説明

荷電粒子の集束に関する装置および方法

【課題】必要なパラメータ(質量、エネルギー、価数)を有する複数の種の荷電粒子を選択し伝送する装置及び方法を提供する。
【解決手段】対称面1702から間隔をあけて2つの平行なイオンビーム1701を生成し、平面1700間に設けられたモジュールに進入させる。これらのイオンビームは、対称面と平行な面において偏向され、永久磁石の列状体1716のフリンジ磁界を斜めに通過する。パラメータについて異なる値を有する必要な複数の種のイオンは、一連の焦点1708〜1711に至り、分解構造体(1707の開口及び1705−1706間の分解開口)を通って伝送され、ビームストッパ1704の両側において磁石の列状体を出る。2つのビームを実質的に間隔をあけて配置することによって、1)複数の種のイオンが伝送可能になり、2)軽量イオンであるプロトンの伝送を阻止し、3)従来の約2倍のビーム電流を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、複数の荷電粒子をパラメータに依存して集束させる装置及び方法に関する。本発明は、欧州特許出願第1090411B1[特許文献1]及び米国特許第6498348B2[特許文献2]に記された発明者による、「先の発明」を実質的に発展させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】欧州特許出願第1090411B1
【特許文献2】米国特許第6498248B2
【0003】
これらは何れも、大型テレビジョン及び大型広告ディスプレイ用に使用される非常に大型のフラットパネルディスプレイ基板のイオン注入に関する質量分析の問題に取り組んでいる。上述した発明に関する先行技術は、磁気物質の分離、不純物を含むビームの除去、及び、必要な種の伝送のために複数の磁石を使用しているが、これによって、大きさ及び出力消費が急激に増大し、基板が大型化して、商業的に魅力のないものになっていた。そこで、上述した複数の発明の独自の特徴は、基板のサイズの増加に伴って、磁石の設計を変更することがなく、磁石の重要な光学的特性が、磁石の長さ方向と直交する平面における磁石の断面の設計に依存しており、基板のサイズに依存すべきものが、磁石の長さであるということである。永久磁石系を用いた場合の特に魅力的な点は、磁石を所定の長さを有する複数の磁石モジュールに従って設計することができ、使用されるモジュールの数によって、イオン注入可能な基板のサイズを決定することができることである。基板のサイズが如何なるものであっても、消費電力はゼロである。上述したこれらの発明は、また、複数の平行ビームラインモジュールを用いることを可能にしており、その結果、ビーム電流特性に制限がない。
【0004】
この特許出願における「先の発明」に関する上記記述は、特許文献1に基づくものであり、図面の表示も、この基礎の文献1と同一であり、そして、磁極の列状体の磁界に入り、又は、この磁界から発生する荷電粒子のビームの位置及び数、並びに、その結果として、分解手段に作用する作用を除き、特許文献1の段落[001]から[0109]までの記述は、本発明にも全体的に該当する。
【0005】
しかしながら、特許文献1の「先の発明」に係る請求項は、「本発明」には該当しない。何故ならば、「先の発明」は、荷電粒子(これに限定されるものではないが、通常はイオン)の単一のビームを、単一のビームのみを伝送可能な二重分解構造体を用いて、磁極の列状体のモジュールの中央の対称面に導入し、または、上記中央の対称面の一方の側に移動し、伝播方向と実質的に同一の方向の軌道を常にこの平面内に、又は、この平面と平行に維持することを要件としているからである。
【0006】
「本発明」の最も重要な一面は、異なるパラメータを有する複数の種のイオンを伝送することができるということであり、この特性は、「先の発明」によってでは達成できない。他の重要な一面は、磁極の列状体のモジュールの各々において、単一のビームではなく、2つのビームを用いることによって、増大したビーム電流が得られることであり、これは、非常に高価なシステムハードウェアにおいて、同一の投資を行った場合のシステム性能に関して非常に重要な結果をもたらすものである。
【0007】
特許文献1において詳述された、「先の発明」前のリボン状ビームの質量分析、及び、「先の発明」そのものについてここで簡単に説明する。図面の表示は、特許文献1と正に同一であり、特別に付加した事項は、大括弧を付して示されている。
【0008】
図1(特許文献1の図3A)は、特別な実施形態を(3次元の図において)示しており、そこにおいては、リボン状ビームが、複数の磁極311の列状体によって提供された3つのモジュールのうち、中央のモジュールに入る状態を示している。磁極311は伸張方向350を有しており、これは、磁極の列状体の長さを決定し、従って、適用可能なビームの幅を(方向「A」に伸びる線状荷電粒子源313の長さによって)決定する。上記方向350に対して直角な角度で、最初の伝播方向と実質的に同一の方向に、線状源313から引き出された複数の平行なリボン状ビームは、伸張方向350(及び、複数の磁極の入り口領域)に対して直交する方向に、磁極311A及び311Bのそれぞれの磁極面間の対称面において、広がりをもった磁界の第1の領域の磁極間の磁界に入る。次いで、このビームは、磁界によって右側に片寄らせられ、入口境界に対する法線に対して所定の角度(即ち、方向350に対する法線に対して所定の角度で)この磁極間を出る。このビームは、依然として、対称面320(図2の面(特許文献1の図3Bの面)内にあり、この面は、図1における、ビーム源313及び集束クロスオーバの両方を含んでおり、上記方向350は、この面に対して直交する。この方向350に沿って見た状態が、図3A(特許文献1の図3C)に示されており、図3の紙面の方向(即ち、図2の008の方向)に、方向350と直交する、磁極の列状体の横断面が示されている。出口境界からこのように斜めの方向に出るという結果は、「フリンジ磁界集束」という周知の効果であり、これは、図4(特許文献1の図3E)に示されたように、湾曲したフリンジ磁界の力線との相互作用によって生ずる。これにより、図3Aの紙面に示されるように、ビームの集束がもたらされる。この集束作用は、(003の位置における)ビームの複数の粒子の移動方向と実質的に同一の方向を含む、対称面と直交する面(図2の002)内で発生し、ビームがフリンジ磁界領域内で片寄せられるときに、この平面の向きが変化する。次いで、このビームは、磁極311C、311D間の磁界の第2の領域に入り(図1参照)、そして、フリンジ磁界集束によって更に集束され、次いで、図2の紙面上で、磁界によって左に片寄せられる。磁極間の第2の隙間が、磁極間の第1の隙間と同一の形状を有しているが、逆の極性を有していると仮定すれば、ビームは、入口におけるビームの方向と平行な方向で(方向350に対して直交する方向で)列状体を出る。
【0009】
図3Bは、広がりをもった磁界の第1の領域から発生したビームを示している。図3A及び3Bは、複数の磁極の列状体を通過するビームの光景を示しており、ビームの軌道は、この紙面上にはない。図3A及び3Bの垂直方向と直交するビームの荷電粒子の運動方向の成分が存在しており、この成分は、図4に示した磁界成分312Fと相互に作用して、このビームの荷電粒子の、パラメータに依存する集束をもたらす。
【0010】
最初の伝播方句と実質的に同一の方向とは、ビームが荷電粒子源を出たときのビームの方向であり、そして、磁界による何らかの偏向を受ける前の方向である。ビームは、対称面と直交する平面において、発散又は集束する場合があり、従って、ビームは、対称面上の成分、又は、対称面と平行な成分である、実質的に同一の方向を有しているため、「実質的に同一の方向」と呼んでいる。
【0011】
第1の隙間の出口境界領域、及び、第2の隙間の入口境界領域におけるビームの集束が図1及び3に示されており、磁極の列状体の外側の331の位置に、集束クロスオーバが形成されている。図5(特許文献1の図12)においては、クロスオーバは、磁極の列状体の内側である、128Aの位置に形成されており、クロスオーバの後に更に集束している。磁極の列状体においてクロスオーバを付与するために必要なより強力な集束作用は、対称面(図2の紙面)上にビームの大きな偏向をもたらすことによって、実現され、その結果として、集束しているフリンジ磁界、及び、(入力ビームに対する)出力ビームの大きな偏向によって、大きく片寄せられた斜めの軌道がもたらされる。
【0012】
これらの複数の集束クロスオーバの位置は、荷電粒子の質量、帯電状態及びエネルギという複数のパラメータに依存しており、そして、(図6(特許文献1の図11の概略図)に示したモデル化された軌道[3]を有する)分解構造体によって、所望のパラメータを有する荷電粒子のビームが、の列状体の磁極間を伝送されることを可能になる。他のすべての軌道は、分解構造体によってブロックされる。
【0013】
図6は、列状体の永久磁石の磁極間に入る、「本発明」に係る単一の発散するビーム117Aを示しており、そのビームの発散角度は2°であり、概略的に明確にするために、y方向の寸法を10倍に増加させている。単一の正のイオンビーム117A(イオン注入にとって重要な荷電粒子)は、分解構造体の第1バリヤであるビームストッパ115によって中空ビーム状にされる(対称面に近接する軌道を除去する)。この結果、5−10%のオーダーのビーム電流が損失する。このバリヤは、分解方法にとって必須であり、そして、見通し線が、ビーム源313から分解構造体を通ることを防止して、イオン源からの中性の加速されていない汚染粒子が分解構造体を通って伝送されることを防止している。次いで、必要なビームが、出口領域004ex及び入口領域005enでの湾曲した磁界によって集束され、伝送制限構造体(以下の記載におけるTLS参照)の開口、及び、張力がかけられた複数の薄いストリップ111間の分解空間を通過し、次いで、更に集束され、ほぼ平行な出口ビーム117Bが得られる。僅かに低いイオン質量を有するイオンビームは、111Aまで伸びる111によって除去され、一方、僅かに高いイオン質量を有するイオンビームは、111Bまで伸びる111によって除去される。これ以外の好ましくない質量を有するイオンビームは、バリヤ111、114、115及び116によって除去される。114の開口の必要なサイズは、すべての好ましくないイオンを除去するという必要性によって決定され、一般的には、115及び116の幅が、114の開口の幅と実質的に等しくなるように構成される。
【0014】
図7Aにおいては、分解構造体の構成要素111及び114によってあるビームが除去されているが、111のみによってビームを除去することも可能である。図7Bにおいては、除去されるべきビームは、114によって除去されている(軌道の連続する部分である、灰色で示したビーム軌道は、分解構造体の構成要素114によって除去されている)が、このビームを、分解の開口のそれぞれの側において、分解構造体のバリヤ111によって除去しなくてもよい。何故ならば、117Hの位置における集束クロスオーバは、111Bまで伸びる111によって遮られる領域の外にあるからである。
【0015】
図8(特許文献1の図3D)に、複数のビームモジュールを示す(請求項には複数として記載されている)。
【0016】
図9(特許文献1の図14)において、入力ビームは、中央の面上に存在せず、その中央の面の一方の側に、これと平行に片寄らされている。分解構造体は、ビームの中央部分を除去する薄いバリヤ111、115及び116を設ける必要性を有しているが、上述により、分解構造体がこの必要性を回避することを可能にする。このような中央から偏倚した幾何学的配置構造は、平行な入力ビームを必要とする。何故ならば、無限遠における対象物の位置は、中央の平面上にあると考えることができ、従って、集束クロスオーバは、対称(中央)面上にあるからである。「先の発明」に係るこの実施形態に関連する二重分解構造体は、磁極の列状体からなるモジュールの中央面の一方の側において、第2のビームを用いることができない。この二重分解構造体は、イオン源の引出スロットから汚染粒子が、分解構造体を通って伝送されることを防止するために必要なものである。
【0017】
上述した「先の発明」の主な利点は、質量分離可能なビームのサイズ(即ち、リボン状ビームの幅)を決定するのは、(磁極の列状体の伸張方向における)磁石の長さのみであるという、有益なスケーリング特性である。(基板のサイズによって決定される)ビームのサイズが、磁極間のサイズ[3]を決定するところの技術は、非常に好ましくないスケーリング特性を有しており、1メートルを超える大きい寸法を有する基板には不経済であった。また、(「先の発明」におけるように)細長い平行な、入口及び出口領域を有する磁石から構成された磁極の隙間における中央面でリボン状ビームを用いるが、「先の発明」に係るパラメータに依存する集束分解技術を用いない技術においては、質量分離性能が著しく劣っており、例えば、ホウ素やリンイオンビームから著しく低い質量を有する水素を除去する場合にのみ適用可能であるものの、例えば、質量31のPから質量30の11BFを除去したり、Pビームから質量28の11イオンを除去する場合に適用することはできない。このように分解性能が劣るという問題は、ビーム幅(源313の長さ)が増大するに従って、深刻化する。
【0018】
先の発明の限定事項は、以下の通りである:
i) 分解構造体の構成要素115(図6及び7参照)によって、ビームの中央部分を除去し、その結果として、ビーム電流を損失すること。
ii) 分解構造体の構成要素114の開口の幅を、構成要素115のサイズによって決定しており、ビーム電流の損失を最小限に維持するために、この必要条件をできるだけ小さくすること。
【0019】
これは、単一のクロスオーバを有する単一の種のみが、114の開口を通って伝送可能であることを意味する。従って、10及び11amuの質量のホウ素の両方の同位体を伝送することによって、ビーム電流を25%増加することは実行不可能である。何故ならば、これら両方の同位体を伝送するために必要な電流除去量を増加することは、2つの同位体を伝送するという利益を無効にするからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
「本発明」は、これらの両方の限定事項を処理するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
第1の主な特徴における本発明によれば、複数の荷電粒子の質量及び/又はエネルギ及び/又は帯電状態を含む、荷電粒子の1つ以上のパラメータについての複数の異なる値に基づいて、前記荷電粒子に異なった作用をもたらす装置が提供され、前記装置は:
複数の細長い磁極からなり、一方向に伸びる列状体であり、前記磁極の長手方向が前記列状体の伸張方向に伸び、そして、磁極が、前記伸張方向と直交する平面において、一定の横断面形状を有する列状体であって、磁極の前記列状体は、前記装置の構成要素を配置するための基準を提供するための仮想基準面を有しており、前記仮想基準面は、磁極の前記列状体の前記伸張方向に伸びると共に、少なくとも1つの磁極が前記仮想基準面の一方の側に位置するように列状体を通過しているところの磁極と、
磁極の前記列状体の磁界に入り、又は、前記磁界から発生する、荷電粒子の2つのビームを提供するための2つのビーム源であり、前記2つのビームの各々と、前記仮想基準面との間に、荷電粒子が実質的に存在しない領域を提供するように、前記仮想基準面のそれぞれの側に1つずつ、前記仮想基準面から間隔をあけて設けられたビーム源であって、前記2つのビームの各々は、前記ビームを横切る所定の位置において、前記ビームの初期伝播方向と実質的に同一の方向を有すると共に、前記初期伝播方向と直交する細長い横断面を有しており;前記ビームの前記細長い横断面が、前記仮想基準面と平行な方向に伸びており;前記磁極は、磁極の前記列状体の前記伸張方向と直交する平面において、磁極の前記列状体内を移動する荷電粒子の、パラメータに依存する分散をもたらして、前記初期伝播方向と実質的に同一の方向が、前記仮想基準面と実質的に平行であると共に、磁極の前記列状体の伸張方向以外の方向にある状態にするように構成されているところのビーム源と、
前記パラメータに依存する集束によって、前記2つのビームから必要な粒子を選択するための分解手段と
を備え、
複数の前記磁極は、前記列状体の前記伸張方向と直行する平面において、磁極の前記列状体により、物理的に対向する磁極間に、前記仮想基準面を横切る磁界方向を有する、磁界の少なくとも1つの広がりをもった交差磁界領域が提供されるように構成されており、磁界の前記少なくとも1つの広がりをもった交差磁界領域は、入口及び出口領域を有しており、前記入口及び出口領域は、列状体における個々の対向する磁極と関連して、複数の磁極の前記列状体の伸張方向に沿って伸びていると共に、磁界の前記交差磁界領域にそれぞれ至り、そして、そこから出ており、前記入口及び出口領域は、前記仮想基準面と直交する平面において湾曲した複数の湾曲磁界をもたらしており、
磁極の列状体の磁界内に進入し、又は、そこから発生すると共に、前記仮想基準面と実質的に平行な移動方向をもって、前記交差磁界領域内を移動する2つのビームの各々の荷電粒子が、磁界の前記交差磁界領域によって、前記仮想基準面上において曲線運動を行い、そして、少なくとも1つの出口又は入口領域の前記湾曲磁界を、前記入口又は出口領域に対して直角な角度で通過して、荷電粒子の前記2つのビームに、パラメータに依存する集束作用をもたらし、もって、ビームの荷電粒子の移動方向を含む、前記仮想基準面と直交する平面において、パラメータに依存する集束作用を付与し、前記パラメータの複数の異なる値に基づいて、前記2つのビームの異なる粒子に、パラメータに依存する集束作用を付与するように、磁界の前記少なくとも1つの交差磁界領域、並びに、前記入口及び出口領域が構成されている
ことを特徴としている。
【0022】
ビーム(単一のビーム)を用いている「先の発明」と区別される本発明の最も重要な特徴は、2つのビーム源を、仮想基準面の各々の側に1つずつ用いて、実質的に間隔をあけて2つのビームを提供しているということである。これを以下「二重ビーム」という。分解構造体は、図6に示したものと実質的に同一である。
【0023】
2つのビーム源の間隔(2つのビーム抽出領域の間隔)、及び、結果として抽出されたビーム間の間隔は非常に重要である。何故ならば、これは、2つのビーム間におけるビームが存在しない領域の大きさを決定し、そして、これは、第1のビームストッパ(図6及び7における構成要素115)によって、「先の発明」において生じた、ビーム電流の損失を結果的に伴う中空ビームに相当するからである。従って、伝送制限構造体(図6及び7の構成要素114)の開口の大きさは、2つのビームの間隔によって決定される。従って、この間隔が大きくなるに従って、望ましくないすべてのビームを依然として除去しながら、分解構造体を通って伝送可能な種のパラメータ(質量、エネルギ及び帯電状態)の範囲も大きくなる。2つのビーム源は、(これに限定される訳ではないが)同一の荷電粒子源における2つの平行な開口である。「源」とは、各ビームの起点であって、荷電粒子生成装置(通常はイオン源)全体を意味するものではない。これらの2つのビーム源の各々は、それぞれ、イオン抽出集束システムを有しており、これによって、各ビームの仮想基準面からの最小距離が決定される。
【0024】
これらの2つのビームによって、「先の発明」の磁極の列状体を依然として用いながら、中央のビームが存在しない領域においてビーム損失が生じない状態で、単一のビームの2倍の電流が提供される。必要な種の粒子を含む、複数の同位体及び複数の分子イオンを用いることに起因して、必要な粒子の電流も増加する。
【0025】
ここで、「仮想基準面」とは、物理的な物の表面ではなく、幾何学的な観点において、幅を有するが、厚さを有さない表面である。磁極の列状体は、この表面の両側に位置している。複数の磁極は、電磁気的に生じるものでもよく、また、永久磁石であってもよい。
【0026】
磁極の列状体は、「先の出願」に関して記載されている。広がりをもった複数の交差磁界領域の入口及び出口領域が、列状体の伸張方向に伸びるように、この列状体の伸張方向の長さは、ビームのあらゆるサイズや、断面に関するすべての特徴を含む如何なる値を有していてもよい。この伸張方向は、横断面が、その伸張方向に相互に平行に伸びるという特徴をもって、直線的であってもよい。また、これは、横断面が、同心円状の円弧状通路を構成するという特徴をもって、円弧状であってもよい。
【0027】
この第の観点において、フリンジ磁界は、磁極の磁化方向に依存して、必ずしも、列状体の伸張方向と直交する平面内で湾曲している必要はなく、仮想基準面と直交する平面内で湾曲している。
【0028】
パラメータに依存する集束作用は、仮想基準面と直交する平面上で生ずる。ビームの集束作用は、ビームの荷電粒子の移動方向に生じ、従って、この集束平面(図2の002)の向きは、ビームが、実質的に幅を有する集束フリンジ磁界領域(図6の004ex及び005en)を通過するときに、そのビームの方向に従って変化する。
【0029】
第2の主な特徴における本発明によれば、前記仮想基準面は、対称面であり、前記仮想基準面の一方の側における複数の磁極は、前記仮想基準面の他方の側に対して物理的に対称な形状を有しており(この対称性は、磁界の方向には適用されない)、そして前記湾曲磁界は、磁極の列状体の前記伸張方向と直交する平面において、湾曲している装置が提供される。
【0030】
この第2の特徴において、仮想基準面は、平坦な対称面であり、二重ビームと関連付けて配置された磁極の列状体は、この平面に関して対称である。この特徴において、湾曲したフリンジ磁界は、この対称面と直交し、且つ、伸張方向と直交する平面上で湾曲する。このような配向は、磁極の列状体によってもたらされており、この列状体においては、磁化の方向のすべてが、配列の横断面方向の平面上に位置している。この第2の特徴は、本発明の最も好ましい実施形態、特に、本願の明細書に記載された実施形態を説明するものである。
【0031】
第3の主な特徴における本発明によれば、磁極の前記列状体の前記伸張方向は、直線的であり、荷電粒子の前記2つのビームの各々において、荷電粒子の初期伝播方向と実質的に同一の方向は、前記列状体の前記伸張方向に対して直行しており、そして、前記対称面の各々の側において、前記2つのビームは、実質的に平行なビームであると共に、前記仮想基準面に対して実質的に平行であるが、前記仮想基準面から離れている装置が提供される。
【0032】
(通常は、抽出された複数のビームは発散するが、)平行な複数のビームに集束することにより、2つのビームに関する対象の複数の位置(ビームの見掛けの起源)が同一であり、そして、無限遠に置かれるという重要な結果がもたらされる。これは、ビームを、ビームの中心を移動させた状態の単一の平行なビームであると判断することができ、このビームは、対称面上のクロスオーバに集束することを意味する。
【0033】
第4の主な特徴における本発明によれば、前記分解手段は、2つのバリヤ間に配置された分析開口であって、前記分析開口は、磁極の前記列状体の前記伸張方向に沿って伸びていると共に、前記仮想基準面上において、1つの望ましい荷電粒子ビームの1つの集束点、又は、複数の異なるパラメータを有する1つを超える望ましい荷電粒子ビームの複数の集束点の位置に位置しているところの分析開口と、前記仮想基準面に対して直交する1つの平面又は複数の平面において、磁極の列状体の前記伸張方向に沿い、そして、磁極の前記列状体の前記伸張方向と平行に伸びて、複数の軌道に従った好ましくない複数の粒子が、分析開口の各々の側において、前記2つのバリヤによって遮られた領域を超えて集束することを防止するための伝送制限手段とを備えるところの装置が提供される。
【0034】
この第4の特徴において、分解構造体は、分析開口内において、1又は1を超える集束クロスオーバ(その位置は、特定の種に関する荷電粒子のパラメータの複数の値によって決定される)をもたらす1又は1を超える種の荷電粒子の分解構造体を通って伝送を許容するように構成されている。
【0035】
この第3の主な特徴の重要な更なる特徴は、荷電粒子のパラメータの複数の値に関する特別な範囲を有する種の荷電粒子が開口を通って伝送されることを許容する伝送制限開口の開口サイズを実現するように、ビームの分解度を選択することができることである。ビームの分解度が大きくなるに従って、伝送制限開口を通って伝送可能な種の荷電粒子の範囲が大きくなる。イオン質量に従って分解する実際の重要な場合には、この範囲を、伝送されるべき最も重いイオンの何分の一かである、伝送されるべき最も軽いイオンの質量として表現することができる。この分解構造体は、磁極の列状体によってでは偏向されず、又は、集束されないエネルギ中性粒子や、荷電粒子源装置において発生する加速されない中性粒子を含む、他の好ましくないビームのすべてを除去する。
【0036】
磁極の列状体の対称面上における集束クロスオーバの位置は、2つのビーム間の距離によって影響を受けるものではない。
【0037】
第5の主な特徴における本発明によれば、
正に帯電した複数の荷電粒子ビームを、細長い荷電粒子源から、前記仮想基準面の各々の側に1つずつ抽出するための抽出アセンブリを備え、前記細長い荷電粒子源は、前記2つの荷電粒子ビーム内の粒子の抽出方向と実質的に同一の方向と直交する方向に伸びており、前記抽出アセンブリの各々は、前記荷電粒子源から粒子を抽出し、そして、前記荷電粒子源のプラズマ面から抽出されたビームの光学特性を制御するための1つの加速領域と、これに続いて、他の任意の加速領域または減速領域と、複数のビームを実質的に平行な要求された起動に集束させるための加速領域と、磁極の列状体に入るビームの空間電荷の中和を維持するために必要な電子を集束し、そして/又は、反射するための減速領域とを有している装置が提供される。
【0038】
重要なのは、集束が質量に依存しないように2つのビームを静電的に集束させ、すべてのイオン質量を平行なビームに集束させることができることである。2つのビームのための抽出構造対及び集束構造体は、空間を必要としており、この空間が、ビームの対称面からの最小距離を制限している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】リボン状ビームが中央のモジュールに入る状態を示す実施形態を3次元的に示す図。
【図2】複数対の磁石のうちの2つの間に伸びる平面上において見た、図1に示した装置の平面図。
【図3A】源に対して平行な方向において見た、図1の装置の端面図。
【図3B】広がりをもった磁界の第1の領域で発生したビームを示す図。
【図4】源に対して平行な方向に見た、集束作用に応答可能なフリンジ磁界の構成要素を示す図。
【図5】必要な種のビームの平行出口を有する強レンズモードの四重レンズを通る粒子の軌跡のコンピュータで作成した図。
【図6】永久磁石の列状体に入る「先の発明」に係る単一の集束ビームを示す図。
【図7A】分解構造体の複数の構成要素によって除去されるが、分解構造体の単一の構成要素によっても除去可能であるビームを示す図。
【図7B】除去されるべきビームが伝送制限構造体によって除去されている状態を示す図。
【図8】複数のビームモジュールを示す図。
【図9】中央の面上ではなく、中央の面の一方の側にこれと平行に偏倚された入力ビームを示す図。
【図10】分析開口及びビーム伝送制限開口を通過し、そして次いで、目標の方向に伝送された、「本発明」に係る必要な複数のビームのビーム軌道に関して、永久磁石の磁極からなる列状体の、これらの磁極の伸張方向に見た横断面図。
【図11】発散しそして集束した水素イオン反射ビームの「本発明」に係るビーム軌道に関して、永久磁石の磁極からなる列状体の、これらの磁極の伸張方向に見た横断面図。
【図12】実質的に平行な複数の二重ビームシステムを提供するための抽出及び集束システムを示す図。
【図13】規則的に間隔をあけて平行に配置された対称面を有する二重ビームの複数のシステムのための磁石を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施形態を、例示の目的で添付図面を参照しながら、以下に説明する。添付図面のうちの幾つかは、「先の発明」に係る装置を示しており、添付図面において、
図10は、「本発明」に係る複数の永久磁極からなる列状体を、これらの磁極の伸張方向に見て、ビームの軌道を示す横断面図であり、複数の必要なビームが分析開口及びビーム伝送制限開口を通り、次いで、目標に向かって伝送されている状態を示す図であり、
図11は、「本発明」に係る複数の永久磁極からなる列状体を、これらの磁極の伸張方向に見て、ビームの軌道を示す横断面図であり、反射した水素イオンビームの発散及び集束を示す図であり、
図12は、実質的に平行な二重ビームの複数のシステムを形成するための抽出及び集束システムを示す図であり、
図13は、規則的に間隔をあけて平行に配置された対称面を有する二重ビームの複数のシステムのための磁石を示す図である。
【0041】
図10は、対称面1702を有する複数の平面1700間に配置された「本発明」に係るモジュールを示しており、ビームは、ジボランイオン源供給材料から生じたものである。磁極の列状体は、複数の永久磁石1716から構成されており、磁極の列状体の横断面形状は、反射ビーム光学特性及び伝送ビーム光学特性の双方を最適化することによって決定される。この形状は、広がりをもった複数の磁界において均一の磁界を生成するものではなく、従って、広がりをもった複数の磁界と、複数のフリンジ磁界領域の双方において、湾曲した磁界の力線が存在している。入口制限体1715は、起源領域を列状体の磁界から遮蔽している。y方向の大きさは、10の倍数で増加されている。
【0042】
2つの平行なビームは、伸張方向が、磁極の列状体の伸張方向(図10の紙面と直交する)と平行な状態で、永久磁極の列状体1716の四重極磁界に入り、そして、必要な複数の種である質量10、11、12及び13(101110BH11BHイオン)が(1708、1709、1710及び1711で)集束され、TLS1707における開口と、1705及び1706間に設けられた分解開口との双方を通って伝送され、そして、磁極の列状体を出て、ビームストッパ1704の各々の側に至る。これらの軌道は、磁気シミュレーションソフトウェア[3]を用いてモデル化される。複数の種を用いることにより、第一に、必要な種の粒子電流が、分子イオン中の他の種が受入れ可能であることを条件として、最大限にされる。
【0043】
TLS1707は、ビームストッパ1702及び1704、並びに、分析開口バリヤ1706を組み合わされて、以下の幾つかの作用をもたらす:
a) 1706を超えて集束するイオンを含む、高い質量を有するイオンのすべての飛翔を除去する;
b) 集束せず、そして、ビーム中にあらゆる種の電子及び分子を含む平行なビーム1701であって、四重極の集束領域に至る前のビームに生ずる粒子間衝突によって生成される、軌道1712及び1713間のエネルギ中性粒子を除去する;
c) 源からの加速されていない中性粒子、及び、集束前に抽出領域において生ずる加速されていない中性粒子1714の(それぞれのビーム源に対する)発散を除去する。
【0044】
質量の小さいイオン(強い集束作用を有する)は、分析開口バリヤ1705又はビームストッパ1703によって除去されるか、又は、反射される(y方向[4]に見て、広がりをもった磁界の第1の領域において180度偏向される)。
【0045】
明らかなように、伝送可能な複数のイオンの種の範囲は、TLSの開口の幅によって決定され、この幅は、2つのイオンビーム間の距離(実質的に荷電粒子が存在しない、これらの2つのビームの各々と、対称面との間の領域)によって決定される。ビーム間の距離が大きくなるに従って、TLSを通過可能なイオンの種の範囲が大きくなる。
【0046】
ボロンのための他の供給材料はBF(三フッ化ボロン)であり、この場合、伝送可能な唯一のイオンは、質量10及び11のボロン(20%及び80%の量)である。複数のイオンの種の伝送に関する限定された範囲があったとしても、「先の発明」において、10及び11の質量の伝送を許容するのに必要なビーム損失は、容認し難いほど大きい(このビーム損失は、10の質量の伝送からのゲインよりも遥かに大きい)。
【0047】
リンのための供給材料はホスフィン(PH)であり、必要なイオンは、31、32及び33amuの質量のP、PH及びPH2である。BFをボロンイオン供給源材料として用いた場合には、イオンを含むリンを注入する際に、質量30の11BFを除去することが重要である。質量30のイオンは、バリヤ1705によって除去される。
【0048】
図11は、「本発明」の他の重要な特徴を示している。図11は、図10と同一のモジュールを示しているが、10−13の質量(BHイオン)を伝送する場合の、水素イオンビームの軌道を示している。イオン源において、水素化物供給材料を用いて、ボロン又は燐を注入するために本発明を用いる場合に、最も軽量のイオンであるプロトンは、常に反射され、相当な量のプロトンの流れが存在し、その結果として、プロトンが抽出領域に入ることを阻止することが重要である。発散する反射ビームは、反射ビーム全体が複数の面1807上に集まるのに十分な中空状を有するように、プロトン1801の軌道が構成される。
【0049】
10−13の質量を伝送するときの水素分子イオンH及びHの軌道を、1802及び1803において、バリヤ1805及び1806上にそれぞれ集まる集束ビームとして示す。永久磁石の構成要素1809の位置によって、これらの軌跡の形状が決定される。PH(ホスフィン)を用いて31−33の質量(P、PH及びPH)を伝送すると、3つの水素イオンのすべてが反射されて、1807に集まる。図11における構造体1805、1806及び1807、並びに、図10における分解構造体の何れも、この装置中に存在しているが、説明を容易にするために2つの図面に別々に示されている。2つのビーム間のビームが存在しない領域が大きいため、反射ビームの集合特性は、「先の発明」よりも優れている。
【0050】
本発明の他の重要な特徴は、「先の発明」の単一のビームではなく、磁極の列状体を有する各モジュールにおいて2つのビームを有していることに起因して、ビーム電流が増加していることである。
【0051】
図12は、1902の位置に対称面を有する二重ビーム抽出・集束システムの、面1901間のモジュールを概略的に示す図である。複数のビームは、抽出(及び加速)電極1906によって、1905のイオン源から抽出され、加速電極1907によって更に(弱い集束を伴って)加速され、そして、磁石の列状体の電位を有する減速電極1908によって減速され集束される。入口制限体1909は、磁石の列状体の外部磁界からイオン源をシールドしており、そして、1910が、広がりをもった磁界の第1の領域の永久磁石の列状体の始点である。
【0052】
永久磁石を用いる場合は、伝送されるビームの(質量Xエネルギの)生成物は固定値を有しており、そして、ボロンは、(例えば)62keVの高エネルギ及び(10−13)の低質量を有しており、空間電荷による重大な影響を受けることはない。その結果、抽出加速、次いで、減速、次いで、必要な最終エネルギに近い値への加速、次いで、基準減速を含む、他の抽出及び集束システムを有益に実施して、ビームからの電子を反射させることによって、磁石の列状体に入るビームの空間電荷の中和を保護することができる。低ビームエネルギ(20keV)を有する高質量イオンビームであるリンは、採用されるべき減速用集束システムでは、高すぎる空間電荷を有している。
【0053】
図13は、平面2000間に中心モジュールを有する分析用永久磁石を含む5つの二重ビームモジュールを概略的に示す図である。2つのビーム2002は、イオン源2001から抽出され(抽出システムは図示されていない)、(磁極の列状体の外部磁界からイオン源を遮断するために設けられた)入口制限領域2003を通って、永久磁石の列状体2004、2005の広がりをもった交差磁界領域によって形成された複数の、即ち、四重磁石内に入る。5つのモジュールは、矢印2007によって概略的に示された磁気回路を共有している。永久磁石を出るビーム2008は、伝送されるべきイオンの質量によって決定される固定値を有しており、その磁石と目標との間の領域で、その最終エネルギに加速又は減速される。
引用文献
[1]欧州特許出願第1090411B1
[2]米国特許第6498348B2
[3]PC-Opera,ベクターフィールドリミテッド、オックスフォード、イングランド、UK
[4]文献[1]における図9Bの97B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の荷電粒子の質量及び/又はエネルギ及び/又は帯電状態を含む、荷電粒子の1つ以上のパラメータについての複数の異なる値に基づいて、前記荷電粒子に異なった作用をもたらす装置において、前記装置は:
複数の細長い磁極からなり、一方向に伸びる列状体であり、前記磁極の長手方向が前記列状体の伸張方向に伸び、そして、磁極が、前記伸張方向と直交する平面において、一定の横断面形状を有する列状体であって、磁極の前記列状体は、前記装置の構成要素を配置するための基準を提供するための仮想基準面を有しており、前記仮想基準面は、磁極の前記列状体の前記伸張方向に伸びると共に、少なくとも1つの磁極が前記仮想基準面の一方の側に位置するように列状体を通過しているところの磁極と、
磁極の前記列状体の磁界に入り、又は、前記磁界から発生する、荷電粒子の2つのビームを提供するための2つのビーム源であり、前記2つのビームの各々と、前記仮想基準面との間に、荷電粒子が実質的に存在しない領域を提供するように、前記仮想基準面のそれぞれの側に1つずつ、前記仮想基準面から間隔をあけて設けられたビーム源であって、前記2つのビームの各々は、前記ビームを横切る所定の位置において、前記ビームの初期伝播方向と実質的に同一の方向を有すると共に、前記初期伝播方向と直交する細長い横断面を有しており;前記ビームの前記細長い横断面が、前記仮想基準面と平行な方向に伸びており;前記磁極は、磁極の前記列状体の前記伸張方向と直交する平面において、磁極の前記列状体内を移動する荷電粒子の、パラメータに依存する分散をもたらして、前記初期伝播方向と実質的に同一の方向が、前記仮想基準面と実質的に平行であると共に、磁極の前記列状体の伸張方向以外の方向にある状態にするように構成されているところのビーム源と、
前記パラメータに依存する集束によって、前記2つのビームから必要な粒子を選択するための分解手段と
を備え、
複数の前記磁極は、前記列状体の前記伸張方向と直行する平面において、磁極の前記列状体により、物理的に対向する磁極間に、前記仮想基準面を横切る磁界方向を有する、磁界の少なくとも1つの広がりをもった交差磁界領域が提供されるように構成されており、磁界の前記少なくとも1つの広がりをもった交差磁界領域は、入口及び出口領域を有しており、前記入口及び出口領域は、列状体における個々の対向する磁極と関連して、複数の磁極の前記列状体の伸張方向に沿って伸びていると共に、磁界の前記交差磁界領域にそれぞれ至り、そして、そこから出ており、前記入口及び出口領域は、前記仮想基準面と直交する平面において湾曲した複数の湾曲磁界をもたらしており、
磁極の列状体の磁界内に進入し、又は、そこから発生すると共に、前記仮想基準面と実質的に平行な移動方向をもって、前記交差磁界領域内を移動する2つのビームの各々の荷電粒子が、磁界の前記交差磁界領域によって、前記仮想基準面上において曲線運動を行い、そして、少なくとも1つの出口又は入口領域の前記湾曲磁界を、前記入口又は出口領域に対して直角な角度で通過して、荷電粒子の前記2つのビームに、パラメータに依存する集束作用をもたらし、もって、ビームの荷電粒子の移動方向を含む、前記仮想基準面と直交する平面において、パラメータに依存する集束作用を付与し、前記パラメータの複数の異なる値に基づいて、前記2つのビームの異なる粒子に、パラメータに依存する集束作用を付与するように、磁界の前記少なくとも1つの交差磁界領域、並びに、前記入口及び出口領域が構成されている
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記交差磁界領域における前記磁界は、均一ではなく、その結果として、前記仮想基準面に対して直交する平面において湾曲する、湾曲磁界を有している、請求項1に記載した装置。
【請求項3】
前記仮想基準面は、対称面であり、前記仮想基準面の一方の側における複数の磁極は、前記仮想基準面の他方の側に対して物理的に対称な形状を有しており、そして前記湾曲磁界は、磁極の列状体の前記伸張方向と直交する平面において、湾曲している、請求項1又は2に記載した装置。
【請求項4】
磁極の前記列状体の前記伸張方向は、直線的であり、荷電粒子の前記2つのビームの各々において、荷電粒子の初期伝播方向と実質的に同一の方向は、前記列状体の前記伸張方向に対して直行しており、そして、前記対称面の各々の側において、前記2つのビームは、実質的に平行なビームであると共に、前記仮想基準面に対して実質的に平行であるが、前記仮想基準面から離れている、請求項1から3の何れか1つに記載した装置。
【請求項5】
前記仮想基準面に対して直交する平面において、前記仮想基準面に沿った複数の異なる集束点で、2つのビームの各々における荷電粒子の、パラメータに依存する集束によって、前記パラメータについての複数の異なる値に基づいて、前記2つのビームから必要な粒子を選択するように、前記分解手段は構成されている、請求項1から4の何れか1つに記載した装置。
【請求項6】
前記分解手段は、
2つのバリヤ間に配置された分析開口であって、前記分析開口は、磁極の前記列状体の前記伸張方向に沿って伸びていると共に、前記仮想基準面上において、1つの望ましい荷電粒子ビームの1つの集束点、又は、複数の異なるパラメータを有する1つを超える望ましい荷電粒子ビームの複数の集束点の位置に位置しているところの分析開口と、
前記仮想基準面に対して直交する1つの平面又は複数の平面において、磁極の列状体の前記伸張方向に沿い、そして、磁極の前記列状体の前記伸張方向と平行に伸びて、複数の軌道に従った好ましくない複数の粒子が、分析開口の各々の側において、前記2つのバリヤによって遮られた領域を超えて集束することを防止するための伝送制限手段と
を備える、請求項1から5の何れか1つに記載した装置。
【請求項7】
前記2つのビームの各々と、前記仮想基準面との間に、前記ビームを提供するための手段の領域において、荷電粒子が実質的に存在しない領域が存在し、前記伝送制限手段の開口は、1つ以上の異なる位置で、異なるパラメータに依存して集束する1つ以上の必要な種の荷電粒子が、前記伝送制限手段の前記開口を通って伝送され、そして、好ましくない種の全てが、前記仮想基準面上のバリヤ、及び、前記伝送制限手段のバリヤによって除去される、請求項1から6の何れか1つに記載した装置。
【請求項8】
磁界の少なくとも1つの初期交差磁界領域及び磁界の最終交差磁界領域を有する少なくとも2つの交差磁界領域と、少なくとも1つの中間領域を有する2を超える数の交差磁界領域と、そして、
前記仮想基準面から離れた位置で、前記仮想基準面の一方及び他方の側のそれぞれに1つずつ設けられ、前記初期交差磁界領域に進入し、又は、そこから発生する2つのビームをそれぞれ提供するための2つのビーム源と
を備え、
複数の前記磁極は、磁界の前記初期交差磁界領域中を移動する1又は2のビーム中の荷電粒子に、パラメータに依存する曲線運動を与えるように、前記伸張方向と直交する平面において構成されており、前記荷電粒子は、前記列状体の伸張方向に対して直行する角度で、磁界の前記交差磁界領域を出て、前記列状体の何れかの中間交差磁界領域を通過し、そして、磁界の前記最終交差磁界領域中へと移動し、一連の前記交差磁界領域は、交互極性を有している、請求項1から7の何れか1つに記載した装置。
【請求項9】
正に帯電した2つの荷電粒子ビームを、細長い荷電粒子源から、前記仮想基準面の各々の側に1つずつ抽出するための抽出アセンブリを備え、前記細長い荷電粒子源は、前記2つの荷電粒子ビーム内の粒子の抽出方向と実質的に同一の方向と直交する方向に伸びており、前記抽出アセンブリの各々は、前記荷電粒子源から粒子を抽出し、そして、前記荷電粒子源のプラズマ面から抽出されたビームの光学特性を制御するための1つの加速領域と、これに続いて、ビーム集束を行うための1以上の加速又は減速領域と、これに続いて、磁極の前記列状体に入るビームの空間電荷の中和を維持するために必要な電子を集束し、そして、反射するための1つの減速領域とを有している、請求項1から8の何れか1つに記載した装置。
【請求項10】
2つの荷電粒子源から抽出された2つのイオンビームの各々の前記仮想基準面からの距離は、原子又は分子の必要な種を含む1以上のイオンビームの種が、1以上の焦点を通り、そして、前記仮想基準面と直交し、且つ、磁極の前記列状体の伸張方向と平行な平面における2つのバリヤ間に設けられた伝送制限開口、及び、前記仮想基準面上の2つのバリヤ間に設けられた分析開口を通って伝送され、これらのバリヤが好ましくない荷電粒子の種を除去するように、決定される、請求項9に記載した装置。
【請求項11】
荷電粒子の2つのビームを提供するための複数の手段と、パラメータに依存する集束作用を提供するための、複数の細長い磁極からなる列状体と、粒子選択を行うための分解手段とを備え、規則的に間隔をあけて配置されたそれぞれ平行な複数の仮想基準面の各々が、共通する磁気回路の少なくとも一部を、複数の細長い磁極からなる隣接する列状体と共有する、請求項1から10の何れか1つに記載した装置。
【請求項12】
複数の荷電粒子の質量及び/又はエネルギ及び/又は帯電状態を含む、荷電粒子の1つ以上のパラメータについての複数の異なる値に基づいて、前記荷電粒子に異なった作用をもたらす方法において、前記方法は:
複数の細長い磁極からなり、一方向に伸びる列状体であり、前記磁極の長手方向が前記列状体の伸張方向に伸びている列状体の磁界中に荷電粒子の2つのビームを提供するステップであって、磁極の前記列状体は、前記方法の複数のステップを行うための基準を提供するための仮想基準面を有しており、前記仮想基準面は、磁極の前記列状体の前記伸張方向に伸びると共に、少なくとも1つの磁極が前記仮想基準面の一方の側に位置するように列状体を通過しており、前記2つのビームは、前記仮想基準面の各々の側に1つずつ、前記仮想基準面から間隔をあけて設けられた2つのビーム源によって提供され、前記2つのビームは、これら2つのビームの各々と、前記仮想基準面との間に設けられ、荷電粒子が実質的に存在しない領域によって分解されるところのステップと、
磁極の列状体内の前記2つのビーム中の荷電粒子を、前記仮想基準面と実質的に平行で、且つ、磁極の前記列状体の伸張方向以外の移動方向に向けるステップであって、前記2つのビームは、前記ビームを横切る所定の位置において、前記2つのビーム各々の初期伝播方向と実質的に同一の方向を有すると共に、前記初期伝播方向と実質的に同一の方向と直交する細長い横断面を有しており、前記細長い横断面が、前記仮想基準面と平行な方向に伸びているところのステップと、
磁極の前記列状体の前記伸張方向と直交する平面における磁極の構成によって発生する磁界により、荷電粒子のパラメータに依存する分散をもたらすステップと、
前記パラメータに依存する分散によって、荷電粒子のパラメータに依存する選択をもたらすステップと、
異なる粒子の前記パラメータの異なる値に基づいて、前記2つのビームの各々の異なる粒子を集束させることによって、前記ビームの荷電粒子の移動方向を含む、前記仮想基準面と直交する平面において、荷電粒子のパラメータに依存する集束作用をもたらすステップと
を含み、
磁極の前記列状体の物理的に対向する磁極間に、前記仮想基準面を横切る磁界方向を有する、磁界の少なくとも1つの広がりをもった交差磁界領域を提供するステップであって、磁界の前記少なくとも1つの交差磁界領域は、入口及び出口領域を有しており、前記入口及び出口領域は、列状体における個々の対向する磁極と関連して、複数の磁極の前記列状体の伸張方向に沿って伸びていると共に、磁界の前記交差磁界領域にそれぞれ至り、そして、そこから出ており、前記入口及び出口領域は、前記仮想基準面と直交する平面において湾曲した複数の湾曲磁界をもたらしているところのステップと、
磁極の列状体の磁界内に進入し、又は、そこから発生すると共に、前記仮想基準面と実質的に平行な移動方向をもって、前記少なくとも1つの交差磁界領域内を移動する荷電粒子に、前記交差磁界領域によって、前記仮想基準面上において曲線運動を行わせるステップと、
前記荷電粒子を、少なくとも1つの出口又は入口領域の前記湾曲磁界中を、前記入口又は出口領域に対して直角な角度で通過させ、もって、ビームの荷電粒子の移動方向を含む、前記仮想基準面と直交する平面において、荷電粒子の前記2つのビームにパラメータに依存する集束作用を付与するステップと
を行うことによって、前記パラメータに依存する集束作用をもたらすことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記仮想基準面は、対称面であり、前記領域は、少なくとも2つの交差磁界領域からなっており、前記領域は、磁界の1つの初期交差磁界領域と、磁界の最終交差磁界領域と、2を超える数の交差磁界領域と、少なくとも1つの中間領域とから構成されており、
前記方法は、
前記仮想基準面のそれぞれの側に1つずつ、前記仮想基準面から間隔をあけて、前記初期交差磁界領域内に進入し、又は、そこから発生する2つのビームの各々の中に荷電粒子を提供するステップと、
前記初期交差磁界領域内を移動する荷電粒子に、パラメータに依存する曲線運動を行わせるステップであって、前記荷電粒子は、前記列状体の伸張方向に対して直行する角度で、前記初期交差磁界領域を出て、前記列状体の何れかの中間交差磁界領域を通過し、そして、磁界の前記最終交差磁界領域中へと移動するところのステップと、
交互極性を有する連続する複数の交差磁界領域によって、前記粒子に作用を及ぼすステップと
を含む、請求項12に記載した方法。
【請求項14】
2つのビーム源から荷電粒子の2つのビームを提供するステップと、
前記2つのビーム源から2つのビームを抽出するステップと、
ビーム抽出集束システムにおいて、前記2つのビームを、前記仮想基準面と平行であるが、前記仮想基準面から離れた2つの実質的に平行なビームに集束させるステップと
を含む、請求項12又は13に記載した方法。
【請求項15】
前記仮想基準面のそれぞれの側に1つずつ、前記仮想基準面から所定の間隔をあけて、荷電粒子の2つのビームを提供して、必要な種の電子又は分子を含む1以上の種のイオンビームが、前記仮想基準面上において、磁極の前記列状体の伸張方向に沿って伸びる2つのバリヤ間に設けられた分析開口で、1以上の焦点を通り、そして、前記仮想基準面と直交し、そして、磁極の前記列状体の伸張方向と平行で、且つ、これに沿って伸びる平面上において、2つのバリヤ間に設けられた伝送制限開口を通って伝送される、請求項12から14の何れか1つに記載した方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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