説明

茶園作業機の刈刃装置

【課題】 摘採、剪枝作業を行う茶園作業機の摘採装置のフレームにおいて、バリカン型の刈刃の脱着を容易にする。
【解決手段】 摘採、剪枝作業を行う茶園作業機の摘採装置のフレームにおいて、刈刃駆動部に設けた駆動側の繋合子と、バリカン型の刈刃を備えた刈刃セットに設けた被駆動側の繋合子の繋合、分離を可能にすることにより、茶園作業機の摘採装置のフレームから、駆動部を外すことなく、刈刃セットのみを分離可能となり、刈刃の脱着が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、帯状に植栽された茶畝に沿って走行しながら、茶枝葉の摘採、剪枝作業を行う茶園作業機の、摘採装置の刈刃の交換構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
茶園作業機の刈刃の交換構造に関しては、特許文献1、特許文献2、特許文献3などがある。又、刈刃駆動部を刈刃の中央に配置したものは、特許文献4がある。
【特許文献1】特開2001-169637号公報
【特許文献2】特開2001-190129号公報
【特許文献3】特開2003-023835号公報
【特許文献4】特開平11-318167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1、2で示すものは、往復運動をするバリカン型刈刃と、その刈刃を保持する刈刃ガイドが一体化となった刈刃セット側に、刈刃に往復運動を与えるクランク機構が設けてあり、クランク軸を回転させる動力となるモータは、摘採装置フレーム側に設けてある。クランク軸とモータ軸はカップリングで連結してある。従って、刈刃セットを摘採装置フレームから外すと、クランク機構は刈刃セット側に残り、モータは摘採装置フレーム側に残ることになる。特許文献3に示すものは、クランク機構とモータを組合せた往復駆動装置が、刈刃セット側と一体になっていて、刈刃セットと一緒に、往復駆動装置も摘採装置フレームから外れることになる。特許文献1、2、3に示すものは、往復駆動装置が刈刃の端に設けてある。一方、特許文献4に示すものは、往復駆動装置を刈刃の中央に配置してあるが、刈刃セットと摘採装置フレームを分離することは出来ない。
往復運動する刈刃は磨耗、破損するので、定期的に刈刃の交換、研磨の必要が生じる。このとき、刈刃セットを摘採装置フレームから外す必要があるが、往復駆動装置まで外す必要はない。
【0004】
この発明は、刈刃と刈刃ガイドを組合せた刈刃セットだけを、往復駆動装置を摘採装置フレーム側に残したまま、外すことが出来る刈刃装置を提供すること、さらに、往復駆動装置を刈刃の中央に配置した場合にも、適用可能な刈刃装置を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の第一手段は、茶畝を跨いだ門型の機体に、バリカン型の刈刃を備えた摘採装置を取り付け、茶畝に沿って走行しながら、摘採、剪枝作業を行う茶園作業機において、上記摘採装置は、バリカン型の刈刃セットと摘採装置フレームよりなるものであって、摘採装置フレームは刈刃セットの後方に取付けた案内板よりなり、刈刃駆動部を備えており、刈刃セットは左右に往復運動をするバリカン型の刈刃と、刈刃を摺動可能に保持する刈刃ガイドよりなるものであって、刈刃セットは摘採装置フレームと脱着自在であり、刈刃駆動部の駆動側の繋合子と、バリカン型刈刃の被駆動側の繋合子を、脱着自在に繋合させることにより、刈刃の駆動をさせるようにした茶園作業機の刈刃装置。
【0006】
第二手段は、第一手段のバリカン型刈刃の後方に突起を出し、刈刃駆動部の回転軸に偏心して設けてある円盤を、該突起で挟むようにして繋合させ、バリカン型刈刃に往復運動を伝えるようにした刈刃装置。
【0007】
第三手段は、第一手段のバリカン型刈刃の後方に突起を出し、刈刃駆動部に支点を中心として回動可能なレバーを設け、刈刃駆動部の回転軸に偏心して取付けてある円盤を、該レバーで挟むようにし、該レバーの他端に溝を設けて、該突起を繋合させ、バリカン型刈刃に往復運動を伝えるようにした刈刃装置。
【0008】
第四手段は、第一、第二、第三手段において、バリカン型刈刃の長手方向の中央部に、刈刃駆動部が配置されるようにした刈刃装置。
【発明の効果】
【0009】
バリカン型の刈刃を備えた茶園作業機は、近年乗用型が増え大型になっている。茶園での作業の状況に応じて、茶葉を刈る摘採用、茶樹の整枝をする剪枝用、など刈刃を交換する必要がある。また、刈刃は使用するに従って磨耗し切れなくなる。一定時間使用したら、新しい刈刃と交換し、磨耗した刈刃は研磨する必要が生じる。
【0010】
特許文献1,2,3などの発明により、比較的容易に摘採装置フレームから、刈刃セットを取外し、刈刃の交換が出来るようになっている。しかしこれらは、往復駆動装置まで外さねばならない構造となっている。
【0011】
手段1,2、3の発明により、本当に交換の必要な刈刃セットだけを、取外すことが可能となった。また手段4の発明により、往復駆動装置を中央に配置することの利点を持ったまま、刈刃の交換が出来るようになった。
【0012】
この発明により、交換用の刈刃セットは、往復駆動部を備えている必要がないので、構造が簡単になり、軽量化され、コストダウンになった。また、交換作業も、更に簡単に行うことが出来るようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は乗用型茶葉摘採機の正面図、図2は平面図、図3は側面図である。1は機体であって作業者が乗って、茶畝に沿って走行しながら、茶葉を摘採する。機体1の前部には摘採装置2が付いている。摘採装置2の後方には茶袋3が取付けてあり、摘採された茶葉は摘採装置2の前方から吹付ける風に吹き飛ばされて、茶袋3に収容される。
【0014】
図4は摘採装置の平面図、図5は正面図である。摘採装置2の前面には下側に向けて凹に湾曲した対をなす、バリカン型の刈刃4、4’が備えてある。刈刃4、4’は刈刃ガイド5で保持されて、左右に往復運動をする。5は刈刃駆動用の油圧モータである。6は往復駆動装置であり、油圧モータ5と回転軸7で繋げてあり、油圧モータ5の回転運動を往復運動に転換し、刈刃4、4’を駆動する。摘採装置2の中央部はU字型をした支柱8で支えてあり、両端は側面案内板9、底面は底板10で囲んである。摘採された茶葉は左右の案内板と底板に誘導されて、茶袋3に収容される。回転軸7には支柱8に茶葉が引っ掛かるのを防ぐ為に、払落し具11が付けてあり、回転軸7と一緒に回転する。
【実施例1】
【0015】
往復駆動装置6の第二手段を実施例1として、図6,7,8,9に示す。図6は詳細平面図であり、図7は図6から刈刃4、4’と刈刃ガイド17を組付けた刈刃セットの部分を、往復駆動部から引出した状態を示している。図8は図6の詳細断面図であり、図9は往復駆動装置のケースから、刈刃セットの部分を分離した状態を示す断面図である。12は上ケース、13は下ケースである。ケース内には円盤上14、円盤下15が回転軸7に偏心して固定してある。円盤上14と円盤下15は180度反対方向に偏心して、クランクを形成している。16は上下の円盤を固定する為の固定円盤である。円盤14と15の直径は同じ寸法である。偏心寸法の2倍だけ、刈刃4、4’は互いに反対方向に往復移動する。上下一対となったバリカン型の刈刃4、4’は、刈刃ガイド17に沿って一定の間隔で多数設けてある、刃押えボルト18によって、刈刃ガイド17に取付けられている。刃押えボルト18は、刈刃4、4’の往復運動を妨げないように、刈刃ガイド17に締付けてある。刈刃ガイド18はボルト19によって、上ケース12に固定される。ボルト19を外すことによって、刈刃セットを往復駆動装置6から離すことが出来る。20、21はそれぞれU字型の角であり、上側の刈刃4に角20が、下側の刈刃4’に角21が固着されている。U字型の角の内巾は円盤14,15の直径に合わせてある。U字型の角20,21を円盤14,15に合わせて、刈刃セットを往復駆動装置6に差込み組合せる。
【0016】
図10,11,12,13,でクランク軸7の回転と刈刃4、4’の動きの関係を説明する。実施例ではクランク半径7.5mm、刈刃移動寸法15mm、刈刃ピッチ30mmとする。図10は円盤14,15が、中心線上に前後に並んだ状態を示している。このとき、U字角は上下に重なっており、上刃と下刃は左右に15mmずれた状態である。説明し易くする為に図10,11,12,13では、上刃、下刃の位置を前後にずらして示してある。上刃にはa,b,c,下刃にはa',b',c',d',と記号を付ける。クランク軸7を右に90度回転させると、上刃a,b,c,は7.5mm左に移動し、下刃a',b',c',d',は右に移動し、上刃aとa'は重なり、他の刃もそれぞれ重なり合い図11の状態となる。更にクランク軸7を右に90度回転させると、上刃a,b,c,は右に戻り、下刃a',b',c',d',は左に戻り、図12の状態となる。更に更にクランク軸7を90度右に回転させると、そのまま、上刃a,b,c,は右に移動し、下刃a',b',c',d',は左に移動し、上刃aは下刃b’と重なり、図13の状態となる。更に右に90度回転すると図10の状態に戻る。この様なことを繰り返して刈刃4,4’は往復運動を繰り返して摘採作業を行う。
【実施例2】
【0017】
往復駆動装置6の第三手段を実施例2として、刈刃駆動側の繋合子と、バリカン型刈刃側の繋合子の関係を図14,15に示す。この実施例2はクランク軸7を刈刃から出来るだけ離し、中央の支柱8の中に入れる場合、利用できる。図14は実施例2の往復駆動部の詳細平面図、図15は図14の断面図である。
27は上ケース、28は下ケースである。バリカン型刈刃の長手方向の中央部には、上刃4には突起22が、下刃4’には突起23が設けてある。往復駆動部のケースの後部には支点ピン26が設けてある。この支点ピン26には上レバー24、下レバー25が嵌めてある。上レバー24、下レバー25の先端はU字型の溝になっており、上レバー24には突起22が、下レバーには突起23が繋合している。上下のレバーのほぼ中ほどには、楕円の孔が明けてあり、クランク軸7の円盤が、上レバー24には円盤14が、下レバー25には円盤15が、この孔の部分で嵌め合わせてある。
【0018】
クランク軸7を回転させると、レバー24、25は支点ピン26を中心として遥動し、レバーの先端は往復運動をする。レバー先端のU字溝に繋合している突起22、23を介して刈刃4、4’を往復運動させる。円盤14と円盤15は反対方向に偏心させてあるので、上刃4と下刃4’は反対方向に往復運動をする。この動作は実施例1で説明したものと同じである。ボルト19を外し、刈刃ガイド17と刈刃4,4’を組合せてある刈刃セットを手前に引き出すと、突起22、23とレバー24、25の繋合が外れ、刈刃セットを往復駆動部から外すことができる。組付けるときはこの逆の手順で、突起22,23をレバー24,25のU字溝に合せて、往復駆動部に差込み、ボルト19で固定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の刈刃装置を備えた茶園作業機の正面図。
【図2】茶園作業機の平面図。
【図3】茶園作業機の側面図。
【図4】摘採装置の平面図。
【図5】摘採装置の正面図。
【図6】実施例1で往復駆動装置6の詳細を示す平面図。
【図7】実施例1で往復駆動装置6のケースから、刈刃セットを引き抜いた状態を示す平面図。
【図8】実施例1で往復駆動装置6の詳細を示す断面図。
【図9】実施例1で往復駆動装置6のケースから、刈刃セットを引き抜いた状態を示す断面図。
【図10】刈刃の動きを示す往復駆動機構で円盤14が手前で円盤15が後ろの状態の説明図。
【図11】刈刃の動きを示す往復駆動機構で円盤14が左で円盤15が右の状態の説明図。
【図12】刈刃の動きを示す往復駆動機構で円盤14が後で円盤15が前の状態の説明図。
【図13】刈刃の動きを示す往復駆動機構で円盤14が右で円盤15が左の状態の説明図。
【図14】実施例2で往復駆動部6を示す詳細平面図。
【図15】実施例2で往復駆動部6の断面図
【符号の説明】
【0020】
1 機体
2 摘採装置
3 茶袋
4 刈刃上
4’ 刈刃下
5 油圧モータ
6 往復駆動装置
7 クランク軸
8 支柱
9 側面案内板
10 底板
11 払落し具
12 上ケース
13 下ケース
14 円盤上
15 円盤下
16 固定円盤
17 刈刃ガイド
18 刃押えボルト
19 ボルト
20 角(上)
21 角(下)
22 突起上
23 突起下
24 レバー上
25 レバー下
26 支点ピン
27 上ケース
28 下ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶畝を跨いだ門型の機体に、バリカン型の刈刃を備えた摘採装置を取り付け、茶畝に沿って走行しながら、摘採、剪枝作業を行う茶園作業機において、上記摘採装置は、バリカン型の刈刃セットと摘採装置フレームよりなるものであって、摘採装置フレームは刈刃セットの後方に取付けた案内板よりなり、刈刃駆動部を備えており、刈刃セットは左右に往復運動をするバリカン型の刈刃と、刈刃を摺動可能に保持する刈刃ガイドよりなるものであって、刈刃セットは摘採装置フレームと脱着自在であり、刈刃駆動部の駆動側の繋合子と、バリカン型刈刃の被駆動側の繋合子を、脱着自在に繋合させることにより、刈刃の駆動をさせることを特徴とした茶園作業機の刈刃装置。
【請求項2】
バリカン型刈刃の後方に突起を出し、刈刃駆動部の回転軸に、偏心して取付けてある円盤を、該突起で挟むようにして繋合させ、バリカン型刈刃に往復運動を伝えることを特徴とした請求項1記載の茶園作業機の刈刃装置。
【請求項3】
バリカン型刈刃の後方に突起を出し、刈刃駆動部に支点を中心として回動可能なレバーを設け、刈刃駆動部の回転軸に偏心して取付けてある円盤を、該レバーで挟むようにし、該レバーの他端に溝を設けて、該突起を繋合させ、バリカン型刈刃に往復運動を伝えることを特徴とした請求項1記載の茶園作業機の刈刃装置。
【請求項4】
バリカン型刈刃の長手方向の中央部に、刈刃駆動部が配置されるようにしたことを特徴とした請求項1、または請求項2、または請求項3記載の茶園作業機の刈刃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−228825(P2007−228825A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51656(P2006−51656)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000145116)株式会社寺田製作所 (90)
【Fターム(参考)】