説明

色処理装置およびその方法

【課題】 メディアが含む蛍光増白剤の影響を考慮してメディアの紙白を取得する。
【解決手段】 測定値補正部116は、紫外域の光を含む第一の光を照射する第一の光源の下、かつ、第一の温度における、記録媒体の第一の色値を測定データテーブル、または、カラーセンサ123から取得する。また、第一の光源の下、かつ、第一の温度とは異なる第二の温度における、記録媒体の第二の色値を測定データテーブル、または、カラーセンサ123から取得する。そして、取得した第一および第二の色値から、第一および第二の温度とは異なる、観察温度における記録媒体の色値を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色変換ルックアップテーブルを作成する際の色処理に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置によって望みの色を出力するために、色変換ルックアップテーブル(LUT)を用いる。色変換LUTには、印刷装置をある一定の状態に保つキャリブレーションに用いるLUTや、International Color Consortium (ICC)プロファイルに代表される、カラーマッチングに用いるLUTなどがある。これら色変換LUTの作成には、例えば、印刷装置によって多数の色票を出力し、色票を測色して測色値を取得する。そして、デバイス非依存値である、印刷装置に入力した色票のデータと、デバイス依存値である測色値とを対応付けて色変換LUTを作成する。
【0003】
一般的な分光測光器は、測定対象に測定光を照射して得られる分光強度分布を、完全拡散反射板に同一の測定光を照射して得られる分光強度分布で除算して、光源に依存しない分光反射率を測定する。そして、分光反射率、観察光源のスペクトル、等色関数を用いて、ある観察光源の下における測定対象の色の三刺激値を測色値として出力する。
【0004】
一方、印刷に用いられるメディア(記録紙、印刷紙など)の多くは、白色度を増すために、紫外光(UV)を吸収して可視域の蛍光を発する蛍光増白剤を含む。蛍光増白剤を含むメディアからの反射光は、メディアからの反射光成分と蛍光成分を含み、一般的な分光測光器では、蛍光増白剤を含むメディアの物体色を正確に測定することができない。何故ならば、反射光成分は光源の種類によらず測定することができるが、光源の分光分布によって蛍光成分の強度と分布が変化するからである。そのため、測色時に用いた測定光と、実際の観察光源が異なれば、蛍光増白剤による発光が異なり、見掛けの分光反射率にずれが生じる。
【0005】
上記の問題を解決するために、特許文献1の発明は、物体色を、UVを除去した測定光と、UVを含む測定光で測定し、ある観察光源の下の物体色を算出する。しかし、蛍光増白剤による増白効果は温度に依存し、蛍光増白剤を含むメディアに形成した画像の測色値は温度に依存する。特許文献1の発明は、蛍光増白剤による増白効果の温度依存性を考慮しない。言い換えれば、蛍光増白剤を含むメディア用の色変換ルックアップテーブルを正確に作成するには、メディアが含む蛍光増白剤の影響、つまり、増白効果の温度依存性を考慮してメディアの物体色(以下、紙白)を測定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-176953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、メディアが含む蛍光増白剤の影響を考慮してメディアの紙白を取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる色処理は、紫外域の光を含む第一の光を照射する第一の光源の下、かつ、第一の温度における、記録媒体の第一の色値を測定データテーブル、または、測定手段から取得し、前記第一の光源の下、かつ、前記第一の温度とは異なる第二の温度における、前記記録媒体の第二の色値を前記測定データテーブル、または、前記測定手段から取得し、前記取得された第一および第二の色値から、前記第一および第二の温度とは異なる、観察温度における前記記録媒体の色値を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メディアが含む蛍光増白剤の影響を考慮してメディアの紙白を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の色処理を実行するプリンタの構成例を説明するブロック図。
【図2】カラーセンサの構成例を説明する図。
【図3】測定値補正部の構成例を説明するブロック図。
【図4】指定部が提供するユーザインタフェイスの一例を示す図。
【図5】格納部による測色値の格納方法の一例を説明する図。
【図6】格納部による光源値の格納方法の一例を説明する図。
【図7】カラーマッチングLUTの生成方法の一例を説明するフローチャート。
【図8】プリセット測色データに三次元蛍光スペクトルを保持する例を説明する図。
【図9】実施例2の色処理を実行するプリンタの構成例を説明するブロック図。
【図10】実施例2のカラーマッチング用LUTの生成方法の一例を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明にかかる実施例の色処理を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
[装置の構成]
図1のブロック図により実施例1の色処理を実行するプリンタの構成例を説明する。
【0013】
プリンタ10は、高精度なカラーマッチングを行うために、印刷ジョブの実行前や実行中にカラーマッチング用の複数の色票30を印刷する。そして、色票30をプリンタ10内に備わるカラーセンサ123によって測色して色変換テーブルであるカラーマッチングLUT112を生成し更新する。定着直後の色票30は高温であり、上述した蛍光増白剤の影響により測色値が変動するため、測色値の補正が必要になる。
【0014】
プリンタ10のコントローラ11は、カラーマッチングLUT112を備えるカラーマッチング部111、キャリブレーションLUT114を備えるキャリブレーション部113を有する。さらに、カラーマッチングLUT112を生成するLUT生成部115、測定値補正部116などを有する。なお、マイクロプロセッサ(CPU)やメモリによって構成されるコントローラ11は、その他の様々な機能を実行する構成を有するが、それら構成の説明は省略する。
【0015】
カラーマッチング部111は、カラーマッチングモジュール(CMM)によりICCプロファイルに代表されるカラーマッチングLUT112を使用して印刷する画像を色変換する。キャリブレーション部113は、一般的なカラーキャリブレーションに用いるCMYKそれぞれの一次元LUTに代表されるキャリブレーションLUT114を使用して、プリンタ10の出力状態を一定に保つ補正を行う。測定値補正部116は、測定値を温度補正して、所定の温度における測定値を出力する。LUT生成部115は、測定値補正部116が出力する所定の温度における測定値を用いてカラーマッチングLUT112を生成し更新する。
【0016】
プリンタ10のプリント部12は、定着部121、温度センサ122、カラーセンサ123などを有する。なお、プリント部12は、その他の様々な機能を実行する構成を有するが、それら構成の説明は省略する。
【0017】
定着部121は、ハロゲンヒータなどの熱源を備え、熱によってトナー(色材)を溶融し、圧力によって溶融したトナーをメディア(記録媒体)に定着する。温度センサ122は、カラーセンサ123の近傍に設置され、色票30の測定時のメディアの温度を測定する。
【0018】
図2によりカラーセンサ123の構成例を説明する。カラーセンサ123は、定着部121とメディアの排出口を結ぶ搬送路に設置される。図2に示すように、カラーセンサ123は、測定光にUVを含む光源(第一の光源)を用いる分光測光器であるセンサ部123a(第一の測定部)そ備える。さらに、測定光にUVを含まない光源(以下、UVカット光源)(第二の光源)を用いる分光測光器であるセンサ部123b(第二の測定部)を備える。また、可視域外について、第一の光源が照射するUVよりも弱いUVを照射する光源が存在する。そのような光源(以下、相対的低UV光源)を使用した場合、メディアが含む蛍光増白剤による増白効果が、第一の光源に比べて充分に小さければ、相対的低UV光源を第二の光源として使用することができる。以下では、相対的低UV光源も「UVカット光源」として説明する。
【0019】
図3のブロック図により測定値補正部116の構成例を説明する。測定値補正部116は、ユーザインタフェイス(UI)を提供し設定情報を入力する指定部21、光源値と測定値を記憶する格納部22、測定値を温度補正する演算部23などを有する。
【0020】
指定部21は、図示しないプリンタ10のモニタやパーソナルコンピュータ(PC)20のモニタに図4に示すUIを表示する。UIは、対象温度の設定部41、メディアの種類の設定部42、観察光の設定部43を備える。ユーザは、設定部41を操作して、印刷物を観察する際の温度(以下、観察温度)を設定する。例えば、寒冷地の屋外で印刷物を観る場合は例えば0℃を設定し、屋内で印刷物を観る場合は例えば20℃を設定する。また、測定分野で標準的な23℃(JIS Z 8703)などを設定してもよい。また、ユーザは、設定部42を操作して色票30を印刷するメディアの種類を設定し、設定部43を操作して印刷物を観察する環境の光(観察光)を設定する。また、観察温度と観察光の組み合わせを「観察環境」と呼ぶ場合がある。
【0021】
図5により格納部22による測定値の格納方法の一例を説明する。格納部22は、温度、色票のCMYK値、分光反射率で構成される補正データ31、測定データ32およびプリセット測定データ33を格納する。補正データ31は、測定値補正部116が出力した、観察環境(観察温度および観察光)に応じて補正された測定値である。測定データ32は、温度センサ122とカラーセンサ123が測定した補正前の測定値である。プリセット測定データ33は、複数の温度において、各種メディアの紙白と、当該メディアに印刷した色票を、UVを含む光源を用いる分光測光器およびUVカット光源を用いる分光測光器によって、予め測定した測定値である。なお、図5に示す補正データ31、測定データ32、プリセット測定データ33をそれぞれ、または、まとめて測定データテーブルと呼ぶ場合がある。
【0022】
図6により格納部22による光源値の格納方法の一例を説明する。格納部22は、紫外域も含む分光照度値で構成される測定光データ34、実環境観察光データ35、プリセット観察光データ36を格納する。測定光データ34は、センサ部123aが用いるUVを含む光源の分光照度値である。実環境観察光データ35は、実際の環境における観察光を測定した分光照度値である。プリセット観察光データ36は、予め保持された、代表的な光源の分光照度値である。
【0023】
[カラーマッチングLUTの生成]
図7のフローチャートによりカラーマッチングLUT112の生成方法の一例を説明する。この処理は、測定値補正部116によって実行される。
【0024】
測定値補正部116の演算部23は、設定部41を介して観察温度Ttを取得する(S601)。さらに、設定部42を介してカラーマッチングLUT112の生成に用いるメディアの種類の指定を取得し(S602)、設定部43を介して観察光の指定を取得する(S603)。
【0025】
次に、演算部23は、指定されたメディアの種類がプリセット測定データ33に登録されたメディアの種類に含まれるか否か、言い換えればプリセットメイディアか否かを判定する(S604)。指定されたメディアの種類がプリセットメディアではない場合、指定メディアを温度センサ122とカラーセンサ123の測定領域へ搬送する(S605)。そして、メディアの温度Tm1、および、UVを含む光源およびUVカット光源を用いてメディアの紙白の分光反射率を測定し、測定結果を格納部22に格納する(S606)(第一の取得)。なお、ステップS605において、メディアが定着部121を通過したとしても、定着部121のヒータはオフ状態にある。従って、ステップ606において、メディアの温度Tm1はほぼ室温である。
【0026】
次に、演算部23は、プリント部12を制御して、指定メディアに色票30を印刷する(S607)。そして、温度センサ122により色票30が印刷されたメディアの温度Tm2を測定し、カラーセンサ123によりUVカット光源に対するメディアの紙白の分光反射率を測定する。さらに、カラーセンサ123によりUVを含む光源およびUVカット光源に対する色票30の分光反射率を測定する。そして、それら測定結果を格納部22に格納する(S608)(第二の取得)。そして、観察温度Ttにおける紙白の分光反射率を式(1)または式(2)によって演算(第一の推定)し、格納部22へ格納する(S609)。なお、ステップS607において、定着部121の熱と圧力によりトナーがメディアに定着され、その直後に測定が行われる。従って、ステップS608の測定において、メディアの温度Tm2は室温より高い状態にある。
if (プリセットメディア)
PWt(λ) = PW1(λ) + {PW2(λ) - PW1(λ)}×(Tt - T1)/(T2 - T1); …(1)
ここで、Ttは観察温度、
T1、T2はプリセット測色データに記録された第一の温度、第二の温度、
PW1(λ)はT1における紙白の分光反射率、
PW2(λ)はT2における紙白の分光反射率、
PWt(λ)は観察温度Ttにおける紙白の分光反射率。
if (非プリセットメディア)
PWt(λ) = PWm1(λ) + {PWm2(λ) - PWm1(λ)}×(Tt - Tm1)/(Tm2 - Tm1); …(2)
ここで、Tm1は紙白測定(S606)時のメディアの温度、
Tm2は色票測定(S608)時のメディアの温度、
PWm1(λ)は紙白測定(S606)時のUVを含む光源による紙白の測定値、
PWm2(λ)は色票測定(S608)時のUVを含む光源による紙白の測定値。
【0027】
なお、T1、T2、PW1(λ)、PW2(λ)はプリセット測定データ33から取得する。また、λは波長であり、本実施例においては、例えば可視域380〜780nmにおいて10nmピッチに演算を行う。また、Tm1、Tm2、PWm1(λ)、PWm2(λ)は測定データ32から取得する。また、PW1やPWm1を第一の色値、PW2やPWm2を第二の色値と呼ぶ場合がある。
【0028】
次に、演算部23は、観察環境(観察温度、観察光)における紙白の分光反射率を式(3)によって演算(第二の推定)し、格納部22へ格納する(S610)。
PWto(λ) =PWcut(λ) + {PWt(λ) - PWcut(λ)}×O/M …(3)
ここで、PWcut(λ)はUVカット光源による紙白の測定値、
PWto(λ)は観察環境における紙白の分光反射率、
Oは観察光の下における増白効果の強度を表すパラメータ、
MはUVを含む測定光の下における増白効果の強度を表すパラメータ。
【0029】
なお、Oは実環境観察光データ35またはプリセット観察光データ36の特性から、Mは測定光データ34の特性から求める。また、PWcut(λ)はプリセット測定データ33または測定データ32から取得する(第三の取得)。また、PWcutを第三の色値と呼ぶ場合がある。
【0030】
式(3)には、パラメータO、Mが波長に関わらず一定の値を示す例を示したが、波長依存性を考慮したパラメータを使用してもよい。例えば、プリセットメディアの場合、図8に一例を示すように、予め蛍光分光光度計などで測定したメディアの種類ごとの三次元蛍光スペクトルをプリセット測定データ33に保持する。そして、下式に示すように、パラメータOは、観察光と三次元蛍光スペクトルから求めた観察光の下における蛍光分光ラジアンスファクタにする。また、パラメータMは、UVを含む光源の測定光データと三次元蛍光スペクトルから求めた測定光の下における蛍光分光ラジアンスファクタにする。
M = M(λ) = Σλ'=300nm780nmQ(λ, λ')・m(λ')Δλ'
O = O(λ) = Σλ'=300nm780nmQ(λ, λ')・o(λ')Δλ' …(4)
ここで、M(λ)は観察光の蛍光分光ラジアンスファクタ、
O(λ)は測定光の蛍光分光ラジアンスファクタ、
m(λ')は観察光値、
o(λ')は測定光値、
Q(λ, λ')は各プリセットメディアを蛍光分光光度計(二分光方式)で測定した蛍光成分の測定値。
【0031】
次に、演算部23は、観察環境(観察温度、観察光)における色票の分光反射率を演算(第三の推定)し、格納部22に格納する(S611)。色票の測定値として、UVを含む光源による測定値を用いる場合は式(5)、UVカット光源による測定値を用いる場合は式(6)を用いる。
Rto(λ) = Rm2(λ)×PWto(λ)/PWm2(λ) …(5)
Rto(λ) = Rcut2(λ)×PWto(λ)/PWcut(λ) …(6)
ここで、Rm2(λ)はUVを含む光源による色票の測定値、
PWm2(λ)はUVを含む光源による紙白の測定値(プリセットメディアの場合は、PWm2(λ)の代わりにPW2(λ)を使用する)、
Rcut2(λ)はUVカット光源による色票の測定値、
PWcut(λ)はUVカット光源による紙白の測定値、
Rto(λ)は観察環境における色票の分光反射率。
【0032】
なお、Rm2(λ)、Rcut2(λ)、PWm2(λ)、PWcut(λ)は測定データ32から取得する(第四の取得)。
【0033】
次に、演算部23は、色票すべてについてRto(λ)を計算したか否かを判定し(S612)、全色票のRto(λ)を計算するまでステップS611の処理を繰り返す。
【0034】
全色票のRto(λ)の計算が終了すると、LUT生成部115は、格納部22に格納された観察環境(観察温度、観察光)の紙白と色票の分光反射率、色票のCMYK信号値(色材量値)からカラーマッチングLUTを生成する。そして、生成したカラーマッチングLUTによってカラーマッチング部111のカラーマッチングLUT112を更新する。
【0035】
このように、プリンタ10は、高精度なカラーマッチングを行うために、色票30をプリンタ10内に備わるカラーセンサ123によって測色してカラーマッチングLUT112を生成し更新する。その際、定着直後の色票30は高温であり、蛍光増白剤の影響により測定値が変動するため、測定値の補正が必要になる。そこで、色票30の分光反射率の測定に際して、メディアの温度、UVを含む光源とUVカット光源による紙白の分光反射率の測定を行い、観察環境(観察温度、観察光)に応じた色票30の測定値(分光反射率)を計算する。従って、蛍光増白剤の影響による測定値の変動がカラーマッチングLUT112に及ぶのを防いで、観察環境(観察温度、観察光)における印刷物の観察に適合したカラーマッチングLUT112を生成することができる。
【0036】
[変形例]
上記では、UVを含む光源とUVカット光源(相対的低UV光源を含む)による色票の測定を説明したが、何れか一方の測定だけでもよい。また、カラーセンサ123を、UVを含む光源を用いるカラーセンサ123aとUVカット光源を用いるカラーセンサ123bの何れか一方で構成してもよい。その場合、一方のカラーセンサがないために測定することができないデータは、プリセット測定データ33から取得する。
【0037】
また、測定値として分光反射率を用いる例を説明したが、XYZ値や他の色値(例えばLab値、Luv値)を用いてもよい。
【実施例2】
【0038】
以下、本発明にかかる実施例2の色処理を説明する。なお、実施例2において、実施例1と略同様の構成については、同一符号を付して、その詳細説明を省略する。
【0039】
図9のブロック図により実施例2の色処理を実行するプリンタの構成例を説明する。
【0040】
実施例2のプリンタ10は、複数の温度において、複数の色票を測定して得た測定値を予め保持し、それら測定値から任意の観察温度におけるカラーマッチングLUT112を生成し更新することで、任意の観察温度Ttにおける高精度なカラーマッチングを行う。
【0041】
図10のフローチャートにより実施例2のカラーマッチングLUT112の生成方法の一例を説明する。この処理は、測定値補正部116によって実行される。なお、ステップS601からS603の処理は、実施例1の処理(図7)と同様であり、詳細説明を省略する。
【0042】
測定値補正部116の演算部23は、観察温度における色票の測定値を下式によって演算し、格納部22へ格納する(S621)。
Rt(λ) = R1(λ) + {R2(λ) - R1(λ)}×(Tt - T1)/(T2 - T1) …(7)
ここで、R1(λ)はT1における色票の分光反射率、
R2(λ)はT2における色票の分光反射率、
Rt(λ)は観察温度Ttにおける色票の分光反射率。
【0043】
なお、T1、T2、R1(λ)、R2(λ)はプリセット測定データ33から取得する。
【0044】
次に、演算部23は、観察環境(観察温度、観察光)における色票の測定値を下式によって演算し、格納部22へ格納する(S622)。
Rto(λ) = Rcut(λ) + {Rt(λ) - Rcut(λ)}×O/M …(8)
ここで、Rcut(λ)はUVカット光源による色票の測定値、
Oは観察光の下における増白効果の強度を表すパラメータ、
MはUVを含む測定光の下における増白効果の強度を表すパラメータ。
【0045】
なお、Oは実環境観察光データ35またはプリセット観察光データ36の特性から、Mは測定光データ34の特性から求める。また、Rcut(λ)はプリセット測定データ33から取得する。
【0046】
次に、演算部23は、色票すべてについてRto(λ)を計算したか否かを判定し(S623)、全色票のRto(λ)を計算するまでステップS621、S622の処理を繰り返す。そして、全色票のRto(λ)の計算が終了すると、演算部23は、式(6)、式(7)と同様の処理により、観察環境(観察温度、観察光)における紙白の測定値PWto(λ)を演算し、格納部22へ格納する(S624)。
【0047】
演算部23による全色票のRto(λ)の計算が終了し、紙白PWto(λ)の演算が終了すると、LUT生成部115はカラーマッチングLUTを生成する。つまり、格納部22に格納された観察環境(観察温度、観察光)の紙白と色票の分光反射率、色票のCMYK信号値(色材量値)からカラーマッチングLUTを生成する。そして、生成したカラーマッチングLUTによってカラーマッチング部111のカラーマッチングLUT112を更新する。
【0048】
[その他の実施例]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定データテーブルを格納するメモリと、
色値を測定する測定手段と、
紫外域の光を含む第一の光を照射する第一の光源の下、かつ、第一の温度における、記録媒体の第一の色値を前記測定データテーブル、または、前記測定手段から取得する第一の取得手段と、
前記第一の光源の下、かつ、前記第一の温度とは異なる第二の温度における、前記記録媒体の第二の色値を前記測定データテーブル、または、前記測定手段から取得する第二の取得手段と、
前記取得された第一および第二の色値から、前記第一および第二の温度とは異なる、観察温度における前記記録媒体の色値を推定する第一の推定手段とを有することを特徴とする色処理装置。
【請求項2】
さらに、前記第一の光よりも弱い紫外域の光を含む第二の光を照射する第二の光源の下における、前記記録媒体の第三の色値を前記測定データテーブル、または、前記測定手段から取得する第三の取得手段と、
前記観察温度における前記記録媒体の色値、前記第三の色値、並びに、前記第一の光源の下における前記記録媒体の蛍光増白剤の増白効果を表すパラメータ、および、観察光の下における前記記録媒体の蛍光増白剤の増白効果を表すパラメータの比を用いて、前記観察温度および前記観察光の下における前記記録媒体の色値を推定する第二の推定手段とを有することを特徴とする請求項1に記載された色処理装置。
【請求項3】
前記測定手段は、前記第一および第二の光源、並びに、色値の測定時における前記記録媒体の温度を測定する温度センサを有し、前記第一および第二の取得手段は、前記第一および第二の色値の測定結果とともに、前記記録媒体の温度の測定結果を取得することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された色処理装置。
【請求項4】
さらに、前記第一の光源の下、かつ、前記第二の温度における、前記記録媒体に記録された色票の色値を前記測定データテーブル、または、前記測定手段から取得する第四の取得手段と、
前記色票の色値、前記観察温度および前記観察光の下における前記記録媒体の色値、並びに、前記記録媒体の第二の色値から前記観察温度および前記観察光の下における前記色票の色値を推定する第三の推定手段とを有することを特徴とする請求項2に記載された色処理装置。
【請求項5】
さらに、前記第二の光源の下における、前記記録媒体に記録された色票の色値を前記測定データテーブル、または、前記測定手段から取得する第四の取得手段と、
前記色票の色値、前記観察温度および前記観察光の下における前記記録媒体の色値、並びに、前記記録媒体の第三の色値から前記観察温度および前記観察光の下における前記色票の色値を推定する第三の推定手段とを有することを特徴とする請求項2に記載された色処理装置。
【請求項6】
測定データテーブルを格納するメモリ、色値を測定する測定手段、第一および第二の取得手段、推定手段を有する色処理装置の色処理方法であって、
前記第一の取得手段が、紫外域の光を含む第一の光を照射する第一の光源の下、かつ、第一の温度における、記録媒体の第一の色値を前記測定データテーブル、または、前記測定手段から取得し、
前記第二の取得手段が、前記第一の光源の下、かつ、前記第一の温度とは異なる第二の温度における、前記記録媒体の第二の色値を前記測定データテーブル、または、前記測定手段から取得し、
前記推定手段が、前記取得された第一および第二の色値から、前記第一および第二の温度とは異なる、観察温度における前記記録媒体の色値を推定することを特徴とする色処理方法。
【請求項7】
コンピュータを請求項1から請求項5の何れか一項に記載された色処理装置の各手段として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−120219(P2011−120219A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230106(P2010−230106)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】