説明

芳香族単量体−金属錯体および共役ポリマー−金属錯体

発光ダイオード(LED)素子のような電子デバイス向けのポリマーを製造するのに有効なハロゲン化芳香族単量体−金属錯体が記載されている。芳香族単量体−金属錯体は共役を中断させる連結基を含有するように設計されており、それによって有利なことには、芳香族単量体フラグメントと金属錯体フラグメントの間での電子の非局在化が低減または阻止される。共役の中断は芳香族単量体−金属錯体から生成されたポリマーの中で金属錯体の燐光発光性を維持するのにしばしば望ましい。得られた共役された電界発光性ポリマーは金属錯体化が正確にコントロールされ、実質的に又は完全にポリマー骨格のそれに依存しない電子的性質とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香族単量体−金属錯体、この芳香族単量体−金属錯体から製造できる芳香族ポリマー−金属錯体、およびこの芳香族ポリマー−金属錯体の膜を含有する有機電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機電子デバイスは様々な電子機器の中に見出される。かかるデバイスでは、有機の活性層(active layer)が2つの電気接触層の間に挟まれている;この活性層は接触層を横断して電圧バイアスを印加された時に発光する。
【0003】
側鎖の金属錯体基を含有するポリマーは発光用途に、特にアクティブマトリックス駆動型高分子LEDディスプレイに適する類のポリマーを構成する。これらポリマーは、たとえば、まず、金属との錯体化が可能な配位子を含有している単量体を重合させ、それから、その重合体を有機金属の錯化用化合物と接触させ、重合体結合配位子の中に金属中心を導入することによって製造することができる。たとえば、Pei等はMacromolecules, Vol. 35, No. 19, 2002に、様々なEu+3α,β−ジケトンに直接に配位している側鎖ビピリジル基をもつ共役ポリマーを記載している。
【0004】
同様に、Periyasamy等はWO02/31896号公報第17〜18頁に、1段階または2段階どちらかの合成径路によって製造されたランタニド金属錯化ポリマーを記載している。1段階の径路においては、発光体MLを、金属反応性の官能基(X)を有するポリマーと反応させて、側鎖に−X−MLn−1基をもつポリマーを生成する。2段階の径路においては、側鎖にヒドロキシエチル官能基をもつポリマーをまず、カルボン酸官能基を含有するビピリジル化合物と縮合させてビピリジルエステル官能基(X−L’)を含有するポリマーを生成し、次いで、そのポリマーをMLと反応させて側鎖にX−L’−MLn−1官能基をもつポリマーを生成する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら金属錯体化された電界発光性ポリマー(electroluminescent polymers)のかかえる問題の一つは側鎖配位子と金属錯化剤との不完全な反応である。この不十分なカップリングのために、金属−配位子錯体化の程度をコントロールすることは困難であり、そのため最終ポリマーの性質を予測することは不可能である。従って、金属錯体化が正確にコントロールされた発光性ポリマーを製造することは有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本発明は第一の態様において、ハロゲン化芳香族単量体フラグメントと金属錯体フラグメントを含み、そして下記構造式によって表わされるハロゲン化芳香族単量体−金属錯体化合物を提供することによって要求に対処する:
【0007】
【化1】

【0008】
式中、Lは2座配位子(bidentate ligand)であり;MはIr、Rh、またはOsであり;Ar’およびAr”は、Ar’およびAr”の少なくとも一つがヘテロ芳香族であることを条件に、同一であってもよいし又は異なっていてもよい芳香族部分(aromatic moieties)であり;そしてRおよびRは各々独立に1価置換基またはHである。但し、RおよびRの少なくとも一つは、ハロゲン化芳香族単量体フラグメントと、このハロゲン化芳香族単量体フラグメントと金属錯体フラグメントの間の共役を中断させる連結基とを含有している。
【0009】
第二の態様において、本発明は、a)芳香族フラグメントと金属錯体フラグメントを有する芳香族単量体−金属錯体であって下記式によって表わされる構造単位:
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Lは2座配位子であり;MはIr、Rh、またはOsであり;Ar’およびAr”は、Ar’およびAr”の少なくとも一つがヘテロ芳香族であることを条件に、同一であってもよいし又は異なっていてもよい芳香族部分であり;そしてR'およびR'は置換基またはHである。但し、R'およびR'の少なくとも一つは、ポリマー骨格の部分である芳香族基と、この芳香族基と金属錯体フラグメントの間の共役を中断させる連結基とを含有している。);およびb)少なくとも一つの芳香族コモノマーの構造単位:を含む骨格を有する電界発光性ポリマーであり、このポリマーは芳香族単量体−金属錯体の構造単位と少なくとも一つの芳香族コモノマーの構造単位とによって形成されたポリマー骨格に沿って共役されていることを特徴とする。
【0012】
第三の態様において、本発明は陽極と陰極の間に挟まれた発光性ポリマーの薄膜を含む電子デバイスであり、その発光性ポリマーは、a)芳香族単量体−金属錯体であって下記式によって表わされる構造単位:
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、Lは2座配位子であり;MはIr、Rh、またはOsであり;Ar’およびAr”は、Ar’およびAr”の少なくとも一つがヘテロ芳香族であることを条件に、同一であってもよいし又は異なっていてもよい芳香族部分であり;そしてR'およびR'は置換基またはHである、但しR'およびR'の少なくとも一つは、ポリマー骨格の部分である芳香族基と、この芳香族基と金属錯体フラグメントの間の共役を中断させる連結基とを含有している。);およびb)少なくとも一つの芳香族コモノマーの構造単位;をもつ骨格を有しており、このポリマーは芳香族単量体−金属錯体の構造単位と少なくとも一つの芳香族コモノマーの構造単位によって形成されたポリマー骨格に沿って共役されていることを特徴とする。
【0015】
本発明は、金属錯体化が正確にコントロールされた共役された電気活性ポリマーを製造する簡単な方法を提供することによって要求に対処している。さらに、金属錯体基は共役ポリマー骨格によってほとんど影響されない電子的な及び/又は発光の性質を有する。
【0016】
(発明の詳細)
本発明の第一の態様は、ハロゲン化芳香族単量体フラグメントと金属錯体フラグメントを有しそして下記式によって表わされるハロゲン化芳香族単量体−金属錯体を含む組成物である:
【0017】
【化4】

【0018】
式中、Lは2座配位子であり;MはIr、Rh、またはOsであり;Ar’およびAr”は、Ar’およびAr”の少なくとも一つがヘテロ芳香族であることを条件に、同一であってもよいし又は異なっていてもよい芳香族部分であり;そしてRおよびRは各々独立に1価置換基またはHである。但し、RおよびRの少なくとも一つは、ハロゲン化芳香族単量体フラグメントと、このハロゲン化芳香族単量体フラグメントと金属錯体フラグメントの間の共役を中断させる連結基とを含有している。
【0019】
本発明のハロゲン化芳香族単量体−金属錯体は下記に示されている通り、金属錯体フラグメントと一つまたはそれ以上のハロゲン化芳香族単量体フラグメントを含むものとして考えることができる:
【0020】
【化5】

【0021】
はXAr−G−であり、そしてRはXAr−G−であり;各Arは独立に芳香族基であり;各Gは独立に、ArとAr’−Ar”との間の共役を中断させる2価の連結基であり、好ましくは、アルキレン、O、S、カルボニル、SiR(ここで、Rは置換基である)、またはオキシアルキレンであり、より好ましくは、メチレン、オキシメチレン、またはOであり;各Xは独立に、ハロゲン基であり、好ましくは、各Xはクロロまたはブロモであり;m+nの和は正の整数であり、好ましくは、1または2であり、より好ましくは、1であり;そしてo+pの和は正の整数であり、好ましくは、1または2であり、より好ましくは、1である。o(またはp)が0である場合には、R(またはR)はHを含めてどのような置換基であってもよい。各々のAr’−Ar”配位子が、共役中断基によってAr’−Ar”から隔てられた、1つのモノハロゲン化芳香族置換基を含有していることが最も好ましい。
【0022】
配位子Ar’−Ar”は2価の連結基によって配位子から隔てられた重合性芳香族単量体である少なくとも1つの置換基に結合される。適する置換されたAr’−Ar”配位子の例は次のものを包含するがそれらに限定されるものでもない:2−フェニルピリジン、2−ベンジルピリジン、2−(2−チエニル)ピリジン、2−(2−フラニル)ピリジン、2,2’−ジピリジン、2−ベンゾ[b]チエン−2−イル−ピリジン、2−フェニルベンゾチアゾール、2−(1−ナフタレニル)ベンゾチアゾール、2−(1−アントラセニル)ベンゾチアゾール、2−フェニルベンゾオキサゾール、2−(1−ナフタレニル)ベンゾオキサゾール、2−(1−アントラセニル)ベンゾオキサゾール、2−(2−ナフタレニル)ベンゾチアゾール、2−(2−アントラセニル)ベンゾチアゾール、2−(2−ナフタレニル)ベンゾオキサゾール、2−(2−アントラセニル)ベンゾオキサゾール、2−(2−チエニル)ベンゾチアゾール、2−(2−フラニル)ベンゾチアゾール、2−(2−チエニル)ベンゾオキサゾール、2−(2−フラニル)ベンゾオキサゾール、ベンゾ[h]キノリン、2−フェニルキノリン、2−(2−ナフタレニル)キノリン、2−(2−アントラセニル)キノリン、2−(1−ナフタレニル)キノリン、2−(1−アントラセニル)キノリン、2−フェニルメチルピリジン、2−フェノキシピリジン、2−フェニルチオピリジン、フェニル−2−ピリジニルメタノン、2−エテニルピリジン、2−ベンゼンメタンイミン、2−(ピロール−2−イル)ピリジン、2−(イミダゾール−2−イル)−ピリジン、2−フェニル−1H−イミダゾール、および2−フェニルインドール。
【0023】
ここに使用されるとき、「芳香族化合物」は別に明言されていない限り芳香族およびヘテロ芳香族どちらも包含する。同様に、用語「アリール」はここでは、別に明言されていない限りアリールおよびヘテロアリールの基または化合物どちらも包含するように使用されている。
【0024】
2価の連結基Gは共役を中断させる連結用の基または原子を含有しており、それによって芳香族単量体フラグメントと金属錯体フラグメントの間の電子の非局在化(electron delocalization)を妨げている。この、フラグメント間の共役の中断は結果として、錯体と、芳香族単量体フラグメントから形成された共役ポリマー骨格との間に同様の中断を生じさせる。共役の中断は芳香族単量体−金属錯体から形成されたポリマーの中で金属錯体の発光性質を維持するのにしばしば望ましい。かかる性質は共役ポリマー骨格と錯体との間で電子が非局在化されると不利に乱される(perturb)。
【0025】
連結基は好ましくは、置換または非置換の、非共役の、線状、分枝状または環状のヒドロカルビレン基または2価のヘテロ原子またはそれらの組合せである。連結基の例は、単独または組合せでの次のものを包含する:アルキレンまたはシクロアルキル基、たとえば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、t−ブチレン、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシル基;および、ヘテロ原子、たとえば、酸素および硫黄原子、およびR−Si−R、カルボニル、およびトリアリールアミンを除くアミン基。好ましい連結基は、酸素原子やメチレンおよびオキシメチレン基を含む。ここで使用されるとき、「オキシメチレン」は−OCH−または−CHO−基を意味する。
【0026】
ビス(モノハロゲン化芳香族)単量体−金属錯体を製造するための一般的手順
連結基を介して金属錯体に結合しているビス(モノハロゲン化芳香族)フラグメントを含有するハロゲン化芳香族単量体−金属錯体は、下記に示される通り4段階プロセスによって製造できる:
【0027】
【化6】

【0028】
Gは先に定義した通りであり、好ましくは、O、メチレン、またはオキシメチレンであり;Ar、Ar’、およびAr”は、Ar’およびAr”の少なくとも一つがヘテロ芳香族であることを条件に、各々独立に芳香族部分である。好ましくは、Arは非ヘテロ芳香族部分であり、ベンゼン、ナフタレン、またはアントラセン部分が挙げられ、より好ましくは、ベンゼン部分である。好ましくは、Ar’およびAr”は各々独立に、ベンゼン、ピリジン、チオフェン、およびフルオレン部分からなる群から選ばれ、金属によって5員環を形成するように錯体化される。より好ましくは、Ar’およびAr”の一方がベンゼン部分であり、そしてAr’およびAr”の他方がピリジン部分である。
【0029】
Xはハロであり、X’およびX”は各々独立にハロゲン、ボロネート、−ZnCl、−ZnBr、−MgCl、MgBr、または−Sn(C1〜10−アルキル)である。但し、X’およびX”の一方がハロゲンであり、X’およびX”の他方がボロネート、−ZnCl、−ZnBr、−MgCl、MgBr、または−Sn(C1〜10−アルキル)である。X”’はハロゲン、ヒドロキシまたはアルコキシであり、好ましくは、クロロ、ブロモ、メトキシまたはエトキシであり、より好ましくは、クロロまたはブロモである。X”’がハロゲンである場合には、ヒドロキシドまたはアルコキシド塩基の添加は必要ない;X”’がヒドロキシまたはアルコキシである場合には、ヒドロキシドまたはアルコキシド塩基の添加が好ましい。
【0030】
LはAr’−Ar”と同じまたは異なることができる2座配位子である。Lのその他の例は次のものを包含する:エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、プロピレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、cis−およびtrans−ジアミノシクロヘキサン、およびcis−およびtrans−N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノシクロヘキサン、を含むジアミン;2[(1−フェニルイミノ)エチル]ピリジン、2[(1−(2−メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン、2[(1−(2,6−イソプロピルフェニルイミノ)エチル]ピリジン、2[(1−(メチルイミノ)エチル]ピリジン、2[(1−(エチルイミノ)メチル]ピリジン、2[(1−(エチルイミノ)エチル]ピリジン、2[(1−(イソプロピルイミノ)エチル]ピリジン、および2[(1−(t−ブチルイミノ)エチル]ピリジン、を含むイミン;1,2−ビス(メチルイミノ)エタン、1,2−ビス(エチルイミノ)エタン、1,2−ビス(イソプロピルイミノ)エタン、1,2−ビス(t−ブチルイミノ)エタン、2,3−ビス(メチルイミノ)ブタン、2,3−ビス(エチルイミノ)ブタン、2,3−ビス(イソプロピルイミノ)ブタン、2,3−ビス(t−ブチルイミノ)ブタン、1,2−ビス(フェニルイミノ)エタン、1,2−ビス(2−メチルフェニルイミノ)エタン、1,2−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミノ)エタン、1,2−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニルイミノ)エタン、2,3−ビス(フェニルイミノ)ブタン、2,3−ビス(2−メチルフェニルイミノ)ブタン、2,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミノ)ブタン、および2,3−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニルイミノ)ブタン、を含むジイミン;2,2’−ビピリジン、およびo−フェナントロリンを含む2個の窒素原子を含有する複素環式化合物;
【0031】
ビス−(ジフェニルホスフィノ)メタン、ビス−(ジフェニルホスフィノ)エタン、ビス−(ジフェニルホスフィノ)プロパン、ビス−(ジメチルホスフィノ)メタン、ビス−(ジメチルホスフィノ)エタン、ビス−(ジメチルホスフィノ)プロパン、ビス−(ジエチルホスフィノ)メタン、ビス−(ジエチルホスフィノ)エタン、ビス−(ジエチルホスフィノ)プロパン、ビス−(ジ−t−ブチルホスフィノ)メタン、ビス−(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン、およびビス−(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパン、を含むジホスフィン;アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、1,5−ジフェニルアセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、およびビス(1,1,1−トリフルオロアセチル)メタン、を含む、1,3−ジケトン(β−ジケトン)から製造された1,3−ジケトネート(β−ジケトネート);アセト酢酸エチルエステルを含む、3−ケトエステルから製造された3−ケトネート;ピリジン−2−カルボキシレート、8−ヒドロキノリネート、キノリン−2−カルボキシレート、グリシン、ジメチルグリシン、アラニン、およびジメチルアミノアラニンを含む、アミノカルボン酸から製造されたカルボキシレート;メチルサリチルイミン、エチルサリチルイミン、およびフェニルサリチルイミンを含む、サリチルイミンから製造されたサリチルイミネート;エチレングリコールおよび1,3−プロピレングリコールを含む、ジアルコールから製造されたジアルコラート(dialcoholate);1,2−エチレンジチオレートおよび1,3−プロピレンジチオレートを含む、ジチオールから製造されたジチオラート(dithiolate)。好ましくは、Lはβ−ジケトネート、ピリジン−2−カルボキシレート、サリチルイミネート、または8−ヒドロキノリンもしくはキノリン−2−カルボン酸の誘導体である。
【0032】
金属錯体を含有する共役された発光性ポリマー
ハロゲン化芳香族単量体−金属錯体は、金属錯体化された共役された発光性ポリマーのための前駆体であり、該ポリマーは単独重合体、共重合体、三元共重合体などであることができ、そして多数の手段のいずれかによって製造できる。たとえば、ポリマーは米国特許第6,169,163号(第'163号特許)明細書第41欄第50〜67行から第42欄第1〜24行に記載されたスズキカップリング反応によって製造できる。
【0033】
本事例においては、スズキカップリング反応は、触媒、好ましくは、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)のようなPd/トリフェニルホスフィン触媒の存在下で、ハロゲン化芳香族単量体−金属錯体、好ましくは、ビス(モノハロゲン化芳香族)錯体を、ジボロネート化芳香族化合物と反応させることによって行うことができる。得られるポリマーの構造単位を形成するコモノマーの芳香族基は、ハロゲン化芳香族単量体−金属錯体に関与した芳香族基と同じであってもよいし又は異なっていてもよく、好ましくは異なっている。
【0034】
反応混合物の中に、ハロゲン化芳香族単量体−金属錯体と共に、様々なハロゲン化された及びボロネート化されたコモノマーを含有させることによって、2種より多くの単量体の構造単位を有するポリマーを製造することも可能であり、そしてそれは時には好ましい。
【0035】
重合は第'163号特許明細書第11欄第9〜34行に記載されているようにニッケル塩の存在下で一つまたはそれ以上のジハロゲン化芳香族単量体−金属錯体を一つまたはそれ以上のジハロゲン化芳香族化合物とカップリングすることによって行うこともできる。
【0036】
ハロゲン化芳香族単量体−金属錯体とカップリングさせるのに使用できる芳香族コモノマーは殆ど無限であるが、代表的な例は次のものを包含する:1,4−ジXベンゼン、1,3−ジXベンゼン、1,2−ジXベンゼン、4,4’−ジXビフェニル、1,4−ジXナフタレン、2,6−ジXナフタレン、2,5−ジXフラン、2,5−ジXチオフェン、5,5−ジX−2,2’−ビチオフェン、9,10−ジXアントラセン、4,7−ジX−2,1,3−ベンゾチアジアゾール、ジXトリアリールアミン、たとえば、N,N−ジ(4−Xフェニル)アニリン、N,N−ジ(4−Xフェニル)−p−トリルアミンおよびN−ジXフェニル−N−フェニルアニリン、3,6−ジX−N−置換カルバゾール、2,7−ジX−N−置換カルバゾール、3,6−ジX−ジベンゾシロール(dibenzosiloles)、2,7−ジX−ジベンゾシロール、N−置換−3,7−ジXフェノチアジン、N−置換−3,7−ジXフェノキサジン、ジX−N,N,N’,N’−テトラアリール−1,4−ジアミノベンゼン、ジX−N,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン、ジXアリールシラン、および2,7−ジX−9,9−ジ置換フルオレン、たとえば、9,9−置換基が結合して環構造を形成しているフルオレン、およびそれらの組合せ、ここで、各Xは独立に、ハロゲンまたはボロネートであり、好ましくは、ブロモもしくはクロロまたはボロネート、より好ましくは、ブロモまたはボロネートである。ここで使用されるとき、「ボロネート(boronate)」は、ボラン基、ボロン酸エステル基(boronic acid ester group)またはボロン酸基によって置換されている芳香族のフラグメントまたは化合物を意味する。
【0037】
得られたポリマーは、a)芳香族基であってこの芳香族基と金属錯体フラグメントとの間の共役を中断させる連結基にも結合している前記芳香族基;およびb)前記芳香族基と共役系を形成する芳香族コモノマー;の構造単位を有する骨格を有している。用語「構造単位」はここでは、重合後の単量体の残基を意味する。連結基を介して金属錯体に結合されている芳香族基の構造単位は下記構造式によって表わされる:
【0038】
【化7】

【0039】
式中、L、M、Ar’、およびAr”は先に定義した通りであり、そしてR'およびR'の少なくとも一方が、好ましくは、R'およびR'の一方だけが、ポリマー骨格の部分である芳香族基(好ましくはフェニル基、ナフタレニル基またはアントラセニル基、より好ましくはフェニル基)と、この芳香族基と金属錯体フラグメントの間の共役を中断させる連結基Gとを含有している。R'およびR'の他方は、好ましくは、Hを含めて1価の置換基である。従って、ArがフェニルでありそしてR'がHである場合には、下記構造単位が形成される:
【0040】
【化8】

【0041】
同様に、下記に示す通り、1,4−位を介してポリマー骨格の中に組み入れられているベンゼン含有コモノマーの構造単位は1,4−フェニレン基であり;2,7−位を介してポリマー骨格の中に組み入れられている9,9−ジ置換フルオレン含有コモノマーは9,9−ジ置換フルオレン−2,7−ジイル基(ここで、各Rは置換基である)である:
【0042】
【化9】

【0043】
従って、上に列挙したコモノマーに相当する構造単位は次のものである:1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、1,2−フェニレン、4,4’−ビフェニレン、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、フラン−2,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、2,2’−ビチオフェン−5,5−ジイル、アントラセン−9,10−ジイル、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル、N−置換カルバゾール−3,6−ジイル、N−置換カルバゾール−2,7−ジイル、N−置換−フェノチアジン−3,7−ジイル、N−置換−フェノキサジン−3,7−ジイル、トリアリールアミン−ジイル、たとえば、トリフェニルアミン−4,4’−ジイル、ジフェニル−p−トリルアミン−4,4’−ジイルおよびN,N−ジフェニルアニリン−3,5−ジイル、ジベンゾシロール−3,6−ジイル、ジベンゾシロール−2,7−ジイル、N,N,N’,N’−テトラアリール−1,4−ジアミノベンゼン−ジイル、N,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン−ジイル、アリールシラン−ジイル、および9,9−ジ置換フルオレン−2,7−ジイル。ポリマー、コポリマー、等々は製造の仕方によって限定されないということが理解されるべきである。
【0044】
得られたポリマーは金属錯体化が正確にコントロールできた共役骨格を有している。なぜなら、芳香族単量体−金属錯体の構造単位の好ましくは少なくとも90%が、より好ましくは少なくとも95%が、最も好ましくは100%が、ポリマー骨格内に組み込まれている金属錯体を含有しているからである。しかも、金属錯体は配位子とポリマー骨格との間に直接の非局在化が存在しないために共役ポリマー骨格から孤立しており(insulate)、この孤立が金属錯体の発光性を維持する。用語「共役ポリマー」および「共役ポリマー骨格」は、ポリマー骨格が少なくとも2個の隣接構造単位にわたって、好ましくは少なくとも5個の隣接構造単位にわたって、より好ましくは少なくとも10個の隣接構造単位にわたって非局在化されている電子を有することを意味するのに使用されている。
【0045】
好ましくは、ハロゲン化芳香族単量体−金属錯体の構造単位:コモノマーの構造単位の比は、好ましくは、少なくとも0.01:99.99、より好ましくは、少なくとも0.1:99.9、最も好ましくは、少なくとも1:99であり;かつ、好ましくは、20:80より大きくなく、より好ましくは、10:90より大きくない。
【0046】
本発明のポリマーは重量平均分子量Mが好ましくは少なくとも5000ダルトン、より好ましくは少なくとも10,000ダルトン、より好ましくは少なくとも50,000ダルトン、最も好ましくは少なくとも100,000ダルトンであり;かつ、好ましくは2,000,000ダルトン未満である。Mはポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用して測定されている。
【0047】
本発明のポリマーは一つまたはそれ以上の他のポリマーと合わせてブレンドをつくることができる。適するブレンド用ポリマーの例は単独重合体または共重合体(三元以上の共重合体も含めて)のポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリビニレン、ポリカーボネート、ポリビニルエーテルおよびエステル、フルオロポリマー、ポリカルバゾール、ポリアリーレンビニレン、ポリアリーレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリピロール、ポリピリジン、ポリフルオレン、およびそれらの組合せを包含する。
【0048】
本発明のポリマーまたはブレンドは溶液(たとえば、インキとして有効である)をつくるのに十分な量の一つまたはそれ以上の溶剤(以下、「溶剤」)と合わせることができる。溶剤の量は溶剤自体または用途に依存して変動するが、一般的には、発光性ポリマーおよび場合によっては添加剤または調節剤と溶剤との重量に基づいて少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%の濃度で使用される。
【0049】
ポリマーにとって適する溶剤の例は次のものを包含する:ベンゼン;モノ−、ジ−およびトリ−アルキルベンゼン、たとえば、C1〜12−アルキルベンゼン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、およびジエチルベンゼン;フラン、たとえば、テトラヒドロフランおよび2,3−ベンゾフラン;1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン;クメン;デカリン;ズレン;クロロホルム;リモネン;ジオキサン;アルコキシベンゼン、たとえば、アニソール、およびメチルアニソール;アルキルベンゾエート、たとえば、メチルベンゾエート;ビフェニル、たとえば、イソプロピルビフェニル;ピロリジノン、たとえば、シクロヘキシルピロリジノン;イミダゾール、たとえば、ジメチルイミダゾリノン;およびフッ素化溶剤;およびそれらの組合せ。より好ましい溶剤は次のものが挙げられる:C1〜8−アルキルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、キシレン、メシチレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、メチルベンゾエート、イソプロピルビフェニル、およびアニソール、およびそれらの組合せ。
【0050】
代表的な用途においては、インキ配合物を、正孔輸送材料を付着させてあるインジウム−錫−酸化物(indium-tin-oxide)(ITO)のような基板の上に付着させることができる。それから、溶剤を蒸発させるとインキは発光性ポリマーの薄膜を形成する。この膜は有機発光ダイオード(organic light-emitting diode)(OLED)素子における活性層として使用される。この膜は光源や光起電力セルや電界効果トランジスター素子を含めてその他の電子デバイスにおいても有効である。
【0051】
下記の実施例は例示のみを目的とするものであり、本発明の範囲を制限することを意図していない。
【実施例1】
【0052】
イリジウム(III)ビス{2−[4’−(4”−ブロモフェノキシ)フェニル]ピリジナト−N,C2,}(アセチルアセトネート)の製造
A.2−(4’−フェノキシ)フェニルピリジンの製造
4−フェノキシフェニルボロン酸(10.7g、0.05モル)と2−ブロモピリジン(11.58g、0.075モル)を250mLのTHFの中に溶解し、その後に、2MのNaCO(60mL)と、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.29g)を添加した。この反応混合物を一晩還流下で沸騰させ、それから分液漏斗に移して水層を除去した。有機層を真空中で除去し、そして残留物をシリカゲルカラムに通して最初にクロロホルムとヘキサンの1:1混合物によって、次いで純クロロホルムによって溶離して淡黄色の油状物を生じた。HPLCは純度99.5%を示した。GCMS:M=247。
【0053】
B.2−[4’−(4”−ブロモフェノキシ)フェニル]ピリジンの製造
N−ブロモコハク酸イミド(NBS、3.95g、22.2ミリモル)のDMF(10mL)溶液を、室温で、2−(4’−フェノキシ)フェニルピリジン(5.8g、23.4ミリモル)のDMF(100mL)溶液に添加した。この反応混合物を80℃で1時間攪拌した。HPLCは出発原料の40%が転化されたことを示した。追加のNBS(1.55g)を添加し、そして反応を80℃で一晩継続した。HPLCは〜55%の転化を示した。追加のNBS(5g)を添加し、そして反応を80℃で1時間継続した。HPLCは出発原料が完全に転化したことを示した。室温に冷却した後、反応混合物を水(300mL)の中に、攪拌しながら、注ぎ入れ、そこで混合物の中にNaOH溶液(50%(w/w)、15mL)を加えた。混合物を室温で2時間攪拌し、それから、濾過して固体を集めた。固体を水で洗浄し、そしてエタノールから再結晶化させて5.5gの表題化合物を白色結晶で得た。HPLCは純度98.6%を示した。GCMS:M=327。
【0054】
C.イリジウム(III)ビス{2−[4’−(4”−ブロモフェノキシ)フェニル]ピリジナト−N,C2,}μ−クロロ−橋かけ二量体の製造
塩化イリジウム(III)(%Ir=54.11、1.5g、4.25ミリモル)と2−[4’−(4”−ブロモフェノキシ)フェニル]ピリジン(3.5g)を室温で2−エトキシエタノール(30mL)の中に分散させた。この混合物を窒素下で20時間にわたって還流下で沸騰させた。その時点で、溶液から黄色固体が沈殿した。反応混合物にメタノール(100mL)を添加して完全に沈殿させた。固体を濾過によって集め、そしてメタノール、1NのHCl、そしてエタノールで順に洗浄し、それから、40℃で真空中で乾燥して3.27gの黄色粉末を得た。
【0055】
D.イリジウム(III)ビス{2−[4’−(4”−ブロモフェノキシ)フェニル]ピリジナト−N,C2,}(アセチルアセトネート)の製造
イリジウム(III)ビス{2−[4’−(4”−ブロモフェノキシ)フェニル]ピリジナト−N,C2,}μ−クロロ−橋かけ二量体(1.05g、0.6ミリモル)と炭酸ナトリウム(1.0g)を2−エトキシエタノール(60mL)の中に分散させた。この混合物を室温で窒素によって15分間脱気し、そこで、2,4−ペンタンジオン(0.132g、1.32ミリモル)を2−エトキシエタノール(20mL)と一緒に添加した。混合物を1時間還流させた。TLCは二量体出発原料が存在しないことを示し、そして主生成物は緑色発光物質であった。室温に冷却した後、水(100mL)を加えて生成物を沈殿させた。黄色固体を濾過によって集め、そして40℃で真空中で一晩乾燥した。粗生成物を塩化メチレンの中に再溶解し、そしてシリカゲルカラム上で塩化メチレンによって溶離して精製して0.48gの黄色粉末を得た;HPLCによって純度99.5%。
【実施例2】
【0056】
イリジウム(III)ビス[2−(4’−フェノキシフェニル)ピリジナト−N,C2,](アセチルアセトネート)を含有するコポリマーの製造
窒素下で、トルエン(50mL)の中の、9,9−ジ(1−オクチル)フルオレン−2,7−ジボロン酸エチレングリコールエステル(2.149g、4.04ミリモル)と、2,7−ジブロモ−9,9−ジ(1−オクチル)フルオレン(1.647g、3.00ミリモル)と、3,7−ジブロモ−N−(4−n−ブチル)−フェニル−フェノキサジン(0.190g、0.40ミリモル)と、N,N’−(ジ(ブロモフェニル)−N,N’−ジ(9,9−ジブチル)フルオレン−1,4−フェニレンジアミン(0.390g、0.40ミリモル)と、イリジウム(III)ビス{2−[4’−(4”−ブロモフェノキシ)フェニル]ピリジナト−N,C2,}(アセチルアセトネート)(0.188g、0.20ミリモル)と、アリクォート(Aliquat)336(0.75g)相間移動触媒(phase transfer catalyst)とを攪拌した混合物に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(5mg)と2Mの炭酸ナトリウム水溶液(11mL)を添加した。この反応混合物を窒素下で101℃で16時間攪拌した。それから、9,9−ジ(1−オクチル)フルオレン−2,7−ジボロン酸エチレングリコールエステル(20mg)を添加し、そして同じ条件下で重合を更に3時間継続した。それから、ブロモベンゼン(0.15gを10mLのトルエンの中に溶解したもの)を添加し同じ反応条件下で2時間反応を続けた。フェニルボロン酸(0.4g)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(3mgを10mLのトルエンの中に溶解したもの)を添加し同じ反応条件下で4時間反応を続けた。
【0057】
混合物を50℃に放冷し、水層を除去し、そして有機層を水で洗浄した。それから、得られたポリマー溶液をメタノール(1.5L)の中に、攪拌しながら、注ぎ入れて、淡黄色ポリマー繊維を沈殿させた。得られた繊維を濾過によって集め、メタノールで洗浄し、そして50℃で真空中で一晩乾燥した。ポリマーをトルエンの中に再溶解し、そしてこの溶液を、セライトおよびシリカゲルの層を詰めたカラムに通した。合わせた溶出液を100mLに濃縮し、それからメタノール(1.5L)の中に、攪拌しながら、注ぎ入れた。ポリマー繊維を集め、そして50℃で真空中で一晩乾燥した。ポリマーをトルエンの中に再溶解し、そしてメタノールの中で再沈殿させた。更なる濾過と乾燥の後に、2.26gの淡黄色繊維が得られた。ポリマーの重量平均分子量(M)はポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって121,100と測定され、多分散度(polydispersity index)(M/M)は3.78であった。
【実施例3】
【0058】
イリジウム(III)ビス[2−(4’−フェノキシフェニル)ピリジナト−N,C2,](アセチルアセトネート)を含有するフルオレンコポリマーIIの製造
N,N−ジフェニル−3,5−ジブロモアニリン(0.3248g、0.80ミリモル)を、ジブロモ−N−(4−n−ブチル)−フェニル−フェノキサジンおよびN,N’−(ジ(ブロモフェニル)−N,N’−ジ(9,9−ジブチル)フルオレン−1,4−フェニレンジアミン(0.390g、0.40ミリモル)の代わりに使用したこと以外は、実施例2に記載された手順に従った;コポリマーIIは2.13gの収量で製造された。
【実施例4】
【0059】
金属錯体含有ポリマーの発光素子
ITO(インジウム錫酸化物)を塗布してあるガラス基板上に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(H.C. Starckから商業的に入手可能であり、バイトロン(BAYTRON)(登録商標)P導電性ポリマー)の薄膜を80nmの厚さに、スピンコーティングした。それから、このPEDOT膜の上に、実施例3に記載の金属錯体含有ポリマーの膜を、キシレンの溶液から、80nmの厚さで、スピンコーティングした。乾燥後、ポリマー層の上に加熱蒸着(thermal evaporation)によってLiFの薄層(3nm)を付着させ、その後にカルシウム陰極(厚さ10nm)を付着させた。更にカルシウム陰極を覆うためにアルミニウム層を蒸着した。得られた素子にバイアスをかける(ITOを正につなぐ)ことによって、青味がかった緑色の発光が観察された。200cd/mで記録されたELスペクトルはCIE1931色度図では(x=0.240、y=0.270)の色度座標(chromaticity coordinates)に相当する。発光輝度(brightness)は13Vにおいて200cd/mに達しており、0.08cd/Aの発光効率(luminance efficiency)であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化芳香族単量体フラグメントと金属錯体フラグメントを含みそして下記構造式によって表わされるハロゲン化芳香族単量体−金属錯体化合物:
【化1】


式中、Lは2座配位子であり;MはIr、Rh、またはOsであり;Ar’およびAr”は、Ar’およびAr”の少なくとも一つがヘテロ芳香族であることを条件に、同一であってもよいし又は異なっていてもよい芳香族部分であり;そしてRおよびRは各々独立に1価置換基またはHである。但し、RおよびRの少なくとも一つは、ハロゲン化芳香族単量体フラグメントと、このハロゲン化芳香族単量体フラグメントと金属錯体フラグメントの間の共役を中断させる連結基とを含有している。
【請求項2】
Ar’およびAr”が各々独立に、ベンゼン、ピリジン、チオフェン、およびフルオレン部分からなる群から選ばれ;Lが、ジアミン、イミン、ジイミン、2個の窒素原子を含有するヘテロ環、ジホスフィン、β−ジケトネート、3−ケトネート、サリチルイミネート、ジアルコラート、およびジチオラートからなる群から選ばれ;そしてRが−G−Ar−Xであり、ここで、Gは、O、メチレン、またはオキシメチレンからなる群から選ばれ、Arはベンゼン、ナフタレン、またはアントラセン部分からなる群から選ばれ、そしてXはハロゲンである、請求項1の化合物。
【請求項3】
Ar’がベンゼン部分であり、そしてAr”がピリジン部分であり;Lが、β−ジケトネート、ピリジン−2−カルボキシレート、サリチルイミネート、8−ヒドロキノリンの誘導体、キノリン−2−カルボン酸の誘導体からなる群から選ばれ;そしてArがベンゼン部分であり;そしてXがBrである、請求項1または2の化合物。
【請求項4】
Lがβ−ジケトネートである、請求項1〜3のいずれか一項の化合物。
【請求項5】
a)下記式によって表わされる、芳香族単量体−金属錯体の構造単位:
【化2】


(式中、Lは2座配位子であり;MはIr、Rh、またはOsであり;Ar’およびAr”は、Ar’およびAr”の少なくとも一つがヘテロ芳香族であることを条件に、同一であってもよいし又は異なっていてもよい芳香族部分であり;そしてR'およびR'は置換基またはHである、但し、R'およびR'の少なくとも一つは、ポリマー骨格の部分である芳香族基と、この芳香族基と金属錯体フラグメントの間の共役を中断させる連結基とを含有している。);およびb)少なくとも一つの芳香族コモノマーの構造単位:を含む骨格を有する電界発光性ポリマーであり、このポリマーは芳香族単量体−金属錯体の構造単位と少なくとも一つの芳香族コモノマーの構造単位によって形成されたポリマー骨格に沿って共役されていることを特徴とする、前記電界発光性ポリマー。
【請求項6】
Ar’およびAr”が各々独立に、ベンゼン、ピリジン、チオフェン、およびフルオレン部分からなる群から選ばれ;Lが、ジアミン、イミン、ジイミン、2個の窒素原子を含有するヘテロ環、ジホスフィン、β−ジケトネート、3−ケトネート、サリチルイミネート、カルボキシレート、ジアルコラート、およびジチオラートからなる群から選ばれ;R'が−Ar−Gであり(ここで、GはArとAr’の間の共役を中断させ、そしてO、S、カルボニル、アルキレン、オキシアルキレン、およびSiR(ここで、Rは置換基である)からなる群から選ばれ;Arは、フェニル、ナフタレニル、およびアントラセニル基からなる群から選ばれる);そして、少なくとも一つの芳香族コモノマーの構造単位が、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、1,2−フェニレン、4,4’−ビフェニレン、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、フラン−2,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、2,2’−ビチオフェン−5,5−ジイル、アントラセン−9,10−ジイル、2,1,3−ベンゾチアゾール−4,7−ジイル、N−置換カルバゾール−3,6−ジイル、N−置換カルバゾール−2,7−ジイル、ジベンゾシロール−3,6−ジイル、ジベンゾシロール−2,7−ジイル、N−置換フェノチアジン−3,7−ジイル、N−置換フェノキサジン−3,7−ジイル、トリアリールアミン−ジイル、N,N,N’,N’−テトラアリール−1,4−ジアミノベンゼン−ジイル、N,N,N’,N’−テトラアリールベンジジン−ジイル、アリールシラン−ジイル、および9,9−ジ置換フルオレン−2,7−ジイルおよびそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項5のポリマー。
【請求項7】
Ar’およびAr”の一方がベンゼン部分であり、そしてAr’およびAr”の他方がピリジン部分であり;Lが、β−ジケトネート、ピリジン−2−カルボキシレート、サリチルイミネート、8−ヒドロキノリネート、およびキノリン−2−カルボキシレートからなる群から選ばれ;Arがフェニル基であり;そしてコモノマーの構造単位が、9,9−ジ置換フルオレン−2,7−ジイル、1,4−フェニレン、N−置換カルバゾール−3,8−ジイル、N−置換カルバゾール−4,7−ジイル、N,N−ジフェニルアニリン−3,5−ジイル、トリフェニルアミン−4,4’−ジイル、ジフェニル−p−トリルアミン−4,4’−ジイル、およびN−置換フェノキサジン−3,7−ジイルからなる群のいずれか2つまたはそれ以上から選ばれる、請求項5または6のポリマー。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項のポリマーと、そのポリマーおよび/または少なくとも一つの他のポリマーのための溶剤とを含む組成物。
【請求項9】
溶剤が、C1〜8アルキルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、キシレン、メシチレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、安息香酸メチル、イソプロピルビフェニル、およびアニソール、ならびにそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項8の組成物。
【請求項10】
陽極と陰極の間に挟まれた発光性ポリマーの薄膜を含む電子デバイスであって、このポリマーは、a)下記式によって表わされる、芳香族単量体−金属錯体の構造単位:
【化3】


式中、Lは2座配位子であり;MはIr、Rh、またはOsであり;Ar’およびAr”は、Ar’およびAr”の少なくとも一つがヘテロ芳香族であることを条件に、同一であってもよいし又は異なっていてもよい芳香族部分であり;そしてR'およびR'は置換基またはHである、但し、R'およびR'の少なくとも一つがポリマー骨格の部分である芳香族基と、この芳香族基と金属錯体フラグメントの間の共役を中断させる連結基とを含有している。);およびb)少なくとも一つの芳香族コモノマーの構造単位:を含む骨格を有しており、このポリマーは芳香族単量体−金属錯体の構造単位と少なくとも一つの芳香族コモノマーの構造単位によって形成されたポリマー骨格に沿って共役されていることを特徴とする、前記電子デバイス。


【公表番号】特表2007−501230(P2007−501230A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522581(P2006−522581)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/023123
【国際公開番号】WO2005/016945
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】