説明

色補正処理装置、色補正処理方法及びマルチディスプレイ装置

【課題】複数のディスプレイパネル間の色ずれを精度よく補正することができるようにする。
【解決手段】撮影画像であるRAW画像に対するホワイトバランス調整を行う画像調整処理部14と、ホワイトバランス調整処理後のRAW画像から、ディスプレイパネルD0〜D8の目標色度を算出する目標色度算出処理部15と、目標色度算出処理部15により算出された目標色度とディスプレイパネルD0〜D8の色度から色補正係数を算出する色補正係数算出処理部16とを設け、色補正処理部17が色補正係数算出処理部16により算出された色補正係数を用いて、ディスプレイパネルD0〜D8の色補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マルチディスプレイを構成している複数のディスプレイパネル間の色ずれを補正する色補正処理装置及び色補正処理方法と、上記の色補正処理装置を実装しているマルチディスプレイ装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数のディスプレイパネルを並べて配置することで、大画面化が図られているマルチディスプレイがある。
しかし、マルチディスプレイでは、例えば、複数のディスプレイパネルの色再現特性が微妙に異なることが原因で色ずれが生じることがある。
そこで、近年、マルチディスプレイを構成している複数のディスプレイパネル間の色ずれを補正する色補正処理装置が開発されている。
【0003】
例えば、以下の特許文献1に開示されている色補正処理装置では、複数のディスプレイパネルに表示されている画像を撮影し、その撮影画像に基づいて複数のディスプレイパネル間の色ずれを補正している。
即ち、この色補正処理装置では、まず、カメラを用いて、複数のディスプレイパネルに表示されている画像を撮影して、その撮影画像から各ディスプレイパネルにおける表示特性の調整域を算出する。
そして、各々のディスプレイパネルの調整域が重複している範囲を特定し、その重複範囲内で、各々のディスプレイパネルの調整度合を設定することで、複数のディスプレイパネル間の色ずれを補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−057507号公報(段落番号[0024]から[0027]、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の色補正処理装置は以上のように構成されているので、各々のディスプレイパネルに対する表示特性の調整のやり直しを防いで、無駄な手間を省くことができる。しかし、複数のディスプレイパネルに表示されている画像を撮影し、その撮影画像に基づいて複数のディスプレイパネル間の色ずれを補正しても、複数のディスプレイパネルにおける撮影画像間で、例えば、ホワイトバランスや輝度が異なっていると、精度よく色ずれを補正することができないなどの課題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、複数のディスプレイパネル間の色ずれを精度よく補正することができる色補正処理装置及び色補正処理方法を得ることを目的とする。
また、この発明は、複数のディスプレイパネル間の色ずれを精度よく補正することができる色補正処理装置を実装しているマルチディスプレイ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る色補正処理装置は、マルチディスプレイを構成している複数のディスプレイパネルに対して色補正用の画像を表示する色補正用画像表示手段と、複数のディスプレイパネルに表示されている色補正用の画像を撮影して、その撮影画像を取得する撮影画像取得手段と、撮影画像取得手段により取得された撮影画像に対する画像調整処理を行う画像調整処理手段と、画像調整処理手段による画像調整処理後の撮影画像から、複数のディスプレイパネルにおける目標の色再現特性を表す色度である目標色度を算出する目標色度算出手段と、目標色度算出手段により算出された目標色度と複数のディスプレイパネルの色度から色補正係数を算出する色補正係数算出手段とを設け、色補正手段が色補正係数算出手段により算出された色補正係数を用いて、複数のディスプレイパネルの色補正を行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、マルチディスプレイを構成している複数のディスプレイパネルに対して色補正用の画像を表示する色補正用画像表示手段と、複数のディスプレイパネルに表示されている色補正用の画像を撮影して、その撮影画像を取得する撮影画像取得手段と、撮影画像取得手段により取得された撮影画像に対する画像調整処理を行う画像調整処理手段と、画像調整処理手段による画像調整処理後の撮影画像から、複数のディスプレイパネルにおける目標の色再現特性を表す色度である目標色度を算出する目標色度算出手段と、目標色度算出手段により算出された目標色度と複数のディスプレイパネルの色度から色補正係数を算出する色補正係数算出手段とを設け、色補正手段が色補正係数算出手段により算出された色補正係数を用いて、複数のディスプレイパネルの色補正を行うように構成したので、複数のディスプレイパネル間の色ずれを精度よく補正することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1による色補正処理装置が実装されているマルチディスプレイ装置を示す構成図である。
【図2】マルチディスプレイの構成例を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1による色補正処理装置の処理内容(色補正処理方法)を示すフローチャートである。
【図4】目標色度算出処理部15における色再現域の共通領域の算出処理を示すフローチャートである。
【図5】色再現域の共通領域の求め方を示す説明図である。
【図6】(a)はマルチディスプレイを構成しているディスプレイパネルD0〜D8の配置を示し、(b)はディスプレイパネルD0〜D8に設定されているフィルタ係数K0〜K8を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態4による色補正処理装置が実装されているマルチディスプレイ装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による色補正処理装置が実装されているマルチディスプレイ装置を示す構成図である。
図2はマルチディスプレイの構成例を示す説明図である。
図1において、マルチディスプレイ1は複数のディスプレイパネルから構成されている大画面の表示装置である。
図2の例では、9台のディスプレイパネルD0〜D8が並べられることでマルチディスプレイ1が構成されている。
図2では、9台のディスプレイパネルD0〜D8が並べられている例を示しているが、ディスプレイパネルの台数が9台に限るものでないことは言うまでもない。
【0011】
画像表示装置2は色補正処理装置3によりディスプレイパネルD0〜D8間の色ずれが補正された後、各種の画像をディスプレイパネルD0〜D8に表示する装置である。
色補正処理装置3は9台のディスプレイパネルD0〜D8間の色ずれを補正する装置である。
【0012】
色補正処理装置3の色補正用画像表示部11は例えばGPU(Graphics Processing Unit)などから構成されており、マルチディスプレイ1を構成している9台のディスプレイパネルD0〜D8に対して色補正用の画像を表示する処理を実施する。なお、色補正用画像表示部11は色補正用画像表示手段を構成している。
デジタルスチルカメラ(以下、「DSC」と称する)12は画像取得処理部13の指示の下、ディスプレイパネルD0〜D8に表示されている色補正用の画像を撮影し、その撮影画像であるRAW画像を示すRAW画像データを画像取得処理部13に出力する処理を実施する。
【0013】
画像取得処理部13は例えばCPUを実装している半導体集積回路やワンチップマイコンなどから構成されており、色補正用画像表示部11から色補正用画像の表示完了を示す信号を受けると、画像の撮影指令をDSC12に出力して、そのDSC12からRAW画像を示すRAW画像データを取得する処理を実施する。
なお、DSC12及び画像取得処理部13から撮影画像取得手段が構成されている。
【0014】
画像調整処理部14は例えばGPUなどから構成されており、画像取得処理部13により取得されたRAW画像データが示すRAW画像に対する画像調整処理として、そのRAW画像のホワイトバランスを調整する処理を実施する。
この実施の形態1では、画像調整処理部14がRAW画像に対する画像調整処理として、そのRAW画像のホワイトバランスを調整する例を説明するが、そのRAW画像の輝度を調整するようにしてもよい。
なお、画像調整処理部14は画像調整処理手段を構成している。
【0015】
目標色度算出処理部15は例えばCPUを実装している半導体集積回路やワンチップマイコンなどから構成されており、画像調整処理部14による画像調整処理後の撮影画像から、ディスプレイパネルD0〜D8における目標の色再現特性を表す色度である目標色度を算出する処理を実施する。なお、目標色度算出処理部15は目標色度算出手段を構成している。
【0016】
色補正係数算出処理部16は例えばCPUを実装している半導体集積回路やワンチップマイコンなどから構成されており、目標色度算出処理部15により算出された目標色度とディスプレイパネルD0〜D8の色度から色補正係数を算出する処理を実施する。なお、色補正係数算出処理部16は色補正係数算出手段を構成している。
色補正処理部17は例えばGPUなどから構成されており、色補正係数算出処理部16により算出された色補正係数を用いて、ディスプレイパネルD0〜D8の色補正処理を実施する。なお、色補正処理部17は色補正手段を構成している。
【0017】
図1の例では、色補正処理装置3の構成要素である色補正用画像表示部11、DSC12、画像取得処理部13、画像調整処理部14、目標色度算出処理部15、色補正係数算出処理部16及び色補正処理部17のそれぞれが専用のハードウェアで構成されているものを想定しているが、色補正処理装置3がコンピュータで構成される場合、色補正用画像表示部11、DSC12、画像取得処理部13、画像調整処理部14、目標色度算出処理部15、色補正係数算出処理部16及び色補正処理部17の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにしてもよい。
図3はこの発明の実施の形態1による色補正処理装置の処理内容(色補正処理方法)を示すフローチャートである。
【0018】
次に動作について説明する。
色補正処理装置3の色補正用画像表示部11は、マルチディスプレイ1を構成している9台のディスプレイパネルD0〜D8に対して色補正用の画像を表示する(ステップST1)。
即ち、色補正用画像表示部11は、マルチディスプレイ1を構成しているディスプレイパネルD0〜D8に対して、R(赤色),G(緑色),B(青色)の単色の画像と、W(白色),Bk(黒色)の画像を同時に表示する。
色補正用画像表示部11は、色補正用の画像をディスプレイパネルD0〜D8に表示すると、色補正用画像の表示完了を示す信号を画像取得処理部13に出力する。
【0019】
画像取得処理部13は、色補正用画像表示部11から色補正用画像の表示完了を示す信号を受けると、画像の撮影指令をDSC12に出力する。
DSC12は、画像取得処理部13から画像の撮影指令を受けると、ディスプレイパネルD0〜D8に表示されている色補正用の画像を撮影し、その撮影画像であるRAW画像を示すRAW画像データを画像取得処理部13に出力する(ステップST2)。
このとき、9台のディスプレイパネルD0〜D8の表示画像の全体が、DSC12の撮影範囲内に収まるように、DSC12の撮影位置が調整されているものとする。あるいは、DSC12の撮影範囲内に収まるように、望遠または広角のレンズを用いて調整されているものとする。
また、DSC12のシャッタースピード及び絞りは目的に応じて調整され、ディスプレイパネルD0〜D8を補正する際には、望遠レンズで少しぼけ気味に調整される。
画像取得処理部13は、DSC12から出力されたRAW画像を示すRAW画像データを取得する。
【0020】
画像調整処理部14は、画像取得処理部13がRAW画像を示すRAW画像データを取得すると、そのRAW画像に対する画像調整処理として、そのRAW画像のホワイトバランスを調整する(ステップST3)。
以下、画像調整処理部14によるホワイトバランスの調整処理を具体的に説明する。
【0021】
まず、画像調整処理部14は、画像取得処理部13から出力されたRAW画像データを参照して、ディスプレイパネルD0〜D8毎に、W(白色)の画像が表示されている領域を特定し、W(白色)の画像の平均RGB値を算出する。
画像調整処理部14は、ディスプレイパネルD0〜D8毎に、W(白色)の画像の平均RGB値を算出すると、それらの平均値の更なる平均を求める。
即ち、ディスプレイパネルD0〜D8毎に求めたW(白色)の画像の平均RGB値の平均を算出することで、9台のディスプレイパネルD0〜D8の全体(マルチディスプレイ)におけるW(白色)の画像の平均RGB値(Rave,Gave,Bave)を求める。
【0022】
画像調整処理部14は、9台のディスプレイパネルD0〜D8の全体(マルチディスプレイ)におけるW(白色)の画像の平均RGB値(Rave,Gave,Bave)を求めると、下記の式(1)に示すように、その平均RGB値(Rave,Gave,Bave)から、赤色補正用のホワイトバランス補正係数Wbと青色補正用のホワイトバランス補正係数Wbを算出する。
Wb=Rave/Gave
Wb=Bave/Gave
(1)
【0023】
画像調整処理部14は、赤色補正用のホワイトバランス補正係数Wbと青色補正用のホワイトバランス補正係数Wbを算出すると、下記の式(2)に示すように、そのホワイトバランス補正係数Wb,Wbを用いて、RAW画像のホワイトバランスを調整する。
Rout=Wb×Rin
Gout=Gin
Bout=Wb×Bin
(2)
ただし、式(2)において、Rin,Gin,BinはW(白色)の画像のRGB信号であり、Rout,Gout,Boutは上記画像のホワイトバランス調整後のRGB信号である。
なお、画像調整処理部14は、色補正用の画像の全てに対して、ホワイトバランス調整を実施して、ホワイトバランス調整処理後のRAW画像とする。
【0024】
目標色度算出処理部15は、画像調整処理部14がRAW画像のホワイトバランスを調整すると、ホワイトバランス調整処理後のRAW画像から、9台のディスプレイパネルD0〜D8における目標の色再現特性を表す色度である目標色度を算出する(ステップST4)。
即ち、目標色度算出処理部15は、9台のディスプレイパネルD0〜D8における共通の色再現域(Rt、Gt、Bt)を求め、その共通の色再現域(Rt、Gt、Bt)のxy値(色表示値)を目標色度として算出する。
例えば、ディスプレイパネルD1の色再現域と、ディスプレイパネルD2の色再現域との共通領域を求め、その共通領域とディスプレイパネルD3の色再現域との共通領域を求める。
順次、当該共通領域と残りのディスプレイパネルDの色再現域との共通領域を求めることで、最終的に、ディスプレイパネルD0〜D8における色再現域の共通領域を求め、その共通領域のxy値を目標色度として算出する。
【0025】
以下、目標色度算出処理部15による目標色度の算出処理を具体的に説明する。
図4は目標色度算出処理部15における色再現域の共通領域の算出処理を示すフローチャートである。
まず、目標色度算出処理部15は、ディスプレイパネルD0〜D8毎に、ホワイトバランス調整処理後のRAW画像における平均RGB値(Rout,Gout,Bout)を算出する。
【0026】
次に、目標色度算出処理部15は、下記の式(3)に示すように、平均RGB値(Rout,Gout,Bout)からXYZ値(色表示値)を算出する。


ただし、式(3)では、マトリクス係数として、sRGBの変換係数を用いているが、これは一例に過ぎず、例えば、ディスプレイパネルD0〜D8の測色結果を適用するようにしてもよい。
【0027】
次に、目標色度算出処理部15は、下記の式(4)に示すように、XYZ値からxy値(色表示値)を算出する。
R(xr,yr) : xr=Xr/(Xr+Yr+Zr)
yr=Yr/(Xr+Yr+Zr)
G(xg,yg) : xg=Xg/(Xg+Yg+Zg)
yg=Yg/(Xg+Yg+Zg)
B(xb,yb) : xb=Xb/(Xb+Yb+Zb)
yb=Yb/(Xb+Yb+Zb)
(4)
【0028】
目標色度算出処理部15は、XYZ値からxy値を算出すると、そのxy値を用いて、ディスプレイパネルD0〜D8における色再現域の共通領域を求め、その共通領域のxy値を目標色度として算出する。
ここで、図5は色再現域の共通領域の求め方を示す説明図である。
図5において、R1(xr1,yr1)、G1(xg1,yg1)、B1(xb1,yb1)は、ディスプレイパネルD1の色再現域を示す三角形の頂点である。
R2(xr2,yr2)、G2(xg2,yg2)、B2(xb2,yb2)は、ディスプレイパネルD2の色再現域を示す三角形の頂点である。
Rt(xrt,yrt)、Gt(xgt,ygt)、Bt(xbt,ybt)は、ディスプレイパネルD1の色再現域と、ディスプレイパネルD2の色再現域との共通領域を示す三角形の頂点である。
【0029】
目標色度算出処理部15は、ディスプレイパネルD1の色再現域(R1,G1,B1)と、ディスプレイパネルD2の色再現域(R2,G2,B2)との共通領域(Rt,Gt,Bt)を求める場合、まず、頂点R1(xr1,yr1)と頂点R2(xr2,yr2)が一致しているか否かを判定する(ステップST11)。
目標色度算出処理部15は、頂点R1(xr1,yr1)と頂点R2(xr2,yr2)が一致している場合(R1=R2)、共通領域の一つの頂点であるRt(xrt,yrt)を下記のように設定する(ステップST12)。
Rt(xrt,yrt)=R1(xr1,yr1)=R2(xr2,yr2)
【0030】
図5の例では、頂点R1(xr1,yr1)と頂点R2(xr2,yr2)が一致していないため(R1≠R2)、目標色度算出処理部15は、頂点R1(xr1,yr1)が三角形R2G2B2に含まれている(内包されている)か否かを判定する(ステップST13)。
頂点R1(xr1,yr1)が三角形R2G2B2に内包されているか否かの判定は、次のように行う。
内包の判定対象の点である頂点R1(xr1,yr1)から、三角形R2G2B2の頂点(R2,G2,B2)までのベクトルを求める。
ベクトルR1R2=(xr2−xr1,yr2−yr1)
ベクトルR1G2=(xg2−xr1,yg2−yr1)
ベクトルR1B2=(xb2−xr1,yb2−yr1)
(5)
【0031】
次に、3つのベクトルR1R2、ベクトルR1G2、ベクトルR1B2間の外積をそれぞれ求める。
ベクトルR1R2×ベクトルR1G2
=(xr2−xr1)×(yg2−yr1)−(yr2−yr1)×(xg2−xr1)
ベクトルR1G2×ベクトルR1B2
=(xg2−xr1)×(yb2−yr1)−(yg2−yr1)×(xb2−xr1)
ベクトルR1B2×ベクトルR1R2
=(xb2−xr1)×(yr2−yr1)−(yb2−yr1)×(xr2−xr1)
(6)
【0032】
3つのベクトルR1R2、ベクトルR1G2、ベクトルR1B2間の外積の全てが0以上であれば、頂点R1(xr1,yr1)は、三角形R2G2B2に内包されていると判定し、1つでも負の値であれば、頂点R1(xr1,yr1)は、三角形R2G2B2に内包されていないと判定する。
目標色度算出処理部15は、頂点R1(xr1,yr1)が三角形R2G2B2に内包されている場合、共通領域の一つの頂点であるRt(xrt,yrt)を下記のように設定する(ステップST14)。
Rt(xrt,yrt)=R1(xr1,yr1)
【0033】
図5の例では、頂点R1(xr1,yr1)が三角形R2G2B2に内包されていないため、目標色度算出処理部15は、頂点R2(xr2,yr2)が三角形R1G1B1に含まれている(内包されている)か否かを判定する(ステップST15)。
頂点R2(xr2,yr2)が三角形R1G1B1に内包されているか否かの判定は、次のように行う。
内包の判定対象の点である頂点R2(xr2,yr2)から、三角形R1G1B1の頂点(R1,G1,B1)までのベクトルを求める。
ベクトルR2R1=(xr1−xr2,yr1−yr2)
ベクトルR2G1=(xg1−xr2,yg1−yr2)
ベクトルR2B1=(xb1−xr2,yb1−yr2)
(7)
【0034】
次に、3つのベクトルR2R1、ベクトルR2G1、ベクトルR2B1間の外積をそれぞれ求める。
ベクトルR2R1×ベクトルR2G1
=(xr1−xr2)×(yg1−yr2)−(yr1−yr2)×(xg1−xr2)
ベクトルR2G1×ベクトルR2B1
=(xg1−xr2)×(yb1−yr2)−(yg1−yr2)×(xb1−xr2)
ベクトルR2B1×ベクトルR2R1
=(xb1−xr2)×(yr1−yr2)−(yb1−yr2)×(xr1−xr2)
(8)
【0035】
3つのベクトルR2R1、ベクトルR2G1、ベクトルR2B1間の外積の全てが0以上であれば、頂点R2(xr2,yr2)は、三角形R1G1B1に内包されていると判定し、1つでも負の値であれば、頂点R2(xr2,yr2)は、三角形R1G1B1に内包されていないと判定する。
目標色度算出処理部15は、頂点R2(xr2,yr2)が三角形R1G1B1に内包されている場合、共通領域の一つの頂点であるRt(xrt,yrt)を下記のように設定する(ステップST16)。
Rt(xrt,yrt)=R2(xr2,yr2)
【0036】
図5の例では、頂点R2(xr2,yr2)が三角形R1G1B1に内包されていないため、目標色度算出処理部15は、線分R1G1と線分R2B2が交わっているか否かを判定する(ステップST17)。
線分R1G1と線分R2B2が交わっているか否かの判定は、次のように行う。
線分R1G1と線分R2B2の交点をT(xrt,yrt)として、下記の式(9)を解く際、0≦u,v≦1であれば、交点があると判定する。0≦u,v≦1でなければ、交点がないと判定する。
xrt=xr1+u(xg1−xr1)
xr1+u(xg1−xr1)=xr2+v(xb2−xr2)
xrt=xr2+v(xb2−xr2)
u(xg1−xr1)+v(xr2−xb2)=xr2−xr1
yrt=yr1+u(yg1−yr1)
yr1+u(yg1−yr1)=yr2+v(yb2−yr2)
yrt=yr2+v(yb2−yr2)
u(yg1−yr1)+v(yr2−yb2)=yr2−yr1
(9)
【0037】
目標色度算出処理部15は、線分R1G1と線分R2B2が交わっている場合、共通領域の一つの頂点であるRt(xrt,yrt)を、線分R1G1と線分R2B2の交点に設定する(ステップST18)。
図5の例では、線分R1G1と線分R2B2が交わっているため、頂点Rt(xrt,yrt)が、線分R1G1と線分R2B2の交点に設定される。
線分R1G1と線分R2B2が交わっていない場合、共通領域の一つの頂点であるRt(xrt,yrt)を、線分R1B1と線分R2G2の交点に設定する(ステップST19)。
【0038】
ここまでは、目標色度算出処理部15が、共通領域の一つの頂点であるRt(xrt,yrt)を設定する動作を説明したが、共通領域の他の頂点であるGt(xgt,ygt),Bt(xbt,ybt)についても、頂点Rt(xrt,yrt)を設定する場合と同様の方法で設定する。
図5の例では、頂点G1と頂点G2が一致しておらず、頂点G1(xg1,yg1)が三角形R2G2B2に内包されていない。また、頂点G2(xg2,yg2)が三角形R1G1B1に内包されていない。しかし、線分G1B1と線分G2R2が交わっているため、頂点Gt(xgt,ygt)は、線分G1B1と線分G2R2の交点に設定される。
また、図5の例では、頂点B1と頂点B2が一致していないが、頂点B2(xb2,yb2)が三角形R1G1B1に内包されているため、頂点Bt(xbt,ybt)は、頂点B2と一致する点に設定される。
【0039】
ここまでは、目標色度算出処理部15が、ディスプレイパネルD1の色再現域と、ディスプレイパネルD2の色再現域との共通領域を求める動作を説明したが、同様の方法で、順次、当該共通領域と残りのディスプレイパネルDの色再現域との共通領域を求めることで、最終的に、ディスプレイパネルD0〜D8における色再現域の共通領域を求める。
目標色度算出処理部15は、ディスプレイパネルD0〜D8における色再現域の共通領域(Rt,Gt,Bt)を求めると、その共通領域(Rt,Gt,Bt)のxy値を目標色度に決定する。
即ち、目標色度算出処理部15は、Rの目標色度を(xrt,yrt)、Gの目標色度を(xgt,ygt)、Bの目標色度を(xbt,ybt)に決定する。
【0040】
色補正係数算出処理部16は、目標色度算出処理部15が目標色度を算出すると、下記の式(10)に示すように、その目標色度とディスプレイパネルD0〜D8の色度から色補正係数として、色補正用マトリクス係数を算出する(ステップST5)。ただし、色補正用マトリクス係数は、ディスプレイパネルD0〜D8毎に算出される。


【0041】
式(10)において、
・ディスプレイパネルDのRGB,BkのXYZ値
R :(Xr,Yr,Zr)
G :(Xg,Yg,Zg)
B :(Xb,Yb,Zb)
Bk:(Xbk,Ybk,Zbk)
・目標色度
Rt(Xrt,Yrt,Zrt)
Gt(Xgt,Ygt,Zgt)
Bt(Xbt,Ybt,Zbt)
ただし、目標の輝度Yは、ディスプレイパネルD0〜D8の中の最小輝度を
目標輝度値とする。
Yrt=(ディスプレイパネルD0〜D8における最小のYr)
Ygt=(ディスプレイパネルD0〜D8における最小のYg)
Ybt=(ディスプレイパネルD0〜D8における最小のYb)
・色補正マトリクス係数
RR、GR、BR
RG、GG、GB
RB、GB、BB
【0042】
ここでは、目標の輝度Yが、ディスプレイパネルD0〜D8の中の最小輝度である例を示したが、これは一例に過ぎず、例えば、ディスプレイパネルD0〜D8の輝度の平均値や、中央値などの統計値を用いるようにしてもよい。
【0043】
色補正処理部17は、色補正係数算出処理部16が色補正用マトリクス係数を算出すると、下記の式(11)に示すように、その色補正用マトリクス係数を用いて、ディスプレイパネルD0〜D8の色補正処理(色補正のマトリクス演算)を実施する(ステップST6)。


ただし、式(11)において、R_in,G_in,B_inはディスプレイパネルD0〜D8に入力されるRGB値であり、R_out,G_out,B_outはディスプレイパネルD0〜D8から出力されるRGB値である。
【0044】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、マルチディスプレイ1を構成しているディスプレイパネルD0〜D8に対して色補正用の画像を表示する色補正用画像表示部11と、ディスプレイパネルD0〜D8に表示されている色補正用の画像を撮影するDSC12から撮影画像であるRAW画像を取得する画像取得処理部13と、画像取得処理部13により取得されたRAW画像に対するホワイトバランス調整を行う画像調整処理部14と、画像調整処理部14によるホワイトバランス調整処理後のRAW画像から、ディスプレイパネルD0〜D8における目標の色再現特性を表す色度である目標色度を算出する目標色度算出処理部15と、目標色度算出処理部15により算出された目標色度とディスプレイパネルD0〜D8の色度から色補正係数を算出する色補正係数算出処理部16とを設け、色補正処理部17が色補正係数算出処理部16により算出された色補正係数を用いて、ディスプレイパネルD0〜D8の色補正を行うように構成したので、ディスプレイパネルD0〜D8間の色ずれを精度よく補正することができる効果を奏する。
即ち、DSC12により撮影された画像の調整処理を実施したのち、調整処理後の画像から色再現域の共通領域を求めて目標色度を算出するようにしているので、ディスプレイパネルD0〜D8の画像間でホワイトバランスや輝度が異なっていても、ディスプレイパネルD0〜D8の色補正を高精度に行うことができる。また、DSC12を用いても、簡単に色補正マトリクス係数を算出することができる。
【0045】
なお、この実施の形態1では、マルチディスプレイ1が3×3のディスプレイパネルD0〜D8で構成されているものを示したが、マルチディスプレイ1を構成しているディスプレイパネルの台数は、この限りではなく、2台以上のディスプレイパネルであれば、何台でも構わない。
【0046】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、ディスプレイパネルD0〜D8毎に、当該ディスプレイパネルの色補正を行うものについて示したが、これに限るものではなく、例えば、LED表示パネルのように、表示ディスプレイの素子毎に色補正を行う場合でも、本願発明を適用することができる。
以下、表示ディスプレイの素子毎に色補正を行う方法を説明する。
【0047】
色補正用画像表示部11、画像取得処理部13、画像調整処理部14、目標色度算出処理部15、色補正係数算出処理部16及び色補正処理部17は、基本的には上記実施の形態1と同様の処理を行うが、処理単位がディスプレイパネル毎ではなく、ディスプレイパネルの素子毎である点で相違している。
【0048】
即ち、色補正用画像表示部11は、色補正用の画像をディスプレイパネルD0〜D8の全ての素子に表示する。
画像取得処理部13は、DSC12を用いて、色補正用の画像を撮影する際、ディスプレイパネルD0〜D8における素子の一つ一つの分離が可能な程度にボケるように調整して撮影する。
また、調整した素子の全てが一枚の画像に入るように画角を設定する。ただし、調整対象の素子が多過ぎる場合には、画像を分割して撮影する。
【0049】
画像調整処理部14は、W(白色)の画像から平均RGB値を求める際、ディスプレイパネルD0〜D8における素子毎に平均RGB値を算出し、それらの平均値の更なる平均を求めることで、画像の平均RGB値(Rave,Gave,Bave)を求める。
そして、画像調整処理部14は、上記実施の形態1と同様に、式(1)によって、その平均RGB値(Rave,Gave,Bave)から、赤色補正用のホワイトバランス補正係数Wbと青色補正用のホワイトバランス補正係数Wbを算出する。
画像調整処理部14は、赤色補正用のホワイトバランス補正係数Wbと青色補正用のホワイトバランス補正係数Wbを算出すると、上記実施の形態1と同様に、式(2)によって、そのホワイトバランス補正係数Wb,Wbを用いて、RAW画像のホワイトバランスを調整する。
なお、画像調整処理部14は、色補正用の画像の全てに対して、ホワイトバランス調整を実施して、ホワイトバランス調整処理後のRAW画像とする。
【0050】
目標色度算出処理部15は、9台のディスプレイパネルD0〜D8における各素子の共通の色再現域(Rt、Gt、Bt)を求めて、ディスプレイパネルD0〜D8における各素子の目標色度を算出する。
即ち、上記実施の形態1では、ホワイトバランス調整処理後のRAW画像における平均RGB値(Rout,Gout,Bout)を算出する際、ディスプレイパネルD0〜D8毎に、平均RGB値(Rout,Gout,Bout)を算出しているが、この実施の形態2では、ディスプレイパネルD0〜D8における素子毎に、平均RGB値(Rout,Gout,Bout)を算出する。
平均RGB値(Rout,Gout,Bout)の算出後は、上記実施の形態1と同様の処理を実施することで、ディスプレイパネルD0〜D8における各素子の目標色度を算出する。
【0051】
色補正係数算出処理部16は、目標色度算出処理部15が各素子の目標色度を算出すると、各素子の目標色度とディスプレイパネルD0〜D8における各素子の色度から、上記の式(10)を用いて、素子毎の色補正用マトリクス係数を算出する。
色補正処理部17は、色補正係数算出処理部16が色補正用マトリクス係数を算出すると、上記の式(11)によって、その色補正用マトリクス係数を用いて、ディスプレイパネルD0〜D8における各素子の色補正処理(色補正のマトリクス演算)を実施する。
【0052】
この実施の形態2によれば、DSC12により撮影された画像の調整処理を実施したのち、調整処理後の画像から各素子の色再現域の共通領域を求めて目標色度を算出するようにしているので、ディスプレイパネルD0〜D8の素子毎に色補正が行われるようになり、細かい色むらなどを解消することができる効果を奏する。
【0053】
実施の形態3.
上記実施の形態1では、目標色度算出処理部15が、画像調整処理部14によるホワイトバランス調整処理後のRAW画像から、ディスプレイパネルD0〜D8の目標色度を算出するものについて示したが、ディスプレイパネルD0〜D8の目標色度を算出する際、目標色度の算出対象のディスプレイパネルが、例えば、ディスプレイパネルD0であれば、ディスプレイパネルD0の周辺に配置されているディスプレイパネルD1〜D8のフィルタ係数(例えば、イプシロンフィルタ係数、ローパスフィルタ係数など)を考慮して、ディスプレイパネルD0の目標色度を算出するようにしてもよい。
【0054】
図6(a)はマルチディスプレイを構成しているディスプレイパネルD0〜D8の配置を示し、(b)はディスプレイパネルD0〜D8に設定されているフィルタ係数K0〜K8を示している。
目標色度算出処理部15は、上記実施の形態1と同様にして、ディスプレイパネルD0〜D8における色再現域の共通領域(Rt,Gt,Bt)を求める。
【0055】
上記実施の形態1では、ディスプレイパネルD0〜D8における色再現域の共通領域(Rt,Gt,Bt)のxy値を目標色度に決定(Rの目標色度を(xrt,yrt)、Gの目標色度を(xgt,ygt)、Bの目標色度を(xbt,ybt)に決定)しているが、この実施の形態2では、共通領域(Rt,Gt,Bt)のxy値を算出する際、目標色度の算出対象のディスプレイパネルが、例えば、ディスプレイパネルD0であれば、ディスプレイパネルD0の周辺に配置されているディスプレイパネルD1〜D8のフィルタ係数K0〜K8を考慮して、共通領域(Rt,Gt,Bt)のxy値を算出する。
例えば、Rの目標色度を示すxy値の一つをxr_tとすると、下記の式(12)に示すように、ディスプレイパネルD0〜D8のxy値であるxr_Di(i=0,1,2,・・・,8)に対して、ディスプレイパネルD0〜D8のフィルタ係数Ki(i=0,1,2,・・・,8)を乗算し、その乗算結果の総和をxr_tとしている。


【0056】
また、Rの目標色度を示すxy値の一つをyr_tとすると、下記の式(13)に示すように、ディスプレイパネルD0〜D8のxy値であるyr_Di(i=0,1,2,・・・,8)に対して、ディスプレイパネルD0〜D8のフィルタ係数Ki(i=0,1,2,・・・,8)を乗算し、その乗算結果の総和をyr_tとしている。


【0057】
ここでは、Rの目標色度Rt(xr_t,yr_t)を算出する例を示したが、Gの目標色度Gt(xg_t,yg_t)、Bの目標色度Bt(xb_t,yb_t)についても、Rの目標色度Rt(xr_t,yr_t)と同様に、フィルタ係数Kiを考慮して算出する。
【0058】
以上で明らかなように、この実施の形態3によれば、ディスプレイパネルD0〜D8の目標色度を算出する際、目標色度の算出対象のディスプレイパネルが、例えば、ディスプレイパネルD0であれば、ディスプレイパネルD0の周辺に配置されているディスプレイパネルD1〜D8のフィルタ係数を考慮して、ディスプレイパネルD0の目標色度を算出するように構成したので、色再現域を狭めることなく、ディスプレイパネルD0〜D8の色補正を行うことができる効果を奏する。
なお、フィルタ係数Kiとして、例えば、イプシロンフィルタ係数を設定すると、隣り合うディスプレイパネル間の色ムラをより高精度に補正することができる。
【0059】
ここでは、上記実施の形態1に適用して、ディスプレイパネルD0〜D8間の色ずれを補正するものについて示したが、上記実施の形態2に適用して、ディスプレイパネルD0〜D8における素子間の色ずれを補正するようにしてもよい。
また、目標の輝度Yの算出する際に、フィルタリング技術(周辺に配置されているディスプレイパネルのフィルタ係数を考慮する技術)を適用するようにしてもよい。
【0060】
実施の形態4.
図7は、この発明の実施の形態1による色補正処理装置が実装されているマルチディスプレイ装置を示す構成図である。
この実施の形態4では、例えば、デジタルサインネージシステムのように、複数のマルチディスプレイが設置される形態に対応可能な例を示している。
【0061】
図4において、マルチディスプレイ1a,1bは複数のディスプレイパネルから構成されている大画面の表示装置である。
図7の例では、2台のディスプレイパネルD1,D2が並べられることでマルチディスプレイ1aが構成され、2台のディスプレイパネルD3,D4が並べられることでマルチディスプレイ1bが構成されている。
図7では、2台のディスプレイパネルDが並べられている例を示しているが、ディスプレイパネルDの台数が2台に限るものでないことは言うまでもない。
また、マルチディスプレイの台数についても、2台に限るものでないことは言うまでもない。
【0062】
画像表示装置4は色補正処理装置5によりディスプレイパネルD1,D2間及びディスプレイパネルD3,D4間の色ずれが補正された後、各種の画像をディスプレイパネルD1〜D4に表示する装置である。
色補正処理装置5はディスプレイパネルD1,D2間の色ずれを補正するとともに、ディスプレイパネルD3,D4間の色ずれを補正する装置である。
【0063】
DSC12aは画像取得処理部22の指示の下、ディスプレイパネルD1,D2に表示されている色補正用の画像を撮影し、その撮影画像であるRAW画像を示すRAW画像データを画像取得処理部22に出力する処理を実施する。
DSC12bは画像取得処理部22の指示の下、ディスプレイパネルD3,D4に表示されている色補正用の画像を撮影し、その撮影画像であるRAW画像を示すRAW画像データを画像取得処理部22に出力する処理を実施する。
色補正用画像表示部21は例えばGPUなどから構成されており、マルチディスプレイ1aを構成している2台のディスプレイパネルD1,D2に対して色補正用の画像を表示するとともに、マルチディスプレイ1bを構成している2台のディスプレイパネルD3,D4に対して色補正用の画像を表示する処理を実施する。なお、色補正用画像表示部21は色補正用画像表示手段を構成している。
【0064】
画像取得処理部22は例えばCPUを実装している半導体集積回路やワンチップマイコンなどから構成されており、色補正用画像表示部21から色補正用画像の表示完了を示す信号を受けると、画像の撮影指令をDSC12a,12bに出力して、そのDSC12a,12bからRAW画像を示すRAW画像データを取得する処理を実施する。
なお、DSC12a,12b及び画像取得処理部22から撮影画像取得手段が構成されている。
【0065】
画像調整処理部23は例えばGPUなどから構成されており、画像取得処理部22により取得されたRAW画像データが示すRAW画像に対する画像調整処理として、そのRAW画像のホワイトバランスを調整する処理を実施する。
この実施の形態1では、画像調整処理部23がRAW画像に対する画像調整処理として、そのRAW画像のホワイトバランスを調整する例を説明するが、そのRAW画像の輝度を調整するようにしてもよい。
なお、画像調整処理部23は画像調整処理手段を構成している。
【0066】
目標色度算出処理部24は例えばCPUを実装している半導体集積回路やワンチップマイコンなどから構成されており、画像調整処理部23による画像調整処理後の撮影画像から、2台のディスプレイパネルD1,D2における目標の色再現特性を表す色度である目標色度を算出するとともに、2台のディスプレイパネルD3,D4における目標の色再現特性を表す色度である目標色度を算出する処理を実施する。なお、目標色度算出処理部24は目標色度算出手段を構成している。
【0067】
色補正係数算出処理部25は例えばCPUを実装している半導体集積回路やワンチップマイコンなどから構成されており、目標色度算出処理部24により算出された目標色度とディスプレイパネルD1〜D4の色度から色補正係数を算出する処理を実施する。なお、色補正係数算出処理部25は色補正係数算出手段を構成している。
色補正処理部26は例えばGPUなどから構成されており、色補正係数算出処理部25により算出された色補正係数を用いて、ディスプレイパネルD1〜D4の色補正処理を実施する。なお、色補正処理部26は色補正手段を構成している。
【0068】
図7の例では、色補正処理装置5の構成要素である色補正用画像表示部21、DSC12a,12b、画像取得処理部22、画像調整処理部23、目標色度算出処理部24、色補正係数算出処理部25及び色補正処理部26のそれぞれが専用のハードウェアで構成されているものを想定しているが、色補正処理装置5がコンピュータで構成される場合、色補正用画像表示部21、DSC12a,12b、画像取得処理部22、画像調整処理部23、目標色度算出処理部24、色補正係数算出処理部25及び色補正処理部26の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにしてもよい。
【0069】
次に動作について説明する。
色補正処理装置5の色補正用画像表示部21は、マルチディスプレイ1aを構成している2台のディスプレイパネルD1,D2に対して色補正用の画像を表示するとともに、マルチディスプレイ1bを構成している2台のディスプレイパネルD3,D4に対して色補正用の画像を表示する。
即ち、色補正用画像表示部21は、図1の色補正用画像表示部11と同様に、マルチディスプレイ1a,1bを構成しているディスプレイパネルD1〜D4に対して、R(赤色),G(緑色),B(青色)の単色の画像と、W(白色),Bk(黒色)の画像を同時に表示する。
色補正用画像表示部21は、色補正用の画像をディスプレイパネルD1〜D4に表示すると、色補正用画像の表示完了を示す信号を画像取得処理部22に出力する。
【0070】
画像取得処理部22は、色補正用画像表示部21から色補正用画像の表示完了を示す信号を受けると、画像の撮影指令をDSC12a,12bに出力する。
DSC12a(DSC12b)は、画像取得処理部22から画像の撮影指令を受けると、ディスプレイパネルD1,D2(D3,D4)に表示されている色補正用の画像を撮影し、その撮影画像であるRAW画像を示すRAW画像データを画像取得処理部22に出力する。
このとき、2台のディスプレイパネルD1,D2(D3,D4)の表示画像の全体が、DSC12a(DSC12b)の撮影範囲内に収まるように、DSC12a(DSC12b)の撮影位置が調整されているものとする。あるいは、DSC12a(DSC12b)の撮影範囲内に収まるように、望遠または広角のレンズを用いて調整されているものとする。
また、DSC12a(DSC12b)のシャッタースピード及び絞りは目的に応じて調整され、ディスプレイパネルD1,D2(D3,D4)を補正する際には、望遠レンズで少しぼけ気味に調整される。
画像取得処理部22は、DSC12a,12bから出力されたRAW画像を示すRAW画像データを取得する。
【0071】
画像調整処理部23は、画像取得処理部22がRAW画像を示すRAW画像データを取得すると、図1の画像調整処理部14と同様に、そのRAW画像に対する画像調整処理として、そのRAW画像のホワイトバランスを調整する。
【0072】
目標色度算出処理部24は、画像調整処理部23がRAW画像のホワイトバランスを調整すると、ホワイトバランス調整処理後のRAW画像から、2台のディスプレイパネルD1,D2における目標の色再現特性を表す色度である目標色度を算出するとともに、2台のディスプレイパネルD3,D4における目標の色再現特性を表す色度である目標色度を算出する。
目標色度算出処理部24による目標色度の算出処理は、図1の目標色度算出処理部15による目標色度の算出処理と同様であるため詳細な説明を省略する。
ただし、図7の例では、ディスプレイパネルD1の色再現域と、ディスプレイパネルD2の色再現域との共通領域を求めることで、ディスプレイパネルD1,D2の目標色度を算出し、ディスプレイパネルD3の色再現域と、ディスプレイパネルD4の色再現域との共通領域を求めることで、ディスプレイパネルD3,D4の目標色度を算出する。
【0073】
色補正係数算出処理部25は、目標色度算出処理部24が目標色度を算出すると、図1の色補正係数算出処理部16と同様の方法で、ディスプレイパネルD1,D2の目標色度とディスプレイパネルD1,D2の色度から色補正係数として、色補正用マトリクス係数を算出する。
また、ディスプレイパネルD3,D4の目標色度とディスプレイパネルD3,D4の色度から色補正係数として、色補正用マトリクス係数を算出する。
ただし、色補正用マトリクス係数は、ディスプレイパネルD1〜D4毎に算出される。
【0074】
色補正処理部26は、色補正係数算出処理部25が色補正用マトリクス係数を算出すると、図1の色補正処理部17と同様に、その色補正用マトリクス係数を用いて、ディスプレイパネルD1〜D4の色補正処理(色補正のマトリクス演算)を実施する。
【0075】
以上で明らかなように、この実施の形態4によれば、複数のマルチディスプレイ1a,1bが設置されている場合、色補正用画像表示部21がマルチディスプレイ1a,1b毎に、当該マルチディスプレイを構成しているディスプレイパネルD1,D2(D3,D4)に対して色補正用の画像を表示し、画像取得処理部22が当該マルチディスプレイを構成しているディスプレイパネルD1,D2(D3,D4)に表示されている色補正用の画像を撮影して、その撮影画像を取得するように構成したので、例えば、デジタルサインネージシステムのように、複数のマルチディスプレイが設置される場合でも、各マルチディスプレイを構成している複数のディスプレイパネル間の色ずれを精度よく補正することができる効果を奏する。
【0076】
なお、この実施の形態4では、マルチディスプレイ1a,1b毎に、当該マルチディスプレイを構成しているディスプレイパネルD1,D2(または、D3,D4)間の色ずれを補正するものについて示したが、ディスプレイパネルD1〜D4における色再現域の共通領域を求めることで、ディスプレイパネルD1〜D4間の色ずれを補正するようにしてもよい。
この場合、上記実施の形態1に従った手順にしたがって目標色度を算出することで、ディスプレイパネルD1〜D4の色補正を行う。
【0077】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1,1a,1b マルチディスプレイ、D0〜D8 ディスプレイパネル、2,4 画像表示装置、3,5 色補正処理装置、11,21 色補正用画像表示部(色補正用画像表示手段)、12,12a,12b DSC(撮影画像取得手段)、13,22 画像取得処理部(撮影画像取得手段)、14,23 画像調整処理部(画像調整処理手段)、15,24 目標色度算出処理部(目標色度算出手段)、16,25 色補正係数算出処理部(色補正係数算出手段)、26,17 色補正処理部(色補正手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチディスプレイを構成している複数のディスプレイパネルに対して色補正用の画像を表示する色補正用画像表示手段と、上記複数のディスプレイパネルに表示されている色補正用の画像を撮影して、その撮影画像を取得する撮影画像取得手段と、上記撮影画像取得手段により取得された撮影画像に対する画像調整処理を行う画像調整処理手段と、上記画像調整処理手段による画像調整処理後の撮影画像から、上記複数のディスプレイパネルにおける目標の色再現特性を表す色度である目標色度を算出する目標色度算出手段と、上記目標色度算出手段により算出された目標色度と上記複数のディスプレイパネルの色度から色補正係数を算出する色補正係数算出手段と、上記色補正係数算出手段により算出された色補正係数を用いて、上記複数のディスプレイパネルの色補正を行う色補正手段とを備えた色補正処理装置。
【請求項2】
目標色度算出手段は、複数のディスプレイパネルにおける目標色度を算出する際、当該ディスプレイパネルの周辺に配置されているディスプレイパネルのフィルタ係数を考慮して、当該ディスプレイパネルの目標色度を算出することを特徴とする請求項1記載の色補正処理装置。
【請求項3】
複数のマルチディスプレイが設置されている場合、色補正用画像表示手段が各マルチディスプレイ毎に、当該マルチディスプレイを構成している複数のディスプレイパネルに対して色補正用の画像を表示し、
撮影画像取得手段が当該マルチディスプレイを構成している複数のディスプレイパネルに表示されている色補正用の画像を撮影して、その撮影画像を取得する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の色補正処理装置。
【請求項4】
画像調整処理手段は、撮影画像取得手段により取得された撮影画像に対する画像調整処理として、上記撮影画像のホワイトバランスを調整することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の色補正処理装置。
【請求項5】
色補正用画像表示手段がマルチディスプレイを構成している複数のディスプレイパネルに対して色補正用の画像を表示する色補正用画像表示処理ステップと、撮影画像取得手段が上記複数のディスプレイパネルに表示されている色補正用の画像を撮影して、その撮影画像を取得する撮影画像取得処理ステップと、画像調整処理手段が上記撮影画像取得処理ステップで取得された撮影画像に対する画像調整処理を行う画像調整処理ステップと、目標色度算出手段が上記画像調整処理ステップによる画像調整処理後の撮影画像から、上記複数のディスプレイパネルにおける目標の色再現特性を表す色度である目標色度を算出する目標色度算出処理ステップと、色補正係数算出手段が上記目標色度算出処理ステップで算出された目標色度と上記複数のディスプレイパネルの色度から色補正係数を算出する色補正係数算出処理ステップと、色補正手段が上記色補正係数算出処理ステップで算出された色補正係数を用いて、上記複数のディスプレイパネルの色補正を行う色補正処理ステップとを備えた色補正処理方法。
【請求項6】
マルチディスプレイを構成している複数のディスプレイパネルに対して画像を表示する画像表示装置と、上記複数のディスプレイパネル間の色ずれを補正する色補正処理装置とを備えたマルチディスプレイ装置において、
上記色補正処理装置は、上記複数のディスプレイパネルに対して色補正用の画像を表示する色補正用画像表示手段と、上記複数のディスプレイパネルに表示されている色補正用の画像を撮影して、その撮影画像を取得する撮影画像取得手段と、上記撮影画像取得手段により取得された撮影画像に対する画像調整処理を行う画像調整処理手段と、上記画像調整処理手段による画像調整処理後の撮影画像から、上記複数のディスプレイパネルにおける目標の色再現特性を表す色度である目標色度を算出する目標色度算出手段と、上記目標色度算出手段により算出された目標色度と上記複数のディスプレイパネルの色度から色補正係数を算出する色補正係数算出手段と、上記色補正係数算出手段により算出された色補正係数を用いて、上記複数のディスプレイパネルの色補正を行う色補正手段とを備えていることを特徴とするマルチディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−88551(P2012−88551A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235539(P2010−235539)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】