説明

芳香族へテロ環化合物のニトリル化法

【課題】毒性が高い原料が不要であり、副生成物の量を低減でき、使用原料の構造上の制約が少ない新規の芳香族へテロ環化合物のニトリル化法の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される含窒素芳香族へテロ環化合物と、下記一般式(2)で表されるケイ素化合物と、ニトロメタンとを、亜鉛スルホナート、亜鉛スルホンアミド及び亜鉛ハライドからなる群から選択される一種以上の亜鉛触媒存在下で反応させ、下記一般式(3)で表される、芳香族へテロ環化合物のニトリル化物を得ることを特徴とする、芳香族へテロ環化合物のニトリル化法。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族へテロ環化合物のニトリル化法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族化合物のニトリル化物(アリールニトリル化合物)は、芳香族環にシアノ基が結合した化合物であり、種々の官能基を有するアリール化合物に変換可能であり、さらに、医農薬、各種化成品、高機能性材料等の中間体となるため、極めて重要な化合物である。なかでも、窒素原子(N)、酸素原子(O)、硫黄原子(S)等のヘテロ原子が芳香族環中に含まれる芳香族ヘテロ環化合物のニトリル化物(ヘテロアリールニトリル化合物)は、極めて有用である。
【0003】
芳香族化合物をニトリル化する方法は、これまでに多数報告されているが、芳香族環に直接シアノ基(−CN)を導入する方法としては、ハロゲン化アリールを遷移金属触媒存在下で金属シアン化物と反応させる方法が最も一般的であると考えられる。これに関連した方法で初めて報告されたものは、ハロゲン化ベンゼン又はハロゲン化ナフタレンを、パラジウム(Pd(II))触媒存在下でシアン化カリウム(KCN)と反応させる方法(非特許文献1参照)であると考えられる。
しかし、非特許文献1に記載の方法では、触媒反応でシアノ化が進行するものの、毒物であるシアン化カリウムを使用するため、安全面から極めて限られた環境下でしか行うことができず、汎用性に乏しいという問題点があった。
【0004】
そこで、プロセス上の制約が少なく、より有用な芳香族化合物のニトリル化法が検討され、例えば、ベンゼン骨格又はナフタレン骨格に2−ピリジル基が結合したアリール化合物を、銅塩存在下で、シアノ基供給源であるニトロメタンと反応させる方法(非特許文献2参照)が開示されている。この方法では、2−ピリジル基が結合している炭素原子に隣り合う炭素原子に、シアノ基を高選択的に導入できるとされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kentaro Takagi et.al., Chemistry Letters, pp.471−474(1973)
【非特許文献2】Xiao Chen et.al., J.Am.Chem.Soc.,128,6790−6791(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献2に記載の方法では、基質となる芳香族化合物は、シアノ化を誘導するために2−ピリジル基を有することが必要となり、適用できる分子構造が極めて狭い範囲に限定されるという問題点があった。また、銅塩は化学量論量必要であり、金属を含む副生成物が大量に副生されるため、環境負荷が大きいという問題点があった。そして、これら芳香族化合物はもとより、窒素原子が芳香族環中に含まれる含窒素芳香族ヘテロ環化合物等についても同様に、直接シアノ基を導入する有用な方法がこれまでに開示されていないのが実情である。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、毒性が高い原料が不要であり、副生成物の量を低減でき、使用原料の構造上の制約が少ない新規の芳香族へテロ環化合物のニトリル化法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、
本発明は、下記一般式(1)で表される含窒素芳香族へテロ環化合物と、下記一般式(2)で表されるケイ素化合物と、ニトロメタンとを、亜鉛スルホナート、亜鉛スルホンアミド及び亜鉛ハライドからなる群から選択される一種以上の亜鉛触媒存在下で反応させ、下記一般式(3)で表される、芳香族へテロ環化合物のニトリル化物を得ることを特徴とする、芳香族へテロ環化合物のニトリル化法を提供する。
【0009】
【化1】

(式中、Rは水素原子、又は置換基を有していてもよい脂肪族基若しくはアリール基であり;Rは置換基を有していてもよい脂肪族基又はアリール基であり;Rはハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい脂肪族基若しくはアリール基であり;Rは炭素数1〜15のアルキル基若しくはアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基若しくはアルキルアリール基、又はアミノ基であり;lは0〜4の整数であり、lが2〜4である場合には、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRは相互に結合して環を形成していてもよく;mは0又は1であり;nは0〜3の整数であり、ただし、mが1である場合には、nは0又は1であり;nが2又は3である場合には、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRは相互に結合して環を形成していてもよく;Rが水素原子ではなく、且つnが0ではない場合には、R及びRは相互に結合して環を形成していてもよく;l及びmがいずれも0ではなく、且つRが水素原子ではない場合には、R及びRは相互に結合して環を形成していてもよく; l 、m及びnがいずれも0ではない場合には、R及びRは相互に結合して環を形成していてもよく;pは1〜3の整数であり、pが2又は3である場合には、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRは相互に結合して環を形成していてもよい。)
【0010】
本発明の芳香族へテロ環化合物のニトリル化法においては、前記Rが水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜15のアリール基若しくはアリールアルキル基であり、前記Rが炭素数1〜10のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は炭素数6〜15のアリール基若しくはアリールアルキル基であり、前記Rがハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は炭素数6〜15のアリール基若しくはアリールアルキル基であることが好ましい。
本発明の芳香族へテロ環化合物のニトリル化法においては、前記亜鉛触媒が、炭素数1〜10の亜鉛フルオロアルキルスルホナート及び亜鉛フルオロアルキルスルホンアミド、並びに亜鉛ハライドからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
本発明の芳香族へテロ環化合物のニトリル化法においては、前記Rが炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数6〜15のアリール基若しくはアリールアルキル基であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、毒性が高い原料が不要であり、副生成物の量を低減でき、使用原料の構造上の制約が少ない新規の芳香族へテロ環化合物のニトリル化法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の芳香族へテロ環化合物のニトリル化法は、下記一般式(1)で表される含窒素芳香族へテロ環化合物(以下、「化合物(1)」と略記する)と、下記一般式(2)で表されるケイ素化合物(以下、「化合物(2)」と略記する)と、ニトロメタンとを、亜鉛スルホナート、亜鉛スルホンアミド及び亜鉛ハライドからなる群から選択される一種以上の亜鉛触媒(以下、「亜鉛触媒」と略記する)存在下で反応させ、下記一般式(3)で表される、芳香族へテロ環化合物のニトリル化物(以下、「化合物(3)」と略記する)を得ることを特徴とする。
【0013】
【化2】

(式中、Rは水素原子、又は置換基を有していてもよい脂肪族基若しくはアリール基であり;Rは置換基を有していてもよい脂肪族基又はアリール基であり;Rはハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい脂肪族基若しくはアリール基であり;Rは炭素数1〜15のアルキル基若しくはアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基若しくはアルキルアリール基、又はアミノ基であり;lは0〜4の整数であり、lが2〜4である場合には、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRは相互に結合して環を形成していてもよく;mは0又は1であり;nは0〜3の整数であり、ただし、mが1である場合には、nは0又は1であり;nが2又は3である場合には、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRは相互に結合して環を形成していてもよく;Rが水素原子ではなく、且つnが0ではない場合には、R及びRは相互に結合して環を形成していてもよく;l及びmがいずれも0ではなく、且つRが水素原子ではない場合には、R及びRは相互に結合して環を形成していてもよく; l 、m及びnがいずれも0ではない場合には、R及びRは相互に結合して環を形成していてもよく;pは1〜3の整数であり、pが2又は3である場合には、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRは相互に結合して環を形成していてもよい。)
【0014】
<化合物(1)>
化合物(1)において、Rは水素原子、又は置換基を有していてもよい脂肪族基若しくはアリール基である。また、Rは置換基を有していてもよい脂肪族基又はアリール基である。Rは、化合物(1)のピロール環骨格を構成している炭素原子に結合している。
化合物(1)において、水素原子以外のRと、Rとは、それぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0015】
及びRにおける脂肪族基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、飽和脂肪族基及び不飽和脂肪族基のいずれでもよい。
前記脂肪族基は、炭化水素基であることが好ましい。
【0016】
及びRの飽和脂肪族基における炭化水素基としては、アルキル基が例示できる。
及びRの飽和脂肪族基における鎖状又は分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることが特に好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基が例示できる。
【0017】
及びRの飽和脂肪族基における環状のアルキル基は、単環構造及び多環構造のいずれでもよく、炭素数が3〜10であることが好ましく、より具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示できる。
【0018】
及びRの不飽和脂肪族基としては、前記飽和脂肪族基における隣接する炭素原子間の単結合(C−C)の一つ以上が二重結合(C=C)又は三重結合(C≡C)に置換されたものが例示できる。該不飽和脂肪族基における二重結合(C=C)及び三重結合(C≡C)の総数は少ないほど好ましく、1〜3であることが好ましい。
前記不飽和脂肪族基は、不飽和炭化水素基であることが好ましく、アルケニル基又はアルキニル基が例示できる。より具体的には、飽和脂肪族基における直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基における炭素原子間の一つの単結合が、不飽和結合(炭素原子間の二重結合又は三重結合)に置換されたものが例示できる。
及びRの不飽和脂肪族基におけるアルケニル基又はアルキニル基は、直鎖状又は分岐鎖状である場合には、炭素数が2〜20であることが好ましく、2〜15であることがより好ましく、2〜10であることが特に好ましい。また、環状である場合には、炭素数が5〜10であることが好ましい。
【0019】
及びRにおけるアリール基は、単環構造及び多環構造のいずれでもよく、炭素数が6〜15であることが好ましい。なかでも、好ましいものとしては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が例示できる。さらに、これらの基の一つ以上の水素原子が、炭化水素基で置換されていてもよく、該炭化水素基としては、前記脂肪族基における炭化水素基と同様のものが例示できる。そして、炭化水素基の置換位置は、特に限定されない。
【0020】
及びRにおける脂肪族基又はアリール基は、置換基を有していてもよい。ここで「脂肪族基又はアリール基が置換基を有する」とは、脂肪族基又はアリール基を構成する一つ以上の水素原子が、水素原子以外の基で置換されているか、あるいは脂肪族基又はアリール基を構成する一つ以上の炭素原子が、炭素原子以外の基で置換されていることを指す。そして、水素原子及び炭素原子が共に置換基で置換されていてもよい。
置換基を有する前記脂肪族基又はアリール基は、置換基も含めて炭素数が前記範囲内であることが好ましい。
【0021】
及びRにおける水素原子を置換する置換基としては、アルキル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、シアノアルキル基、トリアルキルシリル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、アルキルアリールオキシ基、水酸基(−OH)、シアノ基(−CN)及びハロゲン原子が例示できる。
【0022】
水素原子を置換するアルキル基としては、前記脂肪族基におけるアルキル基と同様のものが例示できる。
水素原子を置換するアルキルオキシカルボニル基としては、前記脂肪族基におけるアルキル基がオキシカルボニル基に結合した一価の基が例示できる。
水素原子を置換するアルキルカルボニルオキシ基としては、前記脂肪族基におけるアルキル基がカルボニルオキシ基に結合した一価の基が例示できる。
水素原子を置換するアルコキシ基としては、前記脂肪族基におけるアルキル基が酸素原子に結合した一価の基が例示できる。
水素原子を置換するアルキルカルボニル基としては、前記脂肪族基におけるアルキル基がカルボニル基に結合した一価の基が例示できる。
水素原子を置換するシアノアルキル基としては、前記脂肪族基におけるアルキル基の一つの水素原子がシアノ基で置換された基が例示できる。
水素原子を置換するトリアルキルシリル基としては、三つの前記脂肪族基におけるアルキル基がケイ素原子に結合した一価の基が例示できる。ここで、三つのアルキル基は互いに同一でもよく、異なっていてもよい。すなわち、三つのアルキル基の内、二つが同一でもよく、三つ全てが同一でもよく、三つ全てが異なっていてもよい。
【0023】
水素原子を置換するアルケニル基としては、前記脂肪族基におけるアルケニル基と同様のものが例示できる。
水素原子を置換するアルケニルオキシ基としては、前記脂肪族基におけるアルケニル基が酸素原子に結合した基が例示できる。
【0024】
水素原子を置換するアリール基は、前記と同様である。
水素原子を置換するアルキルアリール基としては、前記アリール基の芳香族環を構成する炭素原子に結合している一つの水素原子が、前記脂肪族基におけるアルキル基で置換された基が例示できる。
水素原子を置換するアリールアルキル基としては、前記脂肪族基におけるアルキル基の一つの水素原子が前記アリール基で置換された基が例示できる。
水素原子を置換するアリールオキシ基としては、前記アリール基が酸素原子に結合した一価の基が例示できる。
水素原子を置換するアリールアルキルオキシ基としては、前記脂肪族基におけるアルキル基から一つの水素原子を除いたアルキレン基に、前記アリール基と酸素原子が結合した一価の基が例示できる。
水素原子を置換するアルキルアリールオキシ基としては、前記アリール基から、芳香族環を構成する炭素原子に結合している一つの水素原子を除いたアリーレン基に、前記脂肪族基におけるアルキル基と酸素原子が結合した一価の基が例示できる。
【0025】
水素原子を置換するハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
【0026】
水素原子を置換する置換基の数は特に限定されず、R及びRの種類に応じて任意に調整でき、一つでもよいし、複数でもよく、すべての水素原子が置換基で置換されていてもよい。ただし、通常は1〜4であることが好ましい。
また、置換基で置換される水素原子の位置は特に限定されない。
【0027】
及びRにおける炭素原子を置換する置換基としては、カルボニル基(−C(=O)−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−NH−C(=O)−)、ヘテロ原子が例示できる。
炭素原子を置換するヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ホウ素原子が例示できる。
炭素原子を置換する置換基の数は特に限定されず、R及びRの種類に応じて任意に調整でき、一つでもよいし、複数でもよい。ただし、通常は1〜4であることが好ましい。
また、置換基で置換される炭素原子の位置は特に限定されない。
【0028】
置換基を有するR及びRとしては、水素原子が置換基で置換された脂肪族基であれば、アリールアルキル基が例示でき、炭素原子が置換基で置換された脂肪族基であれば、アルコキシ基が例示できる。ただし、これらはごく一例に過ぎず、置換基を有するR及びRとしては、上記説明に該当する多種多様なものが適用できる。
【0029】
化合物(1)において、Rはハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい脂肪族基若しくはアリール基である。Rは、化合物(1)のベンゼン環骨格を構成している炭素原子(インドール環骨格の4位、5位、6位又は7位の炭素原子)に結合している。
におけるハロゲン原子としては、R及びRにおける水素原子を置換するハロゲン原子と同様のものが例示できる。
における置換基を有していてもよい脂肪族基若しくはアリール基としては、R及びRにおける置換基を有していてもよい脂肪族基若しくはアリール基と同様のものが例示できる。
【0030】
化合物(1)において、lは0〜4の整数である。
lが2〜4である場合、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべてのRが同一であってもよく、一部のRが互いに異なっていてもよく、すべてのRが互いに異なっていてもよい。
lが1〜4である場合、Rのインドール環骨格への結合位置は特に限定されない。
【0031】
lが2〜4である場合、複数のRは相互に結合して環を形成していてもよい。すなわち、複数のR同士が結合して、これら複数のRと、これらが結合しているインドール環骨格を構成している炭素原子とで、環を形成していてもよい。この時の環は、単環構造及び多環構造のいずれでもよく、環員数(環の骨格を構成する原子の数)も特に限定されない。
【0032】
化合物(1)において、mは0又は1であり、nは0〜3の整数である。ただし、mが1である場合には、nは0又は1である。すなわち、化合物(1)は、mが1である場合には、下記一般式(11)で表されるインドール環骨格を有する化合物(以下、「化合物(11)」と略記する)であり、mが0である場合には、下記一般式(12)で表されるピロール環骨格を有する化合物(以下、「化合物(12)」と略記する)である。
【0033】
【化3】

(式中、R、R、R及びlは前記と同様であり;n1は0又は1であり;n2は0〜3の整数であり、n2が2又は3である場合、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRは相互に結合して環を形成していてもよい。)
【0034】
化合物(11)において、n1は0又は1であり、n1が1である場合には、Rは、化合物(11)におけるインドール環骨格の2位又は3位の炭素原子に結合している。この場合、Rは、インドール環骨格の2位の炭素原子に結合していることが好ましい。すなわち、化合物(11)としては、下記一般式(11a)で表される化合物と、下記一般式(11b)で表される化合物が挙げられるが、下記一般式(11a)で表される化合物が好ましい。
【0035】
【化4】

(式中、R、R、R、l及びn1は前記と同様である。)
【0036】
化合物(12)において、n2は0〜3の整数であり、n2が1〜3である場合には、Rは、化合物(12)におけるピロール環骨格の2位〜5位のいずれかの炭素原子に結合している。この場合、Rは、ピロール環骨格の2位又は5位の炭素原子に結合していることが好ましい。
化合物(12)においてn2が2又は3である場合(化合物(1)においてnが2又は3である場合)、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべてのRが同一であってもよく、一部のRが互いに異なっていてもよく、すべてのRが互いに異なっていてもよい。
【0037】
化合物(12)においてn2が2又は3である場合(化合物(1)においてnが2又は3である場合)、複数のRは相互に結合して環を形成していてもよい。すなわち、複数のR同士が結合して、これら複数のRと、これらが結合しているピロール環骨格を構成している炭素原子とで、環を形成していてもよい。この時の環は、単環構造及び多環構造のいずれでもよく、環員数も特に限定されない。
【0038】
n2は0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。
【0039】
化合物(1)において、Rが水素原子ではなく、且つnが0ではない場合(すなわち、化合物(11)において、Rが水素原子ではなく、且つn1が0ではない場合、化合物(12)において、Rが水素原子ではなく、且つn2が0ではない場合)には、R及びRは相互に結合して環を形成していてもよい。すなわち、Rと一つ以上のRとが結合して、これらR及びRと、これらが結合している、ピロール環骨格を構成している炭素原子及び窒素原子とで、環を形成していてもよい。この時の環は、単環構造及び多環構造のいずれでもよく、環員数も特に限定されない。
【0040】
化合物(1)において、l及びmがいずれも0ではなく(すなわち、化合物(11)においてlが0ではなく)、且つRが水素原子ではない場合には、R及びRは相互に結合して環を形成していてもよい。すなわち、Rと一つ以上のRとが結合して、これらR及びRと、これらが結合している、インドール環骨格を構成している炭素原子及び窒素原子とで、環を形成していてもよい。この時の環は、単環構造及び多環構造のいずれでもよく、環員数も特に限定されない。
【0041】
化合物(1)において、l 、m及びnがいずれも0ではない(すなわち、化合物(11)においてl及びn1が0ではない)場合には、R及びRは相互に結合して環を形成していてもよい。すなわち、一つ以上のRと一つ以上のRとが結合して、これらR及びRと、これらが結合している、インドール環骨格を構成している原子(炭素原子、あるいは炭素原子及び窒素原子)とで、環を形成していてもよい。この時の環は、単環構造及び多環構造のいずれでもよく、環員数も特に限定されない。
【0042】
そして、化合物(1)が水素原子以外のR、R及びRを有する場合には、これらR〜Rがすべて相互に結合して環を形成していてもよい。
【0043】
<化合物(2)>
化合物(2)において、Rは炭素数1〜15のアルキル基若しくはアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基若しくはアルキルアリール基、又はアミノ基(−NH)である。
【0044】
における炭素数1〜15のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、R及びRにおけるアルキル基と同様のものが例示でき、炭素数が1〜10であることが好ましい。
における炭素数1〜15のアルコキシ基としては、Rにおける前記アルキル基が酸素原子に結合した一価の基が例示でき、炭素数が1〜5であるものが特に好ましい。
における炭素数6〜20のアリール基は、単環構造及び多環構造のいずれでもよく、炭素数が6〜15であることが好ましい。なかでも、好ましいものとしては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が例示できる。さらに、これらの基の一つ以上の水素原子が、炭化水素基で置換されていてもよく、該炭化水素基としては、前記脂肪族基における炭化水素基と同様のものが例示できる。そして、炭化水素基の置換位置は、特に限定されない。
における炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、Rにおける前記アリール基が酸素原子に結合した一価の基が例示できる。
における炭素数6〜20のアリールアルキル基としては、Rにおける前記アルキル基の一つの水素原子が、Rにおける前記アリール基で置換された基が例示でき、炭素数が6〜15であることが好ましく、好ましいものとしては、ベンジル基(C−CH−)が例示できる。
における炭素数6〜20のアルキルアリール基としては、Rにおける前記アリール基の芳香族環を構成する炭素原子に結合している一つの水素原子が、Rにおける前記アルキル基で置換された基が例示でき、炭素数が6〜15であることが好ましい。
【0045】
化合物(2)において、pは1〜3の整数である。
pが2又は3である場合、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべてのRが同一であってもよく、一部のRが互いに異なっていてもよく、すべてのRが互いに異なっていてもよい。
【0046】
pが2又は3である場合、複数のRは相互に結合して環を形成していてもよい。すなわち、複数のR同士が結合して、これら複数のRと、これらが結合しているケイ素原子とで、環を形成していてもよい。
【0047】
化合物(2)の使用量は、化合物(1)に対して1〜10倍モル量であることが好ましく、1.5〜7.5倍モル量であることがより好ましい。下限値以上とすることで、化合物(3)の生成量をより向上させることができる。また、上限値以下とすることで、化合物(2)の過剰使用を抑制できる。
【0048】
<亜鉛触媒>
本発明においては、亜鉛触媒として、亜鉛スルホナート、亜鉛スルホンアミド又は亜鉛ハライドを使用する。
【0049】
亜鉛スルホナートは、亜鉛フルオロアルキルスルホナートが好ましく、亜鉛パーフルオロアルキルスルホナートがより好ましい。
そして、亜鉛スルホナートは、炭素数が1〜10であることが好ましい。
特に好ましい亜鉛スルホナートとしては、下記式(41)で表される化合物(以下、「Zn(OTf)」と略記する)及び下記式(42)で表される化合物(以下、「Zn(ONf)」と略記する)が例示できる。
【0050】
【化5】

【0051】
亜鉛スルホンアミドは、亜鉛フルオロアルキルスルホンアミドが好ましく、亜鉛パーフルオロアルキルスルホンアミドがより好ましい。
そして、亜鉛スルホンアミドは、炭素数が1〜10であることが好ましい。
特に好ましい亜鉛スルホンアミドとしては、下記式(43)で表される化合物(以下、「Zn(NTf」と略記する)が例示できる。
【0052】
【化6】

【0053】
亜鉛ハライドとしては、フッ化亜鉛(ZnF)、塩化亜鉛(ZnCl)、臭化亜鉛(ZnBr)、ヨウ化亜鉛(ZnI)が例示でき、塩化亜鉛、臭化亜鉛が好ましい。
【0054】
亜鉛触媒の使用量は、化合物(1)を基準として、1〜30モル%であることが好ましく、1〜20モル%であることがより好ましい。下限値以上とすることで、化合物(3)の生成量をより向上させることができる。また、上限値以下とすることで、副生成物の量をより低減できる。本発明においては、このように、亜鉛触媒の使用量が少量なので、例えば、化学量論量の金属塩を使用する従来の方法のように、金属を含む副生成物が大量に副生することがない。
【0055】
亜鉛触媒は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0056】
<ニトロメタン>
本発明において、ニトロメタンは、シアノ基供給源として機能すると考えられる。
ニトロメタンの使用量は、使用するその他の原料の種類や、反応条件等を考慮して適宜設定すればよいが、化合物(1)に対して2倍モル量以上であることが好ましく、5倍モル量以上であることがより好ましい。下限値以上とすることで、化合物(3)の生成量をより向上させることができる。上限値は特に限定されず、本発明の効果を妨げない範囲内において適宜設定すればよい。
本発明においては、後述する溶媒を使用せずに、大過剰量のニトロメタンを溶媒兼用で使用してもよい。この場合のニトロメタンの使用量は、例えば、化合物(1)に対して7〜15倍モル量であることが好ましい。
【0057】
<その他の反応条件>
本発明においては、化合物(1)、化合物(2)、亜鉛触媒及びニトロメタン以外に、本発明の効果を妨げない範囲内において、さらにその他の成分を使用して、反応させてもよい。
【0058】
前記その他の成分としては、ニトロメタン以外の溶媒が例示でき、反応を妨げないものから適宜選択できる。
前記溶媒は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
本発明においては、条件によっては、前記溶媒を使用しなくても十分な量の化合物(3)が得られるので、前記溶媒の使用の有無、使用する場合の使用量は、行う反応ごとに判断すればよい。
【0059】
化合物(3)は、化合物(1)、化合物(2)、亜鉛触媒、ニトロメタン、及び必要に応じてその他の成分を混合し、反応させることで、生成させることができる。
反応温度は、適宜調整すればよく、特に限定されないが、通常は、50〜130℃が好ましく、65〜115℃がより好ましい。このように、極端な低温又は高温等の特殊な温度ではなく、実用的な温度で反応させることができるので、本発明は極めて汎用性が高い。
反応時間は、反応温度等、その他の反応条件に応じて適宜調整すればよいが、通常は、2〜100時間が好ましい。
【0060】
化合物(3)の製造時には、反応終了後、常法により必要に応じて後処理を行い、生成物を取り出せばよい。すなわち、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は二つ以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、生成物を取り出せばよい。また、取り出した生成物は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は二つ以上組み合わせて一回以上行うことで、精製してもよい。
【0061】
本発明においては、使用する化合物(1)に対応して、化合物(3)として、下記一般式(31)で表されるインドール環骨格を有する化合物(以下、「化合物(31)」と略記する)又は下記一般式(32)で表されるピロール環骨格を有する化合物(以下、「化合物(32)」と略記する)を製造できる。
【0062】
【化7】

(式中、R、R、R、l、n1及びn2は前記と同様である。)
【0063】
化合物(31)としては、下記一般式(31a)で表される化合物と、下記一般式(31b)で表される化合物が挙げられるが、本発明は、下記一般式(31a)で表される化合物の製造に好適である。
【0064】
【化8】

(式中、R、R、R、l及びn1は前記と同様である。)
【0065】
化合物(32)としては、下記一般式(32a)で表される化合物と、下記一般式(32b)で表される化合物が挙げられるが、本発明は、n2が0又は1であるこれら化合物の製造に好適である。
【0066】
【化9】

(式中、R、R及びn2は前記と同様である。)
【0067】
本発明によれば、化合物(1)を構成する芳香族環(ピロール環骨格)に直接シアノ基を導入することで、化合物(3)を効率よく製造できる。この時、金属シアン化物等の毒性が高い原料を使用する必要がなく、特殊な反応条件も必要としないので、特殊な設備が不要であり、プロセス上の制約が少ない。また、使用する金属化合物は亜鉛触媒であり、使用量が少ないので、例えば、金属塩を化学量論量使用した場合よりも、副生成物の量を大幅に低減できる。さらに、化合物(1)としては、インドール環骨格又はピロール環骨格を有するものであればいずれも使用でき、シアノ化を誘導するための特殊な官能基を有している必要性はないので、使用原料の構造上の制約が少ない。
このように、本発明によれば、極めて有用で多様なアリールニトリル化合物を、環境負荷が小さく、安全で、汎用性が高い方法によって製造できる。
【実施例】
【0068】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下に示す亜鉛触媒の使用量(mol%)は、すべて化合物(1)を基準とした量である。また、「mmol」は10−3モルを示す。さらに、各略号はそれぞれ以下の基を示す。
Me:メチル基
Et:エチル基
n−Oct:n−オクチル基
Ph:フェニル基
【0069】
[実施例1]
表1及び2に示すように、化合物(1)としてインドール(0.8mmol)と、化合物(2)としてジフェニルシラン(2.4mmol)と、ニトロメタン(0.4ml、7.4mmol)と、亜鉛触媒としてZn(OTf)(10mol%と)を混合し、90℃で10時間反応させた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物である化合物(3101)を単離収率74%で得た。単離収率は、検量線を用いてガスクロマトグラフィーの測定値から算出した収率(以下、GC収率と略記する)(76%)とほぼ一致した。
得られた化合物(3101)のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.30-7.37 (m, 2 H), 7.47 (d, J = 6.4 Hz, 1 H), 7.74 (d, J = 2.4 Hz , 1 H), 7.79 (d, J = 6.2 Hz, 1 H), 8.60 (bs, 1 H).
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 87.5, 112.1, 115.8, 119.7, 122.4, 124.4, 126.9, 131.8, 134.8.
【0070】
【化10】

【0071】
[実施例2]
表1及び2に示す条件で反応を行ったこと以外は実施例1と同様にして、目的物である化合物(3102)を単離収率58%で得た。
得られた化合物(3102)のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 3.86 (s, 3 H), 7.29-7.32 (m, 1 H), 7.37 (td, J = 7.8, 1.3 Hz, 1 H), 7.40 (d, J = 8.0 Hz, 1 H), 7.57 (s, 1 H), 7.77 (dt, J = 8.0, 1.3 Hz, 1 H).
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 33.6, 85.4, 110.3, 116.0, 119.8, 122.1, 123.8, 127.8, 135.5, 136.0.
【0072】
【化11】

【0073】
[実施例3]
表1及び2に示す条件で反応を行ったこと以外は実施例1と同様にして、目的物である化合物(3103)を単離収率60%で得た。
得られた化合物(3103)のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.29-7.36 (m, 2H), 7.46-7.51 (m, 2H), 7.53-7.57 (m, 2 H), 7.78 (dd, J = 8.5, 2.0 Hz, 1 H), 7.88-7.91 (m, 2H), 8.77 (bs, 1H).
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 84.1, 111.6, 116.8, 119.6, 122.5, 124.5, 126.8, 127.9, 128.9, 129.4, 129.5, 130.1, 134.3, 135.0, 144.7.
【0074】
【化12】

【0075】
[実施例4]
表1及び2に示す条件で反応を行ったこと以外は実施例1と同様にして、目的物である化合物(3104)を単離収率50%で得た。
得られた化合物(3104)のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.49 (s, 3 H), 7.16 (dd, J = 8.4, 1.2 Hz, 1 H), 7.35 (d, J = 8.4 Hz, 1 H), 7.57 (s, 1 H), 7.69 (d, J = 2.8 Hz, 1 H), 8.54 (bs, 1 H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 21.4, 86.9, 111.7, 116.0, 119.3, 126.0, 127.2, 131.7, 132.1, 133.1.
【0076】
【化13】

【0077】
[実施例5]
表1及び2に示す条件で反応を行ったこと以外は実施例1と同様にして、目的物である化合物(3105)を単離収率42%で得た。
得られた化合物(3105)のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.36 (d, J = 8.8 Hz, 1 H), 7.44 (dd, J = 8.6, 1.8 Hz, 1 H), 7.74 (d, J = 1.6 Hz, 1 H), 7.93 (d, J = 2.0 Hz, 1 H), 8.74 (bs, 1 H).
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 87.4, 113.5, 115.0, 116.0, 122.4, 127.6, 128.5, 132.7, 133.5.
【0078】
【化14】

【0079】
[実施例6]
表1及び2に示す条件で反応を行ったこと以外は実施例1と同様にして、目的物である化合物(3106)を単離収率41%で得た。
得られた化合物(3106)のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.89 (s, 3 H), 6.98 (dd, J = 8.8, 2.6 Hz, 1 H), 7.19 (d, J = 2.0 Hz, 1 H), 7.35 (d, J = 9.2 Hz, 1 H), 7.68 (d, J = 3.2 Hz, 1 H), 8.49 (bs, 1 H).
13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 55.8, 86.9, 100.5, 113.0, 115.1, 116.2, 127.8, 129.7, 132.0, 156.0.
【0080】
【化15】

【0081】
[実施例7]
表1及び2に示す条件で反応を行ったこと以外は実施例1と同様にして、目的物である化合物(3201)を単離収率32%で得た。化合物(3201)は、シアノ基が3位に導入された化合物(3201a)41モル%、及びシアノ基が2位に導入された化合物(3201b)59モル%の混合物であった。すなわち、化合物(3201a)の単離収率は13%、化合物(3201b)の単離収率は19%であった。
得られた化合物(3201)のNMRデータを以下に示す。
(化合物(3201a))
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.60 (dd, J = 3.2, 2.0 Hz, 1 H), 7.04 (dd, J = 3.2, 2.4 Hz, 1 H), 7.36-7.40 (m, 3 H), 7.46-7.52 (m, 3 H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 95.0, 113.4, 116.3, 121.0, 121.31, 121.35, 126.4, 127.6, 129.89, 129.92, 139.2.
(化合物(3201b))
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.35 (dd, J = 4.0, 2.8 Hz, 1 H), 7.00 (dd, J = 4.2, 1.8 Hz, 1 H), 7.09 (dd, J = 2.6, 1.8 Hz, 1 H), 7.41-7.47 (m, 3 H), 7.48-7.53 (m, 2 H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 104.0, 110.6, 113.80, 113.83, 122.2, 124.11, 124.13, 126.9, 128.3, 129.7, 138.2.
【0082】
【化16】

【0083】
[実施例8]
表1及び2に示す条件で反応を行ったこと以外は実施例1と同様にして、目的物である化合物(3202)を単離収率51%で得た。化合物(3202)は、シアノ基が3位に導入された化合物(3202a)55モル%、及びシアノ基が2位に導入された化合物(3202b)45モル%の混合物であった。すなわち、化合物(3202a)の単離収率は28%、化合物(3202b)の単離収率は23%であった。
得られた化合物(3202)のNMRデータを以下に示す。
(化合物(3202a))
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.07 (s, 2H), 6.45 (dd, J = 2.8, 1.8 Hz, 1 H), 6.65 (dd, J = 2.8, 2.4 Hz, 1 H), 7.13 (dd, J = 8.0, 1.6 Hz, 2 H), 7.16 (dd, J = 2.2, 1.8 Hz, 1 H), 7.31-7.39 (m, 3 H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 54.0, 93.1, 112.5, 116.7, 122.4, 127.3, 128.11, 128.13, 128.46, 129.1, 135.9.
(化合物(3202b))
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.21 (s, 2H), 6.20 (dd, J = 4.0, 2.8 Hz, 1 H), 6.83 (dd, J = 3.8, 1.4 Hz, 1 H), 6.85 (dd, J = 2.8, 2.0 Hz, 1 H), 7.18 (s, 1 H), 7.20 (d, J = 1.6 Hz, 1 H), 7.30-7.38 (m, 3 H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 52.4, 104.1, 109.9, 113.8, 120.31, 120.33, 126.64, 126.67, 127.4, 128.4, 129.0, 136.0.
【0084】
【化17】

【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
[実施例9〜29]
表3〜6に示す条件で反応を行ったこと以外は実施例1と同様にして、目的物である化合物(3101)を得た。
【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
【表5】

【0091】
【表6】

【0092】
上記実施例においては、ヘテロ原子として窒素原子を含む芳香族へテロ環化合物のニトリル化法の例を示したが、本発明の反応機序を考慮すれば、本発明はこれらの例に限定されるものではなく、芳香族ヘテロ環を構成するヘテロ原子として、酸素原子、硫黄原子等の窒素原子以外のものが含まれる芳香族ヘテロ環化合物についても、本発明の芳香族へテロ環化合物のニトリル化法を適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、医農薬、各種化成品、高機能性材料等の製造に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される含窒素芳香族へテロ環化合物と、下記一般式(2)で表されるケイ素化合物と、ニトロメタンとを、亜鉛スルホナート、亜鉛スルホンアミド及び亜鉛ハライドからなる群から選択される一種以上の亜鉛触媒存在下で反応させ、下記一般式(3)で表される、芳香族へテロ環化合物のニトリル化物を得ることを特徴とする、芳香族へテロ環化合物のニトリル化法。
【化1】

(式中、Rは水素原子、又は置換基を有していてもよい脂肪族基若しくはアリール基であり;Rは置換基を有していてもよい脂肪族基又はアリール基であり;Rはハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい脂肪族基若しくはアリール基であり;Rは炭素数1〜15のアルキル基若しくはアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基若しくはアルキルアリール基、又はアミノ基であり;lは0〜4の整数であり、lが2〜4である場合には、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRは相互に結合して環を形成していてもよく;mは0又は1であり;nは0〜3の整数であり、ただし、mが1である場合には、nは0又は1であり;nが2又は3である場合には、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRは相互に結合して環を形成していてもよく;Rが水素原子ではなく、且つnが0ではない場合には、R及びRは相互に結合して環を形成していてもよく;l及びmがいずれも0ではなく、且つRが水素原子ではない場合には、R及びRは相互に結合して環を形成していてもよく; l 、m及びnがいずれも0ではない場合には、R及びRは相互に結合して環を形成していてもよく;pは1〜3の整数であり、pが2又は3である場合には、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRは相互に結合して環を形成していてもよい。)
【請求項2】
前記Rが水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜15のアリール基若しくはアリールアルキル基であり、
前記Rが炭素数1〜10のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は炭素数6〜15のアリール基若しくはアリールアルキル基であり、
前記Rがハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は炭素数6〜15のアリール基若しくはアリールアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の芳香族へテロ環化合物のニトリル化法。
【請求項3】
前記亜鉛触媒が、炭素数1〜10の亜鉛フルオロアルキルスルホナート及び亜鉛フルオロアルキルスルホンアミド、並びに亜鉛ハライドからなる群から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の芳香族へテロ環化合物のニトリル化法。
【請求項4】
前記Rが炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数6〜15のアリール基若しくはアリールアルキル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の芳香族へテロ環化合物のニトリル化法。

【公開番号】特開2012−188380(P2012−188380A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52892(P2011−52892)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(801000027)学校法人明治大学 (161)
【Fターム(参考)】