説明

舗装構造および舗装方法

【課題】競技時の衝撃を吸収でき安全性が高いことに加え、安定性が高く競技しやすく、成分の添加量によって、IAAF規格のような競技規格の求める各値の関係、値の範囲を実現できる、高性能な舗装構造とその舗装方法を提供する。
【解決手段】基層11の上に積層されるポリウレタン13を有する弾性を備えた中間層12と、中間層12の上に積層され凹凸表面に形成される表面層14と、を備え、中間層12は、弾性粒子13aを備える弾性整泡材13cと気泡13dとがポリウレタン13中に分散してなり、ポリウレタン13と弾性整泡材13cと気泡13dの体積が下記の式I及び式II:ポリウレタン13体積=V1、弾性整泡材13c体積=V2、気泡13d体積=V3のとき、0.55<V1/(V2+V3)<2.50…式I、0.70<V2/V3<3.00…式II、を満たすことを特徴とする舗装構造10とその舗装方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に競技用に敷設される舗装構造および舗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の競技用施設等においては、競技しやすく、かつ安全性が高い舗装構造の利用が求められている。中でも、セメントコンクリートやアスファルトコンクリート等の硬い基盤の上に施すポリウレタンの舗装構造は、物性が卓越している上に施工が容易な為、特にすぐれたものとして関心が高まっている。
【0003】
舗装構造の物性は、陸上競技において記録に大きく影響するため、品質規格が定められている。非特許文献1によると、日本陸上競技連盟規格では、硬度をJIS K−6253規格で40〜60の値としている。非特許文献2によると、IAAF(国際陸上競技連盟)では、衝撃減衰率(Force Reduction)の規格値を35〜50%の間としている。衝撃減衰率を高くすると安全性が高くなるが、従来の舗装構造では衝撃減衰率を高くすると硬度が減少する。舗装構造の硬度が減少し足場が柔らかくなりすぎると、競技において疲れやすい。また、IAAFでは垂直変位量(Vertical Deformation)の規格値を0.6mm〜2.5mmとしている。垂直変位量は垂直に力が加わった時の凹みの平均であり、大きすぎると足場の安定性等が低くなり競技しづらい。
【0004】
舗装構造の衝撃減衰率や硬度を調整するために、ポリウレタンに気泡や発泡体を混入する技術が開発されている。例えば、硬化前のポリウレタンに対して不活性ガスおよび整泡剤を添加して撹拌し、舗装構造に気泡を生じさせるメカニカルフロス(メカフロ)工法が、舗装構造の施工において現在広く用いられている。さらに、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)の特殊発泡弾性骨材をポリウレタンに混合する方法も用いられている。これらの技術を用いたものとしては例えば特許文献1がある。また、特許文献2においては、舗装に用いるポリウレタンに、有機系の微小中空体(中空粒子)を添加して、硬度を安定維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3343078号公報
【特許文献2】特許第2575776号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】2008日本陸連ルールブック(http://www.rikuren.or.jp/athlete/rule/)
【非特許文献2】IAAF PERFORMANCE SPECIFICATION FOR SYNTHETIC SURFACED ATHLETICS TRACS (OUT DOOR), 2003年(http://www.isss.de/publications/IAAF/IAAF%20%20Perf%20Spec%202003.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
舗装構造は、非特許文献1、2に定められた規格の物性の値を満たすことが求められる。しかしながら、特許文献1に記載されているようなメカニカルフロス工法は、使用する混合機械、施工時の気温や撹拌時間などの各種の条件によって、流込工法の場合にポリウレタン材配合組成物の整泡剤等による気泡の大きさ、分布が不安定となり、舗装構造の物性が大きく影響され、一般に望む物性へと調節するのは困難であった。また工法自体の施工にも熟練した施工者を必要とした。
【0008】
特許文献2の技術は、本発明者らの試験によると、規定の衝撃減衰率と垂直変位量を両立させるよう物性を特定して舗装構造を製造することは困難であった。舗装構造は、衝撃減衰率を上げようとすると柔軟になるが、舗装構造が柔軟になると垂直変位量は大きくなり過ぎるという問題がある。安全性と競技のしやすさを両立させ、非特許文献1、2の規格に定められた物性の値を満たすには、衝撃減衰率の上昇と垂直変位量を抑えることを両立させる必要があるが、従来の技術では、舗装構造の物性をそのように調整することは困難であった。
【0009】
また、特許文献1、2の技術で製造された舗装構造は、いずれも舗装構造の施工時の固化する前の流れにくさといったセルフレベリング性を調節するのが困難であり、特にセルフレベリング性が低くなることが多かった。
この理由として、図19に示すように、ポリウレタン130に含まれる気泡130eが大きすぎて軽い場合などは、気泡130eが浮き上がり、気泡130eの分布が上方へ偏ってしまう。この状態では、気泡130eが多量に含まれる上方の層130fのみが、流動性が高くなってしまう。こうした樹脂を敷設する際に、勾配のある敷設箇所に流し込むと、図20に示すように固化するより前に上方の層130fのみが流れ落ちる。
このため、従来の舗装構造は勾配に対して施工する際には厚みを均一に敷設することが難しく、凹凸や傾斜面への施工が困難であるという問題があった。
【0010】
上記した背景にかんがみ、本発明者らは、舗装構造の衝撃減衰率、垂直変位量、セルフレベリング性といった物性に対しては、舗装構造に用いるポリウレタンと、ポリウレタンに混入される弾性整泡材や空気の大きさ、体積比や分布といった混入条件が、大きな影響を及ぼしていることに着眼した。特許文献1、2の技術においては、施工時のこれらの混入条件が混合機械や気温、時間による影響を受けやすく、中空粒子の樹脂内部への分散性が不均一かつ不適切な条件となり、またポリウレタンへの中空粒子の混合時に該中空粒子が巻き込む気泡の大きさが不均一かつ不適切であり、その結果として、安定な物性の舗装構造を製造するのが困難となっていると思われた。
【0011】
そこで本発明者らは、これらの混入条件を検討することにより、衝撃減衰率の上昇と垂直変位量を抑えることの両立が可能な舗装構造を得るべく、鋭意研究を進めていった。そして、衝撃を大きく吸収でき、なおかつ衝撃による歪みの垂直変位量を小さく抑えられ、そのため安全性が高いことに加え安定性が高く競技しやすい高性能な舗装構造と、その舗装方法を得て、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の舗装構造は、基層上に積層されポリウレタンを含む弾性を備えた中間層と、該中間層上に積層され凹凸表面に形成される表面層とを備え、前記中間層は、ポリウレタン中に弾性粒子を備えた弾性整泡材と気泡とが分散され、ポリウレタンの体積V1と弾性整泡材の体積V2と気泡の体積V3とが、下記の式I及び式IIを満たすことを特徴とする。

0.55 < V1/(V2+V3) < 2.50 … I
0.70 < V2/V3 < 3.00 … II
【0013】
上記舗装構造によって好適に舗装するための舗装方法は、液状のポリウレタンに弾性粒子を備えた弾性整泡材を添加し、ポリウレタンの体積V1と弾性整泡材の体積V2と気泡の体積V3とが下記の式I及び式IIを満たすように気泡を生じさせつつ混練して舗装材とし、基層上に前記舗装材を積層して中間層とし、該中間層上に凹凸表面を有する表面層を積層して舗装構造とすることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、舗装構造の中間層は、ポリウレタン中に弾性整泡材と、微細粒子が巻き込んだ気泡を分散させた舗装材を用いて層状に敷設してなる。弾性整泡材は弾性粒子の弾性によってクッション性により衝撃を吸収し舗装構造の歪みを調節し、気泡はポリウレタン中に中空部分を与えることで衝撃を吸収し歪みを調節する。ポリウレタンと弾性整泡材と気泡の体積の関係が上記式I、IIの関係によって、衝撃の吸収による衝撃減衰率、歪みによる垂直変位量の値が競技場として適切な値に調整される。
競技時に競技者の着地の際に舗装構造の表層部において生じる衝撃減衰率が高度なものであっても、なおかつその垂直方向の歪変形量である垂直変位量が抑制される。さらに、中間層の結合力が均等に保たれる。硬度、衝撃減衰率、垂直変位量、比重といった物理的性質は、上記の式I、IIを満たしていれば温度や使用機械などの条件によって左右されにくい。表面が固形の弾性整泡材が添加されていることと、弾性整泡材と気泡が均一に分布していることで、セルフレベリング性が高い。中間層全体としては、中空の弾性整泡材と気泡によって比重が減少する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、衝撃吸収率が高く競技時の衝撃を吸収でき安全性が高いことに加え、垂直変位量が抑えられ安定性が高く競技しやすい。中間層の結合力が均等に保たれ、必要な硬度を均一に得られ、裂けにくく、基層との接着性も向上し耐久性が得られる。弾性整泡材の添加量の調節によって、IAAF規格のような競技規格の求める衝撃減衰率、垂直変位量の関係、値の範囲を実現でき、高性能な舗装構造が得られる。セルフレベリング性が高く、勾配に対して舗装した際にも、厚みが均一な舗装構造となる。舗装における作業性が高いという効果が得られる。弾性整泡材と気泡を含むことによって舗装材の比重が減少し、作業性が高まり、輸送や材料のコストの削減にも繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態の舗装構造を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態の舗装構造が平面に積層された際の概略図である。
【図3】本発明の実施形態の舗装構造が傾斜面に積層された際の概略図である。
【図4】弾性整泡材について説明する概略図である。
【図5】試験例1の垂直変位量とポリウレタン100g中の気泡の関係を示すグラフである。
【図6】試験例2の粒の頻度と粒径の関係を示すグラフである。
【図7】実施例3の裁断サンプルの粒の分布の上側トレース図である。
【図8】実施例3の裁断サンプルの粒の分布の下側トレース図である。
【図9】実施例4の裁断サンプルの粒の分布の上側トレース図である。
【図10】実施例4の裁断サンプルの粒の分布の下側トレース図である。
【図11】比較例1の裁断サンプルの粒の分布の上側トレース図である。
【図12】比較例1の裁断サンプルの粒の分布の下側トレース図である。
【図13】比較例3の裁断サンプルの粒の分布の上側トレース図である。
【図14】比較例3の裁断サンプルの粒の分布の下側トレース図である。
【図15】比較例13の裁断サンプルの粒の分布の上側トレース図である。
【図16】比較例13の裁断サンプルの粒の分布の下側トレース図である。
【図17】試験例3の間隙比eと垂直変位量の関係を示すグラフである。
【図18】試験例3のフィラー比e2と垂直変位量の関係を示すグラフである。
【図19】従来の舗装構造が平面に積層された際の概略図である。
【図20】従来の舗装構造が傾斜面に積層された際の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の舗装構造について、添付図面を参照しつつ説明する。
[基本的構成]
まず、本発明の実施形態に共通する舗装構造10の基本的構成について、図1を参照して説明する。
【0018】
舗装構造10は、例えば競技場等の砕石層や土などからなる地盤Bの上に硬質に舗装されているコンクリートやアスコン等の露出面の基層11の上に積層され、基層11に対して一般に表層と呼ばれる部位に用いられる。舗装構造10は複合弾性層などを有するすべての全天候舗装材に適用される。
【0019】
舗装構造10は、基層11の上に積層された中間層12と、該中間層12の上に積層された表面層14から概略構成され、中間層12に特徴がある。表面層14は、中間層12を保護しつつ競技におけるすべり等を防止する層である。表面層14は、無発泡のポリウレタンなどで形成され、表面を加工され、または粘性のポリウレタンを表層に塗布しローラー等を用いて凹凸に形成され、凹凸によりシューズグリップ性、すべり抵抗性、表面排水性、耐磨耗性、耐候性などを保有している。
【0020】
中間層12は、ポリウレタン13を有する層である。中間層12は1から2以上の層からなっている場合があり、例えば適度の弾性と硬度とを備え、衝撃の吸収による安全性や、反発弾性による使用感、記録性といった機能性に寄与する弾性層12aを備え、さらにその上に積層された、耐スパイク性などの耐久性を担う上塗り耐久層12bを備えている場合がある。また中間層12の上下にも適宜各種の機能を担う層が設けられる場合がある。例えば、中間層12が基層11との間に弾性素材を含有する複合弾性層を備える構造によって、舗装構造の弾性を調整することができる。弾性素材としてはラバーチップなどが挙げられる。
【0021】
中間層12には、ポリウレタン13中に弾性整泡材13cと気泡13dとが分散されている。中間層12が2以上の層からなる場合、弾性整泡材13cと気泡13dはすべての層に含むことも、いずれかの層に選択することもできる。例えば、弾性層12aにのみ弾性整泡材13cと気泡13dを含むことも可能である。
【0022】
ポリウレタン13は、従来の舗装構造にも用いられているもの、例えば主剤と硬化剤とからなる2液性常温硬化型のポリウレタンなどを利用でき、混合時に弾性整泡材13cを混合分散するといった工法で使用できる。ゴムチップなどの弾性素材を混合したもの、一液性ウレタン樹脂なども使用できる。
【0023】
弾性整泡材13cは、弾性を有し、ポリウレタン13中の気泡13dの含有状態を整えるものであり、弾性粒子13aを備える。弾性粒子13aは、弾性を有する粒状のものであり、弾性は外力で変形し力を取り去ると元に戻る性質、粒状とは小型で径が揃い、ここでは概ね5mm未満の物体であることを指す。弾性整泡材13cの素材、形態は、樹脂などの素材自体がクッション性を有する比重が軽く弾力がある素材や、中空やスポンジ状などの衝撃を緩和する構造を持つ形態が採用できる。中空で殻の薄い無機物のビーズなども使用できる。図1に示した例で用いられている、樹脂製の中空粒子13gは好適に用いられる。
弾性整泡材13cは、比重や施工時のポリウレタン13の粘度または粘性抵抗の大きさ、互いの表面の絡まりやすさ等によって、中間層12の上方に浮き上がらずに、上下方向および平面方向に略均一に分散している。
【0024】
弾性整泡材13cには、比重の調整、混錬の際の気泡13dを巻き込みと気泡13dの粒径の調整、均一性を高めるために表面処理、溶着などの処理を施すことができる。処理には、樹脂の表面を可塑剤等で湿化させたもの、前記中空粒子13gを相互に熱などで溶着させたもの、およびこれらの併用がある。図1に示した例では、樹脂製の中空粒子13gに対して、中空粒子13gよりも比重が大きい微粒子13bを表面に付着させる表面処理を行なっている。
【0025】
気泡13dは、弾性整泡材13cと共に中間層12に分散されている気体の泡である。気体の種類は問わないが、例えばポリウレタン13に弾性整泡材13cが混錬される際に、弾性整泡材13cに巻き込まれて中間層12に添加される空気の泡がそのまま気泡13dとなる。
【0026】
ポリウレタン13と弾性整泡材13cと気泡13dの体積比は、ポリウレタン13の体積=V1 弾性整泡材13cの体積=V2 気泡13dの体積=V3のとき、下記の式I及び式II、

0.55 < V1/(V2+V3) < 2.50 … I
0.70 < V2/V3 < 3.00 … II

を満たすように混合されている。
【0027】
式Iについては、中間層12におけるポリウレタン13の体積V1と、それ以外の体積(V2+V3)の比によって、中間層12の衝撃減衰率や垂直変位量といった物理的性質を好適に調整することのできる範囲が特定される。
V1/(V2+V3)=間隙比eは、0.55〜2.5の値である必要があるが、衝撃減衰率の規定値35〜50%と垂直変位量0.6〜2.0を充分に確保するには、間隙比eは0.57〜2.0の値であれば特に望ましい。
【0028】
式IIについては、気泡13dは弾性整泡材13cをポリウレタン13に添加、混錬する際に入ってくるものであるが、この気泡13dの大きさと分散の度合いをそれぞれ均一とするには、弾性整泡材13cと気泡13dの体積比V2/V3も特定する必要がある。この範囲を外れ、気泡13dが均一でなくなると、中間層12の物性を安定させることができない。
V2/V3=フィラー比e2は、0.7〜3.0の値である必要があるが、垂直変位量を最適な値とするには0.8〜2.8が望ましい。
【0029】
ついで、この実施形態の舗装構造10の舗装方法について説明する。
弾性整泡材13cを液状のポリウレタン13に添加し、ポリウレタン13の体積=V1、弾性整泡材13cの体積=V2、気泡13dの体積=V3のとき、下記の式I及び式II:

0.55 < V1/(V2+V3) < 2.50 … I
0.70 < V2/V3 < 3.00 … II

を満たすように、気泡13dを生じさせて混練し、舗装材とする。
【0030】
気泡13dが生じ、上記の割合を満たすようにするためには、機械的にポリウレタン13を泡と混合する方法、既技術のメカフロ工法などを採用し調整できるが、上記の表面処理や溶着によっても空気発生量を増やすことができ、分散効率を上げ、均一に分散し気泡を生じやすくすることができる。
【0031】
この舗装材を基層に積層して、中間層12とする。中間層12のポリウレタンが乾燥し安定してから、中間層12の上に表面層14を積層する。表面層14は、中間層12よりも粘性を高くした素材であれば任意であり、例えば中間層12と同一のポリウレタンなどを凹凸表面に形成する。
【0032】
ついで、上記構成の舗装構造10の作用について説明する。
弾性整泡材13cは、ポリウレタン13中に均一に分散していることで、その弾性により、中間層12の衝撃減衰率を上げる。さらに、ポリウレタン13中で整泡すなわちかつ気泡13dの巻き込み、位置関係によって、気泡13dのポリウレタン13への含有状態を調整する。すなわち、殻を有する弾性整泡材13cがポリウレタン13に入り、ぶつかりあうことにより、殻をもたない気泡13dの粒径が調整され、粒径の調整された弾性整泡材13cと気泡13dがポリウレタン13内に分布する。その結果、舗装構造10の品質と物理特性が安定する。
また、弾性整泡材13cは、舗装材に対してポリウレタン以外の流動性が低い素材が含まれていることで、セルフレベリング性を高め、勾配に対して舗装した際にも厚みが均一な舗装構造10となっている。
【0033】
弾性整泡材13cは、ポリウレタン13に混錬される際に、気泡13dを巻き込んである程度寸断するので、気泡13dの大きさが均一となり、大型で浮かび上がりやすい気泡13dが上方へ浮き上がってしまうといったことがないので、気泡13dを中間層12に均一に分散させる。また、弾性整泡材13cがポリウレタン13中に満たされていることで、気泡13dが上方へ移動することを妨げる。結果として、弾性整泡材13cと気泡13dが中間層12に均一に分散された状態となっている。その結果、ポリウレタン13、弾性整泡材13c、気泡13dの体積の関係を、式Iと式IIの範囲にすることを可能としている。
【0034】
上記の式I、式IIの条件となるよう、弾性整泡材13cがポリウレタン13中に混合し撹拌すると良好に分散し得、これを中間層12の舗装材に用いると、弾性整泡材13cが均一に分散した状態に維持されて固化する。この中間層12は、衝撃を大きく吸収でき、なおかつ衝撃による歪みの垂直変位量を小さく抑えられる。さらに、必要な硬度が得られ、裂けにくく、優れた耐久性を有する。また、中間層12が基層11から剥離しにくくなり接着性も向上する。硬度、衝撃減衰率、垂直変位量、比重といった物理的性質が、温度や使用機械などの条件によって左右されにくい。
【0035】
なお、上記の式Iと式IIの範囲は、特に敷設後の競技や敷設時の施工において望ましい、衝撃減衰率、垂直変位量、またセルフレベリング性といった物性を満たすための条件として、実験的に求まったものである。
【0036】
本構成の舗装構造10は、中間層12に弾性整泡材13cと気泡13dの双方を均一に分散されているため、ゆっくりした衝撃から瞬発性の高い衝撃の両方に応じて反発を返すことができ、硬度と衝撃減衰率が上昇し、競技時に舗装構造が歪む垂直変位量を抑えることができると思料される。さらに、弾性整泡材13cと気泡13dが十分に分散し、偏って集合していないので、中間層12の結合力が均等に保たれるために硬度と接着性が得られ、中間層12の構造が均一であるため硬度、衝撃減衰率、垂直変位量、比重といった物理的性質が、温度や使用機械などの条件によって左右されにくい。
【0037】
また、弾性整泡材13cは液体の流動性を抑え、中間層12のセルフレベリング性を高めている。弾性整泡材13cは、気泡13dが上方へ移動することを妨げ、結果として、図2に示すように空気を含む粒12h(弾性整泡材13c、気泡13dを含む)が均一に分散された状態を作っている。そのため、中間層12全体が均一な粘性抵抗が保たれるために一定厚さの舗装厚が得られ、図3に示すように傾斜面に舗装した場合も一部の粘性が低いポリウレタンが流れて厚みに不均一が生じるといったことがない。また粘性が全体として一様なので、凹んだ場所などでも平均化(レベリング)しやすくなるセルフレベリング性を持つ。
【0038】
なお、本構成の舗装構造10は、中間層12に微細な気泡13dを多く含むことで、微小中空体(中空粒子13gなど)のみを備える場合よりも比重が低下し、作業性とコストの面でも有利となる。
[実施形態]
【0039】
図1は、本発明の実施形態に係る舗装構造10の側面断面図である。
【0040】
中間層12は、基層11の上に積層された弾性層12aと、その上に同一のポリウレタン13を用いて弾性層12aよりも硬度を高くした所謂フルウレタン層を形成した上塗耐久層12bからなる。弾性層12aは厚み8〜9mm、上塗耐久層12bは3〜4mmである。表面層14は、上塗耐久層12bに、上記同一のポリウレタン13を粘度(または粘性抵抗)を高く変性して、ローラーもしくは吹き付けにより仕上げたエンボス層により、凹凸表面に形成されている。表面層14の厚みは1〜4mmで、表面はトップコートで上塗りされ、スパイク等が刺さることによる傷が生じにくいようになっている。
【0041】
弾性整泡材13cは、本実施形態では、弾性粒子13aである中空粒子13gの表面に該中空粒子13gよりも比重の大きい微粒子13bを備えてなる。
【0042】
中空粒子13gとは、熱可塑性樹脂などよりなり、内部が空洞の粒子である。中空粒子13gは、塩化ビニリデン、MMA、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のコポリマーからなる外殻を備える。
【0043】
中空粒子13gの粒径は50〜300μmである。中空粒子13gの粒径が小さすぎると衝撃減衰率などの効果が小さく、粒径が大きすぎると比重が小さくなって、ポリウレタン13への混合時に良好な分散が行えない。良好な分散を行うための比重は0.01〜0.10である必要があり、微粒子13bの付着によって均一な分散が行える範囲としては0.02〜0.05が望ましい。中空粒子13gの中空部分の占める体積の比率は95〜99.98%である。熱可塑性樹脂の外殻は前記製造法によって中空粒子13gが膨張した際に充分に薄くなり、中空部分の体積の比率は98〜99.92%が望ましい。さらに、粒径はばらつきが少ない方が中間層12は均一となり、図に示した例では粒径は80〜130μmである。
【0044】
微粒子13bは、弾性粒子13aである中空粒子13gの表面に均一に分散するよう備えられている中空粒子13gよりも小さな粒子である。弾性粒子13aよりも比重が大きく、弾性整泡材13cの浮遊を抑制し分散を促進し、ポリウレタン13中に均一に分散させる役割を果たすものである。微粒子13bの材料としては、無機充填材の炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン(アナターゼ)、酸化アルミニウム、ホワイトカーボン、珪藻土、ドロマイト等が使用できる。
【0045】
中でも、炭酸カルシウムはポリウレタンの充填材または体質顔料として元々含まれているため好適に用いることができる。炭酸カルシウムは、石灰石を粉砕・分級して製造される重質炭酸カルシウムと、化学的に製造される軟質炭酸カルシウムとに分けられる。微粒子13bには、なかでも形状が粗面であり、単価の安い重質炭酸カルシウムが適している。軟質炭酸カルシウムも使用できるが、やはり球状や直方体よりも粗面形状のものの方が好ましい。粗面である方が、抵抗力が大きく、ポリウレタン13との混練時に巻き込まれる気泡13dの大きさや分散が均一になると思料される。
【0046】
微粒子13bは粒径3〜20μmで、微粒子13bの粒径が小さすぎると、気泡13dの発生が少なく、弾性整泡材13cを均一に分散する効果が得られず、また弾性整泡材13cの合計比重が軽すぎて作業時に弾性整泡材13cが飛散しやすく、作業性が悪くなり、均一な混合にも悪影響を及ぼす。微粒子13bの粒径が大きすぎると、中間層12の合計比重が重くなり、弾性整泡材13cと気泡13dとのバランスが崩れて硬度が下がり、垂直変位量が上昇しすぎる。さらには、作業性およびコストが悪化する。粒径3〜10μmが最も望ましく、ポリウレタン13に混合する際に均一で微細な気泡13dを巻き込むことができる。微粒子13bの比重は0.3〜4.0が望ましい。軽すぎると大量に添加しなくてはならず、またうまく付着しないため、弾性整泡材13cの比重の調整が容易でない。重すぎると弾性整泡材13cが重くなり、分散した中間層12の比重が大きくなりすぎてコスト面、作業性が低下するので適切でない。特に2.5〜3.0前後が好適である。
【0047】
微粒子13bは中空粒子13gの外殻に、表面積の割合で10〜60%程度埋め込まれていることが望ましい。適切な表面積を占めることで、微粒子12gがポリウレタン13に撹拌され分散される際に、微細な気泡13dを有効に巻き込む。
【0048】
図に示した例では、微粒子13bは平均粒径7.0μm、およそ比重2.7の炭酸カルシウムを用いている。
【0049】
また、この中空粒子13gに対する微粒子13bの重量比は、65〜85重量%が望ましい。重量比が小さすぎ、すなわち微粒子13bの量が少なすぎるとポリウレタン13への中空粒子13gの分散における微粒子13bの効果や、弾性整泡材13cの飛散防止効果が期待できない。重量比が大きすぎ、微粒子13bの量が多すぎてもその大半は中空粒子13gに付着できず効率的でない。好ましくは重量比70〜80%であると、好適な微粒子13bの付着状態による、製品のばらつきも最小限となる。
【0050】
弾性整泡材13cの全体としての比重の値は、0.01〜0.30が望ましい。この範囲を外れるとポリウレタン13に対して有効に分散しない。望ましくは0.02〜0.20である。ポリウレタン13に対する弾性整泡材13cの重量比は、0.8〜13.0重量%である必要があり、少なすぎると衝撃減衰率の向上や垂直変位量の抑制、重量比削減、飛散防止等の望ましい物性が得られず、多すぎると作業性が低下し、硬度も低下する。IAAF基準や競技に望ましい物性を得るためには、0.9〜8.0重量%が望ましい。
【0051】
こうして得られた舗装構造10は、衝撃減衰率を35〜50%としつつ、垂直変位量が0.6〜2.5mmの範囲内にある必要がある。
衝撃減衰率および垂直変位量は、IAAF規格に示される衝撃減衰率(Force Reduction)と垂直変位量(Vertical Deformation)であり、それぞれの正確な定義および測定方法は非特許文献2に示されている。
本実施形態では垂直変位量の値を、弾性整泡材13cの含有量によって調節することができ、競技者の疲労軽減のためには、垂直変位量は特に0.6〜2.0であることが望ましい。
【0052】
また、本構成の舗装構造10は、衝撃減衰率FRと垂直変位量VDの関係を示す下記の式IIIにおいて、A≦0.1267の範囲内にある。

VD=A×FR−3.8333 … III

一般に舗装構造において、衝撃減衰率FRを調整しようとすると垂直変位量VDの値は大きく変化しやすい。上記の式IIIおよびA≦0.1267の値は、衝撃減衰率FRを35〜50%としつつ垂直変位VDが0.6〜2.5という条件から、垂直変位量VDの変化が少なくなる(VDとFRの関係をプロットしたとき、傾きが小さい)条件を導き出したものである。
さらに、本願の実施例より、A≦1.0であるとさらに衝撃減衰率と垂直変位量の値の関係を調整しやすく、安定した舗装構造の物性が得られるので望ましい。
【0053】
なお、本構成の舗装構造10は、舗装構造全体を薄くしても上記の衝撃減衰率と垂直変位量の関係を維持できる。
舗装構造10の厚みを15.0mm以下、望ましくは13.5mm以下とすることで、従来陸上競技場の弾性舗装体で標準的に用いられる平均厚さ13.0mmとし、施工性の容易性やコスト低減、塗布積層厚の均一施工性、乾燥硬化時間の早さなどの面から有利な舗装体を得ることができる。
さらに、舗装構造10の厚みを12.0mm以下、さらに望ましくは10.0mm以下とすることができ、上記A≦1.0とする特定範囲を選択することにより上記VDとFRの関係を維持することができる。この場合、広範囲やさらに低コストで敷設する必要がある場合でも、競技者に対する安全性と疲労の軽減を確保できる。
【0054】
ついで、この実施形態の舗装構造10の製造方法について説明する。中間層12以外についてはこの実施形態に特有の構成はないので、基本的構成の説明を援用する。
まず、弾性整泡材13cを製造する。中空粒子13gの製造方法について述べると、液状の低沸点炭化水素を熱可塑性高分子殻(シェル)で包み込んだものを一般に80〜190℃に加熱すると、高分子の殻が軟化し、中の液状炭化水素が気体に変化し、その圧力でカプセルが膨張し、体積で50〜100倍になる。膨張工程が終了し、熱が冷めると殻が再硬化し、高分子の殻に内部に空洞を持つ、中空粒子13gとなる。
膨張工程の終了後、中空粒子13gの温度が常温程度まで低下した際に、微粒子13bを散布させると、殻の高分子が冷めて収縮する際に、微粒子13bの一部が該外殻に埋め込まれ、強力な付着力を備える。このように製造することで、中空粒子13gへの微粒子13bへの付着量を調整することができ、脱落しにくく付着させた弾性整泡材13cとすることができる。
【0055】
ついで、この弾性整泡材13cを液状のポリウレタン13に添加し、中間層12とする。上記弾性整泡材13cを液状のポリウレタンに15〜110体積%、望ましくは20〜100体積%となるよう添加し、混錬することで、式Iと式IIの範囲を満たすことができる。混錬は、ミキサー等を用いて、液状のポリウレタン13内に弾性整泡材13cが均一になるよう混合することで、気泡13dが巻き込まれる。気泡13dの発生を調整するために、従来知られている整泡剤または消泡剤を用いてもよい。調整のしやすさから、混錬は常温(20〜25℃)付近で行うことが望ましい。しかし、本構成では、弾性整泡材13cの働きのために、混錬の機器や温度の条件によっては気泡13dの粒径や分布はあまり大きな影響を受けず、上記の条件を保つことができる。
【0056】
本実施形態の舗装構造10は、中空粒子13gを弾性整泡材13cに用いることによって、中空粒子13gの体積と比重の関係によって、ポリウレタン13と弾性整泡材13cと気泡13dの体積の関係を適切に保つのに特に適している。添加量の調整と混錬によって、これらの関係を容易に調整することができる。また、中空であることで衝撃を吸収するほか、中間層12の熱伝導率を下げることができる効果もある。舗装材には中空部分が多くなることで、使用するポリウレタン13が少量となり、舗装材全体としては比重が下がることで、材料および敷設時の輸送や作業のコストが抑えられる。
【0057】
上記構成によれば、中空粒子13gと微粒子13bの粒径、重量比によって、弾性整泡材13cをポリウレタン13に適度かつ均一に分散した中間層12が得られ、この中間層12を有する舗装構造10は、硬度、衝撃減衰率、垂直変位量、比重調整、遮熱性といった性能を好適に保有し得る。炭酸カルシウムの粒径は中空粒子13gに好適に付着でき、中空粒子13gの粒径と微粒子13bの重量比によって、敷設時において弾性整泡材13cの飛散を防止させ、ポリウレタン13への均一な分散を好適に行うことができる。
【0058】
舗装構造10の中間層12は、微粒子13bを表面に有する中空粒子13gからなる弾性整泡材13cをポリウレタン13中に混練し、弾性整泡材13cと、微粒子13bが巻き込んだ気泡13dをほぼ均一な状態に分散させた舗装材を用いて層状に敷設してなるので、中間層12として層状に敷設した状態においても良好な分散状態を保持する。また、弾性整泡材13cは微粒子13bの突起を多く有しているため、気泡13dのみや中空粒子13gのみに比べても液体の流動性を抑え、中間層12のセルフレベリング性を高めていると思料される。弾性整泡材13cは微粒子13bを備えるために重量が増加し、ポリウレタン13への分散において飛散が防止されるので舗装材に対して弾性整泡材の添加量を一定に分散でき、作業性も向上する。
【0059】
弾性整泡材13cの添加量によって、硬度、衝撃減衰率、垂直変位量、比重といった物理的性質を調整でき、IAAF規格のような競技規格の求める各値の関係、値の範囲を実現でき、高性能な舗装構造10が得られる。
【0060】
弾性整泡材13cが表面に微粒子13bを備えているので、弾性整泡材13cは微粒子13bのために中空粒子13gのみよりも重量が増加し、ポリウレタン13への分散において飛散が防止されるので、舗装材に対して弾性整泡材13cの添加量を一定に均一に分散でき、さらに輸送や作業等の操作に適する。
【0061】
[その他の実施形態]
本発明の弾性整泡材13cは、上記以外にも様々な形態を使用することができる。各種の弾性整泡材についての例を図4に示す。
弾性整泡材Sは、樹脂製の中空粒子13gなどをそのまま未処理で弾性粒子13aとして使用するものである。
弾性整泡材SPは、前記実施形態の例のように、樹脂製の中空粒子13gである弾性粒子13aに、表面に微粒子13bを有する表面処理を施しているものである。
【0062】
弾性整泡材SSは、弾性整泡材S同士を2個〜数個溶着させたものである。溶着させる手段としては、熱を加える方法、接着するため可塑剤や接着剤を加える方法などがある。特に、中空粒子13gを膨張させる際に熱を加えた後に、表面が冷めるよりも前に中空粒子13gの表面同士を接触させるよう操作することで、特に他の薬剤等を用いなくとも、好適に複数個の中空粒子13gを溶着させることができる。また溶着する時の熱や接触させる時間の調節により、溶着する平均の個数を調整することができる。
【0063】
弾性整泡材が複数溶着したものであると、表面積が増加することで、弾性整泡材13cのポリウレタンに混錬される際、気泡13dに及ぼす作用が大きくなり、気泡13dを巻き込む量、ポリウレタンへの分布や、気泡13dの径を略均一に保ちやすくなり、体積の関係を式I、IIの範囲に保ちやすくなる。また、表面処理した弾性整泡材SS全体としての自重が大きくなり、ポリウレタンに混錬する作業の際に飛散しづらくなる。
【0064】
弾性整泡材SWは、弾性整泡材Sに対して、樹脂表面を湿化させる処理を行ったものである。湿化とは、硬化した高分子の表面に液体を付着するなどで、液性を加え溶着表面13fを設けることを指す。液体は水などの水性溶媒を含めどういった液体でも構わないが、樹脂表面を濡らしやすい液体、PPGや、DINP,DOP等の可塑剤を好適に用いることができる。PPG、DINP、DOPはポリウレタンの硬化剤に含まれていることがあり、その場合は入手のしやすさやポリウレタンの品質に影響が少ないなどの理由から、硬化剤に含まれているものを用いるのが特に望ましい。
【0065】
例えばPPGを用いて湿化させる場合、ポリウレタンの硬化剤には分子量2000から5000程度のPPGが用いられているが、湿化に使用するPPGをこの硬化剤の分子量と一致させることで、出来上がったポリウレタン舗装材の品質に悪影響を及ぼすことが少ないと予想される。分子量が低いと、主剤側のイソシアネートを通常のPPGよりも多く消費するため、反応過程においても悪影響がある。NCOindexのバランスを崩す原因になる。添加量的には少量であるが、分子量が小さいとOHV(水酸基価)も大きくなり、イソシアネートを過剰に食ってしまう。また、分子量が高すぎても混合する際の粘度に影響があり好ましくない。分子量10,000などでは、OHVは小さいが、材料そのものの粘度が上がる。これは、湿化時にも、弾性整泡材混合時にも不利になる。
【0066】
湿化させる方法としては、前記した中空粒子13gの製造時、加熱膨張の後に冷やし再硬化した後の段階で、液体に浸漬することによって湿化させる。
【0067】
湿化することで、液体の粘性によって溶着表面13fの摩擦力が増加し、気泡13dを巻き込む際に巻き込みやすく、分散しやすく、また気泡13dを摩擦によって砕くようにして径を調整しやすい。また、溶着表面13f同士が溶着し、複数の弾性整泡材13cが溶着するものも含まれることになるので、表面積による気泡13dへの作用や、自重において湿化と複数溶着することの相乗効果も発揮する。
【0068】
これら微粒子を配する、湿化、溶着などの手段で処理を行った弾性整泡材13cは、いずれも弾性整泡材13cの比重や、添加の際に巻き込まれる気泡13dの量、サイズなどを調整する効果を奏することが確認されている。若干コストは高くなるが、これらの手段を適宜複数組み合わせた形態の弾性整泡材を使用することも可能であり、特に飛散防止効果では高いものが得られる。
図4に示したように、弾性整泡材SPWは、微粒子13bを設ける処理と湿化させる処理を併用したものである。表面に微粒子13bを有する弾性整泡材SPに対して、上記の弾性舗装材SWと同じ手段で表面を湿化させる処理を行うことが望ましい。
弾性整泡材SSPは弾性製法材SSに微粒子13bを有する表面処理を施したもの、弾性整泡材SSWは弾性製法材SSを湿化させたもの、弾性整泡材SSPWは弾性整泡材SSに微粒子13bを有する表面処理と湿化とを併用したものである。
また、これらの各種の表面処理を行った弾性整泡材を、それぞれ複数種類組み合わせたものを用いることも可能である。
【0069】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含まれるものである。
【実施例】
【0070】
[試験例1]
表1に示す各実施例、試験例に対して、下記にて舗装材を配合した。ポリウレタンは、ポリウレタン主剤(三井化学ポリウレタン株式会社製、ハイプレンP−306)、ポリウレタン硬化剤(三井化学ポリウレタン株式会社製、TSR−82M)を各100部ずつ混合した。ここに、以下の添加物(1)〜(6)を表1(実施例)、表3(比較例)に示す配合量に従って配合した。
【0071】
(1)092DE120d302(弾性整泡材S):熱膨張性マイクロカプセル(日本フィライト株式会社)、平均粒径120μm、比重0.031、中空の占める割合99.94%。
(2)EMC120α(弾性整泡材SP):熱膨張性表面処理マイクロカプセル(日本フィライト株式会社)アクリロニトリルとビニリデンクロライドを主とする各種コポリマーからなる熱可塑性樹脂の外殻を、内包するイソブタンのガスを加熱させることによって膨張させ、中空粒子(中空の占める割合99.94%、比重0.03)を形成する際に、熱で軟化している外殻に炭酸カルシウムの微粒子が埋め込まれてなるもの。微粒子は粒径3〜20μmで平均粒径7μm、比重2.7、中空粒子に対して75重量%。弾性整泡材全体として、平均粒径120μm、比重0.091〜0.110。
(3)MK添加剤(整泡剤):従来のメカニカルフロス工法のための整泡剤。(三井化学ポリウレタン株式会社製)
(4)EMC120AW(弾性整泡材SPW):熱膨張性マイクロカプセル(日本フィライト株式会社)、(2)に対して、DINPで湿化させたもの。微粒子は粒径3〜20μmで平均粒径7μm、比重2.7。中空粒子:微粒子:DINPの重量比は、20:70:10重量%。弾性整泡材全体として、平均粒径120μm、比重0.135〜0.141。
(5)F−80DE(弾性整泡材SS):複数の中空粒子を熱溶着させたものを含むもの。膨張性マイクロスフィアー(松本油脂製薬株式会社)、AN系コポリマー製、粒径90〜110μm、平均粒径100μm、平均比重0.028。
(6)FN−105DE(弾性整泡材SW):中空粒子の表面をPPGで湿化させたもの。膨張性マイクロスフィアー(松本油脂製薬株式会社)。AN系コポリマー製、平均粒径130μm、比重0.024の中空粒子を、分子量2000、OHV=54〜58、中空粒子に対して25重量%のPPGによって湿化。弾性整泡材全体として、比重0.088〜0.1244、平均比重0.103。
【0072】
ポリウレタンと弾性整泡材を混錬する際は、2.5分間ポリウレタンの主剤と硬化剤を混合した後、弾性整泡材を投入し、手動でほぼ均一に上下に分散するよう撹拌してからハンドミキサーで約1分間、計3分30秒撹拌した。撹拌時の温度は常温(23℃)で行った。
この液状の混錬物を、13mm厚となるよう敷設して施工した。
【0073】
施工後、養生期間として1週間を挟み、比重を計測し得られた比重から100g中に含まれる熱膨張性マイクロカプセル添加物の体積と巻込んだ空気の体積を求め、非特許文献2のIAAF規格の試験によって衝撃減衰率、垂直変位量を求めた。さらに、勾配に対する寸法安定性、経済性も考慮した。試験結果を表1〜4に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
実施例は、いずれも間隙比eが式I,フィラー比e2が式IIの規定の範囲内となっている。この実施例のいずれも、垂直変位量が0.6〜2.5の規定値に収まっている。添加剤の添加量によって衝撃減衰率が上昇し、しかも垂直変位量の上昇は少ない。
比較例は、間隙比eについては範囲外のものがあり、フィラー比e2はいずれも範囲外となり、両方が範囲外のものはない。比較例のデータは、衝撃減衰率、垂直変位量が規定外のものが見られた。
したがって、本発明の舗装構造は、添加剤である、微粒子を有する中空粒子の添加量によって衝撃減衰率を調整でき、しかも垂直変位量は一定値に保つことができることが示された。
なお、比較例7〜14の(3)MK添加剤のみを添加したものが、弾性整泡材を加えずに整泡のみを行う添加剤を加える、従来工法のメカニカルフロス工法である。この比較例7〜14では、ポリウレタン100g中の空気が40ccを越えると軒並み垂直変位量の増加も著しくなった。それに対して(3)以外、弾性整泡材を添加剤として用いたもの、特に(2)の空気と殻を持った中空粒子に微粒子を組み合わせたものでは、100ccを越えても垂直変位量の増減はほとんど見受けられず、この弾性整泡材が特に好適に施工できることが示された。
【0079】
図5に、表1〜4の結果について、縦軸を垂直変位量、横軸をポリウレタン100g中の気泡量としたものを示す。実施例は衝撃減衰率が高くなっても垂直変位量の変動が少なく、比較例は垂直変位量の上昇が著しいことが示された。
【0080】
[試験例2]
上記の実施例2、実施例6、比較例11の舗装材(中間層)のサンプルを、上中下で3等分になるよう断面を裁断した裁断サンプルを作成し、それぞれ実施例23、実施例24、比較例21とした。これらの3等分したうち中間の裁断サンプルの、上面の断面を「上側」、下面の断面を「下側」とし、それぞれの断面に確認できる粒状物、空気の粒径を調査し、粒度分布を作成した。
粒径の調査は、断面を200倍に拡大できるマイクロスコープで撮影し、1.6×1.6の四角2個分の大きさをA4サイズに拡大し、それぞれの粒径をデジタルノギスによって測定し、実際の寸法を求めた。
表5に粒度分布の表、図6に縦軸に頻度(個)、横軸に粒径(mm)とした粒径分布図を示す。
【0081】
【表5】

【0082】
実施例23、24、比較例21で示されるように、殻のない空気だけの比較例21の場合、粒径のばらつき、断面における上面、下面でのばらつきが非常に大きい。
しかしながら殻をもった粒状物を混合することにより粒径分布の範囲が狭く集約されて粒揃いとなり、上面、下面での均一性がうまれ、全断面において均一な比重が保たれるようになる。
【0083】
次に、実施例23、24、比較例21と同様に、選択した2実施例、3比較例のサンプルを裁断し、断面の粒径分布を求め、さらに、粒子分布の様子をトレースした。実施例とサンプルの対応と、トレースの図7〜図16に対する対応を表6に示す。
なお、図7から図16に示される正方形のサイズは1.6×1.6mm(約2.5平方mm)の拡大図である。
【0084】
【表6】

【0085】
比較例22からは、弾性整泡材の量が少ないと、空気の粒度を調整できず、結果寸法安定性が悪くなった。
比較例23からは、混合された材料の粘度が上昇しすぎ、結果、密に舗設することができず、大きな空気を巻込み、舗装材のバランスを崩す結果となった。
比較例24からは、弾性整泡材を添加せずに気泡だけでは、気泡の粒径を調整することができず、結果上面、下面でのバランスが悪くなり、さらには、粘度も上昇し作業効率が悪くなった。
粒径分布についての結果は表7に示す。
【0086】
【表7】

比較例に掲げたものは、どれも、ばらつき[RANGE]が大きい。さらには、上面、下面とのばらつきも大きくなっている。
また、最大粒径も大きいことが分かる。
【0087】
[試験例3]
比較例1〜3と実施例1〜4において、サンプル100g中の間隙比eとフィラー比e2のそれぞれを、垂直変位量と比較した結果を表8に示す。また、間隙比eと垂直変位量の関係を図17、フィラー比e2と垂直変位量の関係を図18に示す。
【0088】
【表8】

【0089】
図15、16の結果から、間隙比eとして0.57<e<2.00の時、かつフィラー比e2として0.80<e2<2.0の時に、衝撃減衰率と垂直変位量について特に最適なIAAF試験値を得られる。
【0090】
[試験例3]
本発明の舗装構造について、中間層と基層11の接着性についての試験を行った。
下地として透水性アスファルトを施工し、SBR系エマルジョンとセメントを配合した下地処理を施しポリウレタンの下地とした。下地養生後、下記配合にてポリウレタン弾性層を施工した。
2液反応硬化型ポリウレタン樹脂(三井化学ポリウレタン株式会社製)を下記配合にて13mm厚となるよう施工した。なお、ポリウレタンの撹拌時間は3分とした。
(配合処方)
ポリウレタン主剤(三井化学ポリウレタン株式会社製 ハイプレンP-306)とポリウレタン硬化剤(三井化学ポリウレタン株式会社製 TSR-82M)をそれぞれ1:1で混合し、ポリウレタンに対し、熱膨張性表面処理マイクロカプセル(日本フィライト株式会社EMC120α)を50.04vol%配合した。
ポリウレタン養生後の舗装構造を実施例28とし、JIS K 6854-1:1999(接着剤−はく離接着強さ試験方法−第1部:90度はく離)に準じ、接着試験を行った。
【0091】
また、実施例28同様に下地を施し、下記のようなメカフロ工法によるポリウレタン弾性層を施工した。
2液反応硬化型ポリウレタン樹脂(三井化学ポリウレタン株式会社製)を下記配合にて13mm厚となるよう施工した。なお、ポリウレタンの撹拌時間は3分30秒とした。
【0092】
(配合処方)
・ポリウレタン主剤(三井化学ポリウレタン株式会社製 ハイプレンP-306):100部
・ポリウレタン硬化剤(三井化学ポリウレタン株式会社製 TSR-82M):100部
・整泡剤(三井化学ポリウレタン株式会社製 MK添加剤):2部
・発泡骨材(EVA):20部
ポリウレタン養生後の舗装構造を比較例25とし、JIS K 6854-1:1999(接着剤−はく離接着強さ試験方法−第1部:90度はく離)に準じ、接着試験を行った。
表9に実施例28、表10に比較例25の接着試験結果を示す。
【0093】
【表9】

【0094】
【表10】

【0095】
実施例28、比較例25の比較の結果、測定値Nにおいて、実施例28は比較例25の2倍近い値の接着性能を示した。この結果から、本発明の舗装構造は、中間層の他層に対する接着性能においてもすぐれていることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の舗装構造は、厳密な規格値と性能を要求される競技場をはじめ、安全性と競技のしやすさを両立できることから施設や交通舗装その他に広く応用できるものである。
【符号の説明】
【0097】
11 基層
12 中間層
12a 弾性層
12b 上塗り耐久層
12h 粒
13、130、130f ポリウレタン
13a 弾性粒子
13b 微粒子
13c 弾性整泡材
13d、130e 気泡
13f 湿化表面
13g 中空粒子
14 表面層
B 地盤
S、SP、SW、SPW、SS、SSW、SSP、SSPW 弾性整泡材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基層上に積層されポリウレタンを含む弾性を備えた中間層と、該中間層上に積層され凹凸表面に形成される表面層とを備え、
前記中間層は、ポリウレタン中に弾性粒子を備えた弾性整泡材と気泡とが分散され、
ポリウレタンの体積V1と弾性整泡材の体積V2と気泡の体積V3とが、下記の式I及び式IIを満たすことを特徴とする舗装構造。

0.55 < V1/(V2+V3) < 2.50 … I
0.70 < V2/V3 < 3.00 … II
【請求項2】
前記弾性整泡材は、前記弾性粒子が中空粒子であることを特徴とする請求項1に記載の舗装構造。
【請求項3】
前記弾性舗装材は、前記中空粒子の粒径が50〜300μm、中空部分の占める体積の比率は95〜99.98%、比重が0.01〜0.10であることを特徴とする請求項1または2記載の舗装構造。
【請求項4】
前記弾性整泡材は、前記弾性粒子の表面に該弾性粒子よりも比重の大きい微粒子を備えてなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項5】
前記弾性整泡材は、前記微粒子の粒径が3〜20μm、比重が0.3〜4.0であることを特徴とする請求項4に記載の舗装構造。
【請求項6】
前記弾性整泡材は、表面が湿化したものを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項7】
前記弾性整泡材は、複数が溶着したものを含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項8】
前記弾性整泡材は、比重が0.01〜0.30、前記ポリウレタンに対する重量比が0.8〜13.0重量%であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項9】
垂直変位量が0.6〜2.5mmであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項10】
衝撃減衰率FRと垂直変位量VDの関係を示す下記の式IIIにおいて、A≦0.1267であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の舗装構造。

VD=A×FR−3.8333 … III
【請求項11】
中間層が基層との間に弾性素材を含有する複合弾性層を備えていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項12】
液状のポリウレタンに弾性粒子を備えた弾性整泡材を添加し、
ポリウレタンの体積V1と弾性整泡材の体積V2と気泡の体積V3とが下記の式I及び式IIを満たすように気泡を生じさせつつ混練して舗装材とし、
基層上に前記舗装材を積層して中間層とし、該中間層上に凹凸表面を有する表面層を積層して舗装構造とすることを特徴とする舗装方法。

0.55 < V1/(V2+V3) < 2.50 … I
0.70 < V2/V3 < 3.00 … II
【請求項13】
前記弾性整泡材の製造時に、粒径50〜300μmで比重が0.05〜0.30の中空粒子である弾性粒子の表面に、粒径3〜20μmで比重が0.3〜4.0の微粒子を重量比が65〜85重量%となるよう設け、
前記弾性整泡材を液状のポリウレタンに0.5〜10.0重量%添加することを特徴とする請求項12の舗装方法。
【請求項14】
前記弾性整泡材の製造時に、熱可塑性樹脂で成形された前記中空粒子を加熱して膨張させ、前記中空粒子の表面に前記微粒子を付着させ、前記中空粒子の温度を低下させて前記微粒子を前記表面に埋め込ませることを特徴とする請求項12または13に記載の舗装方法。
【請求項15】
前記弾性整泡材を湿化させて前記ポリウレタンに添加することを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の舗装方法。
【請求項16】
前記弾性整泡材は複数を溶着させて前記ポリウレタンに添加することを特徴とする請求項12から15のいずれかに記載の舗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−32644(P2011−32644A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177049(P2009−177049)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【特許番号】特許第4478199号(P4478199)
【特許公報発行日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(391006913)奥アンツーカ株式会社 (17)
【Fターム(参考)】