説明

芳香族ジフルオロメチル化合物の製造方法

【課題】使用する試薬の有害性が低く、容易に且つ収率良く、ジフルオロメチル基を有する芳香族化合物を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法は、芳香族ジフルオロ酢酸を金属ハロゲン化物(特にフッ化カリウム)の存在下で反応させることによる、芳香族ジフルオロメチル化合物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジフルオロメチル基(-CF2H)を有する芳香族化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ジフルオロメチル化合物は、高血圧治療薬、抗炎症作用及び糖尿病治療薬等の様々な生理活性を有する化合物に利用される有用なものであり、これまでにも、種々の製造方法が開発されている。例えば、アルデヒド基を有する芳香族化合物にDAST(ジメチルアミノサルファトリフルオライド)等の求核的フッ素化剤を反応させる方法や、ジクロロメチル基(-CCl2H)を有する芳香族化合物にAgBF4を反応させる方法、さらにはメチル基を有する芳香族化合物(トルエン類化合物)に対して電解酸化によるフッ素化を行う方法等が知られている(非特許文献1)。また最近では、カルボン酸のBarton脱炭酸法を用いて、芳香族ジフルオロ酢酸化合物から芳香族ジフルオロメチル化合物を脱炭酸反応により得る方法が報告されている。
【0003】
しかしながら、これら方法には、DAST法の場合は、高コストであり、取り扱いが容易ではない反応剤を使用する等の問題点があり、トルエン類化合物の変換については、煩雑な反応操作を要する問題点がある。カルボン酸のBarton脱炭酸法では、脱炭酸反応時の工程が多く簡便性に欠け、使用する試薬が有害である等の問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】R. P. Singh and J. Shreeve, Synthesis, 2561 (2002).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況下において、使用する試薬の有害性が低く、容易に且つ収率良く、ジフルオロメチル基を有する芳香族化合物を製造する方法の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記状況を考慮してなされたもので、以下に示す、芳香族ジフルオロメチル化合物の製造方法等、すなわち、芳香族ジフルオロ酢酸を金属ハロゲン化物の存在下で反応させることによる、芳香族ジフルオロメチル化合物の製造方法等を提供するものである。
【0007】
(i)下記一般式(1):
【化1】

〔一般式(1)中、R1はそれぞれ独立して電子求引基を表し、R2はそれぞれ独立して一価の有機基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは0〜(5−m)の整数を表す。〕
で表される化合物を金属ハロゲン化物の存在下で反応させることによる、下記一般式(2):
【化2】

〔一般式(2)中、R1はそれぞれ独立して電子求引基を表し、R2はそれぞれ独立して一価の有機基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは0〜(5−m)の整数を表す。〕
で表される化合物の製造方法。
【0008】
上記(i)の製造方法において、前記金属ハロゲン化物としては、例えば、フッ化カリウムが挙げられる。フッ化カリウムは、脱炭酸反応の触媒能が非常に高いものである。
上記(i)の製造方法において、R1としては、例えば、オルト位及び/又はメタ位の結合基が挙げられ、具体的には、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル酢酸エステル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、ハロゲン基、及び置換されていてもよいフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
また、R2としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、及びアルキニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
上記(i)の製造方法において、前記金属ハロゲン化物の存在下での反応としては、例えば、脱炭酸反応が挙げられる。
【0009】
上記(i)の製造方法において、一般式(1)で表される化合物としては、例えば、下記一般式(3):
【化3】

〔一般式(3)中、R1はそれぞれ独立して電子求引基を表し、R2はそれぞれ独立して一価の有機基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは0〜(5−m)の整数を表す。〕
で表される化合物と下記一般式(4):
【化4】

〔一般式(4)中、R3は一価の有機基を表し、R4はそれぞれ独立して置換されていてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。〕
で表される化合物とを金属ハロゲン化物の存在下で反応させて得られる化合物を、加水分解して得られる化合物が挙げられる。ここで、当該加水分解される化合物、すなわち上記一般式(3)で表される化合物と上記一般式(4)で表される化合物とを反応させて得られる化合物としては、例えば、下記一般式(5):
【化5】

〔一般式(5)中、R1はそれぞれ独立して電子求引基を表し、R2はそれぞれ独立して一価の有機基を表し、R3は一価の有機基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは0〜(5−m)の整数を表す。〕
で表される化合物が挙げられる。また、当該反応に用いられる金属ハロゲン化物としては、例えば、フッ化カリウム又はヨウ化銅が挙げられる。
【0010】
さらに、上記一般式(3)〜(5)で表される化合物において、R1としては、例えば、オルト位及び/又はメタ位の結合基が挙げられ、具体的には、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル酢酸エステル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、ハロゲン基、及び置換されていてもよいフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられ、R2及びR3としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、及びアルキニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用する試薬の有害性が低く、容易に且つ収率良く、ジフルオロメチル基を有する芳香族化合物を製造する方法を提供することができる。本発明の製造方法は、例えば、様々な生理活性を有する化合物に利用されうる芳香族ジフルオロメチル化合物を容易に且つ収率良く得ることができる点で、極めて有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。なお、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
【0013】
本発明に係る芳香族ジフルオロメチル化合物の製造方法(以下、本発明の製造方法ということがある。)は、前述した通り、一般式(1)で表される化合物(すなわち芳香族ジフルオロ酢酸)を金属ハロゲン化物の存在下で反応させることによる、一般式(2)で表される化合物(すなわち芳香族ジフルオロメチル化合物)の製造方法である。
【0014】
ここで、一般式(1):
【化6】

で表される化合物中、R1は、それぞれ独立して、電子求引基を表す。電子求引基としては、限定はされないが、例えば、−CN、−NO2、−C(O)OC25、COCH3、−Br及び−Ph(フェニル基)等が好ましく挙げられ、中でも、−CN及び−NO2がより好ましい。
【0015】
また、R1は、限定はされないが、ヨードベンゼン環のオルト位及び/又はメタ位の炭素原子に結合している基であることが好ましい。ヨードベンゼン環に結合するR1の数(m)は、1〜3の整数であり、好ましくは1である。具体的には、ヨードベンゼン環のパラ位に−CN、−NO2、−C(O)OC25、−COCH3、−Br又は−Phが結合したもの、及びヨードベンゼン環のオルト位に−NO2が結合したものが、好ましい態様として挙げられる。
【0016】
一般式(1)中、R2は、それぞれ独立して、一価の有機基を表す。一価の有機基としては、限定はされないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基及びアルキニル基等が好ましく挙げられ、中でもアルキル基がより好ましい。R2としてのアルキル基は、限定はされないが、炭素数1〜16の直鎖又は分枝のアルキル基であることが好ましく、当該アルキル基はその任意の炭素原子上に、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、シアノ基、アミノカルボニル基(CONH2)及びアリール基が任意の数かつ任意の組み合わせで置換されたものであってもよい。ヨードベンゼン環に結合するR2の数(n)は、0〜(5−m)の整数であり、好ましくは0〜2の整数である。ヨードベンゼン環にR2が結合している場合、限定はされないが、メタ位に結合していることが好ましい。
【0017】
上記一般式(1)で表される化合物は、限定はされないが、例えば、一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物とを金属ハロゲン化物の存在下で反応させて得られる化合物を、加水分解して得られるものであることが好ましい。
【0018】
一般式(3):
【化7】

で表される化合物中、R1及びR2、並びにm及びnは、具体的には、上記一般式(1)について説明した内容が同様に適用できる。
【0019】
また、一般式(4):
【化8】

で表される化合物中、R3は、一価の有機基を表す。一価の有機基としては、限定はされないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基及びアルキニル基等が好ましく挙げられ、中でもアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。R3としてのアルキル基は、限定はされないが、炭素数1〜16の直鎖又は分枝のアルキル基であることが好ましく、当該アルキル基はその任意の炭素原子上に、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、シアノ基、アミノカルボニル基(CONH2)及びアリール基が任意の数かつ任意の組み合わせで置換されたものであってもよい。
【0020】
一般式(4)中、R4は、それぞれ独立して、置換されていてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びフェニル基等が好ましく挙げられ、中でもメチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。なお、当該置換の態様は、限定はされず、任意の数かつ任意の組み合わせによる置換であってもよい。
【0021】
上記一般式(4)で表される化合物は、例えば、一般式(6)で表される化合物と一般式(7)で表される化合物との反応により得ることができる。
【0022】
一般式(6):
【化9】

で表される化合物中、R3は一価の有機基を表し、具体的には、上記一般式(4)について説明した内容が同様に適用できる。また、一般式(6)中、Xはハロゲン基を表し、例えば、Cl、Br、I等が好ましく、より好ましくはCl(塩素原子)である。
【0023】
また、一般式(7):
【化10】

で表される化合物中、R4及びXは、具体的には、上記一般式(4)及び(6)について説明した内容が同様に適用できる。
【0024】
一般式(6)で表される化合物と一般式(7)で表される化合物との反応は、例えば、窒素及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気下、当該反応条件下で不活性な溶媒中で混合すればよく、限定はされない。上記溶媒としては、本発明の製造方法に用い得る溶媒として後述するものが好ましく例示できる。また当該反応においては、反応温度は、20〜50℃であることが好ましく、混合時間(攪拌時間)は、1〜2時間であることが好ましく、反応圧力は、常圧付近でよい。さらに当該反応は、限定はされないが、反応を促進させ得る点で、マグネシウムの存在下で行われることが好ましい。当該反応系からの生成化合物(一般式(4)で表される化合物)の抽出及び精製等の方法は、特に限定はされず、従来公知の抽出及び精製等の方法が適宜採用できる。
【0025】
このようにして得られる一般式(4)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物との反応に用いられる金属ハロゲン化物としては、限定はされないが、例えば、フッ化カリウム(KF)及びヨウ化銅(CuI)等が好ましく挙げられる。特にフッ化カリウムは、反応生成物の収率を一層高めることができる点で、より好ましい。金属ハロゲン化物の使用量は、限定はされないが、例えば、原料化合物である一般式(3)で表される化合物に対して、モル換算で0.2〜4.0等量使用することが好ましく、より好ましくは0.2〜1.2等量である。詳しくは、フッ化カリウムを使用する場合は、1〜1.2等量であることが好ましく、ヨウ化銅を使用する場合は、0.2〜1.0等量であることが好ましい。
【0026】
一般式(3)及び(4)で表される化合物の反応は、前記金属ハロゲン化物の存在下、窒素及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気下において、当該反応条件下で不活性な溶媒中で両化合物を混合すればよく、限定はされない。上記溶媒としては、本発明の製造方法に用い得る溶媒として後述するものが好ましく例示できる。当該反応においては、一般式(3)で表される化合物に対して、一般式(4)で表される化合物を、モル換算で1〜2等量使用することが好ましく、より好ましくは1.2〜1.5等量である。反応温度は、40〜80℃であることが好ましく、混合時間(攪拌時間)は、5〜20時間であることが好ましく、反応圧力は、常圧付近でよい。当該反応においては、必要に応じ、反応を促進する目的で、グリニャール反応で一般的に行われている各種の反応促進法を適用することもできる。そのような方法として、例えば、臭素またはヨウ素などのハロゲン、グリニャール試薬、臭化エチル、ヨウ化メチル、ヨウ化メチレン、ヨウ化エチル及びβ−ブロムエチルエーテル等の有機ハロゲン化物、あるいはオルト珪酸エチル等を反応系に添加する方法や、攪拌又は超音波を照射する方法等を挙げることができる。当該反応系からの生成化合物(一般式(5)で表される化合物)の抽出及び精製等の方法は、特に限定はされず、従来公知の抽出及び精製等の方法が適宜採用できる。
【0027】
このように一般式(3)及び(4)で表される両化合物の反応により得られる化合物は、いわゆる芳香族ジフルオロ酢酸エステルであり、例えば、一般式(5)で表される化合物が好ましく例示できる。
【0028】
一般式(5):
【化11】

で表される化合物中、R1、R2及びR3、並びにm及びnについては、前記一般式(1)及び(4)について説明した内容が同様に適用できる。
【0029】
前述した通り、本発明の製造方法の原料化合物である、一般式(1)で表される化合物としては、上記一般式(5)で表される化合物を加水分解して得られるものが好ましい。当該加水分解反応は、公知の加水分解反応の方法及び条件等を適宜採用して行うことができ、限定はされないが、例えば、窒素及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、反応温度は、20〜100℃であることが好ましく、反応時間(攪拌時間)は、1〜40時間であることが好ましく、反応圧力は、常圧付近でよい。また、反応系からの生成化合物(一般式(1)で表される化合物)の抽出及び精製等の方法は、特に限定はされず、従来公知の抽出及び精製等の方法が適宜採用できる。
【0030】
本発明の製造方法において用いられる金属ハロゲン化物、すなわち一般式(1)で表される化合物の脱炭酸反応に用いられる金属ハロゲン化物としては、限定はされないが、フッ化カリウム(KF)が特に好ましい。フッ化カリウムは、非常に優れた脱炭酸反応触媒能を有しているため、本発明の製造方法において、一般式(1)で表される化合物の脱炭酸反応を促進させ、反応自体を容易化し、しかも反応生成物の収率を一層高めることができる。本発明の製造方法において、金属ハロゲン化物としてのフッ化カリウムの使用量は、限定はされないが、例えば、原料化合物である一般式(1)で表される化合物に対して、モル換算で1〜10等量使用することが好ましく、より好ましくは5等量である。
【0031】
本発明の製造方法において用い得る溶媒は、一般式(1)で表される化合物の反応の反応条件下で不活性なものであればよく、限定はされないが、例えば、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、フェニルアセトニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル等)、酸アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチルピロリドン等)、低級エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、1,2−エポキシエタン、1、4−ジオキサン、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、置換テトラヒドロフラン等)が好ましく使用され、中でも、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランがより好ましい。本発明の製造方法においては、これら溶媒を組み合わせて使用することもできる。溶媒の量は、出発原料の1重量部に対して1〜100重量部程度、好ましくは1〜10重量部である。使用する溶媒はでき得る限り水分を除去したものが好ましいが、必ずしも完全に除去したものである必要はない。工業的に入手可能な溶媒に通常混入している程度の水分は、本発明の製造方法の実施において特に問題にならず、そのため水分を除去することなくそのまま使用することができる。
【0032】
本発明の製造方法において、一般式(1)で表される化合物から一般式(2)で表される化合物を得る反応は、前述の通り、脱炭酸反応である。当該反応は、例えば、窒素及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、反応温度は、120〜230℃であることが好ましく、混合時間(攪拌時間)は、5〜48時間であることが好ましく、反応圧力は、常圧付近でよい。
【0033】
本発明の製造方法により得られる化合物(生成化合物)、すなわち芳香族ジフルオロメチル化合物は、前述した通り、一般式(2)で表される化合物である。
【化12】

【0034】
なお、一般式(2)中、R1及びR2、並びにm及びnについては、前記一般式(1)について説明した内容が同様に適用できる。
本発明の製造方法において、反応系からの生成化合物の抽出及び精製等の方法は、特に限定はされず、従来公知の抽出及び精製等の方法が適宜採用できる。
【0035】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
<α−シリルジフルオロ酢酸エステルの調製(1)>
【化13】

【0037】
上記スキームに従い、2口反応管に窒素雰囲気下、マグネシウム (243 mg, 10.0 mmol), クロロトリメチルシラン(Me3SiCl;2.17 g, 20.0 mmol), DMF (15 mL)を入れる。反応容器を水浴で冷やしながら、クロロジフルオロ酢酸エチル (化合物3;793mg, 624μL, 5.0 mmol)を加えた後、室温で1.5 時間攪拌した。反応混合物をジエチルエーテルで抽出、水で洗浄、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下でジエチルエーテルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより生成することで、ジフルオロトリメチルシラニル酢酸エチルエステルが43%の収率で得られた。
なお、他の実施例において、ジフルオロトリメチルシラニル酢酸エチルエステル(Me3Si-CF2CO2Et;化合物3a)については本実施例で得られたものを用いた。
【0038】
生成物(化合物3a)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ4.32 (2H, q, J = 7.0 Hz), 1.35 (3H, t, J = 7.0 Hz), 0.237 (9H, s)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 38.5 (2F, s)
Mass m/e: (m/z) (%) 181 (6), 153 (10), 125 (6), 103 (8), 77 (26), 73 (100)
【0039】
<α−シリルジフルオロ酢酸エステルの調製(2)>
【化14】

【0040】
上記スキームに従い、2口反応管に窒素雰囲気下、マグネシウム (486 mg, 20.0 mmol), クロロトリエチルシラン (Et3SiCl;;6.03 g, 40.0 mmol), DMF (30 mL)を入れる。反応容器を水浴で冷やしながら、クロロジフルオロ酢酸エチル (化合物3;1.57 g, 10.0 mmol)を加えた後、室温で1.5 時間攪拌した。反応混合物をジエチルエーテルで抽出、水で洗浄、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下でジエチルエーテルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより生成することで、α−シリルジフルオロ酢酸エステルとしてのジフルオロトリエチルシラニル酢酸エチルエステル(化合物3b)が64%の収率で得られた。
【0041】
生成物(化合物3b)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 4.31 (2H, q, J = 7.1 Hz), 1.35 (3H, t, J = 7.1 Hz), 1.02 (9H, t, J= 8.0 Hz), 0.77 (6H, q, J = 8.0 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 42.9 (2F, s)
Mass m/e: (m/z) (%) 209 (20), 131 (12), 115 (38), 87 (100)
【0042】
<芳香族ジフルオロ酢酸エステルの調製>
【化15】

【0043】
上記スキームに従い、2口反応管に4-ヨードベンゾニトリル (化合物1a;68.7 mg, 0.3 mmol), ジフルオロトリメチルシラニル酢酸エチルエステル (化合物3a;70.7 mg, 0.36 mmol), ヨウ化銅(I) (57.1 mg, 0.3 mmol), フッ化カリウム (20.9 mg, 0.36 mmol), DMSO (0.6 mL)を入れ、窒素雰囲気下、60℃で15 時間攪拌した。反応後、トリフルオロエタノール (30.0 mg, 21.9μL, 0.3 mmol)を内部標準として加え、19F NMR で測定したところ目的物である2-(4-シアノフェニル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物2a)が88%の収率で生成していることがわかった。反応混合物を酢酸エチルで抽出、水で洗浄、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、2-(4-シアノフェニル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物2a)が71%の収率で得られた。
【0044】
生成物(化合物2a)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ7.78 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.74 (2H, d, J = 8.8 Hz), 4.34 (2H, q, J= 7.0 Hz), 1.31 (3H, t, J = 7.0 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 56.8 (2F, s)
Mass m/e: (m/z) (%) 225 (M+, 2), 181 (2), 152 (100), 126 (4), 102 (8), 75 (4)
【0045】
<芳香族ジフルオロ酢酸の調製>
【化16】

【0046】
上記スキームに従い、ナスフラスコに2-(4-シアノフェニル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル (化合物2a;202.7 mg,0.9 mmol)、1N K2CO3 水溶液 (2.7 mL), DMF (2.7 mL)を入れ、25℃で18時間攪拌した。反応後、反応混合物を5% HCl 水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出、水で洗浄、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、2-(4-シアノフェニル)-2,2-ジフルオロ酢酸(化合物4a)が79%の収率で得られた。
【0047】
生成物(化合物4a)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 7.80 (2H, d, J = 9.2 Hz), 7.77 (2H, d, J = 9.2 Hz),
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 56.3 (2F, s)
【0048】
<芳香族ジフルオロメチル化合物の調製>
【化17】

【0049】
上記スキームに従い、2口試験管に2-(4-シアノフェニル)-2,2-ジフルオロ酢酸 (化合物4a;39.4 mg, 0.2 mmol)、フッ化カリウム (58.1 mg, 1.0 mmol)、DMF (1.2 mL)を入れ、窒素雰囲気下、170℃で12時間攪拌した。反応混合液を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、4-(ジフルオロメチル)ベンゾニトリル(化合物5a)が79%の収率で得られた。
【0050】
生成物(化合物5a)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3,TMS) δ 7.78 (2H, d, J = 8.2 Hz), 7.64 (2H, d, J
= 8.2 Hz), 6.69 (1H, t,JHF = 57.4 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 48.6 (2F, d, JHF = 57.4 Hz)
EI-MS m/z (%) 152 (M+, 70), 152 (100), 134 (12), 103 (36).
【実施例2】
【0051】
<芳香族ジフルオロ酢酸エステルの調製>
【化18】

【0052】
上記スキームに従い、2口反応管に4-ヨードニトロベンゼン (化合物1b;74.7 mg, 0.3 mmol), ジフルオロトリメチルシラニル酢酸エチルエステル (化合物3a;70.7 mg, 0.36 mmol), ヨウ化銅(I) (57.1 mg, 0.3 mmol), フッ化カリウム (20.9 mg, 0.36 mmol), DMSO (0.6 mL)を入れ、窒素雰囲気下、60℃で15 時間攪拌した。反応後、トリフルオロエタノール (30.0 mg, 21.9μL, 0.3 mmol)を内部標準として加え、19F NMR で測定したところ目的物である2,2-ジフルオロ-2-(4-ニトロフェニル)酢酸エチルエステルが41%の収率で生成していることがわかった。反応混合物を酢酸エチルで抽出、水で洗浄、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、2,2-ジフルオロ-2-(4-ニトロフェニル)酢酸エチルエステル(化合物2b)が29%の収率で得られた。
【0053】
生成物(化合物2b)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 8.33 (2H, d, J = 9.0 Hz), 7.82 (2H, d, J = 9.0 Hz), 4.33 (2H, q, J= 7.0Hz), 1.32 (1H, t, J = 7.0 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 57.2 (2F, s)
Mass m/e: (m/z) (%) 172 (100), 156 (16), 142 (16), 126 (42), 107 (5), 75 (4)
【0054】
<芳香族ジフルオロ酢酸の調製>
【化19】

【0055】
上記スキームに従い、ナスフラスコに2,2-ジフルオロ-2-(4-ニトロフェニル)酢酸エチルエステル (化合物2b;147 mg, 0.6mmol)、1N NaOH 水溶液 (3 mL)を入れ、室温で19時間攪拌した。反応後、反応混合物を5% HCl 水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出、水で洗浄、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、2,2-ジフルオロ-2-(4-ニトロフェニル)酢酸(化合物4b)が93%の収率で得られた。
【0056】
生成物(化合物4b)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 8.34 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.85 (2H, d, J = 8.8 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 56.7 (2F, s)
【0057】
<芳香族ジフルオロメチル化合物の調製>
【化20】

【0058】
上記スキームに従い、2口試験管に2,2-ジフルオロ-2-(4-ニトロフェニル)酢酸 (化合物4b;65.1 mg, 0.3 mmol)、フッ化カリウム (87.2 mg, 1.5 mmol)、DMF (1.2 mL)を入れ、窒素雰囲気下、170℃で12時間攪拌した。反応混合液を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、1-(ジフルオロメチル)-4-ニトロベンゼン(化合物5b)が79%の収率で得られた。
【0059】
生成物(化合物5b)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3,TMS) δ 8.34 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.72 (2H, d, J
= 8.6 Hz), 6.75 (1H, t,JHF = 55.6 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 48.8 (2F, d, JHF = 55.6 Hz)
Mass m/e: (m/z) (%) 173 (M+, 12), 156 (30), 143 (63), 127 (100), 95 (54), 77 (23)
【実施例3】
【0060】
<芳香族ジフルオロ酢酸の調製>
【化21】

【0061】
上記スキームに従い、ナスフラスコに2,2-ジフルオロ-2-(2-ニトロフェニル)酢酸エチルエステル (化合物2c;1.01 g, 4.1mmol)、1N NaOH 水溶液 (10 mL)を入れ、室温で19時間攪拌した。反応後、反応混合物を5% HCl 水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出、水で洗浄、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、2,2-ジフルオロ-2-(2-ニトロフェニル)酢酸(化合物4c)が85%の収率で得られた。
【0062】
生成物(化合物4c)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 8.20 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.98 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.83 (1H, t, J= 8.0Hz), 7.75 (1H, t, J = 8.0 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 61.3 (2F, s)
【0063】
<芳香族ジフルオロメチル化合物の調製>
【化22】

【0064】
上記スキームに従い、2口試験管に2,2-ジフルオロ -2-(2-ニトロフェニル)酢酸 (化合物4c;65.1 mg, 0.3 mmol)、フッ化カリウム (87.2 mg, 1.5 mmol)、DMF (1.2 mL)を入れ、窒素雰囲気下、170℃で12時間攪拌した。反応混合液を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、1-(ジフルオロメチル)-2-ニトロベンゼン(化合物5c)が65%の収率で得られた。
【0065】
生成物(化合物5c)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3,TMS) δ 8.16 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.91 (1H, d, J
= 8.0 Hz), 7.79 (1H, t, J = 8.0Hz), 7.69 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.40 (1H, t, JHF = 55.8 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 46.7 (2F, d, JHF = 55.8 Hz)
Mass m/e: (m/z) (%) 173 (M+, 12), 156 (30), 143 (63), 127 (100), 95 (54), 77 (23)
【実施例4】
【0066】
<芳香族ジフルオロ酢酸エステルの調製>
【化23】

【0067】
上記スキームに従い、2口反応管に4-ヨード安息香酸エチル (化合物1d;82.8 mg, 49.9μL, 0.3 mmol), ジフルオロトリメチルシラニル酢酸エチルエステル (70.7 mg, 0.36 mmol), ヨウ化銅(I) (57.1 mg, 0.3mmol), フッ化カリウム (20.9 mg, 0.36 mmol), DMSO (0.6 mL)を入れ、窒素雰囲気下、60℃で15 時間攪拌した。反応後、トリフルオロエタノール (30.0 mg, 21.9μL, 0.3 mmol)を内部標準として加え、19F NMR で測定したところ目的物である4-(2-エトキシ-1,1-ジフルオロ-2-オキソエチル)安息香酸エチルエステルが81%の収率で生成していることがわかった。反応混合物を酢酸エチルで抽出、水で洗浄、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、4-(2-エトキシ-1,1-ジフルオロ-2-オキソエチル)安息香酸エチルエステル(化合物2d)が73%の収率で得られた。
【0068】
生成物(化合物2d)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 8.13 (2H, d, J = 8.2 Hz), 7.68 (2H, d, J = 8.2 Hz), 4.41 (2H, q, J= 7.2 Hz), 4.30 (2H, q, J = 7.2 Hz), 1.41 (3H, J = 7.2 Hz), 1.30 (3H, J = 7.2 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 57.2 (2F, s)
Mass m/e: (m/z) (%) 272 (M+, 2), 227 (15), 199 (100), 171 (34), 126 (14)
【0069】
<芳香族ジフルオロ酢酸の調製>
【化24】

【0070】
上記スキームに従い、ナスフラスコに4-(2-エトキシ-1,1-ジフルオロ-2-オキソエチル)安息香酸エチルエステル(化合物2d;108.9 mg, 0.4 mmol)、1N K2CO3 水溶液 (1.5 mL)を入れ、室温で26 時間攪拌した。反応後、反応混合物を5% HCl 水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出、水で洗浄、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、4-(2-エトキシ-1,1-ジフルオロ-2-オキソエチル)安息香酸(化合物4d)が86%の収率で得られた。
【0071】
生成物(化合物4d)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 8.13 (2H, d, J = 8.0 Hz), 7.71 (2H, d, J = 8.0 Hz), 4.41 (2H, q, J= 7.2Hz), 1.40 (3H, t, J = 7.2 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 56.6 (2F, s)
【0072】
<芳香族ジフルオロメチル化合物の調製>
【化25】

【0073】
上記スキームに従い、2口試験管に4-(2-エトキシ -1,1-ジフルオロ-2-オキソエチル)安息香酸 (化合物4d;73.3 mg, 0.3mmol)、フッ化カリウム (87.2 mg, 1.5 mmol)、DMF (1.2 mL)を入れ、窒素雰囲気下、170℃で12時間攪拌した。反応混合液を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、4-(ジフルオロメチル)安息香酸エチルエステル(化合物5d)が57%の収率で得られた。
【0074】
生成物(化合物5d)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3,TMS) δ 8.13 (2H, d, J = 7.8 Hz), 7.59 (2H, d, J
= 7.8 Hz), 6.69 (1H, t,JHF = 56.0 Hz), 4.41 (2H, q, J = 7.1 Hz), 1.41 (3H, t, J = 7.1 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 49.6 (2F, d, JHF= 56.0 Hz)
EI-MS m/z (%) 200 (M+, 14),172 (37), 155 (100), 127 (39).
【実施例5】
【0075】
<芳香族ジフルオロ酢酸の調製>
【化26】

上記スキームに従い、ナスフラスコに2-(4-アセチルフェニル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル (化合物2e;436.0 mg,1.8 mmol)、1N NaOH 水溶液 (3.0 mL)を加え、100℃で1.5時間攪拌した。反応後、反応混合物を5% HCl 水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出、水で洗浄、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、2-(4-アセチルフェニル)-2,2-ジフルオロ酢酸(化合物4e)が96%の収率で得られた。
【0076】
生成物(化合物4e)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 8.05 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.75 (2H, d, J = 8.4 Hz), 2.65 (3H, s)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 56.6 (2F, s)
【0077】
<芳香族ジフルオロメチル化合物の調製>
【化27】

【0078】
上記スキームに従い、2口試験管に2-(4-アセチルフェニル)-2,2-ジフルオロ酢酸 (化合物4e;64.3 mg, 0.3 mmol)、フッ化カリウム (87.2 mg, 1.5 mmol)、DMF (1.2 mL)を入れ、窒素雰囲気下、170℃で12時間反応させた。反応混合液を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、1-(4-(ジフルオロメチル)フェニル)エタノン(化合物5e)が66%の収率で得られた。
【0079】
生成物(化合物5e)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3,TMS) δ 8.04 (2H, d, J = 8.2 Hz), 7.62 (2H, d, J
= 8.2 Hz), 6.69 (1H, t,JHF = 52.6 Hz), 2.92 (3H, s)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 49.4 (2F, d, JHF = 52.6 Hz)
EI-MS m/z (%) 170 (M+, 17), 155 (100), 127 (41).
【実施例6】
【0080】
<芳香族ジフルオロ酢酸エステルの調製>
【化28】

【0081】
上記スキームに従い、2口反応管に4-ブロモヨードベンゼン (化合物1f;84.9 mg, 0.3 mmol), ジフルオロトリメチルシラニル酢酸エチルエステル (70.7 mg, 0.36 mmol), ヨウ化銅(I) (57.1 mg, 0.3 mmol), フッ化カリウム (20.9 mg, 0.36 mmol), DMSO (0.6 mL)を入れ、窒素雰囲気下、60℃で15 時間攪拌した。反応後、トリフルオロエタノール (30.0 mg, 21.9μL, 0.3 mmol)を内部標準として加え、19F NMR で測定したところ目的物である2-(4-ブロモフェニル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステルが76%の収率で生成していることがわかった。反応混合物を酢酸エチルで抽出、水で洗浄、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、2-(4-ブロモフェニル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物2f)が54%の収率で得られた。
【0082】
生成物(化合物2f)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 7.60 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.48 (2H, d, J = 8.6 Hz), 4.30 (2H, q, J= 7.2 Hz), 1.31 (3H, t, J = 7.2 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 57.6 (2F, s)
Mass m/e: (m/z) (%) 280 (M+2, 12), 278 (M+, 12), 207 (94), 205 (100), 126 (32), 75 (8)
【0083】
<芳香族ジフルオロ酢酸の調製>
【化29】

【0084】
上記スキームに従い、ナスフラスコに2-(4-ブロモフェニル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル (化合物2f;279.1 mg,1.0 mmol)、1N K2CO3 水溶液 (3.0 mL)、DMF (3.0 mL)を入れ、25℃で18 時間攪拌した。反応後、反応混合物を5% HCl 水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出、水で洗浄、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、2-(4-ブロモフェニル)-2,2-ジフルオロ酢酸(化合物4f)が85%の収率で得られた。
【0085】
生成物(化合物4f)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 7.61 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.50 (2H, d, J = 8.8 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 56.7 (2F, s)
【0086】
<芳香族ジフルオロメチル化合物の調製>
【化30】

上記スキームに従い、2口試験管に2-(4-ブロモフェニル)-2,2-ジフルオロ酢酸 (化合物4f;50.2mg、0.2 mmol)、フッ化カリウム (58.1mg、1.0 mmol)、NMP (1.2 mL)を入れ、窒素雰囲気下、200℃で48時間攪拌した。反応混合液に2,2,2-トリフルオロメタノールを内部標準として加え、19F NMRで定量した結果、1-ブロモ-4-(ジフルオロメチル)ベンゼン(化合物5f)が75%の収率で得られていることがわかった。
【0087】
生成物(化合物5f)の機器分析の結果を、以下に示した。

19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 50.6 (2F, d, JHF = 54.9 Hz)
EI-MS m/z (%) 206 (M+, 71), 187 (11), 156 (7), 127 (100), 107 (15).
【実施例7】
【0088】
<芳香族ジフルオロ酢酸エステルの調製>
【化31】

【0089】
上記スキームに従い、2口反応管に4-ヨードビフェニル (化合物1g;84.0 mg, 0.3 mmol), ジフルオロトリメチルシラニル酢酸エチルエステル (70.7 mg, 0.36 mmol), ヨウ化銅(I) (57.1 mg, 0.3 mmol), フッ化カリウム (20.9 mg, 0.36 mmol), DMSO (0.6 mL)を入れ、窒素雰囲気下、60℃で15 時間攪拌した。反応後、トリフルオロエタノール (30.0 mg, 21.9μL, 0.3 mmol)を内部標準として加え、19F NMR で測定したところ目的物である2-(ビフェニル-4-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステルが78%の収率で生成していることがわかった。反応混合物を酢酸エチルで抽出、水で洗浄、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、2-(ビフェニル-4-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル(化合物2g)が68%の収率で得られた。
【0090】
生成物(化合物2g)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ 7.38-7.70 (9H, m), 4.35 (2H, q, J = 7.2 Hz), 1.33 (3H, t, J = 7.2Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 58.3 (2F, s)
Mass m/e: (m/z) (%) 276 (M+, 21), 203 (100), 183 (6), 152 (6)
【0091】
<芳香族ジフルオロ酢酸の調製>
【化32】

【0092】
上記スキームに従い、ナスフラスコに2-(ビフェニル-4-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸エチルエステル (化合物2g;82.9 mg, 0.3mmol)、1N K2CO3 水溶液 (0.9 mL), DMF (0.9 mL)を入れ、室温で18 時間攪拌した。反応後、反応混合物を5% HCl 水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出、水で洗浄、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、2-(ビフェニル-4-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸(化合物4g)が88%の収率で得られた。
【0093】
生成物(化合物4g)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3, TMS) δ7.37-7.714 (9H, m)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 56.9 (2F, s)
【0094】
<芳香族ジフルオロメチル化合物の調製>
【化33】

【0095】
上記スキームに従い、2口試験管に2-(ビフェニル -4-イル)-2,2-ジフルオロ酢酸 (化合物4g;49.6 mg, 0.2 mmol)、フッ化カリウム (58.1 mg, 1.0 mmol)、NMP (1.2 mL)を入れ、窒素雰囲気下、200℃で48 時間攪拌した。反応混合液を酢酸エチルで抽出し、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で酢酸エチルを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、4-(ジフルオロメチル)ビフェニル(化合物5g)が32%の収率で得られた。
【0096】
生成物(化合物5g)の機器分析の結果を、以下に示した。

1H-NMR(CDCl3,TMS) δ7.69-7.37(9H, m), 6.70 (1H, t, JHF = 56.4 Hz)
19F-NMR(CDCl3, C6F6) δ 51.3 (2F, d, JHF = 56.4 Hz)
EI-MS m/z (%) 204 (M+, 100), 183 (17), 152 (17), 127 (8).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化34】

〔一般式(1)中、R1はそれぞれ独立して電子求引基を表し、R2はそれぞれ独立して一価の有機基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは0〜(5−m)の整数を表す。〕
で表される化合物を金属ハロゲン化物の存在下で反応させることによる、下記一般式(2):
【化35】

〔一般式(2)中、R1はそれぞれ独立して電子求引基を表し、R2はそれぞれ独立して一価の有機基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは0〜(5−m)の整数を表す。〕
で表される化合物の製造方法。
【請求項2】
前記金属ハロゲン化物がフッ化カリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記R1が、オルト位及び/又はメタ位の結合基である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記R1が、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル酢酸エステル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、ハロゲン基、及び置換されていてもよいフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記R2が、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、及びアルキニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応が脱炭酸反応である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(3):
【化36】

〔一般式(3)中、R1はそれぞれ独立して電子求引基を表し、R2はそれぞれ独立して一価の有機基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは0〜(5−m)の整数を表す。〕
で表される化合物と下記一般式(4):
【化37】

〔一般式(4)中、R3は一価の有機基を表し、R4はそれぞれ独立して置換されていてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。〕
で表される化合物とを金属ハロゲン化物の存在下で反応させて得られる化合物を、加水分解して得られるものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記一般式(3)で表される化合物と前記一般式(4)で表される化合物とを反応させて得られる化合物が、下記一般式(5):
【化38】

〔一般式(5)中、R1はそれぞれ独立して電子求引基を表し、R2はそれぞれ独立して一価の有機基を表し、R3は一価の有機基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは0〜(5−m)の整数を表す。〕
で表される化合物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記金属ハロゲン化物がフッ化カリウム又はヨウ化銅である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記R1が、オルト位及び/又はメタ位の結合基である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記R1が、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル酢酸エステル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、ハロゲン基、及び置換されていてもよいフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記R2が、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、及びアルキニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記R3が、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、及びアルキニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項7〜12のいずれか1項に記載の方法。

【公開番号】特開2011−105657(P2011−105657A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263315(P2009−263315)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】