説明

航空産業に適用される無線通信システム,及びエアバンド干渉検出方法

【課題】 本発明は,航空産業における安全性を高めることができる無線通信システムなどを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は,航空産業に適用される無線通信システムに関する。この無線通信システムは,制御装置と,スペクトラムセンサーとを含む。スペクトラムセンサーは,メジャメントSAPを用いてスペクトラムセンシングを行い,無線通信デバイスからの信号を受信して,受信した信号に関する情報をセンシング情報として,コミュニケーションSAPを介して送出する。一方で,制御装置は,コミュニケーションSAPを介してスペクトラムセンサーからセンシング情報を受信する。続いて,アプリケーションSAPを用いてセンシング情報の解析を行う。これにより,無線通信デバイスからの信号が航空産業において使用されるエアバンドの電波に干渉するかどうかを特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,航空産業に適用される無線通信システム,及びエアバンド干渉検出方法などに関し,特に,空港で用いられ,乗客が持ち込んだ無線通信デバイス(ノート型パソコン,携帯電話など)を検出可能な無線通信システム,及びエアバンド干渉検出方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
現在では,無線通信が非常に普及しており,多くの製品や商品が無線通信可能な状態となっている。例えば,ノート型パソコンでは,ワイヤレスのマウスを用いることが可能である。また,子供向けのおもちゃの多くでは,ワイヤレスのリモートコントローラーを使用する。無線型プレーヤーは,ワイヤレスのイヤホンを使用する。さらには,携帯電話は,現在では,誰もが所持しており,その使用も日常的となっている。
【0003】
上述したような無線通信可能な製品は,航空産業で用いられる周波数帯(エアバンド:108MHz〜137MHz)で信号を送出することはない。しかし,可能性として,それらの製品は,エアバンドに属する周波数帯のスプリアス信号(不要信号)を送出してしまうことが考えられる。
【0004】
しかし,ユーザは,これらの製品がスプリアス信号を送出する可能性があるのかどうかを判断することはできない。そのため,旅行等を目的とした人物は,みずから空港に持ち込んだ無線通信装置が,航空産業において不可欠な通信を行う通信装置(例えば,航空機の航行機器)を誤作動させ,結果として,航空機のフライトに危険性が及ぶという事態を想定することは極めて困難である。
【0005】
しかも,現在のところ,上述したような事態が実際に起こったという事例はなく,また,そのような事態を回避するための方法やシステムは一切提案されていない(先行技術文献情報なし)。そのため,航空機の客室乗務員などが,離陸前に,乗客に対して,無線通信デバイスの電源を切るように注意を促すにとどまっているのが現状である。しかし,乗客は,無線通信デバイスの電源を切るなどの処置を忘れたり,旅行の高揚感から同処置を怠ったりする場合がある。
【0006】
したがって,航空産業において安全性を損なうおそれのある信号を送出する無線通信デバイスを特定することが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は,上述したような事態を効率的に防止することができる航空産業に適用される無線通信システム,及びエアバンド干渉検出方法などを提供することにある。具体的には,航空産業において使用されるエアバンドの電波に干渉する可能性のある無線通信デバイスを特定して,航空産業における安全性を高めることができる無線通信システム,及びエアバンド干渉検出方法などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は,航空産業に適用される無線通信システムに関する。この無線通信システムは,第1のコミュニケーションSAP(サービスアクセスポイント)とアプリケーションSAPとを含む制御装置と,第2のコミュニケーションSAPとメジャメントSAPとを含むスペクトラムセンサーとを含んでいる。
【0009】
そして,スペクトラムセンサーは,メジャメントSAPを用いてスペクトラムセンシングを行うことにより,無線通信デバイスからの信号を受信する。続いて,受信した信号に関する情報をセンシング情報として,第2のコミュニケーションSAPを介して送出する。一方で,制御装置は,第1のコミュニケーションSAPを介してスペクトラムセンサーからセンシング情報を受信する。続いて,アプリケーションSAPを用いてセンシング情報の解析を行う。これにより,無線通信デバイスからの信号が航空産業において使用されるエアバンドの電波に干渉するかどうかを特定する。そして,特定された信号を送出している無線通信デバイスの電源を切ることで,航空産業における安全性を高めることができる。
【0010】
また,本発明の好ましい側面では,メジャメントSAPが,センシング情報を,制御メッセージクラス,センサーメッセージクラス,センシングメッセージクラス,規制情報クラスにクラス分けされた情報として生成する。そして,メジャメントSAPは,無線通信デバイスからの信号の周波数を推定した結果に関する情報を推定周波数情報としてセンシングメッセージクラスに含める。この場合,アプリケーションSAPは,センシング情報のセンシングメッセージクラスに含まれる推定周波数情報に関する情報に基づいて,無線通信デバイスからの信号が前記エアバンドの電波に干渉するかどうかを特定する。このようにクラス分けを行うことで,エアバンド干渉の可能性がある無線通信デバイスを効率的に(つまり速やかに)特定することができる。
【0011】
また,本発明の好ましい側面では,上記制御装置が,さらに,警報を鳴らすための警報装置を含んでいる。この警報装置は,制御装置が無線通信デバイスからの信号がエアバンドの電波に干渉するものであると特定した場合に警報を鳴らすように構成されている。これにより,警報に応じて,エアバンド干渉の可能性がある無線通信デバイスを探し出すことができる。
【0012】
また,本発明の好ましい側面では,制御装置が空港の搭乗ゲートに設置されており,かつ,スペクトラムセンサーが携帯可能である。この場合,制御装置は,移動可能なスペクトラムセンサーからのセンシング情報に基づいて,無線通信デバイスの位置を特定することが可能である。これにより,エアバンド干渉の可能性のある無線通信デバイスを探し出す範囲を広げることができる。
【0013】
また,本発明の好ましい側面では,制御装置により,無線通信デバイスからの信号がエアバンドの電波に干渉するものであることが特定された場合,その旨が第1のコミュニケーションSAP及び第2のコミュニケーションSAPを介してスペクトラムセンサーに通知される。スペクトラムセンサーに通知される情報としては,検出すべき無線の種類や周波数に関する情報がある。これにより,スペクトラムセンサーの近傍でも無線通信デバイスを探し出すことが可能となる。
【0014】
また,本発明の好ましい側面では,スペクトラムセンサーが複数である。この場合,記制御装置は,前記複数のスペクトラムセンサーからのセンシング情報を統合する。これにより,多くのセンシング情報を集めることができる。
【0015】
また,本発明の別の側面は,エアバンド干渉検出方法に関する。このエアバンド干渉方法は,無線通信システムを用いて航空産業において使用されるエアバンドにおいて干渉が生じているかどうかを特定するための方法である。
【0016】
ここで,無線通信システムは,第1のコミュニケーションSAPとアプリケーションSAPとを含む制御装置と,第2のコミュニケーションSAPとメジャメントSAPとを含むスペクトラムセンサーとを含んでいる。
【0017】
そして,このエアバンド干渉検出方法では,まず,スペクトラムセンサーが,メジャメントSAPを用いてスペクトラムセンシングを行うことにより,無線通信デバイスからの信号を受信するステップを実行する。続いて,スペクトラムセンサーが受信した信号に関する情報をセンシング情報として,第2のコミュニケーションSAP及び第1のコミュニケーションSAPを介して送信するステップを実行する。これにより,スペクトラムセンサーから制御装置へとセンシング情報(信号情報)が送信されることとなる。次いで,制御装置が,アプリケーションSAPを用いてセンシング情報を解析することにより,無線通信デバイスからの信号がエアバンドの電波に干渉するかどうかを特定するステップを実行する。これにより,エアバンドにおける干渉を検出する。したがって,この別の側面によっても上述した発明と同等の効果を奏することができる。また,無線通信デバイスからの信号がエアバンドの電波に干渉することが特定された場合,その旨が制御装置からスペクトラムセンサーに通知される。通知される情報としては,検出すべき無線の種類や周波数に関する情報がある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,航空産業において使用されるエアバンドの電波に干渉する可能性のある無線通信デバイスが特定されるので,航空産業における安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は,本発明においてセンシング情報のクラス分けで得られる制御メッセージクラスを説明するための図である。
【図2】図2は,本発明においてセンシング情報のクラス分けで得られるセンサーメッセージクラスを説明するための図である。
【図3】図3は,本発明においてセンシング情報のクラス分けで得られるセンシングメッセージクラスを説明するための図である。
【図4】図4は,本発明におけるインターフェイスの参照モデルを説明するための図である。
【図5】図5は,図4に示す参照モデルを用いて構成した無線通信システムの一例を説明するための図である。
【図6】図6は,本発明の最も好ましい態様に係る無線通信システムの構成を説明するための図である。
【図7】図7は,図6の構成を図4の参照モデルに倣って構成したモデルの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態を説明する。しかしながら,以下説明する形態はある例であって,当業者にとって自明な範囲で適宜修正することができる。
【0021】
本発明の無線通信システムは,複数の無線通信デバイスを含んでいる。ここで,各無線通信デバイスは,一般的に,スペクトラムセンシングを行うことにより,他の無線通信デバイスを探し出して,無線通信(データ送受信)を行うように構成されている。
【0022】
したがって,無線通信システムにおいて,無線通信を行うためには,スペクトラムセンシングを行う機能と,スペクトラムセンシングの結果であるセンシング情報を解析する機能と,データの送信及び受信の少なくとも一方を行う機能の3種類の機能が必要となる。そして,これら3つの機能を実現するためには,複数の無線通信デバイスに共通するインターフェイスが必要となる。そこで,まず,センシング情報について説明し,続いて,インターフェイスについて説明することとする。
【0023】
本発明では,まず,センシング情報を4種類のメッセージクラスにクラス分けする。このクラス分けは,例えば対象配向型の統一モデリング言語(UML:Unified Modeling Language)ダイアグラムを用いることで行うことができる。すなわち,センシング情報をUMLダイアグラムで表す。このようにクラス分けを行うことで,図4を用いて後述する参照モデルにおいて,複数のサービスアクセスポイント(SAP)を定義することが可能となるとともに,センシング情報の取得やセットを行うために使用可能なプリミティブを定義することが可能となる。
【0024】
そして,クラス分けで得られる4種類のメッセージクラスには,制御メッセージクラスと,センサーメッセージクラスと,センシングメッセージクラスと,規制情報クラスとがある。以下,詳細に説明する。
【0025】
<制御メッセージクラス>
図1に示すように,この制御メッセージクラスは,スペクトラムセンサーとそのクライアントの間でセンシング情報を交換するための制御メッセージを記述するためのものである。
【0026】
記述対象となる制御メッセージには,大きく分けて3種類のクラスがある。制御メッセージを構成する3種類のクラスは,トランスポートと,メジャメントと,アプリケーションである。以下詳細に説明する。
【0027】
<<トランスポート>>
このクラスには,センシング情報の送出を制御するためのメッセージが含まれる。制御メッセージクラスの各インスタンス(instance)には,トランスポートクラスのインスタンスを1つ含ませることが可能である。なお,トランスポートクラスのインスタンスを制御メッセージクラスのインスタンスに含ませなくてもよい。
【0028】
<<<トランスポートMAC>>>
このクラスには,センシング情報の送出用のMACを制御するためのメッセージが含まれる。トランスポートクラスのインスタンスには,トランスポートMACクラスのインスタンスを1つだけを含ませることが可能である。
【0029】
<<<トランスポートモード>>>
このクラスには,センシング情報の交換用の送出モードを制御するためのメッセージが含まれる。情報のタイプには,例えば,ソフトの情報やハードの情報がある。トランスポートクラスのインスタンスには,トランスポートモードクラスのインスタンスを1つだけを含ませることが可能である。
【0030】
<<メジャメント>>
このクラスには,スペクトラムの計測を制御するためのメッセージが含まれる。各制御メッセージクラスのインスタンスには,このメジャメントクラスの複数のインスタンスを含ませることが可能である。なお,メジャメントクラスのインスタンスを制御メッセージクラスのインスタンスに含ませなくてもよい。
【0031】
<<<メジャメントオブジェクト>>>
このクラスには,計測対象を制御するためのメッセージが含まれる。計測対象としては,例えば,無線周波数の計測を開始する周波数と終了する周波数がある。これにより,計測する無線周波数の範囲が定まることとなる。このメジャメントクラスのインスタンスには,メジャメントオブジェクトクラスのインスタンスを1つ以上含ませることが可能である。
【0032】
<<<メジャメントプロフィール>>>
このクラスには,計測動作を制御するためのメッセージが含まれる。計測動作としては,例えば,スペクトラムセンシングに用いる技術を決定することがある。このメジャメントクラスの任意のインスタンスには,メジャメントプロフィールクラスのインスタンスを1つ以上含ませることが可能である。
【0033】
<<<メジャメントパフォーマンス>>>
このクラスには,無線周波数計測のパフォーマンスを制御するためのメッセージが含まれる。そのようなパフォーマンスとしては,例えば,スペクトラムセンシングの出力として所望の誤報確率がある。このメジャメントクラスの任意のインスタンスには,メジャメントプロフィールクラスのインスタンスを1つ以上含ませることが可能である。
【0034】
<<アプリケーション>>
このクラスには,センシング情報の要求やセンシング情報の供給を制御するためのメッセージが含まれる。各制御メッセージクラスのインスタンスには,このアプリケーションクラスの複数のインスタンスを含ませることが可能である。なお,アプリケーションクラスのインスタンスを制御メッセージクラスのインスタンスに含ませなくてもよい。
【0035】
<<<センシング情報要求>>>
このクラスには,センシング情報を要求するクライアントに対して優先レベルを設定するためのメッセージが含まれる。アプリケーションクラスの各インスタンスには,センシング情報要求クラスのインスタンスが1つ以上含まれる。
<<<センシング情報供給>>>
このクラスには,センシング情報をそのクライアントに送出するときのセンサーに対して優先レベルを設定するためのメッセージが含まれる。アプリケーションクラスの各インスタンスには,センシング情報送出クラスのインスタンスが1つ又は複数含まれる。
【0036】
<センサーメッセージクラス>
続いて,センサーメッセージクラスについて説明する。
このクラスには,図2に示すように,センサーに関連するメッセージが記述される。以下詳細に説明する。
【0037】
<<センサーPHYプロフィール>>
このクラスには,センサーのPHYに関する情報が含まれる。センサーのPHYに関する情報としては,例えば,位相ノイズがある。センサーメッセージの各インスタンスには,センサーPHYプロフィールのインスタンスだけを含ませることが可能である。
【0038】
<<<ロケーションプロフィール>>>
このクラスには,センサーの位置(センサーロケーション)に関する情報が含まれる。センサーロケーションとしては,絶対位置や相対位置がある。センサーPHYプロフィールの各インスタンスには,センシング情報要求クラスのインスタンスが1つ又は複数含まれる。
【0039】
<<<アンテナプロフィール>>>
このクラスには,センサーのアンテナに関する情報が含まれる。センサーのアンテナとしては,アンテナハイ(antenna high)や,ビームパターンなどがある。センサーPHYプロフィールの各インスタンスには,アンテナプロフィールクラスのインスタンスが1つ又は複数含まれる。なお,アンテナプロフィールクラスのインスタンスをアンテナプロフィールのインスタンスに含ませなくてもよい。
【0040】
<<センサーMACプロフィール>>
このクラスには,センサーのMACに関する情報が含まれる。センサーのMACに関する情報としては,例えば,MACのIDがある。センサーメッセージの各インスタンスには,センサーMACプロフィールクラスのインスタンスを1つだけ含ませることが可能である。なお,なお,センサーMACプロフィールクラスのインスタンスをセンサーメッセージのインスタンスに含ませなくてもよい。
【0041】
<<センサープロフィール>>
このクラスには,センサーに関する一般的な情報が含まれる。センサーメッセージの各インスタンスには,センサープロフィールクラスのインスタンスを1つだけ含ませることが可能である。なお,なお,センサーMACプロフィールクラスのインスタンスをセンサーメッセージのインスタンスに含ませなくてもよい。
【0042】
<<<製造者情報>>>
このクラスには,センサーの製造者情報に関する情報が含まれる。センサーの製造者情報としては,例えば,製造者のIDや,製品のIDがある。センサープロフィールクラスの各インスタンスには,製造者情報クラスのインスタンスが1つ含まれる。
【0043】
<<<出力プロフィール>>>
このクラスには,センサーの出力情報に関する情報が含まれる。センサーの出力情報としては,例えば,電源の電力レベルや電力消費量がある。センサープロフィールクラスの各インスタンスには,出力プロフィールクラスのインスタンスが1つ含まれる。
【0044】
<<センサー性能>>
このクラスには,センサーが無線スペクトラムを計測するときのセンサー性能(Sensor Capability)に関する情報が含まれる。そのような情報としては,計測範囲,感度などがある。センサーメッセージの各インスタンスには,センサープロフィールクラスのインスタンスを1つだけ含ませることが可能である。なお,センサーMACプロフィールのインスタンスをセンサーメッセージのインスタンスに含ませなくてもよい。
【0045】
<センシングメッセージクラス>
続いて,センシングメッセージクラスについて説明する。このクラスには,図3に示すように,センシング結果を示すメッセージが記述される。以下詳細に説明する。
【0046】
<<センシング情報プロフィール>>
このクラスには,センシング情報を生成するために実行される計測に関する一般的な情報が含まれる。そのような情報としては,計測の確信レベル,計測特徴,計測に用いた閾値などがある。センシングメッセージクラスのインスタンスには,センシング情報プロフィールクラスのインスタンスだけを含ませることが可能である。
【0047】
<<ロケーション情報>>
このクラスには,計測を実行したときの位置(ロケーション)に関する情報が含まれる。そのような情報としては,絶対位置や相対位置がある。センシングメッセージクラスの各インスタンスには,ロケーション情報クラスのインスタンスを1つ含ませることが可能である。なお,ロケーション情報クラスのインスタンスをセンサーメッセージクラスの各インスタンスに含ませなくてもよい。
【0048】
<<シグナル>>
このクラスには,計測した信号(シグナル)に関する情報が含まれる。センシングメッセージクラスの各インスタンスには,シグナルクラスのインスタンスを1つ以上含まれる。
【0049】
<<<シグナルプロフィール>>>
このクラスには,計測した信号に関する情報が含まれる。そのような情報としては,信号レベル,推定した振幅などがある。シグナルクラスの各インスタンスには,シグナルプロフィールクラスのインスタンスが1つだけ含まれる。
【0050】
<<<シグナル挙動>>>
このクラスには,計測した信号の挙動を記述した情報(例えば,デューティーサイクル)が含まれる。シグナルクラスの1つのインスタンスには,シグナル挙動クラスのインスタンスを1つ含ませることが可能である。なお,シグナル挙動クラスのインスタンスをシグナルクラスのインスタンスに含ませなくてもよい。
【0051】
<<チャネル>>
このクラスには,計測したチャネルに関する情報が含まれる。センシングメッセージクラスの各インスタンスには,チャネルクラスのインスタンスを1つ以上含ませることが可能である。なお,チャネルクラスのインスタンスをセンシングメッセージクラスのインスタンスに含ませなくてもよい。
【0052】
<<<チャネルプロフィール>>>
このクラスには,計測したチャネルに関する一般的な情報が含まれる。そのような情報としては,例えば,開始周波数や終了周波数がある。チャネルクラスの各インスタンスには,チャネルプロフィールクラスのインスタンスが1つだけ含まれる。
【0053】
<<<チャネル計測>>>
このクラスには,チャネルの計測結果に関する情報(例えば,計測したバンド幅やノイズパワー)が含まれる。チャネルクラスの各インスタンスには,チャネル計測クラスのインスタンスを1つ含ませることが可能である。なお,チャネル計測クラスのインスタンスをチャネルクラスのインスタンスに含ませなくてもよい。
【0054】
<<RAT(無線アクセステクノロジー)>>
このクラスには,計測したRATに関する情報が含まれる。センシングメッセージクラスの各インスタンスには,RATクラスのインスタンスを1つ以上含ませることが可能である。なお,RATクラスのインスタンスをセンシングメッセージクラスのインスタンスに含ませなくてもよい。
【0055】
<<<RATプロフィール>>>
このクラスには,計測したRATに関する一般的な情報(例えば,RATのID)が含まれる。RATクラスの各インスタンスには,RATプロフィールクラスのインスタンスが1つだけ含まれる。
【0056】
<<<RAT計測>>>
このクラスには,RATの計測結果に関する情報(例えば,計測したバンド幅やノイズパワー)が含まれる。RATクラスの各インスタンスには,RAT計測クラスのインスタンスを1つ含ませることが可能である。なお,RAT計測クラスのインスタンスをRATクラスのインスタンスに含ませなくてもよい。
【0057】
<規制情報クラス>
続いて,規制情報クラスについて説明する。このクラスには,図4に示すように,規制要求が含まれる。ここで,複数の規制要求は,互いに異なる位置にあるプライマリーユーザー(Aタイプのプライマリーユーザー及びBタイプのプライマリーユーザー)の互いに異なる信号に応じたものである。以下詳細に説明する。
【0058】
<<Aタイプ信号>>
このクラスには,Aタイプのプライマリーユーザーの信号の規制要求が含まれる。そのような要求としては,検出閾値,検出バンド幅などがある。規制情報クラスの各インスタンスには,Aタイプ信号クラスのインスタンスを1つ含ませることが可能である。なお,Aタイプ信号クラスのインスタンスを規制情報クラスのインスタンスに含ませなくてもよい。
【0059】
<<Bタイプ信号>>
このクラスには,Bタイプのプライマリーユーザーの信号の規制要求が含まれる。そのような要求としては,検出閾値,検出バンド幅などがある。規制情報クラスの各インスタンスには,Bタイプ信号クラスのインスタンスを1つ含ませることが可能である。なお,Bタイプ信号クラスのインスタンスを規制情報クラスのインスタンスに含ませなくてもよい。
【0060】
以上詳細に説明したように,センシング情報は,4種類のクラスにクラス分けされる。そして,このクラス分けに基づいて,参照モデルを構築する。この参照モデルは,特願2009−169347に示した通り,センシング情報を交換するためのものである。以下詳細に説明する。
【0061】
図4は,本発明の無線通信システムを構成する無線通信デバイスに搭載されるインターフェイスの参照モデルを説明するための模式図である。
【0062】
図4に示す参照モデルは,無線通信システムを構成する無線通信デバイスに搭載されるインターフェイスの基本的な構成を示すものであり,当該インターフェイスを実装するときに有効となるモデルである。すなわち,センシングインターフェイスは,センシング情報等の情報交換に適したデータ構造を定義するものであり,かつ,そのデータ構造は,コグニティブ無線通信システムのあらゆる構成要素の間で解読可能である必要がある。このようなインターフェイスは,標準規格(例えば,IEEE 1900.6)に準拠したものであることが好ましいが,ここで説明する参照モデルに従ったインターフェイスであればいかなるものであってもよい。
【0063】
そして,この参照モデル(センシングインターフェイスサービス)の一部又は全部は,無線通信システムの各構成要素(スペクトラムセンサー,コグニティブエンジン(CE),及びデータアーカイブ(DA))のインターフェイスとして適用される。さらに,このセンシングインターフェイスサービス又はそのインターフェイスを提供するために必要な機能は,ISO/IEC7948−1:1994におけるオープンシステムインターコネクションモデル(OSIモデル:開放型システム間相互接続モデル)の任意の階層に対してアクセス可能である。
【0064】
図4に示すように,このセンシングインターフェイスサービスには,3種類のサービスアクセスポイント(SAP:service access point)が含まれている。SAPとは,OSIモデルにおける論理アドレスの概念をいい,一般的には,各階層間でのインターフェイスに相当する。本態様による参照モデルの3つのSAPは,具体的には,コミュニケーションSAP(C−SAP),アプリケーションSAP(A−SAP),メジャメントSAP(M−SAP)である。本態様による参照モデルでは,どのSAPも,シナリオによっては,3つ以上の階層(例えば,ネットワーク層,データリンク層,及び物理層)に関与可能となっている点が特徴的である。そして,これら3種類のSAPを用いることにより,無線通信システムにおいて,1つ以上のスペクトラムセンサーとそのクライアントとの間でセンシング情報の交換を行うことができるようになる。
【0065】
以下,3種類のSAPを詳細に説明する。各SAPは,ロジカルインターフェイスを構成しており,他のSAPと区別可能になっている。また,各SAPでは,上述したクラス分けを用いて,プリミティブが記述(定義)されている。プリミティブは,センシング情報を取得したり設定を行ったりするために使用されるものである。
【0066】
<コミュニケーションSAP>
コミュニケーションSAPは,スペクトラムセンサーとそれらのクライアントの間でのセンシング情報等の情報交換に用いる通信サービスを提供する。このように,コミュニケーションSAPは,複数の階層(ネットワーク層,データリンク層,及び物理層)に関与することが可能である。
【0067】
ここで,クライアントの役割は,スペクトラムセンサー,コグニティブエンジン(CE),及びデータアーカイブ(DA)のいずれもが果たすことが可能である。例えば,スペクトラムセンサーが,無線通信デバイスとは離れて独立して動作するスタンドアローン型のものである場合,そのスペクトラムセンサーとコグニティブエンジン(CE)との間の通信は,PHY−MAC間のSAPと,MAC−ネットワーク間のSAPというように,2つの階層に関与する。
【0068】
そして,コミュニケーションSAPは,概略的には,コグニティブ無線通信システムの構成要素が有する通信機構(サブシステム)に相当する。なお,コミュニケーションSAPは,必ずしも,2つ又はそれ以上の階層に関与する必要はない。例えば,スペクトラムセンサーが無線通信デバイスに組み込まれている場合は,そのスペクトラムセンサーとコグニティブエンジン(CE)との間の通信は,無線通信デバイス内のデータバスを用いて行われるため,OSIモデルの複数の階層に関与する必要はない。
【0069】
以下,具体的に説明する。
コミュニケーションSAPは,センサーとそのクライアントの間で,センシング情報を交換するために用いられる。ここで,センシング情報には,上述したクラス分けにより,センシングメッセージ,センサーメッセージ,制御メッセージ,及び規制情報が含まれている。クライアントの役割は,包括的な1群のプリミティブを提供して,それらのプリミティブをトランスポートプロトコル上でマッピング(展開)することによって,コグニティブ無線通信エンティティから通信メカニズムを取り除くことにある。なお,各プリミティブは,テーブルの形式で記述されている。
【0070】
コグニティブ無線通信エンティティは,コミュニケーションSAPから,2つのサービスを享受することができる。2つのサービスとは,センシング情報送信サービスと,センシング情報受信サービスである。以下詳細に説明する。
【0071】
<<センシング情報送信サービス>>
このプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティがセンシング情報を他のコグニティブ無線通信エンティティに送信するために使用される。具体的には,このプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティがセンシング情報をそのコミュニケーションSAPを介して,コミュニケーションSAPを含む他のコグニティブ無線通信エンティティに送信するために使用される。より具体的には,コグニティブ無線通信エンティティがこのサービスを要求(request)すると,その要求を受けたコグニティブ無線通信エンティティが要求したコグニティブ無線通信エンティティに対して応答(response)するようになっている。そして,この応答には,ソースID,センシング情報の宛先,センシング情報などに関する情報が含まれている。
【0072】
<<センシング情報受信サービス>>
センシング情報受信サービスは,コグニティブ無線通信エンティティが,コミュニケーションSAPを含む他のコグニティブ無線通信エンティティからセンシング情報を受信するために使用される。具体的には,センシング情報受信サービスに対応するプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティがそのコミュニケーションSAPを介して,コミュニケーションSAPを含む他のコグニティブ無線通信エンティティからセンシング情報を受信するために使用される。より具体的には,コグニティブ無線通信エンティティがこのサービスを要求(request)すると,その要求を受けたコグニティブ無線通信エンティティが要求したコグニティブ無線通信エンティティに対して応答(response)するようになっている。そして,この応答には,ソースID,センシング情報の宛先,センシング情報などに関する情報が含まれている。
【0073】
<アプリケーションSAP>
アプリケーションSAPは,例えばIEEE1900.6に準拠した構成要素に,センシング情報といったアプリケーションサービスを提供する。例えば,このアプリケーションSAPは,IEEE1900.6のアプリケーションに用いられる。このようなアプリケーションは,その目的(例えば,ポリシーの調査や,スペクトラムの利用状況の解析)のためにセンシング情報を利用するものである。
【0074】
以下,具体的に説明する。
アプリケーションSAPは,制御/アプリケーションが,コグニティブ無線通信エンティティのセンシングインターフェイスサービスと情報のやりとりをするために使用される。アプリケーションSAPには,包括的な1群のプリミティブがあり,これらのプリミティブを用いることによって,コグニティブ無線通信エンティティがスペクトラムセンシングを制御したり,スペクトラムセンシングで得られたセンシング情報を取得したりすることが可能となる。なお,各プリミティブは,テーブルの形式で記述されている。
【0075】
コグニティブ無線通信エンティティは,アプリケーションSAPから,3つのサービスを享受することができる。3つのサービスとは,センサー開示サービスと,センシング情報アクセスサービスと,管理・構成サービスである。
【0076】
<<センサー開示サービス>>
センサー開示サービスは,コグニティブ無線通信エンティティに属する制御/アプリケーションが,利用可能なスペクトラム計測モジュールを開示可能な一般的なフレームワークを提供するものである。また,このサービスによって,コグニティブ無線通信エンティティに属する制御/アプリケーションが利用可能な通信サブシステムを開示可能な一般的なフレームワークを提供するものである。これにより,通信サブシステムを含む他のコグニティブ無線通信エンティティに向けてセンシング情報を送出する機構が提供されることとなる。具体的には,このサービスによって,スペクトラム計測モジュールのIDや通信サブシステムのIDが開示される。
【0077】
ここで,センサー開示サービスのプリミティブは,アプリケーションSAPの一部をなすものである。なお,各プリミティブは,テーブルの形式で記述されている。
【0078】
スペクトラム計測モジュールIDのプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティの制御/アプリケーションがスペクトラム計測モジュールIDのリストを取得するために使用される。
【0079】
また,通信サブシステムIDのプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティの制御/アプリケーションが通信サブシステムIDのリストを取得するために使用される。
【0080】
<<センシング情報アクセスサービス>>
センシング情報アクセスサービスは,コグニティブ無線通信エンティティに属する制御/アプリケーションが,この標準化(IEEE1900.6)で定義されたロジカルインターフェイスを介して,センシング情報にアクセス可能な一般的なフレームワークを提供するものである。このサービスによって,コグニティブ無線通信エンティティに属する制御/アプリケーションは,センシング情報読出しや,センシング情報書込みを行うことが可能となる。
【0081】
ここで,センシング情報アクセスサービスのプリミティブは,アプリケーションSAPの一部をなすものである。なお,各プリミティブは,テーブルの形式で記述されている。
【0082】
センシング情報読出しのプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティの制御/アプリケーションがセンシング情報の読み出しを行うために使用される。具体的には,コグニティブ無線通信エンティティに属する制御/アプリケーションが,リストに応じたセンシング情報の読み出しを要求すると,その要求に応じた結果を反映した応答が得られることとなる。
【0083】
また,センシング情報書込みのプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティの制御/アプリケーションがセンシング情報の書き込みを行うために使用される。具体的には,コグニティブ無線通信エンティティに属する制御/アプリケーションが,リストに応じたセンシング情報の書き込みを要求すると,その要求に応じた結果を反映した応答が得られることとなる。ここで,要求と応答のパラメータとしては,センシング情報リストと,クライアント優先レベルとがある。センシング情報リストは,コグニティブ無線通信エンティティに属する制御/アプリケーションが書き込みを要求しているセンシング情報のリスト,又は要求されたセンシング情報のリストである。
【0084】
<<管理・構成サービス>>
管理・構成サービスは,コグニティブ無線通信エンティティに属する制御/アプリケーションが,そのコグニティブ無線通信エンティティを管理したり,コグニティブ無線通信エンティティ間での通信を構成したりすることが可能な一般的なフレームワークを提供するものである。すなわち,このサービスによって,コグニティブ無線通信エンティティに属する制御/アプリケーションは,センサーの管理や通信構成を行うことができる。
【0085】
ここで,管理・構成サービスのプリミティブは,アプリケーションSAPの一部をなすものである。なお,各プリミティブは,テーブルの形式で記述されている。
【0086】
センサーの管理としては,ロック,アンロック,ブレイクロック,トリガーがある。
【0087】
ロックのプリミティブは,制御/アプリケーションによって使用され,スペクトラム計測モジュールや通信サブシステムといったリソースをロックするものである。このロックにより,他の制御/アプリケーションがリソースにアクセスすることを防止することができる。一方,アンロックのプリミティブやブレイクロックのプリミティブが使用された場合には,他の制御/アプリケーションがリソースにアクセスすることが可能となる。このようなリソースのロック,アンロック,及びブレイクロックは,必要に応じて制御/アプリケーションによって行われ,その結果は,各リソースにも通知される。したがって,リソースのロック,アンロック,及びブレイクロックに際しては,パラメータとして,スペクトラム計測モジュールのIDや,通信サブシステムのIDが用いられる。
【0088】
トリガーのプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティの制御/アプリケーションが特定の作動(イベント)をトリガーするために使用される。トリガーの要求に際しては,イベントIDと,トリガー時間と,タイムアウトとがパラメータとして使用される。ここで,イベントIDは,特別にトリガーとして設定されたイベントに固有のものである。トリガー時間は,例えば,トリガー動作の開始時間である。タイムアウトは,タイムアウトのエラーを待機する最大時間である。そして,トリガーのプリミティブが使用されると,その応答として,トリガーの結果(イベントIDと,そのイベントのステータス)が制御/アプリケーションに通知される。
【0089】
通信構成のプリミティブ(通信管理のプリミティブ)は,コグニティブ無線通信エンティティの制御/アプリケーションが,そのコグニティブ無線通信エンティティ上で利用可能な通信を管理するために使用される。具体的には,通信構成のプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティの制御/アプリケーションが,そのコグニティブ無線通信エンティティの通信タイプ(ネットワークのタイプ)の取得を必要としたときに使用される。
【0090】
<メジャメントSAP>
メジャメントSAPは,スペクトラムセンサーのスペクトラム計測機能を管理するために,リコンフィギャレーションサービスやメジャメントサービスを提供する。すなわち,メジャメントSAPも,シナリオによっては,複数の階層と関与することが可能である。スペクトラム計測機能としては,例えば,アナログディジタル変換(ADC),ディジタルアナログ変換(DAC),フィルタリング,及び信号状態がある。
【0091】
メジャメントSAPは,コグニティブ無線通信エンティティがスペクトラムセンシングを制御したり,スペクトラムセンシングを行うことでセンシング情報を取得したりするための包括的な1群のプリミティブを提供するものである。各プリミティブは,テーブルの形式で記述されている。
【0092】
コグニティブ無線通信エンティティは,メジャメントSAPから,4つのサービスを享受することができる。4つのサービスとは,計測性能開示サービス,計測構成開示サービス,計測構成設定サービス,及び情報サービスである。
【0093】
<<計測性能開示サービス>>
計測性能開示サービスとは,コグニティブ無線通信エンティティがそのエンティティの計測性能に関連する情報を得ることが可能な一般的なフレームワークを提供するものである。
【0094】
計測性能開示サービスに関連するプリミティブは,メジャメントSAPの一部をなすものであり,コグニティブ無線通信エンティティがスペクトラム計測モジュール(スペクトラムセンサー)の性能に関連する情報を取得するために使用される。具体的には,コグニティブ無線通信エンティティがこのサービスを要求(request)すると,その要求に応じて,スペクトラム計測モジュールがコグニティブ無線通信エンティティに対して応答(response)するようになっている。そして,この応答には,計測性能ID,計測範囲,分解能などに関する情報が含まれている。
【0095】
<<計測構成開示サービス>>
計測構成開示サービスとは,コグニティブ無線通信エンティティがスペクトラム計測モジュールの計測構成に関連する情報を得ることが可能な一般的なフレームワークを提供するものである。具体的には,コグニティブ無線通信エンティティがこのサービスを要求(request)すると,その要求に応じて,スペクトラム計測モジュールがコグニティブ無線通信エンティティに対して応答(response)するようになっている。そして,この応答には,センサーPHYプロフィール,センサーアンテナプロフィール,及びセンサー位置(ロケーション)プロフィールが含まれている。
【0096】
ここで,これらのプロフィールに関連するプリミティブは,メジャメントSAPの一部をなすものである。センサーPHYプロフィールのプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティが,スペクトラム計測モジュールの物理的な構成に関する情報(例えば,スペクトラム計測モジュールのPHYプロフィールに固有の情報)を取得するために使用されるものである。また,センサーアンテナプログラムのプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティがスペクトラム計測モジュールのアンテナの構成に関する情報(例えば,スペクトラム計測モジュールのアンテナプロフィールに固有の情報)を取得するために使用されるものである。センサー位置プロフィールのプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティがスペクトラム計測モジュールの位置に関連する情報を取得するために使用されるものである。
【0097】
<<計測構成開示設定サービス>>
計測構成開示設定サービスとは,コグニティブ無線通信エンティティがスペクトラム計測モジュールの構成を設定することが可能な一般的なフレームワークを提供するものである。具体的には,コグニティブ無線通信エンティティがこのサービスを要求(request)すると,その要求に応じた構成(計測対象,計測プロフィール,及び計測パフォーマンス)が,パラメータとしてスペクトラム計測モジュールにセットされる。また,スペクトラム計測モジュールは,パラメータのセットの結果をコグニティブ無線通信エンティティに対して応答(response)するようになっている。
【0098】
ここで,これらのプロフィールに関連するプリミティブは,メジャメントSAPの一部をなすものである。計測対象のプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティが,スペクトラム計測モジュールの計測対象を設定(例えば,スペクトラム計測モジュールの計測対象に固有の情報をセット)するために使用されるものである。また,計測プロフィールのプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティがスペクトラム計測モジュールの計測プロフィールを設定するために使用されるものである。センサー位置プロフィールのプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティがスペクトラム計測モジュールのパフォーマンスの目標値を設定するために使用されるものである。
【0099】
<<情報サービス>>
情報サービスとは,コグニティブ無線通信エンティティがスペクトラム計測モジュールの計測構成に関する情報を収集することが可能な一般的なフレームワークを提供するものである。具体的には,コグニティブ無線通信エンティティがこのサービスを要求(request)すると,その要求に応じて,スペクトラム計測モジュールがコグニティブ無線通信エンティティに対して応答(response)するようになっている。そして,この応答には,センサープロフィール,計測プロフィール,信号計測,チャネル計測,及びRAT計測が含まれている。ここで,これらのプロフィールに関連するプリミティブは,メジャメントSAPの一部をなすものである。
【0100】
センサープロフィールのプリミティブは,2種類のプリミティブを含んでいる。1つは,センサー製造者プロフィールのプリミティブであり,もう1つは,センサーパワープロフィールのプリミティブである。これら2つのプリミティブ(センサープロフィールのプリミティブ)は,それぞれ,コグニティブ無線通信エンティティがスペクトラム計測モジュールの製造者に関する情報,スペクトラム計測モジュールの電力消費に関する情報を収集するために使用されるものである。
【0101】
計測プロフィールのプリミティブは,2種類のプリミティブを含んでいる。1つは,計測プロフィールのプリミティブであり,もう1つは,計測位置(ロケーション)情報のプリミティブである。これら2つのプリミティブ(計測プロフィールのプリミティブ)は,それぞれ,コグニティブ無線通信エンティティが,スペクトラム計測モジュールが実行したスペクトラム計測に関する情報,スペクトラム計測モジュールがスペクトラム計測を実行したときの位置に関する情報を収集するために使用されるものである。ここで,スペクトラム計測に関する情報には,センサー計測プロフィールのID,優先レベル,確信度などがある。
【0102】
信号計測プロフィールのプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティが,計測された信号に関連する計測値に関する情報を収集するために使用されるものである。ここで,計測値に関する情報には,信号計測のID,信号レベル,推定振幅,推定位相,推定周波数,推定バンド幅,変調タイプ,デューティーサイクル,トラフィックパターンなどがある。
【0103】
チャネル計測プロフィールのプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティが,計測されたチャネルに関連する計測値に関する情報を収集するために使用されるものである。
【0104】
RAT計測プロフィールのプリミティブは,コグニティブ無線通信エンティティが,計測されたRATに関連する計測値に関する情報を収集するために使用されるものである。
【0105】
以上詳細に説明したように,センシングインターフェイスサービスに関わる3種類のSAPは,上述したクラス分けを用いたプリミティブによって定義される。
【0106】
そして,本発明では,上述したように各SAPにおいてプリミティブを用いることで,図4に示したような参照モデル(共通のインターフェイス)を構築することができる。また,1つの無線通信デバイスは,図4に示す参照モデルのように3種類のSAPを全て含む必要はない。例えば,複数の無線通信デバイスを含む無線通信システムにおいて,スペクトラムセンサーとそのクライアントの間で情報交換をするためには,図5に示すように構成することが可能である。
【0107】
図5に示す例では,コグニティブエンジン(CE)を搭載した制御装置に,アプリケーションSAPと,第1のコミュニケーションSAPを設け,スペクトラムセンサーに,メジャメントSAPと第2のコミュニケーションSAPを設けられており,これにより,無線通信システムが構築されている。
【0108】
そして,この無線通信システムでは,まず,スペクトラムセンサーが,メジャメントSAP(スペクトラム計測部)を用いてスペクトラムセンシングを行うことにより,無線通信デバイスからの信号を受信する。続いて,スペクトラムセンサーは,受信した信号に関する情報をセンシング情報として,第2のコミュニケーションSAPを介して送出する。一方で,制御装置は,第1のコミュニケーションSAPを介してスペクトラムセンサーからセンシング情報を受信する。続いて,制御装置は,アプリケーションSAP(制御/アプリケーション)を用いて,スペクトラムセンサーから受信したセンシング情報を蓄積する。したがって,制御装置には,スペクトラムセンサーからの情報が集まることとなる。ここで,スペクトラムセンサーは,複数であってもよく,この場合には,制御装置には多数のセンシング情報が集約されて,統合される。
【0109】
また,制御装置は,アプリケーションSAP(制御/アプリケーション)を用いて,スペクトラムセンサーから受信したセンシング情報の解析を行うことができるとともに,その解析結果に応じた制御動作を行うことができる。また,本発明では,センシング情報が制御メッセージクラス,センサーメッセージクラス,センシングメッセージクラス,及び規制情報クラスの4つのクラスにクラス分けされているので,制御装置によるセンシング情報の解析を速やかに行うことができる。
【0110】
(特に好ましい態様)
続いて,本発明の特に好ましい態様を説明する。この好ましい態様では,上述した無線通信システムが航空産業に適用される。
【0111】
具体的には,無線通信システムが図6に示すように空港に設置される。図6に示す例では,無線通信システムは,制御装置と,複数のスペクトラムセンサーとで構成されている。なお,図6に示す無線通信システムを図4に示した参照モデルに倣って表現すると図7のようになる。
【0112】
制御装置は,センシング情報の受信や処理を行ったり,無線通信システムの制御や必要な判断を行ったりするためのものである。図6に示す例では,制御装置は,空港のコンコース内において,搭乗ゲートの近傍に設けられている。この搭乗ゲートでは,乗客が荷物(例えば,手荷物(図6)やチェックイン荷物)を所持した状態で通過する。また,制御装置には,本態様では,警報装置が搭載されている。この警報装置は,警報を鳴らすためのものであり,制御装置による制御(具体的には警報信号)にしたがって動作する。
【0113】
スペクトラムセンサーは,メジャメントSAPとコミュニケーションSAPを含むのみであるため,小型であり,携帯可能である。そこで,本態様では,スペクトラムセンサーは,空港スタッフが被服に装着しているバッジやタグに装着されており,移動可能となっている。なお,スペクトラムセンサーを空港スタッフの被服に直接的に装着してもよい。ここで,空港スタッフは,警備員や案内係が含まれ,さらには,客室乗務員などが含まれてもよい。なお,スペクトラムセンサーを空港のコンコース内に荷物センサーとして据え置くように設置してもよい。
【0114】
そして,この無線通信システムでは,複数のスペクトラムセンサーからのセンシング情報が制御装置に集約される。つまり,制御装置は,センシング情報を統合する統合装置として機能する。続いて,制御装置は,スペクトラムセンサーから受信したセンシング情報(例えばセンシングメッセージクラスに含まれる推定周波数情報)から,航空産業において使用されるエアバンド(108MHz〜137MHz)の電波と干渉する可能性のある信号を特定する。つまり,制御装置は,エアバンド干渉の検出器としても機能する。ここで,エアバンドの電波と干渉する可能性のある信号を送出する電子機器としては,乗客の携帯電話,パーソナルコンピュータ,ゲーム機であって,電源をオフにし忘れたものが挙げられる。そして,制御装置は,そのような信号を特定した場合には,警報信号を生成して,警報装置に送信する。警報装置は,警報信号に応じて警報を鳴らす。また,制御装置は,スペクトラムセンサーに,検出すべき無線の種類や周波数に関する情報を通知する。
【0115】
空港スタッフは,警報装置の警報が鳴った場合には,乗客の荷物などの所持品の中から,無線通信デバイス(例えば,携帯電話,パーソナルコンピュータ,ゲーム機)を探し出し,乗客に無線通信デバイスの電源を切るように指示をする。これにより,無線通信デバイスの送信機がアクティブな状態で搭乗ゲートを通過することを未然に防ぐことができ,航空産業における安全性を確保することができる。
【0116】
上述した好ましい態様によれば,コンコース内に分配されている複数のスペクトラムセンサーを用いるので(分配型センシングであるので),制御装置に複数のセンシング情報を効率的に集約(統合)することができる。また,複数のセンシング情報の各々は,クラス分けがなされているので,制御装置は,複数のセンシング情報を効率的に処理して必要な情報を抽出することができる。特に,本態様では,制御装置が,エアバンドの信号を送出する送信機を含む無線通信デバイスに関する情報を特定して,警報装置を用いて警報を鳴らすので,そのような無線通信デバイスが搭乗ゲートを通過することを未然に防ぐことができる。
【0117】
また,上述した好ましい態様において,より好ましくは,制御装置は,センシング情報に基づいて,エアバンド干渉の可能性がある無線通信デバイスの移動(相対位置や方向)を追跡することが好ましい。これにより,そのような無線通信デバイスが搭乗ゲートを通過するのを確実に防止することができる。
【0118】
なお,上述した好ましい態様(図6)では,制御装置に警報装置が搭載されているとした。しかし,警報装置は,制御装置とは物理的に離れていてもよい。また,制御装置は,上述した好ましい態様(図6)では,搭乗ゲートの近傍に設けられているとしたが,搭乗ゲートの近傍ではない位置に設けられてもよい。さらには,図6に示した無線通信システムは,乗客の荷物だけを搬送するベルトコンベヤーの近傍に設置されてもよい。
【0119】
ところで,通常の無線通信システムでは,無線通信(データ通信)を行うことを目的としている。一方で,本態様に係る無線通信システムでは,エアバンド干渉の可能性がある電子機器を探し出すことに特化されている。言い換えると,本発明は,データ通信を行うための無線通信システムをエアバンド干渉検出に特化させたことに技術的意義があるといえる。
【0120】
なお,上述した好ましい形態では,エアバンド干渉の可能性がある場合に,警報装置を用いて警報を鳴らしたが,警報を鳴らすことに限られることはない。例えば,制御装置がコミュニケーションSAPを介して各スペクトラムセンサーにエアバンド干渉の可能性がある旨を知らせてもよい。これにより,エアバンド干渉の可能性がある無線通信デバイスを速やかに見つけ出す可能性を高めることができる。
【0121】
なお,上述した態様では,無線通信システムを,複数のスペクトラムセンサーの各々から制御装置にセンシング情報を送信するように構成した。しかし,無線通信システムの構成はこれに限られるものではない。例えば,複数のスペクトラムセンサーの1つをプラットフォームとして,そのプラットフォームに他のスペクトラムセンサーのセンシング情報を統合してから,制御装置に送信するように無線通信システムを構成してもよい。また,上述した態様において,スペクトラムセンサーは1つであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は,航空産業において好適に利用されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空産業に適用される無線通信システムであって,
第1のコミュニケーションSAPとアプリケーションSAPとを含む制御装置と,
第2のコミュニケーションSAPとメジャメントSAPとを含むスペクトラムセンサーとを含み,
前記スペクトラムセンサーは,
前記メジャメントSAPを用いてスペクトラムセンシングを行うことにより,無線通信デバイスからの信号を受信するとともに,
受信した信号に関する情報をセンシング情報として,前記第2のコミュニケーションSAPを介して送出するものであり,
前記制御装置は,
前記第1のコミュニケーションSAPを介して前記スペクトラムセンサーから前記センシング情報を受信するとともに,
前記アプリケーションSAPを用いて前記センシング情報の解析を行うことにより,前記無線通信デバイスからの信号が前記航空産業において使用されるエアバンドの電波に干渉するかどうかを特定するものである,
無線通信システム。
【請求項2】
前記メジャメントSAPは,
前記センシング情報を,制御メッセージクラス,センサーメッセージクラス,センシングメッセージクラス,規制情報クラスにクラス分けされた情報として生成するとともに,
前記無線通信デバイスからの信号の周波数を推定した結果に関する情報を推定周波数情報として前記センシングメッセージクラスに含め,
前記アプリケーションSAPは,
前記センシング情報のセンシングメッセージクラスに含まれる推定周波数情報に関する情報に基づいて,前記無線通信デバイスからの信号が前記エアバンドの電波に干渉するかどうかを特定する,
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記制御装置は,さらに,
警報を鳴らすための警報装置を含み,
前記警報装置は,
前記制御装置が前記無線通信デバイスからの信号が前記エアバンドの電波に干渉するものであると特定した場合に,前記警報を鳴らす,
請求項1又は2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記制御装置は,空港の搭乗ゲートに設置され,
前記スペクトラムセンサーは,携帯可能であり,
これにより,前記制御装置は,移動可能な前記スペクトラムセンサーからのセンシング情報に基づいて,前記無線通信デバイスの位置を特定する,
請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記制御装置は,
前記無線通信デバイスからの信号が前記エアバンドの電波に干渉するものであると特定した場合,その旨を前記第1のコミュニケーションSAP及び前記第2のコミュニケーションSAPを介して前記スペクトラムセンサーに通知する,
請求項1〜4のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記スペクトラムセンサーは複数であり,
前記制御装置は,前記複数のスペクトラムセンサーからのセンシング情報を統合する,
請求項1〜5のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
無線通信システムを用いて前記航空産業において使用されるエアバンドにおいて干渉が生じているかどうかを特定するためのエアバンド干渉検出方法であって,
前記無線通信システムは,
第1のコミュニケーションSAPとアプリケーションSAPとを含む制御装置と,
第2のコミュニケーションSAPとメジャメントSAPとを含むスペクトラムセンサーと
を含み,
前記エアバンド干渉検出方法は,
前記スペクトラムセンサーが,前記メジャメントSAPを用いてスペクトラムセンシングを行うことにより,無線通信デバイスからの信号を受信するステップと,
前記スペクトラムセンサーが受信した信号に関する情報をセンシング情報として,前記第2のコミュニケーションSAP及び前記第1のコミュニケーションSAPを介して送信するステップと,
前記制御装置が,前記アプリケーションSAPを用いて前記センシング情報を解析することにより,前記無線通信デバイスからの信号が前記エアバンドの電波に干渉するかどうかを特定するステップと,
を含み,
これにより,前記エアバンドにおける干渉を検出することができる,
エアバンド干渉検出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−151475(P2011−151475A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9195(P2010−9195)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)総務省委託「電波資源拡大のための研究開発」の一環,産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】