説明

色素増感太陽電池用電極及びその製造方法ならびに色素増感太陽電池セル

【課題】容易に且つ短時間で製造されると共に、環境保護の観点からも好ましい色素増感太陽電池用電極の製造方法と発電効率の改善された色素増感太陽電池用電極を提供する。
【解決手段】形状異方性を有するフィラーと半導体素材とを含有する塗布材料を導電性基材の表面に塗布する工程と、塗布材料が塗布された導電性基材を磁場中で保持し、塗布材料中のフィラーを磁力線に沿って導電性基材の表面に対して所定の角度を有するように配向させる工程と、磁場処理した塗布材料を焼成して半導体電極を生成する工程と、半導体電極を染色する工程とを経て色素増感太陽電池用電極を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池用の電極及びその製造方法と、この色素増感太陽電池用電極を利用した色素増感太陽電池セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、クリーンエネルギーとして太陽光発電が注目されてきており、そのために太陽光を電気に変換するための太陽電池が既に実用化されている。太陽電池は、半導体により太陽光を吸収してエネルギー変換を行なうものであるが、半導体はそのエネルギーギャップが大きいことから、太陽光に多く含まれる可視光を吸収することができない。このため、半導体に色素を混入して、光吸収率を高めて、所謂光増感を行なっている。従って、このような太陽電池は、色素増感太陽電池とも呼ばれている。
【0003】
このような色素増感太陽電池は、例えば図9に示すように構成されている。
即ち、図9において、色素増感太陽電池100は、二枚の透明導電基材102,1033の間に酸化チタン多孔質電極104とヨウ化物溶液からなる電解質溶液105が挟持され、周囲が封止材料(図示せず)により封止されて構成されている。
酸化チタン多孔質電極4は、粒径が約20nmの微粒子(酸化チタン粒子)とその表面に化学結合した色素(例えば、ルテニウム錯体)により構成されている。
酸化チタン多孔質電極104に対向する透明導電基材102表面には、電解質溶液中の酸化還元体と電子のやり取りをするために、触媒として微量の白金(厚さ数nm)が塗布されている。
【0004】
透明導電性基板102上には、スクリーン印刷等の印刷プロセスにより酸化チタン多孔質層が形成され、酸化チタン多孔質層が形成された透明導電性基板を色素溶液に浸漬・乾燥させることにより、酸化チタン多孔質層に色素が担持されて酸化チタン多孔質電極104が製造される。
さらに、酸化チタン多孔質電極104と透明導電基材102との貼り合わせ及び電解質溶液の注液工程は、液晶セルの製造の場合と同様に行なわれる。
このため、色素増感太陽電池は、一般的にシリコン系太陽電池と比較して簡便な方法で作製可能である。
【0005】
このような構成の色素増感太陽電池によれば、太陽光が入射すると、酸化チタン多孔質電極104内の色素が太陽光を吸収する。これにより、光励起された色素から電子が酸化チタン多孔質電極104の酸化チタン粒子に移動し、さらに酸化チタン粒子に移動した電子は、酸化チタン粒子間を移動して、色素増感太陽電池のセル外部に取り出される。
電子を放出した色素は、ヨウ素イオンにより還元され再生する。そして、三ヨウ化物イオンが、溶媒中を移動して、対極で電子を受け取って、ヨウ素イオンに再生する。
【0006】
このような現象は、太陽光が照射されている間に連続的に発生し、酸化チタン中の電子の移動する準位(n型半導体酸化チタンのフェルミレベル)とヨウ素イオン・三ヨウ化物イオンの酸化還元電位との差により、太陽電池の電圧が表わされる。
【0007】
しかし、半導体(酸化チタン)による光吸収の反応効率が低く、太陽電池としての出力パワーが低いという問題がある。そこで、半導体層の表面積を大きくして、光の吸収効率を向上させることにより、半導体層における反応効率を向上させることが試みられている。例えば、半導体である酸化チタンを微粒子化して、その表面積を例えば100倍程度に大きくすることがよく知られている。
【0008】
この他にも、特許文献1には、酸化亜鉛を基材上で結晶成長させて針状の構造体を得るようにした、針状結晶の配列体を含む複合体及びその製造方法、ならびに光電変換素子、発光素子及びキャパシタが開示されている。
【0009】
特許文献2には、電着により半導体薄片結晶を基材上で結晶成長させるようにした、光電変換装置及びその製造方法が開示されている。
【0010】
特許文献3には、基材上に緻密な金属酸化物層と、柱状構造を有する金属酸化物層と、を有する金属酸化物膜及び色素増感太陽電池が開示されている。
【0011】
特許文献4には、多孔性の陽極酸化被膜の表面及び孔の内面に形成された光触媒能を有する二酸化チタンから成る光触媒被膜及びその製造方法が開示されている。
【0012】
特許文献5には、一側(アノード側)の透明電極層から基材平面に対して垂直方向に半導体結晶が結晶成長した柱状結晶組織として形成された多孔質の半導体結晶層を形成し、この半導体結晶層のスパッタ法による成膜処理中に透明電極層の温度、スパッタガスの特性及び構造を制御するようにした、電極用基材及びその製造方法並びに光電変換装置が開示されている。
【0013】
特許文献6には、光透過性基材上に拡散防止膜を介して、反対側表面に三角錐、円柱等の任意の凹凸形状の多数の突起を有する透明電極を配置し、この透明電極の突起側の表面を光吸収半導体層で被膜すると共に、電荷移動層を介して対極を対向配置した光電変換素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO2006/129650号公報
【特許文献2】特開2001−358347号公報
【特許文献3】特開2006−351355号公報
【特許文献4】特開2007−325995号公報
【特許文献5】特開2007−149455号公報
【特許文献6】特開2005−310388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1による複合体及びその製造方法、ならびに光電変換素子、発光素子及びキャパシタにおいては、構造的には大きな表面積が得られるが、結晶成長させた針状の構造体は、粒状結晶と比較して表面積が小さくなってしまう。
【0016】
特許文献2による光電変換装置及びその製造方法においては、結晶成長のためにCVD、PVDや電着の工程が必要となり、反応炉等の設備が必要になると共に、時間及び手間がかかるため、半導体薄片結晶を容易に作製することは困難であると共に、フィラーを垂直に配光させるための方法については、具体的に記述されていない。
【0017】
特許文献3による金属酸化物膜及び色素増感太陽電池においては、金属酸化物膜が真空蒸着法により作製されるようになっている。このため、真空蒸着法において真空チャンバが必要になると共に、構造体の大きさを制御するために圧力を変化させる必要があり、作業が複雑になり、また真空排気の時間が必要になって工程全体の時間が長くなってしまう。
【0018】
特許文献4による光触媒被膜及びその製造方法においては、多孔性の陽極酸化被膜を電解処理して、二酸化チタンから成る光触媒被膜を形成するので、電解処理液が廃液となるため、同様に環境保護の点から問題がある。
【0019】
特許文献5による電極用基材及びその製造方法並びに光電変換装置においては、半導体結晶層をスパッタ法により成膜するため、反応炉等の設備が必要になり、設備コストが増大すると共に、時間及び手間がかかり、またスパッタガスを排出するため、環境保護の点で問題がある。
【0020】
特許文献6による光電変換素子においては、例えばゾルゲル法または塗布熱分解法と、陽極酸化アルミニウム等の鋳型またはスタンプにより凹凸形状を形成する手法と、を組み合わせて、電析法や水熱法等により突起部を備えた透明電極が形成される。従って、この場合も同様に化学的プロセスにおいて、廃液が発生するため、同様に環境保護の点で問題がある。
【0021】
本発明の目的は、容易に且つ短時間で製造され得ると共に、環境保護の観点からも好ましい色素増感太陽電池用電極の製造方法を提供することを第一の目的とする。また、発電効率の改善された色素増感太陽電池用電極及び色素増感太陽電池セルを提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の色素増感太陽電池用電極の製造方法は、第一に、形状異方性を有するフィラーと半導体素材とを含有する塗布材料を導電性基材の表面に塗布する工程と、塗布材料が塗布された導電性基材を磁場中で保持し、塗布材料中のフィラーを磁力線に沿って導電性基材の表面に対して所定の角度を有して一部を突出させ配向させる工程と、磁場処理した塗布材料を焼成して半導体電極を生成する工程と、半導体電極を染色する工程とを含むことを特徴とする。
【0023】
第二に、形状異方性を有するフィラーと半導体素材とを含有する塗布材料を導電性基材の表面に塗布する工程と、塗布材料が塗布された導電性基材を磁場中で保持し、塗布材料中のフィラーを磁力線に沿って導電性基材の表面に対して所定の角度を有するように配向させ、かつ、磁気アルキメデス効果により塗布材料中で浮遊させ、導電性基材の上面に一部を突出させて偏位させる工程と、磁場処理した塗布材料を焼成して半導体電極を生成する工程と、半導体電極を染色する工程とを含むことを特徴とする。
【0024】
第三に、形状異方性を有するフィラーと光硬化素材とを含む塗工材料を合成樹脂基板の表面に塗布する工程と、塗工材料が塗布された合成樹脂基板を磁場中で保持し、塗工材料中のフィラーを磁力線に沿って合成樹脂基板の表面に対して所定の角度を有して配向させる工程と、磁場処理した塗工材料表面に、半導体素材が塗布された導電性基材を重ね、焼成して半導体電極を生成する工程と、半導体電極を染色する工程とを含む、色素増感太陽電池用電極の製造方法を提供する。
【0025】
第四に、形状異方性を有するフィラーと光硬化素材とを含む塗工材料を合成樹脂基板の表面に塗布する工程と、塗工材料が塗布された合成樹脂基板を磁場中で保持し、塗工材料中のフィラーを磁力線に沿って合成樹脂基板の表面に対して所定の角度を有するように配向させ、かつ、磁気アルキメデス効果により塗工材料中で浮遊させ、導電性基材の上面に偏位させる工程と、磁場処理した塗工材料表面に、半導体素材が塗布された導電性基材を重ね、焼成して半導体電極を生成する工程と、半導体電極を染色する工程とを含む、色素増感太陽電池用電極の製造方法を提供する。
【0026】
本発明の色素増感太陽電池用電極は、第一に、導電性基材と、導電性基材の表面に形成された半導体層と、半導体層から突出して配向するフィラーとを備え、フィラーは形状異方性を有し、半導体と混合されて導電性基材の表面に塗布され、導電性基材とともに磁場中に保持されて、磁力線に沿って導電性基材の表面に対して所定の角度を有して一部を突出して表面領域に配位させられた後、導電性基材及び上記半導体とともに焼成されて半導体電極を生成し、さらに半導体電極が染色されて成る、色素増感太陽電池用電極を提供する。
【0027】
第二に、導電性基材と、導電性基材の表面に形成された半導体層と、半導体層から突出して配向するフィラーとを備え、フィラーは形状異方性を有し、半導体と混合されて導電性基材の表面に塗布され、導電性基材とともに磁場中に保持されて、磁力線に沿って、かつ、磁気アルキメデス効果により塗工材料中で浮遊させられて導電性基材の表面に対して所定の角度を有して一部を突出して表面領域に偏位させられた後、導電性基材及び半導体とともに焼成されて半導体電極を生成し、さらに半導体電極が染色されて成る、色素増感太陽電池用電極を提供する。
【0028】
第三に、導電性基材と、導電性基材の表面に形成された半導体層と、半導体層から突出して配向するフィラーとを備え、フィラーは形状異方性を有し、光硬化素材と混合されて合成樹脂基板の表面に塗布され、合成樹脂基板とともに磁場中に保持されて、磁力線に沿って合成樹脂基板の表面に対して所定の角度を有して表面領域に配位させられ、光硬化素材がエッチング処理された後、半導体を塗布した導電性基材が重ねられ焼成されて半導体電極を生成し、さらに半導体電極が染色されて成る、色素増感太陽電池用電極を提供する。
【0029】
第四に、導電性基材と、導電性基材の表面に形成された半導体層と、半導体層から突出して配向するフィラーとを備え、フィラーは形状異方性を有し、光硬化素材と混合されて合成樹脂基板の表面に塗布され、合成樹脂基板とともに磁場中に保持されて、磁力線に沿って、かつ、磁気アルキメデス効果により塗布材料中で浮遊させられて合成樹脂基板の表面に対して所定の角度を有して表面領域に偏位させられ、光硬化素材がエッチング処理された後、半導体を塗布した導電性基材が重ねられ焼成されて半導体電極を生成し、さらに半導体電極が染色されて成る、色素増感太陽電池用電極を提供する。
【0030】
本発明の色素増感太陽電池セルは、前述した第一〜第四のいずれかの色素増感太陽電池用電極と、導電性材料をコーティングした導電性基材とを対向させて、上記色素増感太陽電池用電極と上記導電性基材との間にヨウ化物溶液を電解質として封止してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の方法は、容易に且つ短時間で色素増感太陽電池用電極を製造することができ、大量の廃液処理を行う必要もなく環境保護の観点から好ましい。本発明の製造方法により得られる色素増感太陽電池用電極は色素吸着面積が大きいため発電効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の色素増感太陽電池用電極の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図2】実施形態1及び実施形態2の色素増感太陽電池用電極の製造における超伝導磁石による磁場印加工程を示す一部破断斜視図である。
【図3】実施形態1及び実施形態2の磁場処理前の導電性基材上のフィラーの状態を示す模式図である。
【図4】実施形態1及び実施形態2の磁場処理後の導電性基材上のフィラーの状態を示す模式図である。
【図5】実施形態1及び実施形態2の超伝導磁石による磁場印加及び磁場勾配を示す図である。
【図6】本発明の色素増感太陽電池用電極の製造方法の別の実施形態を示すフローチャートである。
【図7】実施形態1の超伝導磁石による磁場印加及び磁場勾配を示す概略図である。
【図8】実施例1で得られた電極のSEM像を表わす図である。
【図9】従来の色素増感太陽電池セルの一例の構成を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0034】
(実施形態1)
本発明の色素増感太陽電池の第一実施形態を図1Aに示す。すなわち、本発明の色素増感太陽電池の製造方法は、(1)形状異方性を有するフィラーと半導体素材とを含有する塗布材料を導電性基材の表面に塗布する工程と、
(2)塗布材料が塗布された導電性基材を磁場中で保持し、塗布材料中のフィラーを磁力線に沿って導電性基材の表面に対して垂直又は所定の角度を有して一部を突出させて配向させる工程、又は、(2’)塗布材料中のフィラーを磁力線に沿って導電性基材の表面に対して垂直又は所定の角度を有して一部を突出させて配向させ、かつ、磁気アルキメデス効果により塗布材料中で浮遊させ、導電性基材の上面に偏位させる工程と、
(3)磁場処理した塗布材料を焼成して半導体電極を生成する工程と、
(4)半導体電極を染色する工程と、を含むことを特徴とする。
【0035】
フィラーは、形状異方性を備えた形状を有している。ここで、形状異方性とは、一方向に長い形状即ち細長い形状を意味し、例えば針状、円柱または多角柱等の柱状、円錐または多角錘等の錘状、あるいは板状、鱗状等である。
フィラーは、また、その長手方向に関して、例えば2以上のアスペクト比を有していることが望ましい。ここで、アスペクト比とは、長さと幅又は直径との比率(長さ/幅)のことである。
【0036】
フィラーの素材は、多孔質構造を有するものが好ましく、磁性体あるいは非磁性体材料であってもよい。例えばアルミニウム、金、銀等の金属微粒子や、カーボン、ITO、酸化亜鉛、マイカ(雲母)等の無機材料、ポリマー微粒子等の有機材料であって、ウィスカ構造を有する材料を用いることができる。
【0037】
塗布材料は、TiO、SnO、ZnO、Nb、ZrO、CeO、WO、SiO、Al、SrTiOなどの酸化物もしくはこれらの複合酸化物のような半導体素材中にフィラーを添加したものであり、半導体素材と十分に混合された状態で導電性基材の表面に塗布される。塗布材料には界面活性剤等の添加剤が使用されていてもよい。
【0038】
導電性基材は、導電性ガラスや金属箔白金、グラファイト、カーボンブラックのような無機素材、あるいはPEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))のような耐熱性樹脂から成るフィルム状のものである。なお、電極を色素増感太陽電池セルの入射光側に配置する場合には、導電性基材を透明なものとする。
【0039】
導電性基材への塗布材料の塗布方法としては、スプレー法、刷毛塗り、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、ダイレクトグラビアコート、グラビアリバースコート、マイクログラビアコート、ロールコート、ダイコート、スピンコート、ワイヤーバーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコ一ト、ディップコート、コンマコートなどの方法により行うことができる。
【0040】
塗布材料が塗布された導電性基材を磁場中で所定時間保持する。
図2は超伝導磁石による磁場印加工程を示す一部破断斜視図である。強磁場Hの印加は、具体的には磁石、特に強磁場Hの発生が容易な超伝導磁石20を使用することが好ましい。超伝導磁石20内には、処理対象(本実施形態においては、塗布材料が塗布された導電性基材)14が配置されている。
【0041】
超伝導磁石20は中空円筒状に構成されており、その垂直方向に延びる中空部21内にて上向きの強磁場Hが生成されるようになっている。中空部21内に、処理対象14、すなわち、塗布材料12を塗布した導電性基材11が配置されることで、塗布材料12に対して強磁場Hが印加される。図示では、強磁場Hを、塗布材料12が塗布された導電性基材11の表面に対して直角に印加する場合を示している。
【0042】
図3に磁場処理前の塗布材料が塗布された導電性基材の模式図を示す。フィラー13はほとんど塗布材料中に埋没しているが、磁場処理により、図4に示すように、導電性基材11の表面に対し角度(θ)を有して垂直方向に配向される。角度θはフィラー13を導電性基材11の表面に対して90度又は90度近傍の所定角度に配光することが望ましいが、θが90度からずれた場合でも、フィラー13を導電性基材11の表面に対して斜めに所定の角度で配向していればよい。磁場の強さは1テスラ以上であることが望ましい。
【0043】
このように、磁場処理により、フィラーが導電性基材に対して90度又は90度近傍の角度で配向させられる。これにより塗布材料表面に凹凸が形成されことになり、半導体の表面積が増大する。半導体からフィラーを突出させた場合には、さらに色素吸着面積が増大することになり効果的である。
【0044】
塗布材料の表面の凹凸形状は、塗布材料を塗布した導電性基材を強磁場H中に数秒から数分の時間だけ保持することにより形成される。表面の凹凸形状を形成するために、従来のような真空炉や反応炉を用いる必要がないので、設備コストが低減されると共に、容易に且つ短時間で塗布材料表面に凹凸形状を形成することができる。
また、凹凸形状を形成するために化学的プロセスを利用することもないので、廃棄物が発生することがなく、環境保護の観点から好ましい。
【0045】
図5は、超伝導磁石20による磁場印加及び磁場勾配を示す図である。図5に示すように、超伝導磁石20においてはその中空部21内にて、磁気勾配が生ずることが知られている。この磁場勾配は、図5右側のグラフから明らかであるように、磁気中心O(本実施形態では中空円筒状超伝導磁石の側壁高さ方向の中点である。)から垂直方向にずれた位置において最大値を与えるようになっている。従って、このフィラー13を磁気勾配の最大値付近に位置するように、処理対象14を磁気中心Oから例えば上方に距離dずれた位置に配置すると効果的である。
【0046】
フィラー13に作用する磁化率はその方向によって作用する磁化率が異なるため、長手方向に大きな磁化率が作用した場合にはその長手方向が磁力線の方向に沿って配向することになる。また、フィラー13が磁気勾配の最大値付近に配置されると、フィラー13には、磁気アルキメデス効果が作用するためである。磁気中心Oからの距離dは、磁気アルキメデス効果が生ずる条件によって適宜定められるものである。
【0047】
フィラーにはアルキメデス効果による浮力が作用する。すなわち、フィラーには、直接作用する磁気力に加えて、重力と半導体素材との比重差による浮力と、さらにフィラーと半導体素材の磁化率の差に基づく磁気浮力とが作用することになる。
フィラーは、強磁性体ではなく反磁性体、常磁性体又は非磁性体であってもよい。フィラーは、磁気アルキメデス効果により半導体素材中で上下方向に偏位する。
【0048】
フィラーが反磁性体の場合には、フィラーは磁場に反発する力を受ける。従って、フィラーの反発力が重力より強い場合、塗布材料が塗布された導電性基材を磁場中心より上側に置くと、フィラーが上方に偏位する。また、半導体素材が常磁性体または反強磁性体で、フィラーが反磁性体の場合には、フィラーが磁場中心とは反対方向に反発すると共に、半導体素材が磁場中心に誘引されるので、フィラーの塗布材料の表面領域への分離がより一層促進される。
【0049】
これに対して、フィラーが非磁性体の場合には、フィラーは磁場に誘引される力を受ける。従って、塗布材料が塗布された導電性基材を磁場中心より下側に置いた場合に、フィラーの磁場中心に向かう力を受けるので、より効率的にフィラーが上方に偏位することになる。
【0050】
フィラーは、重力、磁気力及び浮力が釣り合う位置にて停止する。すなわち、各フィラーは、それぞれ半導体素材中の表面領域に凝集して、少なくとも一部が半導体素材から上方に突出することもある。
【0051】
例えば、導電性基材がSiOの場合、その質量磁化率は、−0.493×10−6/kgの反磁性体である。フィラーが磁性体の場合、質量磁化率は常磁性体では正の値であり、反磁性体では負の値である。例えば、Alの質量磁化率は、−0.363×10−6/kgの反磁性体であり、MnClの質量磁化率は、114×10−6/kgの常磁性体であり、Feの質量磁化率は、91.2Gm/kgの強磁性体である。したがって、この質量磁化率の絶対値が10−3/kg以下の微粒子であっても、磁気アルキメデス効果が発生するので、例えば、磁場が1テスラ以上の場合、非磁性体から成るフィラーであっても確実に偏位されることになる。
【0052】
前述したように、フィラーには、重力、半導体素材との比重差による浮力が作用していると共に、磁気、そして半導体素材から作用する磁気浮力とが作用する。
ここで、フィラーに加わる磁気と磁気浮力を加えた磁気力Fは、下記(1)式で与えられる。
磁気力F=密度×質量磁化率×磁場強度×磁気勾配 (1)
従って、(1)式から磁気力Fを大きくするためには、媒質である半導体素材と媒体であるフィラーの質量磁化率の差を大きくする、磁場強度を強くする、あるいは磁気勾配を大きくすることが重要である。半導体素材とフィラーとの質量磁化率の差を大きくするためには、例えば一方を常磁性体とし、他方を反磁性体とすることが望ましい。
【0053】
このように、浮力、磁気力と重力F1とのバランスを考慮して、強磁場Hを適宜に選定することで、フィラーを導電性基材に対して垂直方向に配向させ、かつ効果的に導電性基材表面に偏位させることができる。また、浮力と磁気力とにより、フィラーは強磁場Hの磁力線の方向に配向し、かつ半導体素材中をその表面領域まで偏位して、フィラーの一部が半導体素材の表面から突出することになる。
強磁場Hの方向が導電性基材の表面に対して所定角度の方向に配置されることにより、フィラーは、この強磁場Hの方向に沿って所定の角度に配向する。
【0054】
磁場の強さは、質量磁化率にもよるが、磁場中心において0.5テスラ(T)以上の磁束密度であることが好ましい。このような磁場は超伝導磁石20により発生させることができる。フィラーの質量磁化率の絶対値が10−3/kg以下の材料から成る微粒子であれば、数秒から数分の時間だけ1テスラ以上の強磁場Hをかけることによって、磁気アルキメデス効果により塗布材料中から表面領域に偏位させられ、フィラーの先端を表面から突出させることが可能である(図4参照)。
【0055】
半導体素材及びフィラーが共に反強磁性体からなる材料の場合、両者が磁場に反発する力を受ける。フィラーの反発力が重力よりも強い場合には、処理対象14を磁場中心よりも上側に置くとフィラーは塗布した塗布材料の上部に配向する。半導体素材が常磁性体の場合、半導体素材は磁場中心に誘引されるため、フィラーの塗膜上部への配向はより促進される。
【0056】
フィラーが非磁性体の場合、フィラーは磁場に誘引される力を受ける。処理対象14を磁場中心よりも下側に置くと、フィラー13が塗膜の上部に分離する。
【0057】
超伝導磁石20内にて導電性基材11の下側に塗布材料12が位置するように導電性基材11を反転して配置し、フィラーを下方に向かって偏位させて、塗布材料12の表面領域に偏位させたり、あるいは超伝導磁石20の適宜の制御によって処理対象14に加わる力のバランスを調整したりすることで、塗布材料の表面からのフィラーの突出量を調整することも可能である。
このように塗布材料12中でフィラー13が表面領域に偏位されることによって、フィラーが表面領域にて互いに凝集し、フィラー13の一部が塗布材料12の表面から突出し易くなる。
【0058】
本発明による色素増感太陽電池用電極の製造方法は、好ましくは強磁場が1テスラ以上の磁場である。例えば質量磁化率が10-33 /kg以下の材料から成る微粒子であっても磁気アルキメデス効果が発生するので、非磁性体から成るフィラーが確実に表面領域に凝集される。
【0059】
超伝導磁石20の中空部21内で強磁場Hを印加したままの状態で、塗布材料を乾燥させ、塗膜とする。
【0060】
処理対象14は、超伝導磁石20から取り出された後、焼成され、半導体素材が半導体層を形成し、半導体電極が得られる。焼成温度は500℃以上が好ましい。
【0061】
半導体層の表面は凹凸状態で固化し、あるいはフィラーが突出した状態で、半導体層に固定される。さらに、フィラーや半導体自体も焼結により多孔質となるため、より広い半導体表面積を有する半導体電極が得られる。
【0062】
次いで、半導体電極の半導体層表面に色素を担持させて、色素増感太陽電池用電極とする。得られた色素増感太陽電池用電極は広い色素吸着面積を有している。色素は、金属錯体色素や有機色素を用いることができる。金属錯体色素としては、Ru系の色素が多く用いられるほか、キノリン系色素を用いることができる。有機色素としては、ポリメチン色素、エオシン等のキサンテン系色素等の色素を用いることができる。担持方法は、色素溶液への浸漬等の方法によって行えばよい。
【0063】
以上述べたように、表面に塗布材料が塗布された基材に対して所定角度の方向に強い磁場を数秒から数分間だけ加える操作を行うだけで、半導体層の色素吸着面積が増大した色素増感太陽電池用電極を製造することができる。本実施形態の方法は、電界処理のような大量の廃液処理を必要とする工程はなく、環境保護の観点から望ましい。
【0064】
このようにして製造された色素増感太陽電池用電極10の構造を図3に示す。すなわち、導電性基材11と、導電性基材11の表面に形成された半導体層12’と、半導体層12’から突出して配向するフィラー13とからなる。
【0065】
得られた色素増感太陽電池用電極を対極である導電性材料をコーティングした導電性ガラスと共に、電解質ゲルとしてヨウ化物液(0.5MKI+0.05MI)を挟持して、周囲を封止して色素増感太陽電池セルとすることができる。
フィラーの突出及び半導体層の多孔質化により、半導体層全体の表面積と色素吸着面積が大幅に増大するので、太陽光の光吸収率が増大し、色素増感太陽電池セルを構成したときの発電効率も増大する。
【0066】
(実施形態2)
本発明の別の実施形態のフローを図6に示す。すなわち、以下の工程を含む製造方法である。
(1)形状異方性を有するフィラーと光硬化素材とを含む塗工材料を合成樹脂基板の表面に塗布する工程と、
(2)塗工材料が塗布された合成樹脂基板を磁場中で保持し、塗工材料中のフィラーを磁力線に沿って合成樹脂基板の表面に対して垂直又は所定の角度を有して配向させる工程又は、(2’)塗工材料が塗布された合成樹脂基板を磁場中で保持し、塗工材料中のフィラーを磁力線に沿って合成樹脂基板の表面に対して垂直又は所定の角度を有して配向させ、かつ、磁気アルキメデス効果により塗工材料中で浮遊させ、導電性基材の上面に偏位させる工程と、
(3)磁場処理した塗工材料表面に、半導体素材が塗布された導電性基材を重ね、焼成して半導体電極を生成する工程と、
(4)半導体電極を染色する工程と、を含む色素増感太陽電池用電極の製造方法を提供する。
【0067】
フィラーは実施形態1で説明したとおりである。光硬化素材は、赤外線硬化樹脂や紫外線硬化樹脂を用いることができ、特に限定されるものではない。合成樹脂基板は耐熱性の樹脂は好ましくない。
【0068】
フィラーと光硬化素材とを含む塗工材料を合成樹脂基板の表面に塗布する方法と、塗工材料が塗布された合成樹脂基板の磁場処理条件は、実施形態1と同じである。
【0069】
磁場処理後、塗工材料表面に特定波長の光を照射し、光硬化素材を硬化させる。さらに磁場処理した塗工材料表面にエッチング処理を施す。エッチング処理は、例えば、酵素プラズマ処理を挙げることができる。エッチング処理により、フィラーの一部が塗工材料表面から突出することになる。エッチング処理した後、光硬化素材上に半導体素材が塗布された導電性基材を重ねる。半導体素材はペースト状態で導電性基材の光硬化素材と重ねあわされることが好ましい。また半導体素材は界面活性剤等の添加剤を含んで導電性基材に塗布されてもよい。
光硬化素材が積層された合成樹脂基板と半導体素材が塗布された導電性基材を重ね合わせたものを焼成する。焼成の条件は実施形態1と同じである。焼成により、合成樹脂基板と光硬化素材は分解し、半導体電極が製造される。得られた半導体電極は、実施形態1と同様に半導体層の表面に色素を担持させる。
【0070】
実施形態1の色素増感太陽電池用電極同様、フィラーの突出及び半導体層の多孔質化により、半導体層全体の表面積と色素吸着面積が大幅に増大しているので、太陽光の光吸収率が増大し、色素増感太陽電池セルを構成したときの発電効率も増大する。
【実施例1】
【0071】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
酸化チタンパウダー6gに対して、脱イオン水9ml、アセチルアセトン0.2ml及び界面活性剤(Triton X100)0.1mlを加えて混練し、酸化チタンペーストを作製した。
得られた酸化チタンペースト9部に対して、ホウ酸アルミニウムウィスカー(四国化成工業株式会社製 アルボレックスY)を1部添加し、塗布材料を作製した。そして透明導電性基材(以下、基材ということもある)としてSnOをコーティングした透明導電性ガラスを使用した。
【0072】
超伝導磁石として、住友重機械工業製のスプリット型HF5−100VT−50HTを使用した。
【0073】
図7は、本実施例で使用される超伝導磁石の磁束密度分布及び磁気勾配を示すグラフである。図7の横軸は超伝導磁石の中心からの位置(cm)で、左縦軸は磁束密度(T)、右縦軸は磁気勾配(T/m)である。ここで、磁気勾配は、Bz×(dBz/dZ)で表わされ、Bzは位置がzのときの磁束密度である。
図7に示すように、超伝導磁石は磁場中心近傍では、5〜6テスラの磁束密度を有しており、磁気勾配は、磁束密度が最大となる位置よりもずれた位置で最大となることが分かる。
【0074】
上記塗布材料を基材上に塗布してサンプルを作製した。
このサンプルを超伝導磁石の中空部内にて、例えば磁場中心から約10cmだけ上部の位置に配置し、5分間だけ5テスラの強磁場を印加して、フィラーを垂直配向させた後、放置して、酸化チタンペーストを乾燥させ、塗膜を作製した。その後、この塗膜を500℃で30分焼成して、厚さ50μmの電極を作製した。得られた電極のSEM像を図8に示す。フィラーが電極表面から突出していることがわかる。
この電極をエオシン1重量%エタノール溶液に5分間浸漬して染色し、乾燥させて、色素増感太陽電池用電極を作製した。
この色素増感太陽電池用電極を、対極であるグラファイトをコーティングした透明導電性ガラスと共に、電解質溶液としてヨウ化物液(0.5MKI+0.05MI)を挟持し、周囲を封止して、色素増感太陽電池セルを作製した。
得られた太陽電池セルを300wの超高圧水銀灯で照射し、発生した電流値をデジタルマルチメータで測定したところ、2.8mAであった。
【0075】
次に、実施例に対する比較例について説明する。
(比較例)
比較例の塗布材料として、実施例と同じ酸化チタンペースト10部に対して、上記ホウ酸アルミニウムウィスカーを1部添加し塗布材料を作製した。そして基材としてSnOをコーティングした透明導電性ガラスを使用し、上記塗布材料を基材上に塗布し、酸化チタンペーストを乾燥させ、塗膜を作製した。その後、この塗膜を500℃で30分焼成して、厚さ50μmの電極を作製した。
この電極をエオシン1重量%エタノール溶液に5分間浸漬して染色し、乾燥させて、対極であるグラファイトをコーティングした透明導電性ガラスと共に、電解質ゲルとしてヨウ化物液(0.5MKI+0.05MI)を挟持して周囲を封止し、色素増感太陽電池セルを作製した。
得られた太陽電池セルを300wの超高圧水銀灯で照射し、発生した電流値をデジタルマルチメータで測定したところ、2.0mAであった。
【0076】
強磁場H中でフィラーが配向させられたことにより、実施例1の色素増感太陽電池セルの出力電流が比較例に対して約40%向上していることが確認された。
【実施例2】
【0077】
ホウ酸アルミニウムウィスカー(四国化成工業株式会社製 アルボレックスY)10部、UVフレキソニス(T&K TOKA)90部からなる塗料をPETフィルム上に塗工した。塗工フィルムを5Tの垂直磁場中に静置してホウ酸アルミニウムウィスカーを垂直配向させた後、磁場中で紫外光を照射してUVフレキソニスを硬化させて厚み50μmの塗膜を得た。塗膜に酸素プラズマ処理を行い20μmの樹脂分をエッチングした。実施例1と同様にSnOをコートした透明導電性ガラス上に酸化チタンペーストを塗布し、エッチングで得られた突起膜と酸化チタンペースト層とを重ね合わせ、500℃で30分焼成して、厚さ50μmの電極を作製した。
【符号の説明】
【0078】
10:色素増感太陽電池用電極
11:導電性基材
12:塗布材料
12’:半導体素材
13:フィラー
14:処理対象
20:超伝導磁石
21:中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状異方性を有するフィラーと半導体素材とを含有する塗布材料を導電性基材の表面に塗布する工程と、
上記塗布材料が塗布された導電性基材を磁場中で保持し、塗布材料中のフィラーを磁力線に沿って導電性基材の表面に対して所定の角度を有して一部を突出させ配向させる工程と、
磁場処理した塗布材料を焼成して半導体電極を生成する工程と、
上記半導体電極を染色する工程と、
を含む、色素増感太陽電池用電極の製造方法。
【請求項2】
形状異方性を有するフィラーと半導体素材とを含有する塗布材料を導電性基材の表面に塗布する工程と、
上記塗布材料が塗布された導電性基材を磁場中で保持し、塗布材料中のフィラーを磁力線に沿って導電性基材の表面に対して所定の角度を有するように配向させ、かつ、磁気アルキメデス効果により塗布材料中で浮遊させ、導電性基材の上面に一部を突出させて偏位させる工程と、
磁場処理した塗布材料を焼成して半導体電極を生成する工程と、
上記半導体電極を染色する工程と、
を含む、色素増感太陽電池用電極の製造方法。
【請求項3】
形状異方性を有するフィラーと光硬化素材とを含む塗工材料を合成樹脂基板の表面に塗布する工程と、
上記塗工材料が塗布された合成樹脂基板を磁場中で保持し、塗工材料中のフィラーを磁力線に沿って合成樹脂基板の表面に対して所定の角度を有して配向させる工程と、
磁場処理した塗工材料表面をエッチング処理する工程と、
エッチング処理した塗工材料表面に、半導体素材が塗布された導電性基材を重ね、焼成して半導体電極を生成する工程と、
上記半導体電極を染色する工程と、
を含む、色素増感太陽電池用電極の製造方法。
【請求項4】
形状異方性を有するフィラーと光硬化素材とを含む塗工材料を合成樹脂基板の表面に塗布する工程と、
上記塗工材料が塗布された合成樹脂基板を磁場中で保持し、塗工材料中のフィラーを磁力線に沿って合成樹脂基板の表面に対して所定の角度を有するように配向させ、かつ、磁気アルキメデス効果により塗工材料中で浮遊させ、合成樹脂基板の上面に偏位させる工程と、
磁場処理した塗工材料表面をエッチング処理する工程と、
エッチング処理した塗工材料表面に、半導体素材が塗布された導電性基材を重ね、焼成して半導体電極を生成する工程と、
上記半導体電極を染色する工程と、
を含む、色素増感太陽電池用電極の製造方法。
【請求項5】
前記磁場が1テスラ以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の色素増感太陽電池用電極の製造方法。
【請求項6】
前記フィラーが非磁性体である、請求項1〜4のいずれかに記載の色素増感太陽電池用電極の製造方法。
【請求項7】
導電性基材と、該導電性基材の表面に形成された半導体層と、該半導体層から突出して配向するフィラーとを備え、
上記フィラーは形状異方性を有し、半導体と混合されて導電性基材の表面に塗布され、上記導電性基材とともに磁場中に保持されて、磁力線に沿って導電性基材の表面に対して所定の角度を有して一部を突出して表面領域に配位させられた後、上記導電性基材及び上記半導体とともに焼成されて半導体電極を生成し、さらに半導体電極は染色させて成る、色素増感太陽電池用電極。
【請求項8】
導電性基材と、該導電性基材の表面に形成された半導体層と、該半導体層から突出して配向するフィラーとを備え、
上記フィラーは形状異方性を有し、半導体と混合されて導電性基材の表面に塗布され、上記導電性基材とともに磁場中に保持されて、磁力線に沿って、かつ、磁気アルキメデス効果により塗工材料中で浮遊させられて導電性基材の表面に対して所定の角度を有して一部を突出して表面領域に偏位させられた後、上記導電性基材及び上記半導体とともに焼成されて半導体電極を生成し、さらに半導体電極が染色されて成る、色素増感太陽電池用電極。
【請求項9】
導電性基材と、該導電性基材の表面に形成された半導体層と、該半導体層から突出して配向するフィラーとを備え、
上記フィラーは形状異方性を有し、光硬化素材と混合されて合成樹脂基板の表面に塗布され、該合成樹脂基板とともに磁場中に保持されて、磁力線に沿って該合成樹脂基板の表面に対して所定の角度を有して表面領域に配位させられ、上記光硬化素材がエッチング処理された後、半導体を塗布した導電性基材が重ねられ、焼成されて半導体電極を生成し、さらに半導体電極が染色されて成る、色素増感太陽電池用電極。
【請求項10】
導電性基材と、該導電性基材の表面に形成された半導体層と、該半導体層から突出して配向するフィラーとを備え、
上記フィラーは形状異方性を有し、光硬化素材と混合されて該合成樹脂基板の表面に塗布され、該合成樹脂基板とともに磁場中に保持されて、磁力線に沿って、かつ、磁気アルキメデス効果により塗工材料中で浮遊させられて該合成樹脂基板の表面に対して所定の角度を有して表面領域に偏位させられ、上記光硬化素材がエッチング処理された後、半導体を塗布した導電性基材が重ねられ、焼成されて半導体電極を生成し、さらに半導体電極が染色されて成る、色素増感太陽電池用電極。
【請求項11】
請求項7〜10に記載のいずれかの色素増感太陽電池用電極と、導電性材料をコーティングした導電性基材とを対向させて、上記色素増感太陽電池用電極と上記導電性基材との間にヨウ化物溶液を電解質として封止してなる、色素増感太陽電池セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−8975(P2011−8975A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149214(P2009−149214)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】