説明

舗装機械のスクリード装置

【課題】 従来のスクリード装置における路面に対するストライクオフの呑込角度を調整する作業は、労力と時間が掛かって容易でなかった。
【解決手段】 油圧ポンプから油圧モータ37に圧油が供給されると、油圧モータ37の回転軸37aが回転し、回転軸37aに取り付けられた歯車38が回転する。この歯車38の回転は歯車36を介してクランク軸35に伝わり、クランク軸35が回転する。クランク軸35が回転すると、クランクアーム33の一端がクランク軸35の回転方向に応じて上下動し、これに伴って支持片32も上下動する。このため、支持片32に固定された角度調整用ロッド23aも上下動し、ストライクオフ21は、ピンP1が設けられたその上部の第一箇所を中心にピンP2が設けられた第二箇所が回動する。この結果、ストライクオフ21の呑込角度αの大きさが変わり、所望する呑込角度αに設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパエッジに供給される舗装材の供給量を調整するストライクオフを備えてなる舗装機械のスクリード装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスクリード装置としては、例えば、特許文献1に開示された図1に示されるアスファルトフィニッシャのスクリード装置がある。このスクリード装置には、タンパエッジ2dに供給される舗装材の量を調節するストライクオフ2aが備えられている。このストライクオフ2aは、同図(a)に示す支持片2bに上下動可能に取り付けられた高さ調整用ロッド4aと、同図(b)に示す支持片2cに前後方向に移動可能に取り付けられた角度調整用ロッド5aとで、スクリード装置に支持されている。高さ調整用ロッド4aは、ロックナット4b,4bと調整ナット4c,4cとで支持片2bに固定されており、角度調整用ロッド5aは、ロックナット5b,5bと調整ナット5c,5cとで支持片2cに固定されている。また、ストライクオフ2aの前側には、タンパエッジ2dに供給される過剰の舗装材をスクリュースプレッダに送り戻すためのデフレクタ2eが設けられている。
【0003】
タンパエッジ2dに供給される舗装材の量は、舗装材の種類に応じて、路面に対するストライクオフ2a下面の高さ、およびストライクオフ2aが舗装材を呑み込む呑込角度を変えることによって調整される。具体的には、ロックナット4bを緩め、この状態で調整ナット4cを回すことにより、支持片2bに対して高さ調整用ロッド4aが上下動する。これに伴いストライクオフ2aが上下動して、路面に対するストライクオフ2aの高さが変わる。また、高さ調整用ロッド4aに取り付けられたロックナット4bおよび固定用ボルト4cを緩めた後に、角度調整用ロッド5aに取り付けられたロックナット5bを緩め、この状態で調整ナット5cを回すことにより、支持片2cに対して角度調整用ロッド5aが前後方向に移動する。これに伴いストライクオフ2aの頭部が前後方向に移動して、路面に対するストライクオフ2aの呑込角度が変わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−132156号公報(段落[0006]、[0007]参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の舗装機械のスクリード装置では、路面に対するストライクオフ2aの呑込角度を変えて、タンパエッジ2dに供給される舗装材の量を舗装材の種類に応じて調整するには、その都度、スクリード装置の内部に舗装材が侵入するのを防ぐ、スクリード装置前方のデフレクタ2eやスクリード装置後方の図示しない外装部材を取り外して、高さ調整用ロッド4aおよび角度調整用ロッド5aを露出させる必要がある。しかも、高さ調整用ロッド4aおよび角度調整用ロッド5aの複数のナット4b,4b,4c,4c,および5b,5b,5c,5cを緩めたり締めたりする作業も必要とされる。加えて、スクリード装置の幅方向に対して、高さ調整用ロッド4aおよび角度調整用ロッド5aが複数設けられているので、緩めたり締めたりする作業は、これらを同時に行わなければ高さ調整および角度調整をすることができない。このため、上記従来の舗装機械のスクリード装置では、路面に対するストライクオフ2aの呑込角度を調整する作業は労力と時間が掛かって容易でなく、その都度、舗装作業を長時間にわたって中断する必要が生じて、舗装作業の作業効率が悪かった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
タンパエッジを上下動させて舗装材が撒かれた路面をタンパエッジの下端部で突き固めるタンパ装置と、このタンパ装置で突き固められた路面を敷き均すスクリードプレートと、路面に撒かれた舗装材の呑込角度および路面からの高さに応じてタンパエッジに供給される舗装材の供給量を調整するストライクオフと、このストライクオフの路面に対する高さを調整する高さ調整機構と、ストライクオフの路面に対する呑込角度を調整する角度調整機構とを備えた舗装機械のスクリード装置において、
高さ調整機構は、ストライクオフの上部の第一箇所を上下させ、
角度調整機構は、ストライクオフの上部の前記第一箇所の前方の第二箇所に一端が接続された部材と、この部材の他端を上下動させて前記第一箇所を中心に前記第二箇所を回動させる駆動手段とから構成されることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、角度調整機構の駆動手段により、ストライクオフの上部の第一箇所の前方の第二箇所に一端が接続された部材の他端が上下動させられることで、ストライクオフは、その第一箇所を中心に第二箇所が回動させられて、路面に対する呑込角度が変化する。このため、駆動手段により、第二箇所に一端が接続された部材の他端を上下動させる量を調節することで、ストライクオフの呑込角度は所望の角度に調整される。従って、従来のように、スクリード装置前方のデフレクタやスクリード装置後方の外装部材を取り外したり、複数のナットを緩めたり締めたりする作業等を行うことなく、ストライクオフの呑込角度を調整することが可能になる。この結果、舗装作業中にストライクオフの呑込角度を調整する必要が生じても、舗装作業を極短時間中断して、労力と時間を掛けずにストライクオフの呑込角度を容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるスクリード装置によれば、上記のように、舗装作業中にストライクオフの呑込角度を調整する必要が生じても、労力と時間を掛けずにストライクオフの呑込角度を容易に調整することが可能となり、舗装作業の作業効率は向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来のスクリード装置を構成するスクリードプレート、タンパおよびストライクオフの部分を拡大して示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態によるスクリード装置を備えたアスファルトフィニッシャを示す一部破断側面図である。
【図3】図2に示すスクリード装置の構成の概略を示す平面図である。
【図4】(a)は、図3に示すスクリード装置の概略の正面図、(b)はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図2は、本発明の一実施の形態によるスクリード装置15を備えたアスファルトフィニッシャ11の構成の概略を示す一部破断側面図である。
【0012】
アスファルトフィニッシャ11は、舗装材としてアスファルト加熱混合物kが積み込まれるホッパ12が車体の前部に設けられている。ホッパ12の後方の車体下部には、ホッパ12に積み込まれたアスファルト加熱混合物kを搬送するコンベヤ13が設けられており、コンベヤ13のさらに後方の車体下部にはスクリュスプレッダ14が設けられている。スクリュスプレッダ14は、スクリュ軸の外周にスクリュ羽根が形成されており、スクリュ軸が定速回転するのに伴いスクリュ羽根が旋回し、コンベヤ13から供給されて路面R上に落下したアスファルト加熱混合物kを路面Rの幅方向に撒き拡げる。車体の後方には、撒き拡げたアスファルト加熱混合物kを敷き均して舗装面を平滑に仕上げるスクリード装置15が設けられている。本実施形態では、スクリード装置15は主スクリード装置15Cと伸縮スクリード装置15L,15Rとから構成されている。アスファルトフィニッシャ11は、一対の前方駆動輪16L,16Rおよび一対の後方駆動輪17L,17Rによって進行方向である同図左方に走行し、スクリード装置15を牽引する。また、車体上部の運転席には操作部18が設けられており、操作部18には、スクリード装置15を操作する操作レバーや操作スイッチなどが設けられている。
【0013】
図3は、図2に示すスクリード装置15の構成の概略を示す平面図である。スクリード装置15は、機械中心線Cを中心として左右対称に設けられた左側の主スクリード装置15CLおよび右側の主スクリード装置15CRと、図の上方に向かう進行方向に対して左側に伸縮する伸縮スクリード装置15Lと、進行方向に対して右側に伸縮する伸縮スクリード装置15Rとから構成されている。伸縮スクリード装置15L,15Rの伸縮量は、オペレータの操作部18の操作によって調節される。なお、図中の伸縮スクリード装置15Lは縮めた状態を、伸縮スクリード装置15Rは伸長した状態をそれぞれ表している。
【0014】
これら各スクリード装置15CL,15CR,15L,15Rには、図示しないタンパ装置、スクリードプレート20、およびストライクオフ21が備えられている。タンパ装置は、タンパエッジ19を上下動させて、アスファルト加熱混合物kが撒かれた路面Rをタンパエッジ19の下端部で突き固める。スクリードプレート20は、このタンパ装置で突き固められた路面Rを敷き均す。ストライクオフ21は、路面Rに撒かれたアスファルト加熱混合物kの呑込角度α(図4(b)参照)、および路面Rからの高さに応じて、タンパエッジ19に供給されるアスファルト加熱混合物kの供給量を調整する。ストライクオフ21の路面Rに対する高さは、高さ調整機構により調整される。また、ストライクオフ21の路面Rに対する呑込角度αは、角度調整機構により調整される。これら高さ調整機構および角度調整機構は、各スクリード装置15CL,15CR,15L,15Rとも同じ部品で同様に構成されており、その構成について伸縮スクリード装置15Lを例にして図4を用いて説明する。なお、図3において図4と同一または相当する部分に同一符号を付してその説明を省略する。
【0015】
図4(a)は、伸縮スクリード装置15Lの概略の正面図であり、同図(b)はその側面図である。
【0016】
伸縮スクリード装置15Lの前側下部には、ストライクオフ21が設けられている。このストライクオフ21の上部の第一箇所には、ストライクオフ21を上下させる高さ調整用ロッド22aの一端がピンP1によって回動自在に取り付けられている。各高さ調整用ロッド22aは、央部が、ロックナット22b,22bと調整ナット22c,22cとで、図示しないスクリードフレームに設けられた支持片31に固定されている。ロックナット22b,22bを緩め、この状態で調整ナット22c,22cを回すことにより、支持片31に対して高さ調整用ロッド22aが上下動する。これに伴いストライクオフ21が上下動して、路面Rに対するストライクオフ21の高さが変わる。すなわち、これら高さ調整用ロッド22a、ロックナット22b,22b、調整ナット22c,22c、および支持片31は、上述の高さ調整機構を構成している。
【0017】
また、ストライクオフ21の上部の第一箇所の前方の第二箇所には、角度調整用ロッド23aの一端がピンP2によって回動自在に接続されて取り付けられている。高さ調整用ロッド22aおよび角度調整用ロッド23aは伸縮スクリード装置15L,15Rでは3本備えられており、主スクリード装置15CL,15CRでは図3に示すように2本備えられている。各角度調整用ロッド23aは、他端がロックナット23b,23bと調整ナット23c,23cとで支持片32の一端に固定されている。支持片32の他端は図4(b)に示すようにクランクアーム33の一端にピン34によって連結されており、クランクアーム33の他端にはクランク軸35が設けられている。このクランク軸35は、3本の各角度調整用ロッド23aに設けられた各クランクアーム33の他端を連結する長さを有し、1箇所に歯車36が設けられて、その両端がスクリードフレームに回転自在に支持されている。歯車36が設けられたクランク軸35の上方には油圧モータ37が備えられており、この油圧モータ37の回転軸37aには、歯車36と噛み合う歯車38が取り付けられている。油圧モータ37は、角度調整用ロッド23aの他端を上下動させて、ストライクオフ21の上部のピンP1が設けられた第一箇所を中心に、ピンP2が設けられた第二箇所を回動させる駆動手段を構成している。また、角度調整用ロッド23a、支持片32、クランクアーム33、クランク軸35、歯車36,38、および油圧モータ37は、上述の角度調整機構を構成している。
【0018】
このような構成において、ストライクオフ21の路面Rに対する呑込角度αの調整は、オペレータが操作部18を操作することによって行われる。オペレータが操作部18を操作すると、図示しない油圧ポンプから油圧モータ37に圧油が供給される。油圧モータ37に圧油が供給されると、油圧モータ37の回転軸37aが回転し、回転軸37aに取り付けられた歯車38が回転する。この歯車38の回転は歯車36を介してクランク軸35に伝わり、クランク軸35が回転する。クランク軸35が回転すると、クランクアーム33の一端がクランク軸35の回転方向に応じて上下動し、これに伴って支持片32も上下動する。このため、支持片32に固定された角度調整用ロッド23aも上下動し、ストライクオフ21は、ピンP1が設けられたその上部の第一箇所を中心にピンP2が設けられた第二箇所が回動する。この結果、ストライクオフ21の呑込角度αの大きさが変わり、所望する呑込角度αに設定することができる。
【0019】
このような本実施形態によるスクリード装置15によれば、上記のように、角度調整機構の油圧モータ37により、ストライクオフ21の上部の第一箇所の前方の第二箇所に一端が接続された角度調整用ロッド23aの他端が上下動させられることで、ストライクオフ21は、その第一箇所を中心に第二箇所が回動させられて、路面Rに対する呑込角度αが変化する。このため、油圧モータ37により、第二箇所に一端が接続された角度調整用ロッド23aの他端を上下動させる量を調節することで、ストライクオフ21の呑込角度αは所望の角度に調整される。従って、従来のように、スクリード装置前方のデフレクタやスクリード装置後方の外装部材を取り外したり、複数のナットを緩めたり締めたりする作業等を行うことなく、ストライクオフ21の呑込角度αを調整することが可能になる。この結果、舗装作業中にストライクオフ21の呑込角度αを調整する必要が生じても、舗装作業を極短時間中断して、労力と時間を掛けずにストライクオフ21の呑込角度αを容易に調整することができる。
【0020】
なお、上記実施形態では、角度調整用ロッド23aを上下動させる駆動手段として、油圧モータ37を用いた構成で説明したが、本発明はこれに限ることはない。例えば、油圧モータ37に代えて油圧シリンダを用いて角度調整用ロッド23aを上下動させる構成にしてもよい。この構成においても、油圧モータ37を用いた場合と同様の作用・効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
上記の実施形態においては、本発明による舗装機械のスクリード装置をアスファルトフィニッシャにおけるスクリード装置に適用した場合を説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、リミキサやリペーバといった路上表層再生機のスクリード装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0022】
15CL,15CR…主スクリード装置
15L,15R…伸縮スクリード装置
19…タンパエッジ
20…スクリードプレート
21…ストライクオフ
22a…高さ調整用ロッド
23a…角度調整用ロッド
32…支持片
33…クランクアーム
35…クランク軸
36…歯車
37…油圧モータ
38…歯車
P1…ピン
P2…ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパエッジを上下動させて舗装材が撒かれた路面を前記タンパエッジの下端部で突き固めるタンパ装置と、このタンパ装置で突き固められた路面を敷き均すスクリードプレートと、路面に撒かれた舗装材の呑込角度および路面からの高さに応じて前記タンパエッジに供給される舗装材の供給量を調整するストライクオフと、このストライクオフの路面に対する前記高さを調整する高さ調整機構と、前記ストライクオフの路面に対する前記呑込角度を調整する角度調整機構とを備えた舗装機械のスクリード装置において、
前記高さ調整機構は、前記ストライクオフの上部の第一箇所を上下させ、
前記角度調整機構は、前記ストライクオフの上部の前記第一箇所の前方の第二箇所に一端が接続された部材と、この部材の他端を上下動させて前記第一箇所を中心に前記第二箇所を回動させる駆動手段とから構成されることを特徴とする舗装機械のスクリード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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