説明

舗装用シール材及び防水材の溶解装置

【課題】 火災等の危険がないと共に、シール材や防水材の品質も確保でき、かつ装置の車両への積み降ろしも容易とした舗装用シール材及び防水材の溶解装置を提供する。
【解決手段】 上部に被溶解物投入用の開閉蓋4を、下部に被溶解物の取り出し管6を配した溶解槽3を機台2上に設置する。該溶解槽3の側面及び底面には電気ヒータ7を配設すると共に、溶解槽3内の被溶解物を撹拌する撹拌機10を配設する。また、電気ヒータ7と撹拌機10の駆動を制御する制御盤9を前記機台2上の溶解槽3側部に設置して溶解装置1を一体化に構成し、車両への積み降ろしも容易とする。この溶解装置1を車両に搭載して舗装現場まで搬送し、例えばシール材を電気ヒータ7にて所定温度まで加熱した後、アスファルト舗装のひびわれ部に注入充填して舗装面を補修する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト舗装のひびわれ部を補修するために注入充填するシール材(特殊アスファルト)、或いは橋面舗装に用いられる防水材(特殊アスファルト)を溶解する車両搭載型の舗装用シール材及び防水材の溶解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装のひびわれ部にシール材である特殊アスファルトを注入充填して舗装面を補修することが行われている(特許文献1参照)。また、橋面舗装における防水材として同様に特殊アスファルトが使用されることがあり、これらシール材や防水材は常温では固形物であり、これを加熱溶解して約210℃程度に維持し、流動性を高めた状態で使用されている。従来、前記舗装用シール材及び防水材の溶解装置は、溶解槽をプロパンガスバーナや灯油バーナにて加熱しており、溶解槽、ガスバーナ及びガスボンベ等を車両に搭載して施工現場まで運搬し、シール材や防水材を所定温度まで加熱して舗装面の補修等を行っている。
【特許文献1】特開平11−107211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の舗装用シール材及び防水材の溶解装置は、プロパンガスバーナ等の使用による火災等のトラブルや過熱によるシール材や防水材の品質低下なども発生することもあり、安全面や品質面に問題があった。
【0004】
本発明は上記の点に鑑み、火災等の危険がないと共に、シール材や防水材の品質も確保でき、かつ装置の車両への積み降ろしも容易とした舗装用シール材及び防水材の溶解装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る舗装用シール材及び防水材の溶解装置では、上部に被溶解物投入用の開閉蓋を、下部に被溶解物の取り出し管を配した溶解槽を機台上に設置し、該溶解槽の側面及び底面には電気ヒータを配設すると共に、該溶解槽内に被溶解物を撹拌する撹拌機を配設する一方、電気ヒータと撹拌機の駆動を制御する制御盤を前記機台上の溶解槽側部に設置して一体化に構成したことを特徴としている。
【0006】
好ましくは、前記攪拌機は過負荷時に駆動を自動停止し、その後一定時間毎に再起動するようにしておく。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る舗装用シール材及び防水材の溶解装置によれば、上部に被溶解物投入用の開閉蓋を、下部に被溶解物の取り出し管を配した溶解槽を機台上に設置し、該溶解槽の側面及び底面には電気ヒータを配設すると共に、該溶解槽内に被溶解物を撹拌する撹拌機を配設する一方、電気ヒータと撹拌機の駆動を制御する制御盤を前記機台上の溶解槽側部に設置して一体化に構成したので、従来のプロパンガスバーナ等に代えて電気ヒータにて溶解槽を加熱するために、火災等の危険性もなく、シール材や防水材の温度も安定して高品質を確保できる。また、機台上に溶解槽及び操作盤を設置して一体化したので、車両への積み降ろしが容易で、使い勝手が良い。
【0008】
また、前記攪拌機は過負荷時に駆動を自動停止し、その後一定時間毎に再起動するようにすれば、固形のシール材や防水材が適当に溶解した段階で自動的に撹拌が開始されてシール材や防水材の局部過熱が避けられて高品質を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る舗装用シール材及び防水材の溶解装置にあっては、上部にシール材や防水材の投入用の開閉蓋を、下部にシール材や防水材の取り出し管を配した溶解槽を機台上に設置し、該溶解槽の側面及び底面には電気ヒータを配設すると共に、その外側に保温材を適宜取り付ける。溶解槽には槽内に撹拌羽根を配した撹拌機を配設する。また、前記電気ヒータと撹拌機の駆動を制御する制御盤を前記機台上の溶解槽側部に設置し、装置全体を一体化して車両に積み降ろし自在に構成する。また、前記攪拌機は駆動モータの負荷電流値を検出し、該負荷電流値が所定値以上となって過負荷となると駆動を停止し、その後、タイマーにより一定時間毎に再起動を繰り返し過負荷が解消されると攪拌機が回転するようにしておく。
【0010】
そして、前記溶解装置を使用するときには、溶解装置をクレーン等を利用して車両に搭載すると共に、電気ヒータ、攪拌機及び制御盤に電力を供給する発電機を搭載しておく。そして、例えば、舗装面のひびわれ部を補修するとなると、シール材である特殊アルファルトの固形分を溶解槽に投入し、電気ヒータによって所定温度まで加熱する。このとき、攪拌機にてシール材を撹拌するが、シール材の溶解が不十分で過負荷となると攪拌機の駆動を自動停止し、その後一定時間毎に自動的に再起動させ、シール材が適当に溶解すると撹拌が開始される。シール材が所定温度となると、舗装現場において溶解槽からシール材を取り出して舗装面のひびわれ部に注入充填して補修工事を行う。
【0011】
なお、電気ヒータはタイマーにて自動起動するようにしておけば、夜間等に設備電源にてシール材を予め加熱しておくことができて都合が良い。また、攪拌機を正逆回転切り替え式としておけば、固形のシール材の重なりで熱伝達が悪い状態のときに手動で逆転させることによってこれを解消させることもできる。
【0012】
このように、上記溶解装置は、電気ヒータによる被溶解物の加熱を行うので、従来のプロパンガスバーナ等のように火災等の危険性もなく、またシール材や防水材の温度も一定に維持できて良好な品質が確保される。更に、機台上に溶解槽及び操作盤を設置して装置を一体化することによって、車両への積み降ろしも容易で、使い勝手も良い。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0014】
図中の1は舗装用シール材及び防水材の溶解装置であって、機台2上に円筒状の溶解槽3を二基設置しており、溶解槽3の上部に被溶解物投入用の開閉蓋4を配設すると共に、下部に開閉バルブ5を備えた被溶解物の取り出し管6を配設している。
【0015】
前記溶解槽3の外側の底面及び側面には、図1に示すように、電気ヒータ7を取り付けており、該電気ヒータ7の外側には保温材を適宜取り付けるなどして加熱保温構造としている。また、溶解槽3には図3に示すように、槽内の材料の温度を測定する温度センサー8を取り付けており、該温度センサー8にて検出した材料温度は制御盤9に取り込まれ、予め設定した温度となるように電気ヒータ7への通電が制御される。なお、電気ヒータ7はタイマーにて自動起動するようにしておけば、夜間等に設備電源にて材料を予め加熱しておくことができて都合が良い。
【0016】
また、溶解槽3には槽内の被溶解物を撹拌するための攪拌機10を取り付けており、溶解槽3上部に配置した撹拌用モータ11によって撹拌軸12に取り付けた撹拌羽根13を所定速度で回転させるようにしている。なお、撹拌回転数を制御するためにインバータを備え、手動または自動にて撹拌回転数を適宜変更可能としても良い。また、図示例では、板形状の羽根で溶解槽3の底部を撹拌するようにしているが、棒状の羽根やスクリュー形状の羽根等、適宜の羽根を採用することもできる。
【0017】
前記撹拌羽根13は、溶解初期の固形状態のシール材や防水材を撹拌すると過負荷となることがあるため、攪拌機10の撹拌用モータ11の負荷電流値を検出し、該負荷電流値が所定値以上となって過負荷となると駆動を停止し、その後、タイマーにより一定時間毎に再起動を繰り返し過負荷が解消されると攪拌機が回転するような制御機構を制御盤9に備えておくと良い。また、制御盤9に攪拌機正逆回転切替スイッチを備え、該スイッチを手動にて操作することで撹拌羽根13を正逆回転切り替え可能にしておくと好ましい。
【0018】
前記電気ヒータ7及び攪拌機10を駆動制御する制御盤9は、機台2上の溶解槽3側部に組み込んで装置全体を一体化にしており、クレーン用吊り金具14や図2に示すフォークリフト爪差込用孔15を利用して装置全体を持ち上げて車両への積み降ろし可能としている。
【0019】
16は溶解槽3の上部に取り付けた排気管であり、シール材や防水材の加熱時に発生するガスを抜き取るものであり、該排気管16の出口には受け皿(図示せず)を配設して装置が汚れないようにしておくと好ましい。
【0020】
次に、上記溶解装置1を使用する方法について説明する。先ず、溶解装置1をクレーン用吊り金具14やフォークリフト爪差込用孔15を利用してクレーンまたはフォークリフトにて持ち上げ、図4に示すように、車両Aの荷台後部に搭載すると共に、発電機17も搭載する。そして、例えば、シール材を加熱溶解するときは、溶解槽3の上部の開閉蓋4を開放して固形のシール材を投入すると共に、発電機17から電気ヒータ7に電力を供給して加熱する。なお、タイマーを利用して電気ヒータ7に通電開始する場合には、施工現場到着までの時間等を考慮してタイマー設定を行うようにしても良いし、また夜間に工事事務所の設備電源を利用して予めシール材を加熱するときにもタイマーを利用すると良い。
【0021】
溶解槽3内のシール材の温度は温度センサー8によって逐次検出され、制御盤9の温度表示計に表示される。シール材が溶解し始める適当な温度となれば手動または自動にて撹拌用モータ11を駆動して撹拌羽根13を回転させてシール材の撹拌を開始する。このとき、撹拌用モータ11が過負荷となると駆動を停止し、その後、タイマーにより一定時間毎に再起動を繰り返すことで過負荷が解消されると攪拌羽根13を回転させる。また、固形状態のシール材の重なり等で熱伝達が悪い状態であると作業者が判断すれば、制御盤9の攪拌機正逆切替スイッチを手動操作して撹拌羽根13を逆回転させることによって解消させる。
【0022】
そして、溶解槽3内のシール材の温度が所望の温度に達して施工を開始するとなれば、溶解槽3下部の開閉バルブ5を開放して取り出し管6からシール材を取り出し、アスファルト舗装のひびわれ部に注入充填して補修を行っていくのである。
【0023】
このように、上記溶解装置1は、電気ヒータ加熱方式にて溶解槽3内のシール材や防水材を加熱するので、従来のプロパンガスバーナ等による加熱に比べると火災等の危険性もないと共に、シール材や防水材の温度も安定して高品質を確保できる。また、機台上に溶解槽3及び操作盤9を設置して一体化したので、車両への積み降ろしが容易で、使い勝手も良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る舗装用シール材及び防水材の溶解装置の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】溶解装置を車両に搭載した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1…溶解装置 2…機台
3…溶解槽 4…開閉蓋
5…開閉バルブ 6…取り出し管
7…電気ヒータ 8…温度センサー
9…制御盤 10…攪拌機
11…撹拌用モータ 12…撹拌軸
13…撹拌羽根 14…クレーン用吊り金具
15…フォークリフト爪差込用孔
A…車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に被溶解物投入用の開閉蓋を、下部に被溶解物の取り出し管を配した溶解槽を機台上に設置し、該溶解槽の側面及び底面には電気ヒータを配設すると共に、該溶解槽内に被溶解物を撹拌する撹拌機を配設する一方、電気ヒータと撹拌機の駆動を制御する制御盤を前記機台上の溶解槽側部に設置して一体化に構成したことを特徴とする舗装用シール材及び防水材の溶解装置。
【請求項2】
前記攪拌機は過負荷時に駆動を自動停止し、その後一定時間毎に再起動するようにしたことを特徴とする請求項1記載の舗装用シール材及び防水材の溶解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−190207(P2008−190207A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25466(P2007−25466)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000226482)日工株式会社 (177)
【出願人】(000233653)ニチレキ株式会社 (12)
【出願人】(595165852)宮川興業株式会社 (1)
【出願人】(500580286)日工マシナリー株式会社 (6)
【Fターム(参考)】