説明

茶抽出液の製造方法

【課題】カラム式抽出機を用いて抽出時に閉塞することなく安定に茶抽出液を製造すること。
【解決手段】本発明の茶抽出液の製造方法は、カラム式抽出機内に装着された茶保持板上に、沈降度が異なる複数の茶原料を沈降度が低い順に仕込む第1の工程と、上記抽出機の下部又は上部より抽出用水を供給し、該抽出用水を上記茶原料と接触させる第2の工程と、茶抽出液を排出する第3の工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶抽出液の製造方法及び該茶抽出液を用いた容器詰茶飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者の嗜好の多様化により茶飲料の需要が拡大し、多種多様の商品が上市されているが、中でも複数の茶葉や穀物を原料とする茶飲料が注目されている。このような茶飲料の製造方法として、例えば、緑茶、玄米、麦等の抽出時間の異なる複数の茶原料の内、抽出時間の長いものから順に抽出用水に投入してバッチ抽出する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法は、茶原料の投入を複数回に分けて断続的に行うために作業が煩雑で負荷も大きく、また茶原料の投入作業中にも抽出が進行するため投入作業の振れにより一定の品質を確保し難いという問題がある。
【0003】
一方、抽出効率を向上させ、かつ高品質の茶抽出液の製造方法として、例えば、コーヒー抽出に用いられるシャワー式のカラム式抽出機を用いて茶抽出液を得る方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−310160号公報
【特許文献2】特開平7−23714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、カラム式抽出機内に複数の茶原料を仕込み、抽出用水を供給して茶抽出液の製造を検討したところ、茶原料の種類やその組み合わせにより茶原料が圧密化して抽出時に閉塞しやすくなり、安定して茶抽出液を製造することが困難になるという問題が生じた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、複数の茶原料を用いた抽出手段について種々検討したところ、カラム式抽出機内に所定の基準で複数の茶原料を仕込み、次いで抽出用水を供給し茶抽出液を排出することで、茶原料間に一定の空隙が確保され、その結果抽出時に閉塞することなく安定に茶抽出液を製造できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、カラム式抽出機内に装着された茶保持板上に、沈降度が異なる複数の茶原料を沈降度が高い順に仕込む第1の工程と、
上記抽出機の下部又は上部より抽出用水を供給し、該抽出用水を上記茶原料と接触させる第2の工程と、
茶抽出液を排出する第3の工程
を含む、茶抽出液の製造方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、上記方法により製造した茶抽出液を、そのまま又はその希釈液を容器に充填してなる容器詰茶飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カラム式抽出機を用いて抽出時に閉塞することなく安定にかつ効率よく茶抽出液を製造することが可能になる。また、当該茶抽出液を用いることで、香味及び甘みが豊富で、風味の良好な飲みやすい容器詰茶飲料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】カラム式抽出機に茶原料を仕込んだ状態を模式的に示す図である。
【図2】抽出機下部から抽出用水を上昇流で供給している状態を模式的に示す図である。
【図3】抽出機上部から抽出用水をシャワーしながら茶抽出液を抽出機下部から抜き出している状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[茶抽出液の製造方法]
本発明の茶抽出液の製造方法は、第1の工程、第2の工程及び第3の工程を含むことを特徴とする。以下、各工程について説明する。
【0012】
(第1の工程)
第1の工程は、カラム式抽出機内に装着された茶保持板上に、沈降度が異なる複数の茶原料を沈降度が高い順に仕込む工程である。
カラム式抽出機としては、内部に茶原料を保持するための茶保持板と、抽出用水の供給口と、茶抽出液の排出口とを備えるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、抽出機の上部から抽出用水を供給するタイプ、下部から抽出用水を供給するタイプ、あるいは双方から抽出用水を供給可能なタイプ等が利用できる。
【0013】
具体的には、図1に示す閉鎖型抽出カラムが好適に使用される。図1に示す抽出機1は、下部から抽出用水を供給するためのバルブ2と、上部から抽出用水を供給するためのシャワーノズル3と、茶抽出液を排出するためのバルブ4とを備えている。シャワーノズル3は、抽出用水が茶原料上面に対して均一に噴霧されるようにノズル角度、高さが調整できる機構を有するものが好ましい。このようなカラム式抽出機としては、例えば、コーヒー抽出機SK−EXT10、SK-EXT−15(三友機器(株)製)や、多機能抽出装置TEX1512、TEX2015((株)イズミフードマシナリ製)等が挙げられる。
抽出機1内には、茶原料を保持するための茶保持板5が装着されている。茶保持板5としては茶原料と茶抽出液とを分離できるものであれば特に限定されないが、金網(メッシュ)が好ましく、フラット、円錐状、角錐状等の形状のものを用いることができる。また、金網のメッシュサイズは、実質的に仕込んだ茶原料と茶抽出液との分離の点から、18〜100メッシュであることが好ましい。
【0014】
本工程に使用する茶原料としては、沈降度が異なる2種以上の茶原料を任意に組み合わせて使用することが可能であるが、沈降度が異なれば同一種類の茶原料を使用してもよい。ここで、本明細書において「沈降度」とは、下記の方法により測定されるものをいう。
(1)容量500mLのメスシリンダーに茶原料50gを投入し、続いて90℃の熱水を容量500mLになるまで投入する。
(2)その状態を30分間保持して茶原料を膨潤させた後、湯を捨て、再び90℃の熱水を200mL投入する。
(3)茶原料が全て沈降している場合には、茶葉が露出しないように茶原料上面よりも上方の水層をピペットで取り除いた後、メスシリンダーの目盛により茶原料の体積(A)を計測する。他方、少なくとも一部の茶原料が浮遊している場合には、茶原料上面と熱水との高さが同じになるように茶葉が露出しないように水層をピペットで取り除いた後、メスシリンダーの目盛により茶原料の体積(A)を計測する。
(4)続いてメスシリンダーをフィルムで蓋をし、メスシリンダーを上下に3回振とうした後、200mLを投入し、静置する。
(5)静置から30分経過後に、メスシリンダーの目盛により完全に沈降している茶原料の体積(B)を計測する。
(6)計測した体積(A)及び(B)から、比(B)/(A)(%)を沈降度として求める。
【0015】
茶原料としては、例えば、緑茶、烏龍茶、紅茶、米類、麦類、豆類、ソバ類、雑穀類等が挙げられる。中でも、風味の観点から、緑茶、烏龍茶、米類、麦類、豆類、雑穀類が好ましい。ここで、本明細書において「緑茶、烏龍茶、紅茶」とは、飲用に供される茶抽出液ではなく、該茶抽出液を得るための茶原料を意味する。
また、香味及び甘みの増強、風味バランスの観点から、茶原料として、米類、麦類、豆類、ソバ類及び雑穀類から選択される少なくとも1種の穀物を含むことが好ましく、穀物のみを用いてもよい。
穀物原料は焙煎したものでも、α化処理したものでも、発芽させたものでもよい。更に、穀物原料として、粉砕装置により粉砕したものを使用してもよい。なお、茶原料の沈降度は、粉砕方法等により調整することが可能であるが、使用する茶原料の沈降度を本工程の実施前に測定し仕込み順序を決定する。この場合において、沈降度が同一である茶原料の仕込み順序は、適宜選択することができる。
【0016】
緑茶としては、Camellia属、例えば、C.sinensis、C.assamica、やぶきた種、又はそれらの雑種から得られる茶から製茶された、煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜入り茶等が挙げられる。緑茶は、茶葉だけなく、茎茶、棒茶、芽茶を使用することができる。茎茶としては茶の茎の部分であって当該技術分野において通常茎茶として用いられているものが挙げられる。また、棒茶としては茶葉の軸や茎の部分であって当該技術分野において通常棒茶として用いられているものが挙げられる。更に、芽茶としては未だ葉にならない柔らかい芽の部分であって当該技術分野において通常芽茶として用いられているものが挙げられる。なお、茶葉、茎茶及び棒茶は、火入れ加工が施されていてもよい。
また、烏龍茶又は紅茶としては、Camellia属、例えばC.sinensis、C.assamica、やぶきた種、若しくはそれらの雑種から得られる茶から半発酵又は発酵工程を経て製茶されたものが挙げられる。
米類としては、例えば、玄米等が挙げられ、麦類としては、例えば、大麦、ハト麦、小麦等が挙げられる。また、豆類としては、例えば、大豆、黒豆、ソラマメ、インゲン豆、小豆、ササゲ、落花生、エンドウ、リョクトウ等が挙げられ、ソバ類としては、例えば、ソバ、ダッタンソバ等が挙げられる。さらに、雑穀類としては、例えば、トウモロコシ、白ゴマ、黒ゴマ、アワ、ヒエ、キビ等が挙げられる。
本工程においては、茶原料として、緑茶、玄米、大麦、ハト麦、大豆、トウモロコシが特に好適に使用される。
【0017】
さらに、本工程においては、風味調整及び健康機能強化のために、他の茶原料を配合してもよい。このような茶原料としては、例えば、生薬、ハーブが挙げられる。具体的には、モロヘイヤ、ドクダミ、霊芝、明日葉、アマチャヅル、イチョウ葉、ウコン、延命草、柿の葉、ギムネマ・シルベスタ、グアバ葉、桑の葉、甜葉、杜仲、ハスの葉、バナバ、ハブ、ビワの葉、マテ、ルイボスティー、キヌア、大麦若葉、チンピ、カモミール、ハイビスカス、ペパーミント、レモングラス、レモンピール、レモンバーム、ローズヒップ、ローズマリー等が挙げられる。
【0018】
本工程においては、複数の茶原料を沈降度が高い順に茶保持板上に仕込むが、例えば、図1に示すように、第1の茶原料6を仕込み、高さが均一になるように第1の茶原料6の上面を平らにならし、次いで第1の茶原料6を覆うように第2の茶原料7を仕込み、高さが均一になるように第2の茶原料7の上面を平らにならし、次いで第2の茶原料7を覆うように第3の茶原料8を仕込み、高さが均一になるように第3の茶原料8の上面を平らにならすという操作を繰り返し行う方法が好適に採用される。これにより、茶原料を均一に膨潤させることが可能になる。なお、各茶原料の仕込み量は、所望の香味、甘み及び風味が得られるように適宜決定することができる。
【0019】
茶原料を仕込む際には、例えば、抽出機の形状が円筒形である場合、抽出時の通液安定性及び抽出効率の点から、仕込み時の茶原料の合計高さh1(mm)と、カラム内径d(mm)との比h1/dが0.1〜2.5、更に0.15〜1.7、特に0.2〜1.0となるように仕込み量を調整することが好ましい。ここで、本明細書において「仕込み時の茶原料の合計高さh1」とは、図2に示すように、茶保持板上面から最上層に積層された茶原料の上面までの高さをいう。なお、茶保持板が水平でない場合、茶保持板の最高点と最下点との鉛直方向における中点を通過する水平面から茶原料上面までの高さをいう。
【0020】
(第2の工程)
第2の工程は、カラム式抽出機の下部又は上部より抽出用水を供給し、該抽出用水を茶原料と接触させる工程である。
抽出用水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水等を適宜選択して使用することができるが、味の面からイオン交換水が好ましい。また、抽出用水には、アスコルビンナトリウム等の有機酸又はその塩、炭酸水素ナトリウム等の無機酸又はその塩を添加してもよい。
抽出用水の温度は、抽出効率及び風味の観点から、10〜95℃が好ましく、更に35〜95℃、特に45〜90℃であることが好ましい。これにより、香味及び甘みが豊富で、風味の良好な茶抽出液を得ることができる。
【0021】
抽出用水の線速度(流量/カラム断面積)は、10〜120mm/min、更に10〜100mm/min、特に10〜90mm/minであることが好ましい。これにより、茶原料の圧密化が抑制されて閉塞し難くなり、安定に抽出することができる。
【0022】
抽出用水と茶原料とを順次接触させるには、抽出機の下部から上部(上昇流)、あるいは抽出機の上部から下部(下降流)に通水させればよいが、膨潤した茶原料の抵抗による閉塞防止の観点から、上昇流が好ましい。
【0023】
抽出用水の供給は、仕込み時の茶原料の合計高さh1(mm)と、茶保持板上面からの抽出用水の液面高さh2(mm)との比(h2/h1)が1.0〜4.0、更に1.0〜2.5、特に1.5〜2.0となるように行うことが好ましい。この場合、図2に示すように、抽出機の下部から抽出用水9を上昇流で供給することが望ましい。h2/h1を上記範囲内とすることで、茶原料を十分に膨潤させることが可能になる。なお、本工程においては、抽出機の下部から抽出用水を上昇流で供給するとともに、抽出機の上部のシャワーノズルなどから抽出用水を供給してもよい。これにより、最上層側に積層された茶原料の膨潤を促進させることができる。
【0024】
また、本工程においては、抽出用水を上記h2/h1が1.0〜4.0となる所定の高さまで供給した後、抽出用水の供給を停止し茶抽出液を排出することなく、その状態を所定時間保持してもよい。この保持工程は、1〜30分、更に3〜20分、特に5〜15分行うことが好ましい。この保持工程を設けることで、茶原料を十分に膨潤させることができるため、香味と甘味を十分に引き出すことができる。
【0025】
(第3の工程)
第3の工程は、茶抽出液を抽出機の下部から排出する工程であるが、茶抽出液の排出と同時に抽出機上部から抽出用水を供給することが好ましい。この場合において、抽出機上部からの抽出用水の供給は、上記h2/h1が1.0〜4.0の範囲内になるように行うことが好ましく、第2の工程で設定したh2/h1を保持するように行うことが特に好ましい。なお、抽出機上部からの抽出用水の供給方法としては、例えば、図3に示すように、シャワーノズル3を用いて茶抽出液10の液面に抽出用水11を均一に噴霧する方法が好適に採用される。
茶抽出液の抜き出し速度は、抽出機上部から供給する抽出用水の速度と略同一とすることが好ましく、具体的には、線速度(流量/カラム断面積)が10〜120mm/min、更に10〜100mm/min、特に10〜90mm/minであることが好ましい。また、抽出機上部から供給する抽出用水の温度は、0〜95℃が好ましく、更に35〜95℃、特に45〜90℃であることが好ましい。
【0026】
茶抽出液の滞留時間は、抽出時の閉塞防止の観点から、3〜10min、更に5〜8min、特に5〜7minとすることが好ましい。ここで、本明細書において「滞留時間」とは、カラム式抽出機内の茶原料が抽出中に占める体積を、抽出機上部から供給した抽出用水が通過する時間(min)をいう。
茶抽出液の抽出倍率、すなわち(茶抽出液の質量)/(茶原料の合計質量)は、5〜60が好ましく、更に6〜50、特に8〜40であることが好ましい。これにより、香味及び甘味の豊富で、風味の良好な茶抽出液を得ることができる。
カラム型抽出機から排出された茶抽出液は、冷却後、必要によりろ過及び/又は遠心分離処理により茶原料、夾雑不溶分等の固形分を分離することができる。また、得られた茶抽出液は、室温以下、更に15℃以下、特に10℃以下で保存することが好ましい。
【0027】
[容器詰茶飲料]
本発明の製造方法により得られた茶抽出液は、香味及び甘みが豊富で、かつ風味が良好であるので、茶抽出液をそのまま又は希釈して容器詰茶飲料とすることができる。
【0028】
本発明の容器詰茶飲料には、茶原料由来の成分にあわせて、緑茶抽出物、その濃縮物及びそれらの精製物の他、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、ガム、油、ビタミン、アミノ酸、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤などの添加剤を1種又は2種以上配合することができる。
【0029】
本発明の容器詰茶飲料のpH(25℃)は3〜7、更に4〜7、特に5〜7とすることが、飲料の安定性の点で好ましい。
【0030】
また、容器詰茶飲料は、非重合体カテキン類濃度を0.05〜0.5質量%、更に0.092〜0.4質量%、特に0.10〜0.3質量%に調整してもよい。非重合体カテキン類濃度の調整の際には、上記緑茶抽出物、その濃縮物又はそれらの精製物を使用することができる。ここで、本明細書において「非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン、及びエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等のエピ体カテキンを合わせての総称であり、非重合体カテキン類の濃度は、上記8種の合計量に基づいて定義される。
【0031】
本発明の茶抽出液を充填する容器としては、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合化した紙容器、瓶等の通常の包装容器が挙げられる。
【0032】
また、本発明の容器詰飲料は、例えば、金属缶のような容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた殺菌条件で製造できる。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用できる。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。さらに、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻すなどの操作も可能である。
【実施例】
【0033】
沈降度の測定
本実施例で使用する茶原料、すなわちα化大麦、発芽玄米、細砕はと麦、荒砕とうもろこし、荒砕大豆及び緑茶葉の沈降度を下記の手順により測定した。その結果を各実施例及び比較例で使用した各茶原料の仕込み順序及び仕込み量とともに表1に示す。
(1)容量500mLのメスシリンダーに茶原料50gを投入し、続いて90℃の熱水を容量500mLになるまで投入した。
(2)その状態を30分間保持して茶原料を膨潤させた後、湯を捨て、再び90℃の熱水を200mL投入した。
(3)茶原料が全て沈降している場合には、茶葉が露出しないように茶原料上面よりも上方の水層をピペットで取り除いた後、メスシリンダーの目盛により茶原料の体積(A)を計測した。他方、少なくとも一部の茶原料が浮遊している場合には、茶原料上面と熱水との高さが同じになるように茶葉が露出しないように水層をピペットで取り除いた後、メスシリンダーの目盛により茶原料の体積(A)を計測した。
(4)続いてメスシリンダーをフィルムで蓋をし、メスシリンダーを上下に3回振とうした後、200mLを投入し、静置した。
(5)静置から30分経過後に、メスシリンダーの目盛により完全に沈降している茶原料の体積(B)を計測した。
(6)計測した体積(A)及び(B)から、比(B)/(A)(%)を沈降度として求めた。
【0034】
【表1】

【0035】
実施例1
80メッシュの金網を備えた円筒形のカラム式抽出機内(内径700mm、容積192L)に、荒く粉砕し、かつ沈降度が100%である大豆1.42kgを仕込み(第1層)、高さが均一になるように大豆上面を平らにし、次いで荒く粉砕し、かつ沈降度が100%であるトウモロコシ1.42kgを仕込み(第2層)、高さが均一になるようにトウモロコシ上面を平らにし、次いで沈降度が98%である大麦8.55kgを仕込み(第3層)、高さが均一になるように大麦上面を平らにし、次いで細かく粉砕し、かつ沈降度が87%であるハト麦2.85kgを仕込み(第4層)、高さが均一になるようにハト麦上面を平らにし、次いで沈降度が61%である発芽玄米5.7kgを仕込み(第5層)、高さが均一になるように発芽玄米上面を平らにし、次いで沈降度が43%であるα化大麦8.55kgを仕込み(第6層)、高さが均一になるようにα化大麦上面を平らにした。このとき、茶原料の合計高さh1(mm)と、カラム内径d(mm)との比h1/dは0.29であった。
【0036】
次いで、90℃に加熱したイオン交換水を抽出機下部から供給し、抽出用水の茶保持板上面からの液面高さh2(mm)と、茶原料の合計高さh1(mm)との比h2/h1が1.9になったときに抽出機下部からのイオン交換水の供給を停止し、その状態を10分間保持した。次いで、茶抽出液を抽出機下部から抜き出すと同時に、上記h2/h1=1.9を保持するように抽出機上部のシャワーノズルから90℃に加熱したイオン交換水を供給した。
そして、抜き出した茶抽出液の質量が、茶原料の合計質量に対して25倍となったときに抜き出しを終了した。なお、抜き出し終了まで閉塞することなく非常に良好な通液状態が保たれていた。本実施例の抽出条件と通液状態を表2に示す。
【0037】
実施例2
80メッシュの金網を備えた円筒形のカラム式抽出機(内径97mm、容積3.3L)を使用し、表1に示す茶原料及び表2に示す抽出条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により茶抽出液を製造した。本実施例においても、抜き出し終了まで閉塞することなく良好な通液状態が保たれていた。本実施例の抽出条件と通液状態を表2に示す。
【0038】
実施例3
80メッシュの金網を備えた円筒形のカラム式抽出機(内径97mm、容積3.3L)を使用し、表1に示す茶原料及び表2に示す抽出条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により茶抽出液を製造した。本実施例においても、抜き出し終了まで閉塞することなく良好な通液状態が保たれていた。本実施例の抽出条件と通液状態を表2に示す。
【0039】
実施例4
80メッシュの金網を備えた円筒形のカラム式抽出機(内径97mm、容積3.3L)を使用し、表1に示す茶原料及び表2に示す抽出条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により茶抽出液を製造した。抜き出し終了まで閉塞することなく良好な通液状態が保たれていた。本実施例の抽出条件と通液状態を表2に示す。
【0040】
実施例5
80メッシュの金網を備えた円筒形のカラム式抽出機(内径97mm、容積3.3L)を使用し、表1に示す茶原料及び表2に示す抽出条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により茶抽出液を製造した。抜き出し終了まで閉塞することなく良好な通液状態が保たれていた。本実施例の抽出条件と通液状態を表2に示す。
【0041】
比較例1
80メッシュの金網を備えた円筒形のカラム式抽出機(内径97mm、容積3.3L)を使用し、表1に示す茶原料及び表2に示す抽出条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により茶抽出液の製造を行ったが、抜き出した茶抽出液の質量が茶原料の合計質量に対して20倍に達することなく閉塞により、茶抽出液の抜き出しが出来なくなった。そのため、通液状態が不良であると判断し、通液を終了した。本比較例の抽出条件と通液状態を表2に示す。
【0042】
比較例2
表1に示す茶原料及び表2に示す抽出条件に変更したこと以外は、実施例3と同様の方法により茶抽出液の製造を行ったが、抜き出した茶抽出液の質量が茶原料の合計質量に対して20倍に達することなく閉塞により、茶抽出液の抜き出しが出来なくなった。そのため、通液状態が不良であると判断し、通液を終了した。本比較例の抽出条件と通液状態を表2に示す。
【0043】
比較例3
80メッシュの金網を備えた円筒形のカラム式抽出機(内径97mm、容積3.3L)を使用し、表1に示す茶原料及び表2に示す抽出条件に変更したこと以外は、実施例2と同様の方法により茶抽出液の製造を行ったが、抜き出した茶抽出液の質量が茶原料の合計質量に対して20倍に達することなく閉塞により、茶抽出液の抜き出しが出来なくなった。そのため、通液状態が不良であると判断し、通液を終了した。本比較例の抽出条件と通液状態を表1に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
本実施例においては閉塞することなく安定に透明度の高い茶抽出液を製造することができたが、中でも実施例1〜3で通液状態が特に良好であった。一方、比較例1〜3では茶原料が圧密化して閉塞し、茶抽出液の抜き出しが困難となった。
【0046】
実施例6
実施例1〜3で得られた茶抽出液に0.05質量%のアスコルビン酸を加え、緑茶抽出物の精製物を配合して非重合体カテキン類を0.12質量%に調整し茶飲料を得た。この茶飲料をUHT殺菌してPETボトルに充填し容器詰茶飲料を得た。得られた容器詰茶飲料は、いずれも香味と甘みが豊富であり、風味が良好であった。
【符号の説明】
【0047】
1 カラム式抽出機
2 抽出用水供給用バルブ
3 シャワーノズル
4 茶抽出液排出用バルブ
5 茶保持板
6 第1の茶原料
7 第2の茶原料
8 第3の茶原料
9 抽出用水
10 茶抽出液
11 抽出用水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラム式抽出機内に装着された茶保持板上に、沈降度が異なる複数の茶原料を沈降度が高い順に仕込む第1の工程と、
前記抽出機の下部又は上部より抽出用水を供給し、該抽出用水を前記茶原料と接触させる第2の工程と、
茶抽出液を排出する第3の工程
を含む、茶抽出液の製造方法。
【請求項2】
前記茶原料として、米類、麦類、豆類、ソバ類及び雑穀類から選択される少なくとも1種の穀物を含むものを用いる、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程において、仕込み時の前記茶原料の合計高さh1と、前記抽出用水の液面高さh2との比h2/h1が1.0〜4.0となる所定の高さまで前記抽出用水を供給する、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記第2の工程において、前記抽出用水を前記所定の高さまで供給した状態で保持する、請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
前記第3の工程において、前記抽出機下部から前記茶抽出液を排出しながら前記所定の高さを保持するように前記抽出機上部から前記抽出用水を供給する、請求項3又は4記載の製造方法。
【請求項6】
前記抽出機上部からの前記抽出用水の供給にシャワーノズルを使用する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により製造した茶抽出液を、そのまま又はその希釈液を容器に充填してなる容器詰茶飲料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−252629(P2010−252629A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102542(P2009−102542)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】