説明

色素化合物およびそれを使用する光電部品

【課題】色素増感太陽電池の光電変換効率を改良することが可能な色素化合物を提供する。
【解決手段】以下の式(I)で表される色素化合物、またはその塩に関し:


色素化合物は、色素増感太陽電池(DSSC)に好適である。色素化合物を使用することによって、DSSCの光電特性を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素化合物およびそれを使用する光電部品に関し、より詳しくは、色素増感太陽電池(DSSC)に使用される色素化合物、およびそれを使用する光電部品に関する。
【背景技術】
【0002】
産業技術の進展に伴い、今日全世界が直面する深刻な問題は、エネルギー危機および環境汚染である。世界エネルギー危機を解決し、環境汚染を軽減するための、有効な手段の一つは太陽電池であり、これは太陽エネルギーを電力に変換し得る。色素増感太陽電池は、低製造コスト、大規模製造、高柔軟性、光線透過率、および建造物において使用できるという優位点を有することから、色素増感太陽電池の適用はますます魅力的になる。
【0003】
現在、グレッツェル(Graetzel)らは、一連の文献、例えば、オリーガン(O'Regan), B.;グレッツェル, M. ネイチャー(Nature)1991年、353巻737頁(非特許文献1)を開示し、色素増感太陽電池の実用性を示している。色素増感太陽電池の一般的構造は、陽極、陰極、ナノ多孔性二酸化チタン層、色素、および電解質を含み、ここで色素は、色素増感太陽電池の変換効率において重要な役割を担う。色素増感太陽電池に好適な色素は、特徴として、幅広い吸収スペクトル、高モル吸収係数、熱安定性、および光安定性を要する。
【0004】
ルテニウム錯体は、昨今、より高い変換効率を有する増感色素である。しかし、ルテニウム錯体の製造コストは高く、ルテニウム錯体を広く使用する際には、供給不足の問題があり得る。色素増感太陽電池のための有機増感剤は、モル吸収係数が高いという優位点を有する。さらに、分子設計によって、種々の有機増感剤を製造することが可能である。従って、異なる色の色素増感太陽電池を製造して、色素増感太陽電池の適用柔軟性を改良することが可能である。加えて、目的物の色と合わせて、色素増感太陽電池の色を変えることも可能である。現在、クマリン(ハラ,K.;サヤマ,K.;アラカワ,H.;オオガ,Y.;シンポ(Shinpo),A.;サグ(Sug),S. Chem. Commun. 2001年、569頁(非特許文献2))、インドリン(ホリウチ,T.;ミウラ,H.;スミオカ,K.;ウチダ,S. J. Am. Chem. Soc. 2004年、126巻12218頁(非特許文献3))、およびメロシアニン(オオタカ,H.;キラ,M.;ヤノ,K.;イトウ,S.;ミテクラ,H.;カワタ,T.;マツイ,F. J. Photochem.Photobiol. A: Chem. 2004年、164巻 67頁(非特許文献4))等の色素誘導体が、既に色素増感太陽電池の製造に適用されている。
【0005】
しかし、増感色素の合成方法は非常に複雑であり、増感色素の合成条件を制御するのは困難である。
【0006】
色素増感太陽電池の色素は変換効率に決定的に影響する。従って、色素増感太陽電池の変換効率を改善し得る、色素化合物を提供することが望ましい。加えて、色素増感太陽電池の製造コストを削減するため、色素化合物の合成方法を簡素化することも重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】オリーガン(O'Regan), B.;グレッツェル, M. ネイチャー(Nature)1991年、353巻737頁
【非特許文献2】ハラ,K.;サヤマ,K.;アラカワ,H.;オオガ,Y.;シンポ(Shinpo),A.;サグ(Sug),S. Chem. Commun. 2001年、569頁
【非特許文献3】ホリウチ,T.;ミウラ,H.;スミオカ,K.;ウチダ,S. J. Am. Chem. Soc. 2004年、126巻12218頁
【非特許文献4】オオタカ,H.;キラ,M.;ヤノ,K.;イトウ,S.;ミテクラ,H.;カワタ,T.;マツイ,F. J. Photochem.Photobiol. A: Chem. 2004年、164巻 67頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、色素増感太陽電池に好適な、新規な色素化合物を提供することである。加えて、本発明の色素化合物はモル吸収係数が高いので、本発明の色素化合物によって、色素増感太陽電池の光電変換効率を改良することが可能である。
【0009】
本発明の別の目的は、色素化合物の簡便な合成方法であって、色素化合物の合成工程がより少なく、工程の制御が容易で、かつ合成コストがより少ない、合成方法を提供することである。
【0010】
さらに、本発明の別の目的は、より高い光電変換効率を示す、色素増感太陽電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は、以下の式(I)で表される色素化合物、またはその塩を提供する:
【化1】

式中、
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、nは1、2または3であり;
D1およびD2は、それぞれ独立して、C1〜C12アルキル、
【化2】

であるか、または、D1、D2およびNが共に結合して、
【化3】

(即ち、C4〜C6シクロヘテロアルキレン)を形成し、式中、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R13およびR14は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、アミノまたはハロゲンであり、R9、R12およびR15は、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルであり;
Bは
【化4】

であり、式中、R16、R17およびR18は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、R19、R20、R21およびR22は、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルであり、ZはO、S、またはSeである。
【0012】
上記の式(I)において、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、nは1、2または3である。好ましくは、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、nは1または2である。より好ましくは、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキルまたはC1〜C12アルコキシであり、nは1または2である。さらにより好ましくは、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキルまたはC1〜C12アルコキシであり、nは1である。最も好ましくは、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルであり、nは1である。
【0013】
上記の式(I)において、D1およびD2は、それぞれ独立して、C1〜C12アルキル、
【化5】

であるか、または、D1、D2およびNが共に結合して、
【化6】

(即ち、C4〜C6シクロヘテロアルキレン)を形成し、式中、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R13およびR14は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、アミノまたはハロゲンであり、R9、R12およびR15は、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルである。好ましくは、D1およびD2は、それぞれ独立して、C1〜C12アルキル、
【化7】

であり、式中、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、アミノまたはハロゲンであり、R9は、HまたはC1〜C12アルキルである。より好ましくは、D1およびD2は、それぞれ独立して、C1〜C12アルキル、
【化8】

であり、式中、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキルまたはC1〜C12アルコキシであり、R9は、HまたはC1〜C12アルキルである。最も好ましくは、D1およびD2は、それぞれ独立して、C1〜C12アルキル、
【化9】

であり、式中、R5、R6、R7、R8およびR9は、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルである。
【0014】
加えて、本発明の一つの態様によれば、上記の式(I)において、D1およびD2は、それぞれ独立して、C1〜C12アルキルまたは
【化10】

であり、式中、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、アミノまたはハロゲンである。好ましくは、D1およびD2において、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキルまたはC1〜C12アルコキシである。最も好ましくは、D1およびD2において、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルである。
【0015】
上記の式(I)において、Bは
【化11】

であってもよく、式中、R16、R17およびR18は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、R19、R20、R21およびR22は、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルであり、ZはO、SまたはSeである。好ましくは、Bは
【化12】

であり、式中、R16はH、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、R19およびR22は、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルであり、ZはO、SまたはSeである。より好ましくは、Bは
【化13】

であり、式中、R16はH、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、R19およびR22は、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルであり、ZはSである。最も好ましくは、Bは
【化14】

であり、式中、R16、R19およびR22は、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルであり、ZはSである。
【0016】
加えて、本発明の一つの態様によれば、上記の式(I)において、Bは
【化15】

であってもよく、式中、R16はH、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、R19はHまたはC1〜C12アルキルであり、ZはO、SまたはSeである。好ましくは、Bは
【化16】

であり、式中、R16はH、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、R19はHまたはC1〜C12アルキルであり、ZはSである。より好ましくは、Bは
【化17】

であり、式中、R16はH、C1〜C12アルキルまたはC1〜C12アルコキシであり、R19はHまたはC1〜C12アルキルであり、ZはSである。さらにより好ましくは、Bは
【化18】

であり、式中、R16およびR19は、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルであり、ZはSである。最も好ましくは、Bは
【化19】

であり、式中、R16およびR19はHであり、ZはSである。
【0017】
上記の式(I)で表される色素化合物の具体例は、以下の化合物である:
【化20】


【0018】
本発明において、色素化合物の分子は、遊離酸の形態で示される。しかし、本発明の色素化合物の実際の形態は、塩であってもよく、より適切には、アルカリ金属塩または第4級アンモニウム塩であってもよい。
【0019】
加えて、上記の色素化合物は、色素増感太陽電池のための色素化合物として使用される。
【0020】
さらに本発明は、上記の色素化合物を含む、色素増感太陽電池も提供する。本発明の色素増感太陽電池は、上記の色素化合物を含む光陽極;陰極;および、光陽極と陰極の間に配置された電解質層を含む。
【0021】
本発明の色素増感太陽電池において、光陽極は、透明基板、透明導電層、多孔性半導体層および色素化合物を含み、ここで色素化合物は上記の色素化合物である。
【0022】
本発明の色素増感太陽電池において、透明基板の材質は、基板の材質が透明材質であれば、特に限定されない。好ましくは、透明基板の材質は、良好な耐湿性、耐溶剤性および耐候性を有する。従って、色素増感太陽電池は、透明基板によって外界からの湿度および気体に耐え得る。透明基板の具体例としては、限定されないが、石英およびガラス等の透明無機基板;ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(エチレン2,6-ナフタレート)(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、およびポリイミド(PI)等の透明プラスチック基板が挙げられる。さらに、透明基板の厚さは特に限定されず、色素増感太陽電池の透過率および特性についての必要性に従って変更し得る。好ましくは、透明基板の材質はガラスである。
【0023】
さらに、本発明の色素増感太陽電池において、透明導電層の材質は、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ZnO-Ga2O3、ZnO-Al2O3またはスズ系酸化物であり得る。
【0024】
加えて、本発明の色素増感太陽電池において、多孔性半導電層は半導体微粒子より作られる。好適な半導体微粒子は、Si、TiO2、SnO2、ZnO、WO3、Nb2O5、TiSrO3およびそれらの組み合わせを含んでもよい。好ましくは、半導体微粒子はTiO2より作られる。半導体微粒子の平均径は、5〜500nmであってもよい。好ましくは、半導体微粒子の平均径は、10〜50nmである。さらに、多孔性半導電層の厚さは5〜25μmである。
【0025】
さらに、色素増感太陽電池の陰極の材質は、特に限定されないが、導電性を有するあらゆる材質を含んでもよい。或いは、陰極の材質は、陰極の表面上に形成された導電層が存在すれば、絶縁体であり得、ここで陰極の表面は光陽極に面する。陰極の材質は、電気化学的安定性を有するあらゆる材質であり得る。陰極の材質に好適な、非限定的な例としては、Pt、Au、またはC等が挙げられる。
【0026】
さらに、色素増感太陽電池の電解質層に使用される材質は、特に限定されないが、電子および/または空孔を移動させ得る、あらゆる材質であり得る。
【0027】
一方、本発明はさらに、色素溶液であって、(A)上記の色素化合物および(B)有機溶媒を含み、色素化合物の含量は0.01〜1重量%であり、有機溶媒の含量は99.99〜99重量%であり、有機溶媒は、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミドおよびN-メチル-2-ピロリジノンより成る群から選択される、色素溶液を提供する。
【0028】
本発明の他の目的、優位点および新規な特徴は、添付の図面と併せて、以下の詳細な記述から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の色素化合物は、スキーム1〜3によって合成し得る。
【0030】
【化21】


(i) K2CO3, DMF.
(ii) PdCl2(dppf), 5-ホルミル-2-チオフェンボロン酸または4-ホルミルフェニルボロン酸, K2CO3, CH3OH/トルエン.
(iii) シアノ酢酸, ピペリジン, CH3CN.
【0031】
スキーム1に示す通り、7-ブロモ-9H-フルオレン-2-イルアミンを1-ヨードブタンと反応させて、(7-ブロモ-9H-フルオレン-2-イル)-ジブチルアミン(11)を形成する。その後、鈴木カップリング反応によって、(7-ブロモ-9H-フルオレン-2-イル)-ジブチルアミン(11)を5-ホルミル-2-チオフェンボロン酸と反応させて、5-(7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-チオフェン-2-カルバルデヒド(12a)を得る。最後に、アセトニトリル中、ピペリジンを触媒として用いて、5-(7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-チオフェン-2-カルバルデヒド(12a)をシアノ酢酸と反応させて、2-シアノ-3-[5-(7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-チオフェン-2-イル]-アクリル酸(13a)を得る。
【0032】
【化22】


(ii) PdCl2(dppf), 5-ホルミル-2-チオフェンボロン酸または4-ホルミルフェニルボロン酸, K2CO3, CH3OH/トルエン.
(iii) シアノ酢酸, ピペリジン, CH3CN.
(iv) KOtBu/K2CO3, 1,4-ジオキサン/DMF.
【0033】
スキーム2に示す通り、7-ブロモ-9H-フルオレン-2-イルアミンを1-ヨードブタンと反応させて、(7-ブロモ-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)-ジブチルアミン(21)を形成する。次に、鈴木カップリング反応により、(7-ブロモ-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)- ジブチルアミン(21)を5-ホルミル-2-チオフェンボロン酸と反応させて、5-(9,9-ジブチル-7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-チオフェン-2-カルバルデヒド(22a)を得る。最後に、アセトニトリル中、ピペリジンを触媒として用いて、5-(9,9-ジブチル-7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-チオフェン-2-カルバルデヒド(22a)をシアノ酢酸と反応させて、2-シアノ-3-[5-(9,9-ジブチル-7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)- チオフェン-2-イル]-アクリル酸(23a)を得る。
【0034】
【化23】


(ii) PdCl2(dppf), 5-ホルミル-2-チオフェンボロン酸または4-ホルミルフェニルボロン酸, K2CO3, CH3OH/トルエン.
(iii) シアノ酢酸, ピペリジン, CH3CN.
(v) KOtBu, THF.
(vi) CuCl, 1,10-フェナントロリン, KOH, トルエン.
【0035】
スキーム3に示す通り、7-ブロモ-9H-フルオレン-2-イルアミンを1-ヨードブタンと反応させて、7-ブロモ- 9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イルアミン(31)を形成し;2-ヨード-9H-フルオレンを1-ヨードブタンと反応させて、9,9-ジブチル-2-ヨード-9H-フルオレン(32)を形成する。次に、ウルマンカップリング反応によって、7-ブロモ-9,9-ジブチル-9H- フルオレン-2-イルアミン(31)を9,9-ジブチル-2-ヨード-9H-フルオレン(32)と反応させて、(7-ブロモ-9,9-ジブチル-9H-フルオレン- 2-イル)-ビス-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)アミン(33)を得る。次に、鈴木カップリング反応によって、(7-ブロモ-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)-ビス-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)アミン(33)を5-ホルミル-2-チオフェンボロン酸と反応させて、5-[7-[ビス-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル]-チオフェン-2-カルバルデヒド(34a)を得る。最後に、アセトニトリル中、ピペリジンを触媒として用いて、5-[7-[ビス-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル]-チオフェン-2-カルバルデヒド(34a)をシアノ酢酸と反応させて、3-(5-[7-[ビス-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル]-チオフェン-2-イル)-2-シアノ-アクリル酸(35a)を得る。
【0036】
本発明の色素増感太陽電池の製造方法は特に限定されず、本発明の色素増感太陽電池は当業界で知られている方法で製造し得る。
【0037】
透明基板の材質は、基板の材質が透明材質であれば、特に限定されない。好ましくは、透明基板の材質は、良好な耐湿性、耐溶剤性および耐候性を有する透明材質である。従って、色素増感太陽電池は、透明基板によって外界からの湿度および気体に耐え得る。透明基板の具体例としては、限定されないが、石英およびガラス等の透明無機基板;ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(エチレン2,6-ナフタレート)(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、およびポリイミド(PI)等の透明プラスチック基板が挙げられる。さらに、透明基板の厚さは特に限定されず、色素増感太陽電池の透過率および特性についての必要性に従って変更し得る。一つの具体的な態様において、透明基板の材質はガラス基板である。
【0038】
さらに、透明導電層の材質は、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ZnO-Ga2O3、ZnO-Al2O3またはスズ系酸化物であり得る。一つの具体的な態様において、フッ素ドープ酸化スズが透明導電層に使用される。
【0039】
加えて、多孔性半導電層は半導体微粒子より作られる。好適な半導体微粒子は、Si、TiO2、SnO2、ZnO、WO3、Nb2O5、TiSrO3およびそれらの組み合わせを含んでもよい。初めに、半導体微粒子をペーストの形態に調製し、その後、ペーストを透明導電性基板上にコートする。ここで使用されるコーティング法は、ブレードコーティング、スピンコーティング、吹き付け塗装またはウェッティング塗装であり得る。さらに、コーティングは、好適な厚さを有する多孔性半導体層を得るため、一回または数回実施し得る。半導体層は、単層または多層であり得、ここで多層の各層は、種々の直径の半導体微粒子により形成される。例えば、直径5〜50nmの半導体微粒子を厚さ5〜20μmにコートした後、その上に、直径200〜400nmの半導体微粒子を厚さ3〜5μmにコートする。コート基材を50〜100℃で乾燥後、コート基材を400〜500℃で30分間焼結し、多層の半導体層を得る。
【0040】
色素化合物は好適な溶媒に溶解して、色素溶液を調製し得る。好適な溶媒としては、限定されないが、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジノンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。ここで、半導体層でコートした透明基板を色素溶液に浸して、色素溶液中の色素を半導体層に完全に吸収させる。色素の吸収が完了した後、半導体層でコートした透明基板を取り出して乾燥する。最後に、色素増感太陽電池のための光陽極を得る。
【0041】
また、色素増感太陽電池の陰極の材質は、特に限定されないが、導電性を有するあらゆる材質を含んでもよい。或いは、陰極の材質は、陰極の表面上に形成された導電層が存在すれば、絶縁体であり得、ここで陰極の表面は光陽極に面する。陰極の材質は、電気化学的安定性を有する材質であり得る。陰極の材質に好適な、非限定的な例としては、Pt、Au、またはC等が挙げられる。
【0042】
さらに、色素増感太陽電池の電解質層に使用される材質は、特に限定されないが、電子および/または空孔を移動させ得る、あらゆる材質であり得る。加えて、液体電解質は、ヨウ素含有アセトニトリル溶液、ヨウ素含有N-メチル-2-ピロリジノン溶液、またはヨウ素含有3-メトキシプロピオニトリル溶液であり得る。一つの具体的な態様では、液体の電解質は、ヨウ素含有アセトニトリル溶液であり得る。
【0043】
本発明の色素増感太陽電池の一つの具体的な製造方法を以下に示す。
【0044】
初めに、直径20〜30nmのTiO2粒子を含有するペーストを、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)で覆ったガラス基板上に1回または数回コートする。次に、コートしたガラス基板を450℃で30分間焼結する。
【0045】
アセトニトリルとt-ブタノール(1:1 v/v)の混合物中に色素化合物を溶解し、色素溶液を調製する。その後、上記の多孔性TiO2層を有するガラス基板を、色素溶液に浸す。多孔性TiO2層が色素溶液中の色素を完全に吸収した後、得られたガラス基板を取り出し、乾燥する。最後に、光陽極を得る。
【0046】
フッ素ドープ酸化スズで覆ったガラス基板にドリルで穴を開け、直径0.75mmの注入口を形成するが、ここで注入口は電解質を注入するために使用する。次に、H2PtCl6溶液を、フッ素ドープ酸化スズで覆ったガラス基板上にコートし、ガラス基板を15分間400℃に加熱して、陰極を得る。
【0047】
続いて、厚さ60μmの熱可塑性高分子層を、光陽極と陰極の間に配置する。これらの二つの電極を120〜140℃で押圧して、互いに接着する。
【0048】
次に、電解質を注入するが、ここで電解質はを0.03M I2/0.3M LiI/0.5M t-ブチルピリジンを含有するアセトニトリル溶液である。注入口を熱可塑性高分子層で塞いだ後、本発明の色素増感太陽電池を得る。
【0049】
以下の実施例は、本発明の説明を目的とするものである。しかし、本発明の範囲は、本明細書に添付した特許請求の範囲の通り規定されるべきであり、以下の実施例は、多少なりとも本発明の範囲を限定すると解釈するべきではない。本明細書において、色素化合物の分子は、遊離酸の形態で表される。しかし、本発明の色素化合物の実際の形態は、塩であってもよく、より適切には、アルカリ金属塩または第4級アンモニウム塩であってもよい。特に説明がない限り、実施例で用いる部分単位およびパーセントは重量で計算し、温度は摂氏(℃)で表される。重量部と容量部の関係は、キログラムとリットルの関係と同様である。
【0050】
次に、本発明の色素化合物の製造方法を、スキーム1〜3を参照して説明する。
【実施例】
【0051】
実施例1
(7-ブロモ-9H-フルオレン-2-イル)-ジブチルアミン(11)の合成
N2雰囲気下、0.52部の7-ブロモ-9H-フルオレン-2-イルアミン、1.47部の1-ヨードブタン、および1.38部の炭酸カリウムを、15部の無水ジメチルホルムアミド中に加え、撹拌して混合した。その後、反応混合物を120℃に加熱し、24時間反応させた。反応混合物を冷却後、反応を停止するために水を反応混合物に注ぎ、ジエチルエーテルを用いて生成物を抽出し、硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を除去した後、残留物をカラムクロマトグラフィー法で、溶離液としてジクロロメタン/ヘキサン共溶媒を用いて精製して、本実施例の化合物(11)を得た。この化合物は黄褐色固体の形態であり、この化合物の収率は85%であった。
【0052】
実施例2
5-(7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-チオフェン-2-カルバルデヒド(12a)の合成
N2雰囲気下、0.37部の(7-ブロモ-9H-フルオレン-2-イル)-ジブチルアミン(11)、0.19部の5-ホルミル-2-チオフェンボロン酸、0.41部の炭酸カリウム、および0.16部のPdCl2(dppf)を、5部のトルエンおよび5部のCH3OH中に加え、撹拌して混合した。その後、反応混合物を60℃に加熱し、18時間反応させた。反応混合物を水で冷却後、ジエチルエーテルを用いて生成物を抽出し、硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を除去した後、残留物をクロマトグラフィー法で、溶離液としてジクロロメタン/ヘキサン共溶媒を用いて精製して、本実施例の化合物(12a)を得た。この化合物は濃橙色(tangerine)固体の形態であり、この化合物の収率は61%であった。
【0053】
実施例3
4-(7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-ベンズアルデヒド(12b)の合成
本実施例の色素化合物の製造方法は、5-ホルミル-2-チオフェンボロン酸を0.18部の4-ホルミルフェニルボロン酸に置換した以外は、実施例2に記載した方法と同様であり、本実施例の化合物(12b)を得る。この化合物は黄色固体の形態であり、この化合物の収率は53%であった。
【0054】
実施例4
2-シアノ-3-[5-(7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-チオフェン-2-イル]-アクリル酸(13a)の合成
N2雰囲気下、0.18部の5-(7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-チオフェン-2-カルバルデヒド(12a)、0.05部のシアノ酢酸、および0.017部のピペリジンを、アセトニトリル中に加え、撹拌して混合した。その後、反応混合物を90℃に加熱し、6時間反応させた。反応混合物を室温に冷却後、反応混合物を濾過して固体を得た。次に、この固体を水、エーテル、およびアセトニトリルで連続して洗浄し、暗赤色固体を得た。最後に、この粗生成物をカラムクロマトグラフィー法で、溶離液としてジクロロメタン/メタノール共溶媒を用いて精製して、この実施例の化合物(13a)を得た。この化合物は暗赤色固体の形態であり、この化合物の収率は73%であった。
【0055】
実施例5
2-シアノ-3-[4-(7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-フェニル]-アクリル酸(13b)の合成
本実施例の色素化合物の製造方法は、5-(7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-チオフェン-2-カルバルデヒド(12a)を0.18部の4-(7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-ベンズアルデヒド(12b)に置換した以外は、実施例4に記載した方法と同様であり、本実施例の化合物(13b)を得る。この化合物は暗赤色固体の形態であり、この化合物の収率は78%であった。
【0056】
実施例6
(7-ブロモ-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)-ジブチルアミン(21)の合成
N2雰囲気下、0.52部の7-ブロモ-9H-フルオレン-2-イルアミン、2.21部の1-ヨードブタン、0.67部のカリウムt-ブトキシド、および0.83部の炭酸カリウムを、10部の無水ジメチルホルムアミドおよび10部の1,4-ジオキサン中に加え、撹拌して混合した。その後、反応混合物を95℃に加熱し、24時間反応させた。反応混合物を冷却後、水を反応混合物中に注いで反応を停止し、ジエチルエーテルを用いて生成物を抽出し、硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を除去した後、残留物をカラムクロマトグラフィー法で、溶離液としてジクロロメタン/ヘキサン共溶媒を用いて精製して、本実施例の化合物(21)を得た。この化合物は淡黄色固体の形態であり、この化合物の収率は83%であった。
【0057】
実施例7
5-(9,9-ジブチル-7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-チオフェン-2-カルバルデヒド(22a)の合成
本実施例の色素化合物の製造方法は、(7-ブロモ-9H-フルオレン-2-イル)-ジブチルアミン(11)を0.49部の(7-ブロモ-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)-ジブチルアミン(21)に置換した以外は、実施例2に記載した方法と同様であり、本実施例の化合物(22a)を得る。この化合物は濃橙色固体の形態であり、この化合物の収率は52%であった。
【0058】
実施例8
4-(9,9-ジブチル-7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-ベンズアルデヒド(22b)の合成
本実施例の色素化合物の製造方法は、5-ホルミル-2-チオフェンボロン酸を0.18部の4-ホルミルフェニルボロン酸に置換した以外は、実施例7に記載した方法と同様であり、本実施例の化合物(22b)を得る。この化合物は黄色固体の形態であり、この化合物の収率は61%であった。
【0059】
実施例9
2-シアノ-3-[5-(9,9-ジブチル-7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-チオフェン-2-イル]-アクリル酸(23a)の合成
本実施例の色素化合物の製造方法は、5-(7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-チオフェン-2-カルバルデヒド(12a)を0.23部の5-(9,9-ジブチル-7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-チオフェン-2-カルバルデヒド(22a)に置換した以外は、実施例4に記載した方法と同様であり、本実施例の化合物(23a)を得る。この化合物は赤色固体の形態であり、この化合物の収率は86%であった。
【0060】
実施例10
2-シアノ-3-[4-(9,9-ジブチル-7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)- フェニル]-アクリル酸(23b)の合成
本実施例の色素化合物の製造方法は、5-(9,9-ジブチル-7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-チオフェン-2-カルバルデヒド(22a)を0.23部の4-(9,9-ジブチル-7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-ベンズアルデヒド(22b)に置換した以外は、実施例9に記載した方法と同様であり、本実施例の化合物(23b)を得る。この化合物は濃橙色固体の形態であり、この化合物の収率は68%であった。
【0061】
実施例11
7-ブロモ-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イルアミン(31)の合成
N2雰囲気下、0.52部の7-ブロモ-9H-フルオレン-2-イルアミン、2.21部の1-ヨードブタン、および1.35部のカリウムt-ブトキシドを、20部の無水テトラヒドロフラン中に加え、撹拌して混合した。その後、反応混合物を50℃に加熱し、18時間反応させた。反応混合物を冷却後、水を用いて反応を停止し、ジエチルエーテルで生成物を抽出し、硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を除去した後、残留物をカラムクロマトグラフィー法で、溶離液としてジクロロメタン/ヘキサン共溶媒を用いて精製して、本実施例の化合物(31)を得た。この化合物は黄褐色固体の形態であり、この化合物の収率は79%であった。
【0062】
実施例12
9,9-ジブチル-2-ヨード-9H-フルオレン(32)の合成
N2雰囲気下、0.58部の2-ヨード-9H-フルオレン、1.10部の1-ヨードブタン、および0.67部のカリウムt-ブトキシドを、15部の無水テトラヒドロフラン中に加え、撹拌して混合した。その後、反応混合物を50℃に加熱し、12時間反応させた。反応混合物を冷却後、水を反応混合物中に注いで反応を停止し、ジエチルエーテルを用いて生成物を抽出し、硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を除去した後、残留物をカラムクロマトグラフィー法で、溶離液としてヘキサンを用いて精製して、本実施例の化合物(32)を得た。この化合物は淡黄色固体の形態であり、この化合物の収率は94%であった。
【0063】
実施例13
(7-ブロモ-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)-ビス-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)アミン(33)の合成
N2雰囲気下、0.37部の7-ブロモ-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イルアミン(31)、0.89部の9,9-ジブチル-2-ヨード-9H-フルオレン(32)、0.17部の水酸化カリウム、0.11部の1,10-フェナントロリン、および0.03部の塩化第一銅を、10部のトルエン中に加え、撹拌して混合した。その後、反応混合物を120℃に加熱し、還流下24時間反応させた。反応を水で停止した後、ジエチルエーテルを用いて生成物を抽出し、硫酸マグネシウムで脱水した。溶媒を除去した後、残留物をカラムクロマトグラフィー法で、溶離液としてジクロロメタン/ヘキサン共溶媒を用いて精製して、本実施例の化合物(33)を得た。この化合物は濃橙色固体の形態であり、この化合物の収率は57%であった。
【0064】
実施例14
5-[7-[ビス-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル]-チオフェン-2-カルバルデヒド(34a)の合成
本実施例の色素化合物の製造方法は、(7-ブロモ-9H-フルオレン-2-イル)-ジブチルアミン(11)を0.92部の(7-ブロモ-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)-ビス-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル) アミン(33)に置換した以外は、実施例2に記載した方法と同様であり、本実施例の化合物(34a)を得る。この化合物は濃橙色固体の形態であり、この化合物の収率は38%であった。
【0065】
実施例15
4-[7-[ビス-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)-アミノ]-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル]-ベンズアルデヒド(34b)の合成
本実施例の色素化合物の製造方法は、5-ホルミル-2-チオフェンボロン酸を0.18部の4-ホルミルフェニルボロン酸に置換した以外は、実施例14に記載した方法と同様であり、本実施例の化合物(34b)を得る。この化合物は黄色固体の形態であり、この化合物の収率は48%であった。
【0066】
実施例16
3-(5-[7-[ビス-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル]-チオフェン-2-イル)-2-シアノ-アクリル酸(35a)の合成
本実施例の色素化合物の製造方法は、5-(7-ジブチルアミノ-9H-フルオレン-2-イル)-チオフェン-2-カルバルデヒド(12a)を0.41部の5-[7-[ビス-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル]-チオフェン-2-カルバルデヒド(34a)に置換した以外は、実施例4に記載した方法と同様であり、本実施例の化合物(35a)を得る。この化合物は濃橙色固体の形態であり、この化合物の収率は51%であった。
【0067】
実施例17
3-(4-[7-[ビス-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル]-フェニル)-2-シアノ-アクリル酸(35b)の合成
本実施例の色素化合物の製造方法は、5-[7-[ビス-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル]-チオフェン-2-カルバルデヒド(34a)を0.42部の4-[7-[ビス-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)-アミノ]-9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル]-ベンズアルデヒド(34b)に置換した以外は、実施例16に記載した方法と同様であり、本実施例の化合物(35b)を得る。この化合物は濃橙色固体の形態であり、この化合物の収率は65%であった。
【0068】
実施例18
色素増感太陽電池の製造
直径20〜30nmのTiO2粒子を含有するペーストで、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)で覆ったガラス基板を1回または数回コートしたが、ここでガラス基板の厚さは4mmであり、ガラス基板の電気抵抗は10Ω/□である。次に、コートしたガラス基板を450℃で30分間焼結し、焼結多孔性TiO2層の厚さは10〜12μmであった。
【0069】
実施例4で製造した色素化合物をアセトニトリルとt-ブタノール(1:1 v/v)の混合物中に溶解し、0.5mMの色素化合物を含有する色素溶液を調製した。その後、上記の多孔性TiO2層で覆ったガラス基板を色素溶液に浸して、色素を多孔性TiO2層上に付着させた。16〜24時間後、得られたガラス基板を取り出し、乾燥して、光陽極を得た。
【0070】
フッ素ドープ酸化スズで覆ったガラス基板にドリルで穴を開け、直径0.75mmの注入口を形成し、ここで注入口は電解質を注入するために使用した。次に、H2PtCl6溶液(1mlエタノール中に2mgのPt)で、フッ素ドープ酸化スズで覆ったガラス基板をコートし、得られたガラス基板を15分間400℃に加熱して、陰極を得た。
【0071】
続いて、厚さ60μmの熱可塑性高分子層を、光陽極と陰極の間に配置した。これらの二つの電極を120〜140℃で押圧して、互いに接着した。
【0072】
次に、電解質を注入したが、ここで電解質はを0.03M I2/0.3M LiI/0.5M t-ブチルピリジンを含有するアセトニトリル溶液であった。注入口を熱可塑性高分子層で塞いだ後、本発明の色素増感太陽電池を得た。
【0073】
実施例19
色素増感太陽電池の製造
本実施例の色素増感太陽電池の製造方法は、実施例4で製造した色素化合物を実施例5で製造した色素化合物に置換した以外は、実施例18に記載した方法と同様である。
【0074】
実施例20
色素増感太陽電池の製造
本実施例の色素増感太陽電池の製造方法は、実施例4で製造した色素化合物を実施例9で製造した色素化合物に置換した以外は、実施例18に記載した方法と同様である。
【0075】
実施例21
色素増感太陽電池の製造
本実施例の色素増感太陽電池の製造方法は、実施例4で製造した色素化合物を実施例10で製造した色素化合物に置換した以外は、実施例18に記載した方法と同様である。
【0076】
実施例22
色素増感太陽電池の製造
本実施例の色素増感太陽電池の製造方法は、実施例4で製造した色素化合物を実施例16で製造した色素化合物に置換した以外は、実施例18に記載した方法と同様である。
【0077】
実施例23
色素増感太陽電池の製造
本実施例の色素増感太陽電池の製造方法は、実施例4で製造した色素化合物を実施例17で製造した色素化合物に置換した以外は、実施例18に記載した方法と同様である。
【0078】
試験方法および結果
UV-可視スペクトル
溶媒としてジメチルホルムアミドを使用して、実施例4、実施例5、実施例9、実施例10、実施例16および実施例17で製造した色素化合物を1.0×10-5M含有する色素溶液を調製した。次に、各色素溶液のUV-可視スペクトルを測定した。
【0079】
光電特性試験
実施例18〜23で製造した色素増感太陽電池の、短絡回路電流(JSC)、開路電圧(VOC)、充填係数(FF)、光電変換効率(η)、および量子効率(IPCE)を、AM 1.5の誘導光の照明下で測定した。試験結果を以下の表1に示す:
【0080】
【表1】

【0081】
表1に示す結果より、本発明の色素化合物は、高いモル吸光係数を有する。従って、本発明の色素化合物を使用する色素増感太陽電池は良好な光電変換効率を有する。
【0082】
結論として、本発明は、目的、方法および効率、またはさらに技術および研究および計画等のいくつかの点で、従来技術と異なる。本発明については、その好ましい態様に関して説明したが、本発明は、本明細書の後で特許請求した通りの発明の範囲を逸脱することなく、多数の他の可能な修正および変化がなされ得る。従って、本発明の範囲は、本明細書に添付した特許請求の範囲の通り規定されるべきであり、上記の実施例はいかなる点でも本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)で表される色素化合物、またはその塩:
【化1】

式中、
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、nは1、2または3であり;
D1およびD2は、それぞれ独立して、C1〜C12アルキル、
【化2】

であるか、または、D1、D2およびNが共に結合して、
【化3】

を形成し、式中、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R13およびR14は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、アミノまたはハロゲンであり、R9、R12およびR15は、それぞれ独立して、H、またはC1〜C12アルキルであり;
Bは、
【化4】

であり、式中、R16、R17およびR18は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、R19、R20、R21およびR22は、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルであり、ZはO、SまたはSeである。
【請求項2】
請求項1に記載の色素化合物であって、nが1である、色素化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の色素化合物であって、D1およびD2が、それぞれ独立して、C1〜C12アルキル、
【化5】

であり、式中、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、アミノまたはハロゲンであり、R9がHまたはC1〜C12アルキルである、色素化合物。
【請求項4】
請求項3に記載の色素化合物であって、Bが、
【化6】

であり、式中、R16はH、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、R19およびR22は、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルであり、ZはO、SまたはSeである、色素化合物。
【請求項5】
請求項4に記載の色素化合物であって、ZがSであり、nが1である、色素化合物。
【請求項6】
請求項5に記載の色素化合物であって、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR16が、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキルまたはC1〜C12アルコキシである、色素化合物。
【請求項7】
請求項6に記載の色素化合物であって、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR16が、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルである、色素化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の色素化合物であって、Bが、
【化7】

であり、式中、R16はH、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、R19はHまたはC1〜C12アルキルであり、ZはO、SまたはSeである、色素化合物。
【請求項9】
請求項8に記載の色素化合物であって、D1およびD2が、それぞれ独立して、C1〜C12アルキルまたは
【化8】

であり、式中、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、アミノまたはハロゲンである、色素化合物。
【請求項10】
請求項9に記載の色素化合物であって、ZがSであり、nが1である、色素化合物。
【請求項11】
請求項10に記載の色素化合物であって、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR16が、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシである、色素化合物。
【請求項12】
請求項11に記載の色素化合物であって、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR16が、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルである、色素化合物。
【請求項13】
請求項12に記載の色素化合物であって、R16およびR19がHである、色素化合物。
【請求項14】
請求項1に記載の色素化合物であって、色素化合物が色素増感太陽電池(DSSC)用の色素化合物である、色素化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の色素化合物であって、式(I)が以下の式(23a)または(35a)である、色素化合物:
【化9】

【請求項16】
請求項15に記載の色素化合物であって、色素化合物が色素増感太陽電池用の色素化合物である、色素化合物。
【請求項17】
色素増感太陽電池であって、
(a)以下の式(I)で表される色素化合物、またはその塩を含む光陽極:
【化10】

式中、
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、nは1、2または3であり;
D1およびD2は、それぞれ独立して、C1〜C12アルキル、
【化11】

であるか、または、D1、D2およびNが共に結合して、
【化12】

を形成し、式中、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R13およびR14は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、アミノまたはハロゲンであり、R9、R12およびR15は、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルであり;
Bは、
【化13】

であり、式中、R16、R17およびR18は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、R19、R20、R21およびR22は、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルであり、ZはO、SまたはSeである;
(b)陰極;および
(c)光陽極と陰極の間に配置された、電解質層
を含む、色素増感太陽電池。
【請求項18】
色素溶液であって、
(A)以下の式(I)に表される色素化合物、またはその塩であって、色素化合物の含量が0.01〜1重量%であり:
【化14】

式中、
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、nは1、2または3であり;
D1およびD2は、それぞれ独立して、C1〜C12アルキル、
【化15】

であるか、または、D1、D2およびNが共に結合して、
【化16】

を形成し、式中、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R13およびR14は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、アミノまたはハロゲンであり、R9、R12およびR15は、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルであり;
Bは、
【化17】

であり、式中、R16、R17およびR18は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシまたはハロゲンであり、R19、R20、R21およびR22は、それぞれ独立して、HまたはC1〜C12アルキルであり、ZはO、SまたはSeである;および
(B)有機溶媒であって、有機溶媒の含量は99.99〜99重量%であり、有機溶媒は、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミドおよびN-メチル-2-ピロリジノンより成る群から選択される:
を含む、色素溶液。

【公開番号】特開2010−116561(P2010−116561A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257584(P2009−257584)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(598062332)エバーライト ユーエスエー、インク (13)
【Fターム(参考)】