説明

芳香剤組成物

【課題】本発明の目的は、芳香剤組成物において、火災発生等の危険性が少なく、幅広い香りのタイプを提供することができるものである。
【解決手段】ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ならびにジエチレングリコールエチルメチルエーテルからなる群から1種又は2種以上、及び香料を含有する芳香剤組成物により、様々なタイプの香りを有し、火災発生等の危険性の少ない芳香剤組成物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香剤組成物に関する技術分野に属する。より詳細には、ジエチレングリコールエーテル類及び香料を含む芳香剤組成物で、火災発生等の危険性が少ない、様々な香りのタイプを有する芳香剤を提供できるものである。
【背景技術】
【0002】
従来から市販されている芳香剤としては、香料を界面活性剤を用いてエタノール水溶液等の溶媒中に分散させたものが殆どであり、他には香料を油性の溶媒中に溶解したものも考案されている。この油性の溶媒としては、イソパラフィン系炭化水素を使用するもの(特許文献1)や、揮発性シリコーン化合物を使用するもの(特許文献2)が考案されている。しかしながら、エタノール水溶液等の溶媒を使用する芳香剤はエタノールの引火点が低いために火災発生等の危険があった。またイソパラフィン系炭化水素や揮発性シリコーン化合物等の溶媒を使用する芳香剤では、溶媒によっては溶解性の悪い香料成分も多く、使用できる香料成分が限定される等の欠点があるため、幅広い香りのタイプを提供できず、限られたタイプの香りしか提供できないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第1223115号
【特許文献2】特開平11−128331
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、火災発生等の危険性が少なく、且つ幅広い香りのタイプを提供出来る芳香剤が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる事情に鑑み、本発明者は、鋭意研究を行った結果、芳香剤組成物において、下記A群のジエチレングリコールエーテル類より選ばれる1種又は2種以上、及び香料を含む芳香剤組成物は火災発生等の危険性が少なく、幅広い香りのタイプを有する芳香剤を提供できることを見出した。
A群
ジエチレングリコールモノエチルエーテル
ジエチレングリコールジエチルエーテル
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル
【発明の効果】
【0006】
すなわち本発明は、ジエチレングリコールエーテル類及び香料を含有することを特徴とする芳香剤組成物を提供するものであり、使用する香料成分が限定されないため、様々な香りのタイプの芳香剤を提供できるのが特徴である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いられるジエチレングリコールエーテル類は引火点がどれも60℃を超えるものであり火災発生等の危険性が少なく、また、幅広く各種香料成分に対する溶解性が良いため、使用する香料成分が限定されないため、様々な香りのタイプの芳香剤を提供できるのが特徴である。
【0008】
本発明に用いられるジエチレングリコールエーテル類のジエチレングリコールモノエチルエーテルとしては、エチルグリコール(ダイセル化学工業株式会社製)などが挙げられる。また、ジエチレングリコールジエチルエーテルとして、ハイソルブEDE(東邦化学工業株式会社製)などが挙げられる。また、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルとしては、ハイソルブEDM(東邦化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0009】
上記ジエチレングリコールエーテル類の含有割合は、その溶剤としての役割、すなわち、香料を均一に溶解させる役割を発揮し得る割合であればどのような割合でも良いが、芳香剤組成物の、本来の香りとラストノートとのバランスから、好ましくは40重量%以上、より好ましくは60重量%以上であることが望ましい。
【0010】
本発明の芳香剤組成物は、特に形状は限定されないが、好ましくは液体あるいはゲル状である。より好ましくは液体である。
【0011】
本発明の芳香剤組成物中の香料の含有量としては、芳香剤組成物の、本来の香りとラストノートとのバランスから、好ましくは60重量%以下、より好ましくは40重量%以下であることが望ましい。
【0012】
また、香料の溶解性の更なる改良、また製造時の効率化をはかるために、その他の溶剤を補助的に含有させてもよい。これら補助溶剤は香料を溶解させる事ができ、香料本来の香りを阻害する様な著しい溶剤臭を持たないもので、火災発生等の危険性が少ない含有量にとどめる量であれば特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタジエングリコール、へキシレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコール誘導体、フタル酸エステル系溶剤、揮発性シリコーン油、イソパラフィン系溶剤等である。また、水を香料の溶解性が悪くならない程度まで加えてもよい。
【0013】
又、本発明に使用される香料は特に限定される事はなく、合成香料、天然香料等を任意に配合して使用できる。例えば、テルペン類、ジテルペン類、テルペン系アルコール等のアルコール類、テルペン系アルデヒド、脂肪族系アルデヒド、芳香族系アルデヒド等のアルデヒド類、テルペン系ケトン、脂環式ケトン、大環状ケトン等のケトン類、フェノール誘導体、芳香族炭化水素、アセタール類、カルボン酸類、脂肪酸エステル、芳香族エステル等のカルボン酸エステル類等を任意に調合して使用する事ができる。香調としては、レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ等のシトラス調、ローズ、ジャスミン、ミュゲ等のフローラル調、シナモン、ペッパー等のスパイシー調、サンダルウッド、シダー等のウッディー調、アップル、ラズベリー等のフルーティー調、アルデハイディック・フローラル調、シプレー調、オリエンタル調、マリン調、フゼア調等幅広い香りのタイプを使用することができる。
【0014】
更に、本発明による芳香剤組成物は必要に応じて、当該組成物の劣化を防ぎ、より安定した保存性を得る為、また製品としての機能性をより高める為に、酸化防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、消臭剤等を添加する事ができる。また、さらに装飾性等を高めるために、色素等の着色剤を含んでもよい。
【0015】
本発明の芳香剤組成物の用途としては、特に限定されないが、室内の芳香消臭、自動車内の芳香消臭、トイレ内の芳香消臭、下駄箱内の芳香消臭、台所回りの芳香消臭、浴室内の芳香消臭等に使用することができる。また、本発明の芳香剤組成物を含浸させ揮発させて使用する場合の含浸素材も特に限定されないが、ナイロン、ポリエステルなどの不織布、木綿、パルプなどの繊維質を利用したもの、籐(ラタンスティック)等が使用できる。
【0016】
次に実験1により本発明をより詳細に説明する。本発明はこれにより制限されるものではない。
実験1:芳香剤組成物
室温にて香料1〜29を10重量%と基剤A〜E90重量%を混合撹拌しその混合物の状態を観察した。結果を表1に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
表1の結果から、ジエチレングリコールエーテル類は各種香料に対する溶解性がよいことが示された。これにより、ジエチレングリコールエーテル類及び香料を含む芳香剤組成物は幅広い香りのタイプを提供できる。
【0019】
次に、実施例をあげて、本発明を更により詳細に説明する。本発明はこれにより限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
(実施例1)芳香剤組成物
ジエチレングリコールジエチルエーテル(商品名:ハイソルブEDE、東邦化学工業(株)製)80g、及び香料(フローラル様の香り)20gを混合し、芳香剤組成物を調製した。その芳香剤組成物の状態を観察した。その10gを高さ5cm、直径2cmのガラス製の円筒容器に入れ、幅1cm、長さ15cm、厚さ1mmの濾紙を入れ芳香剤組成物を含浸させ室内にて放置した。含浸1日後及び芳香剤組成物が8g揮発した時に、1.2m×1.5m×1.8mのブース内に15分間静置し、揮発させた後、5名の香りの専門パネラーがブース内に漂う香りを評価した。結果を表2に示す。
【0021】
(実施例2)芳香剤組成物
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(商品名:エチルグリコール、ダイセル化学工業(株)製)80g、及び香料(フローラル様の香り)20gを混合し、芳香剤組成物を調製した。その他は、実施例1と同様にその芳香剤組成物を評価した。結果を表2に示す。
【0022】
(実施例3)芳香剤組成物
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(商品名:ハイソルブEDM、東邦化学工業(株)製)80g、及び香料(フローラル様の香り)20gを混合し、芳香剤組成物を調製した。その他は、実施例1と同様にその芳香剤組成物を評価した。結果を表2に示す。
【0023】
(実施例4)芳香剤組成物
ジエチレングリコールジエチルエーテル(商品名:ハイソルブEDE、東邦化学工業(株)製)60g、及びジエチレングリコールモノエチルエーテル(商品名:エチルグリコール、ダイセル化学工業(株)製)5g、及びジエチレングリコールエチルメチルエーテル(商品名:ハイソルブEDM、東邦化学工業(株)製)5g、及び香料(フローラル様の香り)30gを混合し、芳香剤組成物を調製した。その他は、実施例1と同様にその芳香剤組成物を評価した。結果を表2に示す。
【0024】
(実施例5)芳香剤組成物
ジエチレングリコールジエチルエーテル(商品名:ハイソルブEDE、東邦化学工業(株)製)50g、及びジエチレングリコールエチルメチルエーテル(商品名:ハイソルブEDM、東邦化学工業(株)製)15g、及び香料(フローラル様の香り)35gを混合し、芳香剤組成物を調製した。その他は、実施例1と同様にその芳香剤組成物を評価した。結果を表2に示す。
【0025】
(実施例6)芳香剤組成物
ジエチレングリコールジエチルエーテル(商品名:ハイソルブEDE、東邦化学工業(株)製)50g、及びジエチレングリコールモノエチルエーテル(商品名:エチルグリコール、ダイセル化学工業(株)製)15g、及び香料(フローラル様の香り)35gを混合し、芳香剤組成物を調製した。その他は、実施例1と同様にその芳香剤組成物を評価した。結果を表2に示す。
【0026】
(実施例7)芳香剤組成物
ジエチレングリコールジエチルエーテル(商品名:ハイソルブEDE、東邦化学工業(株)製)30g、及びジエチレングリコールエチルメチルエーテル(商品名:ハイソルブEDM、東邦化学工業(株)製)15g、及び香料(フローラル様の香り)55gを混合し、芳香剤組成物を調製した。その他は、実施例1と同様にその芳香剤組成物を評価した。結果を表2に示す。
【0027】
(実施例8)芳香剤組成物
ジエチレングリコールジエチルエーテル(商品名:ハイソルブEDE、東邦化学工業(株)製)5g、及びジエチレングリコールモノエチルエーテル(商品名:エチルグリコール、ダイセル化学工業(株))製30g、及び香料(フローラル様の香り)65gを混合し、芳香剤組成物を調製した。その他は、実施例1と同様にその芳香剤組成物を評価した。結果を表2に示す。
【0028】
(比較例1)芳香剤組成物
揮発性シリコーン油(商品名:KF−96L−1.5cs、信越化学工業(株)製)90g、及び香料(フローラル様の香り)10gを混合し、芳香剤組成物を調製した。その芳香剤組成物の状態を観察した。結果を表2に示す。
【0029】
(比較例2)芳香剤組成物
イソパラフィン系炭化水素(商品名:IPソルベント1620、出光興産(株)製)90g、及び香料(フローラル様の香り)10gを混合し、芳香剤組成物を調製した。その芳香剤組成物の状態を観察した。結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
表1、及び表2から、本発明は様々な香りのタイプの芳香剤を提供できることを特徴とする芳香剤組成物である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A群のジエチレングリコールエーテル類より選ばれる1種又は2種以上、及び香料を含む芳香剤組成物
A群
ジエチレングリコールモノエチルエーテル
ジエチレングリコールジエチルエーテル
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル
【請求項2】
ジエチレングリコールエーテル類の含有量が40重量%以上であり、香料の含有量が60重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の芳香剤組成物。
【請求項3】
ジエチレングリコールエーテル類の含有量が60重量%以上であり、香料の含有量が40重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の芳香剤組成物。


【公開番号】特開2011−194012(P2011−194012A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63631(P2010−63631)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】