説明

色素増感太陽電池およびその製造方法

【課題】フレキシブルな円筒型色素増感太陽電池の透明部材と色素増感太陽電池構成部材の間に隙間を生じて光電変換効率の低下をきたすおそれが少ない色素増感太陽電池を提供する。
【解決手段】色素増感太陽電池10は、カソード電極層16、電解質層、集電電極20および色素を担持する多孔質半導体層18を有し、カソード電極層16を中心軸とし、この順で円筒状または円錐台状に積層して配列される色素増感太陽電池構成部材ユニット12を透明な熱収縮チューブ14で収縮被覆したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
色素増感太陽電池は、湿式太陽電池あるいはグレッツェル電池等と呼ばれ、シリコン半導体を用いることなく電解液を使用した電気化学的なセル構造を持つ点に特徴がある。例えば、透明な導電性ガラス板等のアノード電極に二酸化チタン粉末等を焼付け、これに色素を吸着させて形成したチタニア層等の多孔質半導体層と導電性ガラス板(導電性基板)等からなる対極(カソード電極)の間に電解質としてヨウ素溶液等を配置した、簡易な構造を有する。
【0003】
色素増感太陽電池は、シリコン系の太陽電池と比べて材料が安価であり、作製に大掛かりな設備を必要としないことから、低コストの太陽電池として注目されている。
色素増感太陽電池は平板状の構造が一般的である。例えば、透明電極、色素を吸着した半導体電極および対極等の色素増感太陽電池構成部材を積層し、周辺を接着剤等により封止したうえで電解液を注入する。しかし、長期間にわたる屋外暴露または高温高湿度の環境下においては、封止部分から電解液の漏出や空気や水分の進入が起こり、電池の劣化につながるおそれがあった。さらに、電池を大型化すると、封止部分の面積も大きくなるため、電池の劣化のおそれがさらに高まる問題があった。
【0004】
従来の色紙増感太陽電池における上記の欠点に鑑み、透明ガラス管の内面にアノード電極層、色素増感多孔質半導体層、電解質層およびカソード電極が順次設けられた円筒構造を有する円筒型色素増感太陽電池が提案されている(特許文献1)。
このような円筒構造の色素増感太陽電池は、平板状の構造の色素増感太陽電池と比べて、大型化しても封止箇所が少なく、耐久性が高いといえる。
【0005】
しかし、上記の色素増感太陽電池は透明ガラス管を用いるため、曲げることができるフレキシブルな円筒型色素増感太陽電池に対するニーズに対応することはできない。
【0006】
このニーズに対応して、樹脂基板からなる筒状の透明部材の中に、筒状の第二電極の外側に第一電極をコイル状に巻きつけたものを配置した光電変換素子が提案されている(特許文献2)。
【0007】
しかし、このフレキシブルな円筒型色素増感太陽電池は、筒状等に形成した透明部材の内部に色素増感太陽電池構成部材を収容するものであるため、透明部材と色素増感太陽電池構成部材の間に隙間を生じるおそれがある。隙間を生じると、電解質がその隙間に漏れこみ、透明部材を通過した入射光が、電極に到達する前に隙間に溜まった電解質に一部吸収され、十分な光電変換が行われないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−77550号公報
【特許文献2】特開2010−40391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、従来のフレキシブルな円筒型色素増感太陽電池は、透明部材と色素増感太陽電池構成部材の間に隙間を生じ、光電変換効率の低下をきたすおそれがある点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、透明部材を熱収縮チューブとすることにより、透明部材と色素増感太陽電池構成部材の間に隙間を生じないフレキシブルな円筒型太陽電池が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る色素増感太陽電池は、カソード電極層、電解質層、集電電極および色素を担持する多孔質半導体層を有する色素増感太陽電池構成部材ユニットが、該カソード電極層を中心軸とし、この順で円筒状または円錐台状に積層して配列され、該色素増感太陽電池構成部材ユニットを透明な熱収縮チューブで収縮被覆してなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る色素増感太陽電池は、好ましくは、前記透明な熱収縮チューブが、140℃で熱処理した時の収縮率が10%以上の材料で形成されてなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る色素増感太陽電池は、好ましくは、前記透明な熱収縮チューブの材料がフッ素樹脂であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る色素増感太陽電池の製造方法は、カソード電極層、電解質層、集電電極および色素を担持する多孔質半導体層を有する色素増感太陽電池構成部材ユニットを、該カソード電極層を中心軸とし、この順で円筒状または円錐台状に積層して配列し、該色素増感太陽電池構成部材ユニットを透明な熱収縮チューブで被覆する工程と、該透明な熱収縮チューブを熱処理して収縮させる工程と、該透明な熱収縮チューブの端部を封止する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る色素増感太陽電池は、色素増感太陽電池構成部材ユニットを透明な熱収縮チューブで収縮被覆してなるため、熱収縮チューブと色素増感太陽電池構成部材ユニットの間に隙間を生じて光電変換効率の低下をきたすおそれが少ない。
また、本発明に係る色素増感太陽電池の製造方法は、色素増感太陽電池構成部材ユニットを透明な熱収縮チューブで被覆し、透明な熱収縮チューブを熱処理し、端部を封止するため、上記本発明に係る色素増感太陽電池の効果を好適に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本実施の形態に係る色素増感太陽電池を径方向からみた断面図である。
【図2】図2は本実施の形態に係る色素増感太陽電池長手方向からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0018】
まず、本実施の形態に係る色素増感太陽電池について、図1および図2を参照して説明する。
【0019】
図1および図2に示す本実施の形態に係る色素増感太陽電池10は、色素増感太陽電池構成部材ユニット12を透明な熱収縮チューブ14で収縮被覆したものである。
色素増感太陽電池構成部材ユニット12は、カソード電極層16、電解質層(図示せず。)、集電電極20および色素を担持する多孔質半導体層18を有する。色素増感太陽電池構成部材ユニット12は、カソード電極層16を中心軸とし、カソード電極層16の外周に、電解質層(図示せず。)、集電電極20および色素を担持する多孔質半導体層18がこの順で円筒状または円錐台状に積層して配列される。ただし、正確には、電解質層は、色素増感太陽電池構成部材ユニット12を作製した後で、カソード電極層16と集電電極20の間に画成した空間に電解液を注入することにより形成される。この点は、後述する本実施の形態に係る色素増感太陽電池の製造方法においても同様である。なお、参照符号22は、カソード電極層16と集電電極20を絶縁する多孔質な絶縁層を示す。
絶縁層22と集電電極20の間に配置される電解質層の電解液は、色素増感太陽電池10組み立て状態において、詳細を後述する多孔質な集電電極20を介して多孔質半導体層18に含浸される。
【0020】
色素増感太陽電池10は、いわばファイバ型あるいはチューブ型であり、従来の平板型、言い換えればフラットパネル型の色紙増感太陽電池に比べて、光の入射角度に対する発電量の変化を大幅に低減することができ、また、封止箇所が少ないため耐久性が高い。
【0021】
透明な熱収縮チューブ14は、熱により収縮する性質を持つ樹脂材料であれば特に限定しないが、好ましくは、140℃で熱処理した時の材料の収縮率が10%以上であることが好ましい。ここで、収縮率は、体積収縮率ではなく、長さの変化から求めるいわば線収縮率をいう。収縮率の上限は特にないが、例えば強度と耐久性の観点からは80%以下程度であることが好ましい。具体的な材料は、好ましくはフッ素樹脂であり、その中でもさらに好ましくはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)およびPFEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化))である。
透明な熱収縮チューブ14の厚みは、特に限定するものではないが、好ましくは200〜1000μmである。
透明な熱収縮チューブ14の寸法は、材料の収縮率を考慮したうえで、組み立てる色素増感太陽電池構成部材ユニット12の外形寸法よりも例えば10%程度大きなチューブ状に形成したものを用いる。ただし、透明な熱収縮チューブ14の厚みが薄くかつ材料の収縮率が大きい場合等は、極端に言えば袋状あるいはシート状の透明な熱収縮チューブ14を用いることもできる。すなわち、透明な熱収縮チューブ14は、収縮状態においては色素増感太陽電池構成部材ユニット12の外形形状に応じて円筒状または円錐台状に形成されるものであるが、収縮前の原形は筒状形状に限定されるものではない。
【0022】
カソード電極層16の材料は、例えばチタンの膜または棒の表面に白金をスパッタリング等で積層したものや、チタンの代わりに導電性金属を用いて白金を積層したものが挙げられる。
【0023】
多孔質半導体層18の材料は、例えば、Ti、Sn、Zr、Zn、In、W、Fe、Ni、Ag等の金属の酸化物を用いることができるが、このうちTiまたはSnの酸化物がより好ましい。
多孔質半導体層18は、半導体材料が300℃以上の温度で焼成されたものであり、より好ましくは、450℃以上の温度で焼成されたものである。一方、焼成温度の上限は特にないが、多孔質半導体層の材料の融点よりは十分に低い温度とし、より好ましくは550℃以下とする。
多孔質半導体層18の厚みは、特に限定するものではないが、好ましくは3〜20μmとする。
多孔質半導体層18に担持される色素は少なくとも400〜1000nmの波長のいずれかに吸収を持つものであり、例えば、ルテニウム色素、フタロシアニン色素等の金属錯体、シアニン色素等の有機色素を挙げることができる。色素の吸着の方法は特に限定されないが、例えば、色素溶液に焼成した多孔質半導体を浸し、表面に色素を化学吸着させるいわゆる含浸法を用いることができる。
【0024】
集電電極20は、例えば、金網、エキスパンドメタル、有孔の金属箔、金属焼結体、有効の導電性金属層を有孔の板上に設けたもの等の多孔質金属を用いる。
集電電極20の材料は、良好な導電性を有し、かつ電解質により腐食または溶出しないものであれば特に限定するものではなく、例えば、Ti
、W、Ni、Pt、Ta、Nb、Zr、Fe、Cu、CrおよびAuからなる群から選ばれる1種または2種以上の金属材料またはこれらの化合物を好適に用いることができる。また、ステンレス等、電解質により腐食恐れがある金属材料を用いる場合は、金属材料表面に耐食性の良好な金属材料をスパッタリング、メッキ、蒸着等してもよい。
集電電極20の厚みは、特に限定するものではないが、好ましくは5〜40μmとする。
【0025】
絶縁層32の材料は、良好な絶縁性を有し、電解質により腐食または溶出しない多孔質であれば特に限定するものではなく、例えば、ガラス繊維成形体、多孔質アルミナ板等の無機多孔体、耐熱性多孔質プラスチック等の有機多孔体が挙げられるが、好ましくはガラスペーパー等のガラス繊維成形体またはテフロン(テフロンは登録商標)等の有機多孔体である。
絶縁層32の厚みは、特に限定するものではないが、好ましくは10〜40μmである。
【0026】
電解質層の材料は、特に限定されないが、例えば、ヨウ素、リチウムイオン、イオン液体、t−ブチルピリジン等を含むものであり、ヨウ素の場合、ヨウ化物イオンおよびヨウ素の組み合わせからのなる酸化還元体を用いることができる。また、コバルト等の金属錯体を酸化還元対として用いてもよい。また、この酸化還元体を溶解可能な溶媒を含むものであり、例えば、アセトニトリル、γブチロラクトン、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、イオン性液体等が挙げられる。
【0027】
以上説明した本実施の形態に係る色素増感太陽電池10は、色素増感太陽電池構成部材ユニット12を透明な熱収縮チューブ14で収縮被覆しているため、熱収縮チューブ14と色素増感太陽電池構成部材ユニット12の間に隙間を生じて電解質(電解液)がその隙間に漏れこみ、入射光が、電極に到達する前に電解質(電解液)の液溜まりに一部吸収され、十分な光電変換が行われないことに起因する光電変換効率の低下をきたすおそれが少ない。
【0028】
つぎに、本実施の形態に係る色素増感太陽電池の製造方法について、先の図1および図2を再び参照して説明する。
【0029】
本実施の形態に係る色素増感太陽電池の製造方法は、カソード電極層16、電解質層、集電電極20および色素を担持する多孔質半導体層18を有する色素増感太陽電池構成部材ユニット12を、カソード電極層16を中心軸とし、この順で円筒状または円錐台状に積層して配列し、色素増感太陽電池構成部材ユニット12を透明な熱収縮チューブ(以下、単に、熱収縮チューブということがある。)14で被覆する工程と、透明な熱収縮チューブ14を熱処理して収縮させる工程と、透明な熱収縮チューブ14の端部を封止する工程を有する。
以下の記載で説明を省略した部分は、上記本実施の形態に係る色素増感太陽電池10の対応する説明を参照できる。
【0030】
まず、色素増感太陽電池構成部材ユニット12を透明な熱収縮チューブ14で被覆する工程を説明する。
色素増感太陽電池部材ユニット12の各構成要素を別々に作製して熱収縮チューブで被覆することができる。また、各色素増感太陽電池部材を積層して一体化して作製した電極ユニット12を熱収縮チューブ14で被覆してもよい。色素増感太陽電池10の製造効率および色素増感太陽電池部材が劣化した場合の交換のしやすさの観点から、予め電極ユニット12を作製することが好ましい。
【0031】
つぎに、透明な熱収縮チューブ14を熱処理して収縮させる工程を説明する。
色素増感太陽電池部材ユニット12を被覆した熱収縮チューブ14を熱処理するとき、熱収縮チューブ14が収縮後に太陽電池部材ユニット12を密着させる内径のものを選定し、また、色素増感太陽電池部材ユニット12を覆い被せる長さに合わせる必要がある。熱収縮チューブ14は100℃〜300℃で収縮するものが適用できる。100℃未満では、太陽電池部位に密着するのに十分な収縮度が得られず、十分な収縮度になるには時間を要する恐れがある。また300℃を超える高い温度をかけた場合、短時間で収縮はするものの、色素等の太陽電池部位の劣化する恐れがあるため、材料に耐熱性にあった温度で行なうのがよい。好ましい熱収縮温度は、100〜150℃である。
以上説明した点は、上記本実施の形態に係る色素増感太陽電池10の対応する透明な熱収縮チューブ14に適用できる。
熱処理方法は、熱風乾燥機、オーブン、ドライヤーなどの熱風、ヒーターガスバーナー等の生火、赤外線等、熱を与えることで熱収縮チューブは収縮する。熱風乾燥機、赤外線オーブン等、熱収縮チューブ全体に均等に熱がかかるもが好ましい。加熱収縮が完了したら、ゆっくりと室温まで冷やす。加熱冷却時はチューブの収縮を妨げないように熱収縮チューブ部分を浮かせ、外力がかからないようにするのが好ましい。
【0032】
上記熱処理工程により、色素増感太陽電池部材ユニット12と熱収縮チューブ14とは十分密着する。つぎに、この色素増感太陽電池部材ユニット12のカソード電極層16と集電電極20の間、または絶縁層22を設ける場合は絶縁層22と集電電極20の間に電解液を注入する。
【0033】
電解液を注入する方法は、カソード電極層16と集電電極20の間等に電解液を直接注入することは必ずしも容易ではないため、色素を担持する多孔質半導体層18および集電電極20が多孔質であることを利用して、色素増感太陽電池部材ユニット12と熱収縮チューブ14の端部の隙間から注射器を利用して電解液を注入してもよく、また、熱収縮チューブ14に直接注射器を刺し電解液を注入してもよい。また、減圧状態下で熱収縮チューブ14の端部から毛細管現象を利用し電解液を浸透させてもよく、さらにまた、予めカソード電極層16の内部に多孔質な絶縁層32に連通する注入穴を開けておき、注入穴から絶縁層32を介して絶縁層32と集電電極20の間に電解液を注入してもよい。電解液を注入しやすくするため色素増感太陽電池部材の大きさやチューブ端部の開口の度合いによってはチューブ端部全体または一部を封止しておいてもよい。
【0034】
つぎに、透明な熱収縮チューブ14の端部を封止する工程について説明する。
【0035】
先に注入した電解液が漏れないよう、挿入した太陽電池部材ユニット12と熱収縮チューブ14の端部を、封止する必要がある。
図2中矢印Aで示す封止構造としては、例えば、UV硬化樹脂等の封止材を用いる方法がある。UV硬化樹脂を塗布し、UV光を当て硬化させる。液が漏れてこないよう数回に分けて塗布・硬化を繰り返すのが好ましい。また、熱硬化樹脂封止材を用いる場合は、熱硬化樹脂を塗布し、室温から60℃程度の低い温度で硬化を行なってもよい。また、太陽電池部位をねじやスロープ、フランジに加工し、パッキンやクランプ、ねじ蓋、フランジ等で機械的に締め付けることで封止してもよい。また、熱収縮チューブ14の端部を樹脂または金属ワイヤー等で幾重にも巻き付けることで封止してもよい。また、熱収縮チューブ14を加熱して封止してもよい。
【0036】
以上説明した本実施の形態に係る色素増感太陽電池の製造方法によれば、本実施の形態に係る色素増感太陽電池10を好適に得ることができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例)
外径3mm長さ100mmのチタン棒の側面に白金をスパッタリングして対極(カソード電極層)を作製した。次に、幅11mm長さ70mm厚さ32μmのテフロン製の絶縁シート(これを絶縁層とする。)を、対極の両端を各15mm残すように巻きつけ、幅10mmのポリイミドテープで絶縁層の両端を対極に固定して、絶縁層付き対極を作製した。
また、幅11mm、長さ100mm、厚さ40μmのステンレスメッシュの両面に、厚さ300nmになるようにチタンをスパッタリングして集電電極を作製し、さらに、ステンレスメッシュの片面のみにチタニアペーストを乾燥後膜厚が15μmになるように、前記ステンレスメッシュの両端を各15mm残すように塗布し、500℃で30分焼成してチタニア層(多孔質半導体層)を形成した。さらに0.05wt%の色素溶液(ブラックダイ、ソラロニクス社製 アセトニトリル:tブチルアルコール=1:1)に前記ステンレスメッシュを72時間浸漬して、色素を含浸した多孔質半導体層を有する集電電極を作製した。
そして、対極に、集電電極を、多孔質半導体層を外側に向けて巻きつけ、幅10mmのポリイミドテープで集電電極の両端を前記絶縁層付き対極に固定して、集電電極と対極が触れて短絡しないように電極ユニット(色素増感太陽電池部材ユニット)を作製した。
さらに、内径4.4mm、長さ80mm、肉厚約0.2mmの透明熱収縮チューブ(PFEPフッ素樹脂熱収縮チューブ NFL050)の内部に、電極ユニットの両端を各10mm残すように、電極ユニットを挿入した。これを、140℃のオーブンで加熱した。熱収縮チューブが十分収縮したのを確認した後、オーブンから取り出し、室温まで冷却した。熱収縮後のチューブ直径の測定値は3.6mmであった。
さらに、熱収縮チューブ電極ユニットの隙間から、ヨウ素40mM、LiI500mMおよびt−Butylpyridine580mMの3−メトキシプロピオニトリル溶液からなる電解質を注入し、熱収縮チューブの両端にUV硬化樹脂を塗布およびUV硬化させて封止し、色素増感太陽電池を作製した。
ソーラーシミュレータを用いてAM1.5、100mW/cm2の擬似太陽光を照射して測定した色素増感太陽電池の太陽電池特性は、Voc 0.71V/cm2、Jsc 9.67mA/cm2、FF 0.66、変換効率4.52%の出力であった。
【0039】
(比較例)
実施例の熱収縮チューブの代わりに、外径6mm、内径4mm、長さ70mmの透明ガラス管を使用した以外は、実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。ガラス管と電極ユニットの間の隙間に電解質が染み出しているのが確認された。
作製した色素増感太陽電池の太陽電池特性は、Voc 0.68V/cm2、Jsc 9.10mA/cm2、FF 0.54、変換効率3.33%の出力であった。
【符号の説明】
【0040】
10 色素増感太陽電池
12 色素増感太陽電池構成部材ユニット
14 透明な熱収縮チューブ
16 カソード電極層
18 色素を含浸した多孔質半導体層
20 集電電極
22 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード電極層、電解質層、集電電極および色素を担持する多孔質半導体層を有する色素増感太陽電池構成部材ユニットが、該カソード電極層を中心軸とし、この順で円筒状または円錐台状に積層して配列され、該色素増感太陽電池構成部材ユニットを透明な熱収縮チューブで収縮被覆してなることを特徴とする色素増感太陽電池。
【請求項2】
前記透明な熱収縮チューブが、140℃で熱処理した時の収縮率が10%以上の材料で形成されてなることを特徴とする請求項1記載の色素増感太陽電池。
【請求項3】
前記透明な熱収縮チューブの材料がフッ素樹脂であることを特徴とする請求項1記載の色素増感太陽電池。
【請求項4】
カソード電極層、電解質層、集電電極および色素を担持する多孔質半導体層を有する色素増感太陽電池構成部材ユニットを、該カソード電極層を中心軸とし、この順で円筒状または円錐台状に積層して配列し、該色素増感太陽電池構成部材ユニットを透明な熱収縮チューブで被覆する工程と、該透明な熱収縮チューブを熱処理して収縮させる工程と、該明な熱収縮チューブの端部を封止する工程を有することを特徴とする色素増感太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−41734(P2013−41734A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177369(P2011−177369)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的イノベーション創出推進事業「フレキシブル浮遊電極をコア技術とする新太陽電池分野の創成」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006644)新日鉄住金化学株式会社 (747)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】