説明

茹で麺装置用洗浄剤及び茹で麺装置の洗浄方法

【課題】うどん、そば、パスタ等に由来する有機物汚れを剥離させるだけでなく溶解させることができ、より短時間で洗浄を行うことができ、しかもスケール汚れの付着を防止することができる茹で麺装置用洗浄剤及びこれを用いた茹で麺装置の洗浄方法を提供する。
【解決手段】製麺ラインで用いられる茹で麺装置を洗浄するための茹で麺装置用洗浄剤であって、アルカリ剤及びキレート剤を含む第一剤と、過酸化物を含む第二剤とからなることを特徴とする茹で麺装置用洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茹で麺装置用洗浄剤及び茹で麺装置の洗浄方法に関する。より詳しくは、製麺ラインで用いられる茹で麺装置を洗浄するための茹で麺装置用洗浄剤及び茹で麺装置の洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製麺工場において、うどん、そば、パスタ等の茹で麺を製造する製麺ラインでは、麺の茹で調理に由来する様々な汚れが茹で麺装置に付着する。装置への付着物は、麺に含まれていた澱粉や小麦粉タンパク(グルテン)に由来する有機物汚れが主であり、その他、麺の茹で調理に利用する水の硬度成分に由来する、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム等のスケール汚れ等が挙げられる。
【0003】
上記のような有機物汚れの洗浄には、例えば、特許文献1に記載のように、水酸化ナトリウム等のアルカリ剤を含んだアルカリ性の洗浄剤が広く用いられている。アルカリ性の洗浄剤を用いた装置の洗浄は、例えば、以下のようにして行われる。
まず、麺の茹で調理を行った茹で槽内の水を廃棄し、新たに茹で槽内に水を投入して、加熱する。次いで、茹で槽内に洗浄剤を投入して、数時間放置した後、茹で槽内の水を排水する。そして、茹で槽を高圧水ですすいだ後、再度、茹で槽に水を投入して、100℃程度まで加熱し、数時間放置した後、茹で槽内の水を排水して、更に高圧水でのすすぎを行う。
【0004】
アルカリ性の洗浄剤は、グルテン等の有機物汚れに対する洗浄力が高いことから、有機物汚れを良好に装置から剥離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−116594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたようなアルカリ性の洗浄剤は、有機物汚れを装置から剥離するのに上記のように数時間かかるため、より短時間で有機物汚れを装置から剥離できることが望まれている。また、アルカリ性の洗浄剤は、有機物汚れを装置から剥離することはできるものの、剥離した付着物を溶解させる程の高い洗浄力はない。そのため、洗浄後の洗浄液を茹で槽から排出すると、剥離した付着物が再度装置に付着することがある。装置の洗浄が不充分であると、うどん、そば、パスタ等の茹で麺を包装した際に、残留した付着物に由来する異物の混入が袋内に生じることがある。そのため、洗浄液の排出後には、高圧水等により複数回の水洗いを行っているが、時間や手間がかかる上、再付着した有機物汚れを完全に取り除くことは難しいことから、より高い洗浄力を有する洗浄剤が望まれている。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、うどん、そば、パスタ等に由来する有機物汚れを剥離させるだけでなく溶解させることができ、より短時間で洗浄を行うことができ、しかもスケール汚れの付着を防止することができる茹で麺装置用洗浄剤及びこれを用いた茹で麺装置の洗浄方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、うどん、そば、パスタ等に由来する有機物汚れに対する洗浄力が高く、製麺工場のような大容量の茹で麺槽の洗浄に適した茹で麺装置用洗浄剤及びこれを用いた茹で麺装置の洗浄方法について種々検討したところ、アルカリ性の洗浄剤とともに過酸化物を用いることで、有機物汚れを装置から剥離させるだけでなく、溶解させることができることを見いだした。また、キレート剤を更に含むことで、より短時間での洗浄が可能になるだけでなく、更に、水の硬度成分に由来するスケール汚れの付着を防止することができることも見いだし、上記課題を解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0009】
すなわち、本発明の茹で麺装置用洗浄剤は、製麺ラインで用いられる茹で麺装置を洗浄するための茹で麺装置用洗浄剤であって、アルカリ剤及びキレート剤を含む第一剤と、過酸化物を含む第二剤と、からなることを特徴とする。
【0010】
上記のように二剤で構成される本発明の茹で麺装置用洗浄剤において、上記第一剤は、ポリカルボン酸塩をさらに含むことが望ましい。これにより、水の硬度成分に由来するスケール汚れの付着をさらに抑制することができる。
【0011】
二剤で構成される本発明の茹で麺装置用洗浄剤において、上記アルカリ剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、オルトケイ酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種であることが望ましい。中でも、有機物汚れに対する洗浄力の高さから、水酸化ナトリウムが好適に使用できる。
【0012】
また、二剤で構成される本発明の茹で麺装置用洗浄剤において、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩、ポリリン酸塩、及び、低分子量の有機酸塩から選ばれる少なくとも一種であることが望ましい。中でも特に、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩が好ましく、エチレンジアミン四酢酸塩が特に好ましい。
【0013】
また、上記過酸化物は、過炭酸ナトリウム又は過酸化水素であることが望ましい。
【0014】
更に、二剤で構成される本発明の茹で麺装置用洗浄剤において、上記製麺ラインは、うどん、そば、及び、パスタから選ばれる少なくとも一種の製麺ラインであることが望ましい。
【0015】
また、上記アルカリ剤を10wt%〜90wt%、上記キレート剤を1wt%〜50wt%の割合で含む上記第一剤の100重量部に対する上記第二剤に含まれる過酸化物の割合は、10重量部〜200重量部であることが望ましい。
上記第一剤において、アルカリ剤の配合割合は、高ければ高い程、有機物汚れに対してより高い洗浄力が得られる。ただし、洗浄力の上昇効果は、アルカリ剤の配合割合が90wt%までは顕著であるが、アルカリ剤の配合割合が90wt%を超えると、その洗浄力はほぼ一定となる。また、アルカリ剤の配合割合は、10wt%未満であっても本発明の効果は得られるが、アルカリ剤の配合割合を10wt%以上とすることで、安定した洗浄力を確保できる。
上記第一剤において、キレート剤の配合割合が1wt%未満であると、洗浄時間の短縮効果や、スケール汚れの付着防止効果が小さくなる。キレート剤の配合割合が50wt%を超えると、必然的にアルカリ剤及び過酸化物の濃度が低くなるため、洗浄力を考慮すると、第一剤におけるキレート剤の配合割合の上限は、50wt%であることが望ましい。
上記組成を有する第一剤100重量部に対し、第二剤に含まれる過酸化物の割合が10重量部未満であると、洗浄時間の短縮効果が小さくなる。第一剤100重量部に対する第二剤に含まれる過酸化物の割合は、200重量部を超えてもよいが、過酸化物の配合割合が200重量部を超えると、過酸化物が奏する効果はほぼ一定となる。
【0016】
本発明はまた、一剤からなる茹で麺装置用洗浄剤にも関するものである。すなわち、本発明の茹で麺装置用洗浄剤は、製麺ラインで用いられる茹で麺装置を洗浄するための茹で麺装置用洗浄剤であって、アルカリ剤、キレート剤、及び、過酸化物を含む一剤からなることを特徴とする。
【0017】
上記のように一剤からなる本発明の茹で麺装置用洗浄剤は、ポリカルボン酸塩をさらに含むことが望ましい。これにより、水の硬度成分に由来するスケール汚れの付着をさらに抑制することができる。
【0018】
一剤からなる本発明の茹で麺装置用洗浄剤において、上記アルカリ剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、オルトケイ酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種であることが望ましい。中でも、有機物汚れに対する洗浄力の高さから、水酸化ナトリウムが好適に使用できる。
【0019】
一剤からなる本発明の茹で麺装置用洗浄剤において、上記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩、ポリリン酸塩、及び、低分子量の有機酸塩から選ばれる少なくとも一種であることが望ましい。中でも特に、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩が好ましく、エチレンジアミン四酢酸塩が特に好ましい。
また、上記過酸化物は、過炭酸ナトリウム又は過酸化水素であることが望ましい。
【0020】
一剤からなる本発明の茹で麺装置用洗浄剤において、上記製麺ラインは、うどん、そば、及び、パスタから選ばれる少なくとも一種の製麺ラインであることが望ましい。
なお、一剤からなる本発明の茹で麺装置用洗浄剤における成分及び配合割合は、上記した二剤からなる本発明の茹で麺装置用洗浄剤の成分及び配合割合と同様とすることができる。
【0021】
本発明はまた、茹で麺装置の洗浄方法にも関するものである。すなわち、本発明の茹で麺装置の洗浄方法は、茹で槽を備えた製麺ラインで用いられる茹で麺装置の洗浄方法であって、上記茹で槽に水又は湯を供給し、上記茹で槽にアルカリ剤、キレート剤、及び、過酸化物を含む茹で麺装置用洗浄剤を投入して、上記茹で麺装置に付着した付着物を剥離、溶解させて洗浄することを特徴とする。
【0022】
本発明の茹で麺装置の洗浄方法において、上記茹で麺装置用洗浄剤は、アルカリ剤及びキレート剤を含む第一剤と、過酸化物を含む第二剤とからなり、それぞれを上記茹で槽に投入することが望ましい。
【0023】
本発明の茹で麺装置の洗浄方法において、上記茹で麺装置用洗浄剤は、アルカリ剤、キレート剤、及び、過酸化物を含む一剤からなり、上記一剤からなる茹で麺装置用洗浄剤を上記茹で槽に投入することが望ましい。
【0024】
本発明の茹で麺装置の洗浄方法は、うどん、そば、及び、パスタから選ばれる少なくとも一種の製麺に使用した上記茹で麺装置を洗浄する方法であることが望ましい。これらの製麺に使用した茹で麺装置には、うどん、そば、及び、パスタから選ばれる少なくとも一種に由来するグルテンを含む付着物が装置に付着するが、本発明においては、洗浄剤にアルカリ剤が含まれているため、グルテンを含む付着物を容易に除去することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の茹で麺装置用洗浄剤は、アルカリ剤を含むため、グルテン等の有機物汚れを装置から容易に剥離できる。また、過酸化物が含まれているため、より洗浄力が高まり、汚れを短時間で剥離できる。更に、キレート剤が含まれているため、洗浄時間の短縮が図れ、しかもスケール汚れの付着を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、茹で麺の製造工程を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に実施形態を掲げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこの実施形態のみに限定されるものではない。
【0028】
(第1の実施形態)
本実施形態では、二剤で構成される茹で麺装置用洗浄剤及びこれを用いた茹で麺装置の洗浄方法について説明する。
まず、本実施形態に係る茹で麺装置用洗浄剤について説明する。
本実施形態に係る茹で麺装置用洗浄剤は、第一剤と第二剤とからなる。
【0029】
第一剤は、アルカリ剤とキレート剤とを含むものであればよく、液体又は固体のいずれであってもよい。液体である場合の溶媒としては、水が好適に使用できる。
【0030】
第一剤に含まれるアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、オルトケイ酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。中でも、うどん、そば、パスタ等に由来する有機物汚れに対する洗浄性の高さから、水酸化ナトリウム及びオルトケイ酸ナトリウムが好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
第一剤におけるアルカリ剤の配合割合は、10wt%〜90wt%であることが望ましい。アルカリ剤を、このような配合割合で含むことで、有機物汚れに対する優れた洗浄力を確保できる。
【0031】
キレート剤は、洗浄時間を短縮する効果を有するとともに、うどん、そば、パスタ等の茹で処理において生じる、水の硬度成分に由来する、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンに対して捕捉性のあるものが好適に使用できる。このようなキレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)、ニトリロ三酢酸塩、ポリリン酸塩、及び、低分子量の有機酸塩から選ばれる少なくとも一種が好適に使用できる。
ポリリン酸塩としては、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カルシウム等のトリポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸カルシウム等のヘキサメタリン酸塩等が挙げられる。
本発明において、低分子量の有機酸塩とは、分子量が1000以下のものをいう。このような分子量を有する有機酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸カルシウム等のクエン酸塩、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カルシウム等のリンゴ酸塩、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム等のグルコン酸塩等が挙げられる。
キレート剤の配合割合は、対象とする金属イオンの種類により異なるが、1wt%〜50wt%であることが望ましく、5wt%〜10wt%であることがより望ましい。このような配合割合であると、優れた洗浄時間の短縮効果及びスケール汚れの付着防止効果が得られる。
【0032】
第二剤は、過酸化物を含むものであれば、液体又は固体のいずれであってもよい。過酸化物以外に含まれる成分としては、第二剤が液体である場合の溶媒や、安定化剤等の添加剤が挙げられる。第二剤における過酸化物の割合は、できるだけ高いことが望ましく、第二剤が固体である場合には、すべて過酸化物であるのが最適である。過酸化物としては、過炭酸ナトリウムや過酸化水素を好適に使用できる。液体である場合の溶媒としては、水が好適に使用できる。
【0033】
第一剤の100重量部に対する第二剤に含まれる過酸化物の割合は、10重量部〜200重量部であることが望ましく、10重量部〜50重量部であることがより望ましい。
【0034】
第一剤には、ポリカルボン酸塩がさらに含まれていると、洗浄中、水の硬度成分に由来するスケールの発生をさらに抑制できるため望ましい。ポリカルボン酸塩としては、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸・マレイン酸コポリマーナトリウム塩等が挙げられる。また、ポリカルボン酸塩の分子量は、2000以上であることが望ましい。
【0035】
本発明の茹で麺装置用洗浄剤は、さらにアルカリ剤に安定な界面活性剤を含むことが望ましい。界面活性剤の種類としては、非イオン性の界面活性剤であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(例えば、三洋化成工業社製、商品名:セドランFF−210、曇点53℃)、アニオン系の界面活性剤であるラウリル酸ナトリウム(例えば、新日本理化社製、商品名:シノリン90TK)等が挙げられる。
【0036】
本発明の茹で麺装置用洗浄剤は、水や、茹で麺装置に設けられた調理槽の貯留液等に溶解させて、利用することができる。
【0037】
本発明の茹で麺装置用洗浄剤で洗浄を行う対象としては、製麺工場で用いられるステンレス製茹で麺装置が挙げられる。ステンレスの種類は特に限定されるものではないが、SUS304、SUS316、SUS430等に好適に使用することができる。
【0038】
以下に、うどんの製麺ラインを例に挙げて本実施形態に係る茹で麺装置の洗浄方法を説明する。うどんの製麺ライン及び茹で麺装置には各種形態があり、ここで挙げた例はあくまでもその一例である。
【0039】
図1は、茹で麺の製造工程を説明するための説明図である。以下、図1に示した茹で麺装置に付着した汚れを洗浄する方法を例にして、本発明の茹で麺装置用洗浄剤を用いた茹で麺装置の洗浄方法を説明する。
【0040】
図1において、茹で麺装置10は、生麺を収容するための複数のバケット11と、バケット11を移送するコンベア12と、生麺を茹でる茹で槽(湯浴槽)13と、茹で槽13に張られた水を加熱するスチーム配管14とを備える。
【0041】
茹で麺装置10に供給される生麺は、小麦粉を主成分とする原料粉に練水を加えてミキサーで混練して調製された麺生地を、複合ロールに通し、段階的に圧延して所定の厚みにした後、切刃に通して所望の麺形状とすることで得られる。製造された生麺は、各バケット11に収容され、コンベア12により矢印方向へと搬送される。
茹で槽13には、水が張られており、底面部に設けられたスチーム配管14から供給される熱によって、所望の温度に加温されている。
茹で槽13に生麺が入ったバケット11が供給され、茹で槽13内をコンベア12が矢印方向へと移動することで、生麺の茹で上げが行われる。茹で上がった茹で麺は、コンベア12の移動によって茹で槽13から取り出され、湯切りした後、バケット11から取り出される。取り出された茹で麺は、冷却され、pH調整された後、包装される。
【0042】
上記のような構成を有する茹で麺装置10は、長時間使用すると、麺に含まれていた澱粉や小麦粉タンパク(グルテン)に由来する汚れや、カルシウム等を含むいわゆる「スケール汚れ」がバケット11、コンベア12、茹で槽13、及び、スチーム配管14に強固に付着する。そのため、定期的に茹で麺装置10の洗浄を行うことが必要となる。
本実施形態では、以下のような手順で茹で麺装置10の洗浄を行う。
【0043】
最初に、茹で槽13内に水を張り、スチーム加熱する(お湯張り工程)。
次に、アルカリ剤及びキレート剤を含む第一剤と、過酸化物からなる第二剤とを、それぞれ茹で槽13内のお湯に投入する。第一剤及び第二剤が投入された茹で槽13を、スチームで加熱しながら、この茹で槽13をコンベア12によりバケット11を30分〜2時間程度移送させながら洗浄する(洗浄工程)。
この洗浄工程により、茹で麺装置10に付着した付着物は剥離、溶解される。
【0044】
続いて、洗浄した水を排水する(排水工程)。
その後、コンベア12によりバケット11を移送させながら茹で槽13をすすぐ工程(すすぎ工程)を行うことによって茹で麺装置の洗浄を終了する。
【0045】
なお、すすぎ工程は、茹で槽13内に付着した汚れや、アルカリ剤等を除去することができれば、その具体的な方法は特に限定されるものではない。例えば、高圧水ですすぐ工程(前すすぎ工程)、茹で槽13内に水を張りスチーム加熱により煮沸して30分〜2時間程度煮沸洗浄し、排水する工程(本すすぎ工程)、及び、高圧水ですすぐ工程(後すすぎ工程)を含むすすぎ工程を組み合わせて行う方法が挙げられる。
【0046】
本実施形態に係る茹で麺装置の洗浄方法によると、茹で麺装置に付着した炭水化物やタンパク質等の有機物汚れを短時間で剥離・溶解することができる。また、キレート剤が含まれているので、水の硬度成分に由来するスケール汚れの付着を抑制することができる。スケールの付着防止効果は、キレート剤以外にも、洗浄剤にポリカルボン酸塩が含まれていることによっても得られる。
【実施例】
【0047】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例に先立って、以下の(1)〜(4)の手順で評価用サンプルの作製を行った。
(1)エタノール200gにグルテン30gを入れた液0.2gをスライドガラスに塗り、1時間室温で静置した。
(2)乾燥後、水に5秒浸漬し、常温で3時間乾燥させた。
(3)上記(1)、(2)の処理を3回繰り返した。
(4)汚れの付いたスライドガラスを100℃のオーブンに36時間入れた。
この評価用サンプルを用いて、以下の実施例を行った。
【0048】
(実施例1)
フレーク(固形)状の水酸化ナトリウム50wt%、炭酸ナトリウム35wt%、EDTA10wt%、非イオン性界面活性剤(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、曇点53℃;三洋化成工業社製、商品名:セドランFF−210)5wt%を混合して、フレーク状の第一剤を調製した。この第一剤100重量部に対し、第二剤は、粒状の過炭酸ナトリウム35重量部とした。
上記割合の第一剤及び第二剤を用いて、洗浄性、汚れ剥離性、及び、スケール防止性を評価した。
まず、洗浄性及び汚れ剥離性は、以下のように調製した洗浄液を用いて下記した評価方法に基づいて評価した。
300mlビーカーに水を200ml入れ、第一剤を1g、第二剤を0.35g投入し、ウォーターバスで水温が90℃になるまで煮沸して、洗浄液を調製した。
【0049】
(洗浄性)
上記洗浄液に、上記評価用サンプルを浸漬して、10分後の溶液中の汚れの状態を目視にて観察し、以下のように評価した。
◎:汚れは完全に剥離され、溶解した
○:汚れはほぼ剥離されており、溶解した
△:汚れは剥離されたが、溶けずに残っていた
×:汚れはほとんど剥離されず、また、剥離された汚れも溶けずに残っていた
【0050】
(汚れ剥離性)
上記洗浄液に、上記評価用サンプルを浸漬して、スライドガラスに付着した汚れが落ちるまでの時間を計測した。汚れ落ちは、目視で観測し、汚れが確認できない状態となったときに汚れが落ちたと判定した。
◎:49秒以下
○:50〜100秒
△:101〜300秒
×:301秒以上
【0051】
次に、スケール防止性を評価した。スケール防止性の評価は、第一剤100重量部に対し第二剤を35重量部とした洗浄剤を、硬水を用いて0.5wt%となるように調製した洗浄液を用いて、以下の方法により行った。まず、200mlのステンレスビーカーに、上記0.5wt%の洗浄液150mlを入れ、このステンレスビーカーを110℃のオイルバスに漬けた。2時間後、ステンレスビーカーを取り出して、洗浄液を廃棄し、ステンレスビーカーを流水ですすいで、自然乾燥させた。乾燥後、ステンレスビーカーを目視で観察し、スケール防止性を以下のように評価した。
(スケール防止性)
◎:スケールの付着がなかった
○:わずかにスケールの付着があった
△:スケールの付着が少しあった
×:スケールの付着が大量にあった
【0052】
洗浄液の組成及び上記した洗浄性、汚れ剥離性、並びに、スケール防止性について得られた評価結果を表1に示す。
【0053】
(実施例2〜10)
洗浄剤の組成をそれぞれ表1に示すように変更した他は実施例1と同様にして、各種物性の測定を行った。なお、実施例8における洗浄性及び汚れ剥離性の評価では、300mlビーカーに水を200ml入れ、第一剤を1g、第二剤を0.01g投入した。また、実施例9、10における洗浄性及び汚れ剥離性の評価では、300mlビーカーに水を200ml入れ、第一剤を1g、第二剤を0.5g投入した。
洗浄剤の組成及び得られた評価結果を表1に示す。
【0054】
(比較例1〜3)
実施例1で用いた第一剤の組成をそれぞれ表2に示すように変更した。また、第二剤は配合しなかった。そしてそれ以外は、実施例1と同様にして、各種物性の測定を行った。
洗浄剤の組成及び得られた評価結果を表2に示す。
【0055】
(比較例4、5)
第一剤にキレート剤を配合しなかった。また、第二剤は配合した。そしてそれ以外は、実施例1と同様にして、各種物性の測定を行った。
洗浄剤の組成及び得られた評価結果を表2に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
各実施例に示すように、アルカリ剤、キレート剤、及び、過酸化物を含む洗浄剤を用いると、短時間で茹で槽に付着した有機物汚れを剥離できた。
また、実施例4は、ポリカルボン酸塩が配合されていたため、水の硬度成分に由来するスケール汚れの付着を良好に抑制することができた。
【0059】
比較例1〜5の洗浄剤は、アルカリ剤、キレート剤、及び、過酸化物のいずれかを含んでいないため、洗浄性、汚れ剥離性、スケール防止性に劣るものとなった。
【0060】
このように、各実施例に示すようなアルカリ剤、キレート剤、及び、過酸化物を含む洗浄剤を用いると、茹で槽に付着した有機物汚れを、短時間で良好に除去することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 茹で麺装置
11 バケット
12 コンベア
13 茹で槽
14 スチーム配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製麺ラインで用いられる茹で麺装置を洗浄するための茹で麺装置用洗浄剤であって、
アルカリ剤及びキレート剤を含む第一剤と、
過酸化物を含む第二剤と、からなることを特徴とする茹で麺装置用洗浄剤。
【請求項2】
前記第一剤は、ポリカルボン酸塩をさらに含む請求項1に記載の茹で麺装置用洗浄剤。
【請求項3】
前記アルカリ剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、オルトケイ酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載の茹で麺装置用洗浄剤。
【請求項4】
前記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩、ポリリン酸塩、及び、低分子量の有機酸塩から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の茹で麺装置用洗浄剤。
【請求項5】
前記過酸化物は、過炭酸ナトリウム又は過酸化水素である請求項1〜4のいずれかに記載の茹で麺装置用洗浄剤。
【請求項6】
前記製麺ラインは、うどん、そば、及び、パスタから選ばれる少なくとも一種の製麺ラインである請求項1〜5のいずれかに記載の茹で麺装置用洗浄剤。
【請求項7】
前記アルカリ剤を10wt%〜90wt%、前記キレート剤を1wt%〜50wt%の割合で含む前記第一剤の100重量部に対する前記第二剤に含まれる過酸化物の割合は、10重量部〜200重量部である請求項1〜6のいずれかに記載の茹で麺装置用洗浄剤。
【請求項8】
製麺ラインで用いられる茹で麺装置を洗浄するための茹で麺装置用洗浄剤であって、
アルカリ剤、キレート剤、及び、過酸化物を含む一剤からなることを特徴とする茹で麺装置用洗浄剤。
【請求項9】
ポリカルボン酸塩をさらに含む請求項8に記載の茹で麺装置用洗浄剤。
【請求項10】
前記アルカリ剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、オルトケイ酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種である請求項8又は9に記載の茹で麺装置用洗浄剤。
【請求項11】
前記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩、ポリリン酸塩、及び、低分子量の有機酸塩から選ばれる少なくとも一種である請求項8〜10のいずれかに記載の茹で麺装置用洗浄剤。
【請求項12】
前記過酸化物は、過炭酸ナトリウム又は過酸化水素である請求項8〜11のいずれかに記載の茹で麺装置用洗浄剤。
【請求項13】
前記製麺ラインは、うどん、そば、及び、パスタから選ばれる少なくとも一種の製麺ラインである請求項8〜12のいずれかに記載の茹で麺装置用洗浄剤。
【請求項14】
茹で槽を備えた製麺ラインで用いられる茹で麺装置の洗浄方法であって、
前記茹で槽に水又は湯を供給し、前記茹で槽にアルカリ剤、キレート剤、及び、過酸化物を含む茹で麺装置用洗浄剤を投入して、前記茹で麺装置に付着した付着物を剥離、溶解させて洗浄することを特徴とする茹で麺装置の洗浄方法。
【請求項15】
前記茹で麺装置用洗浄剤は、アルカリ剤及びキレート剤を含む第一剤と、過酸化物からなる第二剤とからなり、それぞれを前記茹で槽に投入する請求項14に記載の茹で麺装置の洗浄方法。
【請求項16】
前記茹で麺装置用洗浄剤は、アルカリ剤、キレート剤、及び、過酸化物を含む一剤からなり、
前記一剤からなる茹で麺装置用洗浄剤を前記茹で槽に投入する請求項14に記載の茹で麺装置の洗浄方法。
【請求項17】
うどん、そば、及び、パスタから選ばれる少なくとも一種の製麺に使用した前記茹で麺装置を洗浄する請求項14〜16のいずれかに記載の茹で麺装置の洗浄方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−87255(P2012−87255A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236842(P2010−236842)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000190736)株式会社ニイタカ (33)
【Fターム(参考)】