説明

荷役車両および荷役車両による荷役方法

【課題】荷室の壁面に沿う収納位置に、荷の端部を幅寄せして搬入、搬出する。
【解決手段】操向駆動輪31を有する車体12と、車体12の前部に配置されて荷10を底部から支持可能なフォーク14L,14Rと、フォーク14L,14Rの前端側に幅方向に所定間隔をあけて配置されて幅方向の軸心周りに回転自在wでフォーク14L,14Rを介して荷10を支持可能な複数の遊転車輪と、フォーク14L,14Rを昇降駆動可能なリフト装置13,51が配置された荷役車両11において、フォーク14L,14Rを幅方向にシフトすることにより、フォーク14L,14Rを遊転車輪52間に形成される荷旋回中心Oc周りに回動させるとともに、車体12を、操向駆動輪31である車体旋回中心Os回りにフォーク14L,14Rと相対方向に回動させるシフト装置35を、車体12とフォーク14L,14Rの間に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナなど幅の狭い荷室などで、壁面に沿う収納位置に荷の前後一方を幅寄せしたり、離間させて、荷をスムーズに搬入、搬出可能な荷役車両および荷役車両による荷役方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、コンテナなど奥行きがありかつ幅の狭い荷室に、前後に長い荷を積み込む場合、荷を側壁面に沿って配置された収納位置に積み込むことで、効率よく荷室を利用することができる。
【0003】
たとえばコンテナなどの荷室に荷を出し入れする荷役車両として、フォークリフトトラックや特許文献1や2などのローリフトトラックなどが使用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−237583号
【特許文献2】特許3862253号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フォークリフトトラックやローリフトトラックを使用する場合、壁面に沿う収容位置に沿って荷を搬入したり、搬出する場合、壁面と平行に直進させることによりスムーズに搬入、搬出することができる。しかし、収納位置前後の壁面の長さが小さい場合や壁面に出っ張りがある場合、収納位置に荷を幅寄せして搬入出するのは困難となる。
【0006】
なお、特許文献1には、左右逆方向に形成された雄ねじ部を有するねじ軸により、左右のフォークを接近離間させることにより、荷の幅に対応して安定して荷を支持できるシフト装置が設けられてるが、このシフト装置により荷を幅方向にシフトすることはできない。
【0007】
本発明は上記問題点を解決して、荷室の壁面に沿う収納位置に、前後に長い荷を幅寄せして搬入、搬出することができる荷役車両および荷役車両による荷役方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、単数の操向駆動輪を有する車体と、当該車体の前部に配置されて荷を底部から支持可能な荷支持体と、当該荷支持体の前端側に幅方向に所定間隔をあけて配置されて幅方向の軸心周りに回転自在に配置され、かつ荷支持体を介して荷を支持可能な複数の遊転車輪と、前記荷支持体を昇降駆動可能なリフト装置が配置された荷役車両において、
荷支持体を幅方向にシフトすることにより、旋回支持体を前記遊転車輪間に形成される荷旋回中心周りに回動させるとともに、車体を前記操向駆動輪を中心に旋回支持体と相対方向に回動させるシフト装置を、車体と荷支持体の間に設けたものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、車体の前部にシフト装置を介して、荷を底部から支持可能な荷支持体が配置され、当該荷支持体の前端側底部に、荷支持体を床面上に走行自在に支持する複数の遊転車輪が配置され、車体に単数の操向駆動輪が設けられ、荷支持体を昇降駆動するリフト装置が配置された荷役車両を使用して、荷を壁面に沿う収納位置に搬入する荷役車両による荷役方法であって、
荷役車両を壁面に対して傾斜する搬入経路に沿って収納位置まで搬入し、荷の前端側部を壁面に近接または当接させて停止した後、
前記シフト装置により荷支持体の後端部を壁面側にシフトすることにより、前記遊転車輪間の中間位置を荷旋回中心として、荷の後端部を壁面側に回動させると同時に、前記操向駆動輪を中心として車体を反壁面側に回動させて、荷の側面全面を壁面に接近させ、
前記リフト装置により荷支持体を下降させて荷を収納位置に搬入するものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、車体の前部に、シフト装置を介して幅方向にスライド自在に配置されるととに、荷を底部から支持可能な荷支持体と、当該荷支持体の前端側底部に配置されて荷支持体を床面上に走行自在に支持する複数の遊転車輪と、車体に単数の操向駆動輪が設けられ、荷支持体を昇降駆動するリフト装置が配置された荷役車両を使用して、荷を壁面に沿う収納位置に搬入する荷役車両による荷役方法であって、
荷役車両を壁面に対して傾斜する搬入経路に沿って収納位置まで搬入し、荷の前端側部を壁面に近接または当接させて停止した後、
前記シフト装置により荷支持体の後端部を壁面側にシフトすることにより、前記遊転車輪間の中間位置を荷旋回中心として、荷の後端部を壁面側に回動させると同時に、前記操向駆動輪を中心として車体を反壁面側に回動させて、荷の側面全面を壁面に接近させ、
前記リフト装置により荷支持体を下降させて荷を収納位置に搬入するものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の荷役車両によれば、シフト装置により複数の遊転車輪間の中心を荷旋回中心として荷支持体を回動させるとともに、車体を操向駆動輪を車体旋回中心として回動させることで、先端部が壁面に近接する荷を回動させて、荷の後部を壁面に幅寄せすることができる。反対に、壁面に沿う収納位置の荷を、シフト装置を用いて、後端部を壁面から離間させて傾斜させることができ、壁面に干渉することなく、容易に搬出することができる。したがって、コンテナなどで幅の限られた荷室に、熟練を要することなく容易かつスムーズに荷を壁面に沿う収納位置に搬入および搬出することができる。
【0012】
請求項2記載の荷役車両による荷役方法によれば、壁面に沿う収納位置で荷の前端部を壁面に近接または当接させた傾斜姿勢で搬入した後、シフト装置により荷支持体を壁面側にシフトして、荷支持体を遊転車輪間の荷旋回中心を中心として回動させて、荷の後端部を壁面側に接近させることができる。したがって、熟練を要することなく荷を適正な収容位置に、スムーズかつ容易に荷を搬入することができる。したがって、コンテナなどで幅の限られた荷室の壁面に沿う収納位置に、熟練を要することなく容易かつスムーズに搬入することができる。
【0013】
請求項3記載の荷役車両による荷役方法によれば、収納位置の荷の底部に、壁面側にシフトした状態で荷支持体を挿入して、リフト装置により荷を荷支持体上に支持させた後、シフト装置により、荷支持体を遊転車輪間の荷旋回中心を中心として回動させ、荷の後端部を壁面から離間させて、荷役車両を後部が壁面から離間する傾斜姿勢とし、壁面に沿う収納位置の荷を、スムーズかつ容易に搬出することができる。したがって、コンテナなどで幅の限られた荷室の壁面に沿う収納位置から荷を、熟練を要することなく容易かつスムーズに搬出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る荷役車両の実施例を示す側面図である。
【図2】荷役車両の平面図である。
【図3】荷役車両の背面図である。
【図4】シフト装置を示す正面図である。
【図5】車体部リフト装置を示す側面図である。
【図6】フォーク部リフト装置を示すフォーク前端部の平面断面図である。
【図7】(a)および(b)はフォーク部リフト装置の側面断面図で、(a)は非リフト状態、(b)はリフト状態を示す。
【図8】(a)および(b)はフォーク部リフト装置を示す正面断面図で、(a)は非リフト状態、(b)はリフト状態を示す。
【図9】荷役操作パネルを示す正面図である。
【図10】荷の水平保持制御を示すフロー図である。
【図11】(a)〜(c)はコンテナの荷室への搬入出動作を説明する荷役車両の側面図で、(a)はコンテナ内での移動状態を示し、(b)は水平な床面の搬送状態を示し、(c)は傾斜状のスロープの搬送状態を示す。
【図12】(a)〜(d)は本発明に係るコンテナの荷室からの搬出動作を説明する荷役車両の平面図で、(a)は荷室への侵入状態を示し、(b)は狙い位置の位置決め状態を示し、(c)はシフト動作を示し、(d)は搬入完了状態を示す。
【図13】(a)〜(d)は本発明に係るコンテナの荷室からの搬出動作を説明する荷役車両の平面図で、(a)は荷へのフォークの挿入前の状態を示し、(b)は荷へのフォークの挿入状態を示し、(c)はシフト動作を示し、(d)は搬出動作を示す。
【図14】(a)および(b)は、従来のコンテナへの荷の搬入方法を説明する平面図で、(a)はパターンAを示し、(b)はパターンBを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施例1]
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図11(a)および図12(a)に示すように、この荷役車両11は、限られた大きさの荷室3を有するたとえばコンテナ1に対して、最大限の高さの荷10を、左右壁面3L,3Rに沿う収納位置Pに出入り口2から出し入れするものである。なお、コンテナ1に限るものではなく、限られた高さの荷室に荷を搬入出するものでもよい。
【0016】
コンテナ1を搭載した運搬車両5を、荷の積下ろし位置に停止させると、運搬車両5の特性やコンテナ1の重量などに起因して、コンテナ1の出入り口2の底面の高さと、搬入出用床面6との間に段差が生じることがある。このために段差調整用の起伏式スロープ4が掛け渡される。そして、荷役車両11を搬入出用床面6からスロープ4および出入り口2を介してコンテナ1の荷室3に出入りさせ、荷10を荷室3内の収納位置Pに搬入、搬出する。ここで、図11(a)に示すように、荷10の最大限の高さHmaxとは、荷室の高さHCから、リフト状態の荷10と荷室3の天井面3C(天井面3Cの障害物や出入り口2を枠体2aを含む)までの余裕隙間δ+荷役車両11によるリフトストロークLS(図7参照)を減算した時の高さをいう。
【0017】
図1〜図3に示すように、この荷役車両11は、自走式である電動式(またはエンジン駆動式であってもよい)車体12と、この車体12の前部に設けられて、荷10を底部から支持する薄板状の左右一対のフォーク(昇降支持体)14L,14Rと、車体12とフォーク14L,14Rの間に設けられてフォーク14L,14Rを昇降駆動する車体部リフト装置13と、フォーク14L,14Rの前端側に設けられ遊転車輪52を介してフォーク14L,14Rの前端部を昇降駆動するフォーク部リフト装置(前端部リフト装置)51とを具備し、図示しないが、車体12に充電式バッテリーや油圧ポンプなどが装備されている。
【0018】
[車体]
車体12の上部に、アクセルレバー21や荷役操作パネル22、ステアリングハンドル23、モニター装置24が配置され、右後部に設けられた運転席25の床部にフットブレーキ26が設けられている。また車体12の上部で左右両側に立設されたポスト27に、前照灯28や方向指示器29などが設けられている。さらに車体12の底部で左側に、ステアリングハンドル23によりステアリングモータと走行用モータを介して走行駆動および操舵される操向駆動輪31が配置されている。さらにまた車体12およびフォーク14L,14Rは、1個の操向駆動輪31と2組の遊転車輪52とで支持され、さらに車体12の底部右側に、操向駆動輪31と幅方向で略同一の軸線上に垂直軸心周りに旋回自在に支持されたキャスター32が回転自在に設けられており、このキャスター32により車体12の姿勢が補助されている。
【0019】
[車体部リフト装置]
車体部リフト装置13は、図2、図5に示すように、車体12の前部に設置された車体前部フレーム41と、フォーク14L,14Rの後部に配置されたリフトフレーム42の左右のブラケットとの間に、案内機構として、幅方向のピンを介して回動自在に連結されて互いに平行な上下一対で左右二組のリンクアーム43aからなる平行リンク機構43が設けられ、リフトフレーム42が車体12に平行に昇降自在に連結されている。そして左右のリンクアーム43a間に、傾斜姿勢の車体部リフトシリンダ(車体部昇降駆動装置)44が設けられており、そのシリンダ本体が車体前部フレーム41の下部に支持され、ピストンロッドがリフトフレーム42の中央上部に連結されている。したがって、車体部リフトシリンダ44を伸縮駆動することにより、リフトフレーム42を平行リンク機構43を介して車体前部フレーム41に対して平行に昇降移動させ、リフトフレーム42の前部に設けられたフォーク14L,14Rを昇降駆動させることができる。これにより、車体10とフォーク14L,14Rが前後方向および幅方向に同一の傾斜姿勢となる。
【0020】
なお、平行リンク機構43に替えて、複数のガイドレールとスライド体からなるスライド機構などの他の案内機構を設けてもよい。
[シフト装置]
また図4に示すように、リフトフレーム42の前部に、左右のフォーク14L,14Rをそれぞれ幅方向に移動可能なシフト装置45が設けられている。このシフト装置45は、リフトフレーム42の前部で左右のサイドプレート42L,42Rの間に上下一対のスライド軸46U,46Dが幅方向に連結され、フォーク14L,14Rの後端部に立設された左右のバックレスト47L,47Rが、スラスト軸受を介してスライド軸46U,46Dに幅方向にシフト自在に支持されている。そして、右サイドプレート42Rに連結された左シフトシリンダ(左シフト駆動装置)48Lが左バックレスト47Lの背面に連結され、左サイドプレート42Lに連結された右シフトシリンダ(右シフト駆動装置)48Rが右バックレスト47Rの背面に連結されている。したがって、左右シフトシリンダ48L,48Rを伸縮駆動することにより、左右のフォーク14L,14Rをセンター位置からそれぞれシフト距離SR,SLの範囲で幅方向に単独、または連動してシフトすることができる。
【0021】
[フォーク部リフト装置]
図6〜図8に示すように、これら左右フォーク14L,14Rは、コンテナ1の荷室3の床面3Fとの間に荷10Dの底部に形成される高さHの低いフォーク挿入空間(底部空間)10Dに挿入可能な厚みTの薄板状に形成されており、複数の遊転車輪52が左右フォーク14L,14Rの底面から突出量tで少し下方に突出されている。そしてこれら遊転車輪52を介してフォーク14L,14Rを所定のリフト昇降ストロークLSだけ上昇させて、荷10を床面3Fから持ち上げるフォーク部リフト装置51が、左右のフォーク14L,14Rに前端部内にそれぞれ設けられている。またここで、遊転車輪52の接地面積が小さいと、荷10の荷重が床面3Fに集中してしまい、床面3Fを踏み抜いて損傷させるおそれがあるため、左右のフォーク部リフト装置51には、幅方向の軸心周りに回転自在な横長の遊転車輪52が4個ずつ、前後方向に一定間隔をあけて配置され、各遊転車輪52をそれぞれ均等圧で床面3Fに押し付けることができるようにフォーク部リフト装置51が構成されている。
【0022】
33は左右のフォーク14L,14Rの後端側上面に取り付けられたストッパで、フォーク挿入空間10Dへのフォーク14L,14Rの挿入限を形成している。
左右のフォーク14L,14Rに設けられるフォーク部リフト装置51は同一構造である。フォーク14L,14Rは、底面が開放されたチャンネル形断面で、左右の側板の内面に前端部分を除いて補強側板53がそれぞれ取り付けられ、補強側板53の前端部間に水平支軸54が幅方向に掛け渡されている。そして、この水平支軸54に左右一対の揺動レバー55が上下方向に揺動自在に枢支されている。これら水平支軸54から前方に伸びる揺動レバー55の前端部間に、水平方向の車輪支持軸56が掛け渡され、この車輪支持軸56に左右一対の車輪支持フレーム(車輪支持体)57の中間部が上下方向に揺動自在に枢支されている。そして、車輪支持フレーム57間には、車輪支持軸56の前後に等間隔をあけて4個の遊転車輪52が回転自在に軸支されて、正転または反転することで前方または後方の直進方向にフォーク14L,14Rの前端部を案内する。
【0023】
一方、揺動レバー55の後端側に受動くさびブロック58が取り付けられており、この受動くさびブロック58の後面に、前端側下部から後端側上方に傾斜する受動くさび面58tが形成されている。またフォーク14L,14R内で揺動レバー55の後方に、支持部材であるブラケットに水平ピンを介して左右一対のフォーク部リフトシリンダ(部昇降駆動装置)59が配置され、前方に出退されるピストンロッドの前端部間に、受動くさび面58tに当接される駆動くさびブロック60が取り付けられ、この駆動くさびブロック60は、底部に前後方向に配置されたガイド部材61により前後方向にスライド自在に案内されている。駆動くさびブロック60の前部に、前端下部から後端側上方に傾斜する駆動くさび面60tが形成され、これら受動くさび面58tと駆動くさび面60tの傾斜角は、フォーク14L,14Rがリフトされたフォーク部リフトシリンダの伸展位置で、面接触するように形成されている。また14cは、受動くさびブロック58の上方でフォーク14L,14Rの天板に形成された許容開口部で、持ち上げられた受動くさびブロック58がフォーク14L,14Rの天板に干渉するのを防止するためのものである。
【0024】
ここで、たとえばフォーク挿入空間10Dの高さHが100mmの場合、左右フォーク14L,14Rの厚みTが80mmで、遊転車輪52の突出量tは5mmに設定される。そしてリフト前のフォーク14L,14Rの非搬送高さDLは85mmである。さらにフォーク14L,14RのリフトストロークLSが30mmに設定されることにより、リフト後のフォーク14L,14Rの搬送高さHLは115mmとなっている。
【0025】
したがって、フォーク部リフトシリンダ59が伸展されて、ガイド部材61に案内されて駆動くさびブロック60が前方に押し出されると、駆動くさび面60tが受動くさびブロック60の受動くさび面58tを押圧して摺動し、このくさび面を利用した運動方向の変換機構により、受動くさびブロック60が上方に押し上げられる。これにより、後端部が上方に押し上げられた揺動レバー55の前端部が、下方に押し下げられることにより、車輪支持軸56および車輪支持フレーム57を介して4個の遊転車輪52を均等に床面3Fに押し付け、フォーク14L,14Rを非リフト位置DLからリフト位置HLまでリフトストロークLSだけ上昇されて荷10を持ち上げることができる。
【0026】
なお、2つのくさび面58t,60tのうち、駆動くさび面60tの前後長さが小さく形成されるとともに前後の上下端部に円弧面が形成されている。したがって、非リフト位置DLからリフト位置HLの手前までは、くさび面58t,60t同士が線接触して受動くさびブロック50を押し上げ、リフト位置でくさび面58t,60t同士が面接触されるので、揺動レバー55を安定して十分な力で支持することができる。
【0027】
[荷役制御]
図1に示すように、この荷役車両11に設けられた荷役制御装置71には、荷役操作パネル22からの操作信号が入力される。また車体の前部に設けられて車体12およびフォーク14L,14Rの前後方向の傾きを検出する傾斜センサ72の検出信号と、フォーク14L,14Rの左右一方(図では右側)の前端部に設けられて前方の壁面や荷などとの距離を検出する距離センサ73の検出信号がそれぞれ荷役制御装置71に入力される。そしてこの荷役制御装置71から、車体部リフト装置13の車体部リフトシリンダ44の制御弁を操作する車体部リフト操作器74への操作信号と、フォーク部リフトシリンダ51の制御弁を操作するフォーク部リフト操作器75への操作信号と、シフト装置45の左右のシフトシリンダ48L,48Rの制御弁をそれぞれ操作するシフト操作器76への操作信号がそれぞれ出力される。また荷役制御装置71では、距離センサ73の検出信号に基づいて、モニター装置24に前方の壁面や荷までの距離を表示させる。
【0028】
図9に示すように、荷役操作パネル22には、車体部リフト操作器74を操作する車体部上昇、下降ボタン22BU,22BDと、フォーク部リフト操作器75を操作するフォーク上昇、下降ボタン22FU,22FDと、シフト操作器76によりシフト装置45をそれぞれ独立して操作する左右のフォークシフトボタン22LSR,22LSL,22RSR,22RSLと、車体部シフト操作器74により左右のフォーク14L,14Rを同期してサイドシフトするサイドシフトボタン22SL,22SRとが設けられており、前記各操作信号がそれぞれ荷役制御装置71に出力される。
【0029】
さらに荷役操作パネル22には、荷10を水平姿勢に保持する水平保持ボタン22Hが設けられている。たとえば図11(c)に示すように、スロープ4と床面3Fの段差により荷10が傾斜している場合、操向駆動輪31がスロープ4上に、遊転車輪52が荷室3の床面3Fにあると、荷10が傾斜して出入り口2や荷室3の天井面3Cに接触し、荷10が損傷したり搬入出が困難となるおそれがある。このような場合に、水平保持ボタン22Hを押すと、傾斜センサ72により、フォーク14L,14Rと車体12の前後方向の傾斜を検出し、この検出信号に基づいて車体部リフト操作器74を操作し、車体部リフトシリンダ44を伸縮して荷10の水平姿勢を保持する。また水平保持ボタン22Hを押し、フォーク上昇、下降ボタン22FU,22FDを押すことにより、車体部リフト装置13とフォーク部リフト装置51とを連動させて水平姿勢を保持しつつ荷10を昇降し、荷10を水平姿勢で保持することができる。
【0030】
これを図10のフロー図を参照して下記に説明する。
搬入動作において、フォーク14L,14Rを下限に下ろした状態で、荷10の底部に形成されたフォーク挿入空間10Dにフォーク14L,14Rを挿入し、水平保持ボタン22Hとフォーク上昇ボタン22FUを押すことにより,車体部リフト装置13とフォーク部リフト装置51を連動して駆動し、フォーク14L,14Rを上昇させて荷10を底部から支持する。荷役車両11を走行させて路面からスロープ4に、さらにスロープ4から荷室3の床面3Fに移動する。
【0031】
この時、水平保持ボタン22Hがオンされる(STEP.1)と、傾斜センサ72の検出値が所定時間ごとに荷役制御装置71に入力され(STEP.2)、荷役制御装置71では、前記検出値が、予め設定された荷10の前後方向の傾斜が許容される閾値内にあるかどうか(STEP.3)を判断する。前記閾値を超えて(未満で)荷10の姿勢がたとえば前高、後低あると判断される(STEP.4)と、傾斜角の検出値から車体部リフト装置13の伸展量を演算して車体部リフト操作器74に伸展操作信号を送り、車体部リフト装置13の車体部リフトシリンダ44を所定量伸展させ(STEP.5)、荷10を水平姿勢とする。反対に、閾値未満で(を超えて)低く荷10の姿勢がたとえば前低、後高であると判断される(STEP.4)と、傾斜角の検出値から車体部リフト装置13の収縮量を演算して車体部リフト操作器74に収縮操作信号を送り、車体部リフトシリンダ44を所定量収縮させ(STEP.5)、荷10を水平姿勢とする。
【0032】
上記荷役車両11によれば、段差を解消するために傾斜して設置されたスロープ4から荷室3に出入りする時に、傾斜センサ72の検出信号に基づいて、車体リフト装置13を操作し、遊転車輪52の車輪支持軸56を中心にフォーク14L,14Rを上下方向に傾動して、フォーク14L,14R上の荷10の姿勢を水平に保持することにより、荷10の上端部が出入り口2や荷室3の天井面3Cに接触するのを防止することができ、段差調整用のスロープ4を介してコンテナ1に最大限の高さの荷10をスムーズに搬入、搬出することができる。
【0033】
(荷室への荷役方法)
たとえばコンテナ1のように、奥行きがあり幅の狭い荷室3に、壁面3R,3Lに沿う収納位置Pに対して、前後方向に長さのある荷10を搬入、搬出する場合、荷役車両11の従来の動作は、たとえば図14に示す2つのパターンA,Bが考えられる。図14(a)に示すパターンAは、荷10の前端部を左壁面3Lに接近するよう車軸Oを傾斜させるとともに、操向駆動輪31を左前方に向く操向方向から直進方向に転舵しつつ曲線方向に沿って前進させ、左壁面3Lに沿う収納位置Pに荷を搬入する方法である。また図14(b)に示すパターンBは、収納位置P前端を狙い位置とし、荷10の前端部を左壁面3Lに接近するよう車軸Oを傾斜させて、荷役車両11を直進させる。荷10の前端部が収納位置Pの前端に達すると、荷役車両11を一旦停止させ、さらに操向駆動輪31を左側に90°近く転舵して駆動させることにより、荷役車両11の後部を左側に振って、荷10の後端部を左壁面3Lに接近させる。
【0034】
しかしながら、上記パターンAやパターンBにより、壁面3R,3Lに沿う収納位置Pに荷10を精度よく搬入出するためには、作業者に十分な熟練度が必要となる。また、コンテナ1の出入り口2は、開閉扉を保持するために左右壁面3L,3Rから数十mmだけ内側に枠体2aが突出して間口が狭くなっている。そして、車体12がスロープ4の上にある。このため、枠体2aと車体12が干渉して、出入り口2近傍の収納位置Pに荷10を搬入、搬出するのが難しく、パターンBでも搬入が困難となる。
【0035】
(搬入動作)
この荷役車両11による荷の搬入方法を、図12を参照して説明する。
1)図12(a)に示すように、フォーク挿入空間10Dに挿入されたフォーク14L,14Rにより荷10を底部から支持する荷役車両11を、スロープ4から出入り口2を介して荷室3に入庫し、まず収納位置Pの後端近傍まで、荷10の前端部を接近させる。
【0036】
2)ここで、図12(b)に示すように、荷10の前端部と左壁面3Lとの離間距離Laを、La≦2×SR(または2×SL)、SR,SLはシフト装置45によるフォーク14L,14Rのセンター位置からのシフトストローク)とする。ここで、La<SR(またはSL)の場合には、予めシフト装置45によりフォーク14L,14Rを右側にシフトしておく。
【0037】
そして、荷役車両11の直進方向前方の狙い位置(たとえば目視による荷10の左側面の前方の狙い位置)が、収納位置Pの前端(奥壁面または既に積み込まれた荷10の左後端部)となるように、車体の車軸Oを、後部が左壁面3Lから離間する右側に所定の侵入角θiだけ傾斜させる。
【0038】
3)距離センサ73により、奥壁面や先に搬入された荷10とフォーク14R前端部との距離をモニター装置24で監視しつつ、荷役車両11を侵入角θiに沿って直線方向に前進させ、図12(c)に示すように、荷10aの前部左端が左壁面3Lに近接、または当接した収納位置Pで荷役車両11を停止させる。
【0039】
4)図12(c)に示すように、シフト装置45を駆動してフォーク14L,14Rを介して荷10の後端部を左壁面3L側にシフトさせると、遊転車輪52間の中心位置を荷旋回中心Ocとして、荷10の後端部が左壁面3L側に回動される。同時に、操向駆動輪31を車体旋回中心Osとして、車体12が右側(荷10の回動方向と相対する方向)に回動される。
【0040】
これにより荷10の左側面全面と荷室3の左壁面3Lとが互いに平行に近接(または接触)した状態となり、また荷役車両11の車軸Oが左壁面3Lと平行な姿勢となる。
5)図12(d)に示すように、車体部リフト装置13およびフォーク部リフト装置51を作動してフォーク14L,14Rを下降させ、荷10を収納位置Pに着地させる。そして、荷役車両11を後方に直進させてフォーク14L,14Rを荷10のフォーク挿入空間10Dから抜き出し、荷10の積み込みが完了する。この時、フォーク14L,14Rが左側で車体12がセンター位置より右側にあるため、車体12が左壁面3Lから離間されているので、荷役車両11の後退をスムーズに行うことができる。
【0041】
(搬出動作)
次に、荷室3の壁面3L,3Rに荷10の全側面が近接(または接触)した収納位置Pの荷10を、搬出する方法を、図13を参照して説明する。
【0042】
1)図13(a)に示すように、シフト装置45によりフォーク14L,14Rを左壁面3L側に所定距離またはシフト限までシフトさせ、さらにフォーク14L,14Rの狙い位置が荷10底部のフォーク挿入空間10Dとなるように、左壁面3Lに平行に前方に直進させ、そして図13(b)に示すように、フォーク14L,14Rをフォーク挿入空間10Dに挿入する。
【0043】
2)車体部リフト装置13およびフォーク部リフト装置51によりフォーク14L,14Rを上昇させてフォーク14L,14R上に荷10を支持させる。
3)図13(c)に示すように、フォーク14L,14Rを右壁面3R側にシフトすることにより、荷旋回中心Ocを中心として荷10の後端部を右壁面3R側に回動させる。同時に、車体旋回中心Osを中心として車体12をフォーク14L,14Rと反対側の左壁面3L側に回動させて、車軸Oが後部ほど左壁面3Lから離間する所定角度θoで傾斜させる。
【0044】
4)荷役車両11を斜め後方に後退させて荷室3から荷10を搬出する。
[実施例の効果]
上記実施例の荷役車両11によれば、シフト装置45により複数の遊転車輪52間の中心を荷旋回中心Ocとしてフォーク14L,14Rを回動させるとともに、車体12を操向駆動輪31を車体旋回中心Odとして回動させることで、先端部が壁面3L,3Rに近接する荷10を回動させて、荷10の後部を壁面3L,3Rに幅寄せすることができる。反対に、シフト装置45を用いて、壁面3L,3Rに沿う収納位置Pの荷の後端部を壁面3L,3Rから離間させて傾斜させることができ、壁面3L,3Rに干渉することなく、容易に搬出することができる。したがって、コンテナ1などで幅の限られた荷室3に、熟練を要することなく容易かつスムーズに荷を壁面に沿う収納位置に搬入および搬出することができる。
【0045】
また荷役車両11による荷役方法によれば、シフト装置45により遊転車輪52間の荷旋回中心Oc周りにフォーク14L,14Rを左右一方に回動させるとともに、車体12を操向駆動輪31の車体旋回中心Osとして左右他方に回動させることで、前端部が壁面3L,3Rに近接する荷10の後部側を壁面3L,3Rに幅寄せすることができる。反対に、壁面3L,3Rに沿う収納位置Pに積載された荷10を、シフト装置45を用いることで、荷10の後端部を壁面3L,3Rから離間させて車軸Oを後部から壁面3L,3Rから離間する方向に傾斜させることができる。これにより、壁面3L,3Rに干渉することなく、壁面3L,3Rに沿う収納位置Pに搬入、搬出することができ、コンテナ1などで幅の限られた荷室3に対して、熟練を要することなく容易かつスムーズに搬入、搬出することができる。また壁面3L,3Rや出入り口2に枠体2aのような突起物があっても、荷10を壁面3L,3Rに沿う収納位置Pに容易に搬入出することができる。特に、コンテナ1で出入り口2近傍の収納位置Pに搬入出する場合、車体12がスロープ4にあるが、シフト装置45により、出入り口2に設けられた枠体2aに干渉することなく、容易にかつスムーズに荷役作業を行うことができ有効性が高い。
【符号の説明】
【0046】
O 車軸
Oc 荷旋回中心
Os 車体中心
1 コンテナ
2 出入り口
2a 枠体
3 荷室
3L 左壁面
3R 右壁面
4 スロープ
10 荷
10D フォーク挿入空間(底部空間)
11 荷役車両
12 車体
13 車体部リフト装置
14L,14R フォーク(昇降支持体)
43 平行リンク機構
43a リンクアーム
44 車体部リフトシリンダ(車体部リフト駆動装置)
45 シフト装置
46U,46D スライド軸
47L,47R バックレスト
48R,48L シフトシリンダ
51 フォーク部リフト装置(前端部リフト装置)
52 遊転車輪
54 水平支軸
55 揺動レバー
56 車輪支持軸
57 車輪支持フレーム
58 受動くさびブロック
59 フォーク部リフトシリンダ(前端部リフト駆動装置)
60 駆動くさびブロック
71 荷役制御装置
72 傾斜センサ
73 距離センサ
74 車体部リフト操作器
75 フォーク部リフト操作器
76 シフト操作器
22RSR 右フォーク右シフトボタン
22RSL 右フォーク左シフトボタン
22LSR 左フォーク右シフトボタン
22LSL 左フォーク左シフトボタン
22SR 右サイドシフトボタン
22SL 左サイドシフトボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単数の操向駆動輪を有する車体と、当該車体の前部に配置されて荷を底部から支持可能な荷支持体と、当該荷支持体の前端側に幅方向に所定間隔をあけて配置されて幅方向の軸心周りに回転自在に配置され、かつ荷支持体を介して荷を支持可能な複数の遊転車輪と、前記荷支持体を昇降駆動可能なリフト装置が配置された荷役車両において、
荷支持体を幅方向にシフトすることにより、旋回支持体を前記遊転車輪間に形成される荷旋回中心周りに回動させるとともに、車体を前記操向駆動輪を中心に旋回支持体と相対方向に回動させるシフト装置を、車体と荷支持体の間に設けた
ことを特徴とする荷役車両。
【請求項2】
車体の前部に、シフト装置を介して幅方向にスライド自在に配置されるととに、荷を底部から支持可能な荷支持体と、当該荷支持体の前端側底部に配置されて荷支持体を床面上に走行自在に支持する複数の遊転車輪と、車体に単数の操向駆動輪が設けられ、荷支持体を昇降駆動するリフト装置が配置された荷役車両を使用して、荷を壁面に沿う収納位置に搬入する荷役車両による荷役方法であって、
荷役車両を壁面に対して傾斜する搬入経路に沿って収納位置まで搬入し、荷の前端側部を壁面に近接または当接させて停止した後、
前記シフト装置により荷支持体の後端部を壁面側にシフトすることにより、前記遊転車輪間の中間位置を荷旋回中心として、荷の後端部を壁面側に回動させると同時に、前記操向駆動輪を中心として車体を反壁面側に回動させて、荷の側面全面を壁面に接近させ、
前記リフト装置により荷支持体を下降させて荷を収納位置に搬入する
ことを特徴とする荷役車両による荷役方法。
【請求項3】
車体の前部にシフト装置を介して、荷を底部から支持可能な荷支持体が幅方向にスライド自在に配置され、当該荷支持体の前端側底部に、荷支持体を床面上に走行自在に支持する複数の遊転車輪が配置され、車体に単数の操向駆動輪が設けられ、荷支持体を昇降駆動するリフト装置が配置された荷役車両を使用して、荷を壁面に沿う収納位置に搬入する荷役車両による荷役方法であって、
前記シフト装置により荷支持体を壁面側にシフトした状態で、荷支持体を収納位置の荷の底部に挿入し、
前記リフト装置によりに支持体を持ち上げて荷を支持させた後、
前記シフト装置により荷支持体を反壁面側にシフトすることにより、前記荷支持体の後端部を、前記遊転車輪間の中心位置を荷旋回中心として反壁面側に回動させると同時に、車体を前記操向駆動輪を中心として壁面側に回動させ、これにより、荷の後端部を壁面から離間させた後、
荷役車両を後方に後退させて荷を収納位置から搬出する
ことを特徴とする荷役車両による荷役方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−188183(P2012−188183A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50902(P2011−50902)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】