説明

航跡統合装置及びプログラム及び航跡統合方法

【課題】センサが目標を観測した観測データに基づいて推定した目標の航跡を表わす複数のセンサ航跡データを統合して、精度の高い統合航跡データを生成する。
【解決手段】航跡入力部210は、複数のセンサ航跡データ510を入力する。航跡精度算出部260は、航跡入力部210が入力したセンサ航跡データ510に基づいて、航跡精度評価値を算出する。航跡精度評価値は、センサ航跡データの精度を表わす。重み付け算出部270は、航跡精度算出部260が算出した航跡精度評価値に基づいて、航跡調整係数を算出する。航跡調整係数は、センサ航跡データの重み付けを表わす。統合航跡生成部280は、重み付け算出部270が算出した航跡調整係数に基づいて、センサ航跡データを統合し、統合航跡データ580を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のセンサが目標を観測した観測データに基づいて目標の航跡を推定した複数のセンサ航跡データを統合する航跡統合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のセンサが目標を観測した観測データに基づいて目標の航跡を推定するシステムにおいて、センサから観測データを収集して、追尾・相関・統合などの処理を一箇所で行う方式がある。
また、センサ側で追尾・相関・統合などの処理を行い、センサ単独で航跡を生成してから、生成された航跡データを収集して、航跡間の相関・統合をする方式がある。
後者の方式は、センサから中央(航跡統合装置)に送られる情報量が少ないので、通信負荷や中央の処理負荷が低減されるという利点がある。
【特許文献1】特開平8−304528号公報
【特許文献2】特開2007−10367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
センサが目標を観測する観測方法によって、目標の検出位置が異なる場合がある。また、同一の観測方法を用いる場合であっても、センサと目標との位置関係その他の条件により、目標の検出位置が異なる場合がある。
このため、センサが生成する航跡の間には、観測方法などの要因により生じるバイアス誤差が存在する場合がある。
【0004】
この発明は、例えば、上記のような課題を解決するためになされたものであり、センサ側で生成した航跡の間にバイアス誤差が含まれている場合でも、精度の高い航跡を生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明にかかる航跡統合装置は、
情報を処理する処理装置と、航跡入力部と、航跡精度算出部と、重み付け算出部と、統合航跡生成部とを有し、
上記航跡入力部は、上記処理装置を用いて、センサが目標を観測した観測データに基づいて推定した目標の航跡を表わすセンサ航跡データを入力し、
上記航跡精度算出部は、上記処理装置を用いて、上記航跡入力部が入力したセンサ航跡データに基づいて、上記センサ航跡データの精度を表わす航跡精度評価値を算出し、
上記重み付け算出部は、上記処理装置を用いて、上記航跡精度算出部が算出した航跡精度評価値に基づいて、上記センサ航跡データの重み付けを表わす航跡調整係数を算出し、
上記統合航跡生成部は、上記処理装置を用いて、上記重み付け算出部が算出した航跡調整係数に基づいて、上記センサ航跡データを統合し、統合航跡データを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明にかかる航跡統合装置によれば、センサ航跡データの精度を航跡精度評価値により評価し、評価結果に基づいて算出した航跡調整係数に基づいて、センサ航跡データを統合するので、生成した統合航跡データが表わす目標の航跡の精度が高くなるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
実施の形態1を、図1〜図6を用いて説明する。
【0008】
図1は、この実施の形態における目標観測システム800の構成の一例を示すシステム構成図である。
目標観測システム800は、目標400の現在位置や速度を観測し、航跡表示装置300に表示するシステムである。目標観測システム800は、例えば、地上走行誘導管制システムにおいて、空港内の航空機や車両を目標400として観測し、航跡表示装置300に表示して、管制官(オペレータ)に航空機の位置などの情報を通知する。
【0009】
目標観測システム800は、1以上のセンサ101〜103を有する。
センサ101〜103は、目標400を観測し、観測して得た観測データに基づいて、目標400の航跡を推定し、推定した目標400の航跡を表わすセンサ航跡データ511〜513を出力する。
センサ101〜103は、例えば、空港面探知レーダ(ASDE:Airport Surface Detection Equipment)、マルチラテレーション(MLAT:Multi−Lateration)システム、IR(Infrared)センサ、EW(Electronic Warfare)センサ、EO(Electronic Optic)センサ、ESM(Electronic Support Measures)センサなどにより目標400を観測する。
センサ101〜103は、それぞれ単独で、目標400を観測して得られた観測データに基づいて、目標400の航跡を推定する。また、目標400が複数ある可能性がある場合、センサ101〜103は、得られた観測データの相関処理を行い、観測データを目標400ごとに振り分けたのち、目標400ごとの航跡を推定する。
ここで、目標400の航跡とは、例えば、観測時刻における目標400の位置、速度などの情報である。センサ101〜103が目標400を検出した検出位置には観測誤差が含まれているので、目標400の航跡における目標400の位置は、センサ101〜103が目標を検出した検出位置そのままではなく、過去の観測データなどを考慮して、推定したものである。
センサ101〜103は、推定した目標400の航跡を表わすセンサ航跡データ511〜513を、航跡統合装置200に対して出力する。
センサ航跡データ511〜513には、センサ101〜103が推定した目標400の位置や速度を表わす情報のほか、センサ101〜103が目標を観測した最新時刻や、目標400の識別情報、センサ及びセンサが観測に用いた観測方法などを識別するセンサ識別情報などが含まれていてもよい。
【0010】
目標観測システム800が複数のセンサ101〜103を有する場合、センサ101〜103が目標400を観測する観測方法は、同一の方法であってもよいし、異なる方法であってもよい。なお、異なる観測方法を組み合わせるほうが、それぞれの観測方法の欠点を補い合うことができ、好ましい。
また、センサ101〜103は、1台のセンサが複数の観測方法で目標400を観測できるものであってもよい。その場合、気象条件などに応じて観測方法を切り替えて使用してもよいし、同時に複数の観測方法で目標400を観測してもよい。その場合、複数の観測方法で観測した観測データをすべて相関統合して、1つの目標400につき1つのセンサ航跡データを生成してもよいし、それぞれの観測方法ごとに観測データを相関統合して、1つの目標400につき複数のセンサ航跡データを生成してもよい。
【0011】
航跡統合装置200(フュージョンセンター、センサ情報融合装置)は、センサ101〜103が出力したセンサ航跡データ511〜513を入力する。航跡統合装置200が入力するセンサ航跡データ511〜513のなかには、同一の目標400についてのセンサ航跡データが複数含まれる場合がある。例えば、複数のセンサが同じ目標400を観測して、センサ航跡データを生成した場合や、1つのセンサが複数の観測方法で1つの目標400を観測して、複数のセンサ航跡データを生成した場合などである。
航跡統合装置200は、入力したセンサ航跡データ511〜513のなかに同一の目標400についてのセンサ航跡データが複数含まれている場合、複数のセンサ航跡データを統合して、1つの統合航跡データ580を生成する。なお、入力したセンサ航跡データ511〜513のなかに1つの目標400についてのセンサ航跡データが1つしかない場合、航跡統合装置200は、そのセンサ航跡データと同じ内容を表わす統合航跡データ580を生成する。
航跡統合装置200は、生成した統合航跡データ580を出力する。
【0012】
航跡表示装置300(表示処理部)は、航跡統合装置200が出力した統合航跡データ580を入力する。
航跡表示装置300は、入力した統合航跡データ580に基づいて、目標400の位置、速度、識別情報などの情報を表示する。
なお、航跡表示装置300は、センサ101〜103が出力したセンサ航跡データ511〜513などを入力し、統合航跡とは別に、入力したセンサ航跡データ511〜513に基づいて、センサ航跡や目標400の検出位置を表示してもよい。このとき、航跡表示装置300は、統合航跡データ580に基づく目標400の位置などの情報を高輝度に表示し、他の情報を低輝度に表示するなど、オペレータが見やすいように加工した情報を表示してもよい。
【0013】
図2は、この実施の形態における航跡統合装置200の外観の一例を示す図である。
航跡統合装置200は、システムユニット910、CRT(Cathode・Ray・Tube)やLCD(液晶)の表示画面を有する表示装置901、キーボード902(Key・Board:K/B)、マウス903、FDD904(Flexible・Disk・Drive)、コンパクトディスク装置905(CDD)、プリンタ装置906、スキャナ装置907などのハードウェア資源を備え、これらはケーブルや信号線で接続されている。
システムユニット910は、コンピュータであり、ファクシミリ機932、電話器931とケーブルで接続され、また、ローカルエリアネットワーク942(LAN)、ゲートウェイ941を介してインターネット940に接続されている。
【0014】
図3は、この実施の形態における航跡統合装置200のハードウェア資源の一例を示す図である。
航跡統合装置200は、プログラムを実行するCPU911(Central・Processing・Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913、RAM914、通信装置915、表示装置901、キーボード902、マウス903、FDD904、CDD905、プリンタ装置906、スキャナ装置907、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。磁気ディスク装置920の代わりに、光ディスク装置、メモリカード読み書き装置などの記憶装置でもよい。
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、FDD904、CDD905、磁気ディスク装置920の記憶媒体は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶装置あるいは記憶部の一例である。
通信装置915、キーボード902、スキャナ装置907、FDD904などは、入力部、入力装置の一例である。
また、通信装置915、表示装置901、プリンタ装置906などは、出力部、出力装置の一例である。
【0015】
通信装置915は、ファクシミリ機932、電話器931、LAN942等に接続されている。通信装置915は、LAN942に限らず、インターネット940、ISDN等のWAN(ワイドエリアネットワーク)などに接続されていても構わない。インターネット940或いはISDN等のWANに接続されている場合、ゲートウェイ941は不用となる。
磁気ディスク装置920には、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、オペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922により実行される。
【0016】
上記プログラム群923には、以下に述べる実施の形態の説明において「〜部」として説明する機能を実行するプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
ファイル群924には、以下に述べる実施の形態の説明において、「〜の判定結果」、「〜の計算結果」、「〜の処理結果」として説明する情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」や「〜データベース」の各項目として記憶されている。「〜ファイル」や「〜データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリになどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示などのCPUの動作に用いられる。抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示のCPUの動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリやキャッシュメモリやバッファメモリに一時的に記憶される。
また、以下に述べる実施の形態の説明において説明するフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、FDD904のフレキシブルディスク、CDD905のコンパクトディスク、磁気ディスク装置920の磁気ディスク、その他光ディスク、ミニディスク、DVD(Digital・Versatile・Disc)等の記録媒体に記録される。また、データや信号は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体によりオンライン伝送される。
【0017】
また、以下に述べる実施の形態の説明において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。すなわち、「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、プログラムは、以下に述べる「〜部」としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、以下に述べる「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0018】
図4は、この実施の形態における航跡統合装置200の機能ブロックの構成の一例を示すブロック構成図である。
航跡統合装置200は、航跡入力部210、航跡相関処理部220、航跡記憶部230、第一位置推定部241、第二位置推定部242、残差算出部243、センサ精度記憶部251、観測誤差係数算出部252、航跡精度算出部260、重み付け算出部270、統合航跡生成部280を有する。
【0019】
航跡入力部210は、CPU911などの処理装置を用いて、センサ101〜103が出力した1以上のセンサ航跡データ510(図1のセンサ航跡データ511〜513に対応)を入力する。
航跡入力部210は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した1以上のセンサ航跡データ510を出力する。
【0020】
航跡相関処理部220は、CPU911などの処理装置を用いて、航跡入力部210が出力した1以上のセンサ航跡データ510を入力する。
航跡相関処理部220は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した1以上のセンサ航跡データ510のなかに、同一の目標400についてのセンサ航跡データ510があるか否かを判別し、入力した1以上のセンサ航跡データ510を、目標ごとのグループにグループ分けする。
例えば、センサ航跡データ510が目標400の識別情報を含む場合、航跡相関処理部220は、識別情報に基づいて目標400を判別し、同一の目標400についてのセンサ航跡データ510を判別する。あるいは、複数のセンサ航跡データ510が表わす目標の位置が、同一の目標400であると判定できるほど近い場合、航跡相関処理部220は、同一の目標400についてのセンサ航跡データ510であると判別する。
【0021】
航跡相関処理部220は、CPU911などの処理装置を用いて、センサ航跡データ520(識別付)を出力する。
センサ航跡データ520(識別付)は、センサ航跡データ510に目標400の識別情報を付加したものである。センサ航跡データ510がもともと目標400の識別情報を含んでいる場合、センサ航跡データ520はセンサ航跡データ510と同一である。センサ航跡データ510が目標400の識別情報を含んでいない場合、航跡相関処理部220が同一の目標400についてのセンサ航跡データ510であると判別した他のセンサ航跡データ510などから目標400の識別情報が判別できれば、その識別情報を付加し、判別できなければ、仮の識別情報を付加する。
【0022】
航跡記憶部230は、CPU911などの処理装置を用いて、航跡相関処理部220が出力した1以上のセンサ航跡データ520(識別付)を入力する。
航跡記憶部230は、磁気ディスク装置920などの記憶装置を用いて、入力した1以上のセンサ航跡データ520(識別付)を記憶する。
【0023】
センサ101〜103は、周期的に繰返し目標400を観測し、センサ航跡データ510を出力する。航跡記憶部230が記憶したセンサ航跡データ520(識別付)は、航跡相関処理部220などが次回以降の処理をする際、過去のセンサ航跡データ530として読み出し、参照する。
通常、過去のセンサ航跡データ530は、過去数回分が参照されるだけで、それ以前のセンサ航跡データ530は参照されない。そのため、航跡記憶部230は、過去N回(Nは、1以上の整数。)分のセンサ航跡データ530を記憶する。
【0024】
第一位置推定部241は、CPU911などの処理装置を用いて、航跡相関処理部220が出力した1以上のセンサ航跡データ520(識別付)を入力する。
第一位置推定部241は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した1以上のセンサ航跡データ520(識別付)それぞれに基づいて、目標400の位置を推定する。
センサ航跡データ520(識別付)が表わす目標400の推定位置は、センサ101〜103が目標を観測した最新時刻におけるものである場合がある。センサ101〜103は、互いに同期して目標400を観測するとは限らないので、センサ航跡データ520(識別付)が表わす目標400の推定位置をそのまま使うと、バラバラの時刻における目標400の推定位置となってしまう。目標400が移動している場合、時刻が異なれば目標400の位置が異なるので、第一位置推定部241は、基準となる時刻(例えば、現在時刻)を定め、その基準時刻における目標400の位置を推定する。例えば、第一位置推定部241は、センサ航跡データ520(識別付)が表わす観測時刻と基準時刻との差を求め、センサ航跡データ520(識別付)が表わす観測時刻における目標400の位置と速度から、目標400が等速直線運動をしているという仮定のもと、基準時刻における目標400の位置を推定する。
第一位置推定部241は、CPU911などの処理装置を用いて、推定した目標400の位置を表わす第一推定位置データ541を出力する。第一位置推定部241が出力する第一推定位置データ541は、第一位置推定部241が入力した1以上のセンサ航跡データ520(識別付)と一対一に対応している。第一推定位置データ541が対応するセンサ航跡データ520(識別付)を判別するため、第一推定位置データ541は、対応するセンサ航跡データ520(識別付)に含まれる目標400の識別情報やセンサ識別情報を含んでもよい。
【0025】
第二位置推定部242は、CPU911などの処理装置を用いて、航跡記憶部230が記憶した1以上の過去のセンサ航跡データ530を入力する。
第二位置推定部242は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した1以上の過去のセンサ航跡データ530それぞれに基づいて、第一位置推定部241と同様に、基準時刻における目標400の位置を推定する。
第二位置推定部242は、CPU911などの処理装置を用いて、推定した目標400の位置を表わす第二推定位置データ542を出力する。第二位置推定部242が出力する第二推定位置データ542は、航跡記憶部230が記憶した過去のセンサ航跡データ530と一対一に対応している。第一推定位置データ541と同様、第二推定位置データ542が対応する過去のセンサ航跡データ530を判別するため、第二推定位置データ542は、対応する過去のセンサ航跡データ530に含まれる目標400の識別情報やセンサ識別情報を含んでもよい。
航跡記憶部230が過去N回分のセンサ航跡データ530を記憶している場合、航跡相関処理部220が出力した1つのセンサ航跡データ520(識別付)に対応して、同一の目標400を同一のセンサが同一の観測方法で観測した観測データに基づくセンサ航跡データ530が最大N個ある(欠測などによりN個未満の場合もあり得る)。このため、第二位置推定部242は、第一位置推定部241が出力した第一推定位置データ541に対応して、最大N個の第二推定位置データ542を出力する。
【0026】
残差算出部243は、CPU911などの処理装置を用いて、第一位置推定部241が出力した第一推定位置データ541と、第二位置推定部242が出力した第二推定位置データ542とを入力する。
残差算出部243は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した第一推定位置データ541それぞれに対応する第二推定位置データ542を判別する。例えば、残差算出部243は、CPU911などの処理装置を用いて、第一推定位置データ541に含まれる目標400の識別情報及びセンサ識別情報を取得し、第二推定位置データ542に含まれる目標400の識別情報及びセンサ識別情報が、取得した目標400の識別情報及びセンサ識別情報と一致する場合に、両者が対応すると判別する。
残差算出部243は、CPU911などの処理装置を用いて、第一推定位置データ541それぞれが表わす目標400の推定位置と、それに対応すると判別した第二推定位置データ542が表わす目標400の推定位置とに基づいて、残差を算出する。
残差算出部243は、CPU911などの処理装置を用いて、算出した残差を表わす残差データ543を出力する。残差データ543は、第一位置推定部241が出力した第一推定位置データ541と一対一に対応している。すなわち、残差データ543は、航跡相関処理部220が出力したセンサ航跡データ520(識別付)と一対一に対応している。残差データ543が対応するセンサ航跡データ520(識別付)を判別するため、残差データ543は、対応する第一推定位置データ541に含まれる目標400の識別情報やセンサ識別情報を含んでもよい。
【0027】
この実施の形態において、センサ101〜103は、航跡統合装置200に対して、センサ航跡データ510を出力する。センサ航跡データ510には、センサ101〜103が目標400を観測した生の観測データは含まれていないので、航跡統合装置200にとって、センサ101〜103が目標400を観測した実測値は不明である。
残差とは、一般的に、実測値と予測値との差のことをいうが、ここでは、最新のセンサ航跡データに基づいて推定した推定位置と、過去のセンサ航跡データに基づいて推定した推定位置とに基づいて、残差を求める。
例えば、残差算出部243は、CPU911などの処理装置を用いて、1つの第一推定位置データ541に対応する最大N個の第二推定位置データ542が表わす目標400の推定位置(センサ航跡平滑位置)の平均(移動平均)を計算し、平均推定位置とする。なお、単純平均ではなく、直近の第二推定位置データ542ほど重みを増した加重平均を計算してもよい。
次に、残差算出部243は、CPU911などの処理装置を用いて、計算した平均推定位置と、対応する第一推定位置データ541が表わす目標400の推定位置との差を計算し、残差とする。
【0028】
例えば、目標400の推定位置が二次元の直交座標で表わされている場合、残差算出部243は、CPU911などの処理装置を用いて、第二推定位置データ542が表わす目標400の推定位置(x,y)に基づいて、X座標の平均xaveと、Y座標の平均yaveとを計算し、目標400の平均推定位置(xave,yave)とする。
残差算出部243は、CPU911などの処理装置を用いて、計算した目標400の平均推定位置(xave,yave)と第一推定位置データ541が表わす目標400の推定位置(x,y)とに基づいて、X座標との差Δx=x−xaveと、Y座標の差Δy=y−yaveとを計算する。残差算出部243は、CPU911などの処理装置を用いて、計算したX座標の差ΔxとY座標の差Δyとに基づいて、残差V=√(Δx+Δy)を計算する。なお、X座標の差Δxの絶対値をX座標の残差とし、Y座標の差Δyの絶対値をY座標の残差として、X座標とY座標とを別々に取り扱ってもよい。
【0029】
なお、ここではセンサ101〜103から生の観測データが得られず実測値が不明の場合における残差の算出方式を説明したが、センサ101〜103から生の観測データを得て、残差算出部243が、観測データが表わす実測値と、センサ航跡データから推定した予測値との差を算出して残差としてもよい。
【0030】
また、センサ航跡データに基づいて推定できる他の物理量(例えば、目標400の速度)に基づいて、残差を算出してもよい。
【0031】
センサ精度記憶部251は、磁気ディスク装置920などの記憶装置を用いて、センサ101〜103それぞれの精度を表わすセンサ精度データ551を記憶している。
ここで、精度とは、センサの観測誤差(例えば、直交座標における位置誤差、極座標における距離誤差や角度誤差など)の最大値や標準偏差などの数値のことである。精度は、0以上の数値であり、値が小さいほどセンサ101〜103の観測が正確であることを意味する。精度は、センサ101〜103それぞれの構成や観測方法によって異なる。また、精度は、気象条件などの観測条件や、目標400の位置、速度などのパラメータによっても変化する場合があるので、これらのパラメータの関数であってもよい。
センサ精度記憶部251は、センサ101〜103の仕様などに基づいてあらかじめ求めた精度を表わすセンサ精度データ551を記憶してもよいし、過去の観測結果などから求めた精度を表わすセンサ精度データ551を記憶してもよい。
【0032】
観測誤差係数算出部252は、CPU911などの処理装置を用いて、センサ精度記憶部251が記憶したセンサ精度データ551を入力する。
観測誤差係数算出部252は、CPU911などの処理装置を用いて、入力したセンサ精度データ551が表わすセンサの精度に基づいて、観測誤差係数を算出する。
観測誤差係数とは、センサ精度記憶部251が記憶したセンサ精度データ551が表わすセンサの精度の単位の違いなどによるバラツキを補正したものである。
観測誤差係数算出部252は、CPU911などの処理装置を用いて、算出した観測誤差係数を表わす観測誤差係数データ552を出力する。
【0033】
例えば、観測誤差係数算出部252は、CPU911などの処理装置を用いて、センサ精度記憶部251が記憶したセンサ精度データ551のなかから、航跡入力部210が入力したセンサ航跡データ510を出力したセンサ101〜103についてのセンサ精度データ551を入力する。
また、観測誤差係数算出部252は、CPU911などの処理装置を用いて、気象条件や目標400の位置、速度など、センサの精度に影響を与えるパラメータを表わすデータを入力する。目標400の位置、速度などが必要な場合、観測誤差係数算出部252は、第一位置推定部241が出力した第一推定位置データ541を入力してもよい。
観測誤差係数算出部252は、CPU911などの処理装置を用いて、入力したセンサ精度データ551と、入力したパラメータを表わすデータとに基づいて、センサの精度sを求める。
観測誤差係数算出部252は、CPU911などの処理装置を用いて、センサ精度調整係数kを表わすデータを入力する。センサ精度調整係数kを表わすデータは、例えば、センサ精度記憶部251が、磁気ディスク装置920などの記憶装置を用いて、記憶している。
観測誤差係数算出部252は、CPU911などの処理装置を用いて、算出したセンサの精度sと、入力したデータが表わすセンサ精度調整係数kとの積を計算して、観測誤差係数α(=k×s)とする。
センサ精度調整係数αは、0以上の数値であり、上述したように、センサの精度の単位が異なる場合に、単位を揃え、センサの精度のバラツキをなくすためのものである。しかし、それ以外の要素も加味してセンサ精度調整係数を設定することにより、例えば、特定のセンサからの情報を重視するように構成してもよい。例えば、センサ101の精度が高いことがあらかじめわかっている場合、センサ101のセンサ精度調整係数に比べてセンサ102のセンサ精度調整係数を比較的大きな値とすることにより、センサ101をメインのシステム、センサ102を予備のシステムとすることができる。これにより、通常は、センサ101からの情報を採用し、センサ101の精度が著しく悪化した場合のみ、センサ102からの情報を採用するという運用が可能である。
【0034】
なお、基準となるセンサを定めておき、基準に定めたセンサの観測誤差係数αが1になるよう構成してもよい。例えば、上述した手順で算出した観測誤差係数α(以下、「観測誤差係数α’」と呼ぶ。)のうち、基準に定めたセンサの観測誤差係数α’を基準観測誤差係数αとし、観測誤差係数算出部252は、CPU911などの処理装置を用いて、上述した手順で算出した観測誤差係数α’を基準観測誤差係数αで除したものを、観測誤差係数α(=α’/α)としてもよい。
例えば、センサ102を基準とし、センサ101のセンサ精度調整係数k、センサ101のセンサの精度s、センサ102のセンサ精度調整係数k、センサ102のセンサの精度sに基づいて観測誤差係数α,αを算出する場合、α’=k×s、α’=k×sであるから、α=α’として、観測誤差係数算出部252は、CPU911などの処理装置を用いて、α=α’/α=kAB×s/s(ただし、kAB=k/k)、α=α’/α=1を算出する。
【0035】
航跡精度算出部260(航跡精度評価値算出処理部)は、CPU911などの処理装置を用いて、残差算出部243が出力した残差データ543と、観測誤差係数算出部252が出力した観測誤差係数データ552とを入力する。
航跡精度算出部260は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した残差データ543それぞれに対応する観測誤差係数データ552を判別する。例えば、航跡精度算出部260は、CPU911などの処理装置を用いて、残差データ543に含まれるセンサ識別情報に基づいてセンサや観測方法を判別し、判別したセンサや観測方法に基づいて残差データ543に対応する観測誤差係数データ552を判別する。
航跡精度算出部260は、CPU911などの処理装置を用いて、残差データ543それぞれが表わす残差Vと、それに対応すると判別した観測誤差係数データ552が表わす観測誤差係数αとの積を計算し、航跡精度評価値λ(=α×V)とする。
航跡精度算出部260は、CPU911などの処理装置を用いて、算出した航跡精度評価値λを表わす航跡精度評価値データ560を出力する。航跡精度評価値データ560は、航跡精度算出部260が入力した残差データ543と一対一に対応している。すなわち、航跡精度評価値データ560は、航跡相関処理部220が出力したセンサ航跡データ520(識別付)と一対一に対応している。航跡精度評価値データ560が対応するセンサ航跡データ520(識別付)を判別するため、航跡精度評価値データ560は、対応する残差データ543が含む目標400の識別情報やセンサ識別情報を含んでもよい。
【0036】
航跡精度評価値λとは、センサ航跡データの信頼性を評価するための数値のことである。残差も観測誤差係数も0以上の数値なので、航跡精度評価値は、0以上の数値である。航跡精度評価値は、残差及び観測誤差係数に比例し、航跡精度評価値が小さいほうがセンサ航跡データの信頼性が高いことを示す。残差が小さいほうがセンサ航跡データの信頼性が高く、観測誤差係数が小さいほうがセンサ航跡データの信頼性が高いからである。
【0037】
重み付け算出部270(航跡調整係数算出処理部)は、CPU911などの処理装置を用いて、航跡精度算出部260が出力した航跡精度評価値データ560を入力する。
重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した航跡精度評価値データ560が表わす航跡精度評価値λに基づいて、航跡調整係数ηを算出する。
重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、算出した航跡調整係数ηを表わす航跡調整係数データ570を出力する。航跡調整係数データ570は、重み付け算出部270が入力した航跡精度評価値データ560と一対一に対応している。すなわち、航跡調整係数データ570は、航跡相関処理部220が出力したセンサ航跡データ520(識別付)と一対一に対応している。航跡調整係数データ570が対応するセンサ航跡データ520を判別するため、航跡調整係数データ570は、対応する航跡精度評価値データ560が含む目標400の識別情報やセンサ識別情報を含んでもよい。
【0038】
航跡調整係数ηとは、同一の目標400についてのセンサ航跡データを統合して1つの統合航跡データを生成する際に、どのセンサ航跡データをどの程度重視するかを示す数値(重み付け)である。航跡調整係数ηは、0以上1以下の数値であり、統合する同一の目標400についてのセンサ航跡データについての航跡調整係数の総和Σηが1となるようにする。
【0039】
この実施の形態において、重み付け算出部270は、以下のようにして、航跡調整係数ηを算出する。
重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した航跡精度評価値データ560を、対応する目標400ごとにグループ分けする。例えば、重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、航跡精度評価値データ560に含まれる目標400の識別情報に基づいて、航跡精度評価値データ560が対応する目標400を判別し、判別した目標400に基づいて、航跡精度評価値データ560を分類する。
重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、グループ分けした航跡精度評価値データ560のうち、1つの目標400に対応する航跡精度評価値データ560が1つしかないものについては、航跡調整係数ηを1とする。
重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、グループ分けした航跡精度評価値データ560のうち、1つの目標400に対応する航跡精度評価値データ560が複数あるものについては、そのなかで航跡精度評価値データ560が表わす航跡精度評価値λが最小のものを判別する。重み付け算出部270は、判別した航跡精度評価値λが最小の航跡精度評価値データ560については、航跡調整係数ηを1とし、他の航跡精度評価値データ560については、航跡調整係数ηを0とする。
【0040】
例えば、同一の目標400についてセンサ101〜103が推定したセンサ航跡データが2つ(センサ航跡データA及びセンサ航跡データB)あり、航跡精度算出部260が算出した航跡精度評価値のうち、センサ航跡データAについて算出したものを航跡精度評価値λ、センサ航跡データBについて算出したものを航跡精度評価値λとし、重み付け算出部270が算出する航跡調整係数のうち、センサ航跡データAについて算出するものを航跡調整係数η、センサ航跡データBについて算出するものを航跡調整係数ηとする。重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、λとλとを比較し、λのほうがλより小さければ(η,η)=(1,0)とし、λのほうがλより小さければ(η,η)=(0,1)とする。λとλとが等しい場合は、どちらでもよいが、例えば、(η,η)=(1,0)とする。λとλとが等しい場合にどちらのセンサ航跡データを優先するかは、例えば、あらかじめ定めたセンサからもセンサ航跡データを優先することとしてもよいし、前回採用したセンサ航跡データと同じセンサからのセンサ航跡データを優先することとしてもよい。
【0041】
同一の目標400についてセンサ101〜103が推定したセンサ航跡データが3つ(センサ航跡データA、センサ航跡データB,センサ航跡データC)ある場合であれば、重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、センサ航跡データAについての航跡精度評価値λ、センサ航跡データBについての航跡精度評価値λ、センサ航跡データCについての航跡精度評価値λを比較し、λ<λかつλ<λなら(η,η,η)=(1,0,0)、λ<λかつλ<λなら(η,η,η)=(0,1,0)、λ<λかつλ<λなら(η,η,η)=(0,0,1)とする。
【0042】
統合航跡生成部280(航跡統合処理部)は、CPU911などの処理装置を用いて、航跡相関処理部220が出力したセンサ航跡データ520と、第一位置推定部241が出力した第一推定位置データ541と、重み付け算出部270が出力した航跡調整係数データ570とを入力する。
統合航跡生成部280は、CPU911などの処理装置を用いて、入力したセンサ航跡データ520(識別付)それぞれに対応する第一推定位置データ541及び航跡調整係数データ570を判別する。例えば、統合航跡生成部280は、CPU911などの処理装置を用いて、センサ航跡データ520(識別付)に含まれる目標400の識別情報及びセンサ識別情報を取得し、第一推定位置データ541及び航跡調整係数データ570にそれぞれ含まれる目標400の識別情報及びセンサ識別情報が、取得した目標400の識別情報及びセンサ識別情報と一致する場合に、第一推定位置データ541及び航跡調整係数データ570がそのセンサ航跡データ520(識別付)に対応すると判別する。
統合航跡生成部280は、CPU911などの処理装置を用いて、入力したセンサ航跡データ520(識別付)を、対応する目標400ごとにグループ分けする。センサ航跡データ520(識別付)は、航跡相関処理部220により既にグループ分けされ、目標400の識別情報が付加されているので、統合航跡生成部280は、CPU911などの処理装置を用いて、航跡相関処理部220に含まれる目標400の識別情報に基づいて、センサ航跡データ520(識別付)を分類する。
【0043】
統合航跡生成部280は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した航跡調整係数データ570が表わす航跡調整係数に基づいて、分類されたセンサ航跡データ520(識別付)を目標400ごとに統合して、統合航跡データ580を生成する。
例えば、センサ航跡データ520(識別付)に含まれる目標400の位置に関する情報を統合する場合であれば、統合航跡生成部280は、CPU911などの処理装置を用いて、第一推定位置データ541が表わす基準時刻における目標400の推定位置(x,y)に、対応する航跡調整係数データ570が表わす航跡調整係数ηを乗じ、同一の目標400についての総和(Σ(η×x),Σ(η×y))を計算して、統合推定位置とする。
センサ航跡データ520(識別付)に含まれる目標400の速度に関する情報を統合する場合であれば、統合航跡生成部280は、CPU911などの処理装置を用いて、センサ航跡データ520(識別付)に基づいて、基準時刻における目標400の推定速度(v,v)を推定する。そのあとは、位置統合の場合と同様、統合航跡生成部280は、CPU911などの処理装置を用いて、推定した基準時刻における目標400の推定速度(v,v)に、対応する航跡調整係数データ570が表わす航跡調整係数ηを乗じ、同一の目標400についての総和(Σ(η×v),Σ(η×v))を計算して、統合推定速度とする。
【0044】
例えば、同一の目標400についてセンサ101〜103が推定したセンサ航跡データが2つ(センサ航跡データA及びセンサ航跡データB)あり、重み付け算出部270が算出した航跡調整係数のうち、センサ航跡データAについて算出したものを航跡調整係数η、センサ航跡データBについて算出したものを航跡調整係数ηとし、第一位置推定部241が推定した目標400のX座標のうち、センサ航跡データAに基づいて算出したものをx、センサ航跡データBに基づいて算出したものをxとすると、統合航跡生成部280は、CPU911などの処理装置を用いて、η×x+η×xを計算して、目標400の統合推定位置のX座標とする。
統合推定位置のY座標や、統合推定速度についても同様である。また、上記以外の物理量を推定する場合も、同様である。
【0045】
統合航跡生成部280は、CPU911などの処理装置を用いて、算出した基準時刻における目標400の統合推定位置や統合推定速度を表わす情報を含む統合航跡データ580を、目標400ごとに生成する。
統合航跡生成部280は、CPU911などの処理装置を用いて、生成した目標400ごとの統合航跡データ580を出力する。
【0046】
なお、上記説明した統合航跡データの生成処理は、重み付け算出部270が算出する航跡調整係数ηが0以上1以下の任意の値である場合に適用できるが、この実施の形態において、重み付け算出部270が算出する航跡調整係数は、0か1かの2つの値しか取らないので、統合航跡データの生成処理をもっと簡略化することができる。
【0047】
すなわち、統合航跡生成部280は、CPU911などの処理装置を用いて、入力したセンサ航跡データ520(識別付)のうちから、対応する航跡調整係数データ570が表わす航跡調整係数ηが1であるものを抽出する。
統合航跡生成部280は、CPU911などの処理装置を用いて、抽出したセンサ航跡データ520(識別付)が表わす内容と同じ内容を表わす統合航跡データ580を生成する。このとき、推定位置や推定速度を基準時刻に合わせる処理をしてもよい。
【0048】
重み付け算出部270が算出した航跡調整係数が1であるものは、各目標400について1つずつなので、統合航跡生成部280は、各目標400について1つずつのセンサ航跡データ520(識別付)を抽出し、各目標400について1つずつの統合航跡データ580を生成する。
【0049】
例えば、同一の目標400についてセンサ101〜103が推定したセンサ航跡データが2つ(センサ航跡データA及びセンサ航跡データB)あり、重み付け算出部270が算出した航跡調整係数のうち、センサ航跡データAについて算出したものを航跡調整係数η、センサ航跡データBについて算出したものを航跡調整係数ηとし、第一位置推定部241が推定した目標400のX座標のうち、センサ航跡データAに基づいて算出したものをx、センサ航跡データBに基づいて算出したものをxとすると、統合航跡生成部280は、CPU911などの処理装置を用いて、η=1であるか、η=1であるかを判定し、η=1である場合xを目標400の統合推定位置のX座標とし、η=1である場合xを目標400の統合推定位置のX座標とする。統合推定位置のY座標や統合推定速度なども同様に、簡略化した処理で算出できる。
【0050】
図5は、この実施の形態における航跡統合装置200が統合航跡データ580を生成する航跡統合処理の流れの一例を示すフローチャート図である。
【0051】
航跡統合処理は、航跡入力工程S11、航跡相関処理工程S12、航跡記憶工程S13、目標繰返し工程L01を有する。
目標繰返し工程L01は、航跡繰返し工程L02、重み付け算出工程S19、統合航跡生成工程S20を有する。
航跡繰返し工程L02は、第一位置推定工程S14、第二位置推定工程S15、残差算出工程S16、観測誤差係数算出工程S17、航跡精度算出工程S18を有する。
【0052】
まず、航跡入力工程S11において、航跡入力部210は、CPU911などの処理装置を用いて、センサ101〜103が出力した複数のセンサ航跡データ510を入力する。
【0053】
次に、航跡相関処理工程S12において、航跡相関処理部220は、CPU911などの処理装置を用いて、航跡入力工程S11で航跡入力部210が入力した複数のセンサ航跡データ510について互いの相関処理をして、センサ航跡データ520(識別付)を生成する。すなわち、航跡相関処理部220は、CPU911などの処理装置を用いて、航跡入力部210が入力した複数のセンサ航跡データ510のうち、同一の目標400についてのセンサ航跡データ510を判別して、グループ分けする。航跡相関処理部220は、CPU911などの処理装置を用いて、グループ分けしたセンサ航跡データ510に、判別した目標400の識別情報を付加して、センサ航跡データ520(識別付)を生成する。
【0054】
その後、航跡記憶工程S13において、航跡記憶部230は、磁気ディスク装置920などの記憶装置を用いて、航跡相関処理工程S12で航跡相関処理部220が生成したセンサ航跡データ520(識別付)を記憶する。
【0055】
次に、目標繰返し工程L01において、航跡相関処理部220がグループ分けしたセンサ航跡データ520(識別付)を、グループごとに1つずつ処理していく。すべてのグループについての処理が終わったら、目標繰返し工程L01から抜け、航跡統合処理を終了する。
【0056】
目標繰返し工程L01の処理は、以下の手順で行う。
最初に、航跡繰返し工程L02において、処理中のグループに分類されたセンサ航跡データ520(識別付)を、センサ航跡データ520(識別付)ごとに1つずつ処理していく。そのグループに分類されたすべてのセンサ航跡データ520(識別付)についての処理が終わったら、航跡繰返し工程L02から抜け、重み付け算出工程S19へ進む。
【0057】
航跡繰返し工程L02のなかでは、まず、第一位置推定工程S14において、第一位置推定部241は、CPU911などの処理装置を用いて、処理中のセンサ航跡データ520(識別付)に基づいて、基準時刻における目標400の位置を推定する。
次に、第二位置推定工程S15において、第二位置推定部242は、CPU911などの処理装置を用いて、処理中のセンサ航跡データ520(識別付)に対応する過去のセンサ航跡データ530を、航跡記憶部230が記憶したセンサ航跡データ520(識別付)のなかから取得し、取得した過去のセンサ航跡データ530に基づいて、基準時刻における目標400の位置を推定する。
その後、残差算出工程S16において、残差算出部243は、CPU911などの処理装置を用いて、第一位置推定工程S14で第一位置推定部241が推定した目標400の推定位置と、第二位置推定工程S15で第二位置推定部242が推定した目標400の推定位置とに基づいて、残差Vを算出する。
また、観測誤差係数算出工程S17において、観測誤差係数算出部252は、CPU911などの処理装置を用いて、処理中のセンサ航跡データ520(識別付)に対応するセンサ(及び観測方法)に関する観測誤差係数αを算出する。
最後に、航跡精度算出工程S18において、航跡精度算出部260は、CPU911などの処理装置を用いて、残差算出工程S16で残差算出部243が算出した残差Vと、観測誤差係数算出工程S17で観測誤差係数算出部252が算出した観測誤差係数αとに基づいて、航跡精度評価値λ=α・Vを算出する。
【0058】
航跡繰返し工程L02のなかの処理がそのグループに分類されたすべてのセンサ航跡データ520(識別付)について終わったのち、重み付け算出工程S19において、重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、航跡精度算出工程S18で航跡精度算出部260が算出した航跡精度評価値λに基づいて、そのグループに分類されたすべてのセンサ航跡データ520(識別付)それぞれに対応する航跡調整係数ηを算出する。
上述したように、この実施の形態における重み付け算出部270は、そのグループに分類されたセンサ航跡データ520(識別付)のうちの1つに対応する航跡調整係数ηを1とし、それ以外のセンサ航跡データ520(識別付)に対応する航跡調整係数ηを0とする。
【0059】
そして、統合航跡生成工程S20において、統合航跡生成部280は、CPU911などの処理装置を用いて、重み付け算出工程S19で重み付け算出部270が算出した航跡調整係数ηに基づいて、そのグループに分類されたセンサ航跡データ520(識別付)を統合し、目標400に対応する統合航跡データ580を生成する。
上述した簡略化した処理によれば、統合航跡生成部280は、CPU911などの処理装置を用いて、重み付け算出部270が算出した航跡調整係数ηのなかから、η=1であるものを探し、それに対応するセンサ航跡データ520(識別付)を選択する。統合航跡生成部280は、CPU911などの処理装置を用いて、選択した1つのセンサ航跡データ520(識別付)に基づいて、統合航跡データ580を生成する。
【0060】
目標繰返し工程L01のなかの処理がすべてのグループについて終わったのち、航跡統合処理を終了する。
統合航跡生成部280は、目標400に対応するグループごとに1つの統合航跡データ580を生成するので、全部で、目標400の数と等しい数の統合航跡データ580を生成することになる。
【0061】
目標400がセンサの分解能と比べて比較的大きい場合、センサの観測方法の違いなどにより、仮にセンサの観測誤差がなかったとしても、観測結果にズレが生じる場合がある。
例えば、ASDEなどの一次レーダによる観測では、目標400の反射波の重心付近を、目標400の位置として検出すると想定されるが、目標400の反射特性により、目標400の検出位置が異なる場合がある。
MLATなどの時間差測位センサによる観測では、目標400が信号を送信するトランスポンダなどの位置を、目標400の位置として検出する。例えば、航空機には、機首頭と機体下腹との2箇所にトランスポンダを搭載し、地上(空港面)にいるときは、機首頭のトランスポンダを使用し、離陸後や着陸前には、機体下腹のトランスポンダを使用するものがある。
また、赤外線センサによる観測では、目標400の赤外画像の重心付近を、目標400の位置として検出する場合がある。赤外画像の重心は、目標400の発熱特性により異なり、一次レーダの反射波の重心とは異なる場合がある。
このような観測方法の違いによるほか、目標400とセンサ間の距離、センサの観測精度、センサの分解能、目標400の姿勢角やアスペクト角などの影響により、目標400の検出位置が異なる場合がある。
【0062】
センサ101〜103は、観測により検出した目標400の位置に基づいて、目標400の航跡を推定するから、目標400の検出位置が異なれば、推定した航跡も異なるものとなる。
【0063】
図6は、目標400の検出位置の違いと、それに基づいてセンサ101,102が推定する航跡の違いとの関係を示す模式図である。
なお、説明を簡略化するため、以下の説明において、センサ101とセンサ102とは同時に目標400を観測するものとする。実際には、センサごとに観測時刻や観測周期が異なっていてもよい。
【0064】
時刻tにおいて、センサ101は、目標400を観測し、検出位置611を得る。また、センサ102も同時に目標400を観測し、検出位置621を得る。
センサ101の検出位置611及びセンサ102の検出位置621には、センサの観測誤差が含まれているほか、バイアス誤差650の影響により、異なる検出位置となっている。
時刻tにおいて、センサ101及びセンサ102は、目標400を観測し、それぞれ検出位置612及び検出位置622を得る。
同様に、センサ101及びセンサ102は、時刻tにおいて検出位置613及び検出位置623を、時刻tにおいて検出位置614及び検出位置624を、時刻tにおいて検出位置615及び検出位置625を得る。
【0065】
航跡710は、検出位置611〜615に基づいて、センサ101が推定した目標400の航跡である。
航跡720は、検出位置621〜625に基づいて、センサ102が推定した目標400の航跡である。
推定位置711〜715は、それぞれの時刻における最新の航跡710に基づいて、第一位置推定部241などが推定した目標400の位置である。
推定位置721〜725は、それぞれの時刻における最新の航跡720に基づいて、第一位置推定部241などが推定した目標400の位置である。
【0066】
このように、センサの観測方法の違いなどにより、目標400の検出位置が異なり、その結果として、推定した航跡710と航跡720との間に差が生じる場合がある。
このような場合において、2つの航跡710,720を融合して1つの航跡を生成すると、目標400の動きを正しく反映できない可能性がある。
例えば、2つの航跡710,720それぞれから推定した推定位置を、それぞれの航跡710,720の信頼度に基づいて重み付けして融合し、推定位置を求めた場合、航跡710,720の信頼度が変化すると、目標400が動いていないのに推定位置が動いたり、目標400が直線運動しているのに推定位置が蛇行したりする可能性があり、融合した航跡の精度が、融合前の航跡の精度より劣化する場合がある。
【0067】
これに対して、どちらか一方の航跡を選択して採用すれば、少なくとも統合前の航跡の精度を確保することができるので、そのほうが目標400の動きを正しく反映したものとなる。
そのため、この実施の形態における航跡統合装置200は、航跡精度評価値λにより評価した精度が最も高い航跡を選択して採用する。
【0068】
例えば、同一の目標400についてセンサ101〜103が推定したセンサ航跡データが2つ(センサ航跡データA及びセンサ航跡データB)ある場合において、λ<λであるとすると、センサ航跡データAのほうがセンサ航跡データBより精度が高いと航跡精度算出部260が評価したことを意味する。これに基づいて、重み付け算出部270が算出した(η,η)が(1,0)であるということは、センサ航跡データAをセンサ航跡データBよりも優先し、センサ航跡データAを選択して採用することを意味する。逆に、λ>λである場合なら、センサ航跡データBのほうがセンサ航跡データAより精度が高いと航跡精度算出部260が評価したことを意味し。これに基づいて、重み付け算出部270が算出した(η,η)が(0,1)であるということは、センサ航跡データBをセンサ航跡データAよりも優先し、センサ航跡データBを選択して採用することを意味する。
【0069】
この実施の形態における航跡統合装置200は、センサ101〜103が推定した目標400の航跡の精度(信頼性)を、航跡精度評価値λにより評価し、最も精度の高い(信頼できる)航跡を、統合航跡(システム航跡)として採用する。
これにより、バイアス誤差による統合航跡の精度の劣化を防ぐことができる。
【0070】
また、統合航跡生成部280の処理を簡略化できるので、処理速度が向上し、CPU911などの処理装置の負荷を減らすことができる。
【0071】
この実施の形態における航跡統合装置200は、
情報を処理するCPU911などの処理装置と、航跡入力部210と、航跡精度算出部260と、重み付け算出部270と、統合航跡生成部280とを有することを特徴とする。
上記航跡入力部210は、上記処理装置を用いて、センサ101〜103が目標400を観測した観測データに基づいて推定した目標400の航跡を表わすセンサ航跡データ510を入力することを特徴とする。
上記航跡精度算出部260は、上記処理装置を用いて、上記航跡入力部210が入力したセンサ航跡データ510に基づいて、上記センサ航跡データ510の精度を表わす航跡精度評価値λを算出することを特徴とする。
上記重み付け算出部270は、上記処理装置を用いて、上記航跡精度算出部260が算出した航跡精度評価値λに基づいて、上記センサ航跡データ510の重み付けを表わす航跡調整係数ηを算出することを特徴とする。
上記統合航跡生成部280は、上記処理装置を用いて、上記重み付け算出部270が算出した航跡調整係数ηに基づいて、上記センサ航跡データ510を統合し、統合航跡データ580を生成することを特徴とする。
【0072】
この実施の形態における航跡統合装置200によれば、センサ航跡データ510の精度を航跡精度評価値λにより評価し、評価結果に基づいて算出した航跡調整係数ηに基づいて、センサ航跡データ510を統合するので、生成した統合航跡データ580が表わす目標400の航跡の精度が高くなるという効果を奏する。
【0073】
上記重み付け算出部270は、上記センサ航跡データ510が複数ある場合、上記処理装置を用いて、上記複数のセンサ航跡データ510のうち、上記航跡精度算出部260が算出した航跡精度評価値λが表わすセンサ航跡データ510の精度が最も高いセンサ航跡データ510について、上記航跡調整係数ηを1とし、他のセンサ航跡データ510について、上記航跡調整係数ηを0とすることを特徴とする。
【0074】
この実施の形態における航跡統合装置200によれば、複数のセンサ航跡データ510を融合するのではなく、最も精度が高いと評価したセンサ航跡データ510を選択して採用するので、バイアス誤差の影響による精度の劣化を防ぐことができるという効果を奏する。また、統合航跡生成部280を簡略化することができるので、処理速度の向上、処理装置の負荷の軽減を図ることができる。
【0075】
上記航跡精度算出部260は、上記処理装置を用いて、上記航跡入力部210が入力したセンサ航跡データ510に基づいて算出された残差Vに基づいて、上記残差Vが小さいほど上記センサ航跡データ510の精度が高いことを表わす航跡精度評価値λを算出することを特徴とする。
【0076】
この実施の形態における航跡統合装置200によれば、センサ航跡データ510に基づいて算出した残差Vに基づいて、センサ航跡データ510の精度を評価するので、妥当な航跡精度評価値λを得ることができ、それに基づいて生成した統合航跡データ580が表わす目標400の航跡の精度が高くなるという効果を奏する。
【0077】
上記航跡精度算出部260は、上記処理装置を用いて、上記航跡入力部210が入力したセンサ航跡データ510算出のもととなった観測データを観測したセンサ101〜103の観測誤差に基づいて、上記観測誤差が小さいほど上記センサ航跡データ510の精度が高いことを表わす航跡精度評価値λを算出することを特徴とする。
【0078】
この実施の形態における航跡統合装置200によれば、センサ航跡データ510算出のもととなった観測データを観測したセンサ101〜103の観測誤差に基づいて、センサ航跡データ510の精度を評価するので、妥当な航跡精度評価値λを得ることができ、それに基づいて生成した統合航跡データ580が表わす目標400の航跡の精度が高くなるという効果を奏する。
【0079】
この実施の形態における航跡統合装置200は、更に、情報を記憶する磁気ディスク装置920などの記憶装置と、航跡相関処理部220と、航跡記憶部230と、第一位置推定部241と、第二位置推定部242と、残差算出部243と、観測誤差係数算出部252とを有することを特徴とする。
上記航跡入力部210は、上記処理装置を用いて、上記センサ航跡データ510を複数入力することを特徴とする。
上記航跡相関処理部220は、上記処理装置を用いて、上記航跡入力部210が入力した複数のセンサ航跡データ510のうち、同一の目標についてのセンサ航跡データ510を判別して、上記複数のセンサ航跡データ510をグループ分けすることを特徴とする。
上記航跡記憶部230は、上記記憶装置を用いて、上記航跡入力部210が入力した複数のセンサ航跡データ510と、上記複数のセンサ航跡データ510それぞれについて上記航跡相関処理部220が判別した目標400とを対応づけて(センサ航跡データ520(識別付)として)記憶することを特徴とする。
上記第一位置推定部241は、上記処理装置を用いて、上記航跡入力部210が入力した複数のセンサ航跡データ510それぞれに基づいて、上記目標の位置を推定することを特徴とする。
上記第二位置推定部242は、上記処理装置を用いて、上記航跡記憶部230が過去に記憶した複数のセンサ航跡データ530に基づいて、上記目標の位置を推定することを特徴とする。
上記残差算出部243は、上記処理装置を用いて、同一の目標400について、上記第一位置推定部241が推定した目標の位置と上記第二位置推定部242が推定した目標の位置との差を計算して残差Vとすることを特徴とする。
上記観測誤差係数算出部252は、上記処理装置を用いて、上記センサの観測誤差に比例する観測誤差係数αを算出することを特徴とする。
上記航跡精度算出部260は、上記処理装置を用いて、上記航跡入力部210が入力した複数のセンサ航跡データ510それぞれについて、上記残差算出部243が算出した残差Vと上記観測誤差係数算出部252が算出した観測誤差係数αとの積α×Vを計算して航跡精度評価値λとすることを特徴とする。
上記重み付け算出部270は、上記処理装置を用いて、上記航跡相関処理部220が同一の目標400についてのセンサ航跡データ510であると判別してグループ分けした複数のセンサ航跡データ510のうち、上記航跡精度算出部260が算出した航跡精度評価値λが最も小さいセンサ航跡データ510について、上記航跡調整係数ηを1とし、他のセンサ航跡データ510について、上記航跡調整係数ηを0とすることを特徴とする。
上記統合航跡生成部280は、上記処理装置を用いて、上記航跡相関処理部220が同一の目標についてのセンサ航跡データ510であると判別してグループ分けした複数のセンサ航跡データ510について、上記第一位置推定部241が推定した目標の位置と上記重み付け算出部270が算出した航跡調整係数ηとの積の総和を計算して上記目標の統合推定位置とし、算出した統合推定位置を含む統合航跡データ580を生成することを特徴とする。
【0080】
この実施の形態における航跡統合装置200によれば、入力したセンサ航跡データ510を相関処理により、同一の目標400についてのものにグループ分けしたのち、同じグループ内のセンサ航跡データ510について、残差V、観測誤差係数α、航跡精度評価値λ=α×Vを算出し、航跡精度評価値λが最小のセンサ航跡データ510について航跡調整係数ηを1とし、他のセンサ航跡データ510について航跡調整係数ηを0とするので、それに基づいて生成した統合航跡データ580が表わす目標400の航跡の精度が高くなるという効果を奏する。
【0081】
この実施の形態における航跡統合装置200は、情報を処理する処理装置を有するコンピュータを上記説明した航跡統合装置200として機能させるプログラムを、コンピュータが実行することにより、実現可能である。
【0082】
この実施の形態における航跡統合装置200が、センサ101〜103が目標を観測した観測データに基づいて推定した目標400の航跡を表わすセンサ航跡データを統合する航跡統合方法は、
CPU911などの処理装置が、上記センサ航跡データ510を入力し、
上記処理装置が、入力したセンサ航跡データ510に基づいて、上記センサ航跡データの精度を表わす航跡精度評価値λを算出し、
上記処理装置が、算出した航跡精度評価値λに基づいて、上記センサ航跡データの重み付けを表わす航跡調整係数ηを算出し、
上記処理装置が、算出した航跡調整係数ηに基づいて、上記センサ航跡データを統合し、統合航跡データ580を生成することを特徴とする。
【0083】
この実施の形態における航跡統合方法によれば、センサ航跡データ510の精度を航跡精度評価値λにより評価し、評価結果に基づいて算出した航跡調整係数ηに基づいて、センサ航跡データ510を統合するので、生成した統合航跡データ580が表わす目標400の航跡の精度が高くなるという効果を奏する。
【0084】
以上説明した航跡統合装置200(センサ情報融合装置)は、
同種類及び異種類からなるセンサからそれぞれセンサ航跡を出力するセンサ101〜103と、
センサ航跡の組(ペア)を出力する航跡相関処理部220と、
センサ航跡の組(ペア)から航跡調整係数ηに基づき、システム航跡を出力する航跡統合処理部(統合航跡生成部280)と、
オペレータに、システム航跡及びセンサ航跡及び観測値を表示する表示処理部(航跡表示装置300)と、
センサ毎に、センサ航跡の航跡精度評価値λを算出する航跡精度評価値算出処理部(航跡精度算出部260)と、
航跡精度評価値λに基づき、航跡調整係数ηを設定する航跡調整係数算出処理部(重み付け算出部270)とを備えたことを特徴とする。
【0085】
以上のように、航跡精度評価値λに基づき、航跡精度評価値λが小さいという意味で、高精度なセンサ航跡を判定し、高精度なセンサ航跡が得られ続けている限りは、複数異種センサおよび複数同種センサからのセンサ航跡を用いた、センサ航跡同士の航跡統合は実施せず、同一のセンサからのセンサ航跡を使用し続けることで、他のセンサからのセンサ航跡使用による、センサの検出位置から生じるバイアス誤差によるシステム航跡精度劣化を低減することが可能である。
【0086】
実施の形態2.
実施の形態2について、図7〜図8を用いて説明する。
この実施の形態における目標観測システム800の全体構成は、実施の形態1で説明したものと同様なので、ここでは説明を省略する。
【0087】
図7は、この実施の形態における航跡統合装置200の機能ブロックの構成の一例を示すブロック構成図である。
なお、実施の形態1で説明した航跡統合装置200と共通する部分については、同一の符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0088】
航跡統合装置200は、更に、選択航跡記憶部275を有する。
【0089】
重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、グループ分けした航跡精度評価値データ560のうち、1つの目標400に対応する航跡精度評価値データ560のなかで航跡精度評価値データ560が表わす航跡精度評価値λが最小のものを判別する。
重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、判別した航跡精度評価値λが最小の航跡精度評価値データ560に対応するセンサ航跡データ520(識別付)を示す選択航跡データ575を出力する。
選択航跡データ575は、例えば、判別した航跡精度評価値データ560に含まれる目標400の識別情報やセンサ識別情報を含む。
【0090】
選択航跡記憶部275は、CPU911などの処理装置を用いて、重み付け算出部270が出力した選択航跡データ575を入力する。
選択航跡記憶部275は、磁気ディスク装置920などの記憶装置を用いて、入力した選択航跡データ575を記憶する。
【0091】
重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、選択航跡記憶部275が記憶した選択航跡データ575のなかから、前回の選択航跡データ575を取得する。
重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、取得した選択航跡データ575に基づいて、航跡精度評価値λが最小の航跡精度評価値データ560に対応するセンサ航跡データ520(識別付)が変化したか否かを判定する。
例えば、重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、入力した選択航跡データ575のなかから、判別した航跡精度評価値λが最小の航跡精度評価値データ560に含まれる目標400の識別情報と同じ目標400の識別情報を含むものを取得する。重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、判別した航跡精度評価値λが最小の航跡精度評価値データ560に含まれるセンサ識別情報と、取得した選択航跡データ575に含まれるセンサ識別情報とを比較して、一致しなければ、航跡精度評価値λが最小の航跡精度評価値データ560に対応するセンサ航跡データ520(識別付)が変化したと判定する。
【0092】
航跡精度評価値λが最小の航跡精度評価値データ560に対応するセンサ航跡データ520(識別付)が変化していないと判定した場合、重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、1つの目標400に対応する航跡精度評価値データ560のなかで、航跡精度評価値λが最小の航跡精度評価値データ560については、航跡調整係数ηを1とし、他の航跡精度評価値データ560については、航跡調整係数ηを0とする。
航跡精度評価値λが最小の航跡精度評価値データ560に対応するセンサ航跡データ520(識別付)が変化したと判定した場合、重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、1つの目標400に対応する今回の航跡精度評価値データ560のなかで、航跡精度評価値λが最小の航跡精度評価値データ560については、航跡調整係数ηをηとし、前回航跡精度評価値λが最小だったセンサ航跡データ520(識別付)に対応する航跡精度評価値データ560については、航跡調整係数ηを1−ηとし、他の航跡精度評価値データ560については、航跡調整係数ηを0とする。ここで、ηは、あらかじめ定めた0以上1以下の数値である。ηは、例えば、管制官が入力したものを、重み付け算出部270が磁気ディスク装置920などの記憶装置を用いて記憶しておく。なお、ηを複数記憶しておき、変化の前後におけるセンサ航跡データにより、異なるηを採用することとしてもよい。
【0093】
例えば、同一の目標400について、センサ101〜103が推定したセンサ航跡データが2つ(センサ航跡データA及びセンサ航跡データB)あり、航跡精度算出部260が算出した航跡精度評価値のうち、センサ航跡データAについて算出したものを航跡精度評価値λ、センサ航跡データBについて算出したものを航跡精度評価値λとし、λ<λであるとする。重み付け算出部270は、λ<λなので、CPU911などの処理装置を用いて、センサ航跡データAについての航跡調整係数ηを1とし(前回もλ<λだった場合)、センサ航跡データAを選択したことを表わす選択航跡データ575を出力する。選択航跡データ575は、選択航跡記憶部275が記憶しておく。
次回の観測において、やはり同じ目標400について、センサ101〜103が推定したセンサ航跡データが2つ(センサ航跡データA’及びセンサ航跡データB’)あるとする。ここで、センサ航跡データAとセンサ航跡データA’とは、同一諸元(センサ及び観測方法が同一)であるものとし、同様に、センサ航跡データBとセンサ航跡データB’とは、同一諸元であるものとする。また、航跡精度算出部260が算出した航跡精度評価値のうち、センサ航跡データA’について算出したものを航跡精度評価値λ’、センサ航跡データB’について算出したものを航跡精度評価値λ’とし、λ’>λ’であるとする。
重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、選択航跡記憶部275が記憶した選択航跡データ575を取得し、前回はλ<λだったことを判別する。センサ精度評価値が最小のセンサ航跡データが変化したので、重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、センサ航跡データB’についての航跡調整係数ηを、1ではなく、ηとする。また、前回センサ精度評価値が最小だったセンサ航跡データA’についての航跡調整係数ηを、0ではなく、1−ηとする。
なお、同一の目標400についてのセンサ航跡データが3以上あり、前回も今回もセンサ精度評価値が最小でないセンサ航跡データがある場合には、重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、そのセンサ航跡データについての航跡調整係数ηを0とする。
【0094】
また、前回センサ精度評価値が最小だったセンサ航跡データと同一諸元のセンサ航跡データが欠測などにより今回存在しないことによるトップ交代である場合には、重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、今回センサ精度評価値が最小のセンサ航跡データについての航跡調整係数ηを1とする。あるいは、上記と同様、今回センサ精度評価値が最小のセンサ航跡データについての航跡調整係数ηをηとし、融合相手として、航跡記憶部230が記憶した前回センサ精度評価値が最小だった前回のセンサ航跡データを使用してもよい。
【0095】
図8は、この実施の形態における航跡統合装置200が生成する統合航跡の一例を示す模式図である。
細線で示した航跡710及び航跡720は、同一の目標400についての航跡であり、航跡710はセンサ101が生成したセンサ航跡データ510が表わす航跡、航跡720は、センサ102が生成したセンサ航跡データ510が表わす航跡である。
また、太線で示した航跡750は、航跡統合装置200が生成した統合航跡データ580が表わす航跡である。
【0096】
時刻tまでは、航跡710に対応する航跡精度評価値λが最小だったとする。そのため、航跡750のうち、時刻tまでの推定位置は、航跡710の推定位置711〜713と一致している。
時刻tにおいて、航跡720に対応する航跡精度評価値λのほうが、航跡710に対応する航跡精度評価値λよりも小さくなったとする。そのため、航跡750のうち、時刻tにおける目標400の推定位置754は、推定位置714と推定位置724とを結ぶ線分をη:1−ηに按分した位置となる。
また、時刻t以降においても、航跡720に対応する航跡精度評価値λが最小だとする。そのため、航跡750のうち、時刻tにおける目標400の推定位置は、航跡720の推定位置725と一致している。
【0097】
実施の形態1の方式では、航跡精度評価値λが最小のセンサ航跡データ520(識別付)が変化すると、その時点で選択するセンサ航跡データ520(識別付)を完全に切り替える。そのため、時刻tにおける目標400の推定位置は、推定位置754ではなく、航跡720と同じ推定位置724になる。
【0098】
航跡710と航跡720とが離れている場合、急激に航跡が切り替わると、航跡表示装置300の表示を見ている管制官などが混乱し、判断を誤る可能性がある。
この実施の形態における航跡統合装置200は、原則としては、複数のセンサ航跡データのなかから、1つのセンサ航跡データを選択して、統合航跡データ580とするが、選択するセンサ航跡データを切り替える必要が生じたときは、切り替え前のセンサ航跡データと、切り替え後のセンサ航跡データとを重み付けにより融合して、統合航跡データ580を生成する。これにより、航跡表示装置300が航跡の切り替えをスムーズに表示することができるので、混乱や誤解を防ぐことができる。
【0099】
この実施の形態における航跡統合装置200は、以下の特徴を有する。
上記重み付け算出部270は、上記センサ航跡データが複数あり、上記航跡精度算出部260が算出した航跡精度評価値λが表わすセンサ航跡データの精度が最も高いセンサ航跡データが変化した場合、上記処理装置を用いて、上記複数のセンサ航跡データのうち、上記センサ航跡データの精度が最も高いセンサ航跡データについて、上記航跡調整係数ηを所定の値ηとすることを特徴とする。
【0100】
この実施の形態における航跡統合装置200によれば、センサ航跡データの精度が最も高いセンサ航跡データが変化した場合、すぐに航跡を切り替えるのではなく、前回まで精度が最も高かったセンサ航跡データと、新たに精度が最も高くなったセンサ航跡データとを融合して、中間的な統合航跡データを生成するので、航跡切り替えに伴う混乱や誤解を防ぐことができるという効果を奏する。
【0101】
なお、精度が最も高いセンサ航跡データが変化した一回だけでなく、複数回にわたって中間的な統合航跡データを生成することとしてもよい。その場合、徐々にηが増加して1に近づくよう設定することにより、航跡切り替えを更にスムーズにすることができる。
【0102】
以上説明した航跡統合装置200(センサ情報融合装置)は、
システム航跡を構成するセンサ航跡の連続性を見て、航跡調整係数ηの値を制御する航跡調整係数制御処理部(重み付け算出部270)を備えたことを特徴とする。
【0103】
以上のように、システム航跡を形成するセンサ航跡の内容が変わる場合に、航跡調整係数に重みを加えて、システム航跡を生成することにより、センサ航跡のバイアス誤差の影響によるシステム航跡のばらつきを抑えることが可能である。
【0104】
実施の形態3.
実施の形態3について、図9を用いて説明する。
この実施の形態における目標観測システム800の全体構成は、実施の形態1で説明したものと同様なので、ここでは説明を省略する。
【0105】
図9は、この実施の形態における航跡統合装置200の機能ブロックの構成の一例を示すブロック構成図である。
なお、実施の形態1及び実施の形態2で説明した航跡統合装置200と共通する部分については、同一の符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0106】
航跡統合装置200は、更に、トレース算出部276を有する。
【0107】
この実施の形態において、センサ101〜103が出力するセンサ航跡データ510は、誤差共分散行列を表わす情報を含む。
誤差共分散行列とは、センサ101〜103がカルマンフィルタなどを用いて目標400の航跡を推定する場合に、推定した目標400の航跡とともに得られるデータであり、航跡推定の誤差の分散及び共分散を推定したものである。
【0108】
トレース算出部276は、CPU911などの処理装置を用いて、航跡入力部210が出力したセンサ航跡データ510を入力する。
トレース算出部276は、CPU911などの処理装置を用いて、入力したセンサ航跡データ510から、誤差共分散行列を取得する。
トレース算出部276は、CPU911などの処理装置を用いて、取得した誤差共分散行列のトレースを算出する。トレースとは、正方行列の対角成分の和のことである。誤差共分散行列は正方行列なので、トレースを計算することができる。
誤差共分散行列のトレースは、航跡推定の誤差の分散の総和であるから、小さいほうが航跡推定の精度が高いことを示す。
トレース算出部276は、CPU911などの処理装置を用いて、算出したトレースを表わすトレースデータ576を出力する。
【0109】
なお、トレース算出部276が誤差共分散行列のトレースを算出するのではなく、センサ101〜センサ103が誤差共分散行列のトレースを算出して、算出した誤差共分散行列のトレースを表わす情報を含むセンサ航跡データ510を出力してもよい。
【0110】
重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、トレース算出部276が出力したトレースデータ576を入力する。
重み付け算出部270は、判別した航跡精度評価値λが最小のセンサ航跡データ520(識別付)が切り替わったと判定した場合、CPU911などの処理装置を用いて、入力したトレースデータ576が表わすトレースに基づいて、ηを算出する。
重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、算出したηに基づいて、航跡調整係数ηを算出する。
【0111】
前回、航跡精度評価値λが最小だったセンサ航跡データ520(識別付)に対応するトレースをtrA、新たに航跡精度評価値λが最小になったセンサ航跡データ520(識別付)に対応するトレースをtrBとする。重み付け算出部270は、CPU911などの処理装置を用いて、トレースtrAの逆数1/trAと、トレースtrBの逆数1/trBとを算出する。誤差共分散行列のトレースは、小さいほうが航跡推定の精度が高いことを示すから、トレースの逆数は、大きいほうが航跡推定の精度が高いことを示す。
航跡調整係数データ570は、CPU911などの処理装置を用いて、算出したトレースtrAの逆数1/trAと、算出したトレースtrBの逆数1/trBとの和(1/trA+1/trB)を算出し、算出したトレースtrBの逆数1/trBを、算出したトレースの逆数の和(1/trA+1/trB)で除したもの(1/trB)/(1/trA+1/trB)を算出して、ηとする。
【0112】
この実施の形態では、実施の形態2と同様、航跡精度評価値λにより評価した航跡の精度が最も高い航跡が、航跡精度評価値λの変動により変化し、航跡を切り替える際、2つのセンサ航跡データを融合して中間的な統合航跡データを生成する。
この実施の形態では、2つのセンサ航跡データを融合する際の重み付けである航跡調整係数ηをあらかじめ定めた値とするのではなく、誤差共分散行列のトレースを元に算出した値を用いるので、統計的に妥当な重み付けをすることができる。
【0113】
この実施の形態における航跡統合装置200は、以下の特徴を有する。
上記重み付け算出部270は、上記センサ航跡データが複数ある場合、上記処理装置を用いて、上記航跡入力部210が入力した複数のセンサ航跡データそれぞれについての誤差共分散行列の対角成分の和(トレース)に基づいて、上記複数のセンサ航跡データそれぞれについて、上記誤差共分散行列の対角成分の和の逆数に比例する航跡調整係数ηを算出することを特徴とする。
【0114】
この実施の形態における航跡統合装置200によれば、複数のセンサ航跡データの重み付けである航跡調整係数ηとして、誤差共分散行列の対角成分の和に比例する航跡調整係数を算出するので、統計的に妥当な重み付けをすることができるという効果を奏する。
【0115】
以上説明した航跡統合装置200(センサ情報融合装置)は、
センサ航跡の誤差共分散行列を用いて、航跡調整係数ηを算出し、そのセンサ航跡の誤差共分散行列に基づく航跡調整係数ηでシステム航跡を算出するように制御するといった、誤差共分散行列による航跡調整係数制御処理部(重み付け算出部270)を備えたことを特徴とする。
【0116】
以上のように、誤差共分散行列から算出した航跡調整係数ηを適用することにより、統計的に妥当な航跡調整係数を算出することが可能となり、システム航跡の精度劣化を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】実施の形態1における目標観測システム800の構成の一例を示すシステム構成図。
【図2】実施の形態1における航跡統合装置200の外観の一例を示す図。
【図3】実施の形態1における航跡統合装置200のハードウェア資源の一例を示す図。
【図4】実施の形態1における航跡統合装置200の機能ブロックの構成の一例を示すブロック構成図。
【図5】実施の形態1における航跡統合装置200が統合航跡データ580を生成する航跡統合処理の流れの一例を示すフローチャート図。
【図6】目標400の検出位置の違いと、それに基づいてセンサ101,102が推定する航跡の違いとの関係を示す模式図。
【図7】実施の形態2における航跡統合装置200の機能ブロックの構成の一例を示すブロック構成図。
【図8】実施の形態2における航跡統合装置200が生成する統合航跡の一例を示す模式図。
【図9】実施の形態3における航跡統合装置200の機能ブロックの構成の一例を示すブロック構成図。
【符号の説明】
【0118】
101〜103 センサ、200 航跡統合装置、210 航跡入力部、220 航跡相関処理部、230 航跡記憶部、241 第一位置推定部、242 第二位置推定部、243 残差算出部、251 センサ精度記憶部、252 観測誤差係数算出部、260 航跡精度算出部、270 重み付け算出部、275 選択航跡記憶部、276 トレース算出部、280 統合航跡生成部、300 航跡表示装置、400 目標、510〜530 センサ航跡データ、541 第一推定位置データ、542 第二推定位置データ、543 残差データ、551 センサ精度データ、552 観測誤差係数データ、560 航跡精度評価値データ、570 航跡調整係数データ、575 選択航跡データ、576 トレースデータ、580 統合航跡データ、611〜625 検出位置、650 バイアス誤差、710,720 航跡、711〜715,721〜725 推定位置、800 目標観測システム、901 表示装置、902 キーボード、903 マウス、904 FDD、905 CDD、906 プリンタ装置、907 スキャナ装置、910 システムユニット、911 CPU、912 バス、913 ROM、914 RAM、915 通信装置、920 磁気ディスク装置、921 OS、922 ウィンドウシステム、923 プログラム群、924 ファイル群、931 電話器、932 ファクシミリ機、940 インターネット、941 ゲートウェイ、942 LAN。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を処理する処理装置と、航跡入力部と、航跡精度算出部と、重み付け算出部と、統合航跡生成部とを有し、
上記航跡入力部は、上記処理装置を用いて、センサが目標を観測した観測データに基づいて推定した目標の航跡を表わすセンサ航跡データを入力し、
上記航跡精度算出部は、上記処理装置を用いて、上記航跡入力部が入力したセンサ航跡データに基づいて、上記センサ航跡データの精度を表わす航跡精度評価値を算出し、
上記重み付け算出部は、上記処理装置を用いて、上記航跡精度算出部が算出した航跡精度評価値に基づいて、上記センサ航跡データの重み付けを表わす航跡調整係数を算出し、
上記統合航跡生成部は、上記処理装置を用いて、上記重み付け算出部が算出した航跡調整係数に基づいて、上記センサ航跡データを統合し、統合航跡データを生成する
ことを特徴とする航跡統合装置。
【請求項2】
上記重み付け算出部は、上記センサ航跡データが複数ある場合、上記処理装置を用いて、上記複数のセンサ航跡データのうち、上記航跡精度算出部が算出した航跡精度評価値が表わすセンサ航跡データの精度が最も高いセンサ航跡データについて、上記航跡調整係数を1とし、他のセンサ航跡データについて、上記航跡調整係数を0とすることを特徴とする請求項1に記載の航跡統合装置。
【請求項3】
上記航跡精度算出部は、上記処理装置を用いて、上記航跡入力部が入力したセンサ航跡データに基づいて算出された残差に基づいて、上記残差が小さいほど上記センサ航跡データの精度が高いことを表わす航跡精度評価値を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の航跡統合装置。
【請求項4】
上記航跡精度算出部は、上記処理装置を用いて、上記航跡入力部が入力したセンサ航跡データのもととなった観測データを観測したセンサの観測誤差に基づいて、上記観測誤差が小さいほど上記センサ航跡データの精度が高いことを表わす航跡精度評価値を算出することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の航跡統合装置。
【請求項5】
上記航跡統合装置は、更に、情報を記憶する記憶装置と、航跡相関処理部と、航跡記憶部と、第一位置推定部と、第二位置推定部と、残差算出部と、観測誤差係数算出部とを有し、
上記航跡入力部は、上記処理装置を用いて、上記センサ航跡データを複数入力し、
上記航跡相関処理部は、上記処理装置を用いて、上記航跡入力部が入力した複数のセンサ航跡データのうち、同一の目標についてのセンサ航跡データを判別して、上記複数のセンサ航跡データをグループ分けし、
上記航跡記憶部は、上記記憶装置を用いて、上記航跡入力部が入力した複数のセンサ航跡データと、上記複数のセンサ航跡データそれぞれについて上記航跡相関処理部が判別した目標とを対応づけて記憶し、
上記第一位置推定部は、上記処理装置を用いて、上記航跡入力部が入力した複数のセンサ航跡データそれぞれに基づいて、上記目標の位置を推定し、
上記第二位置推定部は、上記処理装置を用いて、上記航跡記憶部が過去に記憶した複数のセンサ航跡データに基づいて、上記目標の位置を推定し、
上記残差算出部は、上記処理装置を用いて、同一の目標について、上記第一位置推定部が推定した目標の位置と上記第二位置推定部が推定した目標の位置との差を計算して残差とし、
上記観測誤差係数算出部は、上記処理装置を用いて、上記センサの観測誤差に比例する観測誤差係数を算出し、
上記航跡精度算出部は、上記処理装置を用いて、上記航跡入力部が入力した複数のセンサ航跡データそれぞれについて、上記残差算出部が算出した残差と上記観測誤差係数算出部が算出した観測誤差係数との積を計算して航跡精度評価値とし、
上記重み付け算出部は、上記処理装置を用いて、上記航跡相関処理部が同一の目標についてのセンサ航跡データであると判別してグループ分けした複数のセンサ航跡データのうち、上記航跡精度算出部が算出した航跡精度評価値が最も小さいセンサ航跡データについて、上記航跡調整係数を1とし、他のセンサ航跡データについて、上記航跡調整係数を0とし、
上記統合航跡生成部は、上記処理装置を用いて、上記航跡相関処理部が同一の目標についてのセンサ航跡データであると判別してグループ分けした複数のセンサ航跡データについて、上記第一位置推定部が推定した目標の位置と上記重み付け算出部が算出した航跡調整係数との積の総和を計算して上記目標の統合推定位置とし、算出した統合推定位置を含む統合航跡データを生成する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の航跡統合装置。
【請求項6】
上記重み付け算出部は、上記センサ航跡データが複数あり、上記航跡精度算出部が算出した航跡精度評価値が表わすセンサ航跡データの精度が最も高いセンサ航跡データが変化した場合、上記処理装置を用いて、上記複数のセンサ航跡データのうち、上記センサ航跡データの精度が最も高いセンサ航跡データについて、上記航跡調整係数を所定の値とすることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の航跡統合装置。
【請求項7】
上記重み付け算出部は、上記センサ航跡データが複数ある場合、上記処理装置を用いて、上記航跡入力部が入力した複数のセンサ航跡データそれぞれについての誤差共分散行列の対角成分の和に基づいて、上記複数のセンサ航跡データそれぞれについて、上記誤差共分散行列の対角成分の和の逆数に比例する航跡調整係数を算出することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の航跡統合装置。
【請求項8】
情報を処理する処理装置を有するコンピュータを、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の航跡統合装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
情報を処理する処理装置を有する航跡統合装置が、センサが目標を観測した観測データに基づいて推定した目標の航跡を表わすセンサ航跡データを統合する航跡統合方法において、
上記処理装置が、上記センサ航跡データを入力し、
上記処理装置が、入力したセンサ航跡データに基づいて、上記センサ航跡データの精度を表わす航跡精度評価値を算出し、
上記処理装置が、算出した航跡精度評価値に基づいて、上記センサ航跡データの重み付けを表わす航跡調整係数を算出し、
上記処理装置が、算出した航跡調整係数に基づいて、上記センサ航跡データを統合し、統合航跡データを生成する
ことを特徴とする航跡統合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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