説明

荷保管用ラックの荷支持装置

【課題】荷収納区画1の左右両隔壁枠2の内側に荷出し入れ方向に長い左右一対の荷受け部材3が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置に免震構造を採用して耐震性を高める。
【解決手段】荷受け部材3の下側には、左右両隔壁枠2から連設された支持部材9が配置され、この支持部材9と荷受け部材3との間には、当該荷受け部材3を少なくともその長さ方向の一定範囲内でスライド可能に支持する支持手段12と、当該荷受け部材3をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段14とが配設され、この付勢手段14は、前記支持部材9から上向きに突設された下側バネ受け部材23と荷受け部材3から下向きに突設された上側バネ受け部材25、及び上下両バネ受け部材23,25に上下両端を嵌合させたコイルバネ26とから成る少なくとも1つの付勢ユニット11Aを備えた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷収納区画の左右両隔壁枠の内側に、当該荷収納区画の前後奥行き方向に長い左右一対の荷受け部材が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の荷保管用ラックにおいて、地震時にラックが荷収納区画の前後奥行き方向(荷出し入れ方向)に揺れることによって、保管中の荷が当該ラックの通路側(ラックに沿って設けられた入出庫用クレーンの走行通路のある側)へ荷受け部材上を滑動して落下する事故が発生している。このような事故を未然に防止する一つの手段として、各荷収納区画が備える左右一対の荷受け部材を免震構造とすることが考えられている。例えば特許文献1に記載されるように、この種の荷保管用ラックの荷支持装置における免震構造は、荷収納区画の左右両隔壁枠から連設された支持部材に対して各荷受け部材をその長さ方向(荷収納区画の前後奥行き方向)にスライド可能に支持し、荷受け部材をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段として、支持部材の横側方に荷受け部材長さ方向と平行向きのコイルバネを設けるものであった。即ち、支持部材に対して荷受け部材を後方(通路のある側とは反対側)へ押圧付勢するコイルバネと、支持部材に対して荷受け部材を前方(通路のある側)へ押圧付勢するコイルバネとを直列に配設し、両コイルバネの押圧付勢力で荷受け部材を定位置に保持する構成であった。
【特許文献1】特許第3729316号公報(特開2000−226111号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された従来の構成における付勢手段では、1つの付勢ユニットを構成する部品として、2つのコイルバネと、これら両コイルバネの外端部を支持部材で受ける2つの外側バネ受け座と、両コイルバネの内端部を荷受け部材側で受ける1つの内側バネ受け座と、水平に直列する2つのコイルバネを支持する長いボルトナットとが必要であって、部品点数が多く、コスト高になるばかりでなく、付勢ユニットが荷受け部材や支持部材の横側方に露出するので、荷支持装置全体の平面視における占有スペースが大きくなるばかりでなく、塵埃の付着や他物との接触による不都合も考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得る荷保管用ラックの荷支持装置を提供することを目的とするものであって、請求項1に記載の荷支持装置は、後述する実施形態の参照符号を付して示すと、荷収納区画1の左右両隔壁枠2の内側に、当該荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)に長い左右一対の荷受け部材3が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置であって、前記荷受け部材3の下側には、前記左右両隔壁枠2から連設された支持部材9が配置され、この支持部材9と荷受け部材3との間には、当該荷受け部材3を少なくとも荷収納区画1の前後奥行き方向の一定範囲内でスライド可能に支持する支持手段12と、当該荷受け部材3をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段14とが配設され、この付勢手段14は、前記支持部材9から上向きに突設された下側バネ受け部材23と荷受け部材3から下向きに突設された上側バネ受け部材25、及び上下両バネ受け部材23,25に上下両端を嵌合させたコイルバネ26とから成る少なくとも1つの付勢ユニット11Aを備えた構成となっている。
【0005】
上記の本発明に係る荷保管用ラックの荷支持装置を実施する場合、請求項2に記載のように、前記支持手段12は、荷受け部材5の長さ方向に対し直交する左右水平方向を含む二次元平面上の一定範囲内で前記荷受け部材3をスライド可能に支持するように構成することができる。この場合、荷受け部材3の長さ方向に対し直交する左右水平方向の荷受け部材3のスライド可能領域は、荷受け部材3の長さ方向のスライド可能領域よりも短くなるように構成するのが望ましい。
【0006】
又、請求項3に記載のように、前記荷受け部材3を下側開放の門形材8から構成し、前記支持手段12及び付勢手段14は、前記荷受け部材3の下側開放溝形空間内に納められるように構成することができる。
【0007】
更に、請求項4に記載のように、前記支持手段12は、荷受け部材3の長さ方向に配列された少なくとも2つの支持ユニット11A,11Bを備えたものとし、各支持ユニット11A,11Bは、前記支持部材9と前記荷受け部材3との内の一方の部材に固着突設された垂直向きの支持用柱体17と、他方の部材に設けられて前記支持用柱体17の先端が相対滑動自在に当接する被支持面部18aとから構成することができる。この場合、請求項5に記載のように、前記被支持面部18aが設けられた部材側に、前記支持用柱体17が遊嵌する凹部20を有するスライド制限部材19を設け、このスライド制限部材19の凹部内側面20aと前記支持用柱体17との当接により前記荷受け部材3のスライドが制限されるように構成することができる。又、請求項6に記載のように、支持ユニット31の支持用柱体17の先端には、前記被支持面部18aに転動自在に当接する複数個の球体33をそれぞれ自由回転可能に保持させて、転がり支持部34を構成することができる。
【0008】
又、請求項7に記載のように、荷収納区画1の左右両隔壁枠2が前後一対の支柱材4a,4bを備えている場合、各支柱材4a,4bは互いに対向する内側が開放した横断面形状のものとし、前記支持部材9は、前後両支柱材4a,4bの側壁板部に取り付けられて荷収納区画1側に延出する前後一対のアーム材7に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る荷保管用ラックの荷支持装置によれば、ラックが地震発生時に荷収納区画の前後奥行き方向(荷受け部材の長さ方向)に揺れ動いたとき、ラックと一体に前後に揺れ動く支持部材と荷を支持している荷受け部材との間に付勢手段の付勢力に抗しての相対移動が生じ、荷を支持している荷受け部材がラックと一体に同一速度、同一振幅で前後方向に揺れ動くことがなくなる。従って、開放された通路側(前方)にラックが揺れ動いたときに荷受け部材及び当該荷受け部材上の荷が一体に前方に揺れ動くことにより、慣性で荷が荷受け部材上を通路側へ滑動し、場合によっては通路側へ落下してしまう恐れがなくなり、所期の免震効果が得られる。この支持部材と荷受け部材との間の前後方向の相対移動は、付勢手段を構成する付勢ユニットの垂直向きのコイルバネの中間部分を弾性に抗して前後方向に屈曲させることで実現しており、相対移動後は当該コイルバネが垂直状態に弾性復帰することにより、荷受け部材は支持部材上の原点位置に自動復帰するので、荷受け部材上で荷が滑動しない限り荷の位置が前後方向に不測に変動することはなく、安全に荷を継続保管することができる。
【0010】
而して、上記請求項1に記載の本発明の構成によれば、荷収納区画の左右両隔壁枠から連設された支持部材とこの上に位置する荷受け部材との間に、当該荷受け部材の支持手段と当該荷受け部材をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段とが配設されているので、従来のように平面視において荷受け部材の横側方にコイルバネなどの付勢手段が突出する場合と比較して、荷支持装置全体の平面視における占有スペースが従来の免震構造を持たない荷支持装置と同程度に小さくなり、ラック全体の収納効率を高めるのに役立つ。
【0011】
又、付勢手段を構成する付勢ユニットも、支持部材と荷受け部材との間の前後方向の相対移動時に垂直向きのコイルバネの中間部分を弾性に抗して前後方向に屈曲させ、その反力で支持部材に対し荷受け部材を原点位置に復帰させる方式のものとしたので、荷の重量に応じてコイルバネの線径や直径を大きくし、大きな原点復帰力(センタリング力)、延いては迅速な原点復帰を実現させることができるにもかかわらず、使用部品としてはコイルバネと上下一対のバネ受け部材だけで済み、部品点数が少なく安価に構成することができると共に、支持部材と荷受け部材との間の限られた空間内にも無理なく配設することができる。換言すれば、上記のような方式の付勢手段としたため、支持部材と荷受け部材との間の限られた空間内を利用して付勢手段を構成することができるに至ったのである。
【0012】
尚、付勢手段を構成する付勢ユニットは、上下両部材間の水平方向の相対移動時に垂直向きのコイルバネの中間部分を弾性に抗して水平方向に屈曲させる方式であるため、上下両部材の相対移動方向は水平方向360度如何なる方向であっても、同一の原点復帰作用が期待できる。従って、請求項2に記載のように、荷受け部材を支持する支持手段を、荷受け部材の長さ方向に対し直交する左右水平方向を含む二次元平面上の一定範囲内で前記荷受け部材をスライド可能に支持するように構成するだけで、ラックが左右水平横方向(荷受け部材の長さ方向に対し直交する水平方向)に地震などで多少揺れ動いた場合でも、荷が荷受け部材上を左右横方向に滑動して片側の荷受け部材上から外れ落ちたり、隔壁枠に接触するなどの事故を防止できる免震効果も追加的に得ることができ、一層安全性に優れたラックとして活用できる。
【0013】
又、請求項3に記載の構成によれば、前記支持手段及び付勢手段が完全に荷受け部材内に納められることになり、これら両手段に対する保護効果が高まるだけでなく、荷受け部材の左右両側壁部を当該荷受け部材の左右横方向の水平移動を制限するストッパー部材として活用することも可能になり、部品点数の削減に役立たせることもできる。
【0014】
荷受け部材をスライド可能に支持する支持手段としては、レールとローラーとの組み合わせなど、種々の構成のものが採用できるが、請求項4に記載の構成によれば、垂直向きの支持用柱体と被支持面部との組み合わせから成る極めてシンプルな構成であって、簡単且つ安価に実施することができる。又、支持用柱体と被支持面部との間の相対移動方向が制限されない構成であるから、請求項2に記載の構成を採用する場合の支持手段として特に効果的である。この場合、請求項5に記載の構成によれば、1つの支持ユニットに対し1つのスライド制限部材を追加するだけで、荷受け部材の長さ方向における支持ユニットの位置や荷受け部材の巾などに関係なく、荷受け部材の二次元平面上のスライド可能領域を確実に規制することができる。更に、請求項6に記載の構成によれば、支持部材に対する荷受け部材の水平方向のスライドを軽く円滑に行わせることができ、付勢手段の付勢ユニットに使用されるコイルバネの弾性力の低減、延いては当該コイルバネの小型化を図ることができる。
【0015】
又、請求項7に記載の構成によれば、地震力(振幅)が大きく、支持部材に対する許容スライド領域内での荷受け部材の相対移動だけでは十分な免震効果が期待できないような場合でも、支持部材そのものを、ラックの隔壁枠を構成する支柱材の側壁板部の左右横方向の弾性変形を利用して、ラックに対して前後水平方向に相対移動させることにより、免震効果を補わせることができる。従って、付勢手段の付勢ユニットに使用されるコイルバネの小型化にも役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の荷支持装置が適用できるラックの基本的な構成を示しており、1は上下左右両方向に碁盤目状に配置された荷収納区画であって、左右横方向に隣接する荷収納区画1間には垂直に隔壁枠2が立設され、上下に隣接する荷収納区画1は、左右一対の荷受け部材3によって区切られている。
【0017】
各隔壁枠2は、前後一対の支柱材4a,4bを連結部材5によって互いに連結したラチス構造のものであって、荷収納区画1の背面側では、各隔壁枠2の後側支柱材4bが水平や斜めの連結部材6で連結され、荷収納区画1の正面側、即ち、荷収納区画1に対して荷の出し入れを行う入出庫用クレーンの走行通路側では、荷収納区画1に対する荷の出し入れに邪魔にならないレベルで水平連結材(図示省略)で各隔壁枠2の前側支柱材4aどうしが連結されることが知られている。左右一対の荷受け部材3は、荷収納区画1に対する荷の出し入れ方向、即ち、荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)に長い棒状のもので、その前後両端部が、外側に隣接する隔壁枠2の前後両支柱材4a,4bに取り付けられた前後一対のアーム材7に支持される。
【0018】
以下、本発明の一実施形態を具体的に説明すると、各荷受け部材3は、図2B及び図5に示すように、下側開放の門形材8から成り、この各荷受け部材3の下側には、図2に示すように、当該荷受け部材3と平行な支持部材9が、外側に隣接する隔壁枠2の前後両支柱材4a,4bに取り付けられた前後一対のアーム材7の内端に固着されることにより架設されている。前後一対のアーム材7の外端は、従来周知のように、前後両支柱材4a,4bに高さ変更自在に取り付けられる取付部材10に固着されている。前後両支柱材4a,4bは、互いに対向する内側が開放する横断面形状のもので、前記取付部材10は、図2Cに示すように、支柱材4a,4bの横向きに突出する横断面角形の側壁板部4cに外嵌する状態でピン10aにより係止される。
【0019】
支持部材9は、帯状板を曲げ加工して構成された型材から成るもので、荷受け部材3を構成する門形材8よりも巾が狭く且つその天板部8aと平行な天板部9aを備えている。この支持部材9の天板部9aと荷受け部材3を構成する門形材8の天板部8aとの間には、前後2つの支持ユニット11A,11Bから成る支持手段12と、前後2つの付勢ユニット13A,13Bから成る付勢手段14とが介装されている。前後2つの支持ユニット11A,11Bは、荷受け部材3の前後両端近傍位置に配置された同一構造のもので、これら両支持ユニット11A,11Bの内側に接近して、互いに同一構造の付勢ユニット13A,13Bが配置されている。
【0020】
支持ユニット11A,11Bは、図4〜図6に示すように、支持部材9の天板部9a上にシムプレート15を介して取付ボルト16により垂直向きに取り付けられた支持用柱体17と、この支持用柱体17の真上に位置するように荷受け部材3(門形材8)の天板部8aの底面に取り付けられた滑りプレート18、及びこの滑りプレート18の下側に取り付けられたスライド制限部材19から構成されている。支持用柱体17は円柱体から成るもので、その先端面17aは、中心が支持用柱体17の中心線上にある突出球面状に形成され、この先端面17aが滑りプレート18の下側の被支持面部18aに滑動自在に当接して荷受け部材3を支持している。スライド制限部材19は、支持用柱体17の周囲を取り囲む環状体であって、その支持用柱体17が遊嵌する凹部20は、荷受け部材3の長さ方向に長い長円形であり、当該凹部20の内側面20aに支持用柱体17の側面が当接することにより、支持用柱体17に対する荷受け部材3の水平方向のスライドを制限する。
【0021】
尚、スライド制限部材19と滑りプレート18とは、スライド制限部材19と滑りプレート18の四隅を下側から上向きに貫通する取付ネジ21(図6参照)と荷受け部材3(門形材8)の天板部8aに設けられたネジ孔とにより両者一体に荷受け部材3に取り付けられている。当然、この取付ネジ21は荷受け部材3の上面(荷支持面)から上には突出しない。
【0022】
付勢ユニット13A,13Bは、図7に示すように、支持部材9の天板部9a上に取付ボルト22により垂直向きに取り付けられた下側バネ受け部材23と、荷受け部材3(門形材8)の天板部8aの下側に取付ネジ24で取り付けられた上側バネ受け部材25、及びこれら上下両バネ受け部材23,25に上下両端が外嵌する垂直向きのコイルバネ26から構成されている。上下両バネ受け部材23,25は、円柱状で先端部が裁頭円錐形に絞られた形状であって、支持部材9と荷受け部材3とが水平方向に平行相対移動したとき、中間部が水平方向に屈曲するコイルバネ26が接触する可能性のある周面には、ゴムライニング23a,25aが施されている。尚、上側バネ受け部材25は、荷受け部材3(門形材8)の天板部8aの上側から取付ネジ24で取り付けられるが、この取付ネジ24は皿ネジであって、当該取付ネジ24の頭部が荷受け部材3(門形材8)の天板部8aの上面(荷支持面)から上には突出しないようになっている。
【0023】
上記構成によれば、荷受け部材3は、前後2つの支持ユニット11A,11Bの支持用柱体17の先端面17aで荷受け部材3側の滑りプレート18の被支持面部18aが受けられることにより一定レベルで水平に支持され、当該荷受け部材3の水平面上の位置は、前後2つの付勢ユニット13A,13Bのコイルバネ26が垂直に自立していることにより、当該コイルバネ26とその上下両端に内嵌している上下両バネ受け部材23,25を介して支持部材9に対し定位置に保持されている。尚、荷が左右一対の荷受け部材3上に載せられていないときには、コイルバネ26の押し上げ力が荷受け部材3側の重量に勝って、支持ユニット11A,11Bの支持用柱体17と滑りプレート18との間に若干の隙間が生じるレベルに当該荷受け部材3が持ち上げられ、荷が左右一対の荷受け部材3上に載せられたとき、上記のように荷受け部材3が前後2つの支持ユニット11A,11Bの支持用柱体17で一定レベルに支持されるように構成しても良い。
【0024】
何れにしても、荷が左右一対の荷受け部材3上に跨がって載置されたとき、荷重は前後2つの支持ユニット11A,11Bの支持用柱体17を介して支持部材9に受け止められる。このとき前後2つの付勢ユニット13A,13Bのコイルバネ26は垂直に自立している。係る状態では、コイルバネ26を水平方向に屈曲させることができるだけの強さの水平向きの外力が荷受け部材3と支持部材9との間に相対的に作用すると、荷受け部材3と支持部材9とは、支持ユニット11A,11Bの支持用柱体17がスライド制限部材19の凹部20の内側面20aに当接するまでの範囲内で、支持用柱体17の先端面17aと滑りプレート18の被支持面部18aとの間の相対滑動を伴って、コイルバネ26を水平方向に屈曲させながら水平に相対移動することができる。
【0025】
従って、地震などによりラックが荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)に揺れ動いたとき、荷を支持している荷受け部材3に対し、ラックと一体の支持部材9が付勢ユニット13A,13Bのコイルバネ26の弾性に抗して同方向に揺動し、荷を支持している荷受け部材3と支持部材9との間で相対移動が生じ、荷受け部材3上の荷は殆ど揺れ動かないか又は、支持部材9の揺れよりも遅れて小さな振幅で揺れ動くことになり、揺れの速度や振幅が想定範囲内であれば所期の免震効果が得られる。勿論、付勢ユニット13A,13Bのコイルバネ26は、常に弾性復帰力で垂直姿勢に自動復帰しようとするので、ラックの揺れが収まったときには、当該コイルバネ26の弾性復帰力で荷受け部材3は所期の定位置に自動的に戻される。このときコイルバネ26の弾性復帰力は、荷が搭載されている荷受け部材3を、支持ユニット11A,11Bの支持用柱体17と被支持面部18aとの間の摩擦力に抗して原点復帰させることになるので、支持ユニット11A,11Bの支持用柱体17と被支持面部18aとの間の摩擦力はできる限り小さくなるように構成しなければならない。このため、支持用柱体17の先端面17aを上記のように突出球面に形成したり、荷受け部材3(門形材8)の天板部8aの底面を被当接面部に兼用させないで、摩擦抵抗の少ない材質から成る別部材の滑りプレート18を付設して被当接面部18aを構成するのが望ましい。
【0026】
尚、上記実施形態において、支持ユニット11A,11Bのスライド制限部材19の凹部20を、支持用柱体17が荷受け部材3の長さ方向、即ち、荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)にのみ相対移動できる巾とすることもできるが、付勢ユニット13A,13Bの垂直向きのコイルバネ26は、水平方向に360度如何なる方向にも屈曲できるものであるから、上記実施形態のように支持ユニット11A,11Bを構成して、スライド制限部材19によって制限される範囲内であれば荷受け部材3と支持部材9とが水平方向に360度如何なる方向にも相対移動できるように構成するのが望ましい。
【0027】
又、上記実施形態では、アーム材7を介して支持部材9を支持している隔壁枠2の前後一対の支柱材4a,4bが横断面形状が開放断面であって、図2Cに示すように、アーム材7を取り付けている支柱材4a,4bの横向きに突出する横断面角形の側壁板部4cが内外水平方向に弾性変形できるものであるから、この支柱材4a,4bの横断面角形の側壁板部4cの内外水平方向の弾性変形を伴う方向であれば、支持部材9と隔壁枠2との間の水平方向の相対移動がある程度許容されている。従って、地震などによるラック(隔壁枠2)の揺れ方向によっては、支持部材9と荷受け部材3との間の水平方向相対移動に加えて、支持部材9と隔壁枠2との間の水平方向の相対移動が、荷受け部材3で支持されている荷に対する免震効果を高めることにもなる。
【0028】
支持手段12を構成する支持ユニットの数や位置、付勢手段14を構成する付勢ユニットの数や位置、及び支持ユニットの構造は、上記実施形態のもの限定されない。
【0029】
図8に示す実施形態では、付勢手段14として3つの付勢ユニット13A〜13Cが、荷受け部材3の長さ方向の両端と中央位置とに配設され、支持手段12を構成する2つの支持ユニット30A,30Bが、両端の付勢ユニット13A,13Bの内側に隣接して配設されている。この実施形態における支持ユニット30A,30Bは、先の実施形態における支持ユニット11A,11Bからスライド制限部材19を省くと共に、図8Bに示すように支持用柱体17の直径と大きくして、荷受け部材3(門形材8)の左右水平方向のスライド可能領域を支持用柱体17と荷受け部材3(門形材8)の左右両側板部8b,8cとの当接により制限するように構成している。又、付勢ユニット13A,13Bは、基本的に先の実施形態のものと同一であるが、コイルバネ26の押し上げ力を大きくして、図8Aの左半分に示すように、荷が搭載されていないときの荷受け部材3が、支持ユニット30A,30Bにおける支持用柱体17の先端面17aと被支持面部18aとの間に隙間が生じるレベルまで持ち上げられ、荷が搭載されたときには、図8Aの右半分に示すように、荷受け部材3が若干下がって支持用柱体17の先端面17aと被支持面部18aとが互いに当接し、荷受け部材3が所定レベルで支持されるように構成している。
【0030】
図9〜図11は、更に別の実施形態に係る支持ユニット31を示している。この支持ユニット31は、先の実施形態における支持ユニット11A,11B,30A,30Bに代えて使用できるもので、支持部材9の天板部9a上に取り付けられた支持用柱体17の上端に、ベアリングホルダー32を嵌合し、このホルダー32の上面に形成された凹入受け部32a内に同一直径の球体(鋼球)33が複数個、各々が自由回転可能に遊嵌されて転がり支持部34が構成されている。この構成によれば、転がり支持部34の球体33が荷受け部材3側の滑りプレート18(被支持面部18a)にそれぞれ転動自在に当接して荷受け部材3を支持する。従って、支持用柱体17と被支持面部18aとの間の滑り抵抗が非常に小さくなるので、滑りプレート18としては普通の鋼板をそのまま使用することもできるし、適当な強度があれば、荷受け部材3(門形材8)の天板部8aの底面をそのまま被支持面部とすることができる。
【0031】
更に、上記の支持ユニット31では、支持用柱体17よりも大径となるベアリングホルダー32が支持用柱体17の上端に嵌合されているので、図10に示すように、当該ベアリングホルダー32と荷受け部材3(門形材8)の左右両側板部8b,8cとの間の空間が狭まるので、先の実施形態に示したスライド制限部材19を使用せず、ベアリングホルダー32と荷受け部材3(門形材8)の左右両側板部8b,8cとの当接により荷受け部材3の左右水平方向のスライド可能領域を制限するようにしている。従って、荷受け部材3の前後水平方向のスライド可能領域を制限するために、支持用柱体17の前後両側で荷受け部材3側にストッパー部材35a,35bを取り付けている。この2つのストッパー部材35a,35bも、これらストッパー部材35a,34bと滑りプレート18とを上向きに貫通するそれぞれ2本の取付ネジ36と荷受け部材3(門形材8)の天板部8aに設けられたネジ孔とにより、滑りプレート18と一体に荷受け部材3に取り付けられている。当然、この取付ネジ36は荷受け部材3の上面(荷支持面)から上には突出しない。
【0032】
尚、転がり支持部34を備えた支持ユニット31においては、支持用柱体17の上端面に球体33を遊嵌保持する凹入受け部32aを直接形成して、ベアリングホルダー32を省くこともできる。又、上記全ての実施形態の支持ユニットにおいて、支持用柱体17を荷受け部材3側から下向きに突設し、被支持面部18aを支持部材9側に設けることもできる。更に、左右一対の荷受け部材3は、入出庫用クレーンの荷移載用フォークなどによる荷の出し入れに影響しない箇所、例えば荷受け部材3の後端部や、前記荷移載用フォークの出退空間より下側で、荷受け部材3どうしを連結部材で互いに連結することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】A図は荷保管用ラックの基本構成を説明する要部の横断平面図、B図は同要部の正面図である。
【図2】A図は荷支持装置を示す平面図、B図は同正面図、C図はA図のC部拡大図である。
【図3】荷支持装置の片側を示す一部切欠き側面図である。
【図4】1つの支持ユニットを示す一部縦断側面図である。
【図5】同縦断正面図である。
【図6】図4のA−A線断面図である。
【図7】1つの付勢ユニットを示す一部縦断側面図である。
【図8】A図は第二実施形態における荷支持装置の片側を示す一部切欠き側面図、B図は同縦断正面図である。
【図9】第三実施形態における1つの支持ユニットを示す一部縦断側面図である。
【図10】同縦断正面図である。
【図11】図9のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 荷収納区画
2 隔壁枠
3 荷受け部材
4a,4b 支柱材
5,6 連結部材
7 アーム材
8 門形材
8a 門形材の天板部
9 支持部材
9a 支持部材の天板部
10 取付部材
11A,11B,30A,30B,31 支持ユニット
12 支持手段
13A,13B 付勢ユニット
14 付勢手段
17 支持用柱体
18 滑りプレート
18a 被支持面部
19 スライド制限部材
20 凹部
20a 凹部内側面
23 下側バネ受け部材
25 上側バネ受け部材
26 コイルバネ
32 ベアリングホルダー
32a 凹入受け部
33 球体(鋼球)
34 転がり支持部
35a,35b ストッパー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷収納区画の左右両隔壁枠の内側に、当該荷収納区画の前後奥行き方向に長い左右一対の荷受け部材が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置であって、前記荷受け部材の下側には、前記左右両隔壁枠から連設された支持部材が配置され、この支持部材と荷受け部材との間には、当該荷受け部材を少なくとも荷収納区画の前後奥行き方向の一定範囲内でスライド可能に支持する支持手段と、当該荷受け部材をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段とが配設され、この付勢手段は、前記支持部材から上向きに突設された下側バネ受け部材と荷受け部材から下向きに突設された上側バネ受け部材、及び上下両バネ受け部材に上下両端を嵌合させたコイルバネとから成る少なくとも1つの付勢ユニットを備えている、荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項2】
前記支持手段は、荷受け部材の長さ方向に対し直交する左右水平方向を含む二次元平面上の一定範囲内で前記荷受け部材をスライド可能に支持する、請求項1に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項3】
前記荷受け部材は下側開放の門形材から成り、前記支持手段及び付勢手段は、前記荷受け部材の下側開放溝形空間内に納められている、請求項1又は2に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項4】
前記支持手段は、荷受け部材の長さ方向に配列された少なくとも2つの支持ユニットを備え、各支持ユニットは、前記支持部材と前記荷受け部材との内の一方の部材に固着突設された垂直向きの支持用柱体と、他方の部材に設けられて前記支持用柱体の先端が相対滑動自在に当接する被支持面部とを備えている、請求項1〜3の何れか1項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項5】
前記支持ユニットは、前記被支持面部が設けられた部材側に、前記支持用柱体が遊嵌する凹部を有するスライド制限部材を備え、このスライド制限部材の凹部内側面と前記支持用柱体との当接により前記荷受け部材のスライドが制限されるように構成された、請求項4に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項6】
前記支持ユニットの支持用柱体の先端には、前記被支持面部に転動自在に当接する複数個の球体がそれぞれ自由回転可能に保持されている、請求項4又は5に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項7】
荷収納区画の左右両隔壁枠は、前後一対の支柱材を備え、各支柱材は互いに対向する内側が開放した横断面形状のものであって、前記支持部材は、前後両支柱材の側壁板部に取り付けられて荷収納区画側に延出する前後一対のアーム材に取り付けられている、請求項1〜6の何れか1項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−51238(P2008−51238A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228788(P2006−228788)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】