説明

色変換層形成用塗工液および有機エレクトロルミネッセンス素子用基板、ならびにこれらの製造方法

【課題】本発明は、ガスの発生が少なく、蛍光性能に優れ、焼結温度の低い色変換層を形成するための色変換層形成用塗工液、ならびに、ダークスポット等の欠陥のない良好な画像表示が可能な有機EL素子用基板および有機EL表示装置を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、超微粒子および蛍光材料が溶剤に分散もしくは溶解された超微粒子分散液からなることを特徴とする色変換層形成用塗工液を提供することにより、上記目的を達成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置における色変換層を形成するために好適に用いられる色変換層形成用塗工液、および有機エレクトロルミネッセンス素子用基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略すことがある。)素子は、印加電圧が10V弱であっても高輝度な発光が実現するなど発光効率が高く、単純な素子構造で発光が可能であるため、画像表示装置への応用が期待され、盛んに研究が行われている。特に有機EL素子は、自己発色により視認性が高いこと、液晶ディスプレイとは異なり全固体ディスプレイであるため耐衝撃性に優れること、温度変化の影響が少ないこと、および、視野角が大きいこと等の利点を有することから、近年、画像表示装置における発光素子としての実用化が進んでいる。
【0003】
有機EL素子を画像表示装置における発光素子として実用化する上で重要なことは、有機EL素子が精細な表示機能を有することとともに、長期安定性を有することである。しかしながら、有機EL素子の中には、一定期間駆動すると、電流−輝度特性等の発光特性が著しく低下するという欠点を有するものがある。
【0004】
この発光特性の低下原因の代表的なものは、ダークスポットと呼ばれる発光欠陥点の成長である。ダークスポットの成長は、通電中(駆動中)はもちろん、保存中にも進行し、極端な場合には発光面全体に広がる。このダークスポットは、酸素あるいは水分によって、有機EL素子における発光層等の有機層の構成材料が酸化または凝集することに起因するものと考えられている。また、有機EL表示装置の製造工程における加熱時に、有機EL表示装置の着色層や色変換層等に含まれる有機材料等の分解によって発生するガスも、ダークスポットの原因となる。一般に、着色層や色変換層はバインダー樹脂中に着色剤や蛍光材料を分散させたものであり、このバインダー樹脂が加熱されて分解等することによってガスが発生するのである。
【0005】
さらに、色変換層に含まれるバインダー樹脂は、蛍光材料との相互作用等により劣化しやすい。バインダー樹脂が劣化すると変色するため、色調が変化するという問題がある。一方、蛍光材料が、バインダー樹脂の影響により蛍光性能が劣化してしまうという問題もある。具体的には、有機EL表示装置の製造過程での加熱により、蛍光材料自体が劣化するだけでなく、蛍光材料がバインダー樹脂と反応することでも蛍光性能が劣化する。
【0006】
そこで、バインダー樹脂を用いない色変換層として、特許文献1には、ガラス中に無機蛍光体を分散させた色変換層が提案されている。この色変換層は、ガラス粉末および無機蛍光体粉末の混合粉末を焼結することにより形成されるが、焼結温度が400〜850℃程度であり、一般的な蛍光体の耐熱温度よりも高い。このため、この方法では使用する蛍光体の種類が制限されてしまう。また、一般的な着色層や樹脂基板の耐熱温度は上記焼結温度より低いため、着色層上または樹脂基板上にこのような色変換層を形成するのは困難である。
【0007】
また、この水分や酸素およびガスの有機EL層への侵入を防止する手法として、バリア層を設ける方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。しかしながら、バリア層は一般にスパッタリング法や真空蒸着法等により成膜されるものであり、このような方法によってパーティクル等の異物やピンホールのないバリア層を得ることは技術的に困難である。このため、バリア層では有機EL素子の劣化を防ぐ防湿性、バリア性が不十分である。そこで、バリア層を厚膜にすることによってバリア性を高める方法が採用されているが、非常にコストが高くなるという問題がある。
【0008】
【特許文献1】特開2003−258308公報
【特許文献2】特開2002−117976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ガスの発生が少なく、蛍光性能に優れ、焼結温度の低い色変換層を形成するための色変換層形成用塗工液、ならびに、ダークスポット等の欠陥のない良好な画像表示が可能な有機EL素子用基板および有機EL表示装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、超微粒子および蛍光材料が溶剤に分散もしくは溶解された超微粒子分散液からなることを特徴とする色変換層形成用塗工液を提供する。
【0011】
本発明によれば、超微粒子の分散性が良好であるため、蛍光材料を凝集させることなく分散させることができ、従来のようなバインダー樹脂を用いる必要がない。したがって、低脱ガス性に優れる色変換層を形成できるので、本発明の色変換層形成用塗工液は、脱ガス成分に弱い部材を有する有機EL表示装置における色変換層を形成するのに好適である。また、バインダー樹脂を用いないので、バインダー樹脂の影響による蛍光性能の劣化を回避することができ、性能向上が期待できる。さらに、上述したように蛍光材料の分散状態が良いため、本発明の色変換層形成用塗工液を用いて色変換層を形成した場合には、優れた発光特性を得ることができる。
また、色変換層形成用塗工液を塗布し焼成することにより色変換層を形成する場合には、超微粒子特有のサイズ効果により、焼結温度を低温化することができ、色変換層の耐熱温度以下での焼成が可能となる。これにより、熱による蛍光材料の劣化を防ぐことができる。
【0012】
上記発明においては、上記超微粒子の焼結温度が350℃以下であることが好ましい。焼結温度が上記範囲である超微粒子を用いることにより、色変換層形成用塗工液を塗布し焼成することにより色変換層を形成する場合には、より低い温度で焼成できるからである。
【0013】
また、上記超微粒子が、酸化インジウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることが好ましい。これらの超微粒子を用いることにより、透明性および絶縁性が高い色変換層を形成できるからである。
さらに、上記超微粒子が、インジウム、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることも好ましい。インジウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属は酸化性が高いため、比較的低い温度での焼成でも酸化が促進されるからである。
【0014】
また本発明においては、上記超微粒子の平均粒径が0.5nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。平均粒径が小さすぎる超微粒子は製造が難しく、超微粒子の平均粒径が大きすぎると上記の超微粒子のサイズ効果による焼結温度の低下が期待できなくなるからである。
【0015】
さらに本発明においては、上記溶剤の沸点が120℃以上であることが好ましい。溶剤の沸点が比較的高ければ、色変換層形成用塗工液塗布後の乾燥時にて溶剤が一気に蒸発するのを防ぐことができ、これにより超微粒子が凝集して色変換層の平坦性が損なわれるのを回避することができるからである。
【0016】
また本発明においては、上記色変換層形成用塗工液が分散剤を含有していてもよい。これにより、超微粒子の分散性を向上させることができるからである。
【0017】
本発明は、また、ガス雰囲気中で、かつ、蛍光材料および溶剤を含有する溶液の蒸気の存在下で超微粒子の構成成分を蒸発させ、上記超微粒子の構成成分の蒸気と上記溶液の蒸気とを接触させ、冷却捕集して、上記溶剤に超微粒子および蛍光材料が分散もしくは溶解した超微粒子分散液を得ることを特徴とする色変換層形成用塗工液の製造方法を提供する。
【0018】
本発明によれば、いわゆるガス中蒸発法により超微粒子を作製するので、平均粒径が100nm以下程度であり、粒径分布が狭く、分散性の良好な超微粒子を得ることができる。そのため、超微粒子により蛍光材料を凝集させることなく分散させることができ、濃度消光が起こりにくく、発光特性に優れる色変換層を形成することが可能な色変換層形成用塗工液を製造することができる。
【0019】
さらに本発明は、基板と、上記基板上に形成され、超微粒子中に蛍光材料を分散させた色変換層とを有することを特徴とする有機EL素子用基板を提供する。
【0020】
本発明における色変換層は、超微粒子中に蛍光材料を分散させたものであり、バインダー樹脂を含まないので、低脱ガス性に優れている。したがって、本発明の有機EL素子用基板を有機EL表示装置に用いた場合、ダークスポットの発生を抑制することができ、良好な画像表示が可能となる。
また、色変換層にバインダー樹脂を用いないので、バインダー樹脂が蛍光材料との相互作用により劣化するのを回避し、この劣化による色調変化を防ぐことができる。さらに、色変換層中では超微粒子により蛍光材料の分散状態が良く、発光特性を向上させることができる。
さらに、ダークスポットの発生を抑制することができるので、従来のような厚膜のバリア層を設ける必要がなく、低コスト化および歩留まり向上が図れる。
また、超微粒子および蛍光材料が溶剤に分散もしくは溶解された超微粒子分散液からなる色変換層形成用塗工液を塗布し焼成することにより色変換層を形成する場合には、超微粒子特有のサイズ効果により、焼結温度を低温化することができ、色変換層の耐熱温度以下での焼成が可能である。
【0021】
上記発明においては、上記超微粒子が、酸化インジウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることが好ましい。これらの超微粒子を用いることにより、色変換層の透明性および絶縁性を高めることができるからである。
また、上記超微粒子が、表面が酸化された状態である、インジウム、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることも好ましい。インジウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属は酸化性が高いため、比較的低い温度での焼成でも酸化が促進されるからである。
【0022】
さらに、上記超微粒子の平均粒径が0.5nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。平均粒径が小さすぎる超微粒子は製造が難しく、超微粒子の平均粒径が大きすぎると上記の超微粒子のサイズ効果による焼結温度の低下が期待できなくなるからである。
【0023】
また本発明においては、上記色変換層が、赤色変換パターンのみ、緑色変換パターンのみ、あるいは、赤色変換パターンおよび緑色変換パターンのみから構成されていてもよい。従来では色変換層が比較的厚い膜であるため、表面平坦化のために、色変換層を設けなくてもよい領域には光をそのまま透過する透過パターンが形成されていたが、本発明においては、色変換層を超微粒子中に蛍光材料を分散させたものとすることにより、比較的薄い膜とすることができるので、透過パターンを形成する必要がない。これにより、透過パターンによる透過率の低下を防ぐことができる。また、パターニング工程を繰り返し行う必要がなく、コスト的に有利であり製造工程が簡便となる。
【0024】
さらに本発明においては、上記色変換層の膜厚が、0.5μm〜3μmの範囲内であることが好ましい。上述したように、本発明における色変換層は超微粒子中に蛍光材料を分散させたものであるので、従来の色変換層に比べて薄い膜とすることができる。色変換層の膜厚が上記範囲であれば、色変換層の段差による電極間の短絡を抑制することが可能である。
【0025】
また本発明においては、上記基板と上記色変換層との間に、着色層が形成されていてもよい。本発明の有機EL素子用基板を有機EL表示装置に用いた場合、着色層が形成されていることにより、高純度な発色とすることができ、色再現性の高いものとすることができるからである。
【0026】
さらに本発明は、基板上に、上述した色変換層形成用塗工液を塗布し、焼成して、色変換層を形成する色変換層形成工程を有することを特徴とする有機EL素子用基板の製造方法を提供する。
【0027】
本発明によれば、超微粒子および蛍光材料が溶剤に分散もしくは溶解された超微粒子分散液を用いるので、低脱ガス性に優れる色変換層を形成することができ、ダークスポットが発生しにくい有機EL素子用基板を製造することができる。
また、超微粒子特有のサイズ効果により、通常の焼結温度よりも低温で焼成することができ、色変換層の耐熱温度以下での焼成が可能となる。
【0028】
上記発明においては、上記色変換層形成工程にて、上記超微粒子が酸化しない雰囲気中で焼成し、その後、酸化性雰囲気中で焼成することが好ましい。これにより、超微粒子の焼結を十分に進行させ、緻密な色変換層を形成できるからである。
【0029】
また本発明は、上述した有機EL素子用基板と、上記有機EL素子用基板上に形成された透明電極層と、上記透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含む有機EL層と、上記有機EL層上に形成された背面電極層とを有することを特徴とする有機EL表示装置を提供する。
【0030】
本発明の有機EL表示装置は、上述した有機EL素子用基板を用いるので、ダークスポット等の欠陥の発生を抑制することができ、良好な画像表示が可能である。また、従来のような厚膜のバリア層を設ける必要がないため、安価な有機EL表示装置を提供できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、低脱ガス性に優れる色変換層を形成することができるので、有機EL表示装置においては、ダークスポットの発生を抑制することができ、良好な画像表示が得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の色変換層形成用塗工液およびその製造方法、有機EL素子用基板およびその製造方法、ならびに有機EL表示装置について詳細に説明する。
【0033】
A.色変換層形成用塗工液
まず、本発明の色変換層形成用塗工液について説明する。
本発明の色変換層形成用塗工液は、超微粒子および蛍光材料が溶剤に分散もしくは溶解された超微粒子分散液からなることを特徴とするものである。
【0034】
本発明における超微粒子分散液は、超微粒子が個々に独立して均一に分散したものであり、超微粒子の凝集が発生していない。そのため、蛍光材料の分散性も良好である。このように本発明においては、超微粒子が従来のバインダー樹脂のような役割を果たすので、バインダー樹脂を用いる必要がない。したがって、低脱ガス性に優れる色変換層を形成できるので、本発明の色変換層形成用塗工液は、脱ガス成分に弱い部材を有する有機EL表示装置における色変換層を形成するのに好適である。
また、色変換層形成用塗工液を塗布し焼成することにより色変換層を形成する場合には、超微粒子特有のサイズ効果により、焼結温度を低くすることができ、色変換層の耐熱温度以下での焼成が可能となる。これにより、熱による蛍光材料の劣化を防ぐことができる。
さらに、蛍光材料の分散状態が悪いと蛍光材料の凝集によって濃度消光が起こるおそれがあるが、超微粒子の分散性が良く、超微粒子により蛍光材料を凝集させることなく分散できるので、優れた発光特性を得ることができる。
以下、色変換層形成用塗工液の各構成成分について説明する。
【0035】
1.超微粒子
本発明において、「超微粒子」とは、平均粒径が100nm以下の無機材料からなる微粒子であり、分散媒中で個々に独立して均一に分散する微粒子をいう。なお、このような超微粒子については、特開2000−121437公報や特開2005−81501公報等を参照することができる。
本発明に用いられる超微粒子は、絶縁性を有するものであることが好ましく、さらには透明性を有することが好ましい。一般に、色変換層は絶縁性を有するものであり、また透過性が求められるからである。このような超微粒子としては、例えば無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物の超微粒子を挙げることができる。具体的に、無機酸化物としては、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化ナトリム、酸化リチウム、酸化カリウム等が挙げられる。無機窒化物としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化窒化ケイ素等が挙げられる。また、無機酸化窒化物としては、酸化窒化ケイ素等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、無機酸化物および無機窒化物の混合系であってもよい。
【0036】
これらの中でも、酸化インジウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子が好ましく用いられる。これらの超微粒子を用いることにより、透明性および絶縁性の高い色変換層を形成できるからである。また、本発明の色変換層形成用塗工液を塗布し焼成することにより色変換層を形成する場合には、酸化インジウムの超微粒子を用いることにより、焼結温度をより低温にすることができるからである。また、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素の超微粒子を用いた場合には、基板等との密着性が良好な色変換層を形成できるからである。
【0037】
また、上記超微粒子としては、金属の超微粒子を用いることもできる。具体的には、In、Al、Ti、Ta、Zn、Sn、Y、Ge、Pb、Zr、アルカリ金属(Li、Na、K)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)等の超微粒子が挙げられる。これらの中でも、In(インジウム)、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子が好ましく用いられる。インジウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属は酸化性が高いため、比較的低い温度での焼成でも酸化が促進されるからである。表面が酸化された状態である金属の超微粒子は、絶縁性を有するので、色変換層に用いることができる。
【0038】
上記超微粒子は、焼結温度が350℃以下であることが好ましい。焼結温度が上記範囲である超微粒子を用いることにより、色変換層形成時の焼成温度をより低温にできる。また、超微粒子の焼結温度は低ければ低いほどよいが、通常は下限が180℃程度である。金属の中には融点が180℃未満であるものもあり、そのような金属を含む超微粒子の焼結温度は通常180℃未満となるが、融点が180℃未満である金属は、非常に酸化しやすく、焼結温度の上昇につながるため、焼結温度の下限は上記範囲とする。
ここで、焼結とは、超微粒子の集合体を高温に加熱した場合に、焼き固まって緻密な多結晶体となる現象をいう。超微粒子は、熱力学的に非平衡な状態にあり、表面積を減少する方向に物質移動が起こり、その結果、粒子と粒子の間に結合が生じて緻密化する。つまり、焼結の駆動力は、系の表面エネルギーを最小にしようとする力である。また、焼結温度とは、超微粒子の溶融点以下の温度で超微粒子の集合体を加熱したときに、超微粒子同士が緻密化して焼き固まる温度をいう。
なお、上記焼結温度は、示差熱分析(DTA:differential thermal analysis)により測定することができる。DTAでは、試料と基準物質(一般的にはアルミナ)との温度差を測定して、転移温度を求めることができるものであり、試料および基準物質に熱を加えたときに生じる温度差(試料と基準物質との温度差で判断する)により、焼結温度を求めることができる。すなわち、試料および基準物質を同一雰囲気にて加熱した場合に、基準物質の温度が上昇しているのに対して、試料の温度が上昇していない場合には、超微粒子の焼結に熱が費やされており、吸熱現象が起きているということができる。したがって、吸熱現象が見られる温度、すなわちDTA曲線における吸熱開始温度を、本発明でいう焼結温度とする。上記焼結温度の測定には、リガク製のTG−DTA装置(TG 8120)を用いることとする。
【0039】
さらに、上記超微粒子は、融点がおおよそ700℃以下である金属を含むことが好ましい。金属単体としての融点が上記範囲のように比較的低ければ、超微粒子の焼結温度も比較的低くなると予想されるからである。このような金属としては、例えばAl(660℃)、In(156.4℃)、Mg(651℃)、Sn(231.85℃)、Zn(419.43℃)、Pb(327.5℃)、Na(97.5℃)、Li(186℃)、K(62.3℃)等が挙げられる。なお、括弧内の数字は融点である。
【0040】
また、超微粒子の平均粒径としては、焼成温度を低下させることができればよく、具体的には0.5nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1nm〜50nm、さらに好ましくは1nm〜10nmの範囲内である。平均粒径が小さすぎるものは製造が難しく、一方、平均粒径が大きすぎると、超微粒子特有のサイズ効果による焼結温度の低下が期待できなくなるからである。
ここで、平均粒径とは、一般に粒子の粒度を示すために用いられるものであり、レーザー法とは、粒子を溶媒中に分散し、その分散溶媒にレーザー光線を当てて得られた散乱光を細くし、演算することにより、平均粒径、粒度分布等を測定する方法である。なお、上記平均粒径は、レーザー法による粒径測定機として、リーズ&ノースラップ(Leeds & Northrup)社製 粒度分析計 マイクロトラックUPA Model-9230を使用して測定した値である。
【0041】
超微粒子分散液中の超微粒子の濃度は、塗布しやすく、かつ所望の膜厚を得ることができるように適宜選択すればよく、具体的には1〜50wt%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜40wt%の範囲内である。超微粒子の濃度が上記範囲未満であると、所望の膜厚が得られない可能性があるからである。一方、超微粒子の濃度が上記範囲を超えると、超微粒子分散液の粘度が高くなり流動性が低下するので、色変換層表面の平坦性が損なわれる可能性があるからである。
【0042】
超微粒子の作製方法としては、特に限定されるものではなく、例えばガス中蒸発法、液相還元法、有機金属化合物の高温雰囲気へのスプレーによる熱還元法等が用いられる。
【0043】
ガス中蒸発法は、ガス雰囲気中でかつ溶剤の蒸気の共存する気相中で金属を蒸発させ、蒸発した金属を均一な超微粒子に凝縮させて溶媒中に分散し、分散液を得る方法である。このガス中蒸発法では、粒度の揃った金属超微粒子を得ることができる。ガス中蒸発法により得られた金属超微粒子を原料として、超微粒子分散液を調製するには、超微粒子分散液に使用する溶剤で置換を行えばよい。また、超微粒子の分散安定性を増すために、分散剤を添加してもよい。これにより、超微粒子が個々に独立して均一に分散され、かつ、流動性のある状態が保持されるようになる。なお、ガス中蒸発法による超微粒子の作製方法ついては、特許第2561537号公報や特開2005−183054公報などに詳しい。
【0044】
また、液相還元法では、超微粒子を製造するための原料として、金属含有有機化合物である還元用原料を使用することができる。液相還元法は化学還元法の1種であり、化学還元法は、還元剤を用いる化学反応により超微粒子分散液を調製する方法である。この化学還元法により得られる製造した微粒子の場合、粒径を任意に調整可能である。化学還元法では、まず、原料に分散剤を添加した状態で、所定の温度で原料を加熱分解させるか、あるいは、還元剤、例えば水素や水素化ホウ素ナトリウム等を利用して、金属超微粒子を発生させる。次いで、発生した金属超微粒子のほぼ全量を独立分散状態で回収する。得られた分散液を、超微粒子分散液に使用する溶剤に置換すれば、所望の超微粒子分散液が得られる。得られた超微粒子分散液は、真空中での加熱により濃縮しても、安定な分散状態を維持している。
液相還元法などの化学還元法で得られた金属超微粒子を用いて超微粒子分散液を製造する場合においては、化学還元による金属超微粒子生成後に分散剤を添加してもよく、また原料に分散剤を添加してもよい。後者の場合には、より分散安定性の良い超微粒子分散液が得られる。
金属超微粒子を製造するための原料としては、金属含有有機化合物が用いられ、例えばビスヘキサフルオロアセチルアセトネート銅、ビスアセチルアセトネートニッケル、ビスアセチルアセトネートコバルトなどを挙げることできる。
なお、液相還元法による超微粒子の作製方法ついては、特開2005−81501公報および特開2002−121606公報を参照することができる。
【0045】
2.蛍光材料
本発明に用いられる蛍光材料は、光を吸収し、可視光領域蛍光を発光するものであり、入射光を赤色光、緑色光、または青色光とすることができるものであれば、特に限定されるものではない。蛍光材料としては、例えば蛍光色素、蛍光顔料、蛍光染料等を用いることができる。また蛍光材料は、有機蛍光材料であってもよく無機蛍光材料であってもよいが、蛍光の色が鮮明であることから有機蛍光材料を用いることが好ましい。
ここで、蛍光材料が有機物であっても、色変換層に含まれる蛍光材料の量は、超微粒子の含有量に比べて非常に少ないため、有機蛍光材料からの脱ガス成分は微量であり、ダークスポットの大きな原因にはならないと考えられる。また、本発明の色変換層形成用塗工液を用いて色変換層を形成した場合、色変換層内では有機蛍光材料が無機材料からなる超微粒子に包含されている状態となっており、有機蛍光材料から発生するガスを超微粒子がブロックするので、色変換層内からガスが放出されにくくなる。したがって、本発明の色変換層形成用塗工液を用いることにより、ダークスポットだけでなく、発光層の画素縮小や輝度の低下も抑制することができる。
【0046】
蛍光色素は、近紫外領域または可視領域の光を吸収して、異なる波長の可視光を蛍光として発光するものである。この蛍光色素は、目的とする色変換層に応じて適宜選択される。
例えば有機EL表示装置における発光層として青色発光層が用いられる場合には、青色または青緑色領域の光を吸収して赤色領域の蛍光を発する蛍光色素が用いられる。また、青色または青緑色領域の光を吸収して緑色領域の蛍光を発する蛍光色素も用いられる。
また例えば有機EL表示装置における発光層として白色発光層が用いられる場合には、通常、白色発光が青色領域および赤色領域の光で構成されることから、青色または青緑色領域の光を吸収して緑色領域の蛍光を発する蛍光色素が用いられる。
【0047】
青色から青緑色領域の光を吸収して、赤色領域の蛍光を発する蛍光色素としては、例えばローダミンB、ローダミン6G、ローダミン3B、ローダミン101、ローダミン110、スルホローダミン、ベーシックバイオレット11、ベーシックレッド2などのローダミン系色素、シアニン系色素、1−エチル−2−[4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル]−ピリジニウム パークロレート(ピリジン1)などのピリジン系色素、あるいはオキサジン系色素などが挙げられる。
また、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も蛍光性があれば使用することができる。
【0048】
青色ないし青緑色領域の光を吸収して、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素としては、例えば3−(2´−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン6)、3−(2´−ベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン7)、3−(2´−N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン30)、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジン(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153)などのクマリン系色素、あるいはクマリン色素系染料であるベーシックイエロー51、さらにはソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素などが挙げられる。
また、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も蛍光性があれば使用することができる。
【0049】
さらに、蛍光色素を、例えばポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アルキッド樹脂、芳香族スルホンアミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂およびこれらの樹脂混合物などに予め練り込んで顔料化して、蛍光顔料としてもよい。
これらの蛍光色素や蛍光顔料は単独で用いてもよく、蛍光の色相を調整するために2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
上記蛍光材料は、色変換層形成用塗工液の固形分中の濃度が0.01〜5重量%程度で設定することができ、好ましくは0.1〜2重量%の範囲内である。蛍光材料の含有量が少なすぎると十分な波長変換を行うことができず、一方、蛍光材料の含有量が多すぎると、濃度消光等により色変換効率が低下する可能性があるからである。
【0051】
3.溶剤
本発明に用いられる溶剤としては、使用する超微粒子によって適宜選択されるものであり、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、シクロヘキサノール、テルピネオール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル等のエステル類;メトキシエタノール、エトキシエタノール等のエーテルアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等の酸アミド類;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、トリメチルペンタン等の長鎖アルカン;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の環状アルカン;などを挙げることができる。さらに、水を用いることもできる。
これらは、単独で用いても、混合溶剤として用いてもよい。例えば、長鎖アルカンの混合物であるミネラルスピリットであってもよい。
【0052】
また例えば酸化インジウム超微粒子を用いて超微粒子分散液を調製する際に用いられる溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、4−ヒドロキシ−4メチル−2ペンタノン等のケトン類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;メチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのアルキルエーテル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;などが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で、もしくは2種以上を混合して使用することができる。
【0053】
さらに、上記溶剤は、色変換層を形成する際の乾燥および焼成時に蒸発するものであることが好ましい。特に、溶剤の沸点が120℃以上であることが好ましく、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは170℃以上、最も好ましくは190℃以上である。溶剤の沸点が上記範囲より低いと、例えば乾燥時に一気に蒸発しやすくなるので、超微粒子が凝集しやすくなり、均一な色変換層が得られない場合があるからである。一方、溶剤の沸点の上限は、焼成温度の上限から350℃程度とされる。
このような溶剤としては、上記の中でも、テルピネオール、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ドデシルベンゼン、ミネラルスピリットなどが好ましく用いられる。
【0054】
また、本発明の色変換層形成用塗工液をインクジェット法により塗布する場合には、吐出ヘッドとの相性(例えば腐食や溶解等しないこと)、および、吐出ヘッド内での超微粒子の凝集や目詰まりを考慮して、適切な溶剤を選択することが好ましい。
【0055】
上記溶剤の使用量は、使用する超微粒子に応じて、塗布しやすく、かつ所望の膜厚を得ることができるように適宜選択すればよい。
【0056】
4.分散剤
本発明においては、色変換層形成用塗工液が分散剤を含有していてもよい。分散剤が超微粒子の周囲を取り囲むように付着するため、超微粒子の分散性を向上させることができるからである。その結果、蛍光材料の分散性も向上する。
本発明に用いられる分散剤としては、特に限定されるものではなく、例えばアルキルアミン、カルボン酸アミド、アミノカルボン酸塩等が挙げられる。
【0057】
アルキルアミンとしては、炭素数4〜20の主骨格を持つアルキルアミンが好ましく、炭素数8〜18の主骨格を持つアルキルアミンが安定性、ハンドリング性の点からはさらに好ましい。アルキルアミンの主鎖の炭素数が4より短いと、アミンの塩基性が強過ぎて超微粒子を腐食するおそれがあるからである。また、アルキルアミンの主鎖の炭素数が20よりも長いと、超微粒子分散液の濃度を高くしたときに、超微粒子分散液の粘度が上昇してハンドリング性に劣る場合があるからである。また、全ての級数のアルキルアミンが分散剤として有効に働くが、第1級のアルキルアミンが安定性、ハンドリング性の点からは好適に用いられる。
このようなアルキルアミンとしては、例えばブチルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘクサドデシルアミン、オクタデシルアミン、ココアミン、タロウアミン、水素化タロウアミン、オレイルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン等の第1級アミン;ジココアミン、ジ水素化タロウアミン、ジステアリルアミン等の第2級アミン;ドデシルジメチルアミン、ジドデシルモノメチルアミン、テトラデシルジメチルアミン、オクタデシルジメチルアミン、ココジメチルアミン、ドデシルテトラデシルジメチルアミン、トリオクチルアミン等の第3級アミンなどが挙げられる。また、ナフタレンジアミン、ステアリルプロピレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナンジアミン等のジアミンも用いることができる。
【0058】
また、カルボン酸アミドやアミノカルボン酸塩の具体例としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸ラウリルアミド、オレイン酸アミド、オレイン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ラウリルアミド、ステアラニリド、オレイルアミノエチルグリシンなどがある。
【0059】
これらのアルキルアミン、カルボン酸アミド、アミノカルボン酸塩は、1種以上を使用することができ、それにより安定な分散剤として作用する。
【0060】
上記アルキルアミンの含有量は、超微粒子重量基準でおよそ0.1〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜7重量%の範囲内である。アルキルアミンの含有量が上記範囲未満であると、超微粒子が独立状態で分散せずに、その凝集体が発生し、分散安定性が悪くなる場合があるからである。また、アルキルアミンの含有量が上記範囲を超えると、超微粒子分散液の粘度が高くなるおそれがあるからである。
【0061】
5.その他
本発明の色変換層形成用塗工液の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えばガス中蒸発法により超微粒子を作製し、得られた超微粒子が溶剤に分散された分散液に、後から蛍光材料を添加してもよく、またガス中蒸発法により超微粒子を作製する際に、蛍光材料と溶剤とを含有する溶液を用いて、超微粒子および蛍光材料が溶剤に分散もしくは溶解された分散液を得てもよい。なお、後者の方法については、後述する「B.色変換層形成用塗工液の製造方法」の項に詳しく記載するので、ここでの説明は省略する。
【0062】
また、本発明の色変換層形成用塗工液は、インクジェット用インキとして用いることができる。本発明の色変換層形成用塗工液では、超微粒子が独立状態で分散し、超微粒子および蛍光材料の凝集が発生せず、また流動性も保たれており、インク特性に優れるものである。
【0063】
本発明においては、超微粒子分散液の粘度が、20℃において0.1〜100cPの範囲内であることが好ましく、中でも0.1〜10cPの範囲内であることが好ましい。粘度が上記範囲であれば、平坦な色変換層を形成できるからである。
また、超微粒子分散液の表面張力は、25〜80mN/mであることが好ましく、中でも30〜60mN/mであることが好ましい。表面張力が上記範囲であれば、本発明の色変換層形成用塗工液をインクジェット用インクとして用いるためのインク特性を十分に満足することができるからである。
【0064】
B.色変換層形成用塗工液の製造方法
次に、本発明の色変換層形成用塗工液の製造方法について説明する。
本発明の色変換層形成用塗工液の製造方法は、ガス雰囲気中で、かつ、蛍光材料および溶剤を含有する溶液の蒸気の存在下で超微粒子の構成成分を蒸発させ、上記超微粒子の構成成分の蒸気と上記溶液の蒸気とを接触させ、冷却捕集して、上記溶剤に超微粒子および蛍光材料が分散もしくは溶解した超微粒子分散液を得ることを特徴とするものである。
【0065】
本発明においては、例えば真空室中で、かつヘリウム等の不活性ガスの圧力を10Torr以下とする雰囲気の下で、超微粒子の構成成分である金属等を蒸発させ、蒸発した金属等の蒸気を冷却捕集する際に、真空室中に、蛍光材料および溶剤を含有する溶液の蒸気を導入し、金属等が粒成長する段階においてその表面を溶液の蒸気と接触させ、得られる一次粒子が独立してかつ均一に溶剤中にコロイド状に分散した微粒子独立分散液を得ることができる。必要に応じて、金属等の蒸気と反応ガスとを接触させてもよい。
このように本発明はガス中蒸発法を用いて超微粒子を作製するものであり、粒度の揃った超微粒子を得ることができる。
【0066】
本発明における超微粒子の構成成分としては、上記「A.色変換層形成用塗工液」の項に記載した超微粒子の構成成分であればよく、通常は超微粒子を構成する金属、またはケイ素やホウ素等が挙げられる。例えば、金属、またはケイ素やホウ素を蒸発させて、金属の超微粒子、あるいは金属、ケイ素、ホウ素等の酸化物、窒化物、酸化窒化物の超微粒子を得ることができる。
【0067】
本発明に用いられるガス雰囲気としては、目的とする超微粒子の種類に応じて適宜選択される。例えば金属の超微粒子を作製する場合には、ヘリウム等の不活性ガスが好ましく用いられる。また例えば無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物の超微粒子を作製する場合には、反応ガスとして酸素、二酸化炭素、窒素、空気等が用いられる。この際、ガスの圧力を10Torr以下程度とすることが好ましい。
【0068】
また、超微粒子の構成成分の蒸気を凝縮する際に用いられる溶剤が、色変換層形成用塗工液の溶剤として適当ではない場合には、ガス中蒸発法により得られた分散液中の溶剤を、色変換層形成用塗工液に適した溶剤で置換すればよい。
また、超微粒子の分散安定性を増すために、分散剤を添加してもよい。これにより、超微粒子が個々に独立して均一に分散され、かつ、流動性のある状態が保持されるようになる。
なお、超微粒子、蛍光材料、溶剤、および分散剤については、上記「A.色変換層形成用塗工液」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0069】
また、ガス中蒸発法については、特許2561537号公報、特開2000−121437公報、特開2005−183054公報等を参照することができる。
【0070】
また、本発明の色変換層形成用塗工液の製造方法の他の態様は、ガス雰囲気中でかつ第1溶剤の蒸気の存在下で金属を蒸発させることにより、溶剤中に金属の超微粒子が分散した分散液を得る第1工程と、上記分散液に低分子量の極性溶剤である第2溶剤を加え、さらに蛍光材料を加えて、上記金属の超微粒子および蛍光材料を沈降させ、その上澄み液を取り除くことにより上記第1溶剤を実質的に除去し、沈殿物を得る第2工程と、上記沈降物に第3溶剤を加えて超微粒子分散液を得る第3工程とを有することを特徴とするものである。
【0071】
本態様によれば、ガス中蒸発法により金属の蒸気と第1溶剤の蒸気とを接触せしめて分散液を得る第1工程と、この分散液に低分子量の極性溶剤である第2溶剤を加えて金属の超微粒子を沈降させ、第1溶剤を抽出・除去する第2工程と、このようにして得られた沈降物に第3溶剤を加えて溶剤置換し、超微粒子分散液を得る第3工程とを行うことにより、超微粒子分散液からなる色変換層形成用塗工液を製造することができる。
また、金属の超微粒子は、低真空ガス中蒸発法で製造され得るものであり、この方法によれば粒径100nm以下の粒度の揃った金属の超微粒子を製造することができる。このような金属の超微粒子を原料とし、色変換層形成用塗工液、特にインクジェット用インクとしての用途に適したようにするために、溶剤置換を行っているので、金属の超微粒子が個々に独立して均一に分散され、かつ、流動性のある状態を保持している、インクジェット用インクに適した色変換層形成用塗工液が得られる。すなわち、このようにして製造された超微粒子分散液は、インクジェット用インクとしての優れたインク特性を有する。
さらに、ガス中蒸発法の際に用いる金属の超微粒子生成用の溶剤と、色変換層形成用塗工液に用いる溶剤とで、異なる(例え同一であっても、純度が違うなど)溶剤を使用しなければならない場合があるが、本態様では第1溶剤と第3溶剤とを異なるものとすることができるので、有利である。
【0072】
本態様においては、まず、第1工程において、真空室中でかつHeなどの不活性ガスの圧力を10Torr以下とする雰囲気の下で金属を蒸発させ、蒸発した金属の蒸気を冷却捕集する際に、真空室中に、1種以上の第1溶剤の蒸気を導入し、金属が粒成長する段階においてその表面を第1溶剤蒸気と接触せしめ、得られる一次粒子が独立してかつ均一に第1溶剤中にコロイド状に分散した分散液を得、次の第2工程で第1溶剤を除去する。このように第1溶剤を除去するのは、第1工程において蒸発した金属蒸気が凝縮する際に、共存する第1溶剤が変性されて生じる副生成物を除くためであり、また、用途に応じて、第1工程で使い難い低沸点溶剤や水、アルコール系溶剤などに分散した超微粒子分散液を製造するためである。
次に、第2工程において、第1工程で得られた分散液に低分子量の極性溶剤である第2溶剤を加えて分散液中に含まれた金属の超微粒子を沈降させ、その上澄み液を静置法やデカンテーションなどにより除去して第1工程で使用した第1溶剤を除去する。この第2工程を複数回繰り返して、第1溶剤を実質的に除去する。
そして、第3工程において、第2工程で得られた沈降物に新たな第3溶剤を加えて、溶剤置換を行い、超微粒子分散液を得る。これにより、粒径100nm以下の金属の超微粒子が独立状態で分散している超微粒子分散液が得られる。
【0073】
本態様においては、第1工程または第3工程、あるいは第1工程および第3工程で分散剤を加えてもよい。これにより、分散状態をさらに安定化させることができる。第3工程で分散剤を添加する場合には、第1工程で使用する溶剤に溶解しないような分散剤も使用可能である。なお、分散剤については、上記「A.色変換層形成用塗工液」の項に記載したものと同様である。
【0074】
第1溶剤は、ガス中蒸発法の際に用いる金属の超微粒子生成用の溶剤であるので、金属の超微粒子を冷却捕集する際に容易に液化できるように、比較的沸点の高いものであることが好ましい。この第1溶剤としては、使用する金属の超微粒子の構成元素によって適宜選択されるものであり、例えばテルピネオール、シトロネオール、ゲラニオール、フェネチルアルコールなどの炭素数5以上のアルコール類や、酢酸ベンジル、ステアリン酸エチル、オレイン酸メチル、フェニル酢酸エチル、グリセリドなどの有機エステル類を挙げることができる。
【0075】
また、第2溶剤は、低分子量の極性溶剤であり、第1工程で得られた分散液中に含まれる金属の超微粒子を沈降させ、第1溶剤を抽出・分離して除去できるものであればよく、例えばアセトンなどが挙げられる。
【0076】
さらに、第3溶剤としては、例えば主鎖の炭素数6〜20の非極性炭化水素、水、炭素数が15以下のアルコールなどのような常温で液体の溶剤を使用することができる。非極性炭化水素の場合、炭素数が6未満であると、乾燥が早すぎてハンドリング性が劣る場合があり、また炭素数が20を超えると、超微粒子分散液の粘度が上昇したり、焼成後に炭素が残留するおそれがある。アルコールの場合、炭素数が15を超えると超微粒子分散液の粘度が上昇したり、焼成後に炭素が残留するおそれがある。具体的には、上記「A.色変換層形成用塗工液」の項に記載した溶剤を用いることができる。
【0077】
C.有機EL素子用基板
次に、本発明の有機EL素子用基板について説明する。
本発明の有機EL素子用基板は、基板と、上記基板上に形成され、超微粒子中に蛍光材料を分散させた色変換層とを有することを特徴とするものである。
【0078】
本発明の有機EL素子用基板について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の有機EL素子用基板の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、有機EL素子用基板10は、基板1上に色変換層2が形成されたものである。
【0079】
色変換層は超微粒子中に蛍光材料を分散させたものであり、従来のようなバインダー樹脂中に蛍光材料を分散させたものとは異なり、脱ガス成分の素となる有機物をほとんど含まず、特に脱ガス成分の主な原因であるバインダー樹脂を含まないので、低脱ガス性に優れている。また、色変換層内では有機蛍光材料が無機材料からなる超微粒子に包含されている状態となっており、有機蛍光材料から発生するガスを超微粒子がブロックするので、色変換層内からガスが放出されにくくなる。したがって本発明においては、ダークスポットの発生を抑制し、また発光層の画素縮小や輝度の低下も抑制することができ、本発明の有機EL素子用基板を有機EL表示装置に用いた場合、良好な画像表示が可能となる。
また本発明においては、色変換層にバインダー樹脂を用いないので、バインダー樹脂と蛍光材料との相互作用等による色調変化を回避することができる。さらに、バインダー樹脂を用いないので、バインダー樹脂の影響により、蛍光材料の蛍光性能が劣化するのを回避することができ、性能向上が期待できる。
さらに本発明においては、ダークスポットの発生を抑制することができるので、従来のような厚膜のバリア層を設ける必要がないため、低コスト化および歩留まり向上が図れる。
【0080】
また、超微粒子および蛍光材料が溶剤に分散もしくは溶解された超微粒子分散液からなる色変換層形成用塗工液を塗布し焼成することにより色変換層を形成する場合には、超微粒子特有のサイズ効果により、焼結温度を、通常の焼結温度と比較して低くすることができ、色変換層の耐熱温度以下での焼成が可能となる。そのため、熱による蛍光材料の劣化を防ぐことができる。
【0081】
さらに、蛍光材料の分散状態が悪いと蛍光材料の凝集によって濃度消光が起こるおそれがあるが、超微粒子の分散性が良く、色変換層中では超微粒子により蛍光材料を凝集させることなく分散させることができるので、発光特性を向上させることができる。
以下、有機EL素子用基板の各構成について説明する。
【0082】
1.色変換層
本発明に用いられる色変換層は、超微粒子中に蛍光材料を分散させたものである。
色変換層は、本発明の有機EL素子用基板を用いて有機EL表示装置とした際に、有機EL素子の発光層から発せられる光を吸収し、可視光領域蛍光を発する層であり、発光層からの光を赤色、緑色、または青色とすることができるものであれば、特に限定されるものではない。
【0083】
色変換層は、例えば図1に示すように赤、緑、青の3色の蛍光をそれぞれ発光する色変換パターン2R,2G,2Bから構成されていてもよい。
【0084】
また青色発光層を用いた場合には、青色発光を赤色に変換する赤色変換パターンと、青色発光を緑色に変換する緑色変換パターンとが形成されていればよい。この場合、青色変換パターンの代わりに透過パターンが形成されていてもよく、青色変換パターンまたは透過パターンが形成されていなくてもよい。すなわち、色変換層が、赤色変換パターンと緑色変換パターンと透過パターンとから構成されていてもよく、赤色変換パターンおよび緑色変換パターンのみから構成されていてもよい。
【0085】
さらに白色発光層を用いた場合であって、白色発光が主に赤色および青色の光から構成される場合には、赤色および青色に比べて緑色の輝度が小さくなることから、青色発光を緑色に変換する緑色変換パターンが形成されていればよい。この場合、赤色変換パターンおよび青色変換パターンの代わりに透過パターンが形成されていてもよく、赤色変換パターンおよび青色変換パターン、または透過パターンが形成されていなくてもよく、赤色の輝度を高めるために青色発光を赤色に変換する赤色変換パターンが形成されていてもよい。すなわち、色変換層が、緑色変換パターンと透過パターンとから構成されていてもよく、緑色変換パターンのみから構成されていてもよく、緑色変換パターンと赤色変換パターンと透過パターンから構成されていてもよく、緑色変換パターンおよび赤色変換パターンのみから構成されていてもよい。
【0086】
また白色発光層を用いた場合であって、白色発光が主に緑色および青色の光から構成される場合には、緑色および青色に比べて赤色の輝度が小さくなることから、青色発光を赤色に変換する赤色変換パターンが形成されていればよい。この場合、緑色変換パターンおよび青色変換パターンの代わりに透過パターンが形成されていてもよく、緑色変換パターンおよび青色変換パターン、または透過パターンが形成されていなくてもよく、緑色の輝度を高めるために青色発光を緑色に変換する緑色変換パターンが形成されていてもよい。すなわち、色変換層が、赤色変換パターンと透過パターンとから構成されていてもよく、赤色変換パターンのみから構成されていてもよく、赤色変換パターンと緑色変換パターンと透過パターンから構成されていてもよく、赤色変換パターンおよび緑色変換パターンのみから構成されていてもよい。
【0087】
上述した中でも、色変換層が、赤色変換パターンのみ、緑色変換パターンのみ、あるいは、赤色変換パターンおよび緑色変換パターンのみから構成されていることが好ましい。ここで、色変換層が、赤色変換パターンのみ、緑色変換パターンのみ、あるいは、赤色変換パターンおよび緑色変換パターンのみから構成されているとは、透過パターンが形成されていないことをいう。本発明における色変換層は、超微粒子中に蛍光材料を分散させたものであり、上述したように超微粒子の分散性が良く、色変換層中では超微粒子により蛍光材料を凝集させることなく分散させることができるので、単位面積当りの蛍光材料の含有量を比較的多くすることができる。そのため、比較的薄い膜とすることができる。したがって、従来のように表面平坦化のために透過パターンを設ける必要がなく、透過パターンによる透過率の低下を防ぐことができ、パターニング工程を繰り返し行う必要がないのでコスト的に有利であり製造工程が簡便となる。
【0088】
本発明に用いられる超微粒子は、絶縁性を有することが好ましく、さらに透明性を有することが好ましい。本発明の有機EL素子用基板を有機EL表示装置に用いた場合には、基板側から光が取り出されるからである。このような超微粒子としては、例えば無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物の超微粒子を挙げることができる。なお、無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物の超微粒子については、上記「A.色変換層形成用塗工液」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0089】
また、上記超微粒子としては、表面が酸化された状態である金属の超微粒子を用いることもできる。具体的に、金属としては、In、Al、Ti、Ta、Zn、Sn、Y、Ge、Pb、Zr、アルカリ金属(Li、Na、K)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)等が挙げられる。これらの中でも、In(インジウム)、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子が好ましく用いられる。インジウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属は酸化性が高いため、比較的低い温度での焼成でも酸化が促進されるからである。
【0090】
さらに、上記超微粒子としては、金属の超微粒子を用いることができる。すなわち、超微粒子は導電性を有していてもよい。なお、金属の超微粒子については、上記「A.色変換層形成用塗工液」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
色変換層が金属の超微粒子を含有する場合には、導電性を有することとなるので、後述するように色変換層上に絶縁性を有する平坦化層が形成されていることが好ましい。本発明の有機EL素子用基板を有機EL表示装置に用いる場合には、色変換層上に透明電極層等が形成されるためである。
【0091】
なお、超微粒子の焼結温度、融点、および平均粒径については、上記「A.色変換層形成用塗工液」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、上記平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察写真(高倍率)により確認することができる。
【0092】
また、蛍光材料については、上記「A.色変換層形成用塗工液」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0093】
上記蛍光材料は、各色変換パターンに対して、その色変換パターンの重量を基準として0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜5重量%含有される。蛍光材料の含有量が少なすぎると十分な波長変換を行うことができず、また蛍光材料の含有量が多すぎると、濃度消光等により色変換効率が低下する可能性があるからである。本発明においては、超微粒子によって蛍光材料の分散性を向上させることができるので、濃度消光が起こりにくく、蛍光材料の含有量を比較的多くすることが可能である。
【0094】
また、色変換層の膜厚としては、波長変換を行うことができる厚みであれば特に限定されるものではないが、具体的には0.5μm〜10μmの範囲内で設定することができ、好ましくは0.5μm〜3μmの範囲内である。色変換層の膜厚が厚すぎると、透過性が低下したり、また基板等からの剥離が生じたりする可能性があるからである。また、色変換層の膜厚が厚すぎると、色変換パターンによる段差が大きくなりすぎて、色変換層上に後述する平坦化層を形成したとしても平坦化が困難となり、電極間の短絡が生じる可能性がある。さらに、色変換パターンによる段差が大きい場合には平坦化のために平坦化層を厚膜化しなければならず、平坦化層端部において電極の形成が困難となったり、透過率が低下したり、コストが高くなったりする場合がある。本発明においては、上述したように超微粒子によって蛍光材料の分散性を向上させることができるので、蛍光材料の濃度を比較的高めることが可能であり、色変換層の厚みを比較的薄くすることができる。一方、色変換層の膜厚が薄すぎると、十分な波長変換を行うことができない可能性がある。
【0095】
本発明においては、上記色変換層形成用塗工液を塗布し焼成することによって色変換層を形成することが好ましい。すなわち、色変換層は、超微粒子中に蛍光材料が分散された塗膜であることが好ましい。このような方法で色変換層を形成することにより、超微粒子特有のサイズ効果によって焼結温度を色変換層の耐熱温度以下まで低くすることができる。これにより、熱による蛍光材料の劣化を防ぐことができる。
なお、色変換層の形成方法については、後述する「D.有機EL素子用基板の製造方法」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
【0096】
また、色変換パターンの代わりに透過パターンが形成されている場合、この透過パターンは、超微粒子で形成されたものであることが好ましい。超微粒子で形成された透過パターンは、低脱ガス性に優れるからである。透過パターンに用いられる超微粒子としては、上述した超微粒子を使用することができる。
さらに、この透過パターンは、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し焼成することによって形成されたものであることが好ましい。すなわち、透過パターンは、超微粒子で形成された塗膜であることが好ましい。超微粒子特有のサイズ効果によって焼結温度を色変換層の耐熱温度以下まで低くすることができるからである。
【0097】
2.着色層
本発明においては、図2に例示するように基板1と色変換層2との間に着色層3が形成されていてもよい。着色層は、本発明の有機EL素子用基板を用いて有機EL表示装置とした際に、色変換層を透過した光の色調をさらに調整する層である。図2に例示するように、一般に、着色層3は赤色着色パターン3R、緑色着色パターン3Gおよび青色着色パターン3Bから構成され、色変換層の各色変換パターンと対応した位置に、それぞれ各着色パターンが形成される。このような着色層が形成されることにより、本発明の有機EL素子用基板を有機EL表示装置に用いた場合、高純度な発色とすることができ、色再現性の高いものとすることができる。
【0098】
本発明に用いられる着色層の形成材料としては、特に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタに用いられる顔料やバインダー樹脂を用いることができる。
着色層に用いられる着色剤としては、顔料を用いることができ、有機顔料であっても無機顔料であってもよい。
赤色着色パターンに用いられる顔料としては、例えばペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等を挙げることができる。これらの顔料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
緑色着色パターンに用いられる顔料としては、例えばハロゲン多置換フタロシアニン系顔料、ハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等を挙げることができる。これらの顔料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
青色着色パターンに用いられる顔料としては、例えば銅フタロシアニン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等を挙げることができる。これらの顔料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記顔料は、通常は各着色パターン中にそれぞれ通常5〜50重量%の範囲内で含有される。
【0099】
また、着色層に用いられるバインダー樹脂としては、可視光透過率が50%以上であることが好ましく、例えばポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。また、樹脂として感光性樹脂を用いることができ、例えばアクリレート系、メタクリレート系、ポリケイ皮酸ビニル系、環状ゴム系等の反応性ビニル基を有する電離放射線硬化性樹脂(電子線硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂)が挙げられる。
【0100】
本発明においては、着色層が超微粒子中に着色剤を分散させたものであることが好ましい。上記色変換層と同様に、低脱ガス性に優れる着色層とすることができ、ダークスポットの発生を抑制することができるからである。
着色層に用いられる超微粒子としては、上記色変換層に用いられる超微粒子と同様のものを使用することができる。
また、この場合に用いられる着色剤としては、顔料を用いることができ、有機顔料であっても無機顔料であってもよい。ここで、有機顔料を用いた場合でも、着色層に含まれる着色剤の量は超微粒子の含有量に比べて少なく、本発明においては色変換層が超微粒子中に蛍光材料を分散させたものであり、ある程度のバリア性を有している。したがって、着色層が有機顔料を含んでいたとしても、ダークスポットの大きな原因にはならないと考えられる。また、着色層内では有機顔料が無機材料からなる超微粒子に包含されている状態となっており、有機顔料から発生するガスを超微粒子がブロックするので、着色層内からガスが放出されにくくなる。
着色剤としては、上述したものを用いることができる。この場合、顔料は、有機顔料であるか無機顔料であるかによって異なるが、通常は各着色パターン中にそれぞれ通常5〜50重量%の範囲内で含有される。
【0101】
また、着色層の膜厚としては、光の色調を調整することができる厚みであれば特に限定されるものではないが、具体的には500nm〜5μmの範囲内で設定することができ、好ましくは1μm〜3μmの範囲内である。着色層の膜厚が厚すぎると、透過性が低下したり、また基板等からの剥離が生じたりする可能性があるからである。また、着色層の膜厚が厚すぎると、着色パターンによる段差が大きくなりすぎて、着色層および色変換層の上に後述する平坦化層を形成したとしても平坦化が困難となり、電極間の短絡が生じる可能性がある。さらに、着色パターンによる段差が大きい場合には平坦化のために平坦化層を厚膜化しなければならず、平坦化層端部において電極の形成が困難となったり、透過率が低下したり、コストが高くなったりする場合がある。一方、着色層の膜厚が薄すぎると、十分な色調の調整を行うことができない可能性があるからである。
【0102】
本発明においては、超微粒子および着色剤が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる着色層形成用塗工液を塗布し焼成することによって着色層を形成することが好ましい。すなわち、着色層は、超微粒子中に着色剤が分散された塗膜であることが好ましい。このような方法で着色層を形成することにより、超微粒子特有のサイズ効果によって焼結温度を着色層の耐熱温度以下まで低くすることができる。これにより、熱による着色剤の劣化を防ぐことができる。
【0103】
3.遮光部
本発明においては、例えば図3に示すように各色変換パターン2R,2G,2B間に遮光部5が形成されていてもよい。ブラックマトリクス等の遮光部を設けることにより、本発明の有機EL素子用基板を用いて有機EL表示装置とした際に、コントラストを向上させることが可能となるからである。また、遮光部の厚みを色変換層の厚みと同一または同程度とすることにより、色変換パターンによる凹凸を平坦化することができる。これにより、本発明の有機EL素子用基板を有機EL表示装置に用いた場合には、電極間の短絡を防ぐことが可能となる。
【0104】
また、図示しないが、着色層が形成されている場合には、各色変換パターンおよび各着色パターンの間に遮光部が形成されていてもよい。この場合、遮光部の厚みを色変換層および着色層を合わせた厚みと同一または同程度とすることにより、色変換パターンおよび着色パターンによる凹凸を平坦化することができる。これにより、本発明の有機EL素子用基板を有機EL表示装置に用いた場合には、電極間の短絡を防ぐことが可能となる。
【0105】
遮光部の形成材料としては、例えばカーボンブラックやチタンブラック等の黒色着色剤を含有する樹脂組成物、またはクロム、酸化クロム、窒化クロム等が挙げられる。また、超微粒子中に上記黒色着色剤を分散させた遮光部としてもよい。
中でも、クロム等の薄膜からなる遮光部、または、超微粒子中に上記黒色着色剤を分散させた遮光部は、低脱ガス性に優れるという利点を有する。
一方、黒色着色剤を含有する樹脂組成物は、遮光性を有するものであればよく、十分な熱処理を行うことができるので、遮光部形成時に脱ガス成分を除去することができる。
遮光部に用いられる超微粒子としては、上記色変換層に用いられる超微粒子と同様のものを使用することができる。
【0106】
また、遮光部の形成方法としては、黒色着色剤を含有する樹脂組成物を用いた場合には例えばフォトリソグラフィー法等を用いることができる。
クロム等を用いた場合には例えばスパッタリング法や真空蒸着法等により薄膜を形成し、フォトリソグラフィー法を利用してパターン状に形成することができる。また、無電界メッキ法や印刷法等を用いて形成することもできる。
さらに、超微粒子中に黒色着色剤を分散させた遮光部を形成する場合には、上記色変換層の場合と同様に、超微粒子および黒色着色剤が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる着色層形成用塗工液を塗布し焼成することによって遮光部を形成することができる。
【0107】
上記遮光部の厚みとしては、黒色着色剤を含有する樹脂を用いた場合には0.5μm〜2μm程度とすることができ、クロム等を用いた場合には0.2μm〜0.4μm程度とすることができる。また、超微粒子中に黒色着色剤を分散させた遮光部の厚みは、1μm〜3μmとすることができる。
【0108】
4.平坦化層
本発明においては、各色変換パターンによる凹凸を埋めるように平坦化層が形成されていてもよい。また、着色層が形成されている場合には、図4に例示するように各色変換パターン2R,2G,2Bおよび各着色パターン3R,3G,3Bによる凹凸を埋めるように平坦化層6が形成されていてもよい。さらに、遮光部が形成されている場合には、図5に例示するように遮光部5上に平坦化層6が形成されることとなる。平坦化層は、着色層や色変換層の表面の凹凸を平坦にする目的や、着色層や色変換層を保護する目的等で設けられる。さらに、着色層や色変換層が導電性を有する場合には、絶縁性を有する平坦化層を形成して、透明電極層等と絶縁するという目的もある。
【0109】
本発明に用いられる平坦化層の形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば樹脂を用いることができる。樹脂としては、可視光透過率が50%以上の樹脂であることが好ましい。なお、樹脂については、上記着色層の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0110】
本発明に用いられる平坦化層は、超微粒子で形成された膜であることが好ましい。色変換層や着色層と同様に、低脱ガス性に優れる平坦化層とすることができ、ダークスポットの発生を抑制することができるからである。また、色変換層上に、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる平坦化層形成用塗工液を塗布して平坦化層を形成する場合には、超微粒子分散液からなる平坦化層形成用塗工液が流動性に非常に優れているため、色変換層間の隙間に積極的に流れ込みやすく、平坦性を向上させることができる。
平坦化層に用いられる超微粒子としては、上記色変換層に用いられる超微粒子と同様のものを使用できる。
【0111】
また、平坦化層の膜厚としては、色変換層や着色層表面を平坦化することが可能であればよい。例えば、色変換層の厚み(高さ)、あるいは着色層が形成されている場合には図5に例示するように色変換層および着色層を合わせた厚み(高さ)と同一または同程度となるように平坦化層を形成してもよい。また例えば、色変換層の厚み(高さ)、あるいは着色層が形成されている場合には図4に例示するように色変換層および着色層を合わせた厚み(高さ)よりも厚くなるように平坦化層を形成してもよい。具体的に色変換層上に形成される平坦化層の膜厚は、0.5μm〜10μmの範囲内で設定することができ、好ましくは0.5μm〜3μmの範囲内である。
【0112】
本発明においては、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる平坦化層形成用塗工液を塗布し焼成することによって平坦化層を形成することが好ましい。すなわち、平坦化層は、超微粒子で形成された塗膜であることが好ましい。このような方法で平坦化層を形成することにより、超微粒子特有のサイズ効果によって焼結温度を色変換層や着色層の耐熱温度以下まで低くすることができる。これにより、熱による蛍光材料や着色剤の劣化を防ぐことができる。
【0113】
5.基板
本発明に用いられる基板は、本発明の有機EL素子用基板を用いて有機EL表示装置とした際に基板側から光を取り出すため、透明であることが好ましい。また、基板は、耐溶媒性、耐熱性を有し、寸法安定性に優れているものであることが好ましい。これにより、基板上に色変換層等を形成する際にも安定なものとすることができるからである。
【0114】
透明な基板としては、例えばガラス基板や、有機材料で形成されたフィルム状やシート状のもの等を用いることができる。
【0115】
ガラス基板は、可視光に対して透過性の高いものであれば特に限定されるものではなく、例えば未加工のガラス基板であってもよく、また加工されたガラス基板等であってもよい。またガラス基板としては、アルカリガラスおよび無アルカリガラスのどちらも使用可能であるが、不純物が問題とされる場合には、例えばパイレックス(登録商標)ガラス等の無アルカリガラスを用いることが好ましい。加工されたガラス基板の種類は、本発明の有機EL素子用基板の用途に応じて適宜選択されるものであり、例えば透明なガラス基板に塗布加工をしたものや、段差加工を施したもの等が挙げられる。
【0116】
上記ガラス基板の厚みは、20μm〜2mmの範囲内であることが好ましい。中でも、フレキシブルな基板として使用する場合には20μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、リジッドな基板として使用する場合には200μm〜2mmの範囲内であることが好ましい。
【0117】
また、透明な基板に用いられる有機材料としては、例えばポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、結晶化ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、UV硬化型メタクリル樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
さらに、透明な基板としては、上述した有機材料と、例えば、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂等と2種以上併せて用いることができる。
【0118】
上記のような有機材料を用いて透明な基板とする場合には、基板の厚みは、10μm〜500μmの範囲内、中でも50〜400μmの範囲内、特に100〜300μmの範囲内であることが好ましい。基板の厚みが厚すぎると、耐衝撃性に劣ることや、巻き取り時に巻き取りが困難となり、バリア性が劣化する可能性があるからである。また、基板の厚みが薄すぎると、機械適性が悪く、バリア性が低下する可能性があるからである。
【0119】
また、本発明においては、基板を洗浄して用いることが好ましく、その洗浄方法としては、酸素、オゾン等による紫外光照射処理や、プラズマ処理、アルゴンスパッタ処理等を行うことが好ましい。これにより、水分や酸素の吸着のない状態とすることができ、ダークスポットの低減や有機EL素子の長寿命化を図ることが可能となるからである。
【0120】
6.バリア層
本発明においては、上記色変換層上にバリア層が形成されていてもよい。上記平坦化層が形成されている場合には、平坦化層上にバリア層が形成される。バリア層を設けることにより、有機EL素子用基板のバリア性を高めることができる。特に、上記着色層にバインダー樹脂を用いた場合や、上記平坦化層に樹脂を用いた場合には、バリア層を形成することが好ましい。
【0121】
本発明に用いられるバリア層の形成材料としては、一般的に有機EL表示装置におけるバリア層として用いられる材料であればよく、例えば無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物を挙げることができる。具体的に、無機酸化物としては、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化ナトリム、酸化リチウム、酸化カリウム等が挙げられる。無機窒化物としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化窒化ケイ素等が挙げられる。また、無機酸化窒化物としては、酸化窒化ケイ素等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。これらの材料は、製造の安定性が高く、コスト的にも有利であるからである。
【0122】
上記バリア層は、単一層であってもよく、バリア性を向上させるために複数積層してもよい。また、積層する場合の組み合わせとしては、同種、異種を問わない。
【0123】
本発明の有機EL素子用基板を有機EL表示装置に用いた場合には、基板側から光が取り出されるため、バリア層は透過性を有することが好ましい。具体的には、バリア層の可視光領域における透過率が60%以上であることが好ましく、中でも80%以上、特に90%以上であることが好ましい。なお、上記透過率は、波長380nm〜800nmの範囲内において、島津製作所(株)社製 UV−3100を用いて測定した値の平均値である。
【0124】
このようなバリア層の厚みは、バリア性を有し、上述した透過性を満たすような厚みであれば特に限定されるものではなく、上述した材料により適宜選択される。また本発明においては、上記色変換層がある程度のバリア性を有するので、バリア層の厚みは比較的薄くてもよい。通常、バリア層の厚みは5nm〜5000nmの範囲内であり、好ましくは5nm〜500nmの範囲内である。また、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素を用いた場合は、10nm〜300nmの範囲内であることがより好ましい。バリア層の厚みが薄すぎると、所望のバリア性を得ることが困難となるからである。一方、バリア層の厚みが厚すぎると、バリア層形成時にクラック等が生じる可能性があり、また透過率が低下する場合があるからである。
【0125】
バリア層の形成方法としては、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法(物理的蒸着法)、CVD法(化学的蒸着法)、ディップ法などを挙げることができる。
【0126】
D.有機EL素子用基板の製造方法
次に、本発明の有機EL素子用基板の製造方法について説明する。
本発明の有機EL素子用基板の製造方法は、基板上に、上述した色変換層形成用塗工液を塗布し、焼成して、色変換層を形成する色変換層形成工程を有することを特徴とするものである。
【0127】
図6は、本発明の有機EL素子用基板の製造方法の一例を示す工程図である。本発明においては、基板1上に、超微粒子および蛍光材料が溶剤に分散もしくは溶解された超微粒子分散液からなる色変換層形成用塗工液12を塗布し、焼成する(図6(a))。これにより、色変換層2が形成される(図6(b))。
【0128】
本発明によれば、超微粒子および蛍光材料が溶剤に分散もしくは溶解された超微粒子分散液を用いるので、低脱ガス性に優れる色変換層を形成することができ、ダークスポットが発生しにくい有機EL素子用基板を得ることができる。
また本発明においては、超微粒子特有のサイズ効果により、超微粒子が一般的な焼結温度よりもはるかに低温で緻密に焼結するため、色変換層の耐熱温度以下での焼成が可能である。これにより、熱による蛍光材料の劣化を防ぐことができる。
以下、有機EL素子用基板の製造方法の各工程について説明する。
【0129】
1.色変換層形成工程
本発明における色変換層形成工程は、基板上に、超微粒子および蛍光材料が溶剤に分散もしくは溶解された超微粒子分散液からなる色変換層形成用塗工液を塗布し、焼成して、色変換層を形成する工程である。
なお、色変換層形成用塗工液については、上記「A.色変換層形成用塗工液」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0130】
色変換層形成用塗工液の塗布方法としては、均一な厚みに塗布できる方法であればよく、例えばスピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法等が挙げられる。
【0131】
また、色変換層形成用塗工液を塗布して塗膜を形成した後は、塗膜を乾燥させて、溶剤を除去してもよい。乾燥温度としては、溶剤の種類に応じて適宜選択されるが、通常は80℃〜150℃程度である。
【0132】
上記塗膜の焼成温度は、使用する超微粒子の種類等によって適宜選択されるものであるが、150℃〜350℃程度であることが好ましく、より好ましくは150℃〜250℃の範囲内であり、さらに好ましくは150℃〜220℃の範囲内である。焼成温度が低すぎると超微粒子が十分に焼結しない可能性があり、また、焼成温度が高すぎると基板、色変換層、着色層等に熱的ダメージを与えるおそれがあるからである。超微粒子を構成する無機酸化物等を単体で焼結するのに必要な温度は一般に400〜700℃程度であるが、本発明においては超微粒子のサイズ効果により、150℃〜350℃という極めて低い温度で焼結する。
また、焼成時間についても、使用する超微粒子の種類等によって適宜選択されるものであるが、通常は10分〜1時間程度であり、好ましくは15分〜30分である。
【0133】
焼成する際の雰囲気は、超微粒子の種類により適宜選択される。本工程においては、酸化性雰囲気中で焼成してもよく、また超微粒子が酸化しない雰囲気中で焼成し、その後、酸化性雰囲気中で焼成してもよい。すなわち、一段階プロセスで焼成してもよく、二段階プロセスにより焼成してもよい。二段階プロセスによる焼成では、超微粒子の表面だけがさらに酸化されて、焼結が不十分となるのを回避できるからである。また、二段階で焼成するので、低温焼成でさらに緻密な色変換層を形成することができるからである。
【0134】
超微粒子が酸化しない雰囲気としては、例えば真空雰囲気、不活性ガス雰囲気、還元性雰囲気等が挙げられる。
不活性ガス雰囲気としては、例えば希ガス、二酸化炭素、窒素等の不雰囲気が挙げられる。
還元性雰囲気としては、例えば水素、一酸化炭素、低級アルコール等の雰囲気が挙げられる。低級アルコールとしては、炭素数が1〜6の低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等が挙げられる。
また、真空雰囲気が、例えば希ガス、二酸化炭素、窒素等の不活性ガス;酸素、水蒸気等の酸化性ガス;水素、一酸化炭素、低級アルコール等の還元性ガス;または上記不活性ガスと酸化性ガスもしくは還元性ガスとの混合ガス;を含んでいてもよい。真空雰囲気の場合に酸化性ガスを導入すると、超微粒子は酸化せずに、超微粒子に付着している有機化合物(溶剤や分散剤)だけを燃焼させる効果がある。真空状態は、単にポンプで引いただけでもよく、また一旦ポンプ引きした後、不活性ガス、還元性ガス、酸化性ガスを導入してもよい。真空雰囲気中での焼成は、通常、10−5〜10Pa程度で行うことができる。
【0135】
酸化性雰囲気は、酸素、水蒸気、酸素含有ガス(例えば空気等)、水蒸気含有ガスなどを含んでいてもよい。
【0136】
また、超微粒子が酸化しない雰囲気中で焼成した後、酸化性雰囲気中で焼成する前に、塗膜を乾燥させてもよい。これにより、溶剤や分散剤を除去することができるからである。溶剤や分散剤の除去は、焼成時に行ってもよい。
さらに、酸化性雰囲気中での焼成後、還元性雰囲気中で焼成してもよい。
また、焼成時に紫外線照射を行ってもよい。時間短縮・低温化の面でさらに効果がある。焼成では、大気圧プラズマ等を用いた、いわゆるプラズマ焼結を用いることもできる。
【0137】
本発明においては、色変換層のパターニング方法として、例えばレジスト法、吐出法、印刷法等を用いることができる。
【0138】
レジスト法では、塗膜の上にレジストを塗布し、露光、現像、酸エッチング、およびレジスト剥離を行うことにより、色変換層をパターン状に形成することができる。この場合、色変換層形成用塗工液に用いられる超微粒子としては、酸性エッチング液に溶解するものが使用される。このような超微粒子としては無機酸化物が挙げられ、中でも、酸化インジウム、酸化亜鉛、および酸化スズからなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子が好ましく用いられる。これらは、酸性エッチング液の中でもフッ酸などの基板等も溶解するような強酸のエッチング液を用いる必要がないからである。
またこの場合、各色変換パターンごとに塗布、乾燥、焼成、およびレジスト法によるパターニングを繰り返し行ってもよく、また各色変換パターンごとに塗布、乾燥、およびレジスト法によるパターニングを繰り返し行った後、色変換層全体を焼成してもよい。
【0139】
吐出法では、色変換層形成用塗工液をパターンに応じて塗り分けることにより、色変換層をパターン状に形成することができる。吐出法としては、例えばインクジェット法が挙げられる。この場合、色変換層形成用塗工液を塗布する部材表面に親疎水パターンを形成することが好ましい。本発明に用いられる色変換層形成用塗工液は粘度が比較的低いので、親疎水パターンに沿って塗布することにより、精細なパターンを形成できるからである。
またこの場合、各色変換パターンごとに塗布、乾燥、焼成を繰り返し行ってもよく、また各色変換パターンごとに塗布、乾燥を繰り返し行った後、色変換層全体を焼成してもよいが、工程上の簡便さから、各色変換パターンごとに塗布、乾燥を繰り返し行った後、色変換層全体を焼成することが好ましい。
【0140】
印刷法としては、粘度が比較的低い色変換層形成用塗工液を均一な厚みに印刷できる方法であればよく、例えばフレキソ印刷法等が挙げられる。
上記の吐出法や印刷法では、超微粒子は、上記「A.色変換層形成用塗工液」の項に記載したものであれば、いずれも使用できる。
また、上述した中でも、製造工程が簡便であることから、インクジェット法が好ましく用いられる。
【0141】
2.遮光部形成工程
本発明においては、上記色変換層形成工程前に、基板上に遮光部を形成する遮光部形成工程を行ってもよい。遮光部形成工程は、超微粒子および黒色着色剤が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる遮光部形成用塗工液を塗布し、焼成して、遮光部を形成する工程であることが好ましい。上記色変換層形成工程の場合と同様に、低脱ガス性に優れる遮光部を形成することができるからである。
なお、超微粒子、および溶剤等については、上記「A.色変換層形成用塗工液」の項に記載したものと同様であり、黒色着色剤については、上記「C.有機EL素子用基板」の遮光部の項に記載したものと同様であり、また遮光部形成用塗工液の塗布方法、および焼成方法等については上記色変換層形成工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0142】
3.着色層形成工程
本発明においては、上記色変換層形成工程前に、基板上に着色層を形成する着色層形成工程を行ってもよい。着色層形成工程は、超微粒子および着色剤が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる着色層形成用塗工液を塗布し、焼成して、着色層を形成する工程であることが好ましい。上記色変換層形成工程の場合と同様に、低脱ガス性に優れる着色層を形成することができるからである。
なお、超微粒子、および溶剤等については、上記「A.色変換層形成用塗工液」の項に記載したものと同様であり、着色剤については、上記「C.有機EL素子用基板」の着色層の項に記載したものと同様であり、また着色層形成用塗工液の塗布方法、および焼成方法等については上記色変換層形成工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0143】
4.平坦化層形成工程
本発明においては、上記色変換層形成工程後に、色変換層上に平坦化層を形成する平坦化層形成工程を行ってもよい。平坦化層形成工程は、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる平坦化層形成用塗工液を塗布し、焼成して、平坦化層を形成する工程であることが好ましい。上記色変換層形成工程の場合と同様に、低脱ガス性に優れる平坦化層を形成することができるからである。
なお、超微粒子、および溶剤等については、上記「A.色変換層形成用塗工液」の項に記載したものと同様であり、また平坦化層形成用塗工液の塗布方法、および焼成方法等については上記色変換層形成工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0144】
E.有機EL表示装置
次に、本発明の有機EL表示装置について説明する。
本発明の有機EL表示装置は、上述した有機EL素子用基板と、上記有機EL素子用基板上に形成された透明電極層と、上記透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含む有機EL層と、上記有機EL層上に形成された背面電極層とを有することを特徴とするものである。
【0145】
図7は本発明の有機EL表示装置の一例を示すものである。図7に示すように、有機EL表示装置20は、上述した有機EL素子用基板10と、上記有機EL素子用基板10の色変換層2上に形成された透明電極層21と、この透明電極層21上にパターン状に形成された有機EL層22と、この有機EL層22上に形成された背面電極層23とを有するものである。また、透明電極層21上であって、パターン状の有機EL層22間には絶縁層24が形成されている。この絶縁層24は、透明電極層21と背面電極層23とを接触させないようにするために設けられる層である。さらに、この絶縁層24上には隔壁25が形成されている。有機EL層22が形成されている部分は表示領域である。また、有機EL素子用基板10は、基板1上に着色層3および色変換層2が順に積層され、パターン状の着色層3および色変換層2の間に遮光部5および平坦化層6が形成されたものである。
【0146】
本発明によれば、上述した有機EL素子用基板を用いるので、ダークスポット等の欠陥の発生を抑制することができ、良好な画像表示が可能な有機EL表示装置とすることができる。また、上記有機EL素子用基板では、ダークスポットが発生しにくいので、従来のような厚膜のバリア層を設ける必要がなく、低コスト化および歩留まり向上が図れる。
以下、このような有機EL表示装置の各構成について説明する。
【0147】
1.有機EL層
本発明に用いられる有機EL層は、少なくとも発光層を含む1層もしくは複数層の有機層から構成されるものである。すなわち、有機EL層とは、少なくとも発光層を含む層であり、その層構成が有機層1層以上の層をいう。通常、塗布による湿式法で有機EL層を形成する場合は、溶媒との関係で多数の層を積層することが困難であることから、1層もしくは2層の有機層で形成される場合が多いが、溶媒への溶解性が異なるように有機材料を工夫したり、真空蒸着法を組み合わせたりすることにより、さらに多数層とすることも可能である。
【0148】
発光層以外に有機EL層内に形成される有機層としては、正孔注入層や電子注入層といった電荷注入層を挙げることができる。さらに、その他の有機層としては、発光層に正孔を輸送する正孔輸送層、発光層に電子を輸送する電子輸送層といった電荷輸送層を挙げることができるが、通常これらは上記電荷注入層に電荷輸送の機能を付与することにより、電荷注入層と一体化されて形成される場合が多い。その他、有機EL層内に形成される有機層としては、キャリアブロック層のような正孔あるいは電子の突き抜けを防止し、さらに励起子の拡散を防止して発光層内に励起子を閉じ込めることにより、再結合効率を高めるための層等を挙げることができる。
以下、このような有機EL層の各構成について説明する。
【0149】
(1)発光層
本発明に用いられる発光層は、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を有するものである。上記発光層を形成する材料としては、通常、色素系発光材料、金属錯体系発光材料、または高分子系発光材料を挙げることができる。
【0150】
色素系発光材料としては、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマーなどを挙げることができる。
【0151】
また、金属錯体系発光材料としては、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体、イリジウム金属錯体、プラチナ金属錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be、Ir、Pt等、またはTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。具体的には、トリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq)を用いることができる。
【0152】
さらに、高分子系発光材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体、およびそれらの共重合体等を挙げることができる。また、上記色素系発光材料および金属錯体系発光材料を高分子化したものも挙げられる。
【0153】
本発明に用いられる発光材料としては、上記の中でも、金属錯体系発光材料または高分子系発光材料であることが好ましく、さらには高分子系発光材料であることが好ましい。また、高分子系発光材料の中でも、π共役構造をもつ導電性高分子であることが好ましい。このようなπ共役構造をもつ導電性高分子としては、上述したようなポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体、およびそれらの共重合体等を挙げることができる。
【0154】
発光層の厚みとしては、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を発現することができる厚みであれば特に限定されなく、例えば1nm〜200nm程度とすることができる。
【0155】
また、発光層中には、発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的で蛍光発光または燐光発光するドーパントを添加してもよい。このようなドーパントとしては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体等を挙げることができる。
【0156】
発光層の形成方法としては、高精細なパターニングが可能な方法であれば特に限定されるものではない。例えば蒸着法、印刷法、インクジェット法、またはスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、および自己組織化法(交互吸着法、自己組織化単分子膜法)等を挙げることができる。中でも、蒸着法、スピンコート法、およびインクジェット法を用いることが好ましい。また、発光層をパターニングする際には、異なる発光色となる画素のマスキング法により塗り分けや蒸着を行ってもよく、または発光層間に隔壁を形成してもよい。このような隔壁を形成する材料としては、感光性ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂等の光硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂、および無機材料等を用いることができる。さらに、これらの隔壁を形成する材料の表面エネルギー(濡れ性)を変化させる処理を行ってもよい。
【0157】
(2)電荷注入輸送層
本発明においては、透明電極層または背面電極層と発光層との間に電荷注入輸送層が形成されていてもよい。ここでいう電荷注入輸送層とは、上記発光層に透明電極層または背面電極層からの電荷を安定に輸送する機能を有するものであり、このような電荷注入輸送層を、透明電極層または背面電極層と発光層との間に設けることにより、発光層への電荷の注入が安定化し、発光効率を高めることができる。
【0158】
電荷注入輸送層としては、陽極から注入された正孔を発光層内へ輸送する正孔注入輸送層、陰極から注入された電子を発光層内へ輸送する電子注入輸送層とがある。以下、正孔注入輸送層および電子注入輸送層について説明する。
【0159】
(i)正孔注入輸送層
本発明に用いられる正孔注入輸送層としては、発光層に正孔を注入する正孔注入層、および正孔を輸送する正孔輸送層のいずれか一方であってもよく、正孔注入層および正孔輸送層が積層されたものであってもよく、または、正孔注入機能および正孔輸送機能の両機能を有する単一の層であってもよい。
【0160】
正孔注入輸送層に用いられる材料としては、陽極から注入された正孔を安定に発光層内へ輸送することができる材料であれば特に限定されるものではなく、上記発光層の発光材料に例示した化合物の他、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン誘導体等を用いることができる。具体的には、ビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン(α−NPD)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSS)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
【0161】
また、正孔注入輸送層の厚みとしては、陽極から正孔を注入し、発光層へ正孔を輸送する機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されないが、具体的には0.5nm〜1000nmの範囲内、中でも10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
【0162】
(ii)電子注入輸送層
本発明に用いられる電子注入輸送層としては、発光層に電子を注入する電子注入層、および電子を輸送する電子輸送層のいずれか一方であってもよく、電子注入層および電子輸送層が積層されたものであってもよく、または、電子注入機能および電子輸送機能の両機能を有する単一の層であってもよい。
【0163】
電子注入層に用いられる材料としては、発光層内への電子の注入を安定化させることができる材料であれば特に限定されるものではなく、上記発光層の発光材料に例示した化合物の他、アルミリチウム合金、フッ化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、カルシウム、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、リチウム、セシウム、フッ化セシウム等のようにアルカリ金属類、およびアルカリ金属類のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体等を用いることができる。
【0164】
また、電子注入層の厚みとしては、電子注入機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されない。
【0165】
一方、電子輸送層に用いられる材料としては、陰極から注入された電子を発光層内へ輸送することが可能な材料であれば特に限定されるものではなく、例えばバソキュプロイン、バソフェナントロリン、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、またはトリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq)等を挙げることができる。
【0166】
さらに、電子注入機能および電子輸送機能の両機能を有する単一の層からなる電子注入輸送層としては、電子輸送性の有機材料にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属をドープした金属ドープ層を形成し、これを電子注入輸送層とすることができる。上記電子輸送性の有機材料としては、例えばバソキュプロイン、バソフェナントロリン、フェナントロリン誘導体等を挙げることができ、ドープする金属としては、Li、Cs、Ba、Sr等が挙げられる。
【0167】
2.透明電極層および背面電極層
本発明に用いられる透明電極層および背面電極層は、互いに反対の電荷をもつ電極である。
透明電極層は、一般に透明性および導電性を有する金属酸化物の薄膜で構成される。このような金属酸化物としては、例えば酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫等が挙げられる。
また、背面電極層としては、一般に金属が用いられる。具体的には、マグネシウム合金(MgAgなど)、アルミニウム合金(AlLi、AlCa、AlMgなど)、アルミニウム、アルカリ土類金属(Caなど)、アルカリ金属(K、Liなど)等が挙げられる。
【0168】
透明電極層および背面電極層は、一般的な電極層の形成方法を用いて形成することができ、例えばスパッタリング法、真空蒸着法等が挙げられる。
【0169】
3.絶縁層
本発明においては、透明電極層と背面電極層とを絶縁するために絶縁層が形成されていてもよい。この絶縁層は、非表示領域としてパターン状に形成されるものである。
絶縁層の形成材料としては、例えば紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂等が挙げられる。このような絶縁層は、上記の樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成することができる。また、パターニングの方法としては、フォトリソグラフィー法、印刷法等の一般的な方法を用いることができる。
【0170】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0171】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
[実施例]
(ブラックマトリックスの形成)
透明基材として、150mm×150mm、厚み0.7mmのソーダガラス(セントラル硝子(株)製 Sn面研磨品)を準備した。この透明基材を定法にしたがって洗浄した後、透明基材の片側全面にスパッタリング法により酸化窒化複合クロムの薄膜(厚み0.2μm)を形成し、この複合クロム薄膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、複合クロム薄膜のエッチングを行って、84μm×284μmの長方形状の開口部を100μmピッチでマトリックス状に備えたブラックマトリックスを形成した。
【0172】
(着色層の形成)
赤色、緑色、青色の3種の着色層用感光性塗料を調製した。すなわち、赤色着色層用感光性塗料は、縮合アゾ系顔料(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、クロモフタルレッドBRN)をバインダー樹脂に分散させたものとした。緑色着色層用感光性塗料は、フタロシアニン系緑色顔料(東洋インキ製造社製、リオノールグリーン2Y−301)をバインダー樹脂に分散させたものとした。青色着色層用感光性塗料は、アンスラキノン系顔料(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、クロモフタルブルーA3R)をバインダー樹脂に分散させたものとした。バインダー樹脂としては、アクリル系UV硬化性樹脂組成物(アクリル系UV硬化性樹脂20%・アクリル系UV硬化性樹脂モノマー20%・添加剤5%・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)55%)を用いた。アクリル系UV硬化性樹脂組成物10部に対し、各着色剤を1部(部数はいずれも質量基準。)の割合で配合して、十分に混合分散させた。
上記の3種の着色層用感光性塗料を用いて各色の着色層を形成した。すなわち、ブラックマトリックスが形成された上記の透明基材全面に、緑色着色層用感光性塗料をスピンコート法により塗布し、プリベーク(80℃、30分間)を行った。その後、所定の着色層用フォトマスクを用いて露光した。次いで、現像液(0.05%KOH水溶液)にて現像を行い、次いで、ポストベーク(100℃、30分間)を行って、ブラックマトリックスパターンに対して所定の位置に帯状(幅90μm)の緑色着色層(厚み1.5μm)を形成した。同様に、赤色着色層用感光性塗料を用いて、ブラックマトリックスパターンに対して所定の位置に帯状(幅90μm)の赤色着色層(厚み1.5μm)を形成した。さらに、青色着色層用感光性塗料を用いて、ブラックマトリックスパターンに対して所定の位置に帯状(幅90μm)の青色着色層(厚み1.5μm)を形成した。
【0173】
(色変換層の形成)
ヘリウムガス圧力0.5Torrの条件下で高周波誘導加熱を用いるガス中蒸発法によりIn微粒子を生成する際に、生成過程のIn微粒子にα−テルピネオールとドデシルアミンとの20:1(容量比)の蒸気を接触させ、冷却捕集してIn微粒子を回収し、α−テルピネオール溶媒中に独立した状態で分散している平均粒径10nmのIn微粒子を20重量%含有する分散液を調製した。この分散液(コロイド液)1容量に対してアセトンを5容量加え、攪拌した。極性のアセトンの作用により分散液中の微粒子は沈降した。2時間静置後、上澄みを除去し、再び最初と同じ量のアセトンを加えて攪拌し、2時間静置後、上澄みを除去した。この沈降物から、残留溶媒を完全に除去し、平均粒径10nmのIn微粒子を作製し、X線回折により、酸化されていない微粒子であることを確認した。この微粒子を60wt%の濃度にてテトラデカン中に分散させ、超微粒子分散液を得た。
【0174】
その後さらに、超微粒子分散液に緑色変換蛍光体(アルドリッチ(株)製 クマリン6)を固形分換算で3wt%の濃度に分散させ、緑色変換層用塗工液とした。
この緑色変換層用塗工液をスピンコート法により着色層上に塗布し、その後、塗膜を1×10−3Paの減圧下において230℃、10minの条件で焼成した。次いで、酸化性雰囲気(大気)中で、230℃、60minの条件で焼成を行った。このときの緑色変換層の膜厚は3μmであった。
次に、緑色変換層上にスピンコート法により感光性レジストを塗布し、乾燥、マスク露光、現像、緑色変換層のエッチングを行って、緑色変換層をパターニングした。この緑色変換層は、着色層上に位置する幅90μmの帯状パターンであった。
【0175】
さらに、同様にして、上記超微粒子分散液に赤色変換蛍光体(アルドリッチ(株)製 ローダミン6G)を固形分換算で3wt%の濃度に分散させ、赤色変換層用塗工液とした。この赤色変換層用塗工液をスピンコート法により着色層上に塗布し、その後、塗膜を1×10−3Paの減圧下において230℃、10minの条件で焼成した。次いで、酸化性雰囲気(大気)中で、230℃、60minの条件で焼成を行った。このときの赤色変換層の膜厚は3μmであった。
次に、赤色変換層上にスピンコート法により感光性レジストを塗布し、乾燥、マスク露光、現像、赤色変換層のエッチングを行って、赤色変換層をパターニングした。この赤色変換層は、着色層上に位置する幅90μmの帯状パターンであった。
【0176】
(平坦化層およびバリア層の形成)
平均分子量が約100,000であるノルボルネン系樹脂(JSR(株)製 ARTON)をトルエンで希釈した平坦化層用塗工液を使用し、スピンコート法により色変換層上に塗布した後、ベーク(100℃、30分間)を行った。これにより、上記色変換層を覆うように平坦化層(厚み7μm)を形成した。この平坦化層は、透明かつ均一な膜であった。
【0177】
次に、平坦化層上に下記の条件でスパッタリング法により酸化ケイ素膜(厚み300nm)を成膜して、バリア層を形成した。
(酸化珪素膜の成膜条件)
・RFスパッタ電力:50W/cm、周波数13.56MHz
・成膜レート:10nm/分
・成膜圧力:0.5Pa
・SiOターゲット:4N(密度2.25g/cm
【0178】
(透明電極層の形成)
次いで、上記バリア層上にイオンプレーティング法により膜厚150nmの酸化インジウムスズ(ITO)膜を形成し、このITO膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、ITO膜のエッチングを行って、透明電極層を形成した。この透明電極層は、透明基材上から色変換層上に乗り上げるようにバリア層上に形成された幅80μmの帯状パターンであり、各着色層上に位置するものであった。
【0179】
(補助電極の形成)
次に、上記透明電極層を覆うようにバリア層全面にスパッタリング法によりクロム薄膜(厚み0.2μm)を形成し、このクロム薄膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、クロム薄膜のエッチングを行って、補助電極を形成した。この補助電極は、透明基材上から色変換層上に乗り上げるように透明電極層上に形成された帯状のパターンであり、色変換層上では幅14μmでブラックマトリックス上に位置し、透明基材周縁部の端子部では幅が60μmのものとした。
【0180】
(絶縁層と隔壁の形成)
平均分子量が約100,000であるノルボルネン系樹脂(JSR(株)製 ARTON)をトルエンで希釈した絶縁層用塗工液を使用し、スピンコート法により透明電極層を覆うようにバリア層上に塗布した後、ベーク(100℃、30分間)を行って絶縁膜(厚み1μm)を形成した。次に、この絶縁膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、絶縁膜のエッチングを行って絶縁層を形成した。この絶縁層は、透明電極層と直角に交差する帯状(幅20μm)のパターンであり、ブラックマトリックス上に位置するものとした。
次に、隔壁用塗料(日本ゼオン(株)製フォトレジスト ZPN1100)をスピンコート法により絶縁層を覆うように全面に塗布し、プリベーク(70℃、30分間)を行った。その後、所定の隔壁用フォトマスクを用いて露光し、現像液(日本ゼオン(株)製 ZTMA−100)にて現像を行い、次いで、ポストベーク(100℃、30分間)を行った。これにより、絶縁層上に隔壁を形成した。この隔壁は、高さ10μm、下部(絶縁層側)の幅15μm、上部の幅26μmである形状を有するものであった。
【0181】
(有機EL層の形成)
次いで、上記隔壁をマスクとして、真空蒸着法により正孔注入層、青色発光層、電子注入層からなる有機EL層を形成した。すなわち、まず、4,4´,4´´−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミンを、画像表示領域に相当する開口部を備えたフォトマスクを介して200nm厚まで蒸着して成膜し、その後、4,4´−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルを20nm厚まで蒸着して成膜することによって、隔壁がマスクパターンとなり、各隔壁間のみを正孔注入材料が通過して透明電極層上に正孔注入層を形成した。同様にして、4,4´−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニルを50nmまで蒸着して成膜することにより青色発光層とした。その後、トリス(8−キノリノール)アルミニウムを20nm厚まで蒸着して成膜することにより電子注入層とした。このようにして形成された有機EL層は、幅280μmの帯状パターンとして各隔壁間に存在するものであり、隔壁の上部表面にも同様の層構成でダミーの有機素子層を形成した。
【0182】
(背面電極層の形成)
次に、画像表示領域よりも広い所定の開口部を備えたフォトマスクを介して上記隔壁が形成されている領域に真空蒸着法によりマグネシウムと銀とを同時に蒸着(マグネシウムの蒸着速度=1.3〜1.4nm/秒、銀の蒸着速度=0.1nm/秒)して成膜した。これにより、隔壁がマスクとなって、マグネシウム/銀混合物からなる背面電極層(厚み200nm)が有機EL層上に形成された。この背面電極層は、幅280μmの帯状パターンとして有機EL層上に存在するものであり、隔壁の上部表面にもダミーの背面電極層を形成した。
以上により、有機EL表示装置を得た。
【0183】
[比較例]
色変換層を下記のようにして形成した以外は、実施例と同様にして有機EL表示装置を作製した。
【0184】
(色変換層の形成)
緑色変換蛍光体(アルドリッチ(株)製 クマリン6)を固形分換算で1wt%分散させたアルカリ可溶性ネガ型レジストを緑色変換層用塗工液とし、これをスピンコート法により着色層上に塗布し、プリベーク(80℃、30分間)を行った。次いで、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、ポストベーク(100℃、30分間)を行った。これにより、緑色着色層上に帯状(幅90μm)の緑色変換層(厚み10μm)を形成した。
さらに、赤色変換蛍光体(アルドリッチ(株)製 ローダミン6G)を固形分換算で1wt%分散させたアルカリ可溶性ネガ型レジストを赤色変換層用塗工液とし、これをスピンコート法により着色層上に塗布し、プリベーク(80℃、30分間)を行った。次いで、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、ポストベーク(100℃、30分間)を行った。これにより、赤色着色層上に帯状(幅90μm)の赤色変換層(厚み10μm)を形成した。
【0185】
[評価]
実施例および比較例の有機EL表示装置の透明電極層と背面電極層に直流8.5Vの電圧を10mA/cmの一定電流密度で印加して連続駆動させることにより、透明電極層と背面電極層とが交差する所望の部位の青色発光層を発光させた。そして、色変換層で色変換し、着色層で色補正された後、透明基材の反対面側で観測される各色の発光について、CIE色度座標(JIS Z 8701)を測定した。
実施例の有機EL表示装置では、CIE色度座標でx=0.64、y=0.35の赤色発光、CIE色度座標でx=0.25、y=0.65の緑色発光、CIE色度座標でx=0.14、y=0.18の青色発光が確認され、高輝度(82cd/m)で色純度の高い三原色の画像表示が可能であった。
一方、比較例の有機EL表示装置では、CIE色度座標でx=0.62、y=0.37の赤色発光、CIE色度座標でx=0.27、y=0.63の緑色発光、CIE色度座標でx=0.14、y=0.18の青色発光が確認され、三原色の画像表示は可能であるものの、色純度がやや不十分で、輝度が80cd/mと低かった。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】本発明の有機EL素子用基板の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機EL素子用基板の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の有機EL素子用基板の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の有機EL素子用基板の他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の有機EL素子用基板の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の有機EL素子用基板の製造方法の一例を示す工程図である。
【図7】本発明の有機EL表示装置の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0187】
1 … 基板
2 … 色変換層
3 … 着色層
5 … 遮光部
6 … 平坦化層
10 … 有機EL素子用基板
12 … 色変換層形成用塗工液
20 … 有機EL表示装置
21 … 透明電極層
22 … 有機EL層
23 … 背面電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超微粒子および蛍光材料が溶剤に分散もしくは溶解された超微粒子分散液からなることを特徴とする色変換層形成用塗工液。
【請求項2】
前記超微粒子の焼結温度が350℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の色変換層形成用塗工液。
【請求項3】
前記超微粒子が、酸化インジウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の色変換層形成用塗工液。
【請求項4】
前記超微粒子が、インジウム、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の色変換層形成用塗工液。
【請求項5】
前記超微粒子の平均粒径が0.5nm〜100nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の色変換層形成用塗工液。
【請求項6】
前記溶剤の沸点が120℃以上であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の色変換層形成用塗工液。
【請求項7】
分散剤を含有することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の色変換層形成用塗工液。
【請求項8】
ガス雰囲気中で、かつ、蛍光材料および溶剤を含有する溶液の蒸気の存在下で超微粒子の構成成分を蒸発させ、前記超微粒子の構成成分の蒸気と前記溶液の蒸気とを接触させ、冷却捕集して、前記溶剤に超微粒子および蛍光材料が分散もしくは溶解した超微粒子分散液を得ることを特徴とする色変換層形成用塗工液の製造方法。
【請求項9】
基板と、前記基板上に形成され、超微粒子中に蛍光材料を分散させた色変換層とを有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
【請求項10】
前記超微粒子が、酸化インジウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることを特徴とする請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
【請求項11】
前記超微粒子が、表面が酸化された状態である、インジウム、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることを特徴とする請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
【請求項12】
前記超微粒子の平均粒径が0.5nm〜100nmの範囲内であることを特徴とする請求項9から請求項11までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
【請求項13】
前記色変換層が、赤色変換パターンのみ、緑色変換パターンのみ、あるいは、赤色変換パターンおよび緑色変換パターンのみから構成されていることを特徴とする請求項9から請求項12までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
【請求項14】
前記色変換層の膜厚が、0.5μm〜10μmの範囲内であることを特徴とする請求項9から請求項13までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
【請求項15】
前記基板と前記色変換層との間に、着色層が形成されていることを特徴とする請求項9から請求項14までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板。
【請求項16】
基板上に、請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の色変換層形成用塗工液を塗布し、焼成して、色変換層を形成する色変換層形成工程を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用基板の製造方法。
【請求項17】
前記色変換層形成工程にて、前記超微粒子が酸化しない雰囲気中で焼成し、その後、酸化性雰囲気中で焼成することを特徴とする請求項16に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板の製造方法。
【請求項18】
請求項9から請求項15までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用基板と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用基板上に形成された透明電極層と、前記透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層と、前記有機エレクトロルミネッセンス層上に形成された背面電極層とを有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−103099(P2007−103099A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289291(P2005−289291)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】