説明

茹麺の自動計量方法及びその装置

【課題】茹麺の容積式の自動計量で発生する麺線の切断を、合理的方法によりなくすと共に、計量した玉麺の重量のバラツキを抑えること。
【解決手段】ホッパー底部の供給口より茹麺を計量容器に流入させ、水平方向にスライドして排出する計量方法において、ホッパー供給口と、茹麺の入れられた計量容器入口を、常時空間で結ぶトンネルにより、ホッパー供給口に向かって水流を噴射することで、ホッパーと計量容器に跨っている茹麺をホッパー内部に押し戻すと共に、計量容器からはみ出たまま排出すること。噴射水流がトンネルの途中から斜めであること。単一の計量容器により片側で排出すること。1玉が所定重量の0.5食相当になる様に4玉以上を同時に量りとり、それらの中で平均重量に近くなる様に重い玉と軽い玉を組み合わせること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、うどん、そば、スパゲッティ、すいとん、白玉団子等を所定の重量に量り取る装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在主流となっている茹麺類の自動計量装置は、図1、図2の様に、ホッパー3内に攪拌フィンガー2と、噴き上げ水流4を備えることで、詰ることなく茹麺1を計量容器5に供給できる。噴き上げ水流4は、噴き上げ水流ハウジング9内に設置された上方に向かって多数の穴の開いた噴き上げ水流ロート3aからポンプ10による送水によって発生させている。計量容器5は、多孔板で構成され、水と一緒に流し込むことで茹麺のみを充填し、エアシリンダー6等により計量容器5を横にスライドさせて計量容器の下面開口11から計量容器の下面に接する固定板12の開口12aまたは12cを通り、シュート7を通じて下方の搬送バスケット8に麺類を落下させる方法による。このような容積式の計量装置は、主にポンプ循環された水流を利用して麺線を分離する方法であるため、装置は単純に構成され、洗浄、メンテナンス性に優れている。ところが、上記方法によれば図3、図4の様に、計量容器が横にスライドする際、茹麺ホッパーと計量容器とに跨っている麺類31は、ホッパーの供給口32と計量容器の入口エッジ部分33によって切断され、ホッパー側、計量容器側の双方に切断された短い麺34、35が形成されることにより商品価値を低下させる問題があった。
【0003】
容積式の茹麺自動計量装置で麺類を切らずに計量する方法は、特開昭60−14124(特許文献1)が知られている。特開昭60−14124では茹麺ホッパーと計量容器の間にジェット水流管を交差させ、垂下した落し樋と計量容器の間に跨った麺線をジェット水流の方向に流し出すことによって解決している。しかし、ジェット水流によって流し出される麺線は、跨った麺線ばかりでなく、ホッパー内の麺が次々と吸い込まれては激しい衝撃を受けて流し出される為に循環水は濁り易く、流し出された麺線はホッパー内に還流することで計量を後回しにされ、時間経過に伴うふやけ等の品質低下が予想される。また、垂下した落し樋は、麺を効率良く充填する為に一定以上の太さを備えたい反面、横断水流によって後続する麺の垂下流出を確実に遮断するには細い方が良い。すなわち、垂下した同一の落し樋で麺の充填と後続麺の流出遮断の機能を兼ねるのは方法として不合理である。
【0004】
重量測定式で麺線を切らずに計量する方法は、特開平1−273553(特許文献2)が知られている。特開平1−273553では、茹麺ホッパー内の麺をコンベアー面の突起によって麺線数本ずつすくい上げては次々に計量受け皿上に落下させ、所定の重量になった時点で計量受け皿から移動させることで、麺線を切らずに計量できる。しかし、装置が複雑で洗浄に手間を要する。また、測定値より判定し排出する機器は高価である点は不経済である。
【0005】
容積式の茹麺自動計量装置で計量した複数の玉麺を、許容重量範囲なるように組み合わせる麺線の計量方法は、特開2002−159396(特許文献3)が知られている。また、麺線を切らずに計量する方法についてはシャッターをフォーク状にする方法について言及しているが、麺は一定の損傷を受けざるを得ず、切断を抑制するに止まる。
【0006】
【特許文献1】特開昭60−14124号公報
【特許文献2】特開平1−273553号公報
【特許文献3】特開2002−159396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、茹麺商品の価値を高める要件として折れ曲がりのない真っ直ぐな麺線を求められることが多い。大釜で茹で上げた手打ちうどんや、手延べそうめんの盛付け例のような外観的品位が求められるからである。その為には多食分を比較的大きな釜でまとめて茹上げる場合が多く、その結果、茹麺の自動計量装置の利用機会が増えることになる。しかし、現在多食分をまとめて茹上げた場合の主流の茹麺の計量方法では麺の1部を短く切断することを回避できずに商品の品位を落とし、顧客ニーズに応えられない問題がある。麺商品の製造販売に携わる立場としては何としても解決すべき課題であった。すなわち、本発明により、現在主流の容積式の自動計量で発生する麺線の切断を合理的方法によりなくすことが第一の課題であり、更には、切断しない為に計量した玉麺の重量のバラツキが大きくなる現象を、実用可能な範囲に抑えることが第二の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
現在主流となっている茹麺自動計量方法は、ホッパー内の水中でストックされた多食分の茹麺を、ホッパー底部供給口より垂下流出させ、ホッパー下方に配置し通水孔を設けた計量容器入口に水と共に流入させる充填工程と、茹麺の充填された前記計量容器を、水平方向にスライドし、前記計量容器の下面に接する固定板の開口より茹麺を落下させる排出工程を繰り返す容積式の計量方法であるが、図2の様に、計量容器5は左右ダブルに備えられ、左右交互に充填と排出を行なうことが可能な両側計量の装置が一般的である。
【0009】
発明者らは、まず、左右交互に計量、排出を行なう方法で、図5の様な装置にて実験を行った。ホッパー3と計量容器組み込みスライド51の間にトンネル部52を固定して設け両端の噴射ノズル53a、53bから水流を中央に向かって出し、ホッパーの麺が流出しない条件で検討を行った。また、その他の構成は図1、図2と同様とした。その結果、図6の様にすいとん等の粒状麺54の計量はスムーズに行なえたが、図7の様に、長い麺線55の計量では、左右の計量容器51a、51bに一部の麺の両端が入り込み、トンネルを塞ぐ麺56が発生した。調整バルブ57によって、トンネル端の噴射ノズル53a、53bの水流を強めることで数回のスライドの後、取り除くことはできたが、トンネル部を塞ぐトラブルによって、千切れた短麺の混入や計量容器の入口を狭めることによる計量不良が発生した。
【0010】
そこで、図8の様に計量容器を片側のみ(51b)に変更した計量容器組み込みスライドを作成し、単一の容器により計量容器を空で返しては再び充填する片側計量による実験を行った。まず、トンネルの両端の噴射ノズル53a、53bから水流を中央に向かって出したところ、計量容器が移動して麺を排出する際に、今度はホッパー内の麺3の一部が流出するトラブルがあった。この原因が、噴射水が左右で打ち消し合う状態ではホッパーからの水圧を噴射ノズル53bでは受けきれないことに思い当たり、次に、噴射ノズル53aからの水流路に調整バルブ58を設け、開度20%程度に噴射ノズル53aの水勢を弱めたところ、麺の流出を止めることができた。
【0011】
しかしながら、依然と製品からごくわずかに短麺が散見された為、その原因を究明したところ、図9の様に、排出に際して麺59の一部が噴射ノズル53bの水流によって計量容器の入口エッジ部分60に押し付けられた状態で留まって垂れ下がり、その麺の下端61が計量容器出し口エッジ62によって切断されることが分かった。
【0012】
そこで今度は、噴射ノズル53bをトンネルの途中に斜めに挿入したところ、麺が留まることによって短麺が発生するトラブルを回避することができた。更に麺充填の際は、左右の噴射水の圧力を均衡させることで、充填直後の余剰麺をホッパー内に噴き上げ、跨る麺線を減らすことが可能となり、ゆえに、麺重量のバラツキが小さくなることを明らかにし、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、ホッパー内の水中でストックされた多食分の茹麺を、ホッパー底部供給口より垂下流出させ、ホッパー下方に配置し通水孔を設けた計量容器入口に水と共に流入させる充填工程と、茹麺の充填された前記計量容器を水平方向にスライドし、前記計量容器の下面開口より茹麺を落下させる排出工程を繰り返す容積式の計量方法において、前記ホッパー底部供給口と、茹麺の入れられた前記計量容器入口を、常時空間で結ぶトンネルにより、前記ホッパー底部供給口に向かって水流を噴射することで、充填工程では、ホッパーと計量容器とに跨る茹麺の一部をホッパー内部に押し戻すと共に、排出工程では、跨る茹麺の残りを計量容器からはみ出たまま前記トンネルを通過し、計量された麺の一部として排出することを特徴とする茹麺自動計量方法(請求項1)や、前記したトンネルにより、前記したホッパー底部供給口に向かう水流が、トンネルの途中から斜めに噴射することを特徴とする、請求項1に記載の茹麺自動計量方法(請求項2)や、茹麺類が麺線であって、単一の計量容器により片側でのみ排出することを特徴とする、請求項2に記載の茹麺自動計量方法(請求項3)や、充填工程で、前記したホッパー底部供給口より垂下流出する流れを挟んで、前記したホッパー底部供給口に向かう水流に対向する水流を噴射することを特徴とする、請求項3に記載の茹麺自動計量方法(請求項4)や、1玉が所定重量の0.5食相当になるように4玉以上を同時に量りとり、それらの中で平均重量に近くなる様に重い玉と軽い玉を組み合わせることを特徴とする、請求項3及び4に記載の茹麺自動計量方法(請求項5)や、底部に供給口を設けた茹麺ホッパーと、その下方に通水孔を設け上下が開口を成す計量容器と、前記計量容器を組み込み水平方向に移動可能なスライドと、前記計量容器の下面に接し開口を設けた固定板を備えた容積式の計量装置において、前記茹麺ホッパーの供給口と前記計量容器の入口である上開口を、空間で結ぶトンネルを前記スライド上に設けると共に、前記茹麺ホッパーの供給口に向かって噴射水流を発生させることのできる噴射ノズルを、前記トンネルに設けたことを特徴とする茹麺自動計量装置(請求項6)や、前記した噴射ノズルが、トンネルの途中から斜めに噴射可能であることを特徴とする、請求項6に記載の茹麺自動計量装置(請求項7)に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の計量に適する茹麺類とは、うどん、そば、スパゲッティ等の麺線から、すいとん、白玉団子等の粒状のものであって、多食分の麺をまとめて茹上げ、水冷却を経て小割けを要するものなら幅広く利用できる。
【0015】
うどん、そば等の麺線であれば、短麺の混ざらない茹麺製品を得ることができる。例えば、外食店の調理場では、ザルに盛るメニューでもクズ麺の有無に気を使うことなく調理のオペレーションを組むことが可能となり、顧客志向の製品づくりに貢献できる。
【0016】
更に、うどん、そば等の製造ラインにおいては、短く切断された麺は搬送バスケットの内側に付着したまま移行し反転路にて落下する場合が多い。それも終日の生産となれば落下する麺は大量である。その様なロスによる廃棄を減らすと共にバスケットコンベアーを衛生的に維持できる。
【0017】
すいとん等の粒状の麺であれば、キズや切片混入の心配がなく計量された玉麺の重量も容易に揃い、高価なコンピュータースケールなどの重量測定式の計量装置を導入する必要がなく経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明によって、麺線及び粒状の麺が共に実施できる形態について、図10及び図11によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0019】
ホッパー101は、フィンガーの揺動装置103、及びホッパーの供給口106の周囲に随時必要な圧力に調整可能な噴き上げ水流104が備えられていると、麺の比重や物性の違いに広く対応できて良い。それらの働きによりホッパー底部の噴き上げの中心部105にほぐされた麺線が絶え間なく供給され、ホッパーの供給口106に麺線が詰ることなく、連続、小出しに供給できる。
【0020】
ホッパーの供給口106の口径は、対象とする麺線の流動性や、粒の直径サイズなどによって変更できると良い。うどん等の流動性の高い麺類は18〜26mm、好ましくは20〜24mmが良く、スパゲッティ等の流動性の低い麺類は22〜30mm、好ましくは24〜28mmが良い。
【0021】
また、噴き上げ水流104を発生させる噴き上げ水流ロート110と、吹き上げ水流ハウジング111はアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明材質にすると麺の動きがつぶさに観察できて良い。
【0022】
計量容器入口107bの口径は、うどん等の流動性の高い麺類は15〜30mm、好ましくは20〜25mmが良く、スパゲッティ等の流動性の低い麺類は20〜35mm、好ましくは25〜30mmが良い。
【0023】
計量容器の上部の形状は、入口に近づく程に側面積が減少するスカート状が良い。すなわち、麺重量のバラツキを減らすには、ホッパーと計量容器に跨る麺線を最少にする必要があるので、充填の終了間際に計量容器へ流入する麺線の量を減らすことが重要である。流入する麺線の量は、ホッパーから計量容器に垂下流入する水量に比例するので、開孔率が一定の壁面で構成されている計量容器の場合、上部に行くに従い表面積を絞ると良い。
【0024】
ホッパー底部供給口と、茹麺の入れられた計量容器入口を常時空間で結ぶトンネルは、ホッパー底部供給口が固定され、計量容器入口が充填と排出を行うごとに水平方向に最短距離を移動する為、自ずと水平方向に直線状を成し、排出工程において重要な役割を持つ。すなわち、ホッパー101と計量容器組込スライド107の間のトンネル108bは、計量容器が充填位置117から排出位置114に移動する際に、計量容器からはみ出た麺線118aの切断させない逃げ道となる。その後、計量容器に充填された麺線と共に固定板の開口116より落下することで計量された麺の一部として排出される。計量容器からはみ出た麺線は割増に量り込まれることになるが、許容重量範囲であれば良い。麺線が1、2本多く入っても麺商品としての価値が損なわれることはない。
また、茹麺が入れられ常時空間で結ばれるトンネルは、茹麺を排出した後であれば遮断するのは自由である。例えば、計量容器入口に時折滞留する麺線を排除する目的で、遮断する手段を適宜備えると良い。
【0025】
なお、トンネルは、計量容器組み込みスライドの天面とホッパー下に固定されたトンネル部によって構成すると良い。すなわち、図11の様に、トンネル108bは噴き上げ水流ハウジング111に密着固定したトンネル部108と計量容器組込スライドの天板107aとで構成する。この場合、トンネル部108は、プレート裏に溝を掘り込み、ホッパー供給口に当る充填位置117に貫通穴を設けた単純な構造となるので、計量容器組込スライド107を取り外せば、洗浄が容易に行なえて良い。また、他の1例を挙げれば、トンネルの側壁部分をスライド側の一部としてスライドさせ、天井部分のみ固定するのも可能であり、トンネルの構成は自由に行なって良い。
【0026】
トンネル部の長さは、充填位置117から排出位置114の間隔を8〜15cmもとれば良い。すなわち、あまり距離を長くとると装置が大きくなり、スライド時間も長く要し処理効率が低下する。逆に短くしようとも、噴射ノズル112bと噴上げ水流ハウジング111の位置関係から自ずと設計上の限界がある。トンネル部の断面のサイズは計量容器の入口同様に対象となる麺の形状、サイズを考慮の上決定すれば良いが、トンネル部は概ね固定部品として取り付けるのが扱い易いことから、掘り込む溝は想定される最大サイズで設計すると良い。例えば、茹うどんやスパゲッティなどの麺線の場合は、トンネルの高さ108aは5〜15mm、好ましくは8〜12mmであり、幅はホッパーの供給口と計量容器の入口サイズにもよるが、20〜30mmが良い。
【0027】
また、ホッパー底部供給口と、茹麺の入れられた計量容器入口を常時空間で結ぶトンネルにより、ホッパー底部供給口に向かって噴射する水流は重要な役割を持つ。すなわち、噴射ノズル112bによる水流が、充填位置117では計量容器に入らない余剰の麺118bをホッパー内部に押し戻す役割。更には、ホッパーの供給口106と計量容器入口107bとに跨る計量容器からはみ出た麺線118aを排出位置114にスライドして固定板の開口116から麺を排出して戻る間も、噴射ノズル112bによる水流が、ホッパー水圧により流れ出る水流に対抗し、麺がトンネルを通過して流れ出るのを防止する。言わば、トンネル内で弁または堰の役割を持つ。
【0028】
以上の説明から明らかな様に、本発明により後続麺の流出を合理的に防止できる理由は、計量容器への充填効率を上げる為にホッパー底部供給口と計量容器入口を最適な口径として垂下する流入路の太さを確保できること。その一方で、充填された麺の排出に際しては、トンネルの高さと幅を適宜狭めトンネル断面積を小さくできること、流出に対向する噴射水流をトンネルの必要区間確保できること、垂下する水流を水平方向に誘導すること、を挙げることができる。
【0029】
なお、噴射ノズルの口径は、トンネル幅20〜30mmに対し、直径10〜15mm程度が良く、噴射孔の形状は丸でもトンネル幅をカバーするスリット状でも自由にできる。
【0030】
麺線の計量では、トンネルにより、ホッパー底部供給口に向かう水流が、トンネルの途中から斜めに噴射すると麺線の一部がトンネルの途中に滞ることがなく、その結果、短麺の発生を回避することができて良い。トンネルの途中に設ける噴射ノズルの位置は、排出位置114での計量容器の入口付近を避ければどこに設けても良いが、好ましくは排出位置114から3〜6cmの範囲が良い。また、噴射ノズルの進入角度113は、20〜60°好ましくは40〜50°が良い。
【0031】
本発明は、茹麺の充填された計量容器を水平方向にスライドし、計量容器の下面開口より茹麺を落下させる排出工程を取る計量方法が前提条件であるが、水平方向のスライドといっても多少の傾きをもってスライドして何ら差し支えない。また、スライドが往復運動によらず、ドラム回転によりドラム周面に複数取り付けられた計量容器を一方向に回転させながら連続的に行なわれる場合であっても良い。また、計量容器組み込みスライドは、単一の容器により片側で排出し、計量容器を空で返しては再び充填する場合(片側計量)と、二つの計量容器により交互に充填と排出を繰り返す場合(両側計量)がある。片側計量では、長い麺線がトンネル部を塞ぐようなトラブルの発生が無く、麺の形状を問わず処理できるところが良い。両側計量は、両計量容器の間隔より短い麺線や、粒状麺に限定すればトンネル部を塞ぐトラブルはない。また、計量容器がスライドする際、排出して戻る時間が有効に利用できる点は効率的で良い。
【0032】
片側計量を行う場合、充填工程では、ホッパー底部供給口より垂下流出する流れを挟んで、ホッパー底部供給口に向かう水流に対向する水流を噴射するとよい。すなわち、充填工程では、噴射ノズル112aと112bの水流の強さを等しく1/2ずつとすることで麺の流入がスムーズになり、排出工程では、噴射ノズル112aを止めて噴射ノズル112bに水流を集中することでホッパー内の麺線の流出が防止できる。その場合は、噴射ノズル112aのみ水流噴射の発止可能な自動開閉バルブ119を設け、茹麺の充填と排出に応じ、自動的に切り替えられると良い。以上の充填工程と排出工程における計量容器の位置と噴射ノズルの切り替え状況を、図12に示す。また、112aと112bのそれぞれが単独で自動発止可能であれば、充填工程の初期は対向する水流を同時に弱く噴射し、充填工程の後期を強く噴射すれば、効率良く処理できて良い。いずれの場合も、片側計量を効率的に行なうためには、排出時のスライドの停止を最短時間で済ませ充填位置117に戻るのが良いが、本発明によれば、片側計量で排出の際も計量容器入口側からの水圧により瞬時に落下排出できて良い。
【0033】
以上の方法で計量することにより、麺線を切断することなく、かつ、実用可能な一定の範囲に麺重量のバラツキを抑えることができるが、計量された玉麺の重量のバラツキを更に抑える為に、1玉が所定重量の0.5食相当になるように4玉以上を同時に量りとり、それらの中で平均重量に近くなる様に重い玉と軽い玉を組み合わせる重量測定による方法を組み合わせても良い。余りなく、かつ、選択可能な1:1の組合せを行なう都合上、少なくとも4玉が必要になり、その数が多いほど合計重量が平均に近づく確立が高まるものの、組合せの演算処理を同時に行なう必要から、設定する玉数分の重量計量皿を備える必要があり装置設計上自ずと限界がある。よって、0.5食相当を同時に量り取る数は、6〜12玉が好ましい。
【0034】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例示に限定されない。
【0035】
(実施例1)うどんの計量
麺用小麦粉3kgに対して10%の食塩水を練り水として1260ml加え真空ミキサー内の減圧度65cmHgの雰囲気下で混練の後、定法により製麺し、直径3.3mm、長さ45cmの生麺線を3kg得た。これを50L容量の茹釜にpH5.5の水30Lを沸かし、まとめて投入、投入直後はよく攪拌し、12分間茹で上げ、10℃に冷却、長さ50cm、麺線1本当りの重量が7〜8gの茹麺6kgを得、供給口口径22mm、計量容器入口口径20mmの図10に示した単発の計量装置で、図12に示した方法により時間当り550玉の処理能力で計量した。なお、単発の計量装置とはホッパーに1つの供給口、1セットの計量容器組込スライドで処理する装置で、時間当りの処理能力は500〜1000玉を標準とするものである。処理能力を増やす場合は、ホッパーの供給口と計量容器組込スライドを2〜12セットに増やし並列処理を行なうことで数千食の生産能力に対応できる。計量した玉麺は、重量を量った後、全量を切れのない麺線、20cm以上の切れた麺線、20cm未満の麺線に分けその重量率を求め、麺線の切断状況を確認した。その結果、表1に示す様に、平均255.6g、標準偏差4.76gで、全てのデータが平均の概ね±9gに入っていた。麺線の切断は0%でほとんど切断麺線は認めず品位に優れていた。
【0036】
【表1】

【0037】
(比較例1)従来の擦りきりによるうどんの計量
実施例1の茹うどんを、供給口口径22mm、計量容器入口口径20mmの図1に示した単発の計量装置で、常法により1玉の重量が240gになるように、時間当り550玉の処理能力で計量した。計量した玉麺は、重量データを取った後、全量を切れのない麺線、20cm以上の切れた麺線、20cm未満の麺線に分けその重量率を求め、麺線の切断状況を確認した。その結果、表2に示す様に平均239.3g、標準偏差2.69gで、全てのデータが平均の概ね±6gに入っていたが、何らかの形で切断されていた麺線が39%に達し品位を損ねていた。
【0038】
【表2】

【0039】
(実施例2)組合せによるうどんの計量
実施例1と同様の茹うどんを、供給口口径22mm、計量容器入口口径20mmの図10に示した単発の計量装置で、図12に示した方法により1玉の重量が130gになるように計量容器を調整し、時間当り650玉の処理能力で30玉を計量した。計量した麺は、量り取った順に10玉ずつの3グループに分け、各グループの中で重量順に並べ、最も重い玉と最も軽い玉、2番目に重い玉と2番目に軽い玉、3番目に重い玉と3番目に軽い玉、4番目に重い玉と4番目に軽い玉、5番目に重い玉と5番目に軽い玉に組合せ、260g相当の麺を合計15玉得た。その結果、表3に示す様に、平均259.0g、標準偏差3.4gで、重量のバラツキは大幅に減少し、実施例1と比較しても向上していた。麺線の切断は0%でほとんど切断麺線は認めず品位に優れていた。
【0040】
【表3】

【0041】
(実施例3)スパゲッティの計量
太さ1.7mmの乾燥スパゲッティ3kgをpH5.5の水30Lを沸かし、12分間茹で上げ、10℃に冷却、長さ25cm、麺線1本当りの重量が1.5〜2.0gの茹麺6kgを得、供給口口径27mm、計量容器入口口径30mmの図10に示した単発の計量装置で、図12に示した方法により時間当り550玉の処理能力で計量した。計量した玉麺は、重量を量った後、全量を切れのない麺線、20cm以上の切れた麺線、20cm未満の麺線に分けその重量率を求め、麺線の切断状況を確認した。その結果、表4に示す様に、平均256.2g、標準偏差6.92gで、全てのデータが平均の概ね±15gに入っていた。麺線の切断は1%でほとんど切断麺線は認めず品位に優れていた。
【0042】
【表4】

【0043】
(比較例2)従来の擦りきりによるスパゲッティの計量
実施例3の茹スパゲッティを図1に示した単発の計量装置で、常法により1玉の重量が250gになるように、時間当り550玉の処理能力で計量した。計量した玉麺は、重量データを取った後、全量を切れのない麺線、20cm以上の切れた麺線、20cm未満の麺線に分けその重量率を求め、麺線の切断状況を確認した。その結果、表5に示す様に、平均260.4g、標準偏差2.42gで、全てのデータが平均の概ね±6gに入っていたが、何らかの形で切断されていた麺線を20%確認し、品位を損ねていた。
【0044】
【表5】

【0045】
(実施例4)ミニすいとんの計量
麺用小麦粉3kgに対して2%の食塩水を練り水として1500ml加え真空ミキサー内の減圧度40cmHgの雰囲気下で混練の後、定法により製麺し、直径20mm、厚さ4mmの生すいとんを3kg得た。これを50L容量の茹釜にpH5.5の水30Lを沸かし、まとめて投入、投入直後はよく攪拌し、18分間茹で上げ、10℃に冷却、直径25mm、厚さ4mm、重量が約2gの茹すいとん約4.5kgを得、供給口口径22mm、計量容器入口口径20mmの図6に示した単発の計量装置で時間当り600玉の処理能力で計量した。計量したすいとんは、計量装置を適宜調整の上、重量データを取り、その後、全量について切れやキズを確認。その結果、表6に示す様に、平均177.2g、標準偏差2.98gで、全てのデータが平均の概ね±6gに入っていた。麺線の切れやキズは0%で切断されたすいとんは全く認めず、品位に優れていた。
【0046】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】 従来の擦りきりによる茹麺自動計量方法の実施形態を示す全体図。
【図2】 従来の茹麺自動計量装置の計量容器周辺の詳細断面図。
【図3】 従来の茹麺自動計量装置における計量容器の麺充填状態を示す。
【図4】 従来の茹麺自動計量装置における計量容器がスライドする途中を示す。
【図5】 本発明の両側計量による計量容器周辺の詳細断面図。
【図6】 本発明の実験装置におけるすいとん等の粒状麺の計量の状態。
【図7】 本発明の実験装置における長い麺線の計量の状態。
【図8】 本発明の実験装置を片側計量に変更した実験の状態。
【図9】 図8における実験装置で麺線が切断される原因を説明する図。
【図10】 本発明の茹麺自動計量方法の実施形態を示す全体図。
【図11】 本発明の茹麺自動計量装置の計量容器周辺の詳細断面図。
【図12】 本発明の茹麺自動計量方法の実施状況を説明する模式図。
【符号の説明】
【0048】
〔図1〜図9の符号〕
1 茹麺
2 攪拌フィンガー
3 ホッパー
3a 噴き上げ水流ロート
4 噴き上げ水流
5 計量容器
6 エアシリンダー
7 シュート
8 搬送バスケット
9 噴き上げ水流ハウジング
10 ポンプ
11 計量容器の下面開口
12 計量容器の下面に接する固定板
12a 計量容器の下面に接する固定板の開口
12b 計量容器充填位置の排水細孔
12c 計量容器の下面に接する固定板の開口
31 茹麺ホッパーと計量容器とに跨っている麺類
32 ホッパーの供給口
33 計量容器の入口エッジ部分
34 ホッパー側に切断された短い麺
35 計量容器側に切断された短い麺
51 計量容器組み込みスライド
51a 左の計量容器
51b 右の計量容器(片側のみの場合)
52 トンネル部
53a 噴射ノズル
53b 噴射ノズル
54 すいとん等の粒状麺
55 長い麺線
56 左右の計量容器に両端が入り込みトンネルを塞いだ麺
57 水量調整バルブ
58 水量調整バルブ
59 茹麺
60 計量容器の入口エッジ部分
61 垂れ下がった麺の下端
62 計量容器出し口エッジ
〔図10〜図12の符号〕
101 ホッパー
102 計量容器
103 フィンガーの揺動装置
104 噴き上げ水流
105 ホッパー底部の噴き上げの中心部
106 ホッパーの供給口
107 計量容器組込スライド
107a 計量容器組込スライドの天板
107b 計量容器入口
108 トンネル部
108a トンネルの高さ
108b トンネル
109 茹麺
110 噴き上げ水流ロート
111 噴き上げ水流ハウジング
112a 左噴射ノズル
112b 右噴射ノズル
113 噴射ノズルの進入角度(θ°)
114 排出位置
115 計量容器の下面開口
116 固定板の開口
117 充填位置
118a 計量容器からはみ出た麺線
118b 計量容器に入らない余剰の麺
119 自動開閉バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパー内の水中でストックされた多食分の茹麺を、ホッパー底部供給口より垂下流出させ、ホッパー下方に配置し通水孔を設けた計量容器入口に水と共に流入させる充填工程と、茹麺の充填された前記計量容器を水平方向にスライドし、前記計量容器の下面開口より茹麺を落下させる排出工程を繰り返す容積式の計量方法において、前記ホッパー底部供給口と、茹麺の入れられた前記計量容器入口を、常時空間で結ぶトンネルにより、前記ホッパー底部供給口に向かって水流を噴射することで、充填工程では、ホッパーと計量容器とに跨る茹麺の一部をホッパー内部に押し戻すと共に、排出工程では、跨る茹麺の残りを計量容器からはみ出たまま前記トンネルを通過し、計量された麺の一部として排出することを特徴とする茹麺自動計量方法。
【請求項2】
前記したトンネルにより、前記したホッパー底部供給口に向かう水流が、トンネルの途中から斜めに噴射することを特徴とする、請求項1に記載の茹麺自動計量方法。
【請求項3】
茹麺類が麺線であって、単一の計量容器により片側でのみ排出することを特徴とする、請求項2に記載の茹麺自動計量方法。
【請求項4】
充填工程で、前記したホッパー底部供給口より垂下流出する流れを挟んで、前記したホッパー底部供給口に向かう水流に対向する水流を噴射することを特徴とする、請求項3に記載の茹麺自動計量方法。
【請求項5】
1玉が所定重量の0.5食相当になるように4玉以上を同時に量りとり、それらの中で平均重量に近くなる様に重い玉と軽い玉を組み合わせることを特徴とする、請求項3及び4に記載の茹麺自動計量方法。
【請求項6】
底部に供給口を設けた茹麺ホッパーと、その下方に通水孔を設け上下が開口を成す計量容器と、前記計量容器を組み込み水平方向に移動可能なスライドと、前記計量容器の下面に接し開口を設けた固定板を備えた容積式の計量装置において、前記茹麺ホッパーの供給口と前記計量容器の入口である上開口を、空間で結ぶトンネルを前記スライド上に設けると共に、前記茹麺ホッパーの供給口に向かって噴射水流を発生させることのできる噴射ノズルを、前記トンネルに設けたことを特徴とする茹麺自動計量装置。
【請求項7】
前記した噴射ノズルが、トンネルの途中から斜めに噴射可能であることを特徴とする、請求項6に記載の茹麺自動計量装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−111817(P2008−111817A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299615(P2006−299615)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000151232)シマダヤ株式会社 (11)
【Fターム(参考)】