説明

船舶接近監視装置

【課題】送電線に接近したことを検知する装置を備えない不特定多数の船舶に対しても正確に、且つ確実に送電線への接触の危険性を警告することができる船舶接近監視装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る船舶接近監視装置50は、両岸に設置された鉄塔5に架設された送電線12と、夫々の鉄塔5に設置された複数の警報ランプ6と、警報信号を受信して警報ランプ6を点灯する警報受信機7と、送電線12から所定の距離に離間した位置で、両岸に設置された監視塔1と、を備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶接近監視装置に関し、さらに詳しくは、船舶が通過する水路の上方に架設された送電線の下を通過するクレーン等を備えた船舶が送電線に接触する虞がある場合に、該船舶に対して警報を発する船舶接近監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧電力を送電する送電線は、多くは、山間部或いは陸地に設置された送電鉄塔に架設されるが、地理的な条件によっては、運河或いは河川等の狭い水路の上空を横断するように架設される場合もある。運河或いは河川の水深が浅い所では、比較的小型の船舶が航行するため、船舶の最上部の高さが送電線の最下点より高くなることはほとんど無い。一方、水深が深く、且つ、幅が広い運河或いは河川では、クレーン等の背の高い設備を備えた大型船舶が航行することが多く、クレーン等の上部が送電線の最下点よりも高くなり、送電線に接触したり、送電線を切断するといった事故が発生することがある。しかし、全ての場所で、それらの船舶を常時監視する体制が整っているとは限らないため、全ての事故を未然に防止することができないのが現状である。
【0003】
このような事故を未然に防止するための先行技術として、特許文献1には、送電線の近傍でクレーン等による重機を用いた作業が行われている場合、重機が送電線に接触しないように監視する方法において、送電線の電圧や気象条件に左右されずに警報を発することができる重機接近監視方法について開示されている。
また、特許文献2には、警報を受けるものから遠距離の地点に存在する電磁界発生体に対して、接触回避対象の接近を感知して警報を発する無線式接近警報装置について開示されている。
また、特許文献3には、クレーン先端部に取り付けられたセンサと、クレーン操作室に配置された監視装置を備え、クレーンが送電線に対して一定距離まで接近すると警報を発する接近警報装置について開示されている。
また、特許文献4には、クレーン等の重機が送電線に対して接近したことを検知するレーザ光利用接近検知システムについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−35986号公報
【特許文献2】特開2005−148968公報
【特許文献3】特開2006−199440公報
【特許文献4】特開2006−201030公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1〜4に開示されている従来技術は、クレーンの先端部分に送電線に接近したことを感知させるための装置を備え付ける必要があり、それらの装置が備えられていないクレーンについては、送電線に接触する虞の有無を監視することができないといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、水路の上方に水路を横断して架設された送電線がある場合に、水路を通過する船舶の上部が送電線に接触する虞の有無を検知する装置を備えない不特定多数の船舶に対しても正確に、且つ、確実に送電線への接触の危険性を警告することができる船舶接近監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、船舶の進行経路の上方に架設された送電線に該船舶が接触する虞がある場合に、該船舶に対して警報を発する船舶接近監視装置であって、前記送電線よりも前記船舶の進行方向上流側に配置されて該船舶の通過を検知する船舶検知手段と、該船舶検知手段により検知された船舶周辺の風速を検知する風速計測手段と、前記船舶検知手段により検知された船舶の速度を検知する速度計測手段と、他の船舶が通過したときの波高変化を測定する波高変化値測定手段と、前記船舶が前記船舶検知手段を通過開始してから通過終了するまでの時間を計時する計時手段と、前記速度計測手段及び前記計時手段により計測された値に基づいて該船舶の船体長を計算し、該船体長及び前記波高変化値測定手段により計測された波高動作値に基づいて前記船舶が前記送電線に接触する虞があるか否かを判定する制御手段と、前記制御手段が前記船舶が前記送電線に接触する虞があると判断した場合に、該船舶に警報信号を送信する信号送信手段と、前記送電線を張架する鉄塔に備えられ、前記信号送信手段から送信された前記警報信号を受信する信号受信手段と、前記鉄塔に備えられ、前記信号受信手段により前記警報信号を受信したときに前記船舶に対して警報を発する警報手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明は、送電線に接近する船舶の高さを、船体長と波高変化に基づいて警報を発するか否かを判定するものである。即ち、送電線よりも船舶の進行方向上流側に船舶の通過を検知するセンサを設置し、このセンサにより船舶を検知すると、船舶の通過時間と速度から当該船舶の船体長を計算する。船体長が所定の長さ以上である場合に、そのときの波高と風速に基づいて波高変化値を判断して、この変化値が所定値を超えた場合に当該船舶に警報を発する。これにより、不特定多数の船舶に対しても正確に、且つ、確実に送電線への接触の危険性を警告することができる。
【0007】
請求項2は、前記制御手段は、計算された前記船体長が設定値以上であり、且つ前記波高変化値測定手段により計測された波高変化の動作値が設定値以上である場合に、前記信号送信手段に対して前記警報信号を送信するように指示することを特徴とする。
船舶は、その船体長に比例して船舶の高さが高くなる傾向にある。そこで本発明では、船舶がセンサを通過する時間と速度の積により船体長を計算する。そして予め設定した船体長以上である場合に、送電線に接触する虞の有無を判断する。そのとき、波高は常に一定とは限らない。即ち、周辺に大きな船舶が通過すると波高の変化値が大きくなり、また、風速が大きいほど高くなる。従って、風速に基づいて設定した波高の動作域が設定値以上になると警報信号を発する。これにより、船体長だけでなく、波高変化による船舶の高さ変動を正確に捉えることができる。
【0008】
請求項3は、前記制御手段は、前記船舶に対して警報を発した場合、その時点での前記船舶の通過時間、風速、及び波高データを記録することを特徴とする。
船舶に対して警報を発することにより、当該船舶を停船させるか、或いは後退させて送電線の接触事故を未然に回避するように働きかける。しかし、警報を無視して通過する船舶もある。そのとき、必ずしも送電線に接触するとは限らないが、警報の精度を後で検証するために、警報発生時の通過時間、風速、及び波高データを記録しておく。これにより、警報の精度の検証と、事故発生時の船舶に対する証拠データとして利用することができる。
【0009】
請求項4は、前記制御手段は、前記船舶に対して警報を発した場合、該警報を前記送電線を運用管理する制御所にも同時に送信することを特徴とする。
船舶に対して警報を発した場合、船舶が送電線に接触して、送電線を切断する虞がある。そこで本発明では、そのような事故を想定して、送電線を運用管理する制御所にも警報を発した旨を送信する。これにより、不測の事態が発生した場合にも即座に対処できる体制を準備することができる。
【0010】
請求項5は、前記送電線の最下点に相当する高さ位置から水平に光ビームを発光する発光手段、及び該光ビームを受光する受光手段を備え、前記制御手段は、前記船舶検知手段により船舶を検知すると前記発光手段により光ビームを発光し、所定の時間継続して前記受光手段が該光ビームを受光しない場合に、前記船舶に対して警報を発することを特徴とする。
本発明は、船舶の実際の高さを、送電線が設置された場所の手前で検知するために、送電線の最下点に相当する位置に、光ビームの発光手段と受光手段を設け、船舶を検知すると、発光手段から光ビームを発光する。船舶が送電線の最下点より低い場合は、受光手段により光を検知するが、船舶が送電線の最下点より高い部分が存在する場合は、光ビームを遮るように働く。これにより、送電線に接触する虞のある船舶を即座に判定することができる。
【0011】
請求項6は、前記送電線の鉄塔に備えられ、前記送電線の最下点を基準線として前記船舶を撮影する船舶撮影手段を更に備え、前記制御手段は、前記船舶検知手段により船舶を検知すると前記船舶撮影手段により該船舶の撮影を開始し、撮影した画像に基づいて前記送電線の基準線と前記船舶の離間距離を測定し、該離間距離が所定値以下になった場合に、前記船舶に対して警報を発することを特徴とする。
本発明は、カメラ等の撮影手段を送電線の鉄塔に備え、船舶を検知すると当該船舶の撮影を開始し、その画像に基づいて、画像処理等により船舶と送電線の基準線(送電線の最下点)との距離を測定して、所定値より小さい場合に警報を発する。これにより、船舶の記録と警報を発するか否かの判定を同時に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、船体長が所定の長さ以上である場合に、そのときの波高と風速に基づいて波高変化値を判断して、この変化値が所定値を超えた場合に当該船舶に警報を発するので、不特定多数の船舶に対して正確に、且つ確実に送電線への接触の危険性を警告することができる。
また、風速に基づいて設定した波高の動作域が設定値以上になると警報信号を発するので、船体長だけでなく、波高変化による船舶の高さ変動を正確に捉えることができる。
また、警報発生時の通過時間、風速、及び波高データを記録しておくので、警報の精度の検証と、事故発生時の船舶に対する証拠データとして利用することができる。
また、送電線の切断事故を想定して、送電線を運用管理する制御所にも警報を発した旨を送信するので、不測の事態が発生した場合にも即座に対処できる体制を準備することができる。
また、送電線の最下点に相当する位置に、光ビームの発光手段と受光手段を設け、船舶を検知すると、発光手段から光ビームを発光する。船舶が送電線の最下点より低い場合は、受光手段により光を検知するが、船舶が送電線の最下点より高い部分が存在する場合は、光ビームを遮るように働くので、送電線に接触する虞のある船舶を即座に判定することができる。
また、船舶を検知すると当該船舶の撮影を開始し、その画像に基づいて、画像処理等により船舶と送電線の基準線(送電線の最下点)との距離を測定して、所定値より小さい場合に警報を発するので、船舶の記録と警報を発するか否かの判定を同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る船舶接近監視装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る船舶接近監視装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の監視塔の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の警報受信機の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る船舶接近警報装置の動作を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る船舶接近警報装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る船舶接近監視装置の構成を示す図である。本発明に係る船舶接近監視装置50は、河川(水路)8の両岸に夫々設置された鉄塔5に架設された送電線12と、夫々の鉄塔5に設置された複数の警報ランプ6と、警報信号を受信して警報ランプ6を点灯する警報受信機7と、送電線12よりも船舶3の進行方向(矢印)上流側(図1の右側)の両岸に設置された監視塔1と、を備えて構成されている。尚、本実施形態では、監視塔1には夫々アンテナ2が備えられ、警報信号の電波10はこのアンテナ2を介して警報受信機7に送信される。また、監視塔1には、図3に示す各装置が備えられている。
【0016】
次に図1を参照して本発明の船舶接近監視装置の動作について説明する。図1では、河川8上を矢印で示した進行方向に移動するクレーン4を備えた船舶3が、進行方向下流側に位置する送電線12に接近する場合について説明する。監視塔1の近傍に船舶3が接近すると、当該船舶3が監視塔1を通過したことを船舶検知センサ21(図3参照)が検知する。また、監視塔1は、測定時における船舶3の速度と、監視塔1を通過するまでに要する時間を計測する。更に、測定時における風速と、河川8に発生している波高値を計測する。
船舶3が監視塔1を通過する時に、速度と通過時間から船舶3の船体長を計算する。船体長は、通過時間と速度から容易に計算できる。ここでは、船体長が所定の規定値を越える場合には、船上に搭載された設備の最高位置が送電線に干渉する虞があるものと推定を行う。計算の結果、船体長が規定の船体長より大きい場合には、船舶3の最高所の高さが送電線12に接触する虞があると判断し、波高値と風速から船舶3の最高所の高さが所定値以上になると判断した場合に、監視塔1から警報信号の電波10を送信する。その電波10は、鉄塔5に備えられた警報受信機7のアンテナ23により受信され、警報ランプ6を一斉に点灯すると同時に、船舶3に対しても警報が発せられている旨を連絡する。船舶3は警報ランプ6が点灯していることを確認すると、船舶3を停止する。この場合、クレーン4を下げて、一旦後退して再び監視塔1を通過して、通過可能か否かを確認してもよい。また、監視塔1からは、警報信号の電波10を警報受信機7に送信すると共に、送電線12を管理する制御所にもその旨を連絡する。
【0017】
本実施形態は、送電線12に接近する船舶3の高さを、船体長と波高変化に基づいて警報を発するか否かを判定するものである。即ち、送電線よりも船舶3の進行方向上流側に、船舶3の通過を検知する船舶検知センサ21(図3参照)を設置し、船舶検知センサ21により船舶3を検知すると、船舶3の通過時間と速度から当該船舶3の船体長を計算する。船体長が所定の長さ以上である場合に、そのときの波高と風速に基づいて波高変化値を判断して、この変化値が所定値を超えた場合に当該船舶3に警報を発する。これにより、不特定多数の船舶に対しても正確に、且つ、確実に送電線12への接触の危険性を警告することができる。
【0018】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る船舶接近監視装置の構成を示す図である。本発明に係る船舶接近監視装置51は、図2(b)に示すように、送電線12の最下点Aに相当する高さ位置Hから水平に光ビーム11を発光するレーザ送信器(発光手段)26(図3参照)、及び光ビーム11を受光するレーザ受信器(受光手段)27(図3参照)を備え、船舶検知センサ21(図3参照)により船舶3を検知するとレーザ送信器26により光ビーム11を発光し、所定の時間継続してレーザ受信器27が光ビーム11を受光しない場合に船舶3に対して警報を発する。即ち、本実施形態は、船舶3の実際の高さを送電線12が設置された場所の手前で検知するために、送電線12の最下点Aに相当する位置Hに、光ビーム11のレーザ送信器26とレーザ受信器27を設け、船舶3を検知するとレーザ送信器26から光ビーム11を発光する。船舶3が送電線12の最下点Aより低い場合は、レーザ受信器27により光を検知するが、船舶3が送電線12の最下点Aより高い部分が存在する場合は、光ビーム11を遮るように働く。これにより、送電線12に接触する虞のある船舶を即座に判定することができる。
【0019】
また、図示を省略するが、本発明の第3の実施形態として、送電線12の鉄塔5に備えられ、送電線12の最下点Aを基準線として船舶3を撮影するカメラ(船舶撮影手段)を更に備え、船舶検知センサ21(図3参照)が船舶3を検知するとカメラにより該船舶3の撮影を開始し、撮影した画像に基づいて送電線12の基準線と船舶3の離間距離を測定し、該離間距離が所定値以下になった場合に、船舶3に対して警報を発する。即ち、本実施形態は、カメラ等の撮影手段を送電線12の鉄塔5に備え、船舶3を検知すると当該船舶3の撮影を開始し、その画像に基づいて、画像処理等により船舶3と送電線12の基準線(送電線の最下点A)との距離を測定して、所定値より小さい場合に警報を発する。これにより、船舶3の記録と警報を発するか否かの判定を同時に行うことができる。
【0020】
図3は、本発明の監視塔の構成を示すブロック図である。本発明の監視塔1は、送電線12よりも船舶3の進行方向上流側に配置され、船舶3の通過を検知する船舶検知センサ(船舶検知手段)21と、船舶検知センサ21により検知された船舶周辺の風速を検知する風速計(風速計測手段)20と、船舶検知センサ21により検知された船舶の速度を検知する速度計(速度計測手段)22と、船舶3が通過したときの波高変化を測定する波高検知センサ(波高変化値測定手段)23と、船舶3が船舶検知センサ21を通過開始してから通過終了するまでの時間を計時するタイマ(計時手段)24と、速度計22及びタイマ24に基づいて船舶3の船体長を計算し、船体長及び波高検知センサ23により検知された動作値に基づいて船舶3が送電線12に接触する虞があるか否かを判定する制御部(制御手段)28と、制御部28が船舶3が送電線12に接触する虞があると判断した場合に、船舶3に警報信号を送信する送信機(信号送信手段)25と、を備えて構成されている。尚、実施形態2の場合は、レーザ送信器26とレーザ受信器27を更に備える。
【0021】
図4は、本発明のレーザ受信器の構成を示すブロック図である。本発明に係るレーザ受信器27は、アンテナ33から警報信号10を受信する受信部30と、その警報信号を復調して警報信号であるか否かを判断する制御部31と、警報信号であった場合に警報ランプ6を点灯するランプ駆動部32と、を備えて構成されている。
【0022】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る船舶接近監視装置の動作を説明するフローチャートである。河川8にクレーン4を備えた船舶3が送電線12に接近する場合について説明する。まず、監視塔1の近傍に船舶3が接近すると、当該船舶3が監視塔1を通過したことを船舶検知センサ21が検知する(S1でY)。また、監視塔1には、そのときの船舶3近傍の風速を測定し(S2)、船舶3の速度を測定する(S3)。その時点でタイマ24をスタートさせ(S4)、監視塔1を通過するまでの時間を計測する(S5)。船舶3が監視塔1を通過すると(S5でY)、速度と通過時間から船舶3の船体長を計算する(S6)。船体長は、通過時間と速度から容易に計算できる。計算の結果、船体長が規定の船体長より大きい場合には(S7でY)、船舶3の高さが送電線12に接触する虞があると判定して、波高検知センサ23にて検知した波高値と風速から船舶3の動作値を測定する(S8)。測定の結果、船舶の高さが所定値以上になると判断した場合に(S9でY)、監視塔1の送信機25からアンテナ2を介して警報信号の電波10を送信する(S10)。その電波は、鉄塔5に備えられた警報受信機7により受信され、警報ランプ6を一斉に点灯すると同時に、船舶3に対しても警報が発せられている旨を連絡する(S11)。船舶3は警報ランプ6が点灯していることを確認すると、船舶3を停止する。この場合、クレーン4を下げて、一旦後退して再び監視塔1を通過して、通過可能か否かを確認してもよい。また、監視塔1からは、警報信号を警報受信機7に送信すると共に、送電線12を管理する制御所にもその旨を連絡する(S12)。そして、警報を発した時の船舶3の通過時間、風速、及び波高データを制御部28のメモリに記憶する(S13)。
【0023】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る船舶接近警報装置の動作を説明するフローチャートである。河川8にクレーン4を備えた船舶3が送電線12に接近する場合について説明する。まず、監視塔1の近傍に船舶3が接近すると、当該船舶3が監視塔1を通過したことを船舶検知センサ21が検知する(S21)。船舶3を検知すると(S21でY)、レーザ送信器26からレーザ光を発射し(S22)、所定時間以上レーザ受信器27がレーザ光を遮ったかをチェックする(S23)。ここで、所定時間以上レーザ受信器27がレーザ光を遮らない場合は(S23でN)、レーザ光を停止する(S28)。ステップ23で所定時間以上レーザ受信器27がレーザ光を遮った場合は(S23でY)、監視塔1の送信機25からアンテナ2を介して警報信号の電波10を送信する(S24)。その電波10は、鉄塔5に備えられた警報受信機7により受信され、警報ランプ6を一斉に点灯すると同時に、船舶3に対しても警報が発せられている旨を連絡する(S25)。船舶3は警報ランプ6が点灯していることを確認すると、船舶3を停止する。この場合、クレーン4を下げて、一旦後退して再び監視塔1を通過して、通過可能か否かを確認してもよい。また、監視塔1からは、警報信号を警報受信機7に送信すると共に、送電線12を管理する制御所にもその旨を連絡する(S26)。そして、警報を発した時の船舶3の通過時間、風速、及び波高データを制御部28のメモリに記憶する(S27)。
【符号の説明】
【0024】
1 監視塔、2 アンテナ、3 船舶、4 クレーン、5 鉄塔、6 警報ランプ、7 警報受信機、8 河川、9 岸、10 警報信号、11 レーザ光、12 送電線、20 風速計、21 船舶検知センサ、22 速度計、23 波高検知センサ、24 タイマ、25 送信機、26 レーザ送信器、27 レーザ受信器、28 制御部、30 受信部、31 制御部、32 ランプ駆動部、50、51 船舶接近監視装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の進行経路の上方に架設された送電線に該船舶が接触する虞がある場合に、該船舶に対して警報を発する船舶接近監視装置であって、
前記送電線よりも前記船舶の進行方向上流側に配置されて該船舶の通過を検知する船舶検知手段と、
該船舶検知手段により検知された船舶周辺の風速を検知する風速計測手段と、
前記船舶検知手段により検知された船舶の速度を検知する速度計測手段と、
他の船舶が通過したときの波高変化を測定する波高変化値測定手段と、
前記船舶が前記船舶検知手段を通過開始してから通過終了するまでの時間を計時する計時手段と、
前記速度計測手段及び前記計時手段により計測された値に基づいて該船舶の船体長を計算し、該船体長及び前記波高変化値測定手段により計測された波高動作値に基づいて前記船舶が前記送電線に接触する虞があるか否かを判定する制御手段と、
前記制御手段が前記船舶が前記送電線に接触する虞があると判断した場合に、該船舶に警報信号を送信する信号送信手段と、
前記送電線を張架する鉄塔に備えられ、前記信号送信手段から送信された前記警報信号を受信する信号受信手段と、
前記鉄塔に備えられ、前記信号受信手段により前記警報信号を受信したときに前記船舶に対して警報を発する警報手段と、
を備えたことを特徴とする船舶接近監視装置。
【請求項2】
前記制御手段は、計算された前記船体長が設定値以上であり、且つ前記波高変化値測定手段により計測された波高変化の動作値が設定値以上である場合に、前記信号送信手段に対して前記警報信号を送信するように指示することを特徴とする請求項1に記載の船舶接近監視装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記船舶に対して警報を発した場合、その時点での前記船舶の通過時間、風速、及び波高データを記録することを特徴とする請求項1又は2に記載の船舶接近監視装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記船舶に対して警報を発した場合、該警報を前記送電線を運用管理する制御所にも同時に送信することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の船舶接近監視装置。
【請求項5】
前記送電線の最下点に相当する高さ位置から水平に光ビームを発光する発光手段、及び該光ビームを受光する受光手段を備え、
前記制御手段は、前記船舶検知手段により船舶を検知すると前記発光手段により光ビームを発光し、所定の時間継続して前記受光手段が該光ビームを受光しない場合に、前記船舶に対して警報を発することを特徴とする請求項1に記載の船舶接近監視装置。
【請求項6】
前記送電線の鉄塔に備えられ、前記送電線の最下点を基準線として前記船舶を撮影する船舶撮影手段を更に備え、
前記制御手段は、前記船舶検知手段により船舶を検知すると前記船舶撮影手段により該船舶の撮影を開始し、撮影した画像に基づいて前記送電線の基準線と前記船舶の離間距離を測定し、該離間距離が所定値以下の場合に、前記船舶に対して警報を発することを特徴とする請求項1に記載の船舶接近監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−155457(P2012−155457A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12978(P2011−12978)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】