説明

苗移植機

【課題】深田で作業をする際の大きな負荷によるエンジン回転の低下があっても、走行停止や作業機器の作動不良を招くことなく、安定した植付け走行を確保することができる苗移植機を提供する。
【解決手段】苗移植機は、圃場走行可能に機体を支持する走行装置(2,3)と、スロットル(7a)の開度制御により回転調節可能なエンジン(7)と、トラニオン(8b)の開度制御によりエンジン動力を無段変速伝動する油圧式無段変速装置(8a)と、昇降調節可能な植付装置(6)とを設けて構成され、上記エンジン(7)の回転数を検出する回転検出装置(7s)と、トラニオン(8b)の開度およびスロットル(7a)の開度を制御する制御装置(C)とを設け、エンジン回転数の急激な減少を検出すると回転数が規定値に回復するように、制御装置(C)によりトラニオン(8b)およびスロットル(7a)の少なくとも一方を制御するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速装置により車速調節可能に苗移植する苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された苗移植機は、無段変速装置により車速調節可能に構成され、また、多条植えの植付装置を昇降リンクによって昇降調節可能に備え、その昇降調節制御により一定深さで植付作業することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−239934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水量が多く深い圃場や、ぬかるみ易い圃場では、車輪に絡み付く泥の抵抗によりエンジンに過大な負荷がかかり、エンジンの回転が急激に低下してしまい、走行が停止したり、エンジン動力を受けて作動する油圧シリンダ等の部材が作動不良を起こすことがあり、作業の中断により能率が低下する問題がある。
また、植付装置等の作動不良により、苗の植付深さが浅過ぎ、苗が圃場に植えられず欠株が生じ、作業者が後から手作業で補植せねばならず、作業者の労力が増大する問題がある。
さらに、苗の植付深さが深すぎたり、前後に傾斜した姿勢となったりすることにより、苗が正常に生育せず、収穫される作物の品質や収量が低下する問題がある。
【0005】
本発明の目的は、深田で作業をする際の大きな負荷によるエンジン回転の低下があっても、走行停止や作業機器の作動不良を招くことなく、安定した植付け走行を確保することができる苗移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、圃場走行可能に機体を支持する走行装置(2,3)と、スロットル(7a)の開度制御により回転調節可能なエンジン(7)と、トラニオン(8b)の開度制御によりエンジン動力を無段変速伝動する油圧式無段変速装置(8a)と、昇降調節可能な植付装置(6)とを設けた苗移植機において、上記エンジン(7)の回転数を検出する回転検出装置(7s)と、トラニオン(8b)の開度およびスロットル(7a)の開度を制御する制御装置(C)とを設け、エンジン回転数の急激な減少を検出すると回転数が規定値に回復するように、制御装置(C)によりトラニオン(8b)およびスロットル(7a)の少なくとも一方を制御することを特徴とする。
【0007】
上記苗移植機は、走行時に高い負荷がかかりエンジンドロップが生じた際に、トラニオン調節モータまたはスロットル調節モータ、或いは両方のモータを作動させてエンジン回転数を自動的に規定値に保持する構成としたことにより、深田における作業中に過大な負荷を受けても、所定の走行トルクが確保される。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記制御装置(C)は、回転検出装置(7s)がエンジン回転数の急減を検出した場合にスロットル(7a)の制御によってエンジン回転を増加させ、スロットル(7a)が最大開度に達したときにエンジン回転数が規定値に回復するまでトラニオン(8b)の制御によって減速伝動することを特徴とする。
上記苗移植機は、エンジンドロップの発生に対してエンジン回転数を規定値まで復帰させる際に、スロットルの開度を最大まで上げても復帰しない場合にはトラニオン開度を下げてエンジン回転数を規定値に戻す制御を構成することにより伝動トルクが確保される。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2の構成において、前記トラニオン(8b)の開度を検出するトラニオン位置センサ(8s)を設け、エンジン回転数の急減を検出したときにトラニオン開度を記憶し、エンジン回転数が規定値に復帰した時点で、記憶した開度までトラニオン(8b)を制御することを特徴とする。
上記苗移植機は、トラニオン位置センサを設けて元のトラニオン開度を記憶する構成としたことにより、トラニオン開度を下げてエンジン回転数を規定値に復帰させた後、自動的にトラニオン開度を変更前の開度とすることができるので、エンジンドロップの前後で走行速度や植付装置の植付速度が維持される。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれか1項の構成において、前記植付装置(6)の昇降位置検出部材(6s)を設け、検出した昇降位置が所定値以上の場合にトラニオン(8b)制御して減速伝動することを特徴とする。
上記苗移植機は、植付装置の昇降位置検出部材によって検出される昇降位置が所定値以上の場合にトラニオン開度を小さくして高トルクに制御されることから、所定の植付装置昇降位置を圃場深さと対応して設定することにより、圃場の深い部分で高いトルクが確保される。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれか1項の構成において、前記機体の前後方向の傾斜角度を検出する傾斜検出部材(1s)を設け、検出した傾斜角度に応じて、検出角度が前上がりの場合にスロットル(7a)の開度を増加するとともにトラニオン(8b)の開度を減少させ、検出角度が後上がりの場合にスロットル(7a)の開度を減少するとともにトラニオン(8b)の開度を減少させ、検出角度が略水平の場合にスロットル(7a)の開度を減少するとともにトラニオン(8b)の開度を増加する制御を行なうことを特徴とする。
上記苗移植機は、傾斜検出部材に基づき、登り傾斜を検出するとエンジン回転数を増加させるとともにトラニオン開度を減少させる構成としたことにより、傾斜地を登りながら走行する際に走行速度を低速にしつつ高トルクの走行が確保され、また、下り角度を検出するとエンジン回転数及びトラニオン開度を減少させる構成としたことにより、傾斜地を下りながら走行する際に極低速且つ高トルクの走行が確保され、そして、略水平であることを検出するとエンジン回転数を減少させるとともにトラニオン開度を増加させる構成としたことにより、平地を走行する際に低トルクで高速走行が確保される。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1から5のいずれか1項の構成において、機体操舵用のハンドル(4)と、ハンドル切角検出部材(4s)と、前記油圧式無段変速装置(8a)から受ける作動油により操舵力を補助する操舵補助機構(4a)と、車速検出部材(3s)とを設け、ハンドル切角が所定値以上の場合について、検出車速に基づくスロットル(7a)の開度制御によって一定車速まで減速し、検出車速が一定値未満の範囲でトラニオン(8b)の開度制御により油圧式無段変速装置(8a)の送油量を増加することを特徴とする。
上記構成により、旋回時の走行速度が過大な場合にスロットル制御により所定速度まで抑速され、その一定速度内であれば、その範囲のトラニオン制御により操舵補助機構の送油量が増やされて操舵補助力が増加される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明により、走行車体の走行時に高い負荷がかかりエンジンドロップが生じた際に、トラニオン調節モータまたはスロットル調節モータ、或いは両方のモータを作動させてエンジン回転数を自動的に規定値に保持する構成としたことにより、深田における作業中に過大な負荷を受けても、走行車体が急停止したり、エンジンから駆動力を受けている部材(油圧系等)が作動不良を起こしたりすることを防止できるので、作業が中断されることが無く、作業能率や苗の植付精度を向上することができる。
【0014】
請求項2に係る発明により、請求項1の効果に加え、エンジンドロップの発生に対してエンジン回転数を規定値まで復帰させる際に、スロットルの開度を最大まで上げても回転が回復しない場合にはトラニオン開度を下げてエンジン回転数を規定値に戻す制御を構成することにより、圃場条件にかかわらず最終的に伝動トルクが確保されて作業に必要なエンジン回転数を自動的に確保し続けることができるので、作業が中断されることが無く、作業能率や苗の植付精度が向上する。
【0015】
請求項3に係る発明により、請求項2の効果に加え、トラニオン位置センサを設けて元のトラニオン開度を記憶する構成としたことにより、トラニオン開度を下げてエンジン回転数を規定値に復帰させた後、自動的にトラニオン開度を変更前の開度とすることができるので、エンジンドロップの前後で走行速度や植付装置の植付速度が変わることが防止され、作業能率や植付精度がいっそう向上する。
【0016】
請求項4に係る発明により、請求項1から3のいずれか1項の効果に加え、上記植付装置の昇降位置検出部材によって検出される昇降位置が所定値以上の場合にトラニオン開度を小さくして高トルクに制御されることから、所定の植付装置昇降位置を圃場深さと対応して設定することにより、走行抵抗の生じやすい圃場の深い部分では自動的に高いトルクが生じる作業状態とすることができるので、エンジンドロップが発生しにくくなり、エンジン回転を規定値に戻す制御を行なう頻度が下がるため、作業能率が向上する。また、エンジンドロップからエンジン回転数を規定値に復帰させる際に生じる燃料の消費を抑えることができるので、燃費が向上する。
【0017】
請求項5に係る発明により、請求項1から4のいずれか1項の効果に加え、上記傾斜検出部材に基づき、登り傾斜を検出するとエンジン回転数を増加させるとともにトラニオン開度を減少させる構成としたことにより、傾斜地を登りながら走行する際に走行速度を低速にしつつトルクを高めることができるので、坂道を登り切れなくなることが防止でき、また、下り角度を検出するとエンジン回転数及びトラニオン開度を減少させる構成としたことにより、傾斜地を下りながら走行する際に極低速且つ高トルクで走行することから、坂道を滑り降りることを防止して作業の安全性が向上することができ、そして、略水平であることを検出するとエンジン回転数を減少させるとともにトラニオン開度を増加させる構成としたことにより、平地を走行する際に低トルクで高速走行することができるので、燃料消費が抑制され、燃費を向上することができる。
【0018】
請求項6に係る発明により、請求項1から5のいずれか1項の効果に加え、上記構成により、旋回時の走行速度が所定速度以上の場合、エンジンスロットルモータを作動させてエンジンスロットルの開度を減少させ、走行速度を低下させることにより、ハンドルの操作に合わせて旋回動作を細かく調節することができるので、次の条の植付開始位置に機体を移動させやすくなるため、植付精度が向上する。
また、旋回時の走行速度が所定速度未満の範囲でHSTサーボモータを作動させてHSTトラニオン開度を増加させ、送油量を増やす構成としたことにより、ハンドルの操舵補助機構(パワステユニット)への送油量が増えるため、ハンドルの操舵を軽い力で行うことができ、作業者の労力が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】苗移植機の側面図(a)および平面図(b)
【図2】機器制御システムのブロック図
【図3】制御処理のフローチャート
【図4】圃場深さ対応制御システムのブロック図
【図5】圃場深さ対応制御のフローチャート
【図6】圃場傾斜対応制御システムのブロック図
【図7】圃場傾斜対応制御のフローチャート
【図8】ハンドル角対応制御システムのブロック図
【図9】ハンドル角対応制御のフローチャート
【図10】作業座席の背もたれ部見取図(a)、座面の作用側面図(b)およびハンドル見取図(c)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態にかかる苗移植機について説明する。
図1は本実施の適用対象となる苗移植機の側面図(a)と平面図(b)である。この苗移植機1は、圃場を走行可能に機体を支持する走行装置である左右の前輪2,2と左右の後輪3,3を備え、機体前部に前輪2,2を操舵するハンドル4、後部に施肥装置5、昇降リンク機構6aによって昇降可能に植付装置6が構成される。
【0021】
また、苗移植機1の伝動系は、スロットル7aの開度制御により回転調節可能なエンジン7と、油圧サーボ式のトラニオン8bの開度制御によりエンジン動力を無段変速する静油圧式無段変速装置8aを内設したトランスミッション8とを備えて走行系および作業系の各機器に変速動力を供給可能に構成され、動力負荷に応じてスロットル7aの開度制御とトラニオン8bの開度制御を行うための制御部Cを設けることにより、無段変速装置8aから作動油を受ける操舵補助機構4aを付設したハンドル4による機体旋回操作を含む安定した植付け走行を確保するための機器制御システムを構成する。
【0022】
上記機器制御システムは、深田走行等の高負荷によってエンジン回転が急速に低下した場合にエンジン回転を回復させるために、エンジン7のスロットル7aを開き、それでも回転数の回復が不十分であれば、トラニオン8bの開度を減少してトルクを増加するように減速制御する。
【0023】
詳細には、機器制御システムは、図2のシステムブロック図に示すように、エンジン7の回転センサ7sの信号を制御部Cに入力し、この制御部Cによりトラニオン8bとスロットル7aを駆動制御可能に構成することにより、トラニオン8b制御を介して無段変速装置8aの変速比を調節し、また、スロットル7aの制御を介してエンジン7の回転数を調節する。そのほか、後輪3に回転センサ3sを設けて車速を検出し、主変速レバー9にレバー位置センサ9sを設けてそのレバー位置に応じて車速制御可能に構成する。
【0024】
制御部Cによる制御処理は、図3のフローチャートに示すように、エンジン回転数の第1のステップ(以下において、「S1」の如く略記する。)によりエンジン回転を検出し、回転数が急激に減少するエンジンドロップ(S2)があれば、エンジン回転数が規定値に達するまでエンジンスロットル7aを開く(S3a〜S3d)。
【0025】
上記制御でエンジン回転数が規定値に到達しないうちにスロットル7aが全開となった場合は、無段変速装置8aのトラニオン位置を記憶(S4)した上で、さらに、エンジン回転数が規定値に達するまでトラニオン開度を減少させ(S5a〜S5c)、次いで、記憶したおいたトラニオン位置に戻すように開度制御(S6a〜S6c)する。
【0026】
このように、エンジン7の回転数を検出するセンサ7sと、トラニオン8bの開度およびスロットル7aの開度を制御する制御装置Cとを設け、エンジン回転数の急激な減少を検出すると回転数が規定値に回復するように、トラニオン開度およびスロットル開度の少なくとも一方を制御することにより、機体走行時に大きい負荷を受けてエンジンドロップが生じた際に、トラニオン調節モータまたはスロットル調節モータ、或いは両方を作動させてエンジン回転数を自動的に規定値に保持することにより、深田における作業中に過大な負荷を受けても、走行車体が急停止したり、エンジンから駆動力を受けている油圧系等の部材が作動不良を起こしたりすることを防止できるので、作業の中断が回避されて作業能率や苗の植付精度を向上することができる。
【0027】
この場合において、エンジン回転数の急減によるエンジンドロップの発生に対してエンジン回転数を規定値に復帰させる際に、スロットル7aの開度を最大まで上げても復帰しない場合にはトラニオン8bの開度を下げてエンジン回転数を規定値に戻すことにより、圃場条件にかかわらず最終的に伝動トルクが確保されて作業に必要なエンジン回転数を自動的に確保し続けることができるので、深田における植付け作業が中断されることが無く、作業能率や苗の植付精度が向上する。
【0028】
また、トラニオン8b開度を検出するトラニオン位置センサ8sを設け、エンジン回転数の急減を検出したときのトラニオン開度を記憶し、その後にエンジン回転数が規定値に到達した時点で、記憶したトラニオン開度まで戻すことにより、エンジンドロップの前後で走行速度や植付装置6の植付速度が変わることが防止され、作業能率や植付精度がいっそう向上する。
【0029】
(深さ対応制御)
次に、圃場深さ対応制御の例を説明する。
圃場深さ対応制御は、圃場深さに対応して無段変速装置8aの変速比を制御するものであり、図4のブロック図に示すように、植付装置6の昇降リンク機構6aにポテンショメータ等の昇降位置検出部材であるリンクセンサ6sを設けて植付装置6の昇降高さに基づいてトラニオン8bの開度を制御可能に構成し、図5のフローチャートに示すように、検出した昇降位置が所定値以上の場合(S11,S12)にトラニオン開度を減少(S13a,S13b)する制御処理を構成する。
【0030】
上記制御処理構成により、植付装置6の昇降位置検出部材6bによって検出される昇降位置が所定値以上の場合にトラニオン8b開度を小さくして高トルクに制御されることから、高トルク制御が必要な圃場深さと対応して所定の昇降位置を設定することにより、走行抵抗の生じやすい圃場の深い部分では自動的に高いトルクが生じる作業状態とすることができるので、エンジンドロップが発生しにくくなり、エンジン回転を規定値に戻す制御を行なう頻度が下がるため、作業能率が向上する。また、エンジン回転数をエンジンドロップから規定値に復帰させる際に生じる燃料の消費を抑えることができるので、燃費が向上する。
【0031】
(傾斜対応制御)
次に、圃場傾斜対応制御の例を説明する。
圃場傾斜対応制御は、移動走行において、圃場傾斜に基づいて無段変速装置8aの変速比およびエンジン7の回転を制御するものであり、図6のブロック図に示すように、機体の前後方向の傾斜を検出する傾斜検出部材である傾斜センサ1sを設けて前後傾斜に基づいてスロットル7aおよびトラニオン8bの開度を制御可能に構成し、図7のフローチャートに示すように、機体が前後方向に水平のときの傾斜角を0°、登り角度を正の傾斜角、下り角度を負の傾斜角とし、傾斜検出部材1sによって検出される機体傾斜角の区分判定に基づき(S21,S21a)、登り傾斜を検出するとエンジン回転数を増加(S22a〜S22c)させるとともにトラニオン開度を減少(S22d,S22e)させ、また、下り角度を検出するとエンジン回転数を減少(S23a〜S23c)させるとともにトラニオン開度を減少(S23c,S23e)させ、そして、略水平であることを検出するとエンジン回転数を減少(S24a〜S24c)させるとともにトラニオン開度を増加(S24d,S24e)させる制御処理を構成する。
【0032】
上記制御処理構成により、傾斜地を登りながら走行する際に走行速度を低速にしつつトルクを高めることができるので、坂道を登り切れなくなることが防止でき、また、傾斜地を下りながら走行する際に極低速且つ高トルクで走行することから、坂道を滑り降りることを防止して作業の安全性が向上することができ、そして、平地を走行する際に低トルクで高速走行することができるので、燃料消費が抑制され、燃費を向上することができる。
【0033】
(ハンドル角対応制御)
次に、ハンドル角対応制御の例を説明する。
、ハンドル角対応制御は、ハンドル角に基づいて無段変速装置8aの変速比およびエンジン7の回転を制御するものであり、図8のブロック図に示すように、ハンドル4にポテンショメータ等の切角検出部材4sを設けて構成し、図9のフローチャートに示すように、検出された切角の判定(S31a,S31b)によって所定値以上であれば、車速判定(S32a,S32b)により検出車速が一定値以上の場合にスロットル開度を減少制御(S33a,S33b)して減速し、その車速範囲内でトラニオン8bを制御して操舵補助機構4aの作動油圧を増加する制御処理(S34a〜S34c)を構成する。
【0034】
上記制御処理構成により、機体旋回時の走行速度が所定速度以上の場合にスロットル開度を減少させて走行速度を低下させることにより、旋回軌跡が乱れることを防止できるので、旋回後に次の植付位置に機体を合わせることができ、苗の植付精度が向上する。
また、旋回時の走行速度が所定速度未満になると、トラニオン開度を増加させて静油圧無段変速装置8aの送油量を増やす構成としたことにより、操舵補助機構4aによって操舵補助力が増加され、軽い力でハンドル操作ができるので、作業者の労力が軽減される。
【0035】
(作業座席)
次に作業座席の構造について説明する。
作業座席11の背もたれ部12は、図10(a)の見取図に示すように、両肩部12a,12aを突出してその間にヘッドレスト12bをファスナー等により着脱可能に取付け、また、作業座席11の座面13は、図10(b)の動作側面図に示すように、背もたれ部12がハンドル4に干渉するまで回動可能に支軸13aによって軸支して構成し、ヘッドレスト12bを外して背もたれ部12を倒すと、ハンドル4が直進状態であれば、図10(c)の見取図に示すように、背もたれ部12の両肩部12a,12aによってハンドル4が拘束されることから、植付作業走行を停止することなく、植付装置6への苗補給が可能となる。
【0036】
(多目的田植機)
次に、多目的田植機のエンジン制御について説明する。
多目的田植機のアタッチメントで溝切機を取付けた場合は、植付部の装着時よりEFi噴射量を減らし、また、除草機を取付けた場合は、植付部の装着時よりEFi噴射量を増やすようにエンジンを制御する。この場合、装着したアタッチメントの種類をカプラの付け替えで検知することにより、アタッチメントの重量や負荷に応じた適正なエンジン制御が可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1 苗移植機
1s 傾斜検出部材
2 前輪(走行装置)
3 後輪(走行装置)
3s 車速検出部材
4 ハンドル
4a 操舵補助機構
4s ハンドル切角検出部材
6 植付装置
6a 昇降リンク機構
6s 昇降位置検出部材
7 エンジン
7a スロットル
7s 回転数センサ(回転検出装置)
8 トランスミッション
8a 油圧式無段変速装置
8b トラニオン
8s トラニオン位置センサ
C 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場走行可能に機体を支持する走行装置(2,3)と、スロットル(7a)の開度制御により回転調節可能なエンジン(7)と、トラニオン(8b)の開度制御によりエンジン動力を無段変速伝動する油圧式無段変速装置(8a)と、昇降調節可能な植付装置(6)とを設けた苗移植機において、
上記エンジン(7)の回転数を検出する回転検出装置(7s)と、トラニオン(8b)の開度およびスロットル(7a)の開度を制御する制御装置(C)とを設け、エンジン回転数の急激な減少を検出すると回転数が規定値に回復するように、制御装置(C)によりトラニオン(8b)およびスロットル(7a)の少なくとも一方を制御することを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記制御装置(C)は、回転検出装置(7s)がエンジン回転数の急減を検出した場合にスロットル(7a)の制御によってエンジン回転を増加させ、スロットル(7a)が最大開度に達したときにエンジン回転数が規定値に回復するまでトラニオン(8b)の制御によって減速伝動することを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記トラニオン(8b)の開度を検出するトラニオン位置センサ(8s)を設け、エンジン回転数の急減を検出したときにトラニオン開度を記憶し、エンジン回転数が規定値に復帰した時点で、記憶した開度までトラニオン(8b)を制御することを特徴とする請求項2記載の苗移植機。
【請求項4】
前記植付装置(6)の昇降位置検出部材(6s)を設け、検出した昇降位置が所定値以上の場合にトラニオン(8b)制御して減速伝動することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機。
【請求項5】
前記機体の前後方向の傾斜角度を検出する傾斜検出部材(1s)を設け、検出した傾斜角度に応じて、検出角度が前上がりの場合にスロットル(7a)の開度を増加するとともにトラニオン(8b)の開度を減少させ、検出角度が後上がりの場合にスロットル(7a)の開度を減少するとともにトラニオン(8b)の開度を減少させ、検出角度が略水平の場合にスロットル(7a)の開度を減少するとともにトラニオン(8b)の開度を増加する制御を行なうことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の苗移植機。
【請求項6】
機体操舵用のハンドル(4)と、ハンドル切角検出部材(4s)と、前記油圧式無段変速装置(8a)から受ける作動油により操舵力を補助する操舵補助機構(4a)と、車速検出部材(3s)とを設け、ハンドル切角が所定値以上の場合について、検出車速に基づくスロットル(7a)の開度制御によって一定車速まで減速し、検出車速が一定値未満の範囲でトラニオン(8b)の開度制御により油圧式無段変速装置(8a)の送油量を増加することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−17422(P2013−17422A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153260(P2011−153260)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】