説明

色分解合成光学系及びそれを有する投射型表示装置

【課題】 偏光制御素子への光束の入射角度が大きくても漏れ光が少なく、コントラストの高い投射画像が容易に得られる色分解合成光学系を得ること。
【解決手段】 入射された照明光を複数の色光に分解し、前記複数の色光を色光毎に設けられた複数の光変調素子に入射させ、前記複数の光変調素子により光変調された各色光を合成し、出射する色分解合成光学系において、
互いに直交する偏光方向の光を透過光と反射光に分離する偏光分離面を含む少なくとも2つの偏光ビームスプリッターと、前記2つの偏光ビームスプリッターの間に波長板を有し、該波長板は、該波長板の遅相軸または進相軸が、前記偏光分離面への光束の入射光軸と反射光軸とを含む平面に対し、垂直になるように配置されており、前記2つの偏光ビームスプリッターは、偏光分離面の法線が直交するように配置されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は色分解合成光学系及びそれを有する投射型表示装置に関し、例えば液晶パネル(光変調素子、画像表示素子)に基づく投射像原画をスクリーン面上に拡大投影するプロジェクターに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネル等の画像表示素子に基づく投影像原画をスクリーン面上に拡大投影するようにした投射型表示装置(プロジェクター)が種々提案されている。一般的に投射型表示装置では、液晶表示素子が黒表示状態であるにもかかわらず、不要な光が投射光学系側に漏れてくることがある。そうすると投射画像のコントラストが低下してくる。投射型表示装置を構成する素子(部材)のうち、偏光ビームスプリッター(偏光分離素子)や波長板等の偏光制御素子は光束の入射角度の違いにより偏光特性(光学特性)が変化する。
【0003】
そのためこれらの偏光制御素子に入射する光が偏光光束のときは偏光の特性も入射角度に依存して変化する。この偏光状態の変動により偏光制御素子に入射した光のうち本来ならば出射してはならない光(投射光学系に入射し、スクリーンに投射されてはならない光)が出射してしまい、所謂漏れ光が生じる。偏光制御素子から漏れ光が生じると投射画像のコントラストが低下してくる。従来より、この漏れ光を軽減した画像投射装置が知られている(特許文献1〜3)。
【0004】
特許文献1では、偏光素子と液晶表示素子との間に1/4波長板を配置することで漏れ光を軽減した画像投射装置を開示している。特許文献2では、入射角度による位相変化が小さい波長以下の微細な周期構造を有する波長板を用いた画像投射装置を開示している。また特許文献3では、偏光分離素子と液晶表示素子の間に1/4波長板と位相板を配置し、かつその光学軸の方向を規定することにより、高い位相補償効果を得るようにした画像投射装置を開示している。
【0005】
この他、2つの偏光ビームスプリッターの間に波長板を、その光学軸が45度方向となるように配置し、P偏光をS偏光に変換するようにした画像投射装置が知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平02−250026号公報
【特許文献2】特開2005−106901号公報
【特許文献3】特開2006−039135号公報
【特許文献4】特開平11−271683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
画像投射装置において、偏光制御素子からの漏れ光を軽減し、投射画像のコントラストを高めるためには、偏光分離素子への入射角度特性を考慮してこれらの部材を適切に構成し、配置することが必要となってくる。これらの部材の構成及び配置が不適切であると漏れ光が生じ、投射画像のコントラストが低下して良好なる投射画像を得ることが困難になる。
【0008】
本発明は、偏光制御素子への光束の入射角度が大きくても漏れ光が少なく、コントラストの高い投射画像が容易に得られる色分解合成光学系及びそれを有する投射型表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の色分解合成光学系は、入射された照明光を複数の色光に分解し、前記複数の色光を色光毎に設けられた複数の光変調素子に入射させ、前記複数の光変調素子により光変調された各色光を合成し、出射する色分解合成光学系において、
互いに直交する偏光方向の光を透過光と反射光に分離する偏光分離面を含む少なくとも2つの偏光ビームスプリッターと、前記2つの偏光ビームスプリッターの間に波長板を有し、該波長板は、該波長板の遅相軸または進相軸が、前記偏光分離面の法線と前記光変調素子の法線とに平行な平面に対し、垂直になるように配置されており、前記2つの偏光ビームスプリッターは、偏光分離面の法線が直交するように配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、偏光制御素子への光束の入射角度が大きくても漏れ光が少なく、コントラストの高い投射画像が容易に得られる色分解合成光学系が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1の本発明の実施例1の要部概略図
【図2】図1のB用の出射側偏光板15の透過率特性の説明図
【図3】図1の合成プリズム17の透過率特性の説明図
【図4】1/2波長板16を配置していない場合のR光路の詳細図
【図5】図4の反射型表示素子9Rからの出射光と第2の偏光ビームスプリッター13におけるS偏光の方向と、反射型表示素子9Rからの出射光と合成プリズム17におけるS偏光の方向を示す説明図
【図6】図1の1/2波長板16の効果を示す説明図
【図7】本発明の実施例2の要部概略図
【図8】図7の合成プリズム27の透過率特性の説明図
【図9】図7の実施例2のG光路の詳細を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。本発明の色分解合成光学系は、入射された照明光を複数の色光(例えば3色光)に分解し、複数の色光を色光毎に設けられた複数の光変調素子(例えば液晶表示素子)に入射させている。そして複数の光変調素子により光変調された各色光を合成し、出射している。そして互いに直交する偏光方向の光を透過光と反射光に分離する偏光分離面を含む少なくとも2つの偏光ビームスプリッターと、2つの偏光ビームスプリッターの間に波長板(1/2波長板)を有している。
【0013】
このとき波長板は、波長板の遅相軸または進相軸が、偏光分離面への光束の入射光軸(Z軸)と反射光軸(Y軸)とを含む平面(YZ平面)に対し、垂直である。そして2つの偏光ビームスプリッターは、偏光分離面の法線が直交するように配置されている。言い換えれば、波長板の遅相軸または進相軸が、偏光分離面の法線と光変調素子の法線とに平行な平面に対して垂直である。
【0014】
また本発明の投射型表示装置では、光源手段から出射した光束を色分解合成光学系に導光する照明光学系と、色分解合成光学系からの光束であって、光変調素子の画像で光変調された光束を所定面上に投影する投射光学系を有している。
【0015】
図1は本発明の実施例1の投射型表示装置の要部概略図である。図1において光源(ランプの発光部)(光源手段)1から全方向に射出した光束は放物面リフレクタ2によって平行光又は略平行光となって射出される。この平行光束は、UV−IRカットフィルタ3に入射し、第1のレンズアレイ4によって複数の部分光束に分割され、その各々の部分光束が集光される。第1のレンズアレイ4で分割された複数の部分光束は第2のレンズアレイ5近傍に集光され、各々の部分光束が各々光源像(2次光源像)を形成する。
【0016】
第2のレンズアレイ5を射出した分割光束は、コンデンサーレンズ6によって集光され、反射型液晶表示素子9R、9G、9Bを重畳的に照明する。
【0017】
以上のUV−IRカットフィルタ3からコンデンサーレンズ6に至る各部材により、照明光学系100が構成される。
【0018】
図1においてダイクロイックミラー7は入射光のうち青(B)(波長400nm〜500nm)と赤(R)(波長600nm〜700nm)の色光を反射し、緑(G)(波長500nm〜600nm)の色光を透過する。8はP偏光光を透過し、S偏光光を反射する第1の偏光ビームスプリッターであり、偏光分離面8aを有する。
【0019】
9R,9G,9Bはそれぞれ入射した光を反射するとともに画像変調する赤用の反射型液晶表示素子、緑用の反射型液晶表示素子、青用の反射型液晶表示素子である。10R,10G,10Bはそれぞれ、赤用の1/4波長板、緑用の1/4波長板、青用の1/4波長板である。14はS偏光を透過し、P偏光を吸収するG用の出射側偏光板である。各実施形態で用いる偏光板は、不要な偏光光を反射するようにしてもよい。
【0020】
11はP偏光を透過する入射側偏光板であり、12はRの光の偏光方向を90度変換し、Bの光の偏光方向は変換しない色選択性位相差板である。13はP偏光を透過し、S偏光を反射する第2の偏光ビームスプリッターであり、偏光分離面13aを有する。15はB用の出射側偏光板であり、図2のような分光特性をもっている。Bの色光はS偏光のみを透過し、P偏光を吸収する。また赤の色光は偏光方向に関係なく透過する。16は1/2波長板である。
【0021】
合成プリズム17の偏光分離面17aは図3のような分光特性も持っている。B、Gの色光ではダイクロイックミラー、Rの色光ではP偏光を透過し、S偏光を反射する偏光ビームスプリッターの分光特性をもつ。
【0022】
以上のダイクロイックミラー7から合成プリズム17に至る部材により、色分解合成光学系200が構成されている。
【0023】
18は投射レンズ光学系(投射光学系)であり、上記照明光学系,色分解合成光学系および投射レンズ光学系により画像表示光学系が構成されている。
【0024】
次に、照明光学系を通過した後の光学的な作用を説明する。まず、Gの光路について説明する。ダイクロイックミラー7を透過したGの色光は第1の偏光ビームスプリッター8に入射して偏光分離面8aでP偏光の光が透過し、G用の反射型液晶表示素子9Gへと至る。G用の反射型液晶表示素子9Gにおいては、Gの色光が画像変調されて反射される。画像変調されたGの反射光のうちP偏光成分は、再び第1の偏光ビームスプリッター9の偏光分離面8aを透過し、光源1側に戻され、投射光から除去される。
【0025】
一方、画像変調されたGの反射光のうちS偏光成分は、第1の偏光ビームスプリッター8の偏光分離面8aで反射、S偏光を透過する出射側偏光板14を透過し、投射光として合成プリズム17に向かう。そして、合成プリズム17で反射されて、投射レンズ18へと至る。このとき、すべての偏光成分をP偏光に変換した状態(黒を表示した状態)において、第1の偏光ビームスプリッター8とG用の反射型液晶表示素子9Gとの間に設けられた1/4波長板10Gは、次のような作用を有する。
【0026】
1/4波長板10Gの遅相軸または進相軸が、第1の偏光ビームスプリッター8への入射光軸(Z軸)と反射光軸(Y軸)を含む平面(YZ面)に垂直又は略垂直な方向(X方向)となるよう1/4波長板10Gを配置している。言い換えれば、1/4波長板10Gの遅相軸または進相軸が、第1の偏光ビームスプリッターの偏光分離面8aの法線とG用の反射型液晶表示素子9Gの法線とに平行な平面(YZ面)に対して、垂直又は略垂直な方向に配置されている。
【0027】
これにより、第1の偏光ビームスプリッター8とG用の反射型液晶表示素子9Gで発生する偏光状態の乱れの影響を小さく抑えている。 YZ面は、第1の偏光ビームスプリッターの偏光分離面8aの法線とG用の反射型液晶表示素子9Gの法線を含む面、と言い換えてもよい。
【0028】
一方、ダイクロイックミラー7を反射したRとBの色光は、P偏光を透過する入射側偏光板11に入射する。そしてRとBの光は、入射側偏光板11から出射した後、色選択性位相差板12に入射する。色選択性位相差板12は、Rの色光のみ偏光方向を90度回転する作用を持っており、これによりRの色光はS偏光として、Bの色光はP偏光として第2の偏光ビームスプリッター13に入射する。S偏光として第2の偏光ビームスプリッター13に入射したRの色光は、第2の偏光ビームスプリッター13の偏光分離面13aで反射され、R用の反射型液晶表示素子9Rへと至る。
【0029】
また、P偏光として第2の偏光ビームスプリッター13に入射したBの色光は、第2の偏光ビームスプリッター13の偏光分離面13aを透過してB用の反射型液晶表示素子9Bへと至る。
【0030】
R用の反射型液晶表示素子9Rに入射したRの色光は画像変調されて反射される。画像変調されたRの反射光のうちS偏光成分は、再び第2の偏光ビームスプリッター13の偏光分離面13aで反射されて光源1側に戻され、投射光から除去される。一方、画像変調されたRの反射光のうちP偏光成分は第2の偏光ビームスプリッター13の偏光分離面13aを透過して投射光として出射側偏光板15に向かう。
【0031】
また、B用の反射型液晶表示素子9Bに入射したBの色光は画像変調されて反射される。画像変調されたBの反射光のうちP偏光成分は、再び第2の偏光ビームスプリッター13の偏光分離面13aを透過して光源1側に戻され、投射光から除去される。一方、画像変調されたBの反射光のうちS偏光成分は第2の偏光ビームスプリッター13の偏光分離面13aで反射して投射光として出射側偏光板15に向かう。
【0032】
このとき、第2の偏光ビームスプリッター13とR用,B用の反射型液晶表示素子9R,9Bの間に設けられた1/4波長板10R,10Bの遅相軸をG用の場合と同じようにしている。つまり、1/4波長板10R、10Bの遅相軸または進相軸が、図1のYZ平面に対して垂直または略垂直になるように、1/4波長板10R、10Bを配置している。
【0033】
これにより、R,Bの色光それぞれの黒表示時の黒をより黒くさせることができ、その結果、投射画像のコントラストを向上させることができる。こうして1つの光束に合成され、第2の偏光ビームスプリッター13から出射したRとBの色光は、Rの色光はP偏光、Bの色光はS偏光で青用の出射側偏光板15を透過して、1/2波長板16に入射する。
【0034】
1/2波長板16の遅相軸または進相軸は、第2の偏光ビームスプリッター13への入射光軸(Y軸)と反射光軸(Z軸)を含む平面(YZ面)に垂直又は略垂直(垂直方向に対し±5度以内)な方向になるように配置されている。1/2波長板16を透過したR、Bの色光は合成プリズム17に入射し、そして、RとBの投射光は合成プリズム17を透過し、Gの色光と合成されて投射レンズ18に至る。そして、合成されたR,G,Bの各色光の画像情報を含む投射光は、投射レンズ18によってスクリーンなどの被投射面に拡大投影される。
【0035】
以上説明した光路は反射型液晶表示素子が白表示の場合である為、以下に反射型液晶表示素子が黒表示の場合での光路を説明する。まず、Gの光路について説明する。
【0036】
ダイクロイックミラー7を透過したGの色光のP偏光は第1の偏光ビームスプリッター8に入射して偏光分離面8aで透過し、G用の反射型液晶表示素子9Gへと至る。しかし、反射型液晶表示素子9Gが黒表示の為、Gの色光は画像変調されないまま反射される。従って、反射型液晶表示素子9Gで反射された後もGの色光はP偏光光のままである為、再び第1の偏光ビームスプリッター8の偏光分離面8aで透過し、光源1側に戻され、投射光から除去される。
【0037】
次に、RとBの光路について説明する。ダイクロイックミラー7を反射したRとBの色光は、P偏光光を透過する入射側偏光板11に入射する。そしてRとBの色光は、入射側偏光板11から出射した後、色選択性位相差板12に入射する。色選択性位相差板12は、Rの色光のみ偏光方向を90度回転する作用を持っており、これによりRの色光はS偏光として、Bの色光はS偏光として第2の偏光ビームスプリッター13に入射する。
【0038】
S偏光として第2の偏光ビームスプリッター13に入射したRの色光は、第2の偏光ビームスプリッター13の偏光分離面13aで反射され、R用の反射型液晶表示素子9Rへと至る。また、P偏光として第2の偏光ビームスプリッター13に入射したBの色光は、第2の偏光ビームスプリッター13の偏光分離面13aを透過してB用の反射型液晶表示素子9Bへと至る。
【0039】
ここでR用の反射型液晶表示素子9Rは黒表示の為、R用の反射型液晶表示素子9Rに入射したRの色光は画像変調されないまま反射される。従って、R用の反射型液晶表示素子9Rで反射された後もRの色光はS偏光光のままである。この為、再び第2の偏光ビームスプリッター13の偏光分離面13aで反射し、色選択性位相差板12により、P偏光に変換され、入射側偏光板11を通過して光源1側に戻され、投射光から除去される為、黒表示となる。
【0040】
一方、B用の反射型液晶表示素子9Bに入射したBの色光はB用の反射型液晶表示素子9Bが黒表示の為、画像変調されないまま反射される。従って、B用の反射型液晶表示素子9Bで反射された後もBの色光はP偏光光のままである。この為、再び第2の偏光ビームスプリッター13の偏光分離面13aを透過し、色選択性位相差板12と、入射側偏光板11を透過して光源1側に戻されて投射光から除去される。
【0041】
以上が、反射型液晶表示素子(反射型液晶パネル)を使用した投射型画像表示装置での光学構成の概略である。
【0042】
ここで、1/2波長板16の光学作用の効果について説明する。これまでは偏光ビームスプリッターの特性に関して、S偏光は100:0で反射、P偏光は100:0で透過という理想状態で説明してきた。しかしながら実際はそのような理想状態ではなく、わずかながらS偏光で透過、P偏光で反射する。
【0043】
本実施例においても、黒表示時にG光路において偏光ビームスプリッター8の偏光分離面8aは理想状態ではなく、実際にはわずかながらP偏光が反射される。そのようなP偏光は、S偏光を透過する出射側偏光板14で吸収され、投射光から除外される。
【0044】
B光路においては、偏光ビームスプリッター13の偏光分離面13aでわずかに反射したP偏光が存在し、そのような光は、S偏光を透過する出射側偏光板15で吸収され、投射光から除外される。R光路においては、偏光ビームスプリッター13でわずかに透過したS偏光が存在し、そのような光は、R帯域では図3のように偏光ビームスプリッターの特性を有する合成プリズム17で反射され、投射光から除外される。
【0045】
つまり本実施例においては、G光路では偏光ビームスプリッター8と出射側偏光板14、B光路では偏光ビームスプリッター13と出射側偏光板15、R光路では2つの偏光ビームスプリッター13、17によって検光を行う。R光路において、2つの偏光ビームスプリッター13、17によって検光する場合、偏光ビームスプリッター13、17に斜めに入ってくる光に対して検光性能が良くなく、黒が浮いてしまう場合がある。次にこの理由を図4を使って詳細を説明する。
【0046】
図4は、色選択性位相差板12以降のR光路で、1/2波長板16が配置されていない場合の図である。R光路の光線LaはR用の反射型液晶表示素子9Rに対し、xz断面において角度のついた光である。反射型液晶表示素子9Rに対し、xz断面において角度のついた光Laは、第2の偏光ビームスプリッター13の偏光分離面13a及び合成プリズム17の偏光分離面17aにおいて、実線の矢印arw43の方向がS偏光の方向である。図から分かるとおり、水平(xz断面)に対し傾いた方向である。
【0047】
R用の反射型液晶表示素子9Rに入射してくる光Laは、図4のarw41に示すように、R用の反射型液晶表示素子9Rから見たときに、−x軸方向に対し反時計周りに傾いた偏光方向の光である。黒表示状態で1/4波長板10Rを介さない場合、反射型液晶表示素子9Rで反射された光の偏光方向は、arw41に示した方向そのままで、−x軸方向に対し反時計周りに傾いた偏光方向である。
【0048】
しかしながら反射型液晶表示素子9Rから出射した光と第2の偏光ビームスプリッター13におけるS偏光の方向は、実線の矢印arw42に示すように、R用の反射型液晶表示素子9Rから見たときに、+x軸方向に対し、時計周りに傾いた方向である。
【0049】
そのため反射型液晶表示素子9Rで反射された光の偏光方向のうち、反射型液晶表示素子9Rから出射した光と第2の偏光ビームスプリッター13におけるS偏光の方向とは異なる成分は透過し、漏れ光となり投射画像のコントラストが低下してくる。それを防ぐために遅相軸が、水平方向又は略水平方向の1/4波長板10Rを配置し、水平に対し反時計方向に傾いた偏光方向の光が1/4波長板10Rを2回通過させる。これにより、図4のarw42に示すように、その偏光方向を+x軸方向に対し時計周りに傾いた方向に変える。
【0050】
そして、反射型液晶表示素子9Rから出射した光と第2の偏光ビームスプリッター13におけるS偏光の方向と一致させることで漏れ光を低減している。S偏光の方向を一致させることで漏れ光の低減は図れるが、実際はS偏光において100:0で反射という理想状態ではないため、わずかながらS偏光で透過する。
【0051】
本実施例では、その漏れ光をR帯域において偏光ビームスプリッターの特性をもつ合成プリズム17の偏光分離面17aで反射し、光路外に出すことで漏れ光のさらなる低減を図っている。
【0052】
本実施例では、図4の実線の矢印arw42に示すとおり反射型液晶表示素子9Rから出射した光と第2の偏光ビームスプリッター13におけるS偏光の方向は、R用の反射型液晶表示素子9Rから見たときに、+x軸方向に対し時計周りに傾いた方向になっている。また合成プリズム17のS偏光の方向は、R用の反射型液晶表示素子9Rから見たときに、+x軸方向に対し反時計周りに傾いた方向となっており、arw42とarw43は、水平方向(x方向)に対して対称になっている。
【0053】
わかりやすくするために図4のA視の方向からみた図を図5として示す。第2の偏光ビームスプリッター13の偏光分離面13aを出射した偏光光は、反射型液晶表示素子9Rから出射した光と合成プリズム17におけるS偏光の方向とは異なる成分は透過し、漏れ光となり投射画像のコントラストが低下する。そこで第2の偏光ビームスプリッター13と合成プリズム17の間に、遅相軸が水平方向(x方向)になるように1/2波長板16を配置している。
【0054】
言い換えれば、1/2波長板16の遅相軸または進相軸が、偏光分離面の法線と光変調素子の法線とに平行な平面に対し、垂直になるように配置されている。1/2波長板を配置する際には、2つの偏光ビームスプリッターの間に配置された波長板の遅相軸と進相軸が、偏光分離面の法線と光変調素子の法線とに平行な平面に対し、垂直になるように調整している。このとき、2つの偏光ビームスプリッター13、17の偏光分離面13a、17aの法線は直交又は略直交(直交方向と±5度以内)している。
【0055】
これにより、第2の偏光ビームスプリッター13からのS偏光が、1/2波長板16の作用で図6に示すように偏光方向が変わり、反射型液晶表示素子9Rから出射した光と合成プリズム17におけるS偏光の方向と一致させることができる。これによって漏れ光を低減させて、投射画像の更なるコントラストを向上させている。
【0056】
yz断面において角度のついた光においては、反射型液晶表示素子9Rから出射した光と第2の偏光ビームスプリッター13におけるS偏光の方向、合成プリズム17のS偏光の方向はどちらも水平方向のままである。また1/2波長板16では、偏光方向と遅相軸が一致するため何の作用を起こらない。そのため悪影響は起こらない。ここで1/2波長板16の遅相軸を水平方向(x方向)になるように配置したが、垂直方向に配置しても同様の効果が得られる。
【0057】
実施例1では、2つの偏光ビームスプリッター13、17共に透過する系であったが、これに限定されることはない。別構成の実施例を本発明の実施例2として説明する。
【0058】
図7は本発明の実施例2の要部概略図である。実施例1との差は色分離合成光学系300で、1/2波長板24と合成プリズム27のみである。また合成プリズム27の偏光分離面27aの分光特性を図8に示すが、B帯域は透過のダイクロミラー、R帯域は偏光ビームスプリッターの特性で実施例1と同じであるため、ダイクロイックミラー7で色分離後のG光路のみの説明とする。
【0059】
ダイクロイックミラー7を透過したGの色光は第1の偏光ビームスプリッター8に入射して偏光分離面8aでP偏光の光が透過し、G用の反射型液晶表示素子9Gへと至る。G用の反射型液晶表示素子9Gにおいては、Gの光が画像変調されて反射される。画像変調されたGの反射光のうちP偏光成分は、再び第1の偏光ビームスプリッター8の偏光分離面8aを透過し、光源1側に戻され、投射光から除去される。
【0060】
一方、画像変調されたGの反射光のうちS偏光成分は、第1の偏光ビームスプリッター8の偏光分離面8aで反射される。そして、遅相軸または進相軸が偏光ビームスプリッター8への入射光軸と反射光軸を含む平面に垂直又は略垂直な方向になるように配置されている1/2波長板24を透過し、投射光として合成プリズム27に向かう。このとき、すべての偏光成分をP偏光に変換した状態(黒を表示した状態)において、第1の偏光ビームスプリッター8とG用の反射型液晶表示素子9Gとの間に設けられた1/4波長板10Gは次のように配置されている。
【0061】
1/4波長板10Gの遅相軸または進相軸が第1の偏光ビームスプリッター8への入射光軸と反射光軸を含む平面に垂直又は略垂直な方向に調整する。これにより、第1の偏光ビームスプリッター8とG用の反射型液晶表示素子9Gで発生する偏光状態の乱れの影響を小さく抑えている。第1の偏光ビームスプリッター8から出射したGの色光は、1/2波長板24を透過し、図8のようにG帯域で偏光ビームスプリッターの特性を持つ合成プリズム27で反射して投射レンズ18へと至る。
【0062】
以上説明した光路は反射型液晶表示素子が白表示の場合である為、以下に反射型液晶表示素子が黒表示の場合での光路を説明する。
【0063】
ダイクロイックミラー7を透過したGの色光のP偏光光は第1の偏光ビームスプリッター8に入射して偏光分離面8aで透過し、G用の反射型液晶表示素子9Gへと至る。しかし、反射型液晶表示素子9Gが黒表示の為、Gの色光は画像変調されないまま反射される。従って、反射型液晶表示素子9Gで反射された後もGの色光はP偏光光のままである為、再び第1の偏光ビームスプリッター8の偏光分離面8aで透過し、光源1側に戻され、投射光から除去される。
【0064】
ここで、1/2波長板24の効果について説明する。これまでは偏光ビームスプリッターの特性に関して、S偏光は100:0で反射、P偏光は100:0で透過という理想状態での光学構成を説明してきた。しかしながら実際はそのような理想状態ではなく、わずかながらS偏光で透過、P偏光で反射する。
【0065】
本実施例においても、黒表示時にG光路において偏光ビームスプリッター8は理想状態ではなく、実際にはわずかながら反射型液晶表示素子9GからのP偏光が反射される。そのようなP偏光は、図8のようにG帯域で偏光ビームスプリッターの特性を有する合成プリズム27を透過し、投射光から除外される。つまり本実施例のG光路では2つの偏光ビームスプリッター8、27によって検光を行う。2つの偏光ビームスプリッター8、27によって検光する場合、偏光ビームスプリッター8、27に斜めに入ってくる光に対して検光性能が良くなく、黒が浮いてしまう。
【0066】
図9を使って詳細を説明する。図9は、ダイクロイックミラー7以降のG光路を図示している。光線LaはG用の反射型液晶表示素子9Gに対し、xz断面において角度のついた光である。反射型液晶表示素子9Gに対し、xz断面において角度のついた光Laは、偏光ビームスプリッター8の偏光分離面8a及び合成プリズム27の偏光分離面27aにおいて実線の矢印の方向に偏光したP偏光である。図から分かるとおり、P偏光の方向はy軸に対し傾いた方向である。
【0067】
G用の反射型液晶表示素子9Gに入射してくる光は、図9のようにy軸に対し反時計周りに傾いた偏光方向の光である。黒表示状態で1/4波長板10Gを介さない場合、反射型液晶表示素子9Gで反射された光の偏光方向はそのままで、y軸に対し反時計周りに傾いた偏光方向である。しかしながら反射型液晶表示素子9Gから出射した光の方向と偏光ビームスプリッター8におけるP偏光の方向はy軸に対し、時計周りに傾いた方向である。
【0068】
そのため反射型液晶表示素子9Gで反射された光の偏光方向のうち、反射型液晶表示素子9Gから出射した光と偏光ビームスプリッター8におけるP偏光の方向とは異なる成分は反射し、漏れ光となりコントラストの低下に繋がる。それを防ぐために遅相軸が水平又は略水平方向の1/4波長板10Gを配置し、y軸に対し反時計周りに傾いた偏光方向の光が1/4波長板10Gを2回通過する。これにより偏光方向をy軸に対し時計周りに傾いた方向に変え、反射型液晶表示素子9Gから出射した光の偏光方向と偏光ビームスプリッター8におけるP偏光の方向と一致させることで漏れ光を低減している。
【0069】
P偏光の方向を一致させることで漏れ光の低減は図れるが、実際はP偏光において100:0で透過という理想状態ではないため、わずかながらP偏光で反射する。その漏れ光をG帯域において偏光ビームスプリッターの特性をもつ合成プリズム27で透過し、光路外に出すことで漏れ光のさらなる低減を図っている。
【0070】
図9に示すとおり反射型液晶表示素子9Gから出射した光と偏光ビームスプリッター8におけるP偏光の方向はy軸に対し時計周りに傾いた方向で、偏光分離面8a反射後はz軸に対し時計回りに傾いた方向である。それに対し合成プリズム27のP偏光の方向はz軸に対し反時計周りに傾いた方向となっており、z軸で対称になっている。偏光ビームスプリッター8を出射した偏光光は、反射型液晶表示素子9Rから出射した光と合成プリズム27におけるP偏光の方向とは異なる成分は反射し、漏れ光となり投射画像のコントラストが低下する。
【0071】
そこで偏光ビームスプリッター8と合成プリズム27の間に、遅相軸がyz断面に対して垂直方向となるように、即ちx軸方向になるように1/2波長板24を配置している。これにより偏光ビームスプリッター8におけるP偏光が、1/2波長板24の作用で偏光方向が変わり、反射型液晶表示素子9Rから出射した光と合成プリズム27におけるP偏光の方向と一致させることができる。そうして漏れ光が低減し、投射画像の更なるコントラストを向上させている。
【0072】
yz断面において角度のついた光においては、反射型液晶表示素子9Gから出射した光と偏光ビームスプリッター8におけるP偏光の方向、合成プリズム27のP偏光の方向はどちらもy軸方向のままである。また1/2波長板24では、偏光方向と遅相軸が一致するため何の作用を起こらない。そのため悪影響は起こらない。
【0073】
ここで1/2波長板24の遅相軸をx軸方向になるように配置したが、x軸と垂直のz軸方向に配置しても同様の効果が得られる。
【0074】
実施例1、実施例2のように2つの偏光ビームスプリッターの間に1/2波長板を配置し、かつ1/2波長板16、24に対し2つの偏光ビームスプリッターの偏光分離面の法線が対称な場合、漏れ光を低減することが容易になる。偏光ビームスプリッターでの透過、反射は問わない。
【符号の説明】
【0075】
8 第1の偏光ビームスプリッター 9 反射型液晶パネル
10 1/4波長板 13 第2の偏光ビームスプリッター
16 1/2波長板 17 合成プリズム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射された照明光を複数の色光に分解し、前記複数の色光を色光毎に設けられた複数の光変調素子に入射させ、前記複数の光変調素子により光変調された各色光を合成し、出射する色分解合成光学系において、
互いに直交する偏光方向の光を透過光と反射光に分離する偏光分離面を含む少なくとも2つの偏光ビームスプリッターと、
前記2つの偏光ビームスプリッターの間に波長板を有し、
前記2つの偏光ビームスプリッターは、互いの偏光分離面の法線が直交しており、
前記波長板の遅相軸または進相軸が、前記偏光分離面の法線と前記光変調素子の法線とに平行な平面に対し、垂直になるように配置されている
ことを特徴とする色分解合成光学系。
【請求項2】
前記波長板は1/2波長板であることを特徴とする請求項1の色分解合成光学系。
【請求項3】
光源手段と、
前記光源手段から出射した光束を請求項1又は2の色分解合成光学系に導光する照明光学系と、前記色分解合成光学系からの光束であって、前記光変調素子の画像で光変調された光束を所定面上に投影する投射光学系を有することを特徴とする投射型表示装置。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−255854(P2012−255854A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127917(P2011−127917)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】