説明

良否判定装置

【課題】検査対象物の良否の判定基準を容易に更新可能な良否判定装置を提供する。
【解決手段】操作手段であって、検査対象物が撮影された画像を表示する画像表示部21と、画像表示部21に表示された画像に対して、検査対象物が良品か不良品かの判断結果を入力する良否判断結果入力部23を備える操作手段11と、画像と良否判断結果を関連付けて記憶する記憶手段12と、制御手段であって、画像に基づいて少なくとも一つの特徴量を算出する画像認識部41と、算出された特徴量に基づいて検査対象物が良品か不良品を判定する良否判定基準を生成する良否判定基準生成部42と、生成された良否判定基準に基づいて検査対象物が良品か否かを判定する良否判定部43を有する制御手段13とで良否判定装置1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の良否を判定する装置に関するものであり、より詳しくは、検査対象物を撮影した画像から自動的に良否判定基準を生成し、その良否判定基準を用いて良否判定を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な製品の製造ライン等においては、製品の品質を維持・向上するために、部品及び完成品などから破損や組み付け不良などを含む不良品を排除する検査工程が設けられる。検査工程では、例えば検査担当者が、目視で製造ラインを流れる部品又は完成品のような検査対象物を確認し、又は検査対象物の特定部分の形状や大きさの計測や、電気的特性などの様々な測定を行って得た測定値に基づいて、検査対象物が良品か不良品かの判断を行う。また、このような検査工程では、検査対象物を撮影し、その撮影画像を拡大するなどして検査担当者が目視確認を行い、検査対象物の良否判定を行う場合もある。
【0003】
しかし、検査対象物が撮影された画像を一枚一枚目視確認して検査を行うのは、多大な労力が必要であり、特に検査対象物の個数が非常に多い場合には、全数検査を行うことは困難であった。そのため、このような目視確認を必要とする検査では、品質の維持・向上という検査の目的を十分に果たせない場合も存在した。そこで、検査対象物が撮影された画像に対して、画像を解析して自動的に良品か否かの判断を行うことで全数検査を行い、品質の向上が図られている。その際、例えばある部品の加工後の寸法や数値規格が決まっている場合は、その良否判定の基準は、そのような設計図面に規定される寸法等の数値規格である。しかし、目視検査を画像処理に置き換える場合、目視作業者の官能評価で行われる検査や図面規格のない検査(例えば、異物の付着がないこと等)では、良否判定基準を単純に数値化できない場合がある。その様な検査について、画像処理を用いて良否判定を行う場合、その良否判定基準を数値に置き換えるため、良品のサンプル画像と不良品のサンプル画像から着目すべき特徴量を検出し、その特徴量に対して最適な閾値を決定する必要があった。
【0004】
一方、検査対象物を撮影した画像データから、被検査対象物の特徴を計算し、良品、不良品ごとに特徴量の度数分布を計算し、その度数分布に基づいて、良品と不良品との閾値を自動的に計算する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載された方法を使用すると、検査対象物を撮影した画像に基づいて特徴量を計算し、その特徴量を予め求めた閾値と比較して良品か不良品かを判別することが可能となり、人が目視で検査を行う必要なく、検査対象物の良否判定を自動的に行うことが可能であった。
【0006】
しかし、例えば検査工程の試作を行っている場合などでは、検査対象物を撮影する画像に変更が生じるなどして、良否判定基準を変更しなければならない場合もある。このような場合には、簡単に良否判定基準の更新を行えることが望ましい。さらに、算出された良否判定基準の妥当性を容易に検証できることが望ましい。
【0007】
【特許文献1】特開平8−7104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の問題点に鑑み、本発明は、検査対象物の良否の判定基準を容易に更新可能な良否判定装置を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明の別の目的として、算出された良否判定基準を容易に検証可能な良否判定装置を提供することを目的とする。
【0010】
さらに本発明の別の目的として、検査対象物の良否判定を自動的に高精度で行うことが可能な良否判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に記載の形態によれば、本発明に係る良否判定装置が、検査対象物が撮影された画像を表示する画像表示部と、画像表示部に表示された画像に対して、検査対象物が良品か不良品かの判断結果を入力する良否判断結果入力部を備える操作手段と、その画像と良否判断結果を関連付けて記憶する記憶手段とを有することにより、良否判定基準の生成に使用するサンプル画像の追加及び修正を容易に行うことが可能であり、良否判定基準の生成及び更新を容易に行うことができる。
【0012】
また、請求項2の記載によれば、記憶手段は、画像上の検査対象物が良品の場合に画像を記憶する第1の記憶領域と、画像上の検査対象物が不良品の場合に画像を記憶する第2の記憶領域とを有することにより、サンプル画像と良否判断結果の対応を示すファイルを別個作成する必要なしに、サンプル画像と良否判断結果を関連付けることができる。そのため、事前に良否判断結果の分かっている画像をサンプル画像として使用する場合には、直接各記憶領域へ画像を追加するだけで、その追加された画像とその画像に撮影されている検査対象物の良否判断結果を関連付けることができる。
【0013】
なお、請求項3に記載のように、記憶手段が上記のように第1及び第2の記憶領域を有する場合には、良否判断結果入力部は、画像表示部に表示された画像の記憶場所を第1の記憶領域か第2の記憶領域かを指定するものであってもよい。
【0014】
また、請求項4の記載によれば、良否判断結果入力部は、画像表示部に表示された画像に対して、良品との判断結果を関連付ける第1の操作ボタンと、不良品との判断結果を関連付ける第2の操作ボタンを有することにより、簡単な操作でサンプル画像と良否判断結果を関連付けることができる。
【0015】
なお、操作ボタンとは、機械的に構成されるボタンの他、モニタに表示される特定領域をポインティングデバイスで特定する動作(マウスクリック、タッチパネルへの接触など)により所定の機能を実行するものを含む。
【0016】
また、請求項5に記載のように、操作手段は、良否判定基準の生成を開始させる判定基準生成指示部をさらに有してもよい。良否判定基準の生成を、任意の時点で開始することが可能であり、良否判定基準の生成及び更新を容易に行うことができる。
【0017】
さらに、請求項6に記載のように、操作手段は、良否判定手段に対して記憶手段に記憶されている画像の良否判定を行わせる検証指示部と、良否判定手段で判定された良否判定結果を表示する判定結果表示部とをさらに有することにより、一旦生成した良否判定基準の妥当性を容易に検証することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る良否判定装置について詳細に説明する。
本発明に係る良否判定装置1は、良否判定の対象となる検査対象物のサンプル画像及びそのサンプル画像を目視観察して良否を判断した結果に基づいて、自動的に良否判定基準を生成し、その良否判定基準を用いて検査対象物の良否を自動判定する装置であり、また良否判定基準の生成に使用するサンプル画像の追加・削除、及び良否判定基準の更新を容易に行うことが可能な装置である。
【0019】
図1に、本発明に係る良否判定装置1の構成ブロック図を示す。
本発明に係る良否判定装置1は、検査対象物のサンプル画像を観察しつつ、良否判断結果を入力する操作手段11と、サンプル画像を良否判断結果と関連付けて記憶する記憶手段12と、サンプル画像から1以上の特徴量を抽出し、その特徴量と各サンプル画像に関連付けられた良否判断結果とに基づいて良否判定基準を生成し、生成された良否判定基準を用いて、画像に撮影された検査対象物の良否を判断する制御手段13と、検査対象物を撮影する撮像手段14を備える。
【0020】
以下、各部について詳細に説明する。
図2に、操作手段11の概略構成図を示す。
操作手段11は、液晶ディスプレイなどのモニタと、マウスやタッチパネルといったポインティングデバイスなどで構成される。また図2に示すように、操作手段11は、検査対象物のサンプル画像を選択する画像選択部21と、選択されたサンプル画像を表示する画像表示部22と、そのサンプル画像に写った検査対象物が良品か、不良品かの判断結果を入力する良否判断結果入力部23と、良否判定基準の生成開始を指示する判定基準生成指示部24と、生成された良否判定基準を用いて記憶手段12に記憶されているサンプル画像に対して良否判定を行う検証指示部25と、良否判定の結果などを表示する判定結果表示部26と、生成される良否判定基準に対し、良品と判定する基準を調整する判定基準調整部27などを有する。
【0021】
画像選択部21では、後述する記憶手段12又は良否判定装置1とネットワークを介して接続される画像サーバ、他の良否判定装置などから、良否判定基準の生成に使用するサンプル画像を選択する。そして、図2に示すように、例えば画像名で所望の画像を選択可能なリストと、選択を確定させる追加ボタン又は選択を取り消すキャンセルボタンで構成される。
なお、画像選択部21の構成は上記に限られず、周知のファイル選択技術を利用することができる。また、選択対象となる画像の保管場所(ディレクトリ、フォルダ等)を予め設定し、その保管場所にある画像を名前順に自動選択するように構成してもよい。
【0022】
画像表示部22は、画像選択部21で選択された画像を表示する。また画像表示部22では、検査対象物の観察を容易にするために、画像拡大・縮小機能を有してもよい。
【0023】
良否判断結果入力部23は、操作者が目視観察によってサンプル画像に写った検査対象物が良品か不良品かの判断した結果を入力するものであり、そのサンプル画像に関連付けて良品か不良品かの判断結果を記憶手段12に記憶する。操作者は、検査対象物を良品と判断した場合には、OKボタン231を押す(なお、「押す」とは、ポインティングデバイスがマウスの場合には、ボタン表示領域でマウスクリックして選択する、タッチパネルの場合には、ボタン表示領域に触れるといった、特定領域の選択操作を表す)。OKボタン231が押されると、表示されているサンプル画像を、後述する記憶手段12中の良品画像の保管場所へ移動する。一方、操作者は、検査対象物を不良と判断した場合には、NGボタン232を押す。NGボタン232が押されると、表示されているサンプル画像を不良品画像の保管場所へ移動する。また、Deleteボタン233が押されると、既に良否判断結果が関連付けられているサンプル画像を、良品画像の保管場所又は不良品画像の保管場所から削除し、良否判定基準の生成においての使用を取り止める。
【0024】
このように、サンプル画像の保管場所が良品と不良品で別の場所に分かれているため、サンプル画像と良否の判断結果を関連付けて記憶部12に記憶することができる。
なお、良否判断結果入力部23は、上述したものに限られず、例えば、マウスによるドラッグ・ドロップ操作を利用したディレクトリ又はフォルダ間のファイル移動(若しくは複製)操作でサンプル画像を良品の保管場所又は不良品の保管場所へ移動するようにしてもよい。
【0025】
判定基準生成指示部24は、図2に示すように操作ボタンとして構成され、この操作ボタンを押すと、制御手段13において、記憶手段12に良否判断結果と関連付けられて記憶されている各サンプル画像から特徴量の算出を開始する。そして、制御手段13では、それら特徴量に基づいて良否判定基準を生成する。
【0026】
検証指示部25は、図2に示すように操作ボタンとして構成され、この操作ボタンを押すことにより、記憶手段12に記憶されている各サンプル画像に対して、制御手段13では特徴量の算出を行い、その特徴量と、生成されている良否判定基準を用いて良否の判定を行う。操作手段11では、良否判定が実行された各サンプル画像は、良否判定された順にしたがって画像表示部22に表示され、同時に判定結果表示部26に、そのサンプル画像に対する良否判定結果を表示する。
【0027】
判定結果表示部26は、画像表示部22に表示されているサンプル画像に対して、生成された良否判定基準を用いて良否を自動判定した結果、及び制御手段13で検出した特徴量などを表示する。そして、生成された良否判定基準が妥当か否かを確認することができる。
【0028】
判定基準調整部27は、制御手段13で生成される良否判定基準について、良品と判定する基準を厳しく、又は緩やかにするような調整を可能とする。一例として、図2に示すように、判定基準調整部27は、調整度をスライドバーで変更する。後述するように、ここで加えられた調整度は、良否判定基準の生成において考慮される。このような調整を行うことで、不良品を誤って良品と判断する確率を減少させるなど、誤判定のリスクに応じて、良否判定基準を最適化することができる。
【0029】
次に、記憶手段12について説明する。
記憶手段12は、不揮発性の半導体メモリ、ハードディスク、又はDVD、CDなどの光記録媒体で構成され、上述したようにサンプル画像を良否判断結果と関連付けて記憶する。サンプル画像と良否判断結果を関連付けるため、検査対象物が良品である場合のサンプル画像と、検査対象物が不良品である場合のサンプル画像を別の保管場所に記憶する。具体的には、記憶手段12に、良品用ディレクトリ(又はフォルダ)31と不良品用ディレクトリ(又はフォルダ)32を設けて、良品用ディレクトリ31内に良品に対応するサンプル画像を、不良品用ディレクトリ32に不良品に対応するサンプル画像を記憶する。又は、ディレクトリを設ける代わりに、記憶手段12を二つのパーティションに分けてもよい。
【0030】
このように保管場所を良品に対応するサンプル画像と不良品に対応するサンプル画像とを分けることで、サンプル画像と良否判定結果を容易に関連付けることができる。また、予め良否が分かっているサンプル画像を追加する場合には、直接そのサンプル画像をそれぞれの保管場所に置くだけでよく、操作手段11で画像を参照しつつ良否判断結果を入力する労力を省くことができる。
【0031】
次に、制御手段13について説明する。
図1に示すように、制御手段13は、良否判定基準の設定に使用するために、サンプル画像から1以上の特徴量を抽出する画像認識部41と、得られた特徴量と良否判断結果から良否判定基準を生成する良否判定基準生成部42と、得られた良否判定基準を用いて、検査対象物の良否を判定する良否判定手段43を有し、パーソナルコンピュータの中央演算装置(CPU)、数値演算プロセッサなどのマイクロプロセッサと、ROM及びRAMなどの半導体メモリと、それらを動作させるプログラムなどで構成される。
【0032】
画像認識部41は、操作手段11の判定基準生成指示部24より、判定基準生成の指示がなされると、記憶手段12から良否判断結果を関連付けられて記憶されている各サンプル画像を読み込み、検査対象物が良品か、不良品かの判断に利用される特定領域について認識し、その特定領域から得た様々な測定値を特徴量として算出する。算出された特徴量は、良品と不良品のグループに分けて、それぞれ記憶手段12に記憶される。
【0033】
特徴量の算出を行うために、公知の画像認識技術を利用することができる。例えば、検査対象物の着目する領域が、その周囲と明るさ又は色調が異なる場合には、2値化処理をおこなって着目する領域を抽出し、その領域に含まれる画素数を面積として、特徴量とすることができる。又は、2値化処理で抽出された領域の重心、最大長、縦横比などを特徴量としてもよい。さらに、検査対象物の特定部位に、ダストなどが付着しているか否かを調べるために、検査対象物の外形形状に沿ったエッジ検出処理などをおこなって、サンプル画像中に占める検査対象物の領域を特定し、検査対象物が占める領域中の一部領域に相当する部分の平均画素値を特徴量としてもよい。
【0034】
また、様々な環境下(例えば、異なる照明状況下)で撮影されたサンプル画像について、その環境条件の影響を排除するために、特徴量を算出する前に前処理を行うようにしてもよい。そのような前処理としては、例えば、各サンプル画像の平均濃度が一致するように、サンプル画像に含まれる全画素に対して一定の画素値を加算又は減算するといった処理や、ノイズ除去のためにガウシアンフィルタなどを用いたフィルタ処理が含まれる。
【0035】
算出された特徴量は、良品、不良品毎に集計され、例えばサンプル画像名と、そのサンプル画像から算出された特徴量とを対応付けるテーブルとして、記憶手段12に記憶される。
【0036】
次に、良否判定基準生成部42について説明する。
良否判定基準生成部42は、検査対象物が写っている画像から画像認識部41で算出した特徴量の組に基づいて良品か不良品かを判定する識別境界を良否判定基準として設定する。そのような識別境界の一例として、特徴量がn種類有る場合、良品に対応するサンプル画像から求めた特徴量の平均値ベクトルUav=(u1,u2,...,un)と、不良品に対応するサンプル画像から求めた特徴量の平均値ベクトルVav=(v1,v2,...,vn)をそれぞれ求め、それら平均値ベクトルUav、Vavを結ぶ直線と直交し、Uav、Vavとそれぞれ等距離の位置にある面s1を良品と不良品の識別境界とすることができる。この場合、任意の画像について求めた特徴量の組である特徴量ベクトルが、上記の面s1に対して平均値ベクトルUav側に存在する場合、その画像に写っている検査対象物は良品と判定される。
【0037】
また、良否判定基準となる識別境界の別の例として、何れかの特徴量について正規分布を仮定した場合に、検査対象物が良品の場合と不良品の場合とで分散が異なる場合には、上記の平均値ベクトルUav、Vavからのマハラノビス距離が等距離となる判別関数で表される面s2を識別境界とすることが好ましい。特徴量の分散が考慮されるため、より正確に良否判定を行うことが可能となるためである。
【0038】
算出された識別境界は、例えば画像認識部41で算出された特徴量を入力変数とする判別関数で表される。その判別関数に、画像認識部41で算出された各特徴量を入力して得た出力値が判定値Tj(例えばTj=0)よりも大きい場合、検査対象物は良品と判定され、逆に判定値Tj以下の場合には不良品と判定される。
【0039】
また、判定値Tjは、上述の操作手段11の判定基準調整部27において入力される調整度を考慮して決定される。例えば、操作者が、生成される良否判定基準に何も手を加えない場合には、判定値Tjは、予め定められた値Dとなる。また、判定基準調整部27において、良品と判定する基準を厳しく設定する場合には、上記の予め定められた値Dに、調整度に応じた値を加える。逆に判定基準調整部27において、良品と判定する基準を緩やかに設定する場合には、上記の予め定められた値Dから調整度に応じた値を減じる。上記から明らかなように、判定値Tjが増減することで、良品と判定される基準が変更される。
なお、求められた判別関数の各係数及び判定値Tjは、記憶手段12に記憶される。
【0040】
さらに別の例として、良否判定基準生成部14は、3層構成のパーセプトロンモデルのニューラルネットワークや、サポートベクトルマシンなどのノンパラメトリック学習を利用して、良品と不良品の識別境界を求めることができる。この場合、複数のサンプル画像から算出した特徴量(上記の特定領域の面積、重心、縦横比など)の組を入力とし、各特徴量の組に対する良否判断結果(例えば、良品の場合‘1’、不良品の場合、‘−1’という値を良否判断結果とする)を出力として学習を行う。そして、各特徴量の組に対して正しい出力が得られるようになるまで学習を繰り返す。このようにして学習された系を、良否判定基準として使用する。
【0041】
これらのノンパラメトリック学習を利用した場合には、良品と不良品とをその特徴量数の次元で線形分離できない場合であっても、良否判定を精度良く行える識別境界を設定することができる。
【0042】
次に、良否判定手段43について説明する。
良否判定手段43は、撮像手段14から取得した、検査対象物を撮影した画像に対して上記の画像認識部41で算出された特徴量と、記憶手段12に記憶されている識別境界を表す判別関数の係数に基づいて、判別関数の出力値を計算する。その出力値が上記の判定値Tjよりも大きい場合、その画像に写っている検査対象物を良品と判定する。一方出力値が上記の判定値Tj以下の場合、その画像に写っている検査対象物を不良品と判定する。
【0043】
判定結果は、操作手段11の判定結果表示部26に表示される。また判定結果を、制御手段13から本発明に係る良否判定装置1が使用される検査工程を有する設備へ送信し、良品と不良品の選別に使用するようにしてもよい。
【0044】
撮像手段14は、CCDカメラなどで構成され、良品と想定される不良品との相違が画像上で明確に区別可能なように検査対象物を撮影する。そして、撮影した画像は、記憶手段12に記憶され、或いは良否判定基準を生成するためのサンプル画像として使用され、又は製造工程若しくは検査工程の一環として、検査対象物の良否判定に使用される。
【0045】
次に、本発明に係る良否判定装置1における、良否判定基準の生成手順について、フローチャートを用いて説明する。
【0046】
図3に、良否判定基準の生成手順のフローチャートを示す。
まず、操作手段11で、良否判定基準の生成に使用する各サンプル画像について、そのサンプル画像に撮影されている検査対象物が良品か不良品かを目視判断し、その結果をサンプル画像と関連付けて記憶手段12に記憶する(ステップS01)。
【0047】
全てのサンプル画像について、良否の判断結果が関連付けされると、画像認識部41が、各サンプル画像から特徴量を算出する(ステップS02)。算出された特徴量は、良品、不良品で区別された上で集計され、記憶手段12に記憶される。
【0048】
そして、良否判定基準生成部42が、算出された各特徴量について、良品、不良品それぞれの平均値、分散、共分散などの統計量を算出して判別関数として良否判定基準を生成し、又はニューラルネットワークなどの系の学習を行って良否判定基準を生成する(ステップS03)。生成された判別関数は、記憶手段12に記憶される(ステップS04)。
【0049】
以上説明してきたように、本発明に係る良否判定装置1は、良否判定基準の生成に使用するサンプル画像の追加・更新を容易に行うことができるものであり、その結果として、装置の使用状況に応じて、良否判定基準の生成・更新を容易に行うことが可能なものである。
【0050】
なお、上述してきた実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0051】
例えば、上述の実施形態において、記憶手段12では、良品に対応するサンプル画像と不良品に対応するサンプル画像を別個に記憶することで、サンプル画像と良否判断結果とを関連付けたが、代わりとして、サンプル画像名に対応付けて良否判断結果を記したテーブルを作成し、そのテーブルを記憶するようにしてもよい。
【0052】
また、上述の実施形態においては、操作手段11の良否判定基準生成指示部24を通じて指示がなされてから、画像認識部41は各サンプル画像に対して特徴量を計算したが、操作手段11において、サンプル画像の良否判断結果を入力した時点で、そのサンプル画像に対する特徴量の算出を行うようにしてもよい。このような構成とすると、良否判定基準の生成時には、既に特徴量の算出は終了しているため、良否判定基準の生成に要する時間を短縮することができる。
【0053】
さらに、画像認識部41は、操作手段11において、良否判断を行うために画像選択部21でサンプル画像が選択されると、その選択されたサンプル画像に対して直ちに特徴量を算出するようにしてもよい。そして、判定結果表示部26に、算出した特徴量の値を表示するようにしてもよい。このような構成とすることで、サンプル画像に撮影されている検査対象物を目視で良否判断する際に、特徴量の値を参考にすることが可能となる。
【0054】
また、良否判定手段43を、それ以外の手段とは別のハードウェアとして構成し、良否判定基準の生成とは独立した良否判定装置としてもよい。このような構成することで、例えば複数の製造ラインで良否判定を行う場合、本発明に基づいて予め良否判定基準を生成し、その生成された良否判定基準を、各製造ラインに配備された良否判定装置にインストールして使用することで、複数の製造ラインに対する同一の良否判定基準の適用を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る良否判定装置の構成ブロック図である。
【図2】操作手段の概略構成図である。
【図3】良否判定基準生成時の動作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1 良否判定装置
11 操作手段
12 記憶手段
13 制御手段
14 撮像手段
21 画像選択部
22 画像表示部
23 良否判断結果入力部
24 判定基準生成指示部
25 検証指示部
26 判定結果表示部
27 判定基準調整部
31 良品用ディレクトリ
32 不良品用ディレクトリ
41 画像認識部
42 良否判定基準生成部
43 良否判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物が撮影された画像を表示する画像表示部と、該画像表示部に表示された画像に対して、該検査対象物が良品か不良品かの判断結果を入力する良否判断結果入力部を備える操作手段と、
前記画像と前記良否判断結果を関連付けて記憶する記憶手段と、
制御手段であって、前記画像に基づいて少なくとも一つの特徴量を算出する画像認識部と、前記特徴量に基づいて前記検査対象物が良品か不良品を判定する良否判定基準を生成する良否判定基準生成部と、前記良否判定基準に基づいて検査対象物が良品か否かを判定する良否判定部を有する制御手段と、
を有することを特徴とする良否判定装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、画像上の検査対象物が良品の場合に該画像を記憶する第1の記憶領域と、画像上の検査対象物が不良品の場合に該画像を記憶する第2の記憶領域とを有する、請求項1に記載の良否判定装置。
【請求項3】
前記良否判断結果入力部は、前記画像表示部に表示された画像の記憶場所を、前記第1の記憶領域か前記第2の記憶領域かを指定する、請求項2に記載の良否判定装置。
【請求項4】
前記良否判断結果入力部は、前記画像表示部に表示された画像に対して、良品との判断結果を関連付ける第1の操作ボタンと、不良品との判断結果を関連付ける第2の操作ボタンを有する、請求項1〜3の何れか一項に記載の良否判定装置。
【請求項5】
前記操作手段は、良否判定基準の生成を開始させる判定基準生成指示部をさらに有する、請求項1〜4の何れか一項に記載の良否判定装置。
【請求項6】
前記操作手段は、前記良否判定手段に対して前記記憶手段に記憶されている前記画像の良否判定を行わせる検証指示部と、前記良否判定手段で判定された良否判定結果を表示する判定結果表示部とをさらに有する、請求項1〜5の何れか一項に記載の良否判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−114843(P2007−114843A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302854(P2005−302854)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】