてもよい。ある態様においては、第1及び第2の領域は適切な組成物を用いて互いに貼り合わされてもよい。さらには、第1の領域が最初に形成され、その後続いて湿った組成物の溶液の中へ漬けられ、次に乾燥して第2の領域形成がされてもよい。当該技術分野において通常の技術を有する者によって理解され得るように、第2の領域が作動薬を含むと同時に第1の領域が拮抗薬を含んでもよい。さらに、両方の領域は所望の放出及び吸収を提供するため、所望の量の作動薬及び拮抗薬を含んでいてもよい。
【0094】
第1の領域が第2の領域よりも質量でより多くの成分を含んでいてもよく、又はその逆であってもよい。例えば、第1の領域は、第2の領域の総量よりもより多くの総量を有してもよく、又はその逆であってもよい。代わりに、第1及び第2の領域は質量で同量の成分を含んでもよい。
【0095】
別の態様においては、それぞれの領域がポリマーマトリクス及び水溶性及び/又は水不溶性の有効成分を含む、2以上の領域を有する自立膜製剤組成物を提供し得る。製剤組成物は好ましくは治療上効果のある量の水溶性の有効成分及び治療上効果のある量の水不溶性有効成分を含む。それぞれの領域は好ましくは、必要とされる有効成分の所望の吸収レベルに応じて、それぞれの領域における水溶性及び水不溶性の有効成分の吸収特性を調整するのに十分な量の緩衝剤を含む。要求態様の1つにおいては、第1の緩衝剤は、約2から約4である領域の局所pHを得るのに十分な量で第1の領域に存在し、同時に第2の緩衝剤は、約4から約9である第2の領域の局所pHを得るために十分な量で第2の領域に存在する。
【0096】
本発明は患者における様々な問題(例えば、患者が感じる身体的な苦痛を含む)を治療する方法を提供する。望ましくは、患者は、患者へ製剤を提供することによって(それは治療上の有効成分の効果的な放出を提供するが同時に製剤が容易には取り除けないような適切な粘着力を提供する)治療される。本明細書で提供される投薬形態は特に薬剤の転用を防止するのに有用である。ある治療方法においては、経口溶解性の膜組成物が患者へ提供される。
【0097】
治療しようとする特定の症状に応じて、膜組成物は1以上の特別な有効成分を含んでもよい。ある態様においては、膜組成物はポリマー担体マトリクス及び治療上効果のある量の作動薬を含む。望ましくは、作動薬は部分作動薬である。苦痛のいくつかの種類に対しては、作動薬はオピオイド作動薬、例えばブプレノルフィン又はその薬学的に許容可能な塩であってもよい。膜組成物は好ましくは膜組成物の局所pHを調整するのに十分な量の緩衝剤を含む。任意の緩衝剤又は緩衝系が使用されても良く、上記のものを含む。望ましくは、作動薬を含む膜組成物の局所pHは、組成物に含まれる特定の作動薬に応じて約4から約9になるように緩衝処理される。ある態様においては、例えば作動薬がブプレノルフィンであるとき、望ましい局所pHは約5から約6.5であり、及び最も望ましくは、局所pHは約5.5から約6.5である。このレベルにおいて、作動薬の吸収は最適化され得る。苦痛を治療するため、膜組成物は患者へ投与され、最も望ましくは患者の口腔内へ、例えば頬側での吸収を通じて、投与される。
【0098】
必要であれば、組成物は治療上効果のある量の拮抗薬を含んでもよい。上記の通り、作動薬及び拮抗薬の組み合わせは作動薬の乱用の可能性を最小にする一助となり得る。拮抗薬は任意の所望の拮抗薬であってもよく、ある態様においてはナロキソン及びその薬学的に許容可能な塩を含む。膜組成物は好ましくは患者の口腔を通じて患者へ投与されるが、任意の所望の手段により投与されてもよい。経口溶解性の膜組成物はその後患者の口腔内で十分な時間をかけて溶解でき、その中の1つ又は複数の有効成分を放出する。ある態様においては、膜組成物は、口腔内に少なくとも30秒間にわたって残存することができ、及びある態様においては口腔内に少なくとも1分間にわたって残存し得る。膜組成物が患者の口腔内に設置された後、膜は好ましくは、その除去が難しくなるように十分に接着されてくる。膜組成物が患者へ投与された後、有効成分が組成物から十分に放出されて患者に効果をもたらすことができる。
【0099】
2つの領域を有する膜組成物の態様においては、製剤の投与は異なる溶解速度の領域を有していてもよい。例えば、膜組成物の第1の領域は作動薬及び中度の溶性のポリマーを含んでもよい。望ましくは、第1の領域は口腔内に少なくとも1分間、及び最高で約30分間にわたって残存する。第2の領域は、拮抗薬を含んでいてもよく、望ましくは即溶性のポリマーを含む。従って、第2の領域は1分未満で溶解し、それにより拮抗薬が体内へ放出されて摂取及びイオン化がされる。このようにして拮抗薬は飲み込まれることにより、頬側の吸収が回避される。しかしながら、投与前には拮抗薬は膜組成物中にまだ存在し、使用者が組成物から作動薬を抽出しようとする場合に薬物乱用の可能性を制限する。
【0100】
本発明の膜組成物は任意の所望の工程を通じて形成され得る。適切な工程は、米国特許番号7,425,292及び7,357,891において示されており、これらの全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。ある態様において、膜製剤組成物は最初に湿った組成物を調製することにより形成され、その湿った組成物はポリマー担体マトリクス、治療上効果のある量の作動薬、及び組成物の局所pHを所望のレベルへ調整するのに十分な量の緩衝剤を含む。その湿った組成物は製膜され、その後十分に乾燥されて自立膜組成物を形成する。その湿った組成物は個々の製剤へ成型されてもよく、又はシートに成型されてその後切断して個々の製剤にされてもよい。作動薬は部分作動薬であってもよい。必要であれば、その湿った組成物は治療上効果のある量の拮抗薬を含んでもよい。ある態様においては、特に単独領域の製剤においては、膜の局所pHは約2から約4、及びより具体的には約3から約4の間である。
【0101】
作動薬及び任意の拮抗薬は好ましくは特定の問題を治療するために選択され、例えば患者が感じる身体的苦痛の治療をするために選択される。例えば、作動薬はブプレノルフィン又はその薬学的に許容可能な塩を含み、同時に拮抗薬はナロキソン又はその薬学的に許容可能な塩を含む。膜組成物は作動薬及び拮抗薬の局所pHを所望のレベルへ調整するための、少なくとも1つの緩衝剤又は緩衝系を含む。この方法においては、作動薬の吸収は最適化され、同時に拮抗薬の吸収が阻害され得る。ある所望の態様においては、本発明の膜はSuboxone(商標)錠剤と生物学的に同等な作動薬の吸収を提供する。
【0102】
作動薬の所望の最適な吸収がSuboxone(商標)錠剤と生物学的に同等な吸収を提供することであるならば、膜組成物の局所pHは、約3から約4の間又は約5.5から約6.5の間どちらかである作動薬の局所pH、及び約2から約4の間である拮抗薬の局所pHを提供するべきである。作動薬及び拮抗薬を有する1つの領域のみを含む膜組成物においては、Suboxone(商標)錠剤と生物学的に同等な吸収を提供するため局所pHは望ましくは約3から約4である。
【実施例】
【0103】
実施例1−様々な強度のブプレノルフィン/ナロキソンの膜組成物
ブプレノルフィン及びナロキソンの組み合わせを含む膜の細片を調製した。ブプレノルフィンのナロキソンに対する割合が16/4、12/3、8/2及び2/0.5である、4つの異なる強度の膜組成物を調製した。組成物は下記の表1に要約される。

表1−膜製剤の様々な組成物

【0104】
実施例2−Suboxone(商標)錠剤の吸収調査
様々な膜及び錠剤の生成物を調製し、Cmax及びAUC吸収レベルを含む、吸収データを得るための試験を行った。試験をした生成物には2mg又は16mgのブプレノルフィンと0.5mg又は4.0mgのナロキソンを用いて作られるSuboxone(商標)錠剤を含めた。16mgブプレノルフィン錠剤については、16mgブプレノルフィン錠剤の成分レベルを提供するため、2つの8mgブプレノルフィン錠剤を一緒に結合させた。12mgブプレノルフィン錠剤を評価する場合には、1つの8mgブプレノルフィン錠剤及び2つの2mgブプレノルフィン錠剤を結合することによりこの製剤を得た。下記表2に示された量を用いてこれら生成物の吸収レベルを試験した。

表2−Suboxone(商標)生成物の吸収データ

表2のデータを用いて、ブプレノルフィン及びナロキソンの他のレベルにおけるSuboxone(商標)錠剤の吸収データを下記表2Aに示す。

表2A−Suboxone(商標)錠剤の吸収データ

【0105】
実施例3−Suboxone(商標)錠剤の生物学的同等性の評価
上記表2におけるSuboxone(商標)錠剤のために作り出されたデータを用いて、Suboxone(商標)錠剤と同等の治療レベルを提供するため、許容可能な生物学的同等性の範囲を作り出す。現在理解されているように、生成物はSuboxone(商標)錠剤の約80%から約125%の間で吸収レベルを提供するならば、生物学的に同等な効果を提供する。この範囲での吸収は生物学的に同等であると判断される。

表3−Suboxone(商標)錠剤に対する許容可能な生物学的同等性の範囲
(80−125%)

このように、Suboxone(商標)錠剤との生物学的同等性を検討すると、ブプレノルフィンのCmaxは約0.624及び5.638の間であり、及びブプレノルフィンのAUCは約5.431から約56.238の間である。同様に、Suboxone(商標)錠剤との生物学的同等性を検討すると、ナロキソンのCmaxは約41.04から約323.75の間であり、及びナロキソンのAUCは約102.88から約812.00の間である。
【0106】
実施例4−様々な強度のブプレノルフィンの膜組成物
ブプレノルフィンを含む膜の細片を調製した。用量8mg及び用量2mgでブプレノルフィンを含む、2つの異なる強度の膜組成物を調製した。組成物は下記の表4に要約される。

表4−膜製剤の様々な組成物

【0107】
実施例5−ブプレノルフィンを包含する膜の細片のCmax及びAUCinfレベル
2mgから16mgの用量でブプレノルフィンを含む、5つの膜製剤組成物を調製した。下記表5はブプレノルフィンを含む膜組成物の様々な用量レベルでのCmax及びAUCinfレベルを示す。

表5−ブプレノルフィンを包含する膜の細片におけるCmax及び
AUCinfレベル

【0108】
実施例6−In Vivo調査のための膜調製
ブプレノルフィン/ナロキソン錠剤及び膜製剤の生物学的利用能を決定するためのin vivo調査で使用するため、膜製剤を調製した。具体的には、膜が錠剤の製剤と生物学的同等な効果を提供するかどうかを決定するために、膜を試験した。
8mgブプレノルフィン及び2mgナロキソンを含む3つの膜製剤を調製し、それぞれ異なるpHに緩衝剤処理した。最初の膜は緩衝剤を何も含まず、約6.5の局所pHを示した。2番目の膜は約3−3.5の局所pHレベルに緩衝剤処理した。3番目は約5−5.5の局所pHの値に緩衝剤処理した。製剤を下記表6に示す。

表6−様々なpHレベルにおける試験膜の製剤

【0109】
実施例7−pH6.5を有する膜のIn Vivo吸収分析
6.5の局所pHを有する膜の膜製剤組成物を分析した。具体的には、実施例5で調製した試験製剤1をブプレノルフィン及びナロキソンの吸収を判定するためin vivoで分析した。比較の膜を単回用量の錠剤(Suboxone(商標))によって提供されたブプレノルフィン及びナロキソンの吸収と比較した。試験膜を、Suboxone(商標)錠剤と生物学的同等な効果を提供するかどうか判定するため比較した。
約6.5の局所pHを有する試験製剤1の結果を、単回用量の錠剤と比較して下記表7及び8に示す。

表7−試験製剤1のブプレノルフィンのIn Vivo吸収データ


表8−試験製剤1のナロキソンのIn Vivo吸収データ

確認されるように、in vivoのデータは、6.5の局所pHにおける膜製剤からブプレノルフィンが非常によく吸収されることを示し、及びSuboxone(商標)の単回用量の錠剤において見られる吸収と厳密に適合した。しかしながら、吸収はナロキソンでも最大となってしまい、これは望ましいことではない。ブプレノルフィン及びナロキソンの組み合わせ及び6.5の局所pHを有する膜は、ブプレノルフィン及びナロキソン両方において単回用量のSuboxone(商標)錠剤と生物学的同等な効果を提供しないと判定された。
【0110】
実施例8−pH5−5.5を有する膜のIn Vivo吸収分析
6.5の局所pHを有する膜におけるブプレノルフィン及びナロキソンの吸収を判定したように、5−5.5の局所pHを有する膜の膜製剤組成物を分析した。具体的には、実施例5で調製した試験製剤3を、ブプレノルフィン及びナロキソンの吸収を判定するためin vivoで分析した。比較の膜を単回用量の錠剤(Suboxone(商標))によって提供されたブプレノルフィン及びナロキソンの吸収と比較した。試験膜を、錠剤製品と生物学的同等な効果を提供するかどうか判定するため比較した。
約5−5.5の局所pHを有する試験製剤3の結果を、単回用量の錠剤と比較して下記表9及び10に示す。

表9−試験製剤3のブプレノルフィンのIn Vivo吸収データ


表10−試験製剤3のナロキソンのIn Vivo吸収データ

確認されるように、in vivoのデータは、局所pHの値が低くなるとブプレノルフィンの吸収が増加することを示した。局所pHが6.5から5.5に減少することによりブプレノルフィンの吸収が、単回用量のSuboxone(商標)錠剤の吸収よりも、より高い値へ移行しているように思われた。加えて、ナロキソンの値は、単回用量の錠剤と生物学的同等性を提供しなかった。このように、5.5の局所pHを有する膜は、ブプレノルフィン及びナロキソン両方においてSuboxone(商標)錠剤と生物学的同等な結果を提供しないと判定された。
膜の局所pHを5.5のレベルまで減少させることにより、ブプレノルフィンの吸収レベルが増加することが注目された。このように、ブプレノルフィン自体を包含する膜組成物を、約5.5のレベルまで緩衝剤処理して、増加した吸収を提供することが望ましいことがある。
【0111】
実施例9−pH3−3.5を有する膜のIn Vivo吸収分析
6.5及び5.5の局所pHを有する膜におけるブプレノルフィン及びナロキソンの吸収を判定したように、約3−3.5の局所pHを有する膜の膜製剤組成物を分析した。ブプレノルフィンの吸収は、5.5の局所pHで明示されたように、続けて増加すると想定された。従って3.5の局所pHにおいて、膜は錠剤と生物学的に同等にはならないと想定された。
具体的には、実施例5で調製した試験製剤2を、ブプレノルフィン及びナロキソンの吸収を判定するためin vivo分析した。比較の膜を単回用量の錠剤(Suboxone(商標))によって提供されたブプレノルフィン及びナロキソンの吸収と比較した。試験膜を錠剤製品と生物学的同等な効果を提供するかどうか判定するため比較した。
約3−3.5の局所pHを有する試験製剤2の結果を、単回用量の錠剤と比較して下記表11及び12に示す。

表11−試験製剤2のブプレノルフィンのIn Vivo吸収データ


表12−試験製剤2のナロキソンのIn Vivo吸収データ

確認されるように、in vivoのデータは、膜組成物の局所pHを約3−3.5まで減少させたとき、ブプレノルフィンの吸収が実質上単回用量の錠剤と生物学的に同等であることを示した。この結果は、pH分配仮説に従わないように思われたため、意外であった。さらに、約3−3.5の局所pHにおいては、ナロキソンの吸収が実質的に単回用量の錠剤と生物学的に同等であることが分かった。
このように、3−3.5の局所pHにおけるブプレノルフィン及びナロキソンを含む膜生成物は実質的にSuboxone(商標)の単回用量の錠剤と生物学的に同等であると判定された。従って、3.5以下の局所pHにおいてナロキソンを配合してその吸収を阻害し、かつブプレノルフィンを約5.5の局所pHにおいて配合することによりその吸収を最適化できることが明確となった。
【0112】
実施例10−膜及び錠剤におけるナロキソンの標準化された値
ブプレノルフィン及びナロキソンを8/2mg及び2/0.5mgの用量で含み、6.5から3.5までの異なる局所pHの値を有する、様々な膜組成物を調製し、分析した。データを標準化し、単回用量のSuboxone(商標)錠剤と比較した。結果を下記表13に示す。

表13−ナロキソンの膜における錠剤と比較して標準化された値

データは、とりわけ重要なのは局所pHだけではなく、製剤中に存在する酸の量もまた重要であるということを示している。8/2製剤から2/0.5製剤への(局所pH3.5における)改良がこの重要性を表している。8/2製剤は0.67である酸/ナロキソンの比率を有しており、この製剤が許容可能な生物学的同等性の結果のボーダーラインを提供した。対照的に、2/0.5製剤は3.5の局所pHにおいて2.68である酸/ナロキソンの比率を有しており、8/2製剤よりもより生物学的に同等な吸収の値を提供した。
実際、3.5の局所pHにおける2/0.5製剤は、AUC及びCmaxの標準化された値から分かるように、単回用量の錠剤よりもさらに低い口腔吸収を有する。これは、3.5の局所pHにおける膜製剤について錠剤製剤よりさらに低いナロキソンの吸収が起きたことを明示している。ナロキソンの吸収を減らす目安を考えるならば、2.68の緩衝剤の割合(緩衝剤/ナロキシン)で3.5の局所pHに緩衝剤処理された膜生成物が、Suboxone(商標)製剤よりもより良好な結果を提供するようである。
【0113】
実施例11−局所pH3.5及び局所pH5.5における2重膜製剤の吸収データ
約3.5の局所pHを有しかつその中に拮抗薬を含有する第1の膜の層、及び約5.5の局所pHを有しかつその中に作動薬を含有する第2の膜の層を有する、2重膜製剤を調製した。この2重膜製剤においては、第1の膜の層(拮抗薬を有する)は即溶性の膜であり、同時に第2の膜の層(作動薬を有する)は中度の溶性の膜である。上記調査からのデータを用いて、膜の中の生成物の様々な量の吸収の値を下記表14に提示する。

表14−作動薬の局所pHが3.5及びナロキソンの局所pHが
5.5における2重構造の膜の推定吸収データ

従って、0.5−4.0mgの量において、ナロキソンのCmaxレベルは約32.5から約260pg/mlまでの間であり、かつナロキソンのAUCは約90.5から約724時間×pg/mlまでの間であった。理解されるように、様々な型及びレベルの緩衝剤は吸収の値を増加又は減少させることができる。換言すれば、拮抗薬(すなわち、ナロキソン)の吸収を阻害しようとするときは、作動薬領域の特定の局所pH及び拮抗薬領域の第2の局所pHを選択することができる。これらの領域の局所pHは、領域に含まれる有効成分の量に依存し得る。製剤に包含された有効成分の量は、適切な吸収レベルを提供するために変更されてもよく、ミリグラム、ナノグラム、ピコグラムでの量、又は有効成分の任意の所望の量であってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ポリマー担体マトリクス;
b.治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び
c.作動薬の吸収を最大にするのに十分な緩衝剤を含む自立膜製剤組成物。
【請求項2】
作動薬が部分作動薬である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
作動薬がオピオイド作動薬である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
組成物が約4から約9の局所pHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
さらに、治療上効果のある量の拮抗薬又はその薬学的に許容可能な塩を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
組成物が第1及び第2の領域を含み、第1の領域が作動薬を含み、かつ第2の領域が拮抗薬を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
第1の領域が約4から約9の局所pHを有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
局所pHが約5.5である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
第2の領域が約2から約4の局所pHを有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
局所pHが約2である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ポリマー担体マトリクスが、少なくとも1つのポリマーを組成物の少なくとも25質量%含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
緩衝剤が約2:1から約1:5の緩衝剤対作動薬の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
組成物が少なくとも1つの自立膜形成ポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
作動薬が1用量あたり約2mgから約16mgの量で存在する、請求項1に記載の膜製剤組成物。
【請求項15】
緩衝剤が、クエン酸ナトリウム、クエン酸、及びこれらの組合せを含む、請求項1に記載の膜製剤組成物。
【請求項16】
緩衝剤が、酢酸、酢酸ナトリウム、及びこれらの組合せを含む、請求項1に記載の膜製剤組成物。
【請求項17】
a.ポリマー担体マトリクス;
b.治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;
c.治療上効果のある量の拮抗薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び
d.緩衝剤系を含む自立膜製剤組成物であって、緩衝系が、組成物が使用者の口腔内にある時間拮抗薬の吸収を阻害するのに十分な緩衝能力を有する自立膜製剤組成物。
【請求項18】
作動薬が部分作動薬である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
作動薬がオピオイド作動薬である、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
組成物が第1及び第2の領域を含み、第1の領域が作動薬を含み、かつ第2の領域が拮抗薬を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
作動薬が約4から約9の局所pHを有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
拮抗薬が約2から約4の局所pHを有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項23】
a.
i.ポリマー担体マトリクス;
ii.治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び
iii.作動薬の吸収を最大にするのに十分な量の緩衝剤を含む膜製剤組成物を提供し;及び
b.膜製剤組成物を患者へ投与する段階を含む治療方法。
【請求項24】
作動薬が部分作動薬である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
作動薬がオピオイド作動薬である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
作動薬が約4から約9の局所pHを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
組成物がさらに治療上効果のある量の拮抗薬又はその薬学的に許容可能な塩を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
拮抗薬が約2から約4の局所pHを有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
膜製剤組成物が患者の粘膜を通じて使用者に投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
膜製剤組成物が患者の粘膜に少なくとも1分間にわたって維持される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
a.
i.ポリマー担体マトリクス;
ii.治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;
iii.治療上効果のある量の拮抗薬又はその薬学的に許容可能な塩;
iv.約4から約9の作動薬の局所pHを得るために十分な量の第1の緩衝剤;
v.約2から約4の拮抗薬の局所pHを得るために十分な量の第2の緩衝剤を含む膜製剤組成物を提供し;及び
b.膜製剤組成物を使用者へ投与する段階を含む治療方法。
【請求項32】
組成物が第1及び第2の領域を含み、第1の領域が作動薬を含み、かつ第2の領域が拮抗薬を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
作動薬が部分作動薬である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
作動薬がオピオイド作動薬である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
a.
i.第1のポリマーマトリクス;
ii.治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び
iii.作動薬の吸収を最適化するのに十分な量の第1の緩衝系を含む第1の領域;及び
b.
i.第2のポリマーマトリクス;
ii.治療上効果のある量の拮抗薬;及び
iii.拮抗薬の吸収を阻害するのに十分な量の第2の緩衝系を含む第2の領域を含む自立膜製剤組成物。
【請求項36】
作動薬が部分作動薬である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
作動薬がオピオイド作動薬である、請求項35に記載の組成物。
【請求項38】
第1の緩衝系が、約4から約9の第1の領域の局所pHを提供するのに十分な量で存在する、請求項35に記載の組成物。
【請求項39】
第1の緩衝系が、約5.5の第1の領域の局所pHを提供するのに十分な量で存在する、請求項35に記載の組成物。
【請求項40】
第2の緩衝系が、約2から約4の第2の領域の局所pHを提供するのに十分な量で存在する、請求項35に記載の組成物。
【請求項41】
第2の領域が第1の領域の少なくとも1つの表面上に被覆される、請求項35に記載の組成物。
【請求項42】
第2の領域が第1の領域の少なくとも1つの表面に貼合される、請求項35に記載の組成物。
【請求項43】
治療上効果のある量の作動薬を含む第1の領域及び治療上効果のある量の拮抗薬を含む第2の領域を含み、約0.624−5.638ng/mlの作動薬のCmaxを有するin vivo血漿プロファイル及び約46.04−323.75pg/mlの拮抗薬のCmaxを有するin vivo血漿プロファイルを提供する経口溶解性膜製剤。
【請求項44】
作動薬が部分作動薬である、請求項43に記載の製剤。
【請求項45】
作動薬がオピオイド作動薬である、請求項43に記載の製剤。
【請求項46】
製剤が約5.431−56.238時間×ng/mlの作動薬の平均AUCを提供する、請求項43に記載の製剤。
【請求項47】
製剤が約102.88−812.00時間×pg/mlの拮抗薬の平均AUCを提供する、請求項43に記載の製剤。
【請求項48】
製剤が作動薬を約2から約16mg含む、請求項43に記載の製剤。
【請求項49】
製剤が拮抗薬を約0.5から約4mg含む、請求項43に記載の製剤。
【請求項50】
a.ポリマー担体マトリクス;
b.治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;
c.治療上効果のある量の拮抗薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び
d.約2から約4の拮抗薬の局所pHを得るために十分な緩衝系を含む自立膜製剤組成物。
【請求項51】
a.ポリマー担体マトリクス;
b.治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;
c.治療上効果のある量の拮抗薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び
d.膜製剤組成物が使用者の口の中に設置された際に拮抗薬の吸収を阻害し、かつ作動薬の吸収を最適化するのに十分な緩衝剤を含む自立膜製剤組成物。
【請求項52】
a.
i.第1のポリマーマトリクス;
ii.治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び
iii.膜製剤組成物が使用者の口の中に設置された際に作動薬の吸収を最適化するのに十分な量の第1の緩衝系を含む第1の領域;及び
b.
i.第2のポリマーマトリクス;
ii.治療上効果のある量の拮抗薬;及び
iii.膜製剤組成物が使用者の口の中に設置された際に拮抗薬の吸収を阻害するのに十分な量の第2の緩衝系を含む第2の領域を含む、自立膜製剤組成物。
【請求項53】
第1及び第2の緩衝系が同じである、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
a.膜形成組成物が、
i.ポリマー担体マトリクス;
ii.治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;
iii.治療上効果のある量の拮抗薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び
iv.膜製剤組成物が使用者の口の中に設置された際に作動薬の吸収を最適化するのに十分な量かつ拮抗薬の吸収を阻害するのに十分な量の緩衝剤を含む膜形成組成物を成型し;及び
b.自立膜製剤組成物を形成するためにその膜形成組成物を乾燥する段階を含む膜製剤組成物の形成方法。
【請求項55】
a.
i.ポリマー担体マトリクス;
ii.治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;
iii.治療上効果のある量の拮抗薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び
iv.約0.624−5.638ng/mlの作動薬のCmaxを有するin vivoでの血漿プロファイル及び約41.04−323.75pg/mlの拮抗薬のCmaxを有するin vivoでの血漿プロファイルを提供するのに十分な量の緩衝系を含む膜製剤組成物を提供し;及び
b.膜製剤組成物を使用者へ投与する段階を含む治療方法。
【請求項56】
a.
i.第1のポリマーマトリクス;
ii.治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び
iii.作動薬の吸収を最適化するのに十分な量の第1の緩衝系を含む第1の領域;及び
b.
i.第2のポリマーマトリクス;
ii.治療上効果のある量の拮抗薬;及び
iii.拮抗薬の吸収を阻害するのに十分な量の第2の緩衝系を含む第2の領域を含む自立膜製剤組成物であって、第2の領域が使用者の口腔内に設置された際に第1の領域よりも速い速度で溶解する自立膜製剤組成物。
【請求項57】
第1のポリマーマトリクスが中度の溶性のポリマーを含む、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
第2のポリマーマトリクスが即溶性のポリマーを含む、請求項56に記載の組成物。
【請求項59】
第1の緩衝系が約4から約9の作動薬の局所pHを提供するのに十分である、請求項56に記載の組成物。
【請求項60】
第2の緩衝系が約2から約4の拮抗薬の局所pHを提供するのに十分である、請求項56に記載の組成物。
【請求項61】
a.第1の膜形成組成物が、
i.ポリマー担体マトリクス;
ii.治療上効果のある量の作動薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び
iii.膜製剤組成物が使用者の口の中に設置された際に作動薬の吸収を最適化するのに十分な量の緩衝剤を含む、第1の膜形成組成物を成型し;
b.第2の膜形成組成物が、
i.ポリマー担体マトリクス;
ii.治療上効果のある量の拮抗薬又はその薬学的に許容可能な塩;及び
iii.膜製剤組成物が使用者の口の中に設置された際に拮抗薬の吸収を阻害するのに十分な量の緩衝剤を含む、第2の膜形成組成物を成型し;及び
c.第1の膜形成組成物及び第2の膜形成組成物を貼合して自立膜製剤組成物を形成する段階を含む膜製剤組成物の形成方法。
【請求項62】
第1の膜形成組成物が第1の膜形成組成物及び第2の膜形成組成物の貼合段階の前に乾燥される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
第2の膜形成組成物が第1の膜形成組成物及び第2の膜形成組成物の貼合段階の前に乾燥される、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
第1の膜形成組成物が第1の膜形成組成物及び第2の膜形成組成物の貼合段階の前に少なくとも部分的に乾燥される、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
第2の膜形成組成物が第1の膜形成組成物及び第2の膜形成組成物の貼合段階の前に少なくとも部分的に乾燥される、請求項61に記載の方法。

【公表番号】特表2013−501718(P2013−501718A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523938(P2012−523938)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/044490
【国際公開番号】WO2011/017484
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(507026110)モノソル アールエックス リミテッド ライアビリティ カンパニー (15)
【Fターム(参考)】