説明

苗移植機

【課題】 畦等の機体側方位置から苗載台に苗を能率的に供給できるようにする。
【解決手段】 機体の側方位置から苗載台の近傍まで苗を搬送する苗搬送手段10と、苗載台の近傍まで搬送された苗を苗載台に供給する苗供給手段11とを設け、前記苗搬送手段10は、間欠的に所定距離づつ苗を搬送する構成とする。また、前記苗搬送手段10は、苗搬送方向に苗を並列に載置するようになっており、各苗載置位置の境界部に仕切り10aが設けられている構成とする。さらに、前記苗供給手段11は、苗載台の近傍まで搬送された苗を苗載台側が低位となるように傾斜させると共に、その傾斜状態で苗に振動を与えて、苗載台の上に滑り込ませて供給する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、畦等の機体側方位置から苗載台に苗を供給することのできる苗移植機に関する。
【0002】
【従来の技術】一般的に、田植機で苗移植作業を行う場合、畦の上に補給用の苗を準備しておき、苗載台に搭載されている苗が残り少なくなったとき、随時機体を畦際に停車させて苗補給を行う。従来の苗移植機では、上記苗補給に際して、作業者が機体から下りて畦上の苗をいったん機体のフロア上に上げ、さらに作業者本人がフロア上に上がってフロア上の苗を苗載台に補給していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、従来は苗補給に際して作業者は二度の苗取扱動作を行わなければならなかったので、作業能率が悪く、作業者の肉体的な負担も大きかった。そこで、本発明は、畦等の機体側方位置から苗載台に苗を能率的に供給できるようにすることを課題としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、下記内容の発明をした。まず、第一の発明にかかる苗移植機は、機体の側方位置から苗載台の近傍まで苗を搬送する苗搬送手段と、苗載台の近傍まで搬送された苗を苗載台に供給する苗供給手段とを具備し、前記苗搬送手段は、間欠的に所定距離づつ苗を搬送することを特徴としている。
【0005】次に、第二の発明にかかる苗移植機は、機体の側方位置から苗載台の近傍まで苗を搬送する苗搬送手段と、苗載台の近傍まで搬送された苗を苗載台に供給する苗供給手段とを具備し、前記苗搬送手段は、苗搬送方向に苗を並列に載置するようになっており、各苗載置位置の境界部に仕切りが設けられていることを特徴としている。
【0006】また、第三の発明にかかる苗移植機は、機体の側方位置から苗載台の近傍まで苗を搬送する苗搬送手段と、苗載台の近傍まで搬送された苗を苗載台に供給する苗供給手段とを具備し、前記苗供給手段は、苗載台の近傍まで搬送された苗を苗載台側が低位となるように傾斜させると共に、その傾斜状態で苗に振動を与えて、苗載台に滑り込ませて供給することを特徴としている。
【0007】これら各発明による苗移植機に苗補給するには、作業者が畦等の機体の側方位置で苗搬送手段に苗を補給する。すると、苗搬送手段が苗を苗載台の近傍まで搬送し、その苗を苗供給手段が苗載台に供給する。したがって、作業者は苗補給のための作業を一度行うだけでよい。
【0008】特に第一の発明の構成とすると、機体の側方位置で補給される苗を所定個数づつ一定ピッチで並ぶ状態で苗載台の近傍へ搬送することができる。このため、複数条植え苗移植機において、苗載台の各条部分に同時に苗を供給することが可能となり、苗供給作業の能率が向上する。
【0009】また、第二の発明の構成とし、その仕切りの間隔を適正に設定しておけば、機体の側方位置で補給される苗を前記苗載台の各条部分に対応する位置まで搬送できる。このため、苗供給手段による苗載台への苗供給が正確に行える。
【0010】さらに、第三の発明の構成とすると、苗載台の近傍へ搬送された苗を苗載台に無理なく安定して供給することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1及び図2は苗移植機の一種である乗用田植機を表している。この乗用田植機1は、四輪走行車体2の後方に、昇降リンク装置3を介して6条植の苗植付部4が昇降可能に連結されている。また、走行車体2の後部上方には、苗植付部4の苗載台4aに苗を供給するための苗補給部5が設けられている。
【0012】図3乃至図5は苗補給部を表している。苗補給部5は、機体の側方位置から苗載台の近傍まで苗を搬送する苗搬送手段と、苗載台の近傍まで搬送された苗を苗載台に供給する苗供給手段とを組み合わせたものであって、リフトシリンダ7で駆動するパンタグラフ式のリフト機構8を介して昇降可能に支持された左右に長い昇降枠9に、前記苗搬送手段としての搬送ベルト10及び苗供給手段としての左右一対の苗供給シリンダ11,11等が組み付けられている。
【0013】搬送ベルト10は、昇降枠9の左右端部に回転自在に支承された軸心が前後方向を向く一対のプーリ13A,13Bに掛けられており、上部が支持プレート14によって下側から摺動自在に支持されている。搬送ベルト10の外周面の約半分の領域(図では上面)には、苗載台の各条部分の幅に対応するピッチで苗載置位置の境界を示す仕切りとしてのラグ10aが形成されている。駆動プーリである右プーリ13Aは正逆両方向に回転可能なモータ15で駆動されるようになっており、搬送ベルト10は上部が左へ移動する方向及び左へ移動する方向のいずれにも作動可能である。また、従動プーリである左プーリ13Bは、伸縮可能なロッド16を介して昇降枠9に左右方向にスライド可能に取り付けられている。このため、搬送ベルト10が伸びたり縮んだりした場合、該搬送ベルト10の張力を調整できる。
【0014】前記支持プレート14はプーリ13A,13Bの上端よりも若干高い位置に設けられており、搬送ベルト10の上面左右端部は若干外下がりに傾斜している。また、搬送ベルト10の左右端部よりも外側に、該ベルトの左右端部より若干高く苗ガイド18が昇降枠9に固定して設けられている。さらに、苗補給時における搬送ベルト10の停止位置では、最外側のラグ10aがベルト上面よりも低くなっている。これらのことから、苗取板19に載せたマット状苗Mを搬送ベルト10の左右端部に補給しやすい。
【0015】前記苗取板19は苗箱からのマット状苗の取り出しに使用される道具で、本苗移植機用の苗取板は、図8に示すように、平板状の苗載せ部19aの長手方向一端部に側面視逆U字形のガイド部19bが形成されている。苗補給に際し、苗を載せた苗取板19を、搬送ベルト10の前側に設けられたガイドレール20にガイド部19bを嵌合させた状態で搬送ベルト10の上に載置する。搬送ベルト10の作動に伴い、苗を載せた苗取板19がガイドレール20に案内されながら搬送される。ガイドレール20の左右端部は背面視円弧状に形成されているので、苗取板のガイド部19bを側方からガイドレール20に嵌めやすい。
【0016】前記ガイドレール20は、昇降枠9の外端部に設けた左右方向の回動軸22に回動自在に取り付けられている。そして、前記回動軸22と一体回動する苗供給アーム23に、基部を昇降枠9に回動自在に枢着した苗供給シリンダ11のピストンロッドが連結されている。苗供給シリンダ11を収縮させると、ガイドレール20が回動軸22に支点にして上方に回動する。
【0017】苗補給部の作動は、下記の各スイッチ、センサ類からの情報に基づき制御装置30によって制御されている(図7参照)。畦苗補給スイッチ31(L,R)は、苗補給作業を開始するときに操作する押しボタン式スイッチである。苗供給スイッチ32(L,R,F)は、苗載台の近傍に搬送された苗を苗載台に供給するときに操作する押しボタン式スイッチである。これら畦苗補給スイッチ31及び苗供給スイッチ32は、昇降枠9の左右端面に取り付けられたコントロールパネル33にそれぞれ設けられている。また、苗供給スイッチ32は操縦席2a近傍の操作パネル2bにも設けられている。
【0018】苗補給感知スイッチ35(L,R)は、搬送ベルト10の左右端部に苗が載置されたことを感知する。ロータリエンコーダ36は、右プーリ13Aの回転量から搬送ベルト10の作動量を検出する。ベルト中央感知スイッチ37は、搬送ベルト10のラグがある領域の中心(ベルト中心)が機体の左右中心にあることを感知する。
【0019】リフトセンサ39は、リフト機構8による昇降枠9のリフト量を検出する。苗供給アームスイッチ40(1,2)は、苗供給アームの回動範囲を定めるスイッチである。苗載台横位置センサ41は、苗植付部4の苗載台4aが左右往復行程のどこに位置しているかを検出する。昇降リンクセンサ42は、昇降リンク装置3のリンク角度から苗植付部4の高さを検出する。
【0020】苗補給を行うに際しては、補給用の苗が置かれている畦に機体を横付けする。そして、畦側の畦苗補給スイッチ31を押すと、前回補給作業終了時のベルト中心が機体の左右中心にある状態から、搬送ベルト10の上部が畦側に6ラグピッチ分だけ移動して初期位置に復帰する。搬送ベルト10上に前回補給時の空の苗取板19が載っている場合は、搬送ベルト10の復帰作動時に人手で苗取板19を回収する。
【0021】初期位置に復帰した搬送ベルト10の畦側端部に、前述の要領で苗取板19ごと苗を補給する。すると、苗補給感知スイッチ35が感知することにより、モータ15が所定方向に回転して、搬送ベルト10の上部が畦と反対側へ移動する。ロータリエンコーダ36の検出結果に基づくベルト移動距離が1ラグピッチになると、搬送ベルト10の作動が停止する。以下同様に、搬送ベルト10への苗補給及び搬送ベルト10の作動が繰り返される。6枚目の苗を載せた搬送ベルト10の作動を停止させるときは、ロータリエンコーダ36の検出結果に基づくベルト移動距離からではなく、ベルト中央感知スイッチ37がベルト中心を感知した時点で停止させる。このようにすると、ベルトとプーリとのスリップ等により、ロータリエンコーダ36の検出結果に基づくベルト移動距離と実際の移動距離との間に誤差があったとしても、その誤差が蓄積されて大きくならない。
【0022】6枚の苗が苗載台の近傍へ搬送されたなら、苗供給スイッチ32を押す。どの苗供給スイッチ32を押してもよい。すると、図6に示すように、苗植付部4が昇降リンク装置3が水平になる高さまで上昇すると共に、リフト機構8が作動して昇降枠9が苗載台に対応する高さまで上昇する。次いで、苗供給シリンダ11,11が収縮し、ガイドレール20がP1位置まで回動する。苗取板19は後ろ下がりに傾斜し、苗取板19上の苗が苗載台4aに滑り落ちる。さらに、苗供給シリンダ11,11が伸縮作動することにより、ガイドレール20はP1位置とP2位置の間を揺動する。これにより、苗取板19に振動を与えて、苗取板19に付着したままの苗を振り落とす。その後、苗供給シリンダ11,11が伸長作動して、ガイドレール20は元の位置に戻る。これらの苗供給作動は、苗載台4aが左右行程の中心に位置しているときだけしか行わないように制御されている。
【0023】昇降リンク装置3が水平である状態にある苗植付部4の位置で苗載台4aに苗供給を行う構成としたのは、次の理由による。すなわち、昇降リンク装置3が上記状態にあるとき苗植付部4は最も後方に位置する。したがって、苗植付部4を走行車体2からあまり離して設けることなく、走行車体2の操縦座席2aと苗植付部4の間に苗補給部5を配置することが可能なのである。
【0024】次に、図9及び図10は異なる苗補給部を表している。この苗補給部5は、搬送ベルト10の全域にわたって苗載台4aの各条苗載せ部の幅に対応するピッチでラグ10aが形成されており、搬送ベルト10の移動経路に近接する任意位置にラグを検出するベルト位置センサ50が設けられている。ベルト位置センサ50は静電容量型の近接スイッチであって、テンションプーリ13Cと一体に上下動するように平行リンク51に支持されている。このため、ベルトに弛みが生じてもベルト位置センサ50からラグ10aまでの距離が一定に保たれ、ラグを正確に検出できる。
【0025】搬送ベルト10の畦側端部に苗を補給すると、それを苗補給感知スイッチ35が感知して、搬送ベルト10の上部が畦と反対側へ移動する。1ラグピッチ移動してベルト位置センサ50が次のラグを検出すると、搬送ベルト10の作動が停止する。以下同様に、搬送ベルト10の苗補給及び搬送ベルト10の作動が繰り返され、6枚の苗が苗載台4aの近傍まで搬送される。このように、搬送ベルト10のラグを直接検出することにより搬送ベルト10の作動停止タイミングを決定する構成とすると、搬送ベルト10の伸び縮み等に関係なく、常に搬送ベルト10の移動量が正確である。
【0026】
【発明の効果】以上に説明した如く、本発明にかかる苗移植機は、畦等の機体の側方位置で搬送手段に苗を供給するだけで苗載台に苗を補給できるものであって、供給される苗を所定個数づつ一定ピッチで並ぶ状態で苗載台の近傍へ搬送することができるほか、供給される苗を苗載台の各条部分に対応する位置まで搬送することも可能で、苗載台の近傍へ搬送された苗を苗載台に無理なく安定して供給することができるので、苗補給作業を正確かつ能率的に行えるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】乗用田植機の植付作業時の状態を示す側面図である。
【図2】乗用田植機の平面図である。
【図3】苗補給部の背面図である。
【図4】苗補給時の状態を示す苗搬送手段の左端部の背面図である。
【図5】苗補給部の要部の側面図である。
【図6】乗用田植機の苗補給時の一状態を示す側面図である。
【図7】苗補給部の制御系統のブロック図である。
【図8】苗取板の斜視図である。
【図9】異なる苗補給部の背面図である。
【図10】その要部を拡大して表した図である。
【符号の説明】
1 乗用田植機(苗移植機)
2 走行車体
3 昇降リンク装置
4 苗植付部
4a 苗載台
5 苗補給部
8 リフト機構
10 搬送ベルト(苗搬送手段)
10a ラグ(仕切り)
11 苗供給シリンダ(苗供給手段)
19 苗取板
20 ガイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】 機体の側方位置から苗載台の近傍まで苗を搬送する苗搬送手段と、苗載台の近傍まで搬送された苗を苗載台に供給する苗供給手段とを具備し、前記苗搬送手段は、間欠的に所定距離づつ苗を搬送することを特徴とする苗移植機。
【請求項2】 機体の側方位置から苗載台の近傍まで苗を搬送する苗搬送手段と、苗載台の近傍まで搬送された苗を苗載台に供給する苗供給手段とを具備し、前記苗搬送手段は、苗搬送方向に苗を並列に載置するようになっており、各苗載置位置の境界部に仕切りが設けられていることを特徴とする苗移植機。
【請求項3】 機体の側方位置から苗載台の近傍まで苗を搬送する苗搬送手段と、苗載台の近傍まで搬送された苗を苗載台に供給する苗供給手段とを具備し、前記苗供給手段は、苗載台の近傍まで搬送された苗を苗載台側が低位となるように傾斜させると共に、その傾斜状態で苗に振動を与えて、苗載台に滑り込ませて供給することを特徴とする苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図8】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図9】
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【図7】
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【公開番号】特開2002−165506(P2002−165506A)
【公開日】平成14年6月11日(2002.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−366111(P2000−366111)
【出願日】平成12年11月30日(2000.11.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】