説明

苦渋味が抑制された高香味茶葉及びその調製品

【課題】茶本来の香味を保持しつつ、茶葉に含まれるポリフェノール由来の苦渋味を減少させ、該茶葉或いは該茶葉の抽出液を用いて、苦渋味の抑制された、高香味の容器詰め茶飲料或いは茶入り食品を製造する方法を提供すること。
【解決手段】乾燥茶葉に対し、茶葉重量の0.5〜4倍の水を加えてから、30℃以上、70℃以下の温度で1〜40時間、加温処理をし、苦渋味を抑制した高香味粉砕茶葉を製造する。本発明のポリフェノールの苦渋味の減少方法は、添加物等の添加に拠らない処理であるため、茶葉本来の香味を保持することができ、該茶葉を用いて茶飲料や茶入り食品を調製した場合に、茶葉本来の香味を生かした茶飲料或いは茶入り食品を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苦渋味を抑制した高香味茶葉、及び該高香味茶葉を用いて調製した茶抽出液及び濃縮茶エキス等の調製品、更には、該茶抽出液及び濃縮茶エキス等を用いて調製した容器詰め茶飲料又は茶入り食品に関する。特に、紅茶葉、烏龍茶葉、又は緑茶葉等の乾燥茶葉を、特定の水分条件で、加温処理することにより、茶葉の苦渋味を抑制した高香味茶葉を調製し、該高香味茶葉を用いて、苦渋味が抑制された高香味の容器詰め茶飲料又は茶入り食品等を製造することに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリフェノール類の健康機能が着目されており、それらを高濃度に含む飲料が開発されている。しかし、ポリフェノール類は苦渋味が強いので濃度を高めるにしたがって、苦渋味が強くなり飲み辛くなる。甘味を強くすれば、ある程度苦渋味を抑制することは可能だが、甘味が強くなると、飲料本来の味覚が薄れ、また、茶類を初めとするポリフェノールが有する健康感を損なってしまうことにもなる。
【0003】
そこで、従来より、ポリフェノールの苦渋味を低減する種々の方法が提案されている。しかしながら、従来提案されているポリフェノール類の苦渋味の低減化方法は、これを茶飲料等に適用した場合には、飲料本来の味覚への影響があって、ポリフェノールの苦渋味を低減し、かつ、飲料本来の味覚を保持した飲料とすることが難しく、また、茶入り食品の製造等に用いられる茶葉に適用して、茶葉自体の苦渋味を低減する方法としては適用することは難しいという面もあった。したがって、従来のポリフェノールの苦渋味を低減する方法は、容器詰め茶飲料や、茶入り食品の製造の場合に適用して、飲料や食品の苦渋味を低減する方法としては、必ずしも満足のいくものではなかった。
【0004】
従来のポリフェノールの苦渋味を低減する方法としては、例えば、特開平10−4919号公報、特開平3−168046号公報、特開2006−115722号公報には、緑茶等のカテキンに対してサイクロデキストリンを含有せしめることにより、飲料等の苦渋味を低減することが開示されている。この方法により、飲料等の苦渋味が低減され、結果としてカテキン類の大量摂取が可能になることが示されているが、ここで使用しているサイクロデキストリンは、苦渋味を抑えることは可能なものの、香り成分までも包接してしまうため、香り立ちが弱くなり、この方法をポリフェノール類を高濃度に含む飲料等に適用した場合には、飲料本来の香味が失われる恐れがある。
【0005】
また、特開2006−67895号公報、特開2006−136244号公報、特開2006−174748号公報には、シクロデキストリン(サイクロデキストリン)に、シクロフラクタン、重合度50〜5000のグルカン或いはソーマチン等をそれぞれ配合したものを茶抽出物に添加して、ポリフェノールの苦渋味を抑制する方法が開示されている。しかし、該方法も、シクロデキストリンを用いることによって、上記と同じ問題があり、また、配合成分により、茶抽出物自体の味への影響があって、茶本来の香味を保持させることが難しいという問題がある。
【0006】
更に、特開2006−42625号公報、特開2006−42728号公報には、グルタミン酸や、グルタミナーゼを添加して、茶抽出液のグルタミン酸含量を高め、カテキンの渋味を抑制する方法が、特開平7−274829号公報、特開平11−253102号公報には、茶飲料の製造に際して、糖アルコールを添加して、茶の苦渋味を改善する方法が、特開2006−280254号公報には、分枝構造を有する3〜4糖類の糖類を添加して、カテキン類の苦渋味を抑制する方法がそれぞれ開示されている。しかし、これらはいずれも添加物を添加するものであるので、茶飲料等の調製に際して、茶本来の味を保持させて、その香味を調整することが難しいという問題がある。
【0007】
また、茶葉の貯蔵管理により、茶葉の苦渋味を低減する方法が開示されている。すなわち、特開2001−145456号公報には、荒茶を、低酸素雰囲気下、貯蔵温度10℃〜20℃の温度で貯蔵し、茶の苦渋味を低減する方法が開示されている。しかしながら、この方法は、あくまでも、荒茶の貯蔵における条件を管理するものであり、貯蔵によって出てくる荒茶の苦渋味を低減するもので、茶葉自体の苦渋味を積極的に除去しようとするものではない。
【0008】
このように従来、ポリフェノールの苦渋味を低減する種々の方法が提案されているが、容器詰め茶飲料や、茶入り食品の製造に際して、添加物等の添加によらず、茶葉本来の香味を保持して、茶葉に含有されるポリフェノール類の苦渋味を低減化する方法は、開示されていない。
【0009】
【特許文献1】特開平3−168046号公報。
【特許文献2】特開平7−274829号公報。
【特許文献3】特開平10−4919号公報。
【特許文献4】特開平11−253102号公報。
【特許文献5】特開2001−145456号公報。
【特許文献6】特開2006−42625号公報。
【特許文献7】特開2006−42728号公報。
【特許文献8】特開2006−67895号公報。
【特許文献9】特開2006−115722号公報。
【特許文献10】特開2006−136244号公報。
【特許文献11】特開2006−174748号公報。
【特許文献12】特開2006−280254号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、茶葉を添加物等に拠らない処理によって、茶本来の香味を保持しつつ、茶葉に含まれるポリフェノール由来の苦渋味を減少させ、該茶葉或いは該茶葉の抽出液を用いて、苦渋味の抑制された、高香味の容器詰め茶飲料或いは茶入り食品を製造する方法を提供することにある。特に、本発明の課題は、茶葉の香味を変性せずに、苦渋味を減少させ、該茶葉茶由来のポリフェノールを高濃度で含んでいても、苦渋味を感じにくい飲食品を調製することができる原料茶葉を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討する中で、乾燥茶葉に対し、所定の量の水を加えて、所定温度で所定時間加温処理を行うことによって、茶に含まれるポリフェノールの苦渋味を減少させ、苦渋味の抑制された茶葉を製造することが可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、乾燥茶葉に対し、茶葉重量の0.5〜4倍の水を加えてから、30℃以上、70℃以下の温度で1〜40時間、加温処理をし、苦渋味を抑制した高香味茶葉を製造することからなる。本発明のポリフェノールの苦渋味の減少方法は、添加物等の添加に拠らない処理であるため、茶葉本来の香味を保持することができ、該茶葉を用いて茶飲料や茶入り食品を調製した場合に、茶葉本来の香味を生かした茶飲料或いは茶入り食品を製造することができる。
【0012】
本発明において、原料茶葉として用いる乾燥茶葉は、未粉砕の乾燥茶葉を用いることができるが、10メッシュパス画分50重量%以上の粉砕度の乾燥粉砕茶葉を用いることが好ましく、20メッシュパス画分が50重量%以上の粉砕度の乾燥粉砕茶葉のものが特に好ましい。本発明において、特に好ましい加温処理の条件としては、40℃〜70℃で8〜20時間の加温処理を挙げることができ、該加温処理を行った後に、90℃〜100℃で10〜30分間の加熱処理を併用することができる。また本発明においては、加温処理の際にアスコルビン酸もしくはアルコルビン酸ナトリウムを共存させることができる。
【0013】
本発明の加温処理により、苦渋味を抑制した高香味茶葉を製造することができる。本発明の方法によって製造される高香味茶葉は、熱水で抽出し茶抽出液とするか、或いは、該茶抽出液を更に濃縮して濃縮茶エキスとして調製することができる。更に、本発明においては、該茶抽出液若しくは濃縮茶エキスを用いて、茶本来の香味をそのまま保持し、しかも苦渋味が抑制された容器詰め茶飲料又は茶入り食品を製造することができる。本発明の苦渋味が抑制された容器詰め茶飲料又は茶入り食品の製造方法は、高濃度のポリフェノールを含んでいる飲食品の製造方法にも適用することができ、該方法により、高濃度のポリフェノールを含んでいても摂取しやすい飲食品の製造が可能となる。また、本発明の高香味茶葉の製造方法は、原料乾燥茶葉として、紅茶葉、烏龍茶葉、及び緑茶葉のいずれの乾燥茶葉にも適用することができ、該方法により苦渋味を抑制した高香味茶葉を製造することができる。
【0014】
すなわち、具体的には本発明は、(1)乾燥茶葉に対し、茶葉重量の0.5〜4倍の水を加えてから、30℃以上、70℃以下の温度で1〜40時間、加温処理をしたことを特徴とする苦渋味を抑制した高香味茶葉の製造方法や、(2)乾燥茶葉が、20メッシュパス画分50重量%以上の粉砕度の粉砕乾燥茶葉であることを特徴とする上記(1)記載の高香味茶葉の製造方法や、(3)乾燥茶葉を、40℃〜70℃で8〜20時間加温処理を行った後に、90℃〜100℃で10〜30分間加熱処理をすることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の高香味茶葉の製造方法からなる。
【0015】
また、本発明は、(4)加温処理の際に、アスコルビン酸若しくはアルコルビン酸ナトリウムを共存させることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の高香味茶葉の製造方法や、(5)上記(1)〜(4)のいずれか記載の高香味茶葉の製造方法によって製造された苦渋味が抑制された高香味茶葉や、(6)上記(5)記載の高香味茶葉を熱水で抽出し茶抽出液を得るか、或いは、該茶抽出液を更に濃縮して濃縮茶エキスを得るかして、製造されたことを特徴とする苦渋味が抑制された高香味茶抽出液若しくは高香味濃縮茶エキスや、(7)上記(6)記載の茶抽出液若しくは濃縮茶エキスを用いて製造された苦渋味が抑制された容器詰め茶飲料又は茶入り食品からなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、茶葉を添加物等に拠らない処理によって、茶本来の香味を保持しつつ、茶葉に含まれるポリフェノール由来の苦渋味を減少させ、高香味の茶葉を製造することができ、該茶葉或いは該茶葉の抽出液を用いて、茶本来の香味を保持し、しかも、苦渋味の抑制された、高香味の容器詰め茶飲料或いは茶入り食品を提供することができる。本発明の方法は、高濃度のポリフェノールを含んでいる飲食品の製造の場合にも適用することができ、高濃度のポリフェノールを含む、健康志向の飲食品の製造に適用して、香味に優れた飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、紅茶葉、烏龍茶葉、又は緑茶葉等の乾燥茶葉を、該乾燥茶葉に対し、茶葉重量の0.5〜4倍の水を加えてから、30℃以上、70℃以下の温度で1〜40時間、加温処理をしたことを特徴とする苦渋味を抑制した高香味茶葉、該高香味茶葉を熱水で抽出した茶抽出液、或いは、該茶抽出液を更に濃縮した濃縮茶エキス、及び茶抽出液若しくは濃縮茶エキスを用いて製造された苦渋味が抑制された容器詰め茶飲料又は茶入り食品、及びその製造方法からなる。
【0018】
(茶葉)
本発明で用いる茶葉はカメリア・シネンシスから得られた茶葉であれば、いわゆる不発酵茶(緑茶)、半発酵茶(烏龍茶)、発酵茶(紅茶)いずれも対象となる。特に紅茶に適用して、優れた効果を奏することができる。本発明で用いる茶葉は、未粉砕の茶葉でも良いが、粉砕乾燥茶葉を用いることが好ましい。ここでいう「乾燥茶葉」とは、水分含量約6重量%以下の一般的に流通している状態の茶葉を指す。本発明において、粉砕乾燥茶葉の粉砕度としては、10メッシュパス画分が50重量%以上であることが好ましく、20メッシュパス画分が50重量%以上を占める茶葉が特に好ましい。更に、20メッシュパス画分85重量%以上であることが最も好ましい。粉砕の際には通常用いられる、ハンマーミル、カッターミル、高速回転衝撃式粉砕機などの粉砕機が使用できる。用いる粉砕機としては、乾式粉砕機が好ましいが、規定の水分を添加した後、湿式粉砕機で粉砕することも可能である。
【0019】
(添加水分)
本発明において、添加する水分量としては、茶葉重量の0.5倍〜4倍が望ましく、1〜2倍程度が最も好ましい。この範囲を外れると効果が弱いか、全く効果が見られない。本発明の加温処理に際して、アルコルビン酸若しくはアスコルビン酸ナトリウムを加えると、反応が効果的に進む。その量は多い方が好ましいが、10重量%を超えると香味の点で好ましくない。より好ましくは茶葉重量の3〜8重量%程度である。
【0020】
(加温処理条件)
本発明における加温処理の条件としては、30℃以上、70℃以下の温度条件であり、それ以下であると効果が望めないし、それ以上だと香味の劣化が目立つ。好ましくは50℃以上60℃以下である。
【0021】
(加温・加熱処理時間)
本発明における加温処理時間は、長ければ長いほど効果的であるが、長すぎると香味劣化がおこる。温度との兼ね合いで決定されるが、通常、1〜40時間でよく、好ましくは8〜20時間程度である。特に、50℃で15〜20時間程度が最も好ましい。本発明においては、上記加温処理の後、90℃〜100℃で10〜60分間の高温での加熱処理をすることが望ましい。好ましくは100℃10〜30分間程度である。この処理により、本発明の加温処理の効果を一段と高めることができる。
【0022】
(加温・加熱処理後の茶葉の処理)
本発明の製造方法で調製された高香味茶葉は、抽出液の製造に際して、そのまま抽出してもよいが一旦乾燥してもよい。乾燥には、真空乾燥機、コニカルドライヤー、凍結乾燥機など通常の装置を適宜使用できる。
【0023】
(抽出、容器詰め飲料の調製、茶エキスの製造)
茶葉の抽出方法については、特に制限はなく、工業レベルでは抽出タンクやニーダーなどで茶葉重量の10倍から100倍の水若しくは温水で5〜10分間程度で抽出する。抽出後、固液分離して茶葉を除去したのち、遠心分離工程を経て抽出液を得る。抽出液は必要に応じて希釈し、他の原材料と調合した後に、殺菌−容器充填、或いは容器充填−殺菌を行ない、容器詰め茶飲料を製造する。また、抽出液はそのまま、若しくは濃縮した後に、他の原材料と調合の上、殺菌−容器充填、或いは容器充填−殺菌を行なうことで茶エキスを製造することができる。この茶エキスは飲料或いはその他の飲食品を製造する際に原材料として使用することができる。
【0024】
(タンニン量)
本発明の実施例等において、茶類のポリフェノール量を評価する際の基準である酒石酸鉄法(中林敏郎他著「緑茶・紅茶・烏龍茶の化学と機能」弘学出版、137ページ参照)を用いて測定した値を指す。すなわち、液中のポリフェノールと酒石酸鉄試薬を反応させて生じた紫色成分を吸光度(540nm)測定することにより、没食子酸エチルを標準物質として作成した検量線を用いて定量する。最終的に定量値を1.5倍したものを「タンニン量」とする。飲料の場合タンニン量が60mg/100ml以上だと苦渋味を強く感じるようになるので本発明の茶葉の苦渋味低減効果が明確になる。好ましくは100mg/100ml以上、最も好ましくは120mg/100ml以上である。
【0025】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
[実施例1−5、比較例1−4]
表1に示した条件で紅茶葉(ディンブラ種;10メッシュパス画分50重量%以上)10gに対して加温処理と加熱処理をおこなった。なお粉砕処理をおこなった茶葉は20メッシュパス画分は85重量%以上になった。水の配合率は、乾燥茶葉重量あたりである。処理は水分が飛ばないように密閉した状況下でおこなった。加温処理は、恒温槽内でおこなった。
【0027】
【表1】

【0028】
<評価例>
得られたそれぞれの紅茶葉に対して 95℃の熱水300mlを加え、時々攪拌しながら8分間抽出した。メッシュで茶葉を固液分離したのちに液温が10℃になるまで冷却した後、遠心分離に供して清澄な抽出液を得た。これらの抽出液のタンニン量が120mg/100mlに、またpHが6になるようにアスコルビン酸および重曹を用いて、希釈、調整した。これらの抽出液を熟練したパネルによる官能評価に供した。苦渋味の評価については後引き(収れん性の不快感)の強度、後切れの悪さを比較例1を10点として総合評価した。つまり、点数が低いほど苦渋味の低減効果があることになる。そのほかのコメントも集計した。結果を表2に示す。表2の結果に示されるように、本発明の加温処理茶葉の苦渋味低減効果が確認できた。
【0029】
【表2】

【0030】
[実施例6−17、比較例5]
上記実施例と同様にして、表3の条件で加温処理と加熱処理を行なった。なお、アスコルビン酸とアスコルビン酸ナトリウムの配合率も紅茶葉重量に対しての値である。
【0031】
【表3】

【0032】
<評価例>
実施例1−5と同様に抽出液を調製して苦渋味評点をとった。この際、加温処理の際にアスコルビン酸若しくはアルコルビン酸Naを使用した実施例については、処理時に使用した分を考慮して、調合時の使用量を減らすことで最終的に等量のアスコルビン酸量になるように調整した。結果を表4に示す。
【0033】
【表4】

【0034】
[実施例18、比較例6]
茶葉品種をヌワラエリアに変えた以外は実施例6および比較例2と全く同様にして実施例18および比較例6の紅茶葉を得た。粉砕処理により20メッシュパス画分70重量%以上であった。それを同様に抽出液を調製して官能評価で評価したところ、比較例6の苦渋味評点10.0点に対し、実施例18は6.0点であり、苦渋味低減効果が確認された。品種が異なる茶葉でも効果が確認できた。
【0035】
[実施例19]
紅茶葉(ディンブラ)を粉砕して20メッシュパス画分90%重量以上の粉砕紅茶葉を得た。その100gに対して、アスコルビン酸4gを含む200mlの水を加えた。均一になるように混合したのちに、密閉容器に入れて50℃で20時間放置した。さらにその後、100℃、30分間の処理をおこなって、本発明の処理茶葉を得た。この茶葉全量に対して、3000gの熱水(90℃)を加え、時々攪拌しながら6分間抽出をおこなった。抽出後、固液分離により茶殻を除き、液温が10℃以下になるまで冷却した。冷却した抽出液を遠心分離した後、最終濾過をおこない清澄な紅茶抽出液を得た。この抽出液を用いてタンニン量が120mg/100mlに、更にはpHが6になるように(アスコルビン酸と重曹を使用)、調合液を調製した。
【0036】
この調合液を液温が90℃になるまで昇温したのちに、金属缶に190gずつ充填して窒素を吹き込みながら缶蓋を巻き締めした。これをレトルト殺菌して紅茶飲料を作成した。1週間常温に置いた後に、官能評価をおこなった。高ポリフェノール含量であるのに係らず未処理の紅茶葉を使用したときに比べて、苦渋味が圧倒的に少なく飲みやすい香味であった。
【0037】
[実施例20−24、比較例7−11]
<原料茶葉の処理>
粉砕した緑茶葉及び烏龍茶それぞれ10gを、表5に示す条件で処理し、以下の評価試験に供した。表中、「粉砕」の項目中、「粗」は、10メッシュパス画分、50重量%以上の粉砕度のものを示し、「有」は、20メッシュパス画分85重量%以上の粉砕度のものを示す。
【0038】
【表5】

【0039】
<評価例>
75℃の熱水300mlを加え、時々攪拌しながら5分間抽出した。茶葉を固液分離したのちに液温が10℃になるまで冷却した後、遠心分離に供して清澄な抽出液を得た。これらの抽出液のタンニン量が80mg/100mlに、またpHが6になるようにアスコルビン酸および重曹を用いて希釈,調製した。この際、加温処理の際にアスコルビン酸を使用した実施例については、処理時に使用した分を考慮して最終的に等量のアスコルビン酸量になるように調整した。結果を表6に示す。官能評価は、それぞれの無処理品である比較例を10点として苦渋味評点をつけた。
【0040】
【表6】

【0041】
[実施例25−26、比較例12−13]
<原料茶葉の処理>
各種茶葉10gずつを、表7に示す条件で処理して、以下の評価試験に供した。使用した茶葉は、いずれも未粉砕で10メッシュオン画分は70重量%以上であった。
【0042】
【表7】

【0043】
<評価例>
上記評価試験の評価を、「実施例20−24、比較例7−11」における評価方法に準じて評価した。官能評価は、それぞれの無処理品である比較例を10点として苦渋味評点をつけた。結果を表8に示す。
【0044】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥茶葉に対し、茶葉重量の0.5〜4倍の水を加えてから、30℃以上、70℃以下の温度で1〜40時間、加温処理をしたことを特徴とする苦渋味を抑制した高香味茶葉の製造方法。
【請求項2】
乾燥茶葉が、20メッシュパス画分50重量%以上の粉砕度の粉砕乾燥茶葉であることを特徴とする請求項1記載の高香味茶葉の製造方法。
【請求項3】
乾燥茶葉を、40℃〜70℃で8〜20時間加温処理を行った後に、90℃〜100℃で10〜30分間加熱処理をすることを特徴とする請求項1又は2記載の高香味茶葉の製造方法。
【請求項4】
加温処理の際に、アスコルビン酸若しくはアルコルビン酸ナトリウムを共存させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の高香味茶葉の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の高香味茶葉の製造方法によって製造された苦渋味が抑制された高香味茶葉。
【請求項6】
請求項5記載の高香味茶葉を熱水で抽出し茶抽出液を得るか、或いは、該茶抽出液を更に濃縮して濃縮茶エキスを得るかして、製造されたことを特徴とする苦渋味が抑制された高香味茶抽出液若しくは高香味濃縮茶エキス。
【請求項7】
請求項6記載の茶抽出液若しくは濃縮茶エキスを用いて製造された苦渋味が抑制された容器詰め茶飲料又は茶入り食品。