説明

色変換装置、画像出力装置及び色変換方法

【課題】低コストで、広色域色空間の画像信号の色変換をできるだけ正確に行うことがで
きる色変換装置、画像出力装置及び色変換方法を提供する。
【解決手段】第1の色空間の画像信号を、画像出力部90に対応した第2の色空間の画像
信号に変換する色変換装置10は、第1の色空間の画像信号を、第2の色空間の色域を包
含する色域を有する第3の色空間の画像信号に変換する第1の色変換部22と、第1の色
空間の所与の基準色に対応した第3の色空間の画像信号の精度を低下させることなく、該
第3の色空間の画像信号を第2の色空間の画像信号に変換する第2の色変換部24とを含
む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色変換装置、画像出力装置及び色変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置、プロジェクタ等の画像表示装置やカラープリンタ等の印刷装置に代
表される従来の画像出力装置の色域(色再現域)は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)
の蛍光体の特性に基づいて定められる等の要因により、実在する物体の色を十分に表現で
きるものではなかった。その一方、色再現技術の進歩により、色域を拡張した新たな画像
出力装置が市場に投入され、静止画や動画の処理には既に拡張色域色空間が使用されてい
る。
【0003】
そのため、より広い色域を扱うことができる色空間規格(色信号規格)が待望され、例
えばxvYCC(IEC61966−2−4)等の種々の広色域規格が制定されている。
特に、xvYCC色空間は、画像表示装置の標準的な色域空間を表現できるsRGB色空
間や、sRGB色空間より広色域なAdobeRGB色空間及びNTSC(National Tel
evision Standards Committee)色空間と比較して非常に広い色域を有しており、いわゆ
る虚色や実際の表現では使われないような色も理論上は表現可能になっている。
【0004】
このように画像を表現する画像信号を種々の色空間規格で規定できるため、画像入力装
置側の画像信号の色域と画像出力装置側の画像信号の色域とが異なる場合がある。この場
合、画像入力装置側からの画像信号に対して色変換処理を行って、画像出力装置側の色空
間規格において色再現性を確保している。
【0005】
この種の色変換処理を行う色変換装置については、例えば特許文献1に開示されている
。この特許文献1には、輝度色差系のYCC信号を表示信号系のRGB信号に変換する際
に、RGB色調整LUT(Look Up table)の利用効率を高めるために、行列演算でYC
C信号をRGB信号に変換してからRGB色調整LUTを参照して色変換を行う技術が開
示されている。
【0006】
また、特許文献2には、入力装置依存の色空間の入力色信号を装置非依存の色空間に変
換し、装置非依存の色空間に変換された色信号を一般的入力装置における色再現域を包含
する仮想入力色空間内に変換し、仮想入力色空間に変換された色信号を、CLUTを用い
て出力装置依存の色空間に変換する技術が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2007−251709号公報
【特許文献2】特開2007−288590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、RGB色調整LUTを用いて色変換
を行うため、LUTの格子点数が少ない場合には色変換処理の精度が低下する。従って、
正確な色変換を行うためにはLUTの格子点数を増やさざるを得ず、コスト高を招くとい
う問題がある。
【0009】
また、特許文献2に開示された技術では、仮想入力色空間の最大彩度点が、CLUTの
格子点と一致するように定義されているが、入力装置依存から装置非依存の色空間への変
換、および装置非依存の色空間から仮想入力色空間への変換の過程においては、入力色空
間の最大彩度点がCLUTの格子点と一致するように定義されていないため、入力色空間
の最大彩度点については補間演算による誤差が発生するという問題がある。
【0010】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、
低コストで、広色域色空間の画像信号の色変換をできるだけ正確に行うことができる色変
換装置、画像出力装置及び色変換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、第1の色空間の画像信号を、画像出力部に対応し
た第2の色空間の画像信号に変換する色変換装置であって、前記第2の色空間の色域を包
含する色域を有する第3の色空間における複数の格子点に対応する画像信号を前記第2の
色空間の画像信号に変換するときに用いる色変換データが記憶された色変換テーブルが保
存される色変換テーブル保存部と、前記第1の色空間の画像信号を、前記第3の色空間の
画像信号に変換する第1の色変換部と、前記色変換テーブルに記憶された前記色変換デー
タに基づいて、前記第3の色空間の画像信号を前記第2の色空間の画像信号に変換する第
2の色変換部と、を含み、前記第1の色変換部は、前記第1の色空間における所与の基準
色に対応した画像信号を、前記第3の色空間における前記格子点に対応する画像信号に変
換する色変換装置に関係する。
【0012】
本発明によれば、第1の色変換部により、第1の色空間の画像信号を、第2の色空間の
色域を包含する色域を有する第3の色空間の画像信号に変換した後、第1の色空間の所与
の基準色に対応した第3の色空間の画像信号の精度を低下させることなく画像信号の変換
を行う第2の色変換部により、該第3の色空間の画像信号を第2の色空間の画像信号に変
換するようにしたので、広域色空間の画像信号が入力された場合であっても小規模で正確
に色変換を行うことができるようになる。
【0013】
また、本発明によれば、基準色に対応した第1の色空間の画像信号が第3の色空間にお
ける格子点の画像信号に変換されるように、第1の色空間の画像信号を第3の色空間の画
像信号に変換し、第2の色変換部が、色変換テーブルに記憶された色変換データに基づい
て、第3の色空間の画像信号を第2の色空間の画像信号に変換するようにしたので、少な
いデータ量の色変換テーブルであっても、基準色については正確な色変換を行うことがで
きるようになる。
【0014】
また本発明に係る色変換装置では、前記第1の色変換部は、所与の色変換行列を用いて
行列演算により、前記第1の色空間の画像信号を前記第3の色空間の画像信号に変換する
ことができる。
【0015】
本発明によれば、第1の色変換部において精度を低下させることなく第3の色空間の画
像信号に変換できるので、広域色空間の画像信号に対する小規模な色変換の変換精度の低
下を抑えることができるようになる。
【0016】
また本発明に係る色変換装置では、前記色変換行列を生成する色変換行列生成部を含み
、前記色変換行列生成部は、前記色変換テーブルに記憶された前記基準色に対応する画像
信号を選択し、選択した画像信号の色域が前記第2の色空間の色域を含有するように前記
色変換行列を生成することができる。
【0017】
本発明によれば、広域色空間の画像信号が入力された場合であっても、簡素な構成で、
画像表示部の特性に応じて、小規模で正確な色変換を行うことができる色変換装置を提供
できるようになる。
【0018】
また本発明に係る色変換装置では、前記色変換行列生成部は、前記選択した画像信号の
色域が前記第2の色空間の色域を含有するまで、前記色変換テーブルに記憶された前記基
準色に対応する画像信号を選択して前記色変換行列を生成することを繰り返すことができ
る。
【0019】
本発明によれば、広域色空間の画像信号が入力された場合であっても、小規模で、確実
に正確な色変換を行うことができる色変換装置を提供できるようになる。
【0020】
また本発明に係る色変換装置では、前記基準色は、前記第1の色空間の原色であっても
よい。
【0021】
本発明によれば、低コストで、比較的使用頻度の高い第1の色空間の原色の色再現性が
高い色変換装置を提供できるようになる。
【0022】
また本発明は、上記のいずれか記載の色変換装置と、前記色変換装置によって色変換処
理が行われた画像信号に基づいて画像出力を行う画像出力部とを含む画像出力装置に関係
する。
【0023】
本発明によれば、低コストで、広色域色空間の画像信号の色変換をできるだけ正確に行
うことができる画像出力装置を提供できるようになる。
【0024】
また本発明は、第1の色空間の画像信号を、画像出力部に対応した第2の色空間の画像
信号に変換する色変換方法であって、前記第1の色空間の画像信号を、前記第2の色空間
の色域を包含する色域を有する第3の色空間の画像信号に変換する第1の色変換ステップ
と、前記第3の色空間における複数の格子点に対応する画像信号を前記第2の色空間の画
像信号に変換するときに用いる色変換データが記憶された色変換テーブルに記憶された前
記色変換データに基づいて、前記第3の色空間の画像信号を前記第2の色空間の画像信号
に変換する第2の色変換ステップと、を含み、前記第1の色変換ステップは、前記第1の
色空間における所与の基準色に対応した画像信号を、前記第3の色空間における前記格子
点に対応する画像信号に変換する色変換方法に関係する。
【0025】
本発明によれば、低コストで、広色域色空間の画像信号の色変換をできるだけ正確に行
うことができる色変換方法を提供できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明す
る実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではな
い。また以下で説明される構成のすべてが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0027】
1. 色変換装置
図1に、本発明に係る実施形態における色変換装置の構成例のブロック図を示す。
本実施形態における色変換装置10は、図示しない画像信号生成装置(広義には画像入
力装置)からの入力画像信号(画像信号)に対して色変換処理を行い、色変換処理後の画
像信号を画像出力部90に出力する。画像出力部90は、色変換装置からの画像信号に対
応した画像を出力する。この際、色変換装置10は、第1の色空間の画像信号を画像出力
部90(画像出力装置)に対応した第2の色空間の画像信号に変換し、変換後の画像信号
を画像出力部90に出力する。
【0028】
このような色変換装置10は、色変換処理部20を含み、色変換処理部20は、第1の
色変換部22及び第2の色変換部24を含む。第1の色変換部22は、画像信号生成装置
(図示せず)からの第1の色空間の入力画像信号(画像信号)を、第2の色空間の色域を
包含する色域を有する第3の色空間の画像信号に変換する。第2の色変換部24は、第1
の色変換部22によって色変換された第3の色空間の画像信号を、第2の色空間の画像信
号に変換する。
【0029】
図2に、本実施形態の画像信号の色空間の説明図を示す。図2は、縦軸に輝度成分のY
信号、横軸に色差成分のCb信号、Cr信号を表す。
【0030】
本実施形態において、第1の色空間は、例えばsYCC色空間やxvYCC色空間等の
sRGB色空間外の色を含む色空間であり、この色空間における輝度色差系の画像信号で
あるYCC信号が色変換装置10に入力される。第2の色空間は、画像出力部90で再現
可能な色域を有する色空間であり、この色空間におけるRGB信号が画像出力部90に供
給される。第3の色空間は、例えば画像出力部90で再現可能な色空間よりも広い所与の
広域RGB色空間であって、第2の色空間の色域を包含する色域を有する。
【0031】
即ち、図2において、第1の色空間の入力画像信号としてのYCC信号の色域C1に対
し、ITU−R BT.709などで定義された一般的なYCC→RGB変換を行うと、
変換後のRGB信号はC3のようになり、画像出力部90の色域C2より狭い色域となる
。従って、画像出力部90により表示可能な色域は、本来の色域C2よりも狭く、YCC
信号の色域をすべて表示することができない。
【0032】
そこで、本実施形態では、第3の色空間の広域RGB色空間の画像信号(以下、広域R
GB信号)の色域C4を設け、第1の色変換部22により入力画像信号としてのYCC信
号を、色域C4の広域RGB信号に変換する。そして、第2の色変換部24は、色域C4
の広域RGB信号を、色域C2のRGB信号に変換する。こうすることで、図2の斜線部
に示す色域が、画像出力部90で表示可能な色域となり、この領域のYCC信号(YCb
Cr信号)が画像出力部90で表示可能な信号とすることができる。
【0033】
ところで、このような色変換処理は非線形変換であるため、テーブルとして用意された
色変換データを参照して画像信号の変換処理が行われる。色変換データは離散的なデータ
として用意せざるを得ず、色変換処理を高精度で実現するためには、第3の色空間におけ
る格子点が記憶される色変換テーブルの格子点数を多く用意しておく必要がある。そのた
め、用意すべき色変換データのデータ量は膨大な量となる。
【0034】
そこで、本実施形態では、できるだけ小さい規模(少ないデータ量)で、高精度に色変
換処理を行うために、第1の色変換部22は、1対1変換によって第1の色空間の画像信
号を変換して画像信号の精度を低下させることなく第3の色空間の画像信号を出力し、第
2の色変換部24は、一部の画像信号の精度の低下を許容しつつ、第3の色空間の画像信
号を第2の色空間の画像信号に変換して出力する。より具体的には、第2の色変換部24
は、第1の色空間の所与の基準色に対応した第3の色空間の画像信号の精度を低下させる
ことなく該第3の色空間の画像信号を第2の色空間の画像信号に変換する。
【0035】
このような第1の色変換部22の処理は、例えば行列演算によって画像信号を変換する
ことによって実現される。また、第2の色変換部24の処理は、例えば色変換テーブルを
用いて必要に応じて補間処理を行って画像信号を変換することによって実現される。
【0036】
即ち、第2の色変換部24は、第1の色空間の所与の基準色に対応した第3の色空間の
画像信号については補間処理を行うことなく該第3の色空間の画像信号を第2の色空間の
画像信号に変換し、上記の基準色以外の他の色に対応した第3の色空間の画像信号につい
ては適宜補間処理を行って該第3の色空間の画像信号を第2の色空間の画像信号に変換す
る。例えば、基準色として、第1の色空間の色のうち使用頻度が高く、色変換精度を重視
する原色(例えばsRGBの原色)を採用することができる。
【0037】
図3に、本実施形態における色変換データの説明図を示す。図3は、縦軸に輝度成分の
Y信号、横軸に色差成分のCb信号、Cr信号を表し、図2と同様の部分には同一符号を
付し、適宜説明を省略する。
【0038】
図3に示すように、色変換データは、色域C4を網羅するように離散的に設けられた格
子点に設定される。第2の色変換部24で用いられる色変換テーブルは、この格子点毎に
設けられた色変換データ群であり、テーブルの格子点に、第3の色空間の画像信号に対応
した第2の色空間の画像信号に変換するための色変換データが記憶される。従って、格子
点以外の画像信号について、近傍の格子点に設けられた色変換データを用いた公知の補間
処理で求められた色変換データに基づいて色変換が行われる。
【0039】
このように、第1の色空間の所与の基準色に対応した第3の色空間の画像信号について
は補間処理を行うことなく該第3の色空間の画像信号を第2の色空間の画像信号に変換す
るために、第2の色空間の色域を包含する色域を有する第3の色空間における複数の格子
点に対応する画像信号を第2の色空間の画像信号に変換するときに用いる色変換データが
記憶された色変換テーブルを用意しておき、第1の色変換部22が、第1の色空間の画像
信号を第3の色空間の画像信号に変換すると共に、第1の色変換部22は、第1の色空間
における所与の基準色に対応した画像信号を第3の色空間における格子点に対応する画像
信号に変換する。そして、第2の色変換部24が、色変換テーブルに記憶された色変換デ
ータに基づいて、第3の色空間の画像信号を第2の色空間の画像信号に変換する。
【0040】
こうすることで、第2の色変換部24は、精度を低下させることなく得られた、画像出
力部90の色域よりも広域の色域を有する第3の色空間の画像信号から、第2の色空間の
画像信号に変換でき、sYCCやxvYCC等のsRGB外の色を含むYCC信号が入力
された場合であっても、より高精度に色変換処理が行うことができるようになる。また、
色変換テーブルに記憶される色変換データのデータ量が少ない場合であっても、使用頻度
の高い基準色については補間処理で色変換を行わなくて済むため、正確に色変換を行うこ
とができるようになる。
【0041】
このような色変換装置10は、図1に示すように、更にテーブル生成部40を含み、色
変換処理部20は、更に、色変換行列保存部26、色変換テーブル保存部28を含むこと
ができる。テーブル生成部40は、色変換行列生成部42、色変換テーブル生成部44、
画像出力部色特性保存部50を含む。
【0042】
テーブル生成部40は、画像出力部90の色域に対応して、色変換処理部20による色
変換処理を実現するための第1の色変換部22で用いる色変換行列を生成すると共に、第
2の色変換部24で用いる色変換テーブルを生成する。画像出力部色特性保存部50は、
画像出力部90の色特性データを保存する。この色特性データは、画像出力部90により
出力された画像を例えば色変換装置10が内蔵する色測定部としての測光センサにより測
定した測定データ、又は画像出力部90が内蔵する色特性データをそのまま受け取ったデ
ータである。
【0043】
色変換行列生成部42は、画像出力部色特性保存部50に保存された色特性データを用
いて、色変換行列を生成する。色変換行列生成部42によって生成された色変換行列は、
色変換行列保存部26に保存される。第1の色変換部22は、色変換行列保存部26に保
存される色変換行列を用いて、色変換処理を行う。
【0044】
図4に、図1の色変換行列生成部42の構成例のブロック図を示す。
【0045】
色変換行列生成部42は、基準色選択部60、行列生成部62、色空間判定部64を含
む。基準色選択部60は、第1の色空間の色のうち使用頻度が高く、色変換精度を重視す
る色を選択する。本実施形態では、基準色選択部60は、原色(例えばsRGBの原色)
を選択する。行列生成部62は、基準色選択部60によって選択された原色に対応した画
像信号が、第3の色空間における格子点の画像信号に変換される色変換行列を生成する。
色空間判定部64は、行列生成部62によって生成された色変換行列により変換される広
域RGB信号の色域が、画像出力部90の色域を包含するか否かを判定する。色空間判定
部64により、行列生成部62によって生成された色変換行列により変換される広域RG
B信号の色域が画像出力部90の色域を包含すると判定されるまで、行列生成部62が色
変換行列の生成を繰り返す。
【0046】
図1において、色変換テーブル生成部44は、画像出力部色特性保存部50に保存され
た色特性データを用いて、色変換テーブルを生成する。色変換テーブル生成部44によっ
て生成された色変換テーブルは、色変換テーブル保存部28に保存される。第2の色変換
部24は、色変換テーブル保存部28に保存される色変換テーブルを用いて、色変換処理
を行う。
【0047】
図5(A)、図5(B)に、本実施形態における色変換テーブルの説明図を示す。図5
(A)は、広域RGB信号をRGB信号に変換する色変換テーブルの説明図を表す。図5
(A)において、広域RGB信号のR成分の信号をR’信号、G成分の信号をG’信号、
B成分の信号をB’信号として表す。図5(B)は、本実施形態における色変換テーブル
を表す。
【0048】
第2の色変換部24には、広域RGB信号が入力され、該広域RGB信号に対応したR
GB信号を出力する。このとき、色変換テーブルの格子点には広域RGB信号の色空間に
おける格子点が記憶され、該格子点の色変換データを用いて、入力された広域RGB信号
に対応したRGB信号を出力する。即ち、色変換テーブルの格子点に、図5(A)に示す
ように、離散的に設けられたR’信号、G’信号及びB’信号の組み合わせ(R’,G’
,B’)で定義される格子点に対し、該格子点に設けられたR信号、G信号及びB信号の
組み合わせ(R,G,B)を出力する。そのため、色変換テーブル保存部28には、例え
ば図5(B)に示すような格子点の色変換データ群が色変換テーブルとして保存される。
【0049】
図5(A)、図5(B)に示すような格子点の広域RGB信号が与えられたとき、第2
の色変換部24は、該広域RGB信号に対応して保存されたRGB信号を出力すればよい
ため、第1の色空間の所与の基準色に対応した第3の色空間の画像信号については補間処
理を行うことなく該第3の色空間の画像信号を第2の色空間の画像信号に変換することが
できる。一方、格子点以外の広域RGB信号が与えられたとき、第2の色変換部24は、
該広域RGB信号の近傍の格子点に対応して保存されたRGB信号を用いて公知の補間処
理で補間して求められたRGB信号を出力する。
【0050】
なお、図1では、色変換装置10が色変換処理部20とテーブル生成部40とを含むも
のとして説明するが、テーブル生成部40が色変換装置10の外部に設けられてもよい。
【0051】
以下では、本実施形態における色変換装置10の処理例について説明する。
【0052】
図6に、図1の色変換装置10のハードウェア構成例のブロック図を示す。
【0053】
色変換装置10は、CPU200、I/F回路210、読み出し専用メモリ(Read Onl
y Memory:ROM)220、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)
230、バス240を有し、バス240を介して、CPU200、I/F回路210、R
OM220、RAM230は電気的に接続されている。
【0054】
例えばROM220には、色変換装置10の機能を実現するプログラムが記憶される。
CPU200は、ROM220に記憶されたプログラムを読み出し、該プログラムに対応
した処理を実行することで、上述の色変換装置10の機能をソフトウェア処理で実現でき
る。RAM230は、CPU200による処理の作業エリアとして用いられたり、I/F
回路210やROM220のバッファエリアとして用いられたりする。また、RAM23
0には、色変換行列や色変換テーブルが保存される。I/F回路210は、図示しない画
像信号生成装置からの画像信号の入力インタフェース処理を行う。
【0055】
図1の第1の色変換部22、第2の色変換部24、色変換行列生成部42及び色変換テ
ーブル生成部44の機能は、ROM220に記憶されたプログラムを読み出して実行する
CPU200により実現される。図1の色変換行列保存部26、色変換テーブル保存部2
8、画像出力部色特性保存部50の機能は、RAM230により実現される。
【0056】
図7に、図1の色変換装置10の処理例のフロー図を示す。
【0057】
図6のROM220において、予め図7に示す処理を実現するためのプログラムが格納
されており、CPU200がROM220に格納されたプログラムを読み出して該プログ
ラムに対応した処理を実行することで、図7に示す処理をソフトウェア処理により実現で
きる。
【0058】
まず、色変換装置10は、色測定ステップとして、色測定部としての測光センサ等の測
定手段により画像出力部90の色特性データを測定し、画像出力部色特性保存部50に該
色特性データを保存する(ステップS10)。ここで、色特性データは、画像出力部90
に所与の測定用画像信号を入力したときの出力光のCIE 1931表色系(CIE 1931 St
andard Colorimetric system、XYZ表色系)の三刺激値(X,Y,Z)とすることがで
きる。測定する色は、画像出力部90により表示したい色の三刺激値X,Y,Zから、そ
の色を表示するための測定用画像信号を求めるのに必要な色である。即ち、後述するよう
にXYZ表色系の三刺激値(X,Y,Z)からRGB表色系の三刺激値(R,G,B)を
求めるために必要な色だけ測定する必要がある。本実施形態では、少なくとも画像出力部
90の各原色について測定する。
【0059】
次に、色変換装置10は、色変換行列生成ステップとして、色変換行列生成部42にお
いて、入力画像信号としてのYCC信号を広域RGB信号に変換するための色変換行列を
生成し、色変換行列保存部26に保存する(ステップS12)。より具体的には、色変換
行列生成部42には、画像出力部色特性保存部50から読み出された色特性データと、色
変換テーブルの格子点の座標(例えば固定値)が入力され、入力画像信号の基準色(sR
GBの原色)が第2の色変換部24で参照する色変換テーブルの格子点(広域RGB信号
の色空間における格子点)の座標に変換されるように広域RGB信号を定義する色変換行
列を生成する。色変換行列生成部42によって生成された色変換行列は、色変換行列保存
部26に保存される。
【0060】
続いて、色変換装置10は、色変換テーブル生成ステップとして、色変換テーブル生成
部44において、広域RGB信号を画像出力部90用のRGB信号に変換するための色変
換テーブルを生成し、色変換テーブル保存部28に保存する(ステップS14)。より具
体的には、色変換テーブル生成部44には、画像出力部色特性保存部50から読み出され
た色特性データと、色変換テーブルの格子点の座標(例えば固定値)が入力され、広域R
GB信号をRGB信号に変換するための色変換テーブルを生成する。色変換テーブル生成
部44によって生成された色変換テーブルは、色変換テーブル保存部28に保存される。
【0061】
以上のステップS10、ステップS12、ステップS14は、色変換装置10の電源投
入直後の初期化シーケンスで一度実行すれば良く、その後は、ステップS12で生成され
た色変換行列及びステップS14で生成された色変換テーブルを用いて、色変換装置10
が、図示しない画像信号生成装置からの画像信号に対する色変換処理を行う。
【0062】
その後、色変換装置10は、図示しない画像信号生成装置からの入力画像信号の入力を
受け付ける(ステップS16)。入力画像信号が入力されると、色変換装置10は、第1
の色変換ステップとして、第1の色変換部22において、色変換行列保存部26から読み
出された色変換行列を用いて入力画像信号を広域RGB信号に変換する(ステップS18
)。本実施形態では、色変換行列を用いた行列演算によって、すべての入力画像信号の精
度を低下させることなく広域RGB信号に変換される。このとき、入力画像信号の基準色
に対応した画像信号については、第2の色変換部24で参照される色変換テーブルの格子
点の座標に対応した広域RGB信号に変換される。
【0063】
そして、色変換装置10は、第2の色変換ステップとして、第2の色変換部24におい
て、第1の色変換部22において変換された広域RGB信号を、色変換テーブル保存部2
8から読み出された色変換データを用いて画像出力部90用のRGB信号に変換する(ス
テップS20)。本実施形態では、基準色を含む格子点数分の色に対応した画像信号につ
いては広域RGB信号の色空間における格子点に変換されるため、基準色を含む格子点数
分の色に対応した画像信号については、色変換テーブルの色変換データを補間することな
く正確な色変換が行われ、その他の色に対応した画像信号については、色変換テーブルの
色変換データを補間して色変換が行われる。
【0064】
続いて、色変換装置10は、第2の色変換部24によって変換されたRGB信号を画像
出力部90に出力する(ステップS22)。その後、色変換装置10に対し、図示しない
画像信号生成装置からの次の画像信号の有無を判別し(ステップS24)、次の画像信号
があると判別されたとき(ステップS24:Y)、ステップS16に戻り、次の画像信号
がないと判別されたとき(ステップS24:N)、一連の処理を終了する(エンド)。
【0065】
図8に、図7のステップS12の色変換行列生成処理の処理例のフロー図を示す。
【0066】
図6のROM220において、予め図8に示す処理を実現するためのプログラムが格納
されており、CPU200がROM220に格納されたプログラムを読み出して該プログ
ラムに対応した処理を実行することで、図8に示す処理をソフトウェア処理により実現で
きる。
【0067】
まず、色変換行列生成部42は、基準色選択部60において、図示しない画像信号生成
装置からの入力画像信号の中から色変換精度を重視する基準色を3色選択する(ステップ
S30)。例えば、基準色選択部60は、入力画像信号としてのYCC信号をビデオ信号
規格ITU−R(International Telecommunication Union-Radiocommunication Sector
:国際電気通信連合) BT.709でRGB信号に変換したときの三原色(sRGBの
三原色)を基準色として選択する。
【0068】
次に、色変換行列生成部42は、行列生成部62において、ステップS30で選択した
基準色に対応する広域RGB信号を決定する(ステップS32)。即ち、行列生成部62
は、第2の色変換部24で参照する色変換テーブルの格子点の座標に対応する広域RGB
信号の中から、ステップS30で選択した各基準色に対応する広域RGB信号を選択する

【0069】
続いて、色変換行列生成部42は、行列生成部62において、以下の式(1)に従って
、入力画像信号を広域RGB信号に変換する色変換行列MYCC→R'G'B'を生成する(ステ
ップS34)。
【0070】
【数1】

【0071】
上式において、Yi,Cbi,Cri(i=1,2,3)は基準色のYCC信号であり
、Yiが輝度成分の信号、Cbi,Criが色差成分の信号である。Ri’、Gi’、B
’i(i=1,2,3)は基準色に対応する広域RGB信号であり、Ri’がR成分の画
像信号、Gi’がG成分の画像信号、B’iがB成分の画像信号である。
【0072】
なお、式(1)において、ステップS30のように、基準色として、YCC信号をビデ
オ信号規格ITU−R BT.709でRGB信号に変換したときの三原色を選択したと
き、色変換行列MYCC→R'G'B'は、以下の式(2)のようになる。
【0073】
【数2】

【0074】
なお、上式において、行列MBT709RGB→YCCは、RGB信号からYCC信号への変換行
列であり、ビデオ信号規格ITU−R BT.709で規定されている。
【0075】
続いて、色変換行列生成部42は、色空間判定部64において、ステップS32及びス
テップS34により定義された広域RGB信号の色域が、画像出力部90の色域を包含す
るか否かを判定する(ステップS36)。これは、上記のように求められる色変換行列M
YCC→R'G'B'によっては、変換後の広域RGB信号が画像出力部90の色域外になり、正
確な色再現ができない場合があるからである。そこで、本実施形態では、色空間判定部6
4による色空間の判定を行うことで、正確な色再現を確実に実現する。
【0076】
ステップS36において、色空間判定部64が、広域RGB信号の色域が画像出力部9
0の色域を包含していないと判定したとき(ステップS36:N)、ステップS32に戻
り、行列生成部62が、基準色に対応する別の広域RGB信号を改めて選択する。このと
き、行列生成部62は、式(1)の3点の広域RGB信号を表す行列のうち対角成分の要
素の値を小さくし、対角成分の要素の値の減少分を非対角成分の要素に振り分けて、別の
広域RGB信号を改めて決定することが望ましい。こうすることで、次の選択対象となる
広域RGB信号の色域を狭める一方、該広域RGB信号の色域ができるだけ広い領域を有
した状態で画像出力部90の色域を包含させることができるようになる。
【0077】
一方、ステップS36において、色空間判定部64が、広域RGB信号の色域が画像出
力部90の色域を包含していると判定したとき(ステップS36:Y)、色変換行列保存
部26は、ステップS34で生成された色変換行列を保存し(ステップS38)、一連の
処理を終了する(エンド)。
【0078】
以上のような判定処理を行う色空間判定部64は、広域RGB信号の三原色のXYZ表
色系のxy色度と、画像出力部90の三原色のXYZ表色系のxy色度を求め、xy色度
図における両者の包含関係に基づいて判定する。広域RGB信号の三原色のxy色度は、
以下の式(3)〜式(5)を用いて求めることができる。画像出力部90の三原色のxy
色度は、図7のステップS10において、画像出力部色特性保存部50に保存された色特
性データにより求めることができる。
【0079】
【数3】

【0080】
【数4】

【0081】
【数5】

【0082】
式(3)において、行列MBT709YCC→RGBは、YCC信号からRGB信号への変換行列
であり、式(2)の行列MBT709RGB→YCCの逆行列である。式(4)において、行列MsRG
B→YCCは、sRGB信号から三刺激値(X,Y,Z)への変換行列であり、ビデオ信号規
格ITU−R BT.709で規定されている。式(4)は、ガンマ変換後のRGB信号
を三刺激値(X,Y,Z)に変換する式を表す。式(4)では、rC(C=R’,G’,
B’)のみを示すが、gC,bCについても同様である。式(5)は、XYZ表色系のxy
色度を求める式を表す。
【0083】
図9に、図8のステップS36における行列生成部62の動作説明図を示す。
【0084】
図9に示すように、入力画像信号として入力されたYCC信号(Y,Cb,Cr)を広
域RGB信号(R’,G’,B’)に変換する色変換行列MYCC→R'G'B'が所望の色変換
行列であるか否かを判別するために、式(3)は、広域RGB信号の三原色をYCC信号
に変換してからRGB信号に変換する処理を実現する。そして、式(4)は、式(3)に
よって変換されたRGB信号を三刺激値(X,Y,Z)に変換する処理を実現する。三刺
激値(X,Y,Z)に変換されると、式(5)に従ってxy色度が求められる。
【0085】
図10(A)、図10(B)に、図8のステップS36における色空間判定部64の動
作説明図を示す。図10(A)、図10(B)は、XYZ表色系のxy色度図を表す。
【0086】
図10(A)、図10(B)において、P1〜P3は、広域RGB信号の三原色のxy
色度を示し、P1〜P3に囲まれる領域が広域RGB信号の色域Z1、Z2となる。また
、Q1〜Q3は、画像出力部90の三原色のxy色度を示し、Q1〜Q3に囲まれる領域
が画像出力部90の色域W1となる。
【0087】
図10(A)では、色域Z1が色域W1を包含していない。従って、図8のステップS
36において、色空間判定部64は、広域RGB信号の色域が画像出力部90の色域を包
含していないと判定する。一方、図10(B)では、色域Z1が色域W1を包含している
。従って、図8のステップS36において、色空間判定部64は、広域RGB信号の色域
が画像出力部90の色域を包含していると判定する。
【0088】
以上のように、本実施形態における色変換行列生成部42は、色変換テーブルの格子点
に記憶された基準色に対応する画像信号を選択し、選択した画像信号の色域が第2の色空
間の色域を含有するように色変換行列を生成することができる。より具体的には、色変換
行列生成部42は、色変換テーブルの格子点に記憶された基準色に対応する画像信号を選
択し、選択した画像信号の色域が第2の色空間の色域を含有するまで、色変換テーブルの
格子点に記憶された基準色に対応する画像信号を選択して色変換行列を生成することがで
きる。
【0089】
図11に、図7のステップS14の色変換テーブル生成処理の処理例のフロー図を示す

【0090】
図6のROM220において、予め図11に示す処理を実現するためのプログラムが格
納されており、CPU200がROM220に格納されたプログラムを読み出して該プロ
グラムに対応した処理を実行することで、図11に示す処理をソフトウェア処理により実
現できる。
【0091】
まず、色変換テーブル生成部44は、色変換テーブルの格子点の1つの座標値(R’,
G’,B’)である広域RGB信号の値を取り込む(ステップS40)。そして、色変換
テーブル生成部44は、式(6)に従って、ステップS40で取り込まれた座標値(R’
,G’,B’)である広域RGB信号を、sRGB色空間のRGB信号に変換する(ステ
ップS42)。
【0092】
【数6】

【0093】
ここで、色変換テーブルの格子点の1つの座標値(R’,G’,B’)である広域RG
B信号を変換したsRGB色空間のRGB信号に対応した色が、画像出力部90の色域内
に存在しない場合がある。そこで、本実施形態では、色変換テーブル生成部44は、広域
RGB信号を変換したsRGB色空間のRGB信号に対応した色が、画像出力部90の色
域内の色に割り当てる色圧縮処理を行う。本実施形態では、色圧縮処理後の画質の劣化を
抑えるために、ステップS42で変換したsRGB色空間のRGB信号をCIELUV色
空間(CIE1976L***色空間)の色L***に変換し、CIELUV色空間に
おいて色圧縮処理を行う。
【0094】
従って、色変換テーブル生成部44は、ステップS42で求めたsRGB色空間のRG
B信号を、式(7)に従って、三刺激値(X,Y,Z)に変換する(ステップS44)。
【0095】
【数7】

【0096】
式(7)は、ガンマ変換後のRGB信号を三刺激値(X,Y,Z)に変換する式を表す
。式(7)では、rのみを示すが、g,bについても同様である。
【0097】
続いて、色変換テーブル生成部44は、ステップS44で求めた三刺激値(X,Y,Z
)をCIELUV色空間の値L***に変換する(ステップS46)。色変換テーブル
生成部44は、ステップS46における変換処理を、式(8)〜式(11)に従って行う

【0098】
【数8】

【0099】
式(8)において、XW,YW,ZWは、目標色空間であるCIELUV色空間における
白の三刺激値X,Y,Zである。
【0100】
その後、色変換テーブル生成部44は、ステップS46で変換したCIELUV色空間
の値L***を用いて、色圧縮処理を行う(ステップS48)。
【0101】
図12に、図11のステップS48の色圧縮処理の動作説明図を示す。図12において
、横軸にu*、縦軸にv*、縦軸と横軸の交点にL*軸を表し、広域RGB信号の色域G1
の内側にある色を画像出力部90の色域G2内の色を割り当てる様子を示している。
【0102】
図12に示すように、ステップS46の変換処理によって、CIELUV色空間の色F
1に変換された場合、色変換テーブル生成部44は、広域RGB信号の色域G1の内側の
色F2に割り当てるように色圧縮処理を行う。より具体的には、色変換テーブル生成部4
4は、色相を維持したまま、彩度を低下させて色F2に割り当てる。こうすることで、色
圧縮処理後の色相を変化させることがないため、色圧縮処理後の画質の劣化を目立たなく
することができるようになる。
【0103】
なお、ステップS48では、図12に示すような処理に限定されるものではなく、中心
のL*軸からの距離に応じて、色F1を画像出力部90の色域G2内の色に割り当てるよ
うにしてもよい。
【0104】
図11において、ステップS48の色圧縮処理後に、色変換テーブル生成部44は、ス
テップS48の色圧縮処理後のCIELUV色空間の色L***を、三刺激値(X,Y
,Z)に変換する(ステップS50)。より具体的には、色変換テーブル生成部44は、
式(12)〜式(14)に従って、CIELUV色空間の色L***を、三刺激値(X
,Y,Z)に変換する。
【0105】
【数9】

【0106】
その後、色変換テーブル生成部44は、ステップS52で求めた色圧縮処理後の色の三
刺激値(X,Y,Z)を、画像出力部90で出力するためのsRGB色空間のRGB信号
(Rd,Gd,Bd)に変換する(ステップS52)。より具体的には、色変換テーブル生
成部44は、式(15)に従って、sRGB色空間のRGB信号(Rd,Gd,Bd)に変
換する。
【0107】
【数10】

【0108】
式(15)において、三刺激値(Xd,Yd,Zd)は、ステップS50で求められた三
刺激値(X,Y,Z)である。また、行列MXYZ→RGBdは、図7のステップS10で測定
した色測定データに基づいて、三刺激値(X,Y,Z)を画像出力部90のRGB信号(
d,Gd,Bd)に変換するための行列である。即ち、行列MXYZ→RGBdは、図7のステッ
プS10で測定した色測定データに基づいて求められる。
【0109】
そして、色変換テーブル生成部44は、ステップS52で求めたRddd変換後のR
GB信号を、格子点座標(R’,G’,B’)に対応した色変換テーブルの出力値として
出力する(ステップS54)。
【0110】
色変換テーブルの格子点のうち未計算の格子点があるとき(ステップS56:Y)、色
変換テーブル生成部44は、ステップS40に戻る。一方、色変換テーブルの格子点のう
ち未計算の格子点がないとき(ステップS56:N)、これまで求めた出力値を用いて色
変換テーブル保存部28に保存し(ステップS58)、一連の処理を終了する(エンド)
。なお、ステップS58では、例えば図5(B)に示すように、広域RGB信号とステッ
プS54で求めた出力値とを関連付けて色変換テーブル保存部28に保存することが望ま
しい。
【0111】
以上説明したように、本実施形態では、色変換装置10の第1の色変換部22は、1対
1変換によって第1の色空間の画像信号を変換して画像信号の精度を低下させることなく
第3の色空間の画像信号を出力する。そして、第2の色変換部24は、第1の色空間の所
与の基準色に対応した第3の色空間の画像信号については補間処理を行うことなく該第3
の色空間の画像信号を第2の色空間の画像信号に変換し、上記の基準色以外の他の色に対
応した第3の色空間の画像信号については適宜補間処理を行って該第3の色空間の画像信
号を第2の色空間の画像信号に変換する。このとき、第1の色変換部22は、この基準色
に対応した第1の色空間の画像信号が、第2の色変換部24で用いる色変換テーブルの格
子点の第3の色空間の画像信号に変換されるように、第1の色空間の画像信号を第3の色
空間の画像信号に変換することができる。
【0112】
こうすることで、色変換装置10にsYCCやxvYCC等のsRGB外の色を含むY
CC信号が入力された場合であっても、より高精度に色変換処理が行うことができるよう
になる。また、色変換テーブルに記憶される色変換データのデータ量が少ない場合であっ
ても、使用頻度の高い基準色については補間処理で色変換を行わなくて済むため、正確に
色変換を行うことができるようになる。
【0113】
2. 画像出力装置
上述した本実施形態における色変換装置10は、以下のような画像出力装置に適用する
ことができる。
【0114】
図13に、本実施形態における画像出力装置の構成例のブロック図を示す。図13にお
いて、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0115】
本実施形態における画像出力装置300は、上記の色変換装置10と、画像出力部90
とを含むことができる。画像出力部90は、色変換装置10によって色変換処理が行われ
た画像信号に基づいて画像を出力する。図13では、画像出力部90は、スクリーンSC
Rに、画像信号に対応した画像を投影する。
【0116】
このような画像出力部90は、光源を含み、光源からの光を画像信号に基づいて変調し
、変調後の光を用いてスクリーンSCRに投影する。
【0117】
図14に、図13の画像出力部90の構成例を示す。図14では、本実施形態における
画像出力部90が、いわゆる3板式の液晶プロジェクタにより構成されるものとして説明
するが、本発明に係る画像出力装置の画像出力部がいわゆる3板式の液晶プロジェクタに
より構成されるものに限定されるものではない。
【0118】
画像出力部90は、光源110、インテグレータレンズ112,114、偏光変換素子
116、重畳レンズ118、R用ダイクロイックミラー120R、G用ダイクロイックミ
ラー120G、反射ミラー122、R用フィールドレンズ124R、G用フィールドレン
ズ124G、R用液晶パネル130R(第1の光変調部)、G用液晶パネル130G(第
2の光変調部)、B用液晶パネル130B(第3の光変調部)、リレー光学系140、ク
ロスダイクロイックプリズム160、投射レンズ170を含む。R用液晶パネル130R
、G用液晶パネル130G及びB用液晶パネル130Bとして用いられる液晶パネルは、
透過型の液晶表示装置である。リレー光学系140は、リレーレンズ142,144、1
46、反射ミラー148,150を含む。
【0119】
光源110は、例えば超高圧水銀ランプにより構成され、少なくともR成分の光、G成
分の光、B成分の光を含む光を射出する。インテグレータレンズ112は、光源110か
らの光を複数の部分光に分割するための複数の小レンズを有する。インテグレータレンズ
114は、インテグレータレンズ112の複数の小レンズに対応する複数の小レンズを有
する。重畳レンズ118は、インテグレータレンズ112の複数の小レンズから射出され
る部分光を重畳する。
【0120】
また偏光変換素子116は、偏光分離膜とλ/2板とを有し、p偏光を透過させると共
にs偏光を反射させ、p偏光をs偏光に変換する。この偏光変換素子116からのs偏光
が、重畳レンズ118に照射される。
【0121】
重畳レンズ118によって重畳された光は、R用ダイクロイックミラー120Rに入射
される。R用ダイクロイックミラー120Rは、R成分の光を反射して、G成分及びB成
分の光を透過させる機能を有する。R用ダイクロイックミラー120Rを透過した光は、
G用ダイクロイックミラー120Gに照射され、R用ダイクロイックミラー120Rによ
り反射した光は反射ミラー122により反射されてR用フィールドレンズ124Rに導か
れる。
【0122】
G用ダイクロイックミラー120Gは、G成分の光を反射して、B成分の光を透過させ
る機能を有する。G用ダイクロイックミラー120Gを透過した光は、リレー光学系14
0に入射され、G用ダイクロイックミラー120Gにより反射した光はG用フィールドレ
ンズ124Gに導かれる。
【0123】
リレー光学系140では、G用ダイクロイックミラー120Gを透過したB成分の光の
光路長と他のR成分及びG成分の光の光路長との違いをできるだけ小さくするために、リ
レーレンズ142,144,146を用いて光路長の違いを補正する。リレーレンズ14
2を透過した光は、反射ミラー148によりリレーレンズ144に導かれる。リレーレン
ズ144を透過した光は、反射ミラー150によりリレーレンズ146に導かれる。リレ
ーレンズ146を透過した光は、B用液晶パネル130Bに照射される。
【0124】
R用フィールドレンズ124Rに照射された光は、平行光に変換されてR用液晶パネル
130Rに入射される。R用液晶パネル130Rは、光変調素子(光変調部)として機能
し、R用画像信号に基づいて透過率(通過率、変調率)が変化するようになっている。従
って、R用液晶パネル130Rに入射された光(第1の色成分の光)は、R用画像信号に
基づいて変調され、変調後の光がクロスダイクロイックプリズム160に入射される。
【0125】
G用フィールドレンズ124Gに照射された光は、平行光に変換されてG用液晶パネル
130Gに入射される。G用液晶パネル130Gは、光変調素子(光変調部)として機能
し、G用画像信号に基づいて透過率(通過率、変調率)が変化するようになっている。従
って、G用液晶パネル130Gに入射された光(第2の色成分の光)は、G用画像信号に
基づいて変調され、変調後の光がクロスダイクロイックプリズム160に入射される。
【0126】
リレーレンズ142,144,146で平行光に変換された光が照射されるB用液晶パ
ネル130Bは、光変調素子(光変調部)として機能し、B用画像信号に基づいて透過率
(通過率、変調率)が変化するようになっている。従って、B用液晶パネル130Bに入
射された光(第3の色成分の光)は、B用画像信号に基づいて変調され、変調後の光がク
ロスダイクロイックプリズム160に入射される。
【0127】
R用液晶パネル130R、G用液晶パネル130G、B用液晶パネル130Bは、それ
ぞれ同様の構成を有している。各液晶パネルは、電気光学物質である液晶を一対の透明な
ガラス基板に密閉封入したものであり、例えばポリシリコン薄膜トランジスタをスイッチ
ング素子として、各画素の画像信号に対応して各色光の通過率を変調する。
【0128】
本実施形態の色変換装置10によって色変換処理が行われた画像信号は、R用液晶パネ
ル130R、G用液晶パネル130G、B用液晶パネル130Bの透過率(通過率、変調
率)の制御に用いられる。
【0129】
クロスダイクロイックプリズム160は、R用液晶パネル130R、G用液晶パネル1
30G及びB用液晶パネル130Bからの入射光を合成した合成光を出射光として出力す
る機能を有する。投射レンズ170は、出力画像をスクリーンSCR上に拡大して結像さ
せるレンズであり、ズーム倍率に応じて画像を拡大又は縮小させる機能を有する。
【0130】
以上のような構成を有する本実施形態における画像出力装置300は、sYCC、xv
YCC等の画像出力部90の色域外の色を含む入力画像信号が入力された場合であっても
、正確な色変換処理を行って正確な色再現を行うことができる。また、使用頻度の高い基
準色については正確な色変換を行うことができるので、色変換処理に必要な色変換テーブ
ルのデータ量を少なくでき、画質の劣化を抑えながら低コスト化を実現できる。
【0131】
以上、本発明に係る色変換装置、画像出力装置及び色変換方法を上記の実施形態に基づ
いて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱し
ない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形
も可能である。
【0132】
(1)上記の実施形態では、三刺激値(X,Y,Z)やCIELUV色空間に変換して
色変換処理や色圧縮処理を実現したが、入力画像信号の色空間、変換処理中の色空間、変
換後の色空間に限定されるものではない。
【0133】
(2)上記の実施形態では、基準色として例えばsRGB色空間の原色を採用したが、
本発明はこれに限定されるものではない。基準色として、例えば、いわゆる記憶色(木々
の緑、空の青、肌色など)を採用してもよい。
【0134】
(3)上記の実施形態では、画像出力装置として、画像を投射するプロジェクタを例に
説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る画像出力装置は、画
像を表示するディスプレイ装置や画像を出力するプリンタ装置であってもよい。
【0135】
(4)上記の実施形態では、光変調部としてライトバルブを用いるものとして説明した
が、本発明はこれに限定されるものではない。光変調部として、例えばDLP(登録商標
)(Digital Light Processing)、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)等を採用して
もよい。
【0136】
(5)上記の実施形態では、光変調部として、いわゆる3板式の透過型の液晶パネルを
用いたライトバルブを例に説明したが、4板式以上の透過型の液晶パネルを用いたライト
バルブを採用してもよい。
【0137】
(6)上記の実施形態において、本発明を、色変換装置、画像出力装置及び色変換方法
として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明を実現する
ための色変換方法の処理手順が記述されたプログラムや、該プログラムが記録された記録
媒体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明に係る実施形態における色変換装置の構成例のブロック図。
【図2】本実施形態の画像信号の色空間の説明図。
【図3】本実施形態における色変換データの説明図。
【図4】図1の色変換行列生成部の構成例のブロック図。
【図5】(A)、(B)は本実施形態における色変換テーブルの説明図。
【図6】図1の色変換装置のハードウェア構成例のブロック図。
【図7】図1の色変換装置の処理例のフロー図。
【図8】図7のステップS12の色変換行列生成処理の処理例のフロー図。
【図9】図8のステップS36における行列生成部の動作説明図。
【図10】(A)、(B)は図8のステップS36における色空間判定部の動作説明図。
【図11】図7のステップS14の色変換テーブル生成処理の処理例のフロー図。
【図12】図11のステップS48の色圧縮処理の動作説明図。
【図13】本実施形態における画像出力装置の構成例のブロック図。
【図14】図13の画像出力部90の構成例を示す図。
【符号の説明】
【0139】
10…色変換装置、20…色変換処理部、22…第1の色変換部、24…第2の色変換
部、26…色変換行列保存部、28…色変換テーブル保存部、40…テーブル生成部、4
2…色変換行列生成部、44…色変換テーブル生成部、50…画像出力部色特性保存部、
60…基準色選択部、62…行列生成部、64…色空間判定部、90…画像出力部、11
0…光源、112,114…インテグレータレンズ、116…偏光変換素子、118…重
畳レンズ、120R…R用ダイクロイックミラー、120G…G用ダイクロイックミラー
、122,148,150…反射ミラー、124R…R用フィールドレンズ、124G…
G用フィールドレンズ、130R…R用液晶パネル、130G…G用液晶パネル、130
B…B用液晶パネル、140…リレー光学系、142,144,146…リレーレンズ、
160…クロスダイクロイックプリズム、170…投射レンズ、200…CPU、210
…I/F回路、220…ROM、230…RAM、240…バス、300…画像出力装置
、SCR…スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色空間の画像信号を、画像出力部に対応した第2の色空間の画像信号に変換する
色変換装置であって、
前記第2の色空間の色域を包含する色域を有する第3の色空間における複数の格子点に
対応する画像信号を前記第2の色空間の画像信号に変換するときに用いる色変換データが
記憶された色変換テーブルが保存される色変換テーブル保存部と、
前記第1の色空間の画像信号を、前記第3の色空間の画像信号に変換する第1の色変換
部と、
前記色変換テーブルに記憶された前記色変換データに基づいて、前記第3の色空間の画
像信号を前記第2の色空間の画像信号に変換する第2の色変換部と、
を含み、
前記第1の色変換部は、前記第1の色空間における所与の基準色に対応した画像信号を
、前記第3の色空間における前記格子点に対応する画像信号に変換することを特徴とする
色変換装置。
【請求項2】
前記第1の色変換部は、
所与の色変換行列を用いて行列演算により、前記第1の色空間の画像信号を前記第3の
色空間の画像信号に変換することを特徴とする請求項1に記載の色変換装置。
【請求項3】
前記色変換行列を生成する色変換行列生成部を含み、
前記色変換行列生成部は、
前記色変換テーブルに記憶された前記基準色に対応する画像信号を選択し、選択した画
像信号の色域が前記第2の色空間の色域を含有するように前記色変換行列を生成すること
を特徴とする請求項2に記載の色変換装置。
【請求項4】
前記色変換行列生成部は、
前記選択した画像信号の色域が前記第2の色空間の色域を含有するまで、前記色変換テ
ーブルに記憶された前記基準色に対応する画像信号を選択して前記色変換行列を生成する
ことを繰り返すことを特徴とする請求項3に記載の色変換装置。
【請求項5】
前記基準色は、
前記第1の色空間の原色であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項
に記載の色変換装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の色変換装置と、
前記色変換装置によって色変換処理が行われた画像信号に基づいて画像出力を行う画像
出力部とを含むことを特徴とする画像出力装置。
【請求項7】
第1の色空間の画像信号を、画像出力部に対応した第2の色空間の画像信号に変換する
色変換方法であって、
前記第1の色空間の画像信号を、前記第2の色空間の色域を包含する色域を有する第3
の色空間の画像信号に変換する第1の色変換ステップと、
前記第3の色空間における複数の格子点に対応する画像信号を前記第2の色空間の画像
信号に変換するときに用いる色変換データが記憶された色変換テーブルに記憶された前記
色変換データに基づいて、前記第3の色空間の画像信号を前記第2の色空間の画像信号に
変換する第2の色変換ステップと、
を含み、
前記第1の色変換ステップは、前記第1の色空間における所与の基準色に対応した画像
信号を、前記第3の色空間における前記格子点に対応する画像信号に変換することを特徴
とする色変換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−207115(P2009−207115A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270611(P2008−270611)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】